(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被覆工程においては、第1温度にて前記立体成型物と前記保護フィルムとを仮接着し、前記仮接着後において前記第1温度よりも大なる第2温度にて前記立体成型物と前記保護フィルムとを本接着を行う請求項1または2に記載の立体成型部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明による立体成型部品及びその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、立体成型部品及びその構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、一例を示す場合もあり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0018】
先ず、
図1に示すように、樹脂基材である熱可塑性樹脂フィルム1を準備する(樹脂基材準備工程)。熱可塑性樹脂フィルム1としては、例えば、ポリイミド又はポリエチレンテレフタラート等の公知の樹脂フィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂フィルム1の厚みには限定はなく、本発明の立体配線部品に該当する本実施例の立体配線基板の用途及び要求される特性に応じて適宜変更することができる。例えば、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1の厚みを約125μm程度(75μm以上150μm以下)に調整したが、立体配線基板を他のモールド樹脂等の保持部材とともに使用する場合には、50μm以下に調整してもよい。
【0019】
なお、準備する樹脂フィルムは熱可塑性タイプに限定されることなく、比較的に大きな破断伸びを備える樹脂フィルムであれば、熱硬化性樹脂フィルム、或いは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を積層した(すなわち、熱可塑性樹脂フィルムと熱硬化性樹脂フィルムとを貼り合わせた)構造を備える複合樹脂フィルムを用いてもよい。ここで、比較的に大きな破断伸びとは、少なくとも50%以上の値であり、好ましくは150%以上である。破断伸びについては成型する立体形状により必要な特性が要求され、複雑で大きな段差形状を持つ場合には立体成型による材料が耐えられる様に、より大きな破断伸び強度を持つ樹脂フィルム材が必要となる。
【0020】
次に、
図2に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表裏面(第1の面1a、及び第2の面1b)における導通を確保するために、NC加工、レーザ加工、又はパンチング加工等の開口技術を用いて貫通孔2を形成する。本実施例においては、貫通孔2の開口径を約0.3mmとした。なお、
図2においては、1つの貫通孔2のみが示されているが、実際の立体配線基板においては複数の貫通孔2を有することになる。また、貫通孔2の数量は、立体配線基板の回路構成に応じて適宜変更することもできる。更に、後述する立体成型時の位置決めとして使用するための位置決め孔(例えば、開口径が3mm)を、熱可塑性樹脂フィルム1の外縁部分(すなわち、最終的に立体配線基板を構成することなく除去される部分)に形成してもよい。
【0021】
次に、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a、第2の面1b、及び貫通孔によって露出した熱可塑性樹脂フィルム1の側面1cを被覆するように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に第1金属膜3を形成する(第1金属膜形成工程)。本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に、公知の分子接合技術を利用した無電解めっきによって金属をメタライジングする。
【0022】
より具体的には、先ず、前処理として、熱可塑性樹脂フィルム1にArプラズマ処理を施し、熱可塑性樹脂フィルム1の表面の脆弱層を除去し、後述する分子接合剤と相性のよい官能基を熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に形成する。その後、Arプラズマ処理後の熱可塑性樹脂フィルム1を分子接合剤4の溶液に浸ける(
図3)。ここで、分子接合剤4は熱可塑性樹脂フィルム1と反応する官能基(第1官能基)を備えているため、熱可塑性樹脂フィルム1の官能基と分子接合剤4の官能基とか結びつき、
図4及び
図5に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面上に分子接合剤4が結合した状態が得られる。なお、
図4においては分子接合剤4をわかり易く示す観点から層状に図示しているが、実際には
図5に示すようなナノレベルの状態(分子接合剤4の厚みが数nm)で存在しており、他の材料と比較して非常に薄くなっている。よって、
図9以降では分子接合剤4を省略することがある。また、
図5における分子接合剤4の上下に伸びる直線は官能基を示し、より具体的には、熱可塑性樹脂フィルム1に向かって伸びた直線が熱可塑性樹脂フィルム1の官能基と結びついた状態の分子接合剤4の官能基を示し、熱可塑性樹脂フィルム1とは反対側に伸びた直線が第1金属膜3の金属と反応することになる分子接合剤4の官能基を示している。
【0023】
次に、分子接合処理がなされた熱可塑性樹脂フィルム1をキャタリスト液(Sn−Pdコロイド水溶液)に含浸する(
図6)。ここで、Sn−Pdコロイドは、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に電気的に吸着される。その後、Sn−Pdコロイドが表面に担持した状態の熱可塑性樹脂フィルム1をアクセラレータ液に含浸すると、Pdの周囲を覆っていたSnが除去され、Pdイオンが金属Pdに変化する(
図7)。すなわち、触媒処理を行って熱可塑性樹脂フィルム1に触媒(例えばPd)を担持させることになる。なお、アクセラレータ液としては、シュウ酸(0.1%程度)を含む硫酸(濃度が10%)を用いることができる。その後、触媒であるPdを担持した熱可塑性樹脂フィルム1を無電解めっき槽に例えば5分間浸漬する。当該浸漬により、Pdを触媒として例えば銅が析出し、析出した銅が分子接合剤4と結合することになる(
図8)。ここで、分子接合剤4は、第1金属膜3の金属と反応する官能基(第2官能基)も備えているため、分子接合剤4の熱可塑性樹脂フィルム1と結合している端部とは反対側に位置する端部(第2官能基)には、触媒を利用して金属が化学的に結合する。続いて、熱可塑性樹脂フィルム1に150℃、10分の加熱処理を施して、分子接合剤4と当該金属との化学結合を終結させ、
図9に示すように、熱可塑性樹脂フィルム1の表面を覆うように、第1金属膜3の形成(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3との分子接合)が完了する。
【0024】
ここで、上述した分子接合剤4とは、樹脂と金属等を化学的に結合させるための化学物であり、樹脂と結合する官能基と金属と結合する官能基が一つの分子構造中に存在するものである。また、分子接合技術とは、このような構造を備える分子接合剤4を用いて、樹脂と金属等を化学的に結合させる技術である。そして、これらの分子接合剤、及び分子接合技術は、特許第04936344号明細書、特許第05729852号明細書、及び特許第05083926号明細書において、より詳細に説明がなされている。
【0025】
本実施例においては、第1金属膜3の金属として銅を用い、
図10に示すように、無電解めっきは粒子状に生成され、銅の粒子3aによってポーラス状に第1金属膜3が形成される。ここで、ポーラス状とは、第1金属膜3が膜上に完全に形成される膜厚を備えることがないものの、粒子どうしが全部ではないものの少なくとも一部が接触することによって膜全体として導通している状態をいう(必ずしも電気的な導通が必要というわけではなく、立体成型で粒子間距離が離れても、後述する第2金属膜で導通されれば良い。)。これらのことを換言すると、本実施例においては、銅を粒子状に0.02μm以上0.20μm以下堆積し、光を透過することができる膜厚を備える第1金属膜3を形成している。このように第1金属膜3の状態(すなわち、膜厚)を調整する理由は、光を透過しない完全な膜状に第1金属膜3を形成してしまうと、後述する立体成型の際に第1金属膜3に亀裂が生じたとしても、後述する第2金属膜によっても当該亀裂の修復が困難になるからである。より具体的には、第1金属膜3が0.02μmより薄いと、樹脂と銅の接点が減少し密着が低下するとともに、伸ばされた後の粒子間距離がはなれすぎ後述する第2金属膜での導通修復が困難になる。また、光を透過する状態で伸ばされた場合、粒子間の距離が空くだけなので亀裂は小さいが、光が透過しない完全な膜状で伸ばされると限界をこえた金属膜(第1金属膜3)には亀裂が生じ幅の広いクラックとなる。なお、
図10においては、第1金属膜3の膜厚方向には1つの粒子3aのみが存在するように示されているが、第1金属膜3がポーラス状であれば、複数の粒子3aが膜厚方向に積層してもよい。
【0026】
第1金属膜3がポーラス状に形成される工程を、以下においてより詳細に説明する。
図8に示した銅が析出を開始した状態から更に銅の析出を続けると、新たに析出する銅は、分子接合剤4と、又は既に析出して分子接合剤4と反応している銅と金属結合をする。この際、銅の自己触媒作用によって触媒であるPdの方が活性度が高いため、銅の生成は面方向(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に広がる方向)に進むことになるものの、厚み方向(すなわち、第1金属膜3の膜厚方向)にも進み始めることになる。そして、銅の自己触媒作用が始まると、銅が順次析出して銅どうしの金属結合が進むことになり、銅の成長は厚み方向により進み、膜厚が増加することになる。この状態においては、
図11に示すように、銅の存在しない空隙部分が存在し、部分的には電気的導通が得られていない部分があるものの、形成された金属膜全体としては電気的な接続経路が存在するため電気的導通が得られている。上述したように、このような状態が、本実施例におけるポーラス状ということになる。そして、このようなポーラス状の第1金属膜3においては、銅の破断伸び率を超えても、大きなクラックが発生することなく、部分的に銅分子どうしの距離が若干広がるに留まることになる。
【0027】
また、本実施例においては、分子接合剤4を介して、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3とを化学結合しているため、熱可塑性樹脂フィルム1と第1金属膜3と界面を平滑にしつつも、両部材を強固に接合することができる。これにより、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に凹凸を形成する必要がなくなり、製造工程の容易化及び製造コストの低減ならびに形成する配線回路の高精細化を図ることができる。なお、使用する分子接合剤は1種類に限定されることなく、例えば、分子接合剤4と当該分子接合剤4及び第1金属膜3と反応する官能基を備える他の分子接合剤とを混合して形成した化合物であってもよく、熱可塑性樹脂フィルム1及び第1金属膜3の材料に応じて、他のプロセス条件を含め適宜変更することができる。
【0028】
また、第1金属膜3の材料は、銅に限定されることなく、例えば、銀、金、又はニッケル等の様々な金属、或いはこれらの金属及び銅のいずれかを少なくとも含む合金や各金属を積層したものを用いてもよいが、比較的にやわらかく破断伸び強度の高い金属を用いることが好ましい。ここで、使用する金属に応じて、光を透過し且つ導通している状態を実現するための膜厚が異なるため、他の金属を用いる場合には、第1金属膜3がポーラス状に形成されることを実現できるように、膜厚を適宜調整することになる。
【0029】
更に、第1金属膜3の形成方法については、上述した分子接合技術を用いた方法に限定されることなく、第1金属膜3をポーラス状に形成することができれば、例えば、スパッタ、蒸着、又は分子接合を使用する方法以外の湿式めっき等の成膜技術を用いてもよい。そして、第1金属膜3の形成については、使用される金属材料に応じて、最適な成膜技術を選択してもよい。
【0030】
なお、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a、第2の面1b、及び貫通孔によって露出した熱可塑性樹脂フィルム1の側面1cを被覆するように、第1金属膜3を形成していたが、要求される立体配線基板の構造及び特性に応じて、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a又は第2の面1bのいずれかのみに第1金属膜3を形成してもよい。すなわち、本発明の立体配線基板には、両面に配線パターンが形成されたもののみならず、片面のみに配線パターンが形成されているものが含まれることになる。
【0031】
次に、
図12に示すように、フォトリソグラフィによって第1金属膜3にパターニング処理を施し、所望の配線パターンを形成する(パターン形成工程)。具体的には、第1金属膜3が形成された状態であって立体成型前の平坦な状態の熱可塑性樹脂フィルム1の表面にレジストフィルムを熱圧着し、所定のパターンが印刷されたマスクフィルムを用いて露光及び現像を行う。続いて、現像されたレジストフィルムをエッチングマスクとして第1金属膜3にエッチングを施して所望の配線パターンを形成する。その後に、当該レジストフィルムを剥離除去する。ここで、後述する立体成型による第1金属膜3の伸び及び変形を考慮して、配線パターンの形状(配線幅、配線長、配線間隔等)を調整しておくことが好ましい。
【0032】
このように、フォトリソグラフィによって第1金属膜3にパターニングを施すため、インクジェット印刷技術又はグラビアオフセット印刷技術等を用いたパターニング形成よりも高精細なパターンを実現することができる。すなわち、第1金属膜3は、インクジェット印刷技術又はグラビアオフセット印刷技術等を用いてパターンニングされた配線パターンよりも、解像度が高く(すなわち、直線性が優れ高精細な配線形成が実現される。)なる。
【0033】
次に、第1金属膜3が形成された状態の熱可塑性樹脂フィルム1に対して、加熱処理及び加圧処理を施して立体成型を行う(第1の立体成型工程)。具体的な第1の立体成型工程としては、先ず、上述した位置決め孔を用いて、成型用の金型11に対して熱可塑性樹脂フィルム1の位置決めを行う。これは、成型位置と配線パターン位置を合わせるためのものである。すなわち、
図13に示すように、金型11の上部金型12と下部金型13との間に熱可塑性樹脂フィルム1を配置することになる。続いて、
図14に示すように、上部金型12を上部加熱装置14で加熱するとともに、下部金型13を下部加熱装置15によって加熱を行う。ここで、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1にポリイミドフィルムを用いているため、加熱温度は材料のガラス転移点温度より高い270℃〜350℃の範囲内(例えば、300℃)で調整することができるが、熱可塑性樹脂フィルム1の材料に応じて当該加熱温度は適宜調整されることになる。ここで、加熱温度は、当該ガラス転移温度以上であって、熱可塑性樹脂フィルム1の耐熱温度以下であることが必要となるが、当該範囲内においてできる限り低い温度に設定することが好ましい。これは、熱可塑性樹脂フィルム1上に形成される第1金属膜3と熱可塑性樹脂フィルム1の加熱による密着低下を低減するためである。
【0034】
当該加熱処理を行いつつ、上部金型12及び下部金型13を近づけ、熱可塑性樹脂フィルム1に対して、上下から所望の圧力(例えば、10MPa)によってプレス処理を行う(
図15)。なお、所望の圧力とは、熱可塑性樹脂フィルム1の材料、圧力が弱すぎると所望の立体成型が困難になる点を考慮して適宜調整することになる。そして、プレス処理の完了後に、熱可塑性樹脂フィルム1を金型11から取り出し(
図16)、熱可塑性樹脂フィルム1の立体成型が完了する。換言すると、立体配線基板用の第1基材16の形成が完了する。なお、
図13乃至
図16において、第1金属膜3の図示は省略している。また、要求される立体形状にもよるが、実際の立体配線基板の形状は複数の凹凸が形成されることになるため、金型11も複数の凹凸を有しており、上部金型12と下部金型13との複数の凹凸が互いに嵌合するような構造が採用されてもよい。
【0035】
図17に示されているように、立体成型が完了した熱可塑性樹脂フィルム1(すなわち、立体配線基板用の第1基材16)には、立体成型によって屈曲した屈曲部1dに亀裂17が生じやすくなっている。ここで、
図18に示すように、亀裂17とは、第1金属膜3を構成する銅の粒子3aの粒子間距離の拡大によって生じる隙間のことであり、光が透過しない完全な金属膜状において当該金属膜が伸ばされることによって生じる亀裂と比較して、その構造が異なっている。なお、第1金属膜3の成膜状態、及び立体成型による三次元形状によっては、亀裂が発生しない場合もある。また、
図18に示すように、亀裂17は、熱可塑性樹脂フィルム1が伸ばされたのに対し、第1金属膜3はそれに従って粒子間距離が広がることになるが、第1金属膜3がポーラス状に形成されているため、亀裂17自体の深さは粒子3aの寸法と同等であって非常に小さくなり、更には第1金属膜3が完全な膜状にて形成される場合と比較して亀裂17の幅も小さくなる。すなわち、本実施例に係る立体配線基板用の第1基材16は、第1金属膜3が完全な膜状にて形成される場合と比較して、亀裂17の修復をより容易に可能とする状態になっている。換言すれば、光を透過する状態で伸ばされた場合、粒子間の距離が空くだけなので亀裂17(粒子間の隙間)は小さいが、光が透過しない完全な膜状で伸ばされると限界をこえた金属膜には亀裂が生じ幅の広いクラックが生じることになる。
【0036】
また、屈曲部1dにおける亀裂17の発生を減少させる方法として、熱可塑性樹脂フィルム1を2枚の保護フィルムによって挟んだ状態において、上述した立体成型を行ってもよい。これにより、屈曲部1dにおける角部1eの形状を若干滑らかにすることができ、亀裂17の発生を抑制することができる。ここで、当該保護フィルムは、熱可塑性樹脂フィルム1と同一の材料で形成することが好ましい。更に、屈曲部1dにおける亀裂17の発生を減少させる方法として、屈曲部1dにおける角部1eの形状を湾曲させる、或いはその角度を90度よりも小さく(例えば、75度〜85度)となるように、金型11を設計してもよい。
【0037】
なお、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1を上部金型12及び下部金型13を用いて上下からプレス処理を施しているが、ヒートプレス後における熱可塑性樹脂フィルム1の厚みの均一性を確保することができれば、真空プレス、又は圧空プレス等の他のプレス加工方法を用いてもよい。
【0038】
次に、立体配線基板用の第1基材16の第1金属膜3の表面を被覆するように、第2金属膜21を形成する(第2金属膜形成工程:
図19)。本実施例においては、一般的な無電解めっきによって第1金属膜3の表面上に金属を追加的に堆積する。
【0039】
具体的な第2金属膜形成工程としては、先ず、成型工程の加熱によって第1基材16の表面上に形成された酸化層を除去するために、第1基材16を所望の洗浄液(例えば、酸脱脂液、硫酸液)に浸す。続いて、触媒処理を行って第1基材16の第1金属膜3に、第1金属膜3と置換するタイプの触媒(例えばPd触媒)を反応させ、その後に第1基材16を無電解めっき液に浸す。そして、表面に触媒が存在する第1金属膜3の周囲に対してのみ選択的に金属が堆積することになり、配線回路とならない領域(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の露出領域)には金属が堆積されず、第2金属膜21の追加のパターニングが不要となる。
【0040】
本実施例においては、第2金属膜21の金属として銅を用い、
図20及び
図21から分かるように、複数の銅の粒子21aが第1金属膜3の粒子3a上に堆積することになる。ここで、第2金属膜21をポーラス状に形成することなく、完全な膜状に形成する。特に、本実施例においては、1時間の浸漬により、5μm以上の膜厚を備える第2金属膜21を形成することができた。また、本実施例においては、第2金属膜21を構成する粒子21aが、第1金属膜3を構成する粒子3aの周囲に成長することになり、第2金属膜21の厚み方向及び当該厚み方向に直交する方向(第2金属膜21の平面方向)に対して同程度に成長することになる。これにより、立体成型によって生じた第1金属膜3の亀裂17を修復するように、第2金属膜21を形成することができる。すなわち、第2金属膜21の形成により、亀裂17による導通不良を回復させ、確実な導通を実現することができる配線回路(第1金属膜3及び第2金属膜21からなる導体層)を形成することができる。ここで、第2金属膜21による亀裂17の修復は、第2金属膜21の膜厚に対して2倍程度の亀裂17の幅を修復できるため、第2金属膜21の膜厚を想定される亀裂17の最大幅の1/2倍以上に調整してもよく、より好ましくは亀裂17の幅と同程度の膜厚に調整してもよい。また、この第2金属膜21は貫通孔2の側面1cにも表層と同様に生成され、貫通孔2による表裏の導通不良が仮にあった場合でも導通を修復することが可能である。
【0041】
更に、本実施例においては、配線回路(配線パターン)として必要となる導体層の層厚(配線パターン厚み)が第1金属膜3の膜厚では不足しているものの、第2金属膜21を形成することによって当該導体層の必要な層厚を確保することができる。
【0042】
なお、本実施例においては、無電解めっきによって第2金属膜21を形成したが、最終的に第1金属膜3の表面上のみ第2金属膜21を形成することができれば、他の成膜技術(例えば、電解めっき、導電性インクの塗布等)を用いてもよい。但し、本実施例の様に無電解メッキにより第2金属膜21を形成する場合は、独立した配線すなわち当該配線回路が成型体の外周部から電気的に離間していても形成が可能であるが、電解めっきによって第2金属膜21を形成する場合は、全ての配線が成型体の外周部と電気的に導通していることが必要であり、給電線の設置を含めて設計時に考慮することが必要となる。また、この場合、立体成型による非導通部分が発生していた場合、非導通部分から先は電気が流れないため第2金属膜21が形成出来なくなる。
【0043】
なお、第2金属膜21の材料は、銅に限定されることなく、ニッケル若しくはニッケルクロム、ニッケル銅、金、又は銀等の他の金属またはこれらを含む合金を用いてよく、立体配線基板に要求される特性及び信頼性に応じてその材料を適宜調整することができる。
【0044】
上述した製造工程を経た後に、第2金属膜21の表面に防錆剤処理を施して、第1金属膜3及び第2金属膜21が積層された積層構造を備える配線パターン22が形成されるとともに、熱可塑性樹脂フィルム1及び配線パターン22から構成される立体配線用の第2基材30の製造が完了する。ここで、第1基材16と第2基材30との相違は、第2金属膜21の有無だけであり、第2基材30が立体配線基板を構成するための立体成型物に該当する。すなわち、上述した工程により、立体成型物準備工程が完了することになる。
【0045】
図19乃至
図21からわかるように、本実施例に係る第2基材30においては、熱可塑性樹脂フィルム1の表面においてポーラス状に形成された第1金属膜3に生じる亀裂が、第1金属膜3よりも厚い膜厚で形成された第2金属膜21によって確実に修復されており、配線パターン22の断線が防止された優れた信頼性が備えられている。また、上述した製造方法より、MID基板と比較して、より容易に微細な配線パターン(例えば、L/S=30/30μm)を実現することができ、小型化及び低コスト化も実現されている。
【0046】
そして、最終的に形成される第2基材30は、
図22に示すように、X方向及びY方向のそれぞれの位置において、Z方向の寸法(すなわち、高さ)が異なっており、XY平面において凹凸が形成されている。なお、
図22は、第2基材30の3次元形状を説明するための模式的な図面であり、配線パターン22及び貫通孔は省略している。
【0047】
次に、準備した第2基材30の表裏面を被覆しつつ、配線パターン22の露出すべき部分を高精度に露出するための平坦な保護フィルムを準備する(保護フィルム準備工程)。具体的には、先ず、
図23に示すように、第2基材30に用いた熱可塑性樹脂フィルム1と同一の材質を有する平坦な熱可塑性樹脂フィルム31を準備する。すなわち、本実施例における熱可塑性樹脂フィルム31には、熱可塑性樹脂フィルム1と同様に、ポリイミド又はポリエチレンテレフタラート等の公知の樹脂フィルムを用いることができる。また、熱可塑性樹脂フィルム31の破断伸びは、少なくとも50%以上の値であり、好ましくは150%以上である。本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム31の膜厚を約25μmに調整したが、本実施例の立体配線基板の用途及び要求される特性に応じて適宜変更することができる。なお、第2基材30に用いられる樹脂フィルムが熱可塑性タイプ以外の熱硬化性樹脂フィルム、或いは熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を積層した複合樹脂フィルムである場合には、熱可塑性樹脂フィルム31に替えて、熱硬化性樹脂フィルム又は当該複合樹脂フィルムが用いられることが好ましい。
【0048】
熱可塑性樹脂フィルム31の材質を第2基材30に用いた熱可塑性樹脂フィルム1の材質と同一にする理由は、熱可塑性樹脂フィルム31及び熱可塑性樹脂フィルム1の立体成型時における伸びを同一に調整するためである。当該伸びが同一となることにより、第2基材30の表面を後述する保護フィルムによって被覆する際に、第2基材30と当該保護フィルムとの位置ずれの発生が防止され、優れた精度で貼り合わせが可能になる。
【0049】
続いて、
図24に示すように、熱可塑性樹脂フィルム31の一方の表面上に、準備した接着剤シート32を圧着し、熱可塑性樹脂フィルム31の表面上に接着剤シート32が積層された積層構造を備える保護フィルム(カバーレイ)33を形成する。例えば、一般的なプリント配線基板用のラミネータ装置を用い、ローラ温度を約100℃に調整し、熱可塑性樹脂フィルム31と接着剤シート32とを圧着する。本実施例においては、接着剤シート32の膜厚を約50μmとした。接着剤シート32の膜厚は、50μmに限定されないが、後述する第2基材30への被覆の際における特に段差近傍の隙間及び気泡の発生を防止する観点から、埋め込み性が良くなるように約25μm以上とすることが好ましい。上記熱可塑性樹脂フィルム31の準備から接着剤シート32の圧着までの工程を経ることにより、保護フィルム準備工程が完了することになる。
【0050】
なお、本実施例においては、後述する被覆工程において保護フィルム33を熱可塑性樹脂フィルム31に対して貼り付け可能とするために、接着剤として接着剤シート32を熱可塑性樹脂フィルム31に圧着したが、熱可塑性樹脂フィルム31に貼り付けられる接着剤はシート状のものに限定されることはない。例えば、熱可塑性樹脂フィルム31の表面上に一般的な接着剤を塗布し、熱可塑性樹脂フィルム31の表面全体に広げるようにしてもよい。
【0051】
次に、
図25に示すように、保護フィルム33に対して、第2基材30の配線パターン22の露出すべき領域に対応した開口34を形成する(開口形成工程)。本実施例においては、第1金属膜3のパターニングに使用したエッチングマスクと同一の設計平面上において開口の位置、形状、及び寸法の設計を行ったピナクル型(腐食刃金型)を用いる。すなわち、当該ピナクル型とは、保護フィルム33を立体成型する前の状態である平坦なフィルム状態を考慮し、開口34の位置、形状、及び寸法の位置設計が行われている。特に、本実施例においては、熱可塑性樹脂フィルム1が平坦な状態にて第1金属膜3のパターニングを施すことから、当該ピナクル型の開口の位置、形状、及び寸法の設計は、第1金属膜3のパターニング時における熱可塑性樹脂フィルム1と同一平面を仮想して行われることになる。ここで、同一平面を仮想して開口の位置等の設計を行うとは、立体成型前の熱可塑性樹脂フィルム1の平面を想定し、当該想定された平面上に合致した状態にて(すなわち、同一平面上にて)開口設計が行われることを意味する。より具体的な開口方法としては、当該ピナクル型に形成されたピンを保護フィルム33の位置決め孔(図示せず)に嵌装して位置合わせを行い、その後に保護フィルム33をピナクル型で打ち抜き加工することにより開口34を形成する。
【0052】
上述したピナクル型を用いて開口34を形成するため、本実施例における開口形成工程においては、保護フィルム33の形状が配線パターン22のパターニング時における熱可塑性樹脂フィルム1の形状を考慮して、開口34の位置、形状、及び寸法の設計が行われるとともに当該開口34が形成されることになる。換言すると、本開口形成工程においては、第1金属膜3のパターニング時における熱可塑性樹脂フィルム1と同一平面を仮想し、開口34位置、形状、及び寸法の設計を行い、当該開口34の形成を行うことになる。このような配線パターン22のパターニング時における熱可塑性樹脂フィルム1の形状と、開口34の形成時における保護フィルム33の形状とをそろえることにより、第2基材30に対して保護フィルム33を被覆する際において、配線パターン22の露出すべき領域と開口34との位置合わせ精度をより向上させることができる。
【0053】
次に、開口34が形成された状態の保護フィルム33に対して、第2基材30の立体形状に対応するように、立体成型を施す。換言すると、第2基材30の配線パターン22の形成面に対応させ、保護フィルム33を立体成型する(第2の立体成型工程)。具体的な本実施例における成型方法としては、上述した熱可塑性樹脂フィルム1の立体成型の際に使用した金型11を使用する。ここで、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に第1金属膜3が形成された状態の基材の膜厚と保護フィルム33の膜厚とは異なるため、保護フィルム33の専用の金型を用いることがより良いが、同一の金型11を使用することによって製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
より具体的な成型方法としては、先ず、上述した位置決め孔を用いて、成型用の金型11に対して保護フィルム33の位置決めを行う。これは、成型位置と開口34を合わせるためのものである。当該位置決めの際に、保護フィルム33の上方(上部金型12側)には、離型フィルム35(膜厚約65μm)を配置する。すなわち、
図26に示すように、金型11の上部金型12と下部金型13との間に保護フィルム33及び離型フィルム35を配置することになる。なお、当該位置合わせの際には、保護フィルム33を構成する熱可塑性樹脂フィルム31が、下部金型13に接触するように配置されることになる。続いて、上部金型12及び下部金型13を近づけ、保護フィルム33及び離型フィルム35に対して、上下から所望の圧力(例えば、5MPa)によってプレス処理を、常温または保護フィルム33の接着剤シート32が硬化しない範囲の温度にて約30秒間行う(
図27)。なお、所望の圧力とは、保護フィルム33の材料、圧力が弱すぎると所望の立体成型が困難になる点を考慮して適宜調整することになる。そして、プレス処理の完了後に、保護フィルム33及び離型フィルム35を金型11から取り出し(
図29)、離型フィルム35を保護フィルム33から剥離することによって保護フィルム33の立体成型が完了する。ここで、上記工程を経て立体成型された保護フィルム33は、後述する被覆工程の際に、第2基材30の下側(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の第2の面1b側)に配置されることになる。
【0055】
次に、後述する被覆工程の際に、第2基材30の上側(すなわち、熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a側)に配置される保護フィルム36を準備し、立体成型を行う(
図29)。当該保護フィルム36に係る、保護フィルム準備工程、開口形成工程、第2の立体成型工程については、上述した保護フィルム33に係る各工程とほぼ同一である。異なる点は、開口形成工程の際に使用されるピナクル型の開口パターン及び保護フィルム36に形成される開口の位置、並びに金型11によって立体成型する際における保護フィルム36と離型フィルム35の配置関係である。より具体的には、保護フィルム36の立体成型の際には、離型フィルム35が下方(下部金型13側)に位置し、保護フィルム36が上方(上部金型12側)に配置される。また、当該配置の際には、保護フィルム36を構成する熱可塑性樹脂フィルムが、上部金型12に接触するように配置されることになる。その他の製造条件、及び製造装置は同一であるため、その説明を省略する。
【0056】
次に、第2基材30の配線パターン22の露出すべき領域を開口34、37によって露出しつつ、第2基材30の当該露出すべき領域以外を保護フィルム33、36によって被覆する(被覆工程)。本実施例においては、上述した熱可塑性樹脂フィルム1の立体成型の際に使用した金型11を使用し、第2基材30の両面(熱可塑性樹脂フィルム1の第1の面1a側、第2の面1b側)を保護フィルム33、36によって挟むことになる。ここで、熱可塑性樹脂フィルム1の表面に第1金属膜3が形成された状態の基材の膜厚と、第2基材30、保護フィルム33、36とが積層された状態の膜厚とは異なるため、当該被覆工程用の専用金型を用いることがより良いが、同一の金型11を使用することによって製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
より具体的な被覆方法としては、先ず、保護フィルム33を下部金型13に配置し、配置された保護フィルム33上に第2基材30を配置し、更に第2基材30上に保護フィルム36を配置する(
図30)。ここで、各保護フィルムは、接着剤シートが第2基材30(すなわち、配線パターン22の形成面)と接触するように配置され、熱可塑性樹脂フィルムが各金型に接触することになる。また、各部材の配置は、各部材に設けられた位置決め孔を下部金型13のピンに嵌装することによって行われる。そして、当該位置決め孔を用いた配置により、第2基材30の配線パターン22の露出すべき領域に各保護フィルムの開口が対向することになる。なお、位置決め孔及びピンを用いた位置決めの際に、配線パターン22の露出すべき領域に各保護フィルムの開口が確実に対向するように、目視等による微調整を行ってもよい。
【0058】
続いて、上部金型12及び下部金型13を近づけ、第2基材30、及び保護フィルム33、36に対して、上下から所望の圧力(例えば、15MPa)によってプレス処理を約50℃(第1温度)にて約60秒間行い(
図31)、第2基材30、及び保護フィルム33、36を仮接着する。ここで、プレス処理における温度、圧力、時間等の各種の条件は、第2基材30、及び保護フィルム33、36を仮接着することができる範囲内で適宜調整することができる。
【0059】
プレス処理の完了後に、上部金型12を取り外し、樹脂棒38を使用して保護フィルム36の表面を押圧し、保護フィルム36と第2基材30との間に生じた隙間及び気泡を除去する(
図32)。樹脂棒38は、当該押圧によって保護フィルム36が破損等しないように、その先端(押圧部分)が丸くなっている。また、当該樹脂棒38による押圧の際には、下部金型13を50℃に維持し、保護フィルム36の接着剤シートの粘着力を発現させることが好ましい。その後、樹脂棒38を使用した押圧による隙間及び気泡除去作業を、保護フィルム33に対しても行う。この場合には、上部金型12を反転させ、保護フィルム36が反転した上部金型12に接触するように、仮接着された状態の第2基材30、及び保護フィルム33、36を配置し、樹脂棒38を使用して保護フィルム33の表面を押圧することになる。なお、かかる押圧作業は、隙間及び気泡の発生状況に応じて、適宜省略してもよく、樹脂棒以外の他の材質の棒又は他の押圧装置を使用してもよい。
【0060】
上記仮接着及び押圧作業後に、第2基材30、及び保護フィルム33、36の本接着を行う。具体的には、クッション性(柔軟性・屈曲性)を備える離型フィルム39を2枚準備し、仮接着された状態の第2基材30、及び保護フィルム33、36を当該離型フィルム39によって挟んだ状態で金型11内に配置する(
図33)。続いて、上部金型12及び下部金型13を近づけ、離型フィルム39、第2基材30、及び保護フィルム33、36に対して、上下から所望の圧力(例えば、15MPa)によってプレス処理を約160℃(第2温度)にて約40分〜60分間行い(
図34)、第2基材30、及び保護フィルム33、36を本接着する。ここで、離型フィルム39を配置する理由は、本接着の際の加熱によって開口34、37を充填するように離型フィルム39を広がらせ、保護フィルム33、36の接着剤シートの開口34、37に向けた広がりを防止するためである。
【0061】
なお、プレス処理における温度、圧力、時間等の各種の条件は、第2基材30、及び保護フィルム33、36を完全に接着することができる範囲内で適宜調整することができる。ただし、基本的には熱硬化である接着材シートの硬化条件内となる。例えば、プレス処理時間を5〜10分に短縮し、その後に所定の熱硬化処理(160℃、30分以上)を行ってもよい。
【0062】
上記本接着後に、離型フィルム39を保護フィルム33、36から剥離することによって被覆工程が完了し、
図35に示すような立体成型部品の一種である立体配線基板40が完成する。
図35に示すように、立体配線基板40においては、配線パターン22の露出するべき領域以外の部分が、保護フィルム33、36によって確実に被覆されるとともに、部品実装等の電気的接続に使用される配線パターン22の一部の領域が、開口34、37によって確実且つ精度よく露出することになる。また、立体配線基板40の製造工程においては、保護フィルム33、36を貼り付ける特殊な装置が不要となっており、立体配線基板40の低コストが図られている。
【0063】
上述した実施例においては、被覆工程における接着を仮接着及び本接着の2回実施していたが、配線パターン22が表面に形成された第2基材30に対して保護フィルム33、36を貼り付ける際に気泡及び隙間の発生を防止し、配線パターン22の露出すべき領域に優れた精度で開口34、37を配置させつつ保護フィルム33、36によって第2基材30を被覆して容易且つ低コストで立体配線基板40を製造することが可能であれば、仮接着を行うことなく本接着のみを実施してもよい。
【0064】
また、上述した実施例においては、第2基材30の両面を保護フィルム33、36によって被覆していたが、第2基材30の状態に応じて、保護フィルムによる被覆を片面のみにしてもよい。例えば、配線パターン22が片面のみに形成されている場合には、当該配線パターン22が形成されている形成面側のみを被覆するようにしてもよい。
【0065】
更に、上述した実施例においては、フィルム状の樹脂を立体成型して形成された第2基材30の表面に保護フィルム33、36を被覆したが、保護フィルムによって被覆される立体成型物は本実施例の第2基材30のようなものに限定されない。例えば、立体成型物として種々のMID部品(MID基板)を選択することができ、本実施例に係る保護フィルムを当該MID部品の回路形成面に被覆することもできる。立体成型物にMID部品を用いる場合には、MID部品の配線パターンは樹脂成型が完了した後に行われるが、MID部品を被覆する保護フィルムの開口形成、及び当該開口形成に資料されるパターン設計は、当該MID部品の配線パターン形成時における立体形状を考慮して行われることになる。この場合、MID部品に保護フィルムを押し当てヒートプレスするための専用金型が必要となる。
【0066】
<本発明の実施態様>
本発明の第1実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、樹脂基材の表面に配線パターンが形成された立体成型物を準備する立体成型物準備工程と、50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルム及び前記樹脂フィルムの表面に設けられた接着剤からなる平坦な保護フィルムを準備する保護フィルム準備工程と、前記平坦な保護フィルムに対して、前記配線パターンの露出すべき領域に対応した開口を形成する開口形成工程と、前記平坦な保護フィルムを前記立体成型物の前記配線パターンの形成面に対応させて立体成型する立体成型工程と、前記開口を前記配線パターンの露出すべき領域に対向させつつ、前記立体成型物の前記配線パターンの形成面に前記接着剤を貼り付け、前記立体成型物を立体成型された前記保護フィルムによって被覆する被覆工程と、を有し、前記開口形成工程においては、前記配線パターンのパターニング時における前記樹脂基材の形状を考慮し、前記開口の位置、形状、及び寸法の設計を行うことである。
【0067】
第1実施態様においては、保護フィルムの形状が配線パターンのパターニング時における樹脂基材の形状を考慮し、配線パターンを露出すべき開口の位置、形状、及び寸法の設計を行い、且つ保護フィルムが平坦な状態において開口を形成するため、被覆工程の際における立体成型物の配線パターンの露出すべき領域と、保護フィルムの開口との位置合わせを高精細に行うことが可能になる。これにより、配線パターンが表面に形成された立体成型物に対して保護フィルムを貼り付ける際に、気泡及び隙間の発生の防止を図ることが可能になるとともに、配線パターンの露出すべき領域に優れた精度で開口を配置させることができる。また、第1実施形態においては、保護フィルムが平坦な状態において開口を形成するとともに、立体成型物を被覆する保護部材を立体成型した保護フィルムとしているため、立体成型物の表面形状に合わせた樹脂の塗布又は紫外線の照射を行うような特殊な装置が不要となり、低コストで立体配線部品を製造することが可能になる。
【0068】
本発明の第2実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第1実施態様の前記立体成型物準備工程において、前記樹脂基材が平坦なフィルム状態において、前記配線パターンのパターニングを施し、前記配線パターンのパターニング時における前記樹脂基材と同一平面を仮想し、前記開口の位置、形状、及び寸法の設計を行うことである。これにより、立体成型物の配線パターンのパターニングする際における樹脂基材の形状と、開口を形成する際における保護フィルムの形状とを同一にして、開口設計を行うことができるため、被覆工程の際に、配線パターンの露出すべき領域と保護フィルムの開口との位置合わせ精度をより向上することができる。
【0069】
本発明の第3実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第1又は第2実施態様の前記被覆工程において、第1温度にて前記立体成型物と前記保護フィルムとを仮接着し、前記仮接着後において前記第1温度よりも大なる第2温度にて前記立体成型物と前記保護フィルムとを本接着を行うことである。これにより、立体成型物と保護フィルムとの間における隙間や気泡の発生を防止することができ、保護フィルムの貼り付けをより高精細に実施することが可能になる。
【0070】
本発明の第4実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第3実施態様において、前記仮接着後であって前記本接着前に、前記立体成型物と前記保護フィルムとの間の隙間及び気泡を除去することである。これにより、立体成型物と保護フィルムとの間における隙間や気泡の発生をより一層防止することができ、保護フィルムの貼り付けをより高精細且つ確実に実施することが可能になる。
【0071】
本発明の第5実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第1乃至4実施態様のいずれかにおいて、同一の金型を用いて前記立体成型物及び前記保護フィルムの立体成型を施すことである。これにより、製造コストのより一層の削減を図ることができる。
【0072】
本発明の第6実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第1乃至第5実施態様のいずれかにおいて、前記被覆工程で2枚の前記保護フィルムによって前記立体成型物を両面から被覆することである。これにより、両面に配線パターンを備える立体成型物に対しても、確実且つ高精細に配線パターンの保護が可能になる。
【0073】
本発明の第7実施態様に係る立体配線部品の製造方法は、上述した第1乃至6実施態様のいずれかにおいて、前記樹脂基材と前記樹脂フィルムとは、同一の材質を有することである。これにより、立体成型物及び保護フィルムの伸びが概ね同一となり、立体成型物と立体成型された保護フィルムとの位置合わせをより高精度に行うことが可能になる。
【0074】
本発明の第8実施態様に係る立体配線部品は、樹脂基材の表面に配線パターンが形成された立体成型物と、50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルム及び前記樹脂フィルムの表面に設けられた接着剤からなり、前記接着剤によって前記立体成型物の表面に積層された保護フィルムと、を有し、前記保護フィルムは、前記配線パターンの露出すべき領域に対応した開口を備えるとともに、前記立体成型物の立体形状に沿って前記立体成型物を被覆している。
【0075】
第8実施態様においては、立体成型物を被覆する保護部材を立体成型した保護フィルムとしているため、立体成型物の表面形状に合わせた樹脂の塗布又は紫外線の照射を行うような特殊な装置が不要となり、立体配線部品の低コスト化を図ることができる。また、立体成型物の基材と、保護フィルムの材料が樹脂であるため、立体成型時における伸び特性が同様となり、立体成型物の配線パターンの露出すべき領域と、保護フィルムの開口との位置合わせが高精細に行われている。これにより、立体成型部品においては、立体成型物と保護フィルムとの間に気泡及び隙間がなく、配線パターンの露出すべき領域が確実に露出されていることになる。
【0076】
本発明の第9実施態様に係る立体配線部品は、上述した第8実施態様において、前記樹脂基材と前記樹脂フィルムとが同一の材質を有することである。これにより、立体成型物及び保護フィルムの伸びが概ね同一となり、立体成型された保護フィルムによる立体成型物のより高精度な被覆が実現されることになる。すなわち、立体配線基板の配線パターンの露出すべき領域のみを、高精度且つ確実に露出することが可能になる。
【0077】
本発明の第10実施態様に係る立体配線部品は、上述した第9実施態様において、前記樹脂基材が50%以上の破断伸びを備えるフィルム状の樹脂からなることである。これにより、樹脂フィルムを立体成型した部材についても、その表面に形成された配線パターンの露出すべき領域のみを、高精度且つ確実に露出することが可能になる。
【0078】
本発明の第11実施態様に係る立体配線部品は、上述した第8乃至第10実施態様のいずれかにおいて、前記立体成型物が2枚の前記保護フィルムによってその両面が被覆された積層構造を有することである。これにより、両面に配線パターンを備える立体成型物に対しても、確実且つ高精細に配線パターンの保護が可能になる。
【0079】
本発明の第12実施態様に係る立体配線部品は、上述した第8乃至第11実施態様のいずれかにおいて、前記配線パターンが金属を粒子状に堆積してなるポーラス状の構造を備える第1金属膜、及び前記第1金属膜上に積層された第2金属膜からなることである。これにより、第1金属膜に亀裂が生じても第2金属膜で修復されており、導通不良がなく且つ優れた信頼性を備える配線回路が実現されている。
樹脂基材の表面に配線パターンが形成された立体成型物を準備する立体成型物準備工程と、50%以上の破断伸びを備える樹脂フィルム及び接着剤からなる平坦な保護フィルムを準備する保護フィルム準備工程と、前記平坦な保護フィルムに対して、前記配線パターンの露出すべき領域に対応した開口を形成する開口形成工程と、前記平坦な保護フィルムを立体成型された前記立体成型物の前記配線パターンの形成面に対応させて立体成型する立体成型工程と、前記開口を前記配線パターンの露出すべき領域に対向させつつ、前記立体成型物の前記配線パターンの形成面に前記接着剤を貼り付け、前記立体成型物を前記保護フィルムによって被覆する被覆工程と、を有し、前記開口形成工程においては、前記配線パターンのパターニング時における前記樹脂基材の形状を考慮し、前記開口の位置、形状、及び寸法の設計を行う。