(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6100961
(24)【登録日】2017年3月3日
    
      
        (45)【発行日】2017年3月22日
      
    (54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K   5/02        20060101AFI20170313BHJP        
【FI】
   H05K5/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
      (21)【出願番号】特願2016-171819(P2016-171819)
(22)【出願日】2016年9月2日
    【審査請求日】2016年11月7日
【早期審査対象出願】
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000105501
【氏名又は名称】ココリサーチ株式会社
          (74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】山形  康文
              
            
        
      
    
      【審査官】
        石坂  博明
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開2016−201406(JP,A)      
        
        【文献】
          実開昭56−154093(JP,U)      
        
        【文献】
          特開平09−036555(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K      5/00−5/06
              7/14
G01D    11/24
G12B      9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  側面に鋸歯状のラックが形成されている柱体である筐体と、
  前記筐体の正面に設けられ、前記筐体の正面及び背面より大きく形成されるパネルと
を具備する電子機器本体と、
  前記筐体を構成する前記柱体の底面から嵌め込まれて筐体を構成する前記柱体の前記側面を平行移動可能な本体部と、
  前記パネルと協働して任意の板等を挟み込む押圧部材と、
  前記押圧部材と前記本体部との間に設けられた弾性部材と、
  前記本体部に形成される梁と、
  前記梁の一部に形成され、前記ラックと噛み合う歯止めを有する係止部材と、
  前記係止部材に対し傾斜しており、前記梁を中心に前記係止部材を回動させて前記梁を弾性変形させるレバーと
を具備する固定部材
よりなる電子機器。
【請求項2】
  前記筐体は長方形形状であり、
  前記筐体の天面及び底面の、側面に近い部分にレール溝が設けられており、
  前記本体部は前記レール溝に嵌合する突起を有し、前記筐体の前記側面に嵌め込まれて前記筐体の前記側面を平行移動可能である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
  前記固定部材は、剛性と弾性を兼ね備えた材料にて一体成形される、請求項1に記載の電子機器。
 
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、電子機器に関する。
  より詳細には、電子機器本体を任意の板に取り付けて固定するための固定部材を有する電子機器に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  出願人は、主に工場等の産業設備において、電圧、周波数、回転数等の様々な信号のアナログ値を数値化してデジタル表示する表示装置を製造販売している。この表示装置は、ユーザが自身の設備に容易に組み込むことができるように、ネジを使わない固定機構を有している。
【0003】
  図6と
図7を参照して、出願人が製造販売している表示装置の固定機構について、説明する。
  
図6は、表示装置601を所定の板602に取り付ける手順を説明する概略図である。
  
図6に示すように、長方形形状の表示装置601には、その正面に樹脂製の筐体601aより一回り大きい樹脂製のパネル601bが固定されている。筐体601aの側面601cには、後述する固定部材と噛み合う鋸歯状のラック601d(rack:歯竿)が形成されている。なお、楕円枠内はラック601dを一部拡大した図である。
【0004】
  図6では、表示装置601を任意の板602に取り付ける最初の手順を説明する。
  先ず、予め任意の板602に筐体601aと略同一サイズの穴602aを開け、その穴602aに筐体601aを裏面側から挿し込む。この穴602aは、表示装置601のパネル601bが素通りできない大きさであることが必要である。
【0005】
  図7Aは、表示装置601を板602に取り付けた状態を横方向から見た概略図である。
図7Bは、板602に取り付けた表示装置601を後方から見た一部概略図である。
図7Cは、表示装置601を板602に取り付ける状態を説明する断面図である。
  
図7Aに示すように、
図6において板602に挿し込まれた表示装置601の裏面側から、固定部材701を挿し込む。固定部材701は、ポリカーボネイト等の、剛性と弾性を兼ね備える樹脂で一体成形されている。固定部材701の前方側には、板602を表示装置601のパネル601bと挟み込むための押圧部材701aが形成されている。押圧部材701aは、パンタグラフ形状の弾性変形する弾性部材701bを介して、把持部701cに繋がる。
【0006】
  固定部材701に設けられている把持部701cには、
図7Bに示すように、表示装置601の天面及び底面の、側面601cに近い部分に設けられるレール溝601e、601fと嵌合する突起701e、701fが設けられている。そして
図7B及び
図7Cに示すように、把持部701cの中心には、その先端に、筐体601aの側面601cに設けられているラック601dと噛み合う歯止め701g(爪)を有する、弾性変形する係止部材701hが設けられている。
【0007】
  図7Cに示すように、ラック601dの歯は一方の辺が筐体601aの正面側に傾斜し、他方の辺が垂直に形成されている。把持部701cに設けられている係止部材701hの先端に設けられている歯止め701gは、このラック601dの歯と噛み合う。固定部材701を筐体601aの後方側から差し込み、先端の押圧部材701aを壁の裏側に押し付けると、弾性部材701bの反発力がパネル601bと協働して壁を挟み込む。固定部材701は係止部材701hの歯止め701gとラック601dの歯が噛みあうことで、表示装置601から抜け落ちなくなる。すなわち、係止部材701hとラック601dは、ラチェットを構成する。
【0008】
  特許文献1には、本発明の従来技術に類似する、フック爪を有する電子機器の技術内容が開示されている。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−36555号公報
【特許文献2】実開昭63−60919号公報
【特許文献3】実開昭57−130503号公報
【特許文献4】実公昭18−2941号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
  図6及び
図7にて説明したように、表示装置601は固定部材701を用いて、ネジを用いずとも容易に任意の板602や壁等に取り付けることができる。この固定機構は、ラック601dの長さが許す限り、板602の厚さに対しかなり柔軟に対応が可能である。ネジを用いる場合、このような取り付ける部材の厚みに対し、柔軟に対応することは容易ではない。
  しかし、この固定部材701の係止部材701hは堅牢かつ強固に形成されており、取り外しが容易でない、という問題がある。
【0011】
  本発明はかかる課題を解決し、従来品と同様に筐体を固定する機能を保ちつつ、容易に取り外しができる固定部材を用いる電子機器を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0012】
  上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、電子機器本体と固定部材よりなる。
  電子機器本体は、天面及び底面の、側面に近い部分にレール溝が設けられていると共に、側面に鋸歯状のラックが形成されている、長方形形状の筐体と、筐体の正面に設けられ、筐体の正面及び背面より大きく形成されるパネルとを具備する。
  固定部材は、レール溝に嵌合する突起を有し、筐体の側面に嵌め込む本体部と、本体部の前方に形成され、パネルと協働して任意の板等を挟み込む押圧部材と、押圧部材と本体部との間に設けられ、弾性変形する弾性部材と、本体部の後方に形成される梁と、梁の中心に形成され、ラックと噛み合う歯止めを有する係止部材と、係止部材に対し傾斜しており、梁を中心に係止部材を回動させて梁を弾性変形させるレバーとを具備する。
 
【発明の効果】
【0013】
  本発明により、従来品と同様に筐体を固定する機能を保ちつつ、容易に取り外しができる固定部材を用いる電子機器を提供することができる。
  上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る表示装置と固定部材の外観斜視図である。
 
【
図3】固定部材の上面図と、正面図と、側面図と、裏面図である。
 
【
図5】表示装置を板に取り付けた状態を横方向から見た概略図と、板に取り付けた表示装置を後方から見た一部概略図と、表示装置を板から取り外す状態を説明する断面図と、表示装置を板から取り外す際に固定部材が変形する状態を説明する断面図である。
 
【
図6】表示装置を所定の板に取り付ける手順を説明する概略図である。
 
【
図7】表示装置を板に取り付けた状態を横方向から見た概略図と、板に取り付けた表示装置を後方から見た一部概略図と、表示装置を板に取り付ける状態を説明する断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0015】
  図1は、本発明の実施形態に係る表示装置101と固定部材102の外観斜視図である。
  
図2は、固定部材102の外観斜視図である。
  
図3Aは、固定部材102の上面図である。
図3Bは、固定部材102の正面図である。
図3Cは、固定部材102の側面図である。
図3Dは、固定部材102の裏面図である。
 
【0016】
  図1に示す表示装置101(電子機器本体)は、表示装置101の天面及び底面の、側面に近い部分にレール溝101e、101f(
図5B参照)、101gが設けられる点、及び表示装置101の筐体101aの側面101cに、固定部材102と噛み合う鋸歯状のラック101dが形成されている点は同じである。そして、レール溝101e、101fに対応する固定部材102も、従来技術に係る固定部材701(
図7参照)と同様に、表示装置101のレール溝101e、101fと嵌合する突起102e、102fが設けられている。
 
【0017】
  図1、
図2及び
図3に示す固定部材102は、従来技術に係る固定部材701と同様、ポリカーボネイト等の、剛性と弾性を兼ね備える樹脂で一体成形されている。固定部材102の前方側には、板等を表示装置101のパネル101bと挟み込むための押圧部材102aが形成されている。押圧部材102aは、略楕円形状の弾性変形する弾性部材102bを介して、コの字状の本体部102cに繋がる。弾性部材102bは、
図7に示した従来のものと若干形状は異なるものの、弾性変形する機能は等しい。
  なお、固定部材102の材質は、ポリカーボネイトに限らない。剛性と弾性を兼ね備える材質であれば、ポリカーボネイト以外の樹脂でもよいし、また樹脂に限らず、ステンレスやクロムモリブデン鋼等の金属薄板を板金加工して形成してもよい。
 
【0018】
  図1、
図2及び
図3に示す固定部材102の、
図7にて説明した従来技術に係る固定部材701との大きな違いは、歯止め102gを有する、弾性変形する係止部材102hの形状である。
  コの字状の本体部102cの後方には梁102dが設けられ、係止部材102hはこの梁102dの中心に形成される。そして、係止部材102hは梁102dと相対するレバー102iを有する。
図2、
図3C及び
図4を見て判るように、レバー102iは、本体部102c及び係止部材102hに平行な平面に対して、傾斜している。
  係止部材102hの先端には、筐体101aの側面101cに設けられているラック101dと噛み合う歯止め102gが設けられている。
 
【0019】
  図5C及び
図5Dにて後述するが、ラック101dの歯は
図7Cのラック601dと同様に、一方の辺が筐体101aの正面側に傾斜し、他方の辺が垂直に形成されている。係止部材102hの先端に設けられている歯止め102gは、このラック101dの歯と噛み合う。固定部材102を筐体101aの後方側から差し込み、先端の押圧部材102aを壁の裏側に押し付けると、弾性部材102bの反発力がパネル101bと協働して壁を挟み込む。固定部材102は係止部材102hの歯止め102gとラック101dの歯が噛みあうことで、表示装置101から抜け落ちなくなる。すなわち、係止部材102hとラック101dは、ラチェットを構成する。
 
【0020】
  図4は、固定部材102の動作を説明する断面図である。
  
図5Aは、表示装置101を板602に取り付けた状態を横方向から見た概略図である。
図5Bは、板602に取り付けた表示装置101を後方から見た一部概略図である。
図5Cは、表示装置101を板602から取り外す状態を説明する断面図である。
図5Dは、表示装置101を板602から取り外す際に固定部材102が変形する状態を説明する断面図である。
 
【0021】
  一目見て判るように、
図5A及び
図5Bは、従来技術における
図7A及び
図7Bと略同じである。すなわち、本発明の実施形態に係る固定部材102は、表示装置101を固定する機能において、
図7にて説明した従来技術に係る固定部材701と変わらない。
  本発明の実施形態に係る固定部材102の、従来技術に係る固定部材701に対する優位点は、表示装置101を板から取り外す際の機能である。
  
図4、
図5C及び
図5Dに示すように、係止部材102hはテコの原理により、傾斜しているレバー102iを押すことで、梁102dを中心にシーソー的に回動する。この時、梁102dには捻じれの弾性変形が生じる。すると、表示装置101の筐体101aの側面101cに設けられているラック101dと噛み合う係止部材102hの解除ができる。
 
【0022】
  図7にて説明した従来技術に係る固定部材701は、表示装置601を取り外す際に、押圧部材701aに形成される係止部材701hをラック601dから外すための力の方向が、係止部材701hを表示装置601から引き剥がす方向であった。このため、ラック601dから係止部材701hを外すための力が入れにくい。これに比べると、本発明の実施形態に係る固定部材102は、表示装置101を取り外す際に、押圧部材102aに形成される係止部材102hを外すための力の方向が、レバー102iを表示装置101へ押さえつける方向である。ラック101dから係止部材102hを外すには、レバー102iを筐体101aへ押し付けるだけでよく、またテコの原理により僅かな力で係止部材102hを外すことができる。
 
【0023】
  本発明の実施形態では、表示装置101を任意の板や壁等に固定するための固定部材102を開示した。
  表示装置101の筐体101aの側面101cに設けられているラック101dと、固定部材102の係止部材102hの先端に設けられている、ラック101dに噛み合う歯止め102gは、ラチェットを構成する。係止部材102hはレバー102iを押すことで、弾性変形する梁102dを中心に回動する。固定部材102は、レバー102iを筐体101aの方向へ軽く押し込むだけで、ラチェットの解除ができる。
 
【0024】
  本発明の実施形態においては、表示装置101と固定部材102がレール溝101e、101f、101g及び突起102e、102fによって筐体側面101cに嵌合する形態が開示されたが、応用例として、例えば天面及び底面において嵌合してもよい。また、本発明の実施形態においてはそれぞれの筐体側面101cについて1つずつ、合計2つの固定部材102を有する形態が開示されたが、応用例として、例えば両側面に配置していた固定部材を一体102として、コの字状又は筒状に形成してもよい。この場合、必ずしも筐体101aにレール溝101e、101f、101gは必要ではなくなる。
  すなわち、筐体101aが楕円柱や四角柱等の柱体であり、固定部材102が筐体101aを構成する柱体の側面を巻回する形状であり、固定部材102が筐体101aを構成する柱体の底面の中心から回動できない構造であれば、筐体101aにレール溝を設けなくとも、固定部材102は柱体である筐体101aの側面を平行移動することができる。そして、筐体101aの側面の一部に形成したラック101dと、ラチェットを構成することもできる。
 
【0025】
  以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
 
 
【符号の説明】
【0026】
  101…表示装置、101a…筐体、101b…パネル、101c…側面、101d…ラック、101e、101f、101g…レール溝、102…固定部材、102a…押圧部材、102b…弾性部材、102c…本体部、102d…梁、102e、102f…突起、102g…歯止め、102h…係止部材、102i…レバー、602…板、602a…穴
 
 
【要約】
【課題】従来品と同様に筐体を固定する機能を保ちつつ、容易に取り外しができる、電子機器のための固定部材と、この固定部材を用いる電子機器を提供する。
【解決手段】表示装置の筐体の側面に設けられているラックと、固定部材の係止部材の先端に設けられている、ラックに噛み合う歯止めは、ラチェットを構成する。係止部材はレバーを押すことで、弾性変形する梁を中心に回動する。固定部材は、レバーを筐体の方向へ軽く押し込むだけで、ラチェットの解除ができる。
【選択図】
図1