特許第6101006号(P6101006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6101006-間接型蓄熱壁システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101006
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】間接型蓄熱壁システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 11/00 20060101AFI20170313BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   F24D11/00 B
   E04B1/76 100C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-121916(P2012-121916)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-245915(P2013-245915A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】築山 祐子
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−214749(JP,A)
【文献】 特開昭58−47938(JP,A)
【文献】 特開2003−202130(JP,A)
【文献】 実開昭59−43857(JP,U)
【文献】 特開2005−337615(JP,A)
【文献】 特開2008−286435(JP,A)
【文献】 特開2011−32649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 11/00
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非採光室と、
建物外壁の開口部に設けられたガラス窓、及び、前記ガラス窓から所定の離間寸法を有して前記ガラス窓の窓面に対向するように配置された蓄熱壁が設けられ、前記ガラス窓と前記蓄熱壁との間の空間が閉鎖空間とされ、前記蓄熱壁よりも室内側が居室側空間とされた採光室と、
前記閉鎖空間から前記非採光室内に向かって空気を流通させる空気流通装置と、
を備え、
前記採光室は、前記非採光室よりも上階に設けられており、
前記非採光室は前記空気流通装置により前記閉鎖空間から供給される空気によって暖められ、前記居室側空間は前記蓄熱壁に蓄えられた熱によって直接暖められることを特徴とする間接型蓄熱壁システム。
【請求項2】
前記非採光室内と前記閉鎖空間とをつなぐ循環用ダクトが更に設けられており、前記循環用ダクトの一端は、前記閉鎖空間の床開口部に接続されており、前記循環用ダクトの他端は、前記非採光室の天井開口部に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の間接型蓄熱壁システム。
【請求項3】
前記空気流通装置には、空気の流通方向を逆転させるスイッチが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の間接型蓄熱壁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光による熱を蓄え、建物の室内空間を温める間接型蓄熱壁システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物において、日当たりのよい居室は、冬場であっても日射によりかなりの熱を得ることができ、日中はかなりの高温となる。そこで、蓄熱壁を用いて日射による熱を蓄え、蓄熱壁に蓄えられた熱を夜間の暖房等に利用するシステムが提案されている。
【0003】
しかしながら、蓄熱壁を利用したシステムでは、日射による熱をすべて蓄えることができず、外気温の低下と共に蓄熱壁から屋外に熱が放出されることがある。一方で、建物内において、例えば、日の当たらない北側に配置された洗面所やトイレ等の水周りの部屋は、日射の恩恵を得にくいことがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、ルーフサッシ内部で暖められた暖気を排気する際に、熱交換機を用いて暖気から熱を回収し、回収した熱を暖房や給湯に利用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−213445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているように、熱交換機を用いて熱を回収する場合、多くの熱を回収しようとすると排気風量を多くする必要があり、ファンの消費電力が大きくなって省エネ効果が減少し(熱の回収効率が低下し)、熱交換機の設置のためのコストも上昇する。
【0007】
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、日射による熱を簡易な構成で有効利用することができる間接型蓄熱壁システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る間接型蓄熱壁システムは、非採光室と、建物外壁の開口部に設けられたガラス窓、及び、ガラス窓から所定の離間寸法を有してガラス窓の窓面に対向するように配置された蓄熱壁が設けられ、ガラス窓と蓄熱壁との間の空間が閉鎖空間とされ、蓄熱壁よりも室内側が居室側空間とされた採光室と、閉鎖空間から非採光室内に向かって空気を流通させる空気流通装置と、を備え、採光室は、非採光室よりも上階に設けられており、非採光室は空気流通装置により閉鎖空間から供給される空気によって暖められ、居室側空間は蓄熱壁に蓄えられた熱によって直接暖められることを特徴とする。
【0009】
この発明では、蓄熱壁に蓄えきれなかった余剰の熱を、空気流通装置によって閉鎖空間から非採光室内に供給することができ、非採光室の温熱環境を向上させることができる。このように、日射による熱を、簡易な構成で有効利用することができる。
【0010】
また、非採光室内と閉鎖空間とをつなぐ循環用ダクトが更に設けられており、循環用ダクトの一端は、閉鎖空間の床開口部に接続されており、循環用ダクトの他端は、非採光室の天井開口部に接続されていることが好ましい。この場合には、循環用ダクトを用いて非採光室と閉鎖空間との間で空気を循環させることができ、非採光室内の温熱環境を効率よく向上させることができる。
【0011】
また、空気流通装置には、空気の流通方向を逆転させるスイッチが設けられていることが好ましい。このスイッチを操作して空気の流通方向を逆転させることにより、例えば、夏場において、採光されないことにより温度の上昇が抑えられた非採光室内の空気を閉鎖空間に供給することで、閉鎖空間の温度上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、日射による熱を簡易な構成で有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】間接型蓄熱壁システムが適用された建物の縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る間接型蓄熱壁システムの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、間接型蓄熱壁システム1が適用された建物Xは、2階建ての建物であり、採光室10と、非採光室20と、空気流通装置30と、循環用ダクト40とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、一例として2階建ての建物Xに間接型蓄熱壁システム1を適用した例を示すが、2階建て以外の建物に適用することもできる。
【0016】
採光室10は、建物Xの2階部分に設けられている。採光室10は、例えば、リビング等の居室として使用される。採光室10には、ガラス窓11と、蓄熱壁12と、遮蔽壁13とが設けられている。ガラス窓11は、閉鎖空間Zの外壁の開口部に設けられている。ガラス窓11により、太陽光が採光室10内に導かれる。
【0017】
蓄熱壁12は、ガラス窓11から所定の離間寸法を有してガラス窓11の窓面に対向するように配置される。蓄熱壁12として、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete;軽量気泡コンクリート)から成る複数枚のパネルを用いることができる。なお、蓄熱壁12の室外側(ガラス窓11側)の面には、ALCの素地に黒色の塗装が施されている。これにより、蓄熱壁12の室外側の面に入射した太陽光の集光効率を高めることができる。
【0018】
採光室10は、蓄熱壁12及び遮蔽壁13によって、蓄熱壁12よりも室外側の閉鎖空間Zと、蓄熱壁12よりも室内側の居室側空間Yとに区画されている。閉鎖空間Zは、ガラス窓11と、蓄熱壁12及び遮蔽壁13との間に形成され、他の空間に対して閉鎖(区画)されている。
【0019】
ガラス窓11を介して蓄熱壁12の集熱面に到達した太陽光により、蓄熱壁12が暖められる。蓄熱壁12は、蓄熱機能を有しており、蓄熱が可能となっている。この蓄熱壁12に蓄えられた熱により、居室側空間Yが暖められる。
【0020】
非採光室20は、建物Xの1階部分に設けられている。非採光室20は、例えば、洗面所やトイレ等の水周りのための部屋として使用される。また、非採光室20は、建物Xの2階の外壁の位置から建物Xの内側へ奥まった位置に設けられており、日射の恩恵を得にくい部屋となっている。
【0021】
なお、上述した、採光室10や非採光室20の位置関係及び用途は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0022】
空気流通装置30は、熱搬送用ダクト31と、ファン32と、熱搬送用ダクト33と、スイッチ34とを含んで構成される。熱搬送用ダクト31及び33は、内部において空気が流通可能な構造となっている。
【0023】
熱搬送用ダクト31の一端は、閉鎖空間Zに開口し、他端はファン32に接続されている。熱搬送用ダクト33の一端は非採光室20内に開口し、他端はファン32に接続されている。
【0024】
ファン32は、熱搬送用ダクト31及び33を介して、閉鎖空間Zと非採光室20内との間で空気を流通させる。ファン32には、スイッチ34が接続されている。スイッチ34による切り替え操作により、ファン32は、閉鎖空間Zから非採光室20内への空気の流通と、非採光室20内から閉鎖空間Zへの空気の流通とを切り替える。
【0025】
循環用ダクト40は、非採光室20内と閉鎖空間Zとを、空気を流通可能につないでいる。
【0026】
次に、空気流通装置30の動作及び空気の流れについて説明する。例えば、冬場の日中において、ファン32を作動させて閉鎖空間Zから非採光室20内の空気を供給する。この場合、蓄熱壁12に太陽光が入射したときに蓄熱壁12によって蓄えきれなかった余剰の熱を、空気流通装置30によって非採光室20内に供給することができる。これにより、非採光室20内の温度を上昇させることができる。
【0027】
また、循環用ダクト40によって非採光室20内と閉鎖空間Zとが接続されているので、ファン32を作動させたときに非採光室20内と閉鎖空間Zとの間で空気を循環させることができる。
【0028】
また、例えば、夏場等、採光室10の温度上昇を抑制したい場合には、スイッチ34を操作することにより、ファン32によって非採光室20内の空気を閉鎖空間Zに供給する。この場合、日射の恩恵を受けにくく温度の上昇が抑えられた非採光室20内の空気を、閉鎖空間Zに供給することができる。これにより、採光室10内の温度上昇が抑制される。
【0029】
本実施形態は以上のように構成され、蓄熱壁12に蓄えきれなかった余剰の熱を、空気流通装置30によって閉鎖空間Zから非採光室20内に供給することができ、非採光室20の温熱環境を向上させることができる。このように、日射による熱を、簡易な構成で有効利用することができる。
【0030】
また、非採光室20内と閉鎖空間Zとをつなぐ循環用ダクト40を設けることで、非採光室20と閉鎖空間Zとの間で空気を循環させることができ、非採光室20内の温熱環境を効率よく向上させることができる。
【0031】
また、空気の流通方向を逆転させるスイッチ34を設けることで、空気流通装置30によって非採光室20内から閉鎖空間Zに空気を供給することができる。この場合、例えば、夏場において、採光されないことにより温度の上昇が抑えられた非採光室20内の空気を閉鎖空間Zに供給することができ、閉鎖空間Zの温度上昇、更には採光室10内の温度上昇を抑制することができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、蓄熱壁12としてALCを用いるものとしたが、これ以外の材料を用いてもよい。
【0033】
また、採光室10や非採光室20内に温度センサを設け、温度センサによって検出された室内の温度に応じて、ファン32による空気の流通方向を自動的に切り替える構成であってもよい。
【0034】
また、ファン32及びスイッチ34の設置位置、熱搬送用ダクト31及び33の形状、循環用ダクト40の形状は、図1に示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0035】
1…間接型蓄熱壁システム、10…採光室、11…ガラス窓、12…蓄熱壁、20…非採光室、30…空気流通装置、34…スイッチ、40…循環用ダクト、X…建物、Z…閉鎖空間。
図1