【実施例1】
【0013】
[四輪駆動車]
図1は、本発明に係る連結制御装置としてのデフ・ロック制御装置の実施例を適用した車両である4輪駆動車の動力伝達系の概略構成図である。
【0014】
図1のように、本実施例の4輪駆動車は、連結装置の一例となるデファレンシャル装置としてのリヤ・デファレンシャル装置1を後輪2、3間に備え、フロント・デファレンシャル装置4を前輪5、6間に備えている。リヤ・デファレンシャル装置1には、エンジン7からトランス・ミッション8、トランスファ9、プロペラ・シャフト10、ドライブ・ピニオン・シャフト11、ドライブ・ピニオン・ギヤ12を順次介してトルクが入力され、リヤ・デファレンシャル装置1から左右のアクスル・シャフト13、14を介して左右の後輪2、3にトルクが伝達される。
【0015】
フロント・デファレンシャル装置4には、エンジン7からトランス・ミッション8、トランスファ9、プロペラ・シャフト15を順次介してトルクが入力され、フロント・デファレンシャル装置4から左右のアクスル・シャフト16、17を介して前輪5、6にトルクが伝達される。
【0016】
リヤ・デファレンシャル装置1は、電気的な制御によりロック状態又はロック解除状態(広義としては、接続状態と切断状態)となる。このリヤ・デファレンシャル装置1は、一対の相対回転部材の一方であるデフ・ケース21を備え、デフ・ケース21のリング・ギヤ22にドライブ・ピニオン・ギヤ12が噛み合っている。
【0017】
デフ・ケース21内には、左右のサイド・ギヤ23、24が回転自由に支持され、これらサイド・ギヤ23、24には、ピニオン・ギヤ25が噛み合い、ピニオン・ギヤ25は、ピニオン・シャフト26によってデフ・ケース21に回転自由に支持されている。左右のサイド・ギヤ23、24は、アクスル・シャフト13、14に連結している。これら左右のサイド・ギヤ23、24及びピニオン・シャフト26に支持されたピニオン・ギヤ25がリヤ・デファレンシャル装置1の差動機構を構成する。
【0018】
一対の相対回転部材の他方であるサイド・ギヤ24の背面側には、アクスル・シャフト14の軸方向に移動可能にプランジャ27が配置され、サイド・ギヤ24とプランジャ27の対向面とにドッグ・クラッチ28が設けられている。サイド・ギヤ24とプランジャ27との間には、プランジャ27をサイド・ギヤ24から離間する方向に弾性付勢する図示しないリターン・スプリングが介装されている。プランジャ27は、ソレノイド29の励磁によりサイド・ギヤ24方向に移動し、プランジャ27の移動に伴ってプレート30が移動する。
【0019】
ソレノイド29は、ロック状態又はロック解除状態とするためのアクチュエータを構成する。なお、アクチュエータは、デファレンシャル装置を電気的な制御によりロック状態又はロック解除状態とすることができればよく、ソレノイド29に代えて、電磁石、油圧ピストン・シリンダ装置等を用いることもできる。
【0020】
接続検出部であってロック検出部としてのデフ・ロック位置スイッチ45は、デファレンシャル装置がロック状態になったことを検出するものであり、プレート30の移動位置をON、OFFで検出してリヤ・デファレンシャル装置1の差動機構のロック及びロック解除を検出する。
【0021】
ソレノイド29への通電は、制御部としてのデフ・ロック・コントロール・ユニット40によって制御される。
【0022】
図2は、デフ・ロック制御装置のブロック図である。
【0023】
図1、
図2の連結コントロール・ユニットとしてのデフ・ロック・コントロール・ユニット40は、例えばマイクロ・コンピュータで構成され、CPU、ROM、RAM等を備え、各種の信号、情報に基づいてソレノイド29を通電制御する。
【0024】
デフ・ロック・コントロール・ユニット40の入力ポートには、デフ・ロック位置スイッチ45のON/OFF信号、ドライバが任意に操作するデフ・ロック・モード・スイッチ42のロック指令信号となるON/OFF信号、トランスファ9の2輪4輪切り換え状態を検出する2−4切り替えスイッチ43からのT/Fモード信号、トランス・ミッション8の変速段を検出するシフト位置センサ44からのシフト・ポジション信号、各車輪2、3、5、6に設けられた車輪速センサ31〜34からの車輪速情報が入力するABSコントロール・ユニット35からの後輪2、3に関する車輪速情報、エンジン・コントロール・ユニット36からのスロットル・ポジション情報、エンジン回転数情報、エンジン・トルク情報、ブレーキ・センサ46からのブレーキON/OFF信号、パーキング・ブレーキ・センサ47からのパーキング・ブレーキON/OFF信号、ヨー・レート・センサ48からのヨー・レート信号、操舵角センサ49からのステアリング信号が入力される。
【0025】
デフ・ロック・コントロール・ユニット40の出力ポートには、ソレノイド29、インジケータ51等が接続されている。インジケータ51には、デフ・ロック・コントロール・ユニット40からの出力により、リヤ・デファレンシャル装置1のロック状態、ロック解除状態等が表示される。
【0026】
デフ・ロック・コントロール・ユニット40は、各種信号の入力に基づき、ソレノイド29が通電制御される。
【0027】
すなわち、接続スイッチとしてのデフ・ロック・モード・スイッチ42がON操作されてデファレンシャル装置1の差動機構のロック指令信号が入力されると、各入力信号及び入力情報に基づき、接続検出部としてのデフ・ロック位置スイッチ45の検出情報及びリヤ・デファレンシャル装置1に対するトルク伝達情報等に基づいてソレノイド29が通電制御される。
【0028】
この通電制御によって、リヤ・デファレンシャル装置1へのロック指令信号によりソレノイド29へ駆動電流を通電したとき、デフ・ロック位置スイッチ45がON信号によりロック状態を検出すると共にデフ・ロック・コントロール・ユニット40がトルク作用状態と判別すると駆動電流の通電からより小さい保持電流の通電に切換える制御を行う。
【0029】
従って、デフ・ロック・コントロール・ユニット40が、リヤ・デファレンシャル装置1へのトルク作用を判別するトルク判別部及び通電制御を行う制御部を構成する。
【0030】
さらに、デフ・ロック・コントロール・ユニット40は、車両の運転者の走行意思有無を判別する走行意思判別部を構成し、車輪速情報、シフト・ポジション信号、スロットル・ポジション情報、エンジン回転数情報、エンジン・トルク情報、ブレーキ信号、パーキング・ブレーキ信号、ヨー・レート信号、ステアリング信号の何れか又は組み合わせにより走行意思有無を判別する。
【0031】
この走行意思有無の判別に基づき、デフ・ロック・コントロール・ユニット40は、駆動電流を通電したときデフ・ロック位置スイッチ45がOFF信号を入力してロック状態が検出されないと共にデフ・ロック・コントロール・ユニット40が走行意思無しの判別をすると走行意思有りの判別をするまで駆動電流の通電を一旦低減又はゼロとする。
【0032】
尚、エンジン・トルク情報としては、例えば燃料噴射量、スロットル開度、吸入空気量等の情報を用いることが考えられる。また、後輪2、3の車輪速情報や前輪5、6の車輪速情報は、車輪速センサ31、32や車輪速センサ33、34の検出出力をABSコントロール・ユニット35を介さずに直接デフ・ロック・コントロール・ユニット40に入力するようにしてもよい。
[制御タイミング]
図3は、連結制御装置の連結制御としてのデフ・ロック制御のタイム・チャートである。
【0033】
デフ・ロック・モード・スイッチ42(
図2)がON操作されると
図3の上段のようにロック指令信号としてON信号が入力される。さらに、デフ・ロックの作動条件が成立している場合、同中段のように駆動電流がONとなり、ソレノイド29(
図2)が通電制御される。
【0034】
このように、ソレノイド29へ駆動電流を通電したときデフ・ロック位置スイッチ45が
図3の下段のようにON信号によりロック状態を検出すると共にデフ・ロック・コントロール・ユニット40がトルク作用状態と判別すると、一定時間後に駆動電流の通電からより小さい保持電流の通電に切換えられる。
【0035】
さらに、デフ・ロック・コントロール・ユニット40による走行意思有無の判別に基づき、デフ・ロック・コントロール・ユニット40は、駆動電流を通電したときデフ・ロック位置スイッチ45が
図3下段のようにOFF信号を入力してロック状態が検出されないと共にデフ・ロック・コントロール・ユニット40が走行意思無しの判別をすると
図3中断のように走行行意思有りの判別がされるまで駆動電流の通電を一旦低減又はゼロとする。
【0036】
この駆動電流の通電低減又はゼロにより、電力の無駄な消費を抑制できる。
【0037】
駆動電流の通電低減は、駆動電流よりも低ければよく、保持電流よりも低い場合、高い場合の何れも有り得る。
[デフ・ロック制御]
図4は、デフ・ロック制御のフロー・チャートである。
【0038】
図4のフロー・チャートは、エンジン・スタート等により開始される。
【0039】
ステップS1(以下、「S1」と略称する。以下の各ステップでも同様に略称する。)では、「デフ・ロック作動条件成立か?」の判断処理が行われ、デフ・ロックの作動条件が成立しているか否かを判別する。デフ・ロック・モード・スイッチ42がON操作されてロック指令信号を入力し、且つ、非走行中(例えば、車速が7km/h以下)であるときに作動条件成立(YES)と判別してS2へ移行する。作動条件不成立(NO)と判別したときは、S11へ移行する。S11は後述する。
【0040】
S2では、「デフ・ロックONか?」の判断処理が行われ、デフ・ロック位置スイッチ45がONか否かが判別され、ONであれば(YSE)、S4へ移行し、OFFであれば(NO)、S12へ移行する。S12は後述する。
【0041】
なお、「デフ・ロックONか?」の判断処理については、デフ・ロックに係る可動部材の実位置を検出して判断するか、或いはデフ・ロック機構を備えた入力軸、2つの出力軸のうち何れか2者間の差回転状態(例えば左右車軸間の差回転が等しいなど)をモニターし判断するか、その他の検出信号、情報を用いる、或いは組み合わせることにより推定して判断するかの何れの場合も含まれる。
【0042】
S4では、「保持電流制御中か?」の判断処理により、ソレノイド29が後述するロック完了後の保持電流制御中か否かを判別する。保持電流制御中でなければ(NO)、S5へ移行し、保持電流制御中であれば(YES)、S10へ移行する。S10は後述する。
【0043】
S5では、「エンジン・トルク>設定値か?」の判断処理により、エンジン・コントロール・ユニット36からのエンジン・トルク情報に基づいてエンジン・トルクが設定値より大きいか否かが判別される。エンジン・トルクが設定値より大きく判別がYESであれば、S6へ移行し、エンジン・トルクが設定値を下回れば(NO)、S3へ移行する。
【0044】
S3では、「ソレノイド駆動電流制御」により、ソレノイド29への通電が開始される。これにより、プランジャ27がリターン・スプリングの弾性付勢力に抗して移動を開始する。ドッグ・クラッチ28が噛み合う位置までプランジャ27が移動するとデフ・ロック位置スイッチ45がONして再度行われるS2の判別がYESとなり、S4へ移行することになる。
【0045】
S6では、「シフト位置は走行段か?」の判断処理により、トランス・ミッション8の変速段が走行段か否かを判別し、走行段であれば(YES)、S7へ移行し、走行段でなければ(NO)、S3へ移行する。
【0046】
S7では、「設定時間経過か?」の判断処理により、S6の判別がYESになってから予め設定した設定時間(例えば2秒程度)経過したか否かが判別される。設定時間以上経過すると(YES)、ソレノイド29への駆動電流の通電によりリヤ・デファレンシャル装置1の差動機構がロックされたと判断し(YES)、S8へ移行する。設定時間経過していなければ(NO)、S3へ移行する。
【0047】
S8では、「ソレノイド保持電流制御」の処理により、ソレノイド29への通電を駆動電流から当該駆動電流より小さい
図3に示す保持電流に切換え、保持電流制御に移行し、電力消費を抑制する。
【0048】
その後、ドライバによってデフ・ロック・モード・スイッチ42がOFF操作されれば、S1のその後の判別がNOとなってS11へ移行し、ソレノイド29をOFFとして通電を停止する。
【0049】
また、保持電流制御中においては、S4の判別がYESとなり、S10へ移行する。
【0050】
S10では、ABSコントロール・ユニット35から入力する車輪速センサ31、32による後輪2、3の車輪速情報に基づいて、後輪2、3に回転差があるか否かを判別する。回転差がなければ(NO)、リヤ・デファレンシャル装置1の差動機構は正常にロック状態が維持されていると判断して保持電流制御をそのまま継続する。
【0051】
S10において、回転差有りと判別すると(YES)、ドッグ・クラッチ28にすべりが発生したと判断してS3へ移行し、ドッグ・クラッチ28を完全に噛み合わせるために、ソレノイド29の通電電流を保持電流から駆動電流に切換える。
【0052】
これにより、すべりが発生したとしても、再度ロック状態に復帰させることができる。この場合、駆動電流切換え後に、左右の後輪2、3の回転差がなくなるか、或いは、回転差がなくなってから回転差のない状態が一定時間継続したときには、保持電流制御に移行する。
【0053】
尚、S10において、ある所定値を設定し、車輪回転差が前記所定値以上になった時にすべり発生と判断することもできる。
【0054】
デフ・ロック位置スイッチ45がONではないとして移行したS12では、「走行意思が有るか?」の判断処理により、車輪速情報、シフト・ポジション信号、スロットル・ポジション情報、エンジン回転数情報、エンジン・トルク情報、ブレーキ信号、パーキング・ブレーキ信号、ヨー・レート信号、ステアリング信号の何れか又は組み合わせにより走行意思有無が判別される。
【0055】
S12で、走行意思があると判別されたときは(YES)、S3へ移行し、前記S3でのソレノイド29への駆動電流の通電を経て前記処理が繰り返され、駆動電流から保持電流への切り換えが行われる。
【0056】
S12で、走行意思がないと判別されたときは(NO)、S13へ移行する。
【0057】
S13では、「設定時間経過か?」の判断処理により、S12で走行意思が無いと判別されてから、予め設定した設定時間(例えば2秒程度)経過したか否かが判別される。設定時間以上経過すると(YES)、走行意思が無いとの判断を確定してS14へ移行し、設定時間経過していないときは(NO)、走行する可能性が有るとしてS3へ移行する。
【0058】
S14では、「低電流制御」の処理により、
図3中断の前半部のように走行行意思有りと判別されるまで駆動電流の通電を一旦低減又はゼロとする。
【0059】
かかる構成によれば、駆動電流から保持電流への切り換えまでの間に、運転意思が見られないのに駆動電流が通電され続けるという状況を抑制し、電力の無駄な消費を抑制できる。
【実施例3】
【0066】
図6は、実施例3に係り、デフ・ロック制御のフロー・チャートである。なお、基本的なステップは、実施例1の
図4と同様であり、同一ステップには同符号を付し、重複した説明は省略する。
【0067】
本実施例のデフ・ロック制御のフロー・チャートは、
図4のS12の判断を、S1、S2間に設けたものである。
【0068】
S1において、デフ・ロック作動条件成立と判断されてS12へ移行し、S12において走行意思があると判別され(YES)、S2において、デフ・ロック位置スイッチ45がOFFのとき(NO)、S3へ移行して、ソレノイド29への駆動電流の通電が開始される。
【0069】
その他は、実施例1の
図4と同様である。
【0070】
したがって、走行意思が有るときは、必ずS2の判断が行われるので、走行意思が有り、デフ・ロック位置スイッチ45がOFFのときのみS3でのソレノイド29への駆動電流の通電が開始されるため、より的確な制御を行わせることができる。
【0071】
なお、上記各実施例において、ロック指令信号としては、デフ・ロック・モード・スイッチ42のON信号に限らず、左右後輪の差回転等に基づき、自動的にデフ・ロックが行われる場合などでは、その信号を用いることもできる。
【0072】
本願発明は、他の機構例としてフロント・デファレンシャル装置やセンター・デファレンシャル装置にも適用することができる。さらに、入力軸と出力軸との間に配置される電磁多板クラッチなどのアクチュエータを用いたカップリング、アクチュエータによって回転軸を静止部材に対して非回転状態と回転状態とに断続させるブレーキ、アクチュエータにより駆動力を断続可能なフリー・ランニング・デフ、或いは電磁石を用いたアクチュエータにより前後輪の一方の主駆動輪への駆動経路から前後輪の他方の副駆動輪への駆動経路へ駆動力を断続して分岐駆動するためのトランスファ等にも均等に適用できる。
【0073】
ここで、均等に適用し得る機構例について説明しておく。
【0074】
図7は、連結制御装置を適用した自動車の概略構成図である。なお、
図7において、
図1の構成部分と同一又は対応する構成部分には、同符号又は同符号にA、B、C、Dを付し、重複した説明は省略する。
【0075】
図7では、連結制御装置の機構例として、トランス・ミッション8Aの遊星機構を用いたブレーキ機構101、トランスファ9Bの分配断続機構103、プロペラ・シャフト10の断続機構105、リヤ・デファレンシャル装置1のフリー・ランニング機構107を示している。
【0076】
これら全ての機構を設けて適用し、或いは任意に取捨選択して適用してもよい。
【0077】
[ブレーキ機構]
遊星機構を用いたブレーキ機構101は、例えばトランス・ミッション8Aの第1軸109と第2軸111との間に設けられ、トランス・ミッション変速機構を有する。遊星機構を用いたブレーキ機構101のインターナル・ギヤ113の外周側に軸方向に移動可能にプランジャ27Aが配置され、ミッション・ケース8Aaとプランジャ27Aとの対向間にドッグ・クラッチ28Aが設けられている。
【0078】
この例では、静止部材であるミッション・ケース8Aaと回転部材であるインターナル・ギヤ113とが一対の相対回転部材を構成する。インターナル・ギヤ113を固定側であるミッション・ケース8Aaに対する結合を断続する。
【0079】
ミッション・ケース8Aaとプランジャ27Aとの間には、プランジャ27Aをミッション・ケース8Aaから離間する方向に弾性付勢する図示しないリターン・スプリングが相対回転を許容する構造で介装されている。プランジャ27Aは、ソレノイド29Aの励磁によりミッション・ケース8Aa方向に移動し、プランジャ27Aの移動に伴って
ドッグ・クラッチ28Aが噛合い移動する。
【0080】
したがって、
図4〜
図6の制御と同様にソレノイド29Aを通電制御し、同様の作用効果を奏することができる。なお、
図4〜
図6の制御を適用するに際しては、回転部材としてのデフ・ロックをインターナル・ギヤ113のロックと読み替える。
【0081】
[分配断続機構]
分配断続機構103は、例えばトランスファ9Bに設けられている。トランスファ9Bは、フロント・デファレンシャル装置4のデフ・ケース115からの出力を後輪2、3側へ分配するものである。
【0082】
分配断続機構103は、デフ・ケース115に結合された連結中空軸117と後輪側伝達系のリング・ギヤ119を有する外側中空軸121との間に設けられている。
【0083】
外側中空軸121の端部外周に軸方向に移動可能にプランジャ27Bが配置され、連結中空軸117の端部フランジ117aとプランジャ27Bの対向面とにドッグ・クラッチ28Bが設けられている。
【0084】
この例では、連結中空軸117と外側中空軸121とが一対の相対回転部材を構成する。外側中空軸121を連結中空軸117に対して結合を断続する。
【0085】
トランスファ・ケース9Baとプランジャ27Bとの間には、プランジャ27Bを端部フランジ117aから離間する方向に弾性付勢する図示しないリターン・スプリングが相対回転を許容する構造で介装されている。プランジャ27Bは、ソレノイド29Bの励磁により端部フランジ117a方向に移動し、プランジャ27Bの移動に伴って
ドッグ・クラッチ28Bが噛合い移動する。
【0086】
したがって、
図4〜
図6の制御と同様にソレノイド29Bを通電制御し、同様の作用効果を奏することができる。なお、
図4〜
図6の制御を適用するに際しては、デフ・ロックを連結中空軸117及び外側中空軸121の結合と読み替える。
【0087】
[断続機構]
断続機構105は、プロペラ・シャフト10からリヤ・デファレンシャル装置1への駆動力を断続するものであり、例えばドライブ・ピニオン・シャフト11Cに介設されている。ドライブ・ピニオン・シャフト11Cの第1部分11Caと第2部分11Cbとの対向間にギヤ123、125が設けられ、インターナル・ギヤを備えたスリーブ127がギヤ123に噛合っている。
【0088】
この例では、ドライブ・ピニオン・シャフト11Cの第1部分11Caと第2部分11Cbとが一対の相対回転部材を構成し、スリーブ127が前記プランジャに相当し、ギヤ123、125及びスリーブ127のインターナル・ギヤが前記ドッグ・クラッチに相当する。スリーブ127がギヤ123のみの噛合いから軸方向移動してギヤ123、125の噛合いに移行することでドライブ・ピニオン・シャフト11Cの第1部分11Caと第2部分11Cbとを結合し、後輪側への動力伝達を可能にする。
【0089】
キャリヤ129とスリーブ127との間には、スリーブ127をギヤ125の噛合いから外れる方向に弾性付勢する図示しないリターン・スプリングが相対回転を許容する構造で介装されている。スリーブ127は、ソレノイド29Cの励磁によりギヤ125方向に移動し、ギヤ123、125の噛合いに移行する。
【0090】
したがって、
図4〜
図6の制御と同様にソレノイド29Cを通電制御し、同様の作用効果を奏することができる。なお、
図4〜
図6の制御を適用するに際しては、デフ・ロックをドライブ・ピニオン・シャフト11Cの第1部分11Caと第2部分11Cbとの結合と読み替える。
【0091】
[フリー・ランニング機構]
フリー・ランニング機構107は、例えばリヤ・デファレンシャル装置1のデフ・ケース21とピニオン・シャフト26の支持部材26aとの間に設けられ、デフ・ケース21と差動機構との結合を断続する。
【0092】
デフ・ケース21側に軸方向に移動可能にプランジャ27Dが配置され、支持部材26aとプランジャ27Dの対向面との間にドッグ・クラッチ28Dが設けられている。
【0093】
この例では、デフ・ケース21と支持部材26aとが一対の相対回転部材を構成し、デフ・ケース21と支持部材26aとの結合を断続する。
【0094】
デフ・ケース21とプランジャ27Dとの間には、プランジャ27Dを支持部材26aから離間する方向に弾性付勢する図示しないリターン・スプリングが介装されている。プランジャ27Dは、ソレノイド29Dの励磁により支持部材26a方向に移動し、ドッグ・クラッチ28Dが噛み合う。
【0095】
したがって、
図4〜
図6の制御と同様にソレノイド29Dを通電制御し、同様の作用効果を奏することができる。なお、
図4〜
図6の制御を適用するに際しては、デフ・ロックをプランジャ27Dと支持部材26aとの結合と読み替える。
【0096】
さらに、広義な発明の技術思想としては、下記に示す構成を具備する。
【0097】
車両の駆動経路に用いられる一対の相対回転部材間を電気的な制御により接続状態または切断状態とする連結制御装置であって、前記接続状態又は切断状態とするためのアクチュエータと、前記一対の相対部材間が接続状態になったことを検出する接続検出部と、前記一対の相対回転部材間のトルク作用を判別するトルク判別部と、前記車両の運転者の走行意思有無を判別する走行意思判別部と、前記一対の相対回転部材間の接続指令信号により前記アクチュエータへ駆動電流を通電したとき前記接続検出部が接続状態を検出すると共に前記トルク判別部がトルク作用状態の判別をすると前記駆動電流の通電からより小さい保持電流の通電に切換える制御部とを備え、前記制御部は、前記駆動電流を通電したとき前記接続検出部により接続状態が検出されないと共に前記走行意思判別部が走行意思無しの判別をすると走行意思有りの判別をするまで前記駆動電流の通電を一旦低減又はゼロとすることを特徴とする連結制御装置。
【0098】
この連結制御装置では、接続検出部が、上記各実施例のロック検出部に相当することになる。
【0099】
さらに、この連結制御装置は、前記走行意思判別部が、車輪速情報、シフト・ポジション信号、スロットル・ポジション情報、エンジン回転数情報、エンジン・トルク情報、ブレーキ信号、パーキング・ブレーキ信号、ヨー・レート信号、ステアリング信号の何れか又は組み合わせにより前記走行意思有無を判別する連結制御装置であってもよい。ここで、一対の相対回転部材間を電気的な制御により接続状態または切断状態とする連結制御装置とは、一対の回転可能な相対回転部材間の断続を制御するクラッチ装置や、一つの静止系(固定系ともいう)に対して一つの回転部材を断続制御するブレーキ装置の何れかであってもよい。
【0100】
デファレンシャル装置が、センター・デフであり、前後輪車軸間の差回転等に基づき、自動的にデフ・ロックが行われる場合などでは、その信号を用いることもできる。
【0101】
本願発明は、前輪又は後輪の何れかのみを駆動する2輪駆動車両のデファレンシャル装置に適用することができる。