(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列の同一性はLipman−Pearson法(Lipman,DJ.,Pearson.WR.:Science,227,1435−1441,1985)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0017】
本明細書において、別途定義されない限り、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列におけるアミノ酸又は塩基の欠失、置換、付加又は挿入に関して使用される「1又は数個」とは、例えば、1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個であり得る。また本明細書において、アミノ酸又は塩基の「付加」には、配列の一末端及び両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
【0018】
本明細書において、ハイブリダイゼーションに関する「ストリンジェントな条件」としては、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)記載の条件が挙げられる。当業者は、プローブのヌクレオチド配列や濃度、長さ等に応じて、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、温度等を調節することにより、ストリンジェントな条件を適切に作り出すことができる。
【0019】
一例を示せば、上記「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション条件としては、5×SSC、70℃以上が好ましく、5×SSC、85℃以上がより好ましく、洗浄条件としては、1×SSC、60℃以上が好ましく、1×SSC、73℃以上がより好ましい。これら「ストリンジェントな条件」により、塩基配列同一性では約80%以上若しくは約90%以上の塩基配列を有する遺伝子の確認が可能である。上記SSCおよび温度条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記もしくは他の要素を適宜組み合わせることにより、適切なストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0020】
本明細書において、遺伝子の上流及び下流とは、それぞれ、対象として捉えている遺伝子又は領域の5’側及び3’側に続く領域を示す。別途定義されない限り、遺伝子の上流及び下流とは、遺伝子の翻訳開始点からの上流領域及び下流領域には限定されない。
【0021】
本明細書において、転写開始制御領域はプロモーター及び転写開始点を含む領域であり、翻訳開始制御領域は開始コドンと共にリボソーム結合部位を形成するShine−Dalgarno(SD)配列に相当する部位である(Shine,J.,Dalgarno,L.:Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,71,1342−1346,1974)。
【0022】
本明細書に記載の枯草菌の各遺伝子及びゲノム領域の名称は、JAFAN:Japan Functional Analysis Network for Bacillus subtilis(BSORF DB)でインターネット公開(bacillus.genome.ad.jp/、2006年1月18日更新)された枯草菌ゲノムデータに基づいて記載されている。
【0023】
本発明の組換え枯草菌は、ゲノムの大領域が欠失した枯草菌変異株を親株(宿主)として用い、当該親株に、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入することによって作製される。
【0024】
上記親株として用いられる枯草菌変異株は、枯草菌野生株(
Bacillus subtilis Marburg No.168;本明細書において以下、枯草菌168株又は単に168株、あるいは野生株と称する)のゲノムと比べて、そのゲノム中の大領域が欠失したゲノムを有する。すなわち、当該枯草菌変異株のゲノムにおいては、枯草菌野生株のゲノム中の、prophage6(yoaV−yobO)領域、prophage1(ybbU−ybdE)領域、prophage4(yjcM−yjdJ)領域、PBSX(ykdA−xlyA)領域、prophage5(ynxB−dut)領域、prophage3(ydiM−ydjC)領域、spb(yodU−ypqP)領域、pks(pksA−ymaC)領域、skin(spoIVCB−spoIIIC)領域、pps(ppsE−ppsA)領域、prophage2(ydcL−ydeJ)領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7(spoIVCB−yraK)領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域からなる群より選択される1以上の領域が欠失している。好ましくは、当該親株としては、枯草菌野生株のゲノム中の、prophage6(yoaV−yobO)領域、prophage1(ybbU−ybdE)領域、prophage4(yjcM−yjdJ)領域、PBSX(ykdA−xlyA)領域、prophage5(ynxB−dut)領域、prophage3(ydiM−ydjC)領域、spb(yodU−ypqP)領域、pks(pksA−ymaC)領域、skin(spoIVCB−spoIIIC)領域、pps(ppsE−ppsA)領域、prophage2(ydcL−ydeJ)領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7(spoIVCB−yraK)領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域の全てを欠失している枯草菌変異株が挙げられる。このような枯草菌変異株の例としては、特開2007−130013号公報に記載の枯草菌MGB874株が挙げられる。あるいは、当該枯草菌変異株MGB874株のゲノム領域から、さらに遺伝子又はゲノム領域を欠失させた枯草菌変異株を親株としてもよい。
【0025】
上記親株は、例えば、168株等の任意の枯草菌株から上述のゲノム領域を欠失させることによって作製することができる。欠失させるべき目的のゲノム領域は、例えば、当該任意の枯草菌株のゲノムを、公開されている枯草菌168株のゲノムと対比することにより決定することができる。枯草菌168株の全ヌクレオチド配列及びゲノムの情報は、上述のBSORF DB、又はGenBank:AL009126.2(www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/38680335)から入手することができる。当業者は、これらの情報源から得た枯草菌168株のゲノム情報に基づいて、欠失させるべき目的のゲノム領域を決定することができる。ここで、欠失させるべきゲノム領域は、公開されている枯草菌168株における上述のゲノム領域のヌクレオチド配列に対して、1又は数個(例えば、1〜100個、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜30個、さらに好ましくは1〜10個、さらにより好ましくは1〜5個)の塩基における天然又は人工的に引き起こされた欠失、置換、挿入、付加等の変異を含むヌクレオチド配列を有するゲノム領域であり得る。あるいは、欠失させるべきゲノム領域は、公開されている枯草菌168株における上述のゲノム領域に対して、ヌクレオチド配列において50%以上同一、好ましくは60%以上同一、より好ましくは70%以上同一、さらに好ましくは80%以上同一、さらにより好ましくは90%以上同一、なお好ましくは95%以上同一なゲノム領域であり得る。
【0026】
あるいは、上記欠失させるべきゲノム領域は、表1に示す一対のオリゴヌクレオチドセットにより挟み込まれる領域として表すことができる。表1記載の領域を枯草菌ゲノム上から欠失させる方法としては、特に限定されないが、例えばSOE−PCR法(splicing by overlap extension PCR:Gene,77,61,1989)等により調製された欠失用DNA断片を用いた2重交差法が挙げられる。当該方法により枯草菌野生株から所定のゲノム領域が欠失した変異株を作製する手順は、特開2007−130013号公報に詳述されているが、以下に概要を説明する。
【0028】
SOE−PCR法による欠失用DNA断片の調製と当該欠失用DNA断片を用いた2重交差法による目的領域の欠失の手順の概要を
図1に示す。初めに、SOE−PCR法により、欠失させるべき目的領域の上流に隣接する約0.1〜3kb領域に対応する断片(上流断片と称する)と、同じく下流に隣接する約0.1〜3kb領域に対応する断片(下流断片と称する)とを連結したDNA断片を調製する。好ましくは、目的領域の欠失を確認するために、当該上流断片と下流断片の間に薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子断片をさらに連結したDNA断片を調製する。
【0029】
まず、1回目のPCRによって、欠失させるべき領域の上流断片A及び下流断片B、並びに必要に応じてマーカー遺伝子断片(
図1中では、クロラムフェニコール耐性遺伝子断片Cm)の3断片を調製する。上流断片及び下流断片のPCR増幅の際には、後に連結される断片の末端10〜30ヌクレオチドの配列を付加したプライマーを使用する。例えば、上流断片A、薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cm、及び下流断片Bをこの順で連結させる場合、上流断片Aの下流末端に結合するプライマーの5’末端に、薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cmの上流側10〜30ヌクレオチドに相当する配列を付加し(
図1、プライマーDR1)、また下流断片Bの上流末端に結合するプライマーの5’末端に、薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cmの下流側10〜30ヌクレオチドに相当する配列を付加する(
図1、プライマーDF2)。このように設計したプライマーセットを用いて上流断片A及び下流断片BをPCRで増幅した場合、増幅された上流断片A’の下流側には薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cmの上流側に相当する領域が付加されることとなり、増幅された下流断片B’の上流側には薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cmの下流側に相当する領域が付加されることとなる。
【0030】
次に、1回目のPCRで調製した上流断片A’、薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cm、及び下流断片B’を混合して鋳型とし、上流断片の上流側に結合するプライマー(
図1、プライマーDF1)及び下流断片の下流側に結合するプライマー(
図1、プライマーDR2)からなる1対のプライマーを用いて2回目のPCRを行う。この2回目のPCRにより、上流断片A、薬剤耐性マーカー遺伝子断片Cm、及び下流断片Bをこの順で結合した欠失用DNA断片Dを増幅することができる。
【0031】
上述の方法などによって得られる欠失用DNA断片を、通常の制限酵素とDNAリガーゼを用いてプラスミドに挿入し、欠失導入用プラスミドを構築する。あるいは、上流断片及び下流断片を直接連結した欠失用DNA断片を調製した後、当該欠失用DNA断片を薬剤耐性マーカー遺伝子を含むプラスミドに挿入することで、上流断片及び下流断片に加えて薬剤耐性マーカー遺伝子断片を有する欠失導入用プラスミドを構築することができる。
【0032】
上記手順で構築された欠失導入用プラスミドを、コンピテントセル形質転換法等の通常の手法により、ゲノム領域を欠失させたい枯草菌に導入する。プラスミドの導入により、当該プラスミド上の上流断片及び下流断片と、枯草菌ゲノムのそれらに相同な領域との間で2重交差の相同組換えが生じ、欠失させるべき領域が薬剤耐性マーカー遺伝子に置き換えられた形質転換体が得られる(
図1)。形質転換体の選択は、欠失用DNA断片中に存在する薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子の発現を指標に行えばよい。例えば、クロラムフェニコール耐性遺伝子断片で形質転換処理をした菌を、抗生物質(クロラムフェニコール等)を含む培地で培養し、生育したコロニーを回収することで、目的の領域が欠失しクロラムフェニコール耐性遺伝子に置き換えられた形質転換体を取得することができる。さらに、形質転換体のゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行うことで、目的の領域が欠失されていることを確認することができる。
【0033】
次に、得られた形質転換体から、ゲノムDNAに挿入された上記マーカー遺伝子を除去する。除去の手順としては、特に限定されないが、
図2に示すような2段階相同組換え法を用いることができる(特開平2009−254350号公報参照)。当該方法では、初めに第1相同組換えのためのDNA断片(供与体DNA)を調製する。調製の方法としては、特に限定されないが、上述したSOE−PCR法等が挙げられる。供与体DNAとしては、例えば、除去すべきマーカー遺伝子領域(すなわち、欠失された領域)の上流に隣接する領域に対応する約0.1〜3kb断片(上流断片)及び同じく下流に隣接する領域に対応する約0.1〜3kb断片(下流断片)が結合した断片と、当該除去すべきマーカー遺伝子下流領域の断片とが連結したDNA断片を用いることができる。好適には、当該下流断片と除去すべき第1のマーカー遺伝子下流領域断片との間に、相同組換えの指標となる第2のマーカー遺伝子等が挿入されたDNA断片が用いられる(
図2を参照)。
【0034】
次いで、調製された供与体DNAをコンピテントセル形質転換法等の通常の手法によって上記形質転換体に導入し、当該形質転換体ゲノム上の当該上流断片及び第1のマーカー遺伝子下流領域に相当する領域との間に相同組換えを起こさせる(第1相同組換え)。所望の相同組換えが生じた形質転換体は、供与体DNA中に挿入した第2のマーカー遺伝子の発現を指標に選択することができる。第1相同組換えが適切に生じた形質転換体のゲノムDNAでは、上流断片、下流断片、必要に応じて第2のマーカー遺伝子、第1のマーカー遺伝子下流領域、及び下流断片が順番に配置している(
図2参照)。このような配置を有するゲノムDNAにおいては、上記2つの下流断片同士の間で自然誘発的に相同組換えが起こり得る(ゲノム内相同組換え)。このゲノム内相同組換えによって、当該2つの下流断片の間に位置していた領域が欠失することにより、第1のマーカー遺伝子が形質転換体ゲノムから除去される。
【0035】
ゲノム内相同組換えを起こした形質転換体を選択する手段としては、第1のマーカー遺伝子が薬剤耐性遺伝子の場合は、薬剤耐性を持たない菌を選択する方法が挙げられる。ペニシリン系抗生物質は、増殖細胞に対して殺菌的に作用するが非増殖細胞には作用しない。したがって、薬剤とペニシリン系抗生物質の存在下で菌を培養すれば、薬剤存在下で増殖しない薬剤非耐性菌を選択的に濃縮することができる(Methods in Molecular Genetics,Cold Spring Harbor Labs,1970)。別の手段としては、致死遺伝子を導入する方法が挙げられる。例えば、上記第2のマーカーとしてchpA遺伝子等の致死遺伝子を菌に導入すれば、ゲノム内相同組換えが起こらなかった菌は当該致死遺伝子の作用で死滅するので、ゲノム内相同組換えを起こした形質転換体を選択することができる。選択された菌株からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行うことで、目的の領域が欠失されていることを確認することができる(特開2009-254350号公報)。
【0036】
以上のようにして、ゲノム上の所定の領域を欠失した枯草菌変異株を作製することができる。さらに、当該手順を繰り返すことにより、上述のゲノム領域が全て欠失した枯草菌変異株を作製することができる。
【0037】
本発明の組換え枯草菌は、上述した親株に、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入することにより得ることができる。上記遺伝子が導入された本発明の組換え枯草菌は、優れたDPA産生能を有する。
【0038】
本明細書において「プロモーターと作動可能に連結された遺伝子」とは、当該プロモーターによる制御の下に発現し得るように配置されている遺伝子をいう。
【0039】
本明細書において、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期とは、枯草菌の胞子形成過程において第V期と称されている期間を意味する。枯草菌の胞子形成過程は、栄養増殖による細胞分裂が停止する第0期に始まり、隔膜が形成される第II期、隔膜で隔てられた一方にフォアスポアが形成される第III期、フォアスポア外周にコルテックス層が形成される第IV期、コルテックス層の外周にスポアコートタンパク質が沈着する第V期が含まれる。枯草菌の胞子形成における第0期においてはRNAポリメラーゼであるσA及びσHが遺伝子の転写を制御している。第II期においては、隔膜で隔てられた一方側でσFが転写を制御し、他方側でσEが転写を制御している。また、第III期においては、フォアスポア内でσGが転写を制御し、フォアスポア外でσEが転写を制御している。さらに、第IV期においては、スポアコート層に覆われた胞子内部でσGが転写を制御し、胞子外部でσKが転写を制御している。さらにまた、第V期において、スポアコートに覆われた胞子内部でσGが転写を制御し、胞子外部でσKが転写を制御している。
【0040】
したがって、枯草菌の場合、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターとしては、σA因子依存性プロモーター、σH因子依存性プロモーター、σE因子依存性プロモーター及びσF因子依存性プロモーターが挙げられる。構成的に作用するプロモーターを使用することが好ましく、より好ましい例としては、σA依存性プロモーター及びσH依存性プロモーターが挙げられる。また、環境ストレスに応じて発現するσB因子依存性プロモーターや、ECF(extracytoplasmic function)σ因子依存性プロモーター(FEMS Microbiol Lett.,14,220(1),155−60,2003)を使用することもできる。
【0041】
σA因子依存性プロモーターとしては、特に限定されないが、枯草菌ファージSP01プロモーター(Proc.Natl.Acd.Sci.USA.,81,439−443,1984)、veg遺伝子、amyE(アミラーゼ)遺伝子、aprE(ズブチリシン)遺伝子及びS237(S237セルラーゼ、特開2000−210081号公報)遺伝子のプロモーターを挙げることができる。σH因子依存性プロモーターとしては、特に限定されないが、citG遺伝子、spoVS遺伝子及びspoVG(Proc. Natl. Acd. Sci. USA. (1986) 83:9438−9442.)遺伝子のプロモーターが挙げられる。σE因子依存性プロモーターとしては、特に限定されないが、cotE遺伝子及びspoIVA遺伝子のプロモーターが挙げられる。本方法においては、特に、
Bacillus subtilisのspoVG遺伝子のプロモーター、及びS237セルラーゼ遺伝子のプロモーターが望ましい。
【0042】
本明細書において、所定の遺伝子のプロモーターとは、当該遺伝子におけるコーディング領域の上流に存在し、RNAポリメラーゼが相互作用して当該遺伝子の転写を制御する機能を有する領域と定義される。より具体的には、所定の遺伝子のプロモーターとは、当該遺伝子におけるコーディング領域の上流200〜600ヌクレオチド程度の領域を意味する。
【0043】
より具体的な例として、σH因子依存性プロモーターであるspoVG遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列を配列番号1に示す。さらに、配列番号1に示すヌクレオチド配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、付加又は挿入されたヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであって、σH因子依存性プロモーターとして機能するポリヌクレオチド、又は配列番号1に示すヌクレオチド配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、σH因子依存性プロモーターとして機能するポリヌクレオチドも、当該σH因子依存性プロモーターとして本発明で使用することができる。ここで、「σH因子依存性プロモーターとして機能する」とは、RNAポリメラーゼであるσH因子によって特異的に転写制御されることを意味する。この特異性は、評価対象となるポリヌクレオチドの下流にレポーター遺伝子を結合し、σH因子存在下及び不存在下でのレポーター遺伝子の発現を観察することによって評価することができる。
【0044】
別の具体的な例として、σA因子依存性プロモーターであるS237セルラーゼ遺伝子のプロモーターのヌクレオチド配列を配列番号2に示す。さらに、配列番号2に示すヌクレオチド配列において1又は数個の塩基が置換、欠失、付加又は挿入されたヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであって、σA因子依存性プロモーターとして機能するポリヌクレオチド、又は配列番号
2に示すヌクレオチド配列に対して80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、σA因子依存性プロモーターとして機能するポリヌクレオチドも、当該σA因子依存性プロモーターとして本発明で使用することができる。ここで、「σA因子依存性プロモーターとして機能する」とは、RNAポリメラーゼであるσA因子によって特異的に転写制御されることを意味する。この特異性は、評価対象となるポリヌクレオチドの下流にレポーター遺伝子を結合し、σA因子存在下及び不存在下でのレポーター遺伝子の発現を観察することによって評価することができる。
【0045】
同様に、本方法において好適に使用されるσE因子依存性プロモーターであるcotE遺伝子プロモーターのヌクレオチド配列を配列番号3に示す。
【0046】
例えば他のバチルス属の微生物やクロストリジウム属の微生物のように、枯草菌以外の微生物でも、枯草菌の胞子形成過程と同様な過程を経て胞子が形成される。すなわち、枯草菌以外の微生物であっても、胞子形成過程にスポアコート沈着期が含まれる。したがって、枯草菌以外の微生物からも、スポアコート沈着期より前において働くプロモーターを一義的に同定して単離することができる。例えば、枯草菌以外の他のバチルス属の微生物におけるσA因子依存性プロモーター、σH因子依存性プロモーター、σE因子依存性プロモーター及びσF因子依存性プロモーターは、本発明に使用され得るプロモーターである。また例えば、上記クロストリジウム属の微生物においては、σA依存性プロモーターに相当するプロモーターとしてptb遺伝子プロモーターが知られている。また、クロストリジウム属の微生物においてσH依存性プロモーターに相当するプロモーターとしては、spoVG遺伝子プロモーターが知られている。さらに、クロストリジウム属の微生物においてσE依存性プロモーターに相当するプロモーターとしては、flgE遺伝子プロモーターが知られている(Journal of Bacteriology,187,7103−7118,2005及びNuclic Acids Research,32,6,1973−1981,2004参照)。
【0047】
本明細書において、上述したプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子とは、下記の化学反応を進行させる活性を有するジピコリン酸シンターゼをコードする遺伝子である。
【0049】
枯草菌におけるジピコリン酸シンターゼ遺伝子は、ジピコリン酸シンターゼ・サブユニットAをコードするspoVFAと、ジピコリン酸シンターゼ・サブユニットBをコードするspoVFBとから構成されている。枯草菌spoVFA遺伝子のヌクレオチド配列及び当該spoVFA遺伝子によりコードされるジピコリン酸シンターゼ・サブユニットAのアミノ酸をそれぞれ配列番号4及び5に示す。また、枯草菌spoVFB遺伝子のヌクレオチド配列及び当該spoVFB遺伝子によりコードされるジピコリン酸シンターゼ・サブユニットBのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号6及び7に示す。なお、野生型の枯草菌において、spoVFA及びspoVFBはこの順で配置されてオペロンを形成しており、共にσK因子依存性プロモーターにより転写制御されている。したがって、野生型の枯草菌において、spoVFA遺伝子及びspoVFB遺伝子は枯草菌胞子形成過程における第V期に発現し、内生胞子中にジピコリン酸が蓄積することとなる。
【0050】
本発明で使用できるジピコリン酸シンターゼ遺伝子の例としては、以下の(i)及び(ii)の組み合わせが挙げられる。
(i)以下のいずれかである枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子:
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号5に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号5に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び、
配列番号5に示すアミノ酸配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(ii)以下のいずれかである枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子:
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号6に示すヌクレオチド配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号7に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号7に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;及び、
配列番号7に示すアミノ酸配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは85%、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0051】
さらに、上記枯草菌spoVFA遺伝子及びspoVFB遺伝子に相当する遺伝子の例としては、枯草菌以外の微生物由来のジピコリン酸シンターゼ遺伝子が挙げられる。枯草菌以外の微生物に由来するジピコリン酸シンターゼ遺伝子の例としては、
Bacillus licheniformis由来のspoVFA(配列番号8)及びspoVFB(配列番号9)、
Bacillus clausii由来のspoVFA(配列番号10)及びspoVFB(配列番号11)、
Clostridium thermocellum由来のCtheDRAFT_2170(配列番号12)及びCTHEDRAFT_2171(配列番号13)、Bacillus atrophaeus由来のspoVFA(配列番号14)及びspoVFB(配列番号15)、ならびにBacillus amyloliquefaciens由来のspoVFA(配列番号16)及びspoVFB(配列番号17)等を挙げることができる。本方法においては、上述した如何なる微生物由来のジピコリン酸シンターゼ遺伝子をも使用することができる。
【0052】
本発明の組換え枯草菌において、上述したジピコリン酸シンターゼ遺伝子は、上記胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されている。したがって、本発明の組換え枯草菌において、当該ピコリン酸シンターゼ遺伝子は、当該胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーター支配下に転写される。
【0053】
上記胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーター及び上記ジピコリン酸シンターゼ遺伝子は、当該プロモーターの制御下に当該遺伝子が発現されるように配置され、さらに宿主ゲノムとの相同領域と結合されたDNA断片として構築され得る。このDNA断片を上述した親株(宿主)に導入すれば、宿主ゲノム中に当該DNA断片が挿入されて、宿主を形質転換することができる。形質転換法としては、宿主となる微生物に応じて適切な、且つ一般的な方法を採用することができる。例えば、上流から、上述したプロモーター(例えば、spoVG遺伝子プロモーター)、spoVFA、spoVFBの順で配置した断片を作製し、さらにその断片に親株ゲノムの一部との相同領域を結合してDNA断片を調製する。得られたDNA断片を用いて宿主を形質転換する。
【0054】
あるいは、上記胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーター及び上記ジピコリン酸シンターゼ遺伝子は、当該プロモーターの制御下に当該遺伝子が発現されるように所望のベクターに組み込まれ得る。例えば、上述したプロモーター(例えば、spoVG遺伝子プロモーター)領域、spoVFA遺伝子、及びspoVFB遺伝子の断片をPCR等によって増幅し、次いで当該断片を制限酵素法等の通常の方法によってベクターに挿入し、連結すればよい。その際、ベクター上で、上流から当該プロモーター断片、spoVFA断片、spoVFB断片の順で連結されているようにする。得られた組換えベクターを用いて通常の方法に従い宿主を形質転換することができる。
【0055】
遺伝子の増幅にはPCR法などを用いることができる。PCR反応は、例えばPyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ)を用いることができ、反応条件は酵素の製品説明書に従って行えばよい。
【0056】
上記ベクターとしては、プラスミド等の通常のベクターを使用することができる。当該ベクターの種類は、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。また当該プラスミドは、宿主内で自己複製可能なプラスミドであることが好ましく、そのプラスミドが多コピーであることがより好ましい。さらに、そのプラスミドのコピー数が宿主ゲノム(染色体)に対し、2以上100コピー以下であれば良く、好ましくは2以上50コピー以下、より好ましくは2以上30コピー以下であれば良い。好ましいプラスミドの例としては、例えば、pT181、pC194、pUB110、pE194、pSN2、pHY300PLK、pHYEg1S等が挙げられる。
【0057】
構築された目的遺伝子を含むベクターは、通常の手法、例えばプロトプラスト法(Chamg S.&Cohen,SH.,Mol.Gen.Genet.,168,111−115,1979)やコンピテントセル法(Young FE.&Spizizen J.,J.Bacteriol.,86,392−400,1963)により、宿主に導入され得る。
【0058】
さらにまた、上述したDNA断片で形質転換した組換え微生物を、上述した組換えベクターを用いて再度、形質転換することによって、上述したジピコリン酸シンターゼ遺伝子を高発現できる組換え微生物を取得することができる。形質転換された組換え微生物においては、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーター支配下にジピコリン酸シンターゼ遺伝子が転写されることとなる。
【0059】
以上の手順で、ゲノムの大領域が欠失したゲノムを有する枯草菌変異株に、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子が導入された、本発明の組換え枯草菌を作製することができる。本発明の組換え枯草菌は高いDPA生産能を有している。本発明の組換え枯草菌のDPA生産能は、同じプロモーターとジピコリン酸シンターゼ遺伝子とが導入された枯草菌野生株(168株)と比べて顕著に向上している(下記試験例1〜3参照)。本発明の組換え枯草菌を培養することによって当該菌内に効率よくDPAが生産される。したがって、本発明の別の態様は、上述した本発明の組換え枯草菌を用いるDPA又はその塩の製造方法に関する。
【0060】
本発明のDPA又はその塩の製造方法においては、先ず、上記本発明の組換え枯草菌を培養する。培養する方法に特に制限はなく、通常の微生物の培養方法を用いることができる。すなわち、使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じその他の有機成分を含む通常の培地である。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷん及びセルロースの加水分解物、糖蜜等の糖類、グリセロール、エタノール、ソルビトール等のアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸を用いることができる。窒素源として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水、尿素、グルタミン酸、リジン、グリシン、アラニン、メチオニン、アスパラギン酸、アルギニン酸等を用いることができる。有機微量栄養源として、ビタミン類、アミノ酸等の要求物質、又は、必要に応じて酵母エキス、コーンスティープリカー等を含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、銅イオン、鉄イオン、マンガンイオン等を添加することが望ましい。場合によっては、消泡剤等も添加される。
【0061】
培地のpHは6.0〜8.0に調節することが適当であり、pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行えばよい。培養は、15〜45℃、好ましくは25〜45℃で、6〜96時間、更に好ましくは24〜72時間行い、必要により通気や攪拌を加えてもよい。なお、組換え枯草菌の場合は、培地のpHは、親株として用いた枯草菌が生育し得る範囲、例えば、pH6.0〜8.0に調整するのが好適である。また、培養条件は、15〜42℃、好ましくは28〜37℃で2〜4日間振盪、又は通気撹拌培養すればよい。
【0062】
以上のように、本発明の組換え枯草菌を培養することによって、培養上清中にDPAを生産することができる。生産されたDPAは、公知の方法によって回収することができる。なお、上記のように培養した微生物を、アスパラギン酸及び/又はピルビン酸を含む水溶液中に懸濁させることで、反応上清液中にDPAを産生させることも可能である。この時、エネルギー源として上記培地に添加されるような物質を共存させることでさらに効率よくDPAを産生させることが可能である。
【0063】
上記培養上清又は反応上清液からのDPAの単離は、公知の方法、例えば、イオン交換樹脂による吸脱着、晶析による固液分離、膜処理による不純物の除去等、又はそれらを組み合わせることで実施することができる。この方法により、容易にジピコリン酸の結晶又は沈殿を得ることができる。
【0064】
上記イオン交換樹脂処理などによって得られたDPAを含有する溶液に、目的に応じた量のアルカリを添加することで、DPAの塩を得ることができる。具体的には、NaOHを添加することにより、ジピコリン酸ナトリウム塩を得ることができる。
【0065】
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の組成物、製造方法、あるいは用途を本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0066】
<1>組換え枯草菌であって、
prophage6領域、prophage1領域、prophage4領域、PBSX領域、prophage5領域、prophage3領域、spb領域、pks領域、skin領域、pps領域、prophage2領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域からなる群より選択される1以上の領域が欠失したゲノムを有し、且つ、
胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を有する、
組換え枯草菌。
【0067】
<2>組換え枯草菌であって、
prophage6領域、prophage1領域、prophage4領域、PBSX領域、prophage5領域、prophage3領域、spb領域、pks領域、skin領域、pps領域、prophage2領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域が欠失したゲノムを有し、且つ、
胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を有する、
組換え枯草菌。
【0068】
<3>上記各領域が表1に記載の各オリゴヌクレオチドセットにより挟まれる領域である<1>又は<2>記載の組換え枯草菌。
【0069】
<4>上記ジピコリン酸シンターゼ遺伝子が枯草菌spoVFA遺伝子又はこれに相当する遺伝子、及び枯草菌spoVFB遺伝子又はこれに相当する遺伝子である<1>〜<3>のいずれか1に記載の組換え枯草菌。
【0070】
<5>枯草菌spoVFA遺伝子又はこれに相当する遺伝子が、
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は、
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、
枯草菌spoVFB遺伝子又はこれに相当する遺伝子が、
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号6に示すヌクレオチド配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は、
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、
<4>記載の組換え枯草菌。
【0071】
<6>上記スポアコートタンパク沈着期は、枯草菌胞子形成期第V期に相当する期である、<1>〜<5>のいずれか1に記載の組換え枯草菌。
【0072】
<7>上記プロモーターは、σA依存性プロモーター又はσH依存性プロモーターである、<1>〜<6>のいずれか1に記載の組換え枯草菌。
【0073】
<8>上記プロモーターは、S237セルラーゼ遺伝子プロモーター又はspoVGプロモーターである、<1>〜<7>のいずれか1に記載の組換え枯草菌。
【0074】
<9>上記胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子が、上記組換え枯草菌で自己複製可能なベクターに組み込まれている<1>〜<8>のいずれか1に記載の組換え枯草菌。
【0075】
<10>上記自己複製可能なベクターがpT181、pC194、pUB110、pE194、pSN2、pHY300PLK又はpHYEg1Sである、<9>記載の組換え枯草菌。
【0076】
<11>上記<1>〜<10>記載の組換え枯草菌を用いるジピコリン酸又はその塩の製造方法。
【0077】
<12>組換え枯草菌の製造方法であって、
prophage6領域、prophage1領域、prophage4領域、PBSX領域、prophage5領域、prophage3領域、spb領域、pks領域、skin領域、pps領域、prophage2領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域からなる群より選択される1以上の領域が欠失したゲノムを有する枯草菌変異株に、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入する工程を含む、
方法。
【0078】
<13>組換え枯草菌の製造方法であって、
prophage6領域、prophage1領域、prophage4領域、PBSX領域、prophage5領域、prophage3領域、spb領域、pks領域、skin領域、pps領域、prophage2領域、ydcL−ydeK−ydhU領域、yisB−yitD領域、yunA−yurT領域、cgeE−ypmQ領域、yeeK−yesX領域、pdp−rocR領域、ycxB−sipU領域、SKIN−Pro7領域、sbo−ywhH領域、yybP−yyaJ領域及びyncM−fosB領域が欠失したゲノムを有する枯草菌変異株に、胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入する工程を含む、
方法。
【0079】
<14>上記各領域が表1に記載の各オリゴヌクレオチドセットにより挟まれる領域である<12>又は<13>記載の方法。
【0080】
<15>上記ジピコリン酸シンターゼ遺伝子が枯草菌spoVFA遺伝子又はこれに相当する遺伝子、及び枯草菌spoVFB遺伝子又はこれに相当する遺伝子である<12>〜<14>のいずれか1に記載の方法。
【0081】
<16>枯草菌spoVFA遺伝子又はこれに相当する遺伝子が、
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号4に示すヌクレオチド配列と50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は、
配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFB又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり、
枯草菌spoVFB遺伝子又はこれに相当する遺伝子が、
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
配列番号6に示すヌクレオチド配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;又は、
配列番号6に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ枯草菌spoVFA又はそれに相当する遺伝子がコードするタンパク質の存在下でジピコリン酸シンターゼ活性を発揮するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである、
<15>記載の方法。
【0082】
<17>上記スポアコートタンパク沈着期は、枯草菌胞子形成期第V期に相当する期である、<12>〜<16>のいずれか1に記載の方法。
【0083】
<18>上記プロモーターは、σA依存性プロモーター又はσH依存性プロモーターである、<12>〜<17>のいずれか1に記載の方法。
【0084】
<19>上記プロモーターは、S237セルラーゼ遺伝子プロモーター又はspoVGプロモーターである、<12>〜<18>のいずれか1に記載の方法。
【0085】
<20>上記胞子形成期におけるスポアコートタンパク沈着期より前において働くプロモーターと作動可能に連結されたジピコリン酸シンターゼ遺伝子が、上記組換え枯草菌で自己複製可能なベクターに組み込まれている<12>〜<19>のいずれか1に記載の方法。
【0086】
<21>上記自己複製可能なベクターがpT181、pC194、pUB110、pE194、pSN2、pHY300PLK又はpHYEg1Sである、<20>記載の方法。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
(製造例1)枯草菌変異株MGB874株の構築
枯草菌168株を親株として、表1に記載の各ヌクレオチド配列に挟まれる各領域について、上述の所定のゲノム領域が欠失した変異株を作製する手順(特開平2007−130013号公報)に従ったゲノム領域の欠失、及びそれに続くマーカー遺伝子の削除及び確認を逐次行なうことにより、表1に記載の各ヌクレオチド配列に挟まれる領域全てを欠失させた枯草菌変異株MGB874株を調製した。
【0089】
(製造例2)ベクターの構築1
Bacillus sp.KSM−S237株由来(入手先:特開2000−210081号公報)のセルラーゼ遺伝子を含む組換えプラスミドpHYEglSを鋳型とし、表2記載のプライマーS237UB1(配列番号18)及びS237sVFABd1(配列番号19)を用いて、S237プロモーターを含む0.6kb断片(E)をPCRにより増幅した。また、枯草菌168株から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、S237sVFABu2(配列番号20)、S237sVFABd2(配列番号21)を用いてジピコリン酸シンターゼ構造遺伝子を含む1.5kb断片(F)をPCRにより増幅した。
【0090】
次に、得られた断片(E)及び断片(F)を、上流からこの順で配置されるようにS237UB1及びS237sVFABd2プライマーを用いたSOE−PCR法によって結合させ、2.1kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片をシャトルベクターpHY300PLKのEcoRI、XbaI制限酵素切断点に挿入し、組換えプラスミドpHY−PS237−spoVFABを構築した。プラスミドpHY−PS237−spoVFABに対するサンガー法によるシークエンシングによって目的のプロモーター及び遺伝子が挿入されていることを確認した。
【0091】
【表2】
【0092】
(製造例3)ベクターの構築2
168VGspoVF株(特開2008−48732号公報)から抽出したゲノムDNAを鋳型とし、表3記載のプライマーPtsI/PsvG FW(配列番号22)及びspoVFB/BamHI RV(配列番号23)を用いて、spoVGプロモーター及びジピコリン酸シンターゼ構造遺伝子を含むDNA断片(約1.8kb)をPCRにより増幅した。
【0093】
得られたDNA断片をシャトルベクターpHY300PLKのPtsI、BamHI制限酵素切断点に挿入し、組換えプラスミドpHY−PspoVG−spoVFABを構築した。プラスミドpHY−PspoVG−spoVFABに対するサンガー法によるシークエンシングによって目的のプロモーター及び遺伝子が挿入されていることを確認した。
【0094】
【表3】
【0095】
(実施例1)ジピコリン酸シンターゼ遺伝子が導入された組換え枯草菌の作製−1
製造例1で構築した枯草菌野生株ゲノムの大領域が欠失したゲノムを有する枯草菌変異株MGB874株(特開2007−130013号公報)を宿主微生物とした。
製造例2で構築したDPA組換え生産用ベクターpHY−PS237−spoVFABを用いて、プロトプラスト形質転換法(Mol.Gen.Genet.,168,111,1979)により宿主微生物を形質転換した。テトラサイクリン−塩酸塩50ppmを添加したDM3プロトプラスト再生培地(0.5Mコハク酸ナトリウム(pH7.3)、0.5%カザミノ酸(ディフコ社製)、0.5%酵母エキス(ディフコ社製)、0.35% K
2HPO
4、0.15% KH
2PO
4、0.5%グルコース、20mM MgCl
2、0.01%牛血清アルブミン(シグマ社製)、1%バクト寒天(ディフコ社製))上に生育したコロニーを目的とする枯草菌形質転換体として選抜した。
以上の手順により、MGB874株に
Bacillus sp.KSM−S237株(FERM BP−7875)由来のセルラーゼ遺伝子(特開2000−210081)のプロモーター領域及び枯草菌168株由来のspoVFA及びspoVFB遺伝子を導入した株(pHY-PS237-spoVFAB/MGB874株)を得た。
【0096】
(実施例2)ジピコリン酸シンターゼ遺伝子が導入された組換え枯草菌の作製−2
製造例1で構築したMGB874株を宿主微生物とした。
製造例3で構築したDPA組換え生産用ベクターpHY−PspoGV−spoVFABを用いて、プロトプラスト形質転換法(Mol.Gen.Genet.,168,111,1979)により宿主微生物を形質転換した。テトラサイクリン−塩酸塩50ppmを添加したDM3プロトプラスト再生培地(0.5Mコハク酸ナトリウム(pH7.3)、0.5%カザミノ酸(ディフコ社製)、0.5%酵母エキス(ディフコ社製)、0.35% K
2HPO
4、0.15% KH
2PO
4、0.5%グルコース、20mM MgCl
2、0.01%牛血清アルブミン(シグマ社製)、1%バクト寒天(ディフコ社製))上に生育したコロニーを目的とする枯草菌形質転換体として選抜した。
以上の手順により、MGB874株に枯草菌168株由来のspoVGプロモーター領域とspoVFA及びspoVFB遺伝子とを導入した株(pHY-PspoVG-spoVFAB/MGB874株)を得た。
【0097】
(比較例1)
枯草菌168株にspoVFプロモーターが導入された168VGspoVF株(特開2008−48732号公報)を宿主として、実施例1と同様の手順で、S237セルラーゼ遺伝子プロモーター及び枯草菌spoVFA及びspoVFB遺伝子を導入した株(pHY-PS237-spoVFAB/168VGspoVF株)を得た。
【0098】
(比較例2)
枯草菌168株を宿主として、実施例1と同様の手順で、S237セルラーゼ遺伝子プロモーター及び枯草菌spoVFA及びspoVFB遺伝子を導入した株(pHY-PS237-spoVFAB/168株)を得た。
【0099】
(試験例1)DPA生産性評価(1)
pHY-PS237-spoVFAB/MGB874株(実施例1)は、15ppmのテトラサイクリンを含む5mLのLB培地(1.0%トリプトン(ディフコ社製)、0.5%酵母エキス(ディフコ社製)、1.0%NaCl)で30℃において15時間振盪培養を行い、さらにこの培養液に、OD≒0.05になるように30mLの2×L−マルトース+MSG培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、7.5%マルトース、8%グルタミン酸ナトリウム1水和物、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、37℃、210rpmで3日間、振盪培養を行った(N=3)。
pHY-PS237-spoVFAB/168VGspoVF株(比較例1)は、20mLの培地(2%酵母エキス、4%コーンスティーブリカー、0.05%硫酸マグネシウム7水塩、0.001%硫酸マンガン、0.2%L−トリプトファン、0.5%リジン塩酸塩、4%アスパラギン酸ナトリウム塩、0.15%リン酸1カリウム、0.35%リン酸2カリウム、14%マルトース1水和物を含有)に摂取し、37℃、210rpmで3日間、振盪培養を行った(N=3)。
培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてDPA生産量を測定し、168VGspoVF株の形質転換体(比較例1)の生産量を100%とした場合の相対値を求めた。
【0100】
MGB874株にジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入した組換え枯草菌は、培養3日目では、168VGspoVF株からの組換え枯草菌(比較例1)と比較してDPA生産量が高かった(表4)。
【0101】
【表4】
【0102】
(試験例2)DPA生産性評価(2)
pHY-PS237-spoVFAB/MGB874株(実施例1)およびpHY-PS237-spoVFAB/168株(比較例2)は、15ppmのテトラサイクリンを含む5mLのLB培地で30℃において15時間振盪培養を行い、さらにこの培養液にOD≒0.05になるようにM(MOPS)+MSG培地(10%グルコース、1.8%塩化アンモニウム、0.15%リン酸水素2カリウム、0.035%硫酸マグネシウム7水和物、0.005%硫酸マンガン5水和物、50mM MOPS(モノホリノプロパンスルホン酸)緩衝剤(pH7.0)、その他微量金属、8%グルタミン酸ナトリウム1水和物、15ppmテトラサイクリン)30mLに接種し、37℃、210rpmで3日間、振盪培養を行った(N=3)。
培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてDPA生産量を測定し、168株の形質転換体(比較例2)の生産量を100%とした場合の相対値を求めた。
【0103】
MGB874株にジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入した組換え枯草菌は、168株からの組換え枯草菌(比較例2)と比較してDPA生産量が高かった(表5)。
【0104】
【表5】
【0105】
(試験例3)DPA生産性評価(3)
pHY-PspoVG-spoVFAB/MGB874株(実施例2)は、15ppmのテトラサイクリンを含む5mLのLB培地(1.0%トリプトン(ディフコ社製)、0.5%酵母エキス(ディフコ社製)、1.0%NaCl)で30℃において15時間振盪培養を行い、さらにこの培養液に、OD≒0.05になるように30mLの2×L−マルトース+MSG培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、7.5%マルトース、8%グルタミン酸ナトリウム1水和物、7.5ppm硫酸マンガン4−5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、37℃、210rpmで3日間、振盪培養を行った(N=3)。
培養終了後、下記測定例に示す分析条件にてDPA生産量を測定し、168VGspoVF株の形質転換体(比較例1)の生産量を100%とした場合の相対値を求めた。
【0106】
MGB874株にジピコリン酸シンターゼ遺伝子を導入した組換え枯草菌は、培養3日目では、168VGspoVF株からの組換え枯草菌(比較例1)と比較してDPA生産量が高かった(表6)。
【0107】
【表6】
【0108】
(測定例)DPAの定量分析及び分子量分析
培養終了後の培養液試料を、室温にて14,800rpmで30分間の遠心分離(日立工機、himacCF15RX)に供し、得られた遠心分離後の試料上清中に含まれるDPAについて、HPLC法にて定量分析及び分子量分析を行った。使用したHPLC装置は、送液ポンプ(島津、LC−9A)、オートサンプラー(日立計測機器、AS−2000)、カラムオーブン(島津、CTO−6A)、UV検出計(島津、SPD−10A)、脱ガス装置(GLサイエンス、DG660B)及びクロマトデータ解析装置(日立計測機器、D−2500)を接続して用いた。分析カラムは、High Performance Carbohydrate Column 60(Å)4μm 4.6×250mm HPLC Column[Aminopropylmethylsilyl bonded amorphous silica](Waters)を使用し、溶離液として20mM EDTAを含む水を濃リン酸でpH3.4に合わせた水溶液とアセトニトリル溶液を1:1に混合した溶液を用いた。測定条件としては、検出波長を270nmとし、流速を1mL/分とした。HPLC分析に供するサンプルは、不溶物を除くための前処理としてMULTI SCREEN MNHV45(MILLIPORE製、0.45μmデュラポア膜)にてフィルターろ過処理し調製した。また、濃度検定には2,6−Pyridinedicarboxlic acid:DPA,99%(SIGMA−ALDRICH)を用いて検量線を作成した。