【実施例】
【0056】
(軟磁性合金粉末:実施例1〜3、比較例1、2)
実施例1〜3の軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とするFe基合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は449℃である。結晶化開始温度の差は、23℃である。第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25(実施例1)、50:50(実施例2)、25:75(実施例3)となるように容器に量りいれて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、各混合粉末について、昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。更に、比較例として、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例1)と、第2の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例2)についてもDSC測定をおこなった。
【0057】
実施例1〜3、比較例1、2における混合粉末のDSC曲線を
図7に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)実施例1:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25
(c)実施例2:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=50:50
(d)実施例3:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=25:75
(e)比較例2:第2の軟磁性合金粉末のみ
図7より、実施例1〜3においては、比較例1と比較例2に比べて、発熱ピークが分散していることが確認できる。DSC曲線の横軸は温度であるが、一定の昇温速度で測定していることから、経過時間として捉えることが可能であり、狭い温度範囲でピークが大きい比較例に対して、広い温度範囲でピークがブロードな実施例では、時間経過に対して発熱が緩やかに起こっているといえる。
【0058】
(軟磁性合金粉末:実施例4〜6、比較例1、3)
実施例4〜6の軟磁性合金粉末は、上記実施例1〜3と同様に、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末とを混合してなるものであり、且つ結晶化開始温度の差が上記実施例1〜3よりも小さい場合の例である。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とする合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe
81.3Si
5B
9P
4Cu
0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は440℃である。結晶化開始温度の差は14℃である。第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25(実施例4)、50:50(実施例5)、25:75(実施例6)となるように容器に量りいれて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、各混合粉末について、昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。更に、比較例として、第1の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例1)と、第2の軟磁性合金粉末のみからなる粉末(比較例3)についてもDSC測定をおこなった。
【0059】
実施例4〜6、比較例1、3における混合粉末のDSC曲線を
図8に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)実施例4:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=75:25
(c)実施例5:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=50:50
(d)実施例6:第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=25:75
(e)比較例3:第2の軟磁性合金粉末のみ
図8より、実施例4〜6においても、比較例1と比較例3に比べて、発熱ピークが分散していることが確認できる。ただし、実施例4〜6における第1結晶化開始温度の差(14℃)は、上述した実施例1〜3における差(23℃)に比べて小さいことから、発熱ピークの形状は2つのピークの間隔が狭く実施例1〜3に比べて急峻である。即ち、結晶化開始温度の差が狭い場合には、発熱を緩やかにする効果が減少することがわかる。
【0060】
(軟磁性合金粉末:実施例7、比較例1、3、4)
実施例7の軟磁性合金粉末は、第1の軟磁性合金粉末と、第1の軟磁性合金粉末と異なる結晶化開始温度を有する第2の軟磁性合金粉末及び第3の軟磁性合金粉末とを混合してなるものである。ここで、第1の軟磁性合金粉末と、第2の軟磁性合金粉末と、第3の軟磁性合金粉末とにおける第1結晶化開始温度は、互いに異なる。使用する粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径45μmの非晶質相を主相とする合金粉末である。詳しくは、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は426℃である。また、第2の軟磁性合金粉末の組成はFe
81.4Si
5B
6P
7Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は434℃である。また、第3の軟磁性合金粉末の組成はFe
81.3Si
5B
9P
4Cu
0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は440℃である。これらの粉末を同じ重量ずつ容器にはかり入れて、容器を振動させることで撹拌混合し、混合粉末を作製した。また、混合粉末について昇温速度40℃/minにてDSC測定して発熱挙動を確認した。
【0061】
実施例7、比較例1、3、4における混合粉末のDSC曲線を
図9に示す。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例1:第1の軟磁性合金粉末のみ
(b)比較例4:第2の軟磁性合金粉末のみ
(c)比較例3:第3の軟磁性合金粉末のみ
(d)実施例7:第1〜第3の軟磁性合金粉末の等重量混合粉末
図9より実施例7の混合粉末では、単独粉末である比較例1、3、4と比較して、発熱ピークがブロードになっており、混合する粉末が3種類の場合にも、発熱を緩やかにする効果があることがわかった。
【0062】
(圧粉磁芯:実施例8〜10、比較例5、6)
実施例8〜10として、上記実施例1〜3の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。比較例5及び6として、比較例1及び2の合金粉末を用いた圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。圧粉磁芯の作製方法は以下の通りである。
【0063】
まず、合金粉末と合金粉末に対して重量比で4%となる熱硬化性結合材を混合し、500μmのメッシュを通して造粒した。造粒粉2.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力735MPaにて成型し、外径13mm−内径8mmの円筒形状の圧粉体を作製した。赤外線加熱装置を用いて、425℃まで毎分40℃の昇温速度となるように圧粉体を加熱し、425℃にて20分間保持した後、空冷し、圧粉磁芯を得た。
【0064】
図10より、実施例8〜10の圧粉磁芯は、比較例5に示す単独粉末を用いて作製した圧粉磁芯に対して、低いコアロスPcvを示している。実施例9及び10については、比較例6に対しても同等以下の低いコアロスPcvを示しており、優れた軟磁気特性を得ることができている。
【0065】
図11は、実施例8〜10、比較例5、6による圧粉磁心のXRDパターンを示す図である。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)比較例5:Fe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6のみ
(b)実施例8:Fe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6とFe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6との混合粉末(75:25)
(c)実施例9:Fe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6とFe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6との混合粉末(50:50)
(d)実施例10:Fe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6とFe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6との混合粉末(25:50)
(e)比較例6:Fe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6のみ
図11より、実施例8〜10および比較例6の圧粉磁芯の結晶相はbccFe(αFe,Fe−Si)のみであるが、比較例5に示す圧粉磁芯においては、bccFe(αFe,Fe−Si)に加えて、Fe−B系化合物が生成していることが確認でき、第1結晶化開始温度の異なる2種類の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製することで、化合物の生成を抑制することができている。
【0066】
実施例8〜10、比較例5、6の圧粉磁芯の電磁気特性の評価を表1に示す。飽和磁束密度Bsの測定は、上記圧粉磁芯と同一の条件で熱処理を行った粉末について行い、1500kA/mでの磁場中において、振動試料型磁力計(V.S.Magnetometer、理研電子製)を用いて測定した飽和磁化より算出した。コアロスPcvは、B−H/μアナライザ(SY−8258、岩通計測製)を用いて、周波数20kHz−磁束密度100mTの条件にて測定した。また、生成物は、X線回折(XRD:X−ray Diffraction)装置を用いたX線回折法により得られたXRDパターンの回折ピークから、Scherrerの式を用いて算出した。以上により、圧粉磁心を測定し、評価した。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例6に対しては、比較例6の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsが1.62Tであるのに対して、実施例8の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsは1.70T、実施例9は1.67T、実施例10は1.65Tであり、いずれも高Bs化できている。
【0069】
また、実施例8〜10の結晶粒径はそれぞれ27nm、27nm、26nmであり、本実施の形態において、30nm以下の微結晶を析出できていることがわかった。このように、本発明の実施例によるFe基ナノ結晶合金粉末を用いた磁芯は、化合物の生成が防がれており、且つ、優れた軟磁気特性と高飽和磁束密度を有するものであることが理解される。
【0070】
(圧粉磁芯:実施例11〜13、比較例5、7)
実施例11〜13として、実施例4〜6の混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。また、比較例5及び比較例7として、夫々比較例1及び比較例3の単一種類の合金粉末を用いた圧粉磁芯についても作製し、電磁気特性を評価した。圧粉磁芯の作製方法及び電気特性の評価方法は、実施例8〜10、比較例5及び6と同じである。実施例11〜13、比較例5、7の圧粉磁芯の電磁気特性の評価を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
表2及び
図12より、実施例11〜13の圧粉磁芯は、比較例5に示す単独粉末を用いて作製した圧粉磁芯に対して、低いコアロスPcvを示している。比較例7に対しては、比較例7の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsが1.67Tであるのに対して、実施例11の圧粉磁芯を構成するFe基ナノ結晶合金粉末のBsは1.72T、実施例12は1.70T、実施例13は1.69Tであり、いずれも高Bs化できている。
【0073】
また、上記表1の実施例8〜10と実施例11〜13とを比較すると、混合粉末のうち第1の軟磁性合金粉末(Fe
82.4Si
1B
11P
5Cu
0.6)は共通であるが、第2の軟磁性合金粉末は異なっている。実施例8と実施例11、実施例9と実施例12、実施例10と実施例13の夫々は、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末との混合比が同じであるが、コアロスPcvは実施例8〜10(第2の軟磁性合金粉末として、Fe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6を混合)の圧粉磁芯の方が、実施例11〜13(第2の軟磁性合金粉末として、Fe
81.3Si
5B
9P
4Cu
0.7を混合)よりも低ロスであった。実施例8〜10の第2の軟磁性合金粉末(比較例6:Fe
81.4Si
3B
10P
5Cu
0.6)のみからなる圧粉磁芯と、実施例11〜13の第2の軟磁性合金粉末(比較例7:Fe
81.3Si
5B
9P
4Cu
0.7)のみからなる圧粉磁芯とを比較すると、コアロスPcvはほぼ同じ値であることから、実施例8〜10の圧粉磁芯を構成する軟磁性合金粉末は、実施例11〜13の圧粉磁芯を構成する軟磁性合金粉末に比べて第1結晶化開始温度の差が大きく、発熱ピークがより緩やかになっているため、急激な発熱を防ぐとともに最大発熱量をも低減することができ、コアロスPcvが優れていることを示している。以上より、第1結晶化開始温度の差が大きい方が、急激な発熱による磁気特性の劣化を抑制できることが理解される。
【0074】
(圧粉磁芯:実施例14〜16、比較例8〜11)
実施例14〜16の圧粉磁芯は、第1の軟磁性合金粉末と、熱処理工程において発熱反応が起こらない特性(以下、「非発熱特性」と呼ぶ)を有する第2の軟磁性粉末とを混合してなるものであり、軟磁性合金粉末を用いて作製した。詳しくは、実施例14〜16の圧粉磁芯に用いられる軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末及び第2の軟磁性合金粉末は、夫々、ナノ結晶化前粉末及びナノ結晶化済み粉末である。かかる混合粉末を用いて圧粉磁芯を作製し、電磁気特性を評価した。また、比較例8〜11として、実施例14〜16の圧粉磁芯に用いられる混合粉末を構成する粉末を単体で用いた圧粉磁芯についても作製し、電磁気特性を評価した。なお、実施例14〜16の圧粉磁芯を構成する混合粉末の混合比は、いずれも重量%において、第1の軟磁性合金粉末:第2の軟磁性合金粉末=70:30である。また、圧粉磁芯の作製方法及び電気特性の評価方法は、実施例8〜10、比較例5及び6と同じである。
【0075】
実施例14の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、具体的には、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、XRDにより非晶質であることが確認されている。第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
83.3Si
4B
8P
4Cu
0.7であり、DSCによる第1結晶化開始温度は412℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、この非晶質合金粉末を、赤外線加熱装置を用いて、450℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、450℃にて5分間保持した後、空冷して得られたものである。ナノ結晶化済み粉末の結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ27nmであった。また、比較例8として、実施例14の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
【0076】
なお、実施例14は、上述した第4の実施の形態において説明した軟磁性合金の構成と同一であり、
図6に示されるように発熱分散の効果が得られていることがわかる。
【0077】
実施例15の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、XRDにより非晶質であることが確認されている。第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
82.4B
10P
6C
1.0Cu
0.6であり、DSCによる第1結晶化開始温度は428℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、この非晶質合金粉末を、赤外線加熱装置を用いて、420℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、420℃にて5分間保持した後、空冷して得られたものである。結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ、28nmであった。また、比較例9として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
【0078】
実施例16の圧粉磁芯の作製に使用した軟磁性合金粉末の第1の軟磁性合金粉末は、水アトマイズ法にて作製した平均粒径16μmの合金粉末であり、第1の軟磁性合金粉末の組成はFe
83.4B
10P
6Cu
0.6である。XRDにより非晶質であることが確認されており、DSCによる第一結晶化開始温度は420℃である。混合するナノ結晶化済み粉末(第2の軟磁性合金粉末)は、同じく水アトマイズ法にて作製し、XRDにて非晶質が確認されている平均粒径16μmの合金粉末を赤外線加熱装置により熱処理したものである。当該ナノ結晶化済み粉末の組成は、第1の軟磁性合金粉末の組成とは異なっており、具体的にはFe
82.3Si
3B
10P
3C
1.0Cu
0.7である。また、DSCによる第一結晶化開始温度は414℃である。赤外線加熱装置による熱処理は、420℃まで毎分40℃の昇温速度となるように加熱し、420℃にて5分間保持した後、空冷することで実施した。ナノ結晶化済み粉末の結晶粒径は、XRDを用いてbccFe(αFe,Fe−Si)のメインピークを測定した後、Scherrerの式により算出したところ、27nmであった。また、比較例10として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第1の軟磁性合金粉末のみを用いて圧粉磁芯を作製し、比較例11として、実施例15の圧粉磁芯を構成する第2の軟磁性合金粉末(ナノ結晶化は行っていない)のみを用いて圧粉磁芯を作製した。
【0079】
図13は、実施例15、16、比較例9〜11における混合粉末のDSC曲線を示す図である。図中の記号と、実施例又は比較例との対応関係は以下のとおりである。
(a)実施例15:Fe
82.4B
10P
6C
1.0Cu
0.6:同組成のナノ結晶化済み粉末=70:30
(b)実施例16:Fe
83.4B
10P
6Cu
0.6:Fe
82.3Si
3B
10P
3C
1.0Cu
0.7のナノ結晶化済み粉末=70:30
(c)比較例9:Fe
82.4B
10P
6C
1.0Cu
0.6(結晶化していない)のみからなる粉末
(d)比較例10:Fe
83.4B
10P
6Cu
0.6(結晶化していない)のみからなる粉末
(e)比較例11:Fe
82.3Si
3B
10P
3C
1.0Cu
0.7(結晶化していない)のみからなる粉末
図13より、実施例15及び実施例16のいずれにおいても、発熱分散の効果が得られていることが分かる。
【0080】
圧粉磁芯の作製方法を以下に示す。まず、合金粉末と合金粉末に対して重量比で4.5%となる熱硬化性結合材を混合し、500μmのメッシュを通して造粒した。造粒粉2.5gを金型に入れ、油圧式自動プレス機により圧力735MPaにて成型し、外径13mm−内径8mmの円筒形状の圧粉体を作製した。赤外線加熱装置を用いて、所定の温度まで毎分40℃の昇温速度となるように圧粉体を加熱し、その温度にて20分間保持した後、空冷し、圧粉磁芯を得た。所定の温度とは、実施例14及び比較例8は450℃、実施例15及び比較例9は420℃、実施例16及び比較例10、11は425℃である。電磁気特性については、B−Hアナライザを用いて周波数300kHz−磁束密度50mTにおけるコアロスPcvを測定し、評価した。熱処理後の生成物については、XRDを用いて圧粉磁芯を測定し、評価した。測定した電磁気特性を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例14の圧粉磁芯におけるコアロスは1000kW/m
3であったが、比較例8の圧粉磁芯のコアロスは2000kW/m
3であった。実施例15と比較例9についても同様に、ナノ結晶化済み粉末を混合した圧粉磁芯である実施例15においては、コアロスは1200kW/m
3であり、比較例9の2100kW/m
3に対して優れた軟磁気特性を得ることができている。また、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末とが異なる組成を有する実施例16においても、コアロスは1090kW/m
3であり、比較例10の2500kW/m
3及び比較例11の2050kW/m
3と比較して低ロス化されている。
【0083】
XRDにより熱処理後の生成物を確認したところ、実施例14〜16ではbccFe(αFe,Fe−Si)のみであったが、比較例8〜11においては、bccFe(αFe,Fe−Si)に加えてFe−B系化合物の生成が確認されており、ナノ結晶化済み粉末を混合することで、熱容量に対する発熱量が減少しているため、化合物の生成を抑制でき、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯を得られることがわかった。また、第1の軟磁性合金粉末と第2の軟磁性合金粉末とが同一組成であるか、異なる組成であるかを問わず、良好な軟磁気特性を有する圧粉磁芯が得られることがわかる。
【0084】
以上のように、第2の軟磁性合金粉末として、第1の軟磁性合金粉末の熱処理の温度範囲において発熱しない軟磁性粉末を混合することで、試料温度の上昇を抑制し、優れた軟磁気特性を有する圧粉磁芯を得られ、実施の形態2および3に示したように、非晶質性粉末や結晶性粉末を用いた場合にも、同様の効果が得られる。
【0085】
以上、実施例を用いてこの発明の実施の形態を説明したが、この発明はこれらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然為し得るであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。