特許第6101013号(P6101013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101013
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】棚下灯
(51)【国際特許分類】
   F21V 33/00 20060101AFI20170313BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20170313BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170313BHJP
【FI】
   F21V33/00 110
   F21S2/00 230
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-158421(P2012-158421)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-22135(P2014-22135A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(72)【発明者】
【氏名】峯田 昌明
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−004296(JP,A)
【文献】 特開2010−172531(JP,A)
【文献】 特開2011−240010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V23/00−99/00
F21S2/00−19/00
A47F1/00−3/14
A47F5/00−8/02
A47F11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品陳列棚の棚板の下面前部に設けられ、前記棚板の下方に陳列された商品を照明する棚下灯において、
LED素子である光源が収容された長尺状の光源収容部を有する筺体、
を備え、
前記光源収容部は、LED素子が載置された長尺状のLED載置部位と、前記LED載置部位の短手方向における一方の端部から光出射方向に立設する壁部位と、前記壁部位から屈曲して前記LED載置部位と対向して位置する遮光部位と、で構成され、
前記LED素子は当該LED素子の光軸より商品陳列棚の手前側に出射されるLED光のうち少なくとも一部が、前記遮光部、前記壁部位、前記LED載置部位を順次屈折反射して商品陳列棚奥側に出射されるように載置されている、棚下灯。
【請求項2】
前記LED載置部位は、商品陳列棚の奥側に向かって仰角となるように傾斜している、請求項1に記載の棚下灯。
【請求項3】
LED光が出射される出射開口部に、光拡散性の透光性カバーを設置した、請求項1又は2に記載の棚下灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源としてLEDを使用した棚下灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりから、省電力化に優れたLED素子を光源に使用した各種用途のLED照明装置が盛んに用いられるようになってきており、商品陳列棚等の照明を行う棚下灯にもLEDが使用されるようになってきた。
【0003】
特許文献1に記載されている照明装置は、商品陳列棚の棚板の下面前部に設けられ、該棚板の下方の商品陳列スペースに照明を行うようにした商品陳列棚における照明装置であって、LEDを前記棚板の幅方向に複数配設した照明装置を、該LEDの光の中心軸を後下方に向け、且つ、前記中心軸からの光の広がり角度を、該中心軸から前方側よりも該中心軸から後方側を小さく形成したことを特徴とする商品陳列棚における照明装置である。
【0004】
特許文献2に記載されている照明装置は、基板上に複数の半導体発光素子が一列に並設された光源と、前記半導体発光素子の並び方向に延びて形成され、光出射面、この光出射面の裏側に位置する光入射面、これら光出射面の一側縁と光入射面の一側縁にわたる第1の反射面、及び前記光出射面の他側縁と光入射面の他側縁にわたる第2の反射面を有し、前記光入射面を前記光源に対向させて前記半導体発光素子の光放出側に配置されるとともに、前記光入射面が、前記光源の光軸に対し斜めに交差して前記第1の反射面に連続する第1の入射面と、この第1の入射面から前記光源側に折れ曲がるように前記第1の入射面に連続するとともに前記第2の反射面に連続する第2の入射面で形成されている透光性材料の配光制御部材とを具備し、前記第1の入射面を通過して前記第1
、第2の反射面を経ない光を光出射面から斜め下後方向に出射させるとともに、前記第1の入射面及び前記第1の反射面を経由する光を前記光出射面から略真下方向に出射させ、かつ、前記第2の入射面及び前記第2の反射面を経由する光を前記光出射面から斜め下後方向に出射させるようにしたことを特長とする照明装置である。
【0005】
特許文献3に記載されている照明用灯具は、所定の距離離間した位置にある照射面を照射方向として当該照射面に光軸を向けて配置された光源と、前記光軸を中心に前記光源の発光領域を覆うように設けられ、前記光軸を境界として第一レンズ部と第二レンズ部とからなるレンズと、を備え、前記第一レンズ部が、入射面と出射面とを有し前記光源からの光を屈折して出射し、前記第二レンズ部が、入射面と出射面とこの入射面から入射して当該第二レンズ部内を透過する前記光源からの光を出射面に反射する反射面とを有する照明用灯具である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−210667
【特許文献2】特開2007−287686
【特許文献3】特開2008−226766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、LEDの光の中心軸前後の光の広がり角度を照明ケースの側面視形状を僅かに左右非対称形状にすることにより調節すると説明されているだけで(段落0034から0037)、具体的な手法や照明ケースの構造に関しては何ら記載されていない。また、照明ケースが棚板の下面前部に設けられており、なおかつLEDの光の中心軸の前側の光の角度が広いので、LEDの光の一部が棚の前縁から前方に外れて無駄になり、棚下の商品陳列スペースの奥側が暗くなり、手前側が明るくなるという不均一な明るさとなる虞がある。
【0008】
また特許文献2では、LED素子を覆うレンズによって、LEDの光を陳列棚の後方側に向けて、陳列棚全面を照射しているが、陳列棚の奥側に向かう光束は小さく、また光路長も長いので、陳列棚の奥側が暗くなる虞がある。
【0009】
また特許文献3では、2個のレンズを組み合わせて、LEDの中心軸よりも棚の手前側に出射される光と、奥側に出射される光とを配光制御するものであるため、棚の幅に合わせた精密なレンズ形状と、LED素子に対してのレンズ配置精度が要求され、棚下灯としては生産性に劣るものとなっている。
【0010】
本発明は、以上のような課題を解決するため鋭意検討した結果なされたものであり、簡単な構成で棚板下方の商品陳列スペースの全体を均一に照らすことができる棚下灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明にあたっては、商品陳列棚の棚板の下面前部に設けられ、前記棚板の下方に陳列された商品を照明する棚下灯において、前記棚板の幅方向に沿って配置されたLED素子と、前記LED素子の光軸から商品陳列棚の手前側に出射されるLED光の一部を反射させて、商品陳列棚の奥側に配光させる配光制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明にあたっては、前記配光制御手段は、LED光の出射開口部と、
前記出射開口部から商品陳列棚に対して手前側に出射されるLED光を遮光する遮光部と、
LED素子の光軸から、商品陳列棚手前側に出射されるLED光の配光角度よりも、LED素子の光軸から、商品陳列棚奥側に出射されるLED光の配光角度の方が大きくなるか、同じとなるようにしたLED載置部と、を有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明にあたっては、棚下灯の前記出射開口部に、光拡散性の透光性カバーを設置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、商品陳列棚全面を、より均一に照射することができる棚下灯を提供できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、商品陳列棚の手前側に漏れ、床面を照らしていた無駄な照射光を商品陳列棚の奥側に振り向けることで、LED素子の出射光を有効に利用できる棚下灯を提供できる。
【0016】
請求項3の発明によれば、棚板や陳列された商品の表面に、LED素子が映りこむことを防止した棚下灯を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係わる棚下灯設置状態と光線軌跡の模式断面図
図2】本実施形態に係わる棚下灯の正面図
図3】本実施形態に係わる棚下灯の外観斜視図
図4】本実施形態に係わる棚下灯の分解斜視図
図5】本実施形態に係わる棚下灯の断面図
図6】本実施形態に係わる棚下灯のシミュレーションによる被照射面の輝度分布図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお本実施の形態は一例であり、これに限定されるものではない。
図1は、本実施形態の棚下灯10および棚板20の棚の側面方向から見た断面と、光線軌跡の一部を模式的に示したものである。
図2は棚下灯10の正面図、図3は外観斜視図、図4は分解斜視図、図5図2のI−I線断面図である。
【0019】
(本実施形態に係わる棚下灯の構成)
本実施形態の棚下灯10は、直方体形状の筐体11の内部に収容された、LED素子1が筐体11の長さ方向に一列に実装されたLED基板2と、高反射性シート3と、LED駆動電源部4と、LED光が出射する出射開口部5に取り付けられた透光性カバー6とを備えている。この棚下灯10は、各棚板20の下面手前側に、棚の幅方向に沿って取り付けられる。
【0020】
筐体11は、アルミニウム製で、押し出し成形によって作製されている。
この筐体11は、図4図5に示すように、前面部11aと後面部11bと天板15と側板16を有しており、前面部11aは下面方向に屈曲して下面部11cとなっている。また、下面部11cの後面部側は開口しており、そこがLED光の出射開口部5となっている。
【0021】
筐体11の内部は大別して光源収容部Xと電源収容部Yからなり、光源収容部Xは、LED載置部12と遮光部13と内壁14で囲われた空間部となっている。LED載置部12は、商品陳列棚の棚奥側に向かって仰角となるように傾斜した面板であり、これにより、LED素子1から出射するLED光は、LED素子の光軸から、商品陳列棚手前側に出射されるLED光の配光角度よりも、LED素子の光軸から、商品陳列棚奥側に出射されるLED光の配光角度の方が大きくなる。遮光部13は、前記下面部11cが延長して出射開口部5の一部(棚手前側の一部)を覆うように形成されている。
なお、本実施形態で使用した遮光部13は、筐体11と一体で成形されており、LED光を100%透過しないが、アルミニウムの代わりに光の一部は反射し、一部は透過するビームスプリッターを使用し、別部材として設置してもよい。
【0022】
LED素子1としては公知の種々のLEDを用いることができる。本実施形態では、照明用の白色光を発光する高輝度タイプのLED素子を用いているが、チップオンボード型(COB)のLEDモジュールを使用してもよい。
【0023】
LED基板2は、長尺のガラスエポキシ基板からなり、基板の長手方向に沿って、LED素子1が実装されている。なお、基板の材質はこれに限定されず、公知の金属基板、セラミックス基板等のプリント基板を使用してもよい。
このLED基板2は、光源収容部XのLED載置部12に装着されている。
【0024】
高反射性シート3は、二酸化チタン顔料を含有したポリカーボネート樹脂からなり、シート状に成形されたものである。この高反射性シート3は、図5に示すように、光源収容部X内部の、LED素子1の光軸Dから棚手前側に位置する各LED基板2、遮光部13、内壁14の表面に貼られている。
なお、二酸化チタン顔料のような拡散材を含有させる代わりに、アルミニウムのような金属をメッキあるいは蒸着したフィルムを使用してもよい。
【0025】
電源収容部Yは、天板15と前面部11a、後面部11bにより構成された空間部であり、LED電源部4は、図4に示す電線固定部材17とともに天板15に設置されている。LED駆動電源部4は、電気絶縁性プラスチック筐体の中に、交流を整流し平滑する図示していないLED駆動電源回路を収容したものである。
【0026】
透光性カバー6は、光拡散材であるシリカ粒子や、樹脂ビーズ等を含有したアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂を板状に成形したものである。本実施形態では、シリカ粒子を含有したポリカーボネートからなる光拡散性の板を使用した。
【0027】
(本実施形態に係わる光線軌跡)
本実施形態の配光制御手段は、高反射性シート3が貼られたLED基板2と遮光部13と内壁14とから構成されており、図1に示したように、LED素子1の出射光のうち棚手前側に向けて出射された光線の一部が遮光部13に遮られ、光源収容部X内部の高反射シート3に反射し、出射開口部5から商品陳列棚の奥側に配光される。すなわち、LED素子1の出射光は、遮光部13、内壁14、LED載置部12の各高反射シート3を順次屈折反射し、LED素子1の光軸Dから陳列棚手前側に向けて出射される光線AからCとなって、商品陳列棚の奥側に配光される。LED素子1からの直接光であるEからFの間の照射領域αに、反射光の前記AからCの照射領域βが重なり、商品陳列棚の奥側の被照射面の照度が増加する。これによって商品陳列棚全面を、より均一に照射することができるようになる。
【0028】
LED素子1の、載置部12上での位置や、遮光部13の長さや、内壁14の高さを調整することによって、商品陳列棚の奥側に振り向けられる光の量と、LED素子の光軸前後の(陳列棚の手前側と奥側を照射する)配光角度を簡単に制御できる。
またLED基板2のLED素子以外の部分や、遮光部13、内壁14に、高反射性シート3が貼られているので、効率的に棚の奥側を照らすことができている。
更に透光性カバー6は、光拡散性を有しているので、棚板や陳列商品の表面に、LED素子1が映りこむことを防止している。
【0029】
(棚板表面の輝度分布シミュレーション)
次に、本発明の効果を具体的に示す光線追跡シミュレーションによる棚板表面の輝度分布について説明する。
本実験例で使用した棚下灯10は、図1に示すようにLED素子1の光軸Dが棚板20に対して70°の角度となるように形成された載置部12と、I−I断面での長さ6mmの遮光部13と、同様にI−I断面での長さ14mmの出射開口部5とを備え、LED基板2から遮光部13までの距離が3mmに形成されている。
この棚下灯10を、上下間隔300mmの棚板の下面先端に取り付けた状態で、被照射面となる下側の棚表面の輝度分布のシミュレーションを行った。シミュレーションには光学設計ソフトウェアZemaxを用い、その結果を図6に示した。
図6の横軸は、LED素子の位置を0として棚の手前先端から奥側への距離(mm)を示しており、縦軸は被照射面の相対輝度を示している。図6中の実線が本実施形態の棚下灯10のシミュレーション結果であり、破線は遮光部13を形成していない比較のための棚下灯のシミュレーション結果である。図6に示されたとおり、本実施形態の棚下灯を使用することで、商品陳列棚から手前側の床面に照射されていた無駄となっていたLED光が商品陳列棚の奥側に配光され、棚板の被照射面全体の明るさがより均一となる。
【符号の説明】
【0030】
1:LED素子
2:LED基板
3:高反射性シート
4:LED駆動電源部
5:出射開口部
6:透光性カバー
10:棚下灯
11:筐体、11a:前面部、11b:後面部、11c:下面部
12:LED載置部
13:遮光部
14:内壁
15:天板
16:側板
17:電線固定部材
A、B、C:反射光
D:LED素子の光軸
E、F:直接光
X:光源収容部
Y:電源収容部
α:直接光の照射領域
β:反射光の照射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6