(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘着剤層がさらに(v-2)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドンおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる充てん剤を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貼付製剤。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、アルミニウム、マグネシウムおよびケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質複合酸化物である、請求項6又は7に記載の貼付製剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の事情に鑑み、本発明が解決しようとする第1の課題は、ブロナンセリンの薬効が発揮されるのに十分な血中濃度を維持できるとともに、皮膚刺激が十分に軽減され、しかも、保存時の安定性も良好な、ブロナンセリン貼付製剤を提供することにある。
【0012】
本発明が解決しようとする第2の課題は、粘着剤層の凝集力、ブロナンセリンの皮膚透過性だけでなく、水存在下での貼付性を十分に増強させた貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の第1の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ブロナンセリンと乳酸を含有する粘着剤層にゴマ油を含有させることで、ブロナンセリンの血中濃度の維持と乳酸の皮膚刺激の軽減とを両立でき、さらに特定の添加剤により、製剤の保存安定性も向上し得ることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることにより、本発明を完成するに至った。
【0014】
また、本発明者らは上記の第2の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ブロナンセリンと乳酸を含む粘着剤層に特定の充てん剤を添加することで上記課題が解決できることを見出し、すなわち、水存在下での粘着性を十分に増強させることのできる本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本明細書は2つの発明を含み、第1の本発明は以下の通りである。
[1] 支持体の片面に粘着剤層を有する貼付製剤であって、
該粘着剤層が、
(i)2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジンまたはその生理学的に許容される酸付加塩、
(ii)アクリル系ポリマー、
(iii)乳酸、
(iv)ゴマ油、並びに
(v-1)2−メルカプトベンズイミダゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよび没食子酸プロピルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤
を含有することを特徴とする貼付製剤(以下、「本発明の貼付製剤(I)」とも称する)。
[2] 粘着剤層100重量%中の乳酸の含有量が、0.1〜10重量%である上記[1]記載の貼付製剤。
[3] 粘着剤層100重量%中のゴマ油の含有量が3〜20重量%である、上記[1]または[2]記載の貼付製剤。
[4] 粘着剤層100重量%中の添加剤の含有量が0.3〜10重量%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の貼付製剤。
[5] 粘着剤層が(vi)有機液状成分をさらに含有する、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の貼付製剤。
[6] 有機液状成分がミリスチン酸イソプロピル(以下、「IPM」と称することもある。)を含む、上記[5]記載の貼付製剤。
[7] 粘着剤層中の有機液状成分とゴマ油の含有量の総量が、5〜60重量%である、上記[5]又は[6]記載の貼付製剤。
[8] 粘着剤層に架橋処理が施されてなる、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の貼付製剤。
[9] アクリル系ポリマーが、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル/酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種からなる、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の貼付製剤。
[10] アクリル系ポリマーが、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体からなる、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の貼付製剤。
[11] 乳酸がDL−乳酸およびL−乳酸である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載の貼付製剤。
【0016】
第2の本発明は以下の通りである。
[12] 支持体の片面に粘着剤層を有する貼付製剤であって、
該粘着剤層が、
(i)2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジンまたはその生理学的に許容される酸付加塩、
(ii)アクリル系ポリマー、
(iii)乳酸、並びに
(v-2)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドンおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーからなる群より選ばれる1種又は2種以上からなる充てん剤
を含有することを特徴とする、貼付製剤(以下、「本発明の貼付製剤(II)」とも称する)。
[13] 充てん剤がメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む、上記[12]記載の貼付製剤。
[14] メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質複合酸化物である、上記[13]記載の貼付製剤。
[15] 粘着剤層が架橋されたものである、上記[12]〜[14]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[16] 粘着剤層中の乳酸の含有量が、粘着剤層100重量%中0.1〜10重量%である、上記[12]〜[15]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[17] 粘着剤層中の充てん剤の含有量が、粘着剤層100重量%中0.1〜40重量%である、上記[12]〜[16]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[18] 粘着剤層が、(vi)有機液状成分をさらに含む、上記[12]〜[17]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[19] 有機液状成分がミリスチン酸イソプロピルを含む、上記[18]記載の貼付製剤。
[20] 粘着剤層が(iv)ゴマ油を含む、上記[12]〜[19]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[21] 粘着剤層が、(v-1)2−メルカプトベンズイミダゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよび没食子酸プロピルから選ばれる1種又は2種以上の添加剤をさらに含む、上記[12]〜[20]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[22] 粘着剤層中の添加剤の含有量が、粘着剤層100重量%中0.3〜10重量%である、上記[21]記載の貼付製剤。
[23] アクリル系ポリマーが、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル/酢酸ビニル共重合体及びアクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種からなる、上記[12]〜[22]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[24] アクリル系ポリマーがアクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体からなる、上記[12]〜[23]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[25] 乳酸がDL−乳酸あるいはL−乳酸である、上記[12]〜[24]のいずれか一つに記載の貼付製剤。
[26] 上記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の貼付製剤を、患者の皮膚に適用することを特徴とする、2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジンの経皮投与方法。
[27] 上記[1]〜[25]のいずれか一つに記載の貼付製剤を、統合失調症を患っている患者の皮膚に適用することを特徴とする、統合失調症の治療方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の貼付製剤(I)(第1の本発明)によれば、保存時のブロナンセリンの安定性に優れ、使用時はブロナンセリンの薬効が発揮されるのに十分な血中濃度が維持でき、しかも、皮膚刺激が十分に軽減されるブロナンセリン貼付製剤を提供することができる。
【0018】
一方、本発明の貼付製剤(II)(第2の本発明)は、粘着剤層がメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドンおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の充てん剤を含むことにより、乳酸による透過促進効果を維持したままで乳酸を含む貼付製剤の水存在下での粘着性の低下を抑制でき、皮膚等からの剥離を抑制することができる。したがって、第2の本発明によれば、ブロナンセリンまたはその生理学的に許容される酸付加塩の皮膚透過性、および水存在下での貼付性が共に優れる貼付製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、第1及び第2の本発明をその好適な実施形態に即してそれぞれ説明する。
1.第1の本発明
(i)第1の本発明にかかわる2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(一般名「ブロナンセリン」)は、下記式:
【0021】
で表される化合物であって、上述のようにセロトニン・ドパミン・アンタゴニスト(あるいは、ドパミン・セロトニン・アンタゴニスト)であり、抗精神病薬として市販されている。
【0022】
化合物Aはフリー塩基であってもよいし、その生理学的に許容される酸付加塩であってもよい。これらに限らないが、例えば有機酸の付加塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩等が挙げられ、無機酸の付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等が例示できる。さらに、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、溶媒和物、水和物または非水和物のいずれであってもよく、いずれか1種のみを用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0023】
上記化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、たとえば、特公平7−47574号公報(特許文献1)に記載の方法またはこれに準じる方法によって製造することができる。製造された化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、適宜通常用いられる方法にて粉砕化してもよい。
【0024】
本発明の貼付製剤(I)に配合される「化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩」の含有量は、投与される患者の年齢、症状等により設定する必要があるため、特に限定されるものではないが、化合物Aに換算して、粘着剤層100重量%中、通常、約0.1〜約50重量%程度であり、好ましくは、貼付製剤の面積にもよるが、約0.1〜約40重量%程度、より好ましくは約0.1〜約30重量%程度であり、また好ましくは、約0.5〜約50重量%程度、より好ましくは約0.5〜約40重量%程度、さらに好ましくは約0.5〜約30重量%程度である。なお、ここで化合物Aに換算してとは、化合物Aが生理学的に許容される酸付加塩の形態をとっている場合、または化合物Aが結晶水を有する場合に、当該酸付加塩に付加した酸または当該結晶水相当量は化合物Aの重量には含めないものとする意味である。
【0025】
第1の本発明における粘着剤層は、支持体の少なくとも片面に形成され、粘着剤層は、(i)化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩に加え、以下に記載の(ii)アクリル系ポリマー、(iii)乳酸、(iv)ゴマ油並びに(v-1)添加剤を少なくとも含有する。
【0026】
本発明の貼付製剤(I)は、支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを含む。必要に応じて、粘着剤層の支持体側とは反対側の面に剥離シートを有していてもよい。また、貼付製剤の形状は、任意形状の枚葉型でも、ロール状に巻回したものでもよい。
【0027】
上記支持体としては、特に限定はされないが、粘着剤層中の化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸、ゴマ油等が支持体を通ってその背面(支持体の粘着剤層の側とは反対側の面)から失われて粘着剤層中の含有量を低下させないもの、即ち、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸及びゴマ油に対して不透過性を有する材料が好ましく、また、後述するように粘着剤層中に有機液状成分を含有させる態様の場合は、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸、ゴマ油および有機液状成分に対して不透過性を有する材料が好ましい。
【0028】
上記の不透過性を満足する支持体としては、具体的には、ポリエステル(例えば、ポエチレンテレフタレート(PET)等)、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー樹脂などの単独フィルム、金属箔、又はこれらから選ばれる2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルムなどが挙げられる。これらのうち、支持体として粘着剤層との接着性(投錨性)を向上させるために支持体を上記材質からなる無孔性フィルムと下記の多孔性フィルムとのラミネートフィルムとし、多孔性フィルム側に粘着剤層を形成することが好ましい。なお、無孔性フィルムの厚みは2〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましい。
【0029】
多孔性フィルムとしては、粘着剤層との投錨性が向上するものであれば特に限定されず、例えば紙、織布、不織布(例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)不織布など)、上記のフィルム(例えば、ポリエステル、ナイロン、サラン(商品名)、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、金属箔、ポリエチレンテレフタレートなどの単独フィルム、およびこれらの1種または2種以上のフィルムを積層したラミネートフィルムなど)に機械的に穿孔処理したフィルムなどが挙げられ、特に紙、織布、不織布(例えば、ポリエステル不織布、ポリエチレンテレフタレート不織布など)が支持体の柔軟性の点から好ましい。多孔性フィルム、例えば、織布や不織布の場合、これらの目付量を5〜30g/m
2とすることが投錨力の向上の点で好ましい。
【0030】
支持体におけるラミネートフィルムは、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、エクストルージョン(押し出し)ラミネート法、ホットメルトラミネート法、コ・エクストルージョン(共押し出し)ラミネート法等の公知のラミネートフィルムの製造方法によって製造される。
【0031】
支持体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは2〜200μm、より好ましくは10〜50μmである。2μm未満であると、自己支持性等の取扱い性が低下する傾向となり、200μmを超えると、違和感(ごわごわ感)を生じ、追従性が低下する傾向となる。
【0032】
(ii)第1の本発明では、粘着剤層中の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含む。化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、ゴム系ポリマーと比較してアクリル系ポリマーへの溶解度が高く、粘着剤層中での化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の結晶形成の可能性が小さいことから、アクリル系ポリマーが有利である。よって、粘着剤はアクリル系ポリマーのみで構成するのが好ましい。粘着剤としてアクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーを含む場合、アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーは粘着剤層中の粘着剤の総重量に対して10重量%以下(アクリル系ポリマーが90重量%以上)である。アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーとしてはゴム系粘着性ポリマー、シリコーン系粘着性ポリマー等が挙げられる。
【0033】
第1の本発明におけるアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単位を主たる構成単位とするアクリル系ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成単位とするアクリル系ポリマーとしては、例えば、人間の皮膚への接着性、製剤調製の際の薬物の溶解性等の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体か、或いは、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)がさらに共重合した共重合体が好ましい。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の例としては、アルキル基が炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、n−ノニル、シクロノニル、n−デシル、シクロデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシルなど)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられ、好ましくはアルキル基が炭素数4〜18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、n−ノニル、シクロノニル、n−デシル、シクロデシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシルなど)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。特に常温での粘着性を与えるために、重合体のガラス転移温度を低下させるモノマー成分の使用が好適であることから、アルキル基が炭素数4〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチルなど)からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、とりわけ好ましくは、アルキル基がn−ブチル、2−エチルヘキシル又はシクロヘキシルからなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
【0035】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の特に好ましい具体例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロへキシルが挙げられ、中でも、アクリル酸2−エチルへキシルが最も好ましい。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
一方、上記の架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)において、架橋反応に関与できる官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニル基などが挙げられ、ヒドロキシ基およびカルボキシ基が好ましい。当該モノマー(第2モノマー成分)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などが挙げられる。これらのうち、入手の容易性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシエチルエステルが好ましく、アクリル酸が最も好ましい。これらのモノマー(第2モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、上記他のモノマー(第3モノマー成分)は、主として、粘着剤層の凝集力調整や薬物(化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩)の溶解性・放出性の調整などのために使用される。当該モノマー(第3モノマー成分)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニルアミド類;(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシエステル;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルアクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー(なお、かかるヒドロキシ基含有モノマーは第3モノマー成分としての使用なので架橋反応には関与しない。);(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコールエステル;(メタ)アクリロニトリル;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルスルホン酸などのスルホ基を有するモノマー;ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどのビニル基含有モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビニルエステル類、ビニルアミド類が好ましく、ビニルエステル類は酢酸ビニルが好ましく、ビニルアミド類はN−ビニル−2−ピロリドンが好ましい。これらのモノマー(第3モノマー成分)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分)は85〜99重量%/1〜15重量%が好ましく、90〜99重量%/1〜10重量%がより好ましい。
【0039】
また、当該アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)と、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分/第3モノマー成分)は40〜94重量%/1〜15重量%/5〜50重量%が好ましく、50〜89重量%/1〜10重量%/10〜40重量%がより好ましい。
【0040】
重合反応は、自体公知の方法で行えばよく特に限定されないが、例えば、上記のモノマーを、溶媒(例えば、酢酸エチルなど)中で、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなど)の存在下に50〜70℃で5〜48時間反応させる方法が挙げられる。
【0041】
第1の本発明における特に好ましいアクリル系ポリマーは、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸共重合体等であり、より好ましくは、アクリル酸2−エチルへキシルエステル/アクリル酸/N−ビニル−2−ピロリドン共重合体である。
【0042】
また、第1の本発明におけるアクリル系ポリマーのガラス転移温度は、共重合組成によっても異なるが、貼付製剤としての粘着性の観点から、通常−100〜−10℃であることが好ましく、より好ましくは−90〜−20℃である。ガラス転移温度は示差走査熱量計での測定値である。
【0043】
本発明の貼付製剤(I)において、粘着剤層中の粘着剤(粘着性ポリマー)の含有量は、粘着剤層100重量%中、30〜80重量%が好ましく、より好ましくは40〜70重量%である。
【0044】
(iii)第1の本発明で使用される乳酸は、ラセミ体であるDL−乳酸であってもよく、光学活性体であるL−乳酸あるいはD−乳酸であってもよい。流動性の観点からDL−乳酸が好ましい。
【0045】
粘着剤層中の乳酸の含有量が少なすぎると薬物(すなわち、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩)の皮膚透過性の促進効果が充分に得られない傾向を示し、また多すぎると皮膚刺激性が増大する傾向を示す。このため、粘着剤層中の乳酸の含有量は粘着剤層100重量%中0.1〜10重量%が好ましい。薬物の皮膚透過性促進の観点からは1〜10重量%がより好ましく、さらに粘着剤層の接着力の上昇による物理的な皮膚刺激を考慮した場合は1〜6重量%が特に好ましい。
【0046】
(iv)第1の本発明で使用されるゴマ油は、ゴマの種子を圧搾して得られる油であり、生ゴマの種子由来の油でも、炒りゴマの種子由来の油でも、両者の混合物であってもよい。また、「ゴマ油」として食品用や医薬用等に市販されている市販品を用いることが出来る。
【0047】
粘着剤層中のゴマ油の含有量が少なすぎると皮膚刺激性の低減効果が十分に得られない傾向を示し、また多すぎると粘着剤層中でゴマ油が他の成分と分離して、貼付製剤の製造に支障をきたす。このため、粘着剤層中のゴマ油の含有量は、粘着剤層100重量%中、3〜20重量%が好ましい。特に、貼付製剤の諸物性および皮膚刺激性の十分な低減効果を考慮すると、より好ましくは粘着剤層100重量%中4〜18重量%、さらに好ましくは5〜18重量%、とりわけ好ましくは10〜16重量%である。
【0048】
(vi)粘着剤層をより柔軟化し、貼付時及び/又は剥離時の物理的な皮膚刺激を低減する観点から、粘着剤層には(vi)有機液状成分を含有させることができる。第1の本発明における「有機液状成分」とは、それ自体が室温(25℃)で液状であり、粘着剤層を可塑化する作用を示し、上記の粘着剤を構成する粘着性ポリマーと相溶する有機物質である。なお、ゴマ油は室温(25℃)で液状であり、有機液状成分と同様に粘着剤層を可塑化する作用も有する。
【0049】
有機液状成分の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル等の炭素数8〜18(好ましくは12〜16)の脂肪酸と炭素数が1〜18の1価アルコールとの脂肪酸エステル(以下、「C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステル」とも略称する。);炭素数8〜9の脂肪酸〔例えば、カプリル酸(オクタン酸、C8)、ペラルゴン酸(ノナン酸、C9)等〕;脂肪酸グリセリンエステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、スクアレン等の油脂類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイルアルコール、ラウリン酸、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル、ラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノオレエート、ショ糖脂肪酸エステル、トコフェロールなどの液状の界面活性剤;炭化水素類;フタル酸エステル等の従来より公知の可塑剤;その他、エトキシ化ステアリルアルコール、グリセリン等が挙げられる。これらの有機液状成分は1種を単独で又は2種以上の組み合わせで使用される。これらの中でも、C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピルが特に好ましい。
【0050】
第1の本発明における粘着剤層中の有機液状成分とゴマ油の総量は、粘着剤層100重量%中、好ましくは5〜60重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。5重量%未満の場合、粘着剤層の良好なソフト感が得られない場合があったり、皮膚刺激性の低減効果が十分に得られない場合があり、60重量%を超える場合、粘着剤が有する凝集力によっても有機液状成分を粘着剤中に保持できず、粘着剤層表面にブルーミングして粘着力が低下し、貼付使用中に皮膚面から製剤が脱落する可能性が高くなる。
【0051】
第1の本発明において、粘着剤層中のゴマ油と有機液状成分(ゴマ油以外の有機液状成分)との含有量比は、重量比(ゴマ油:有機液状成分)で1:1〜10が好ましく、より好ましくは1:1〜6、特に好ましくは1:1〜3の範囲である。有機液状成分の量がゴマ油の量よりも少ない場合、剥離時の皮膚刺激低減効果が低下する傾向となり、有機液状成分の量がゴマ油の量の10倍を超える場合は、ゴマ油による乳酸の皮膚刺激性の軽減効果が得られにくくなる傾向となる。
【0052】
(v)(v-1)特定の添加剤
貼付製剤は、一般に空気との接触面積が大きく、このため十分な安定性を得るために、粘着剤層には安定化剤を添加することがある。本発明においては、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の安定性を確保し、貼付製剤の着色を抑制する物質として、以下の特定の添加剤、すなわち、2−メルカプトベンズイミダゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、および没食子酸プロピルを粘着剤層に含有させることによって所望の安定化効果が得られることが判明した。これらはいずれか1種または2種以上を使用することができる。なかでも、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)が好ましい。
【0053】
粘着剤層中の当該添加剤の含有量は粘着剤層100重量%中、0.3〜10重量%が好ましい。粘着剤層の物性への影響を考慮すると、より好ましくは0.3〜6重量%、とりわけ好ましく0.3〜2重量%である。
【0054】
粘着剤層には架橋処理を施すことができ、該架橋処理は特に限定されず、化学的架橋処理(架橋剤を用いた架橋処理など)及び物理的架橋処理(γ線のような電子線照射や紫外線照射による架橋処理など)などの、当分野で一般的に行われている手法により行うことができる。架橋処理により粘着剤層はいわゆるゲル状態の粘着剤層となり、皮膚にソフト感を与えつつ適度な接着性と凝集力を有するものとなる。本発明の貼付製剤(I)において、粘着剤層に化学的または物理的架橋処理を行うと、製剤の製造工程中または保管中での薬物の安定性が低下しやすくなる(すなわち、類縁物質の生成量が増加する傾向になる)。本発明においては、架橋処理がなされたアクリル系ポリマー中、上記特定の安定化剤が、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の安定性を高めることが判明した。尚、かかる架橋処理は必須でなく、架橋処理が施されていない粘着剤層を有する貼付製剤であっても、当然に本発明に包含され得ることは言うまでもない。
【0055】
粘着剤層に架橋剤を用いた化学的架橋処理を施す場合、粘着剤層に自己架橋を起こさせることも可能であるが、架橋剤を粘着剤層に含有させることによって架橋を効果的に生じさせることができる。架橋剤としては、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩によって架橋の形成が阻害されない架橋剤であれば特に制限されない。例えば、イソシアネート系化合物、有機金属化合物(例えばジルコニウム及び亜鉛アラニアネート、酢酸亜鉛、グリシンアンモニウム亜鉛等)、金属アルコラート(例えばテトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等)金属キレート化合物(例えばジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))等が挙げられる。とりわけ、粘着剤層がイソシアネート系化合物を含むことで、貼付製剤をヒト皮膚に貼付した状態で、粘着剤層の凝集力の低下が軽減され、粘着剤層を剥離する際の凝集破壊が生じにくくなる観点からイソシアネート系化合物が好ましい。
【0056】
イソシアネート系化合物としては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香環含有ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
架橋剤の量は、架橋剤や粘着性ポリマーの種類によっても異なるが、一般的には、粘着剤層100重量%中、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%である。0.01重量%より少ないと架橋点が少なすぎるために粘着剤層に充分な凝集力を付与できず、製剤を皮膚から剥離する際に凝集破壊に起因する糊残りや強い皮膚刺激が発現するおそれがある。10重量%より多いと、凝集力は大きいが充分な皮膚接着力が得られなくなる場合がある。また、未反応の架橋剤の残留によって皮膚刺激がおこるおそれがある。化学的架橋処理は、例えば、架橋剤の粘着剤層への添加後、架橋反応温度以上に加熱して保管する工程、すなわち、熟成工程を経ることにより実施することができ、このときの加熱温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選択されるが、好ましくは60〜90℃であり、より好ましくは60〜80℃である。加熱時間としては、好ましくは12〜96時間であり、より好ましくは24〜72時間である。
【0058】
本発明の貼付製剤(I)において、皮膚接着力の観点から、粘着剤層は非含水系の粘着剤層が好ましい。ここにいう非含水系の粘着剤層は、必ずしも完全に水分を含まないものに限定されるわけではなく、空中湿度、皮膚等に由来する若干量の水分(例:粘着剤層100重量%中、1重量%未満)を含むものは包含される。
【0059】
第1の本発明における粘着剤層には、香料、着色剤およびその他の添加剤を含有することができる。
【0060】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、20〜300μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜300μmが最も好ましい。粘着剤層の厚みが20μm未満であると、十分な粘着力を得ること、有効量の化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩を含有させることが困難となるおそれがあり、粘着剤層の厚みが300μmを超えると粘着剤層形成に支障(塗工困難)をきたすおそれがある。粘着剤層の組成が同様である場合、架橋処理を施されていない粘着剤層は、その厚みを薄くすることが一般的に好ましく、一方、架橋処理を施された粘着剤層は、その厚みを厚くすることができる。
【0061】
また、粘着剤層の支持体側とは反対側の面(皮膚への貼付面)は製剤を実際に使用するまでは、剥離ライナーが積層されているのが好ましい。剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。具体的には、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材の表面に形成された剥離ライナーや、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム、剥離ライナー用の基材の表面に、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材による剥離層を形成した構成の剥離ライナーなどが挙げられる。剥離ライナーの剥離面は、基材の片面のみであってもよく、両面であってもよい。
【0062】
このような剥離ライナーにおいて、剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、長鎖アルキル基含有ポリマー、シリコーンポリマー(シリコーン系剥離剤)、フッ素系ポリマー(フッ素系剥離剤)などの剥離剤が挙げられる。剥離ライナー用の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエステル(PETを除く)フィルムなどのプラスチックフィルムやこれらのフィルムに金属を蒸着した金属蒸着プラスチックフィルム;和紙、洋紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙などの紙類;不織布、布などの繊維質材料による基材;金属箔などが挙げられる。
【0063】
また、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体又はランダム共重合体)の他、これらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;テフロン(登録商標)製フィルムなどを用いることができる。
【0064】
なお、前記剥離ライナー用の基材の表面に形成される剥離層は、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材を、前記剥離ライナー用の基材上に、ラミネート又はコーティングすることにより形成することができる。
【0065】
剥離ライナーの厚み(全体厚)としては、特に限定するものではないが、通常200μm以下、好ましくは25〜100μmである。
【0066】
本発明の貼付製剤(I)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0067】
まず、アクリル系ポリマーを含めた粘着性ポリマー、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、ゴマ油、及び2−メルカプトベンズイミダゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよび没食子酸プロピルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の添加剤を、必要に応じて有機液状成分やその他の添加剤と共に適当な溶媒に加えて均一になるまで十分に混合する。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2−プロパノール、メタノール、エタノール等が挙げられる。そして、架橋剤を配合する場合は、この混合液にさらに架橋剤を加えて十分に混合する。この際、必要に応じて、架橋剤とともに溶媒を加えて混合してもよい。
【0068】
次に、得られた混合液を、支持体の片面又は剥離ライナーの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。なお、前記塗布は、例えば、キャスティング、プリンティング、その他の当業者に自体公知の技法により実施可能である。その後、粘着剤層に剥離ライナー又は支持体を貼り合わせて積層体を形成する。なお、架橋処理を行う場合は、剥離ライナー又は支持体を粘着剤層上に貼りあわせた後、60〜90℃、好ましくは60〜70℃で24〜48時間放置して架橋反応を促進させて、架橋粘着剤層を形成する。
【0069】
次に、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層の露出面から溶媒に乳酸を溶解させた乳酸溶液を含浸させ、40〜100℃程度で乾燥させ、乾燥後の、前記とは別の剥離ライナーの剥離処理面を粘着剤層に貼り合わせる。
【0070】
本発明の貼付製剤(I)の形状は限定されず、例えば、テープ状、シート状等であってもよい。
【0071】
本発明の貼付製剤(I)の投与量は、患者の年齢、体重、症状などにより異なるが、通常、成人に対して、化合物Aを0.1〜50mg含有させた貼付製剤を皮膚5〜100cm
2に、3回/1日〜1回/週の頻度で貼り付けるのが好ましい。
【0072】
本発明の貼付製剤(I)は、患者の皮膚に適用することによって、化合物Aを患者に対し経皮投与することができる。また、本発明の貼付製剤(I)は、化合物Aを経皮投与することによって治療できる疾患を患っている患者の皮膚に適用することによって、当該疾患を治療することができ、例えば、統合失調症を患っている患者の皮膚に適用することによって、統合失調症を治療すること等ができる。
【0073】
2.第2の本発明
(i)第2の本発明にかかわる2−(4−エチル−1−ピペラジニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6,7,8,9,10−ヘキサヒドロシクロオクタ[b]ピリジン(一般名「ブロナンセリン」)は、第1の本発明で用いられる化合物Aと同様のものである。
【0074】
化合物Aはフリー塩基であってもよいし、その生理学的に許容される酸付加塩であってもよい。これらに限らないが、例えば有機酸の付加塩及び無機酸の付加塩としては、第1の本発明と同様のものが例示できる。さらに、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、溶媒和物、水和物または非水和物のいずれであってもよく、いずれか1種のみを用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0075】
かかる化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、第1の本発明に用いられる方法と同様の方法によって製造される。製造された化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩は、適宜通常用いられる方法にて粉砕化してもよい。
【0076】
本発明の貼付製剤(II)に配合される「化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩」の含有量は、第1の本発明と同様に設定し得、好適な含有量も同様に設定し得る。
【0077】
本発明の貼付製剤(II)は、支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを有し、粘着剤層に、上記(i)化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩に加え、以下の(ii)アクリル系ポリマー、(iii)乳酸及び(v-2)特定の充てん剤を含む。必要に応じて、粘着剤層の支持体側とは反対側の面に剥離シートを有していてもよい。また、貼付製剤の形状は限定されず、例えば、テープ状、シート状等であってもよい。
【0078】
上記支持体としては、特に限定はされないが、粘着剤層中の化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸等が支持体を通ってその背面(支持体の粘着剤層の側とは反対側の面)から失われて粘着剤層中の含有量を低下させないもの、即ち、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸等に対して不透過性を有する材料が好ましく、また、後述するように粘着剤層中に有機液状成分やゴマ油等を含有させる態様の場合は、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、乳酸、有機液状成分及びゴマ油に対して不透過性を有する材料が好ましい。
【0079】
上記の不透過性を満足する支持体としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0080】
多孔性フィルムとしては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0081】
支持体におけるラミネートフィルムは、第1の本発明に用いられる方法と同様の方法によって製造される。
【0082】
支持体の厚みは、第1の本発明と同様に設定し得る。
【0083】
(ii)第2の本発明では、粘着剤層中の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含む。化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩に対しては、ゴム系ポリマーと比較して、アクリル系ポリマーへの溶解度が高く、粘着剤層中での化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の結晶形成の可能性が小さいことから、アクリル系ポリマーが有利である。よって、粘着剤はアクリル系ポリマーのみで構成するのが好ましい。粘着剤としてアクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーを含む場合、アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーは粘着剤層中の粘着剤の総重量に対して10重量%以下(アクリル系ポリマーが90重量%以上)である。アクリル系ポリマー以外の粘着性ポリマーとしてはゴム系粘着性ポリマー、シリコーン系粘着性ポリマー等が挙げられる。
【0084】
第2の本発明におけるアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単位を主たる構成単位とするアクリル系ポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成単位とするアクリル系ポリマーとしては、例えば、人間の皮膚への接着性、製剤調製の際の薬物の溶解性等の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体か、或いは、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)がさらに共重合した共重合体が好ましい。
【0085】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の例としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものが挙げられ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0086】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の特に好ましい具体例としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものが挙げられ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0087】
一方、上記の架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)において、架橋反応に関与できる官能基としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0088】
また、上記他のモノマー(第3モノマー成分)は、主として、粘着剤層の凝集力調整や化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の溶解性・放出性の調整などのために使用される。当該モノマー(第3モノマー成分)としては、第1の本発明において例示されるものと同様のものが挙げられ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0089】
当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分)は第1の本発明と同様に設定され、その好適な範囲も第1の本発明のものと同様である。
【0090】
また、当該アクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)と、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分/第3モノマー成分)は第1の本発明と同様に設定され、その好適な範囲も第1の本発明のものと同様である。
【0091】
重合反応は、自体公知の方法で行えばよく特に限定されないが、例えば、上記のモノマーを、溶媒(例えば、酢酸エチルなど)中で、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなど)の存在下に50〜70℃で5〜48時間反応させる方法が挙げられる。
【0092】
第2の本発明における特に好ましいアクリル系ポリマーは、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0093】
また、第2の本発明におけるアクリル系ポリマーのガラス転移温度は、第1の本発明と同様に設定され、その好適な範囲も第1の本発明のものと同様である。
【0094】
本発明の貼付製剤(II)において、粘着剤層中の粘着剤(アクリル系ポリマー等の粘着性ポリマー)の含有量は、(i)化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩、(iii)乳酸及び(v-2)特定の充てん剤、並びに下記の必要に応じて添加する各種製剤化成分そのものを除いた残余であり、その量は粘着剤層を完成させるに必要な量であって、例えば、粘着剤層100重量%中、20〜90重量%が好ましく、より好ましくは30〜80重量%である。
【0095】
(iii)粘着剤層に含有される乳酸は、当技術分野で通常用いられるものであればよい。ラセミ体であるDL−乳酸であってもよく、光学活性体であるL−乳酸あるいはD−乳酸であってもよい。入手の容易さの点からL−乳酸、DL−乳酸が好ましい。また、特に流動性の観点からDL−乳酸が好ましい。粘着剤層における、乳酸の含有量は、適宜設定でき特に限定されるものではないが、粘着剤層100重量%中0.1〜10重量%が好ましい。0.1重量%未満であると、有効量の薬物が血中に移行しない恐れがある。10重量%を超えると、粘着剤層の凝集力が低下する恐れがある。乳酸は皮膚刺激への影響を考慮すると6重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。具体的には0.1〜6重量%がより好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。
【0096】
(v-2)第2の本発明における特定の充てん剤は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーである。これらはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。かかる特定の充てん剤の配合により、水存在下での接着性の低下を抑制することができる。粘着剤層中の充てん剤の含有量は、粘着剤層100重量%中0.1〜40重量%が好ましい。より好ましくは、0.1〜25重量%、さらに好ましくは、0.5〜5重量%である。特に、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび/またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーでは、とりわけ好ましくは0.5〜2.4重量%である。0.1重量%未満であると、水存在下での貼付製剤の接着性の向上効果が十分に得られにくい傾向になり、40重量%を超えると貼付製剤が十分な接着性を示さない恐れがある。なお、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーのなかでも、比較的少量の配合で水存在下での貼付製剤の接着性を向上させることができる点から、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが好ましい。
【0097】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、例えば、ノイシリンの商品名の下で、富士化学工業から入手可能である。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、アルミニウム、マグネシウム及びケイ素原子が酸素原子を介して3次元的に重合した非晶質の複合酸化物からなるものが好ましく、かかる複合酸化物は、より具体的には、一般式、Al
2O
3/aMgO/bSiO
2・nH
2O(式中、a=0.3〜3、b=0.3〜5である。)で表されるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。このようなメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、その多孔性構造により、水存在下での接着性向上により有利に作用すると考えられる。
【0098】
ポリビニルピロリドンは、非イオン型水溶性高分子化合物であり、N−ビニル−2−ピロリドンが一定の条件で重合してなるものである。ポリビニルピロリドンの分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量が2,000〜1,500,000程度である。また、その粒径も特に限定はされないが、好ましくは平均粒径が15〜350μmである。
【0099】
ポリビニルピロリドンは、市販品を使用することができ、コリドンK90、コリドン12PF、コリドン17PF、コリドン25、コリドン30、コリドン90F(BASF Japan Ltd)などの商品名で商業的に入手可能である。
【0100】
アミノアルキルメタクリレートコポリマーは、メタアクリル酸メチル(15〜35重量%)、メタアクリル酸ブチル(15〜35重量%)及びメタアクリル酸ジメチルアミノエチル(30〜70重量%)の共重合体(重量平均分子量が75,000〜300,000程度)の微粒子である。粒径は特に限定はされないが、一般的には平均粒径は10〜100μmである。
【0101】
このようなアミノアルキルメタクリレートコポリマーは、市販品を使用することができ、例えば、EUDRAGIT(登録商標)E100の微粒子型であるEUDRAGIT(登録商標)EPO(Evonic−Degussa製)、EUDRAGIT(登録商標)E125などの商品名で商業的に入手可能である。
【0102】
(vi)本発明の貼付製剤(II)においては、粘着剤層へのソフト感の付与、貼付製剤を皮膚から剥離する時の皮膚接着力に起因する痛みや刺激(物理的刺激)の軽減等の観点から、粘着剤層には、有機液状成分を含有させることができる。
【0103】
このような有機液状成分としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0104】
また粘着剤層中には(iv)ゴマ油を配合してもよい。なお、ゴマ油は25℃で液状であり、有機液状成分と同様に粘着剤層を可塑化する作用も有する。ゴマ油は、生ゴマの種子由来の油でも、炒りゴマの種子由来の油でも、両者の混合物であってもよい。また、「ゴマ油」として食品用や医薬用等に市販されている市販品を用いることが出来る。
【0105】
第2の本発明において、粘着剤層中の有機液状成分の含有量は、好ましくは粘着剤層100重量%中5〜60重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。含有量が5重量%未満のとき、粘着剤層の可塑化が不充分なために良好なソフト感が得られなかったり、皮膚刺激性の低減効果が十分に得られない場合があり、逆に含有量が60重量%を超えると、粘着剤が有する凝集力によっても有機液状成分を粘着剤中に保持できず、粘着剤層表面にブルーミングして粘着力が弱くなり過ぎて、貼付使用中に皮膚面から製剤が脱落する可能性が高くなる。なお、C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステルとともにゴマ油を使用する場合、C8〜18(12〜16)−C1〜18脂肪酸エステルは、粘着剤層100重量%中、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは7〜30重量%含有させ、ゴマ油は粘着剤層100重量%中3〜20重量%含有させるのが好ましい。
【0106】
本発明の貼付製剤(II)においては、粘着剤層には(v-1)安定化剤(添加剤)を添加することができる。ここで、安定化剤とは、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩の安定性を確保し、貼付製剤の着色を抑制する物質であり、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、および没食子酸プロピル等が挙げられる。これらはいずれか1種または2種以上を使用することができる。なかでも、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)が好ましい。
【0107】
粘着剤層中の安定化剤の含有量は粘着剤層100重量%中、0.3〜10重量%が好ましい。特に、粘着剤層の物性への影響を考慮すると、より好ましくは粘着剤層100重量%中、0.3〜6重量%、とりわけ好ましくは0.3〜2重量%である。
【0108】
本発明の貼付製剤(II)では、粘着剤層には、公知の化学的架橋処理(架橋剤を用いた架橋処理等)や物理的架橋処理(γ線のような電子線照射や紫外線照射による架橋処理等)等で架橋処理を施すことができる。当該架橋処理は、当分野で一般的に行われている手法により行うことができる。なお、架橋処理は化合物Aに悪影響を及ぼしにくいという観点から、架橋剤を用いた化学的架橋処理が好ましい。
【0109】
粘着剤層に架橋剤を用いた化学的架橋処理を施す場合、粘着剤層に自己架橋を起こさせることも可能であるが、架橋剤を粘着剤層に含有させることによって架橋を効果的に生じさせることができる。架橋剤としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0110】
架橋剤の量は、第1の本発明と同様に設定され、好適な量も第1の本発明のものと同様に設定される。化学的架橋処理は、第1の本発明と同様の方法で行うことができ、その好適な態様も第1の本発明のものと同様である。
【0111】
本発明の貼付製剤(II)において、粘着剤層の厚みは20〜300μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜300μmが最も好ましい。粘着剤層の厚みが20μm未満であると、十分な粘着力を得ること、有効量の化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩を含有させることが困難となるおそれがあり、粘着剤層の厚みが300μmを超えると粘着剤層形成に支障(塗工困難)をきたすおそれがある。
【0112】
本発明の貼付製剤(II)において、皮膚接着力の観点から、粘着剤層は非含水系の粘着剤層が好ましい。ここにいう非含水系の粘着剤層は、必ずしも完全に水分を含まないものに限定されるわけではなく、空中湿度、皮膚等に由来する若干量の水分(例:粘着剤層の総重量の1重量%未満)を含むものは包含される。
【0113】
本発明の貼付製剤(II)は、支持体と粘着剤層を含み、好ましくは剥離ライナーを備える。
剥離ライナーとしては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0114】
このような剥離ライナーにおいて、剥離処理剤としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができる。剥離ライナー用の基材としては、第1の本発明に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0115】
剥離ライナーの厚み(全体厚)としては、特に限定するものではないが、通常200μm以下、好ましくは25〜100μmである。
【0116】
本発明の貼付製剤(II)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0117】
まず、粘着性ポリマー、化合物Aまたはその生理学的に許容される酸付加塩及び充てん剤を、必要に応じて有機液状成分やその他の添加剤と共に適当な溶媒に加えて均一になるまで十分に混合する。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2−プロパノール、メタノール、エタノール等が挙げられる。そして、架橋剤を配合する場合は、この混合液にさらに架橋剤を加えて十分に混合する。この際、必要に応じて、架橋剤とともに溶媒を加えて混合してもよい。
【0118】
次に、得られた混合液を、支持体の片面又は剥離ライナーの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。なお、前記塗布は、例えば、キャスティング、プリンティング、その他の当業者に自体公知の技法により実施可能である。その後、粘着剤層に剥離ライナー又は支持体を貼り合わせて積層体を形成する。なお、架橋処理を行う場合は、剥離ライナー又は支持体を粘着剤層上に貼りあわせた後、60〜90℃、好ましくは60〜70℃で24〜48時間放置して架橋反応を促進させて、架橋粘着剤層を形成する。
【0119】
次に、剥離ライナーを剥がして、粘着剤層の露出面から溶媒に乳酸を溶解させた乳酸溶液を含浸させ、40〜100℃程度で乾燥させ、乾燥後の、前記とは別の剥離ライナーの剥離処理面を粘着剤層に貼り合わせる。
【0120】
本発明の貼付製剤(II)の投与量は、第1の本発明と同様に設定される。
【0121】
本発明の貼付製剤(II)は、患者の皮膚に適用することによって、化合物Aを患者に対し経皮投与することができる。また、本発明の貼付製剤(II)は、化合物Aを経皮投与することによって治療できる疾患を患っている患者の皮膚に適用することによって、当該疾患を治療することができ、例えば、統合失調症を患っている患者の皮膚に適用することによって、統合失調症を治療すること等ができる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を挙げて第1及び第2の本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中で「部」又は「%」とあるのは、特記する場合を除き、全て重量部又は重量%を意味する。
【0123】
以下に挙げる実施例1A〜10A及び比較例1A〜9Aは、第1の本発明に関するものである。
[アクリル系ポリマーAの調製]
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル75部、N−ビニル−2−ピロリドン22部、アクリル酸3部およびアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させてアクリル系共重合体(アクリル系ポリマーA)の溶液を調製した。アクリル系共重合体(アクリル系ポリマーA)のガラス転移点は−45.2℃であった。
【0124】
[実施例1A]
アクリル系ポリマーA 57.09部、化合物A 6.45部、ミリスチン酸イソプロピル(以下「IPM」と称す) 17.73部、ゴマ油 14.51部、及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下「BHT」と称す) 0.97部を、適量の酢酸エチルに溶解して溶液が均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として三官能性イソシアネートであるコロネートHL(日本ポリウレタン工業製) 0.26部を加え、酢酸エチルでベース濃度を20重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行って塗工液を得た。得られた塗工液を、シリコーン系剥離剤にて剥離処理を施した厚さ75μmポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と称す)製フィルムである剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが約120μmとなるように塗工し、乾燥を行い粘着剤層を形成した。そして、形成した粘着剤層の粘着面を厚さ3.5μmのPETフィルムと目付量12g/m
2のPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。放置後、前記剥離ライナーを剥離し、粘着剤層の粘着面にDL−乳酸の酢酸エチル溶液(乳酸:酢酸エチル=1:2(重量比))を含浸した後、乾燥を行ない、前記架橋粘着剤層(97.01部)に対して、乾燥後の粘着剤層中の乳酸量が2.99部となるようにした(粘着剤層の総重量当たりの乳酸含有量が2.99%)。乾燥後、前記と同じ剥離処理を施した剥離ライナーを別に用意し、これの剥離処理を施した面に張り合わせ、実施例1Aの貼付製剤を得た。
なお、上記のベース濃度とは、塗工液の重量(g)から酢酸エチルの重量(g)を引いた重量(g)を、塗工液重量(g)で除した値に100を乗じた値(重量%)である。
【0125】
[実施例2A]
アクリル系ポリマーA 57.08部、IPM 22.57部、ゴマ油 9.68部とした以外は実施例1Aと同様にして実施例2Aの貼付製剤を得た。
【0126】
[実施例3A]
アクリル系ポリマーA 57.08部、IPM 27.41部、ゴマ油 4.84部とした以外は実施例1Aと同様にして実施例3Aの貼付製剤を得た。
【0127】
[実施例4A]
化合物A 6.52部、アクリル系ポリマーA 57.68部、IPM 17.91部、ゴマ油 14.66部、乳酸 1.99部、BHT 0.98部とした以外は実施例1Aと同様にして実施例4Aの貼付製剤を得た。
【0128】
[実施例5A]
化合物A 6.25部、アクリル系ポリマーA 55.32部、IPM
17.19部、ゴマ油 14.06部、乳酸 5.99部、BHT 0.94部、架橋剤 0.25部とした以外は実施例1Aと同様にして実施例5Aの貼付製剤を得た。
【0129】
[比較例1A]
ゴマ油を使用せず、代わりにIPMを32.25部とし、アクリル系ポリマーA 57.08部とした以外は実施例1Aと同様にして比較例1Aの貼付製剤を得た。
【0130】
[比較例2A]
化合物A 6.52部、アクリル系ポリマーA 57.67部、IPM 32.58部、乳酸 1.99部、BHT 0.98部とした以外は比較例1Aと同様にして比較例2Aの貼付製剤を得た。
【0131】
[比較例3A]
化合物A 6.25部、アクリル系ポリマーA 55.32部、IPM 31.25部、乳酸 5.99部、BHT 0.94部、架橋剤 0.25部とした以外は比較例1Aと同様にして比較例3Aの貼付製剤を得た。
【0132】
[比較例4A]
乳酸を使用せず、化合物A 6.65部、アクリル系ポリマーA 58.85部、IPM 33.24部、BHT 1.00部とした以外は比較例1Aと同様にして比較例4Aの貼付製剤を得た。
【0133】
[比較例5A]
ゴマ油を使用せず、代わりにリノール酸を14.51部とし、アクリル系ポリマーA 57.09部とした以外は比較例1Aと同様にして比較例5Aの貼付製剤を得た。
【0134】
<評価試験>
上記実施例および比較例で作製した製剤について下記の試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0135】
(試験例1:経皮吸収実験)
6週齢のSD系雄ラットを麻酔し、背部を除毛した。製剤を2.5cm×5cmの大きさのテープ製剤に裁断し、ラットの背部除毛部位に貼付し、経時的に採血して血清を分離した。得られた血清は高速液体クロマトグラフ法(以下、HPLCという)により定量し、化合物Aの投与後24時間目の血清中濃度を調べた。
【0136】
(試験例2:3日間反復投与の累積刺激性試験)
背部を毛刈りした体重が3kgのウサギ(約17週齢)を購入し、1週間の検疫の後、エリザベスカラーを装着した。翌日にT字剃刀にて、ウサギの背部を剃毛し、その3日後から試験を開始した。製剤を1.5cm×1.5cmの大きさのテープ製剤に裁断し、ウサギ背部の正常皮膚に貼付し、その上から不織布粘着性包帯(メッシュポア、ニチバン株式会社製)で被い、24時間閉塞貼付後、テープ製剤を除去し、約30分間放置した。再度、同様の位置に同じ大きさの新しいテープ製剤を貼付し、被覆、24時間閉塞貼付、除去、約30分間放置の操作を行い、更にもう一度同様の操作を実施した。以上の操作後、投与部位を肉眼的に観察し、皮膚反応を以下に示したDraize法の判定基準に従って判定した。
【0137】
(判定基準)
・紅斑
0:紅斑なし
1:ごく軽度の紅斑
2:明らかな紅斑
3:中〜強度の紅斑
4:強い紅斑〜痂皮形成
・浮腫形成
0:浮腫なし
1:ごく軽度の浮腫
2:明らかな浮腫
3:中等度の浮腫
4:強度の浮腫
【0138】
(試験例3:接着力試験)
ステンレス板に幅24mm、長さ50mmに切断したサンプルを重さ2kgのローラーを一往復させて圧着し、30分経過後、引き剥がし角度180°、引張速度300mm/分にて引き剥がし、その際の剥離力を測定した。試験数はn=3で行い、各試験3点の荷重を測定し計9点を平均した。試験点は剥離開始位置から20、40、60mmの位置とした。
【0139】
【表1】
【0140】
表1から以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層にゴマ油を含有しない比較例1A〜3Aは粘着剤層中の乳酸含有量が増大するにつれて、皮膚刺激性の発生が顕著になっている。これに対し、粘着剤層にゴマ油を含有させた実施例1A〜5Aでは、乳酸含有量の多少に係らず、皮膚刺激性の発生が抑えられている。乳酸、ゴマ油を含有しない比較例4Aでは、化合物Aの血中濃度が維持できていない。ゴマ油の代わりにリノール酸を含有した比較例5Aでは、皮膚刺激性の発生は抑えられているものの、血中濃度の維持ができていないことが分かった。
(2)粘着剤層中のゴマ油の含有量が多くなるにつれて、製剤の接着力が高くなっていることが分かる。
【0141】
(試験例4:製剤の安定性試験)
表2に記載の安定化剤をそれぞれ含有する製剤サンプルを下記の処方で作製し、保存による製剤中の類縁物質の生成率と製剤の着色とから、製剤の安定性を評価した。類縁物質の生成率の測定及び製剤の着色の判例は下記の方法で行った。
【0142】
[製剤処方]
アクリル系ポリマーA 53.00部、化合物A 6.00部、IPM 29.90部、および安定化剤 0.90部を適量の酢酸エチルで溶解した溶液を均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として三官能性イソシアネートであるコロネートHL(日本ポリウレタン工業製)を0.20部加え、酢酸エチルでベース濃度を20重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行い塗工液を得た。得られた塗工液を、片面にシリコーン系剥離剤で剥離処理を施した厚さ75μmのPET製フィルムである剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが約60μmとなるように塗工し、乾燥を行い粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面を、厚さ3.5μmのPETフィルムと目付量12g/m
2のPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製した。放置後、前記剥離ライナーを剥離し、粘着剤層の露出面に乳酸の酢酸エチル溶液(乳酸:酢酸エチル=1:2(重量比))を含浸した後、乾燥を行ない、前記架橋粘着剤層(90.00部)に対して、乾燥後の粘着剤層中の乳酸量が10.00部となるようにした(粘着剤層の総重量当たりの乳酸含有量が10.00%)。乾燥後、剥離処理を施した剥離ライナーを別に用意しこれの剥離処理を施した面に張り合わせ、貼付製剤を得た。
【0143】
[類縁物質の生成率]
貼付製剤を、70℃で1週間保存した後の貼付製剤中の薬物をメタノールで抽出し、HPLCで分析して、薬物の総類縁物質の生成率を調べた。薬物の総類縁物質の生成率は、HPLCのチャートから、式:[(薬物の類縁物質に相当するピーク面積の総和)/(薬物に相当するピーク面積)]×100による面積%で算出した。
【0144】
[着色]
貼付製剤を、70℃で1週間保存した後の貼付製剤の色彩を目視により評価した。
【0145】
【表2】
【0146】
表2の結果から、BHT、2−メルカプトベンズイミダゾール及び没食子酸プロピルは化合物Aの総類縁物質の生成抑制および製剤の着色抑制効果が顕著であり、化合物A含有貼付製剤を安定化させるものであることが分かった。これに対し、ベンゾトリアゾール、L−アスコルビン酸、エデト酸ナトリウムは貼付製剤の安定化剤として比較的よく用いられているものであるが、化合物A含有貼付製剤に対する安定化効果は認められなかった。
【0147】
[実施例6A]〜[実施例10A]及び[比較例6A]〜[比較例9A]
後記の表3に示される組成としたほかは、実施例1Aと同様にして、[実施例6A]〜[実施例10A]及び[比較例6A]〜[比較例9A]の貼付製剤を得た。
表中、2−MBIとあるのは、2−メルカプトベンズイミダゾールを示す。
【0148】
【表3】
【0149】
[実施例6A]〜[実施例10A]及び[比較例6A]〜[比較例9A]の貼付製剤の、類縁物質の生成率の算出及び着色の評価は、前記の方法と同様の方法により行った。これらの結果を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
実施例6A、7Aに示すように、2−メルカプトベンズイミダゾール及び没食子酸プロピルは化合物Aの総類縁物質の生成抑制および製剤の着色抑制効果が顕著であり、化合物A含有貼付製剤を安定化させるものであることが分かった。これに対し、比較例6A〜8Aに示すように、ベンゾトリアゾール、L−アスコルビン酸、エデト酸ナトリウムは、化合物A含有貼付製剤に対する安定化効果は認められなかった。
実施例8A〜10Aに示すように、粘着剤層中のBHTの含有量を変化させた貼付製剤では、粘着剤層100重量%中、0.3〜5重量%のBHTの量が、化合物Aの総類縁物質の生成抑制および製剤の着色抑制効果が顕著であり、化合物A含有貼付製剤を安定化させることが確認された。
【0152】
以下に挙げる実施例1B〜15B及び比較例1B〜3Bは、第2の本発明に関するものである。
[アクリル系ポリマーAの調製]
第1の本発明に関する実施例と同様にして、アクリル系ポリマーAの溶液を調製した。
【0153】
[実施例1B]
55.94部のアクリル系ポリマーA、6.46部の化合物A、17.77部のミリスチン酸イソプロピル(以下「IPM」)、14.54部のゴマ油、0.97部の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下「BHT」)、1.26部のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリン(商品名)タイプ:UFL2、富士化学工業製)を、適量の酢酸エチルを加えて均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として0.06部の三官能性イソシアネート(コロネートHL(日本ポリウレタン工業製)を加え、酢酸エチルでベース濃度を24重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行い、塗工液を得た。得られた塗工液をシリコーン系剥離剤にて剥離処理を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」)製フィルムの剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが120μmとなるように塗工し、乾燥を行い粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層の粘着面を、厚さ3.5μmのPETフィルムと、目付量12g/m
2のPET不織布とを積層した支持体の不織布側に貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を有する積層体を調製した。放置後、この架橋粘着剤層を有する積層体の剥離ライナーを剥離し、97部の架橋粘着剤層に対して、乳酸の最終含有量が3部となるように、架橋粘着剤層に乳酸を含有させた。その後、前記剥離ライナーと同じ剥離ライナーを別に用意しこれを、架橋粘着剤層の粘着面に貼り合わせして実施例1Bの貼付製剤を得た。
なお、上記ベース濃度(w%)とは、塗工液重量(g)から酢酸エチルの重量(g)を引いた重量(g)を、塗工液重量(g)で除した値に100を乗じた値(重量%)である。
【0154】
[実施例2B]〜[実施例11B]及び[比較例1B]〜[比較例3B]
後記の表5に示される組成および粘着剤層の厚みとしたほかは、実施例1Bと同様にして、[実施例2B]〜[実施例11B]及び[比較例1B]〜[比較例3B]の貼付製剤を得た。
表中、PVPとあるは、ポリビニルピロリドンであるKollidon(登録商標)K90(K値=90、重量平均分子量約1,250,000)(BASF製)を示し、EPOとあるは、アミノアルキルメタクリレートコポリマーであるEUDRAGIT(登録商標)E100の微粒子型であるEUDRAGIT(登録商標)EPO(Evonic−Degussa製)を示す。
【0155】
<試験例>
[接着力測定試験]
第1の本発明に関する実施例と同様の方法で行った。これらの結果を表5に示す。
【0156】
[保持力測定試験]
10mm、長さ50mmに切断したサンプルの一端約25mmをベークライト(フェノール樹脂)板に重さ850gのローラーを一往復させて圧着し、逆の一端を補助紙で補強する。これを40±2℃の温度で安定した装置内のフックに取り付け30分放置した後、荷重(300g)を取り付け、自然落下するまで放置する。その際の保持時間を測定した。実験はn=3で行い、計3点を平均した。これらの結果を表5に示す。
【0157】
[定荷重剥離試験]
12mm、長さ50mmに切断したサンプルの一端を約5mm剥がし補助紙を付けて補強する。ベークライト(フェノール樹脂)板にこの試験片を重さ850gのローラーを一往復させて圧着し、30分経過後、試験片の貼り付けた部分の長さが30mmになるまで試験片を試験板から剥がす。この試験片を40±2℃の水浴中の試験架台上に水平に置いた状態で、30gの荷重を補助紙に取り付け、試験片が試験板から落下するまでの時間を計測し、製剤の水存在下での剥離速度を求めた。ただし30分経過しても試験片が落下しない場合は30分時点での剥離長さを定規で計測する。実験はn=3で行い、計3点を平均した。これらの結果を表5に示す。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例1B〜7Bは、アクリル系ポリマーA、IPM、および架橋剤の量がほぼ同等であるところ、実施例1B〜7Bはいずれも、比較例1Bと比較して、定荷重剥離試験における水存在下での剥離速度が遅く、実施例1B〜7Bのようにメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する貼付製剤は水存在下での接着性が優れていることが実証された。
【0160】
実施例5B〜7Bに示すように、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムに対する乳酸の量を変化させた貼付製剤では、1重量部の乳酸に対して、0.6〜2.0重量部のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量が、水存在下での皮膚への接着性が優れていることが確認された。ただし、乳酸の量に比して、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量が多くなると、保持力が高く、粘着剤層がやや硬くなっていることが示唆された。
【0161】
実施例8B、9Bおよび10Bの定荷重剥離試験における水存在下での剥離速度はいずれも実用上十分に遅いものであり、これらは水存在下での良好な接着性を示した。また、実施例10Bにおけるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量と比較して、比較的多量にポリビニルピロリドンを含有する実施例8Bは、接着力は実施例10Bとほぼ同等であったにもかかわらず、定荷重剥離試験における水存在下での剥離速度が若干速くなり、実施例10Bにおけるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムの量と同量のアミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有する実施例9Bについても同様の傾向がみられた。
粘着剤層が架橋されていない実施例11Bにおいても、定荷重剥離試験結果が良好であり、水存在下での剥離速度が低いことから、水存在下での皮膚への接着性が優れていることが確認された。
【0162】
[実施例12B]〜[実施例15B]
後記の表6に示される組成および粘着剤層の厚みとしたほかは、実施例1Bと同様にして、[実施例12B]〜[実施例15B]の貼付製剤を得た。
[実施例12B]〜[実施例15B]の貼付製剤の接着力測定試験、保持力測定試験、定荷重剥離試験は、前記の方法と同様の方法により行った。これらの結果を表6に示す。
[実施例12B]〜[実施例15B]の貼付製剤の、類縁物質の生成率の算出及び着色の評価は、第1の本発明に関する実施例と同様の方法で行った。これらの結果を表7に示す。
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
表6の結果から、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する貼付製剤は水存在下での接着性が優れていることが実証された。
また、表7に示すように、粘着剤層中のBHTの含有量を変化させた貼付製剤では、粘着剤層100重量%中、0.3〜5重量%のBHTの量が、化合物Aの総類縁物質の生成抑制および製剤の着色抑制効果が顕著であり、化合物A含有貼付製剤を安定化させることが確認された。