特許第6101077号(P6101077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101077生体分子を細胞へトランスフェクトするための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101077
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】生体分子を細胞へトランスフェクトするための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20170313BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20170313BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170313BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20170313BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61K9/50
   A61K31/7088
   A61K37/02
   A61K39/395
   A61K47/36
   A61K47/48
   A61K48/00
   A61P11/06
   A61P29/00
   A61P37/06
   A61P37/08
   C12N5/071
   C12N15/00 A
【請求項の数】18
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-507283(P2012-507283)
(86)(22)【出願日】2010年4月19日
(65)【公表番号】特表2012-524120(P2012-524120A)
(43)【公表日】2012年10月11日
(86)【国際出願番号】US2010031559
(87)【国際公開番号】WO2010123798
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2013年4月19日
【審判番号】不服2015-16112(P2015-16112/J1)
【審判請求日】2015年9月1日
(31)【優先権主張番号】61/170,945
(32)【優先日】2009年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507255086
【氏名又は名称】ガレンバイオ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グランディクス、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】サットマリー、スーザン
【合議体】
【審判長】 關 政立
【審判官】 福井 美穂
【審判官】 齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−529976(JP,A)
【文献】 特表平4−506299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K37,39,45,47,48
C12N5,15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性な組成物であって、
(a)以下の生物学的に活性な成分:
(i)核酸又はその誘導体、
(ii)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体、
(iii)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体、
(iv)リポ多糖又はその誘導体、
(v)ペプチドグリカン又はその誘導体、
(vi)炭水化物又はその誘導体、
(vii)脂質又はその誘導体、
(viii)リポペプチド又はその誘導体、
(ix)遊離金属イオン、
(x)チオール、
(xi)抗生物質又はその誘導体、
(xii)ビタミン又はその誘導体、
(xiii)バイオフラボノイド又はその誘導体、
(xiv)抗酸化物質又はその誘導体、
(xv)免疫応答修飾因子、
(xvi)抗体、
(xvii)セレン
(vxiii)ヒスタミン又は抗ヒスタミン剤、及び
(xix)キナーゼ阻害剤
のうち少なくとも1種と
(b)前記組成物を食細胞に送達し、その結果、生物学的に活性な成分が、食細胞によって取り込まれ、その生物活性に影響を及ぼすのに有効な少なくとも1種の生体高分子の担体と
を含み、
前記生体高分子の担体が、微粒子の形態にあり、
少なくとも1種の生物学的に活性な成分が、ジスルフィド結合、及び固定化金属キレートを含む結合からなる群から選択される結合によって前記担体と可逆的に結合し、
生体高分子微粒子担体が、1〜10μmの範囲にあるアガロース微粒子である、
上記組成物。
【請求項2】
核酸又はその誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、下記:
(i)リポ多糖又はその誘導体、
(ii)ペプチドグリカン又はその誘導体、
(iii)炭水化物又はその誘導体、
(iv)脂質又はその誘導体、及び
(v)リポペプチド又はその誘導体
からなる群から選択される生物学的に活性な成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
金属イオン、チオール、抗生物質又はその誘導体、ビタミン又はその誘導体、バイオフラボノイド又はその誘導体、抗酸化物質又はその誘導体、免疫応答修飾因子、抗体、生物学的に活性な非金属、ヒスタミン又は抗ヒスタミン剤及び、キナーゼ阻害剤からなる群から選ばれる生物学的に活性な成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
2つの生物学的に活性な成分を含む、請求項1に記載の組成物であって、該生物学的に活性な成分は、
(a)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体;
(b)(1)炭水化物又はその誘導体と、
(2)脂質又はその誘導体;
(c)(1)炭水化物又はその誘導体と、
(2)リポペプチド又はその誘導体;
(d)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)金属イオン;
(e)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)金属イオン;
(f)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)チオール;
(g)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)チオール;
(h)(1)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体と、
(2)チオール;
(i)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)抗生物質又はその誘導体;
(j)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)抗生物質又はその誘導体;
(k)(1)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体と、
(2)抗生物質又はその誘導体;
(l)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)ビタミン又はその誘導体;
(m)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)ビタミン又はその誘導体;
(n)(1)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体と、
(2)ビタミン又はその誘導体;
(o)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)バイオフラボノイド又はその誘導体;
(p)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)バイオフラボノイド又はその誘導体;
(q)(1)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体と、
(2)バイオフラボノイド又はその誘導体;
(r)(1)核酸又はその誘導体と、
(2)抗酸化物質又はその誘導体;
(s)(1)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体と、
(2)抗酸化物質又はその誘導体;及び、
(t)(1)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体と、
(2)抗酸化物質又はその誘導体
からなる群から選ばれる、上記組成物。
【請求項8】
前記組成物が、下記:
(a)オフロキサシン、クルクミン、ルチン、G1/9ペプチド(配列番号1)、G2/4ペプチド(配列番号2)及びB3ペプチド(配列番号3)
(b)レチノイン酸、ルチン、G1/9ペプチド(配列番号1)、G2/4ペプチド(配列番号2)及びB3ペプチド(配列番号3)
(c)LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド(配列番号1)、G2/4ペプチド(配列番号2)、B3ペプチド(配列番号3)、ノボビオシン、グルタチオン及びチアムリン、
(d)LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド(配列番号1)、G2/4ペプチド(配列番号2)、B3ペプチド(配列番号3)、レチノイン酸及びチアムリン、及び
(e)LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド(配列番号1)、G2/4ペプチド(配列番号2)、B3ペプチド(配列番号3)、ラクトフェリシン及びチムリン
からなる群から選択される成分の組合せの選択肢を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記生物学的に活性な成分は、免疫活性抗原又は抗原性エピトープを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記免疫活性抗原又は抗原性エピトープが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド又は組換えタンパク質である、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
in vivoで防御免疫応答を誘発する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
二本鎖RNA又はsiRNAを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の生物学的に活性な成分が、固定化金属キレートを含む結合によって前記担体と可逆的に結合し、前記固定化金属キレートが、亜鉛、銅又は鉄のキレートを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項14】
微粒子が多孔性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
微粒子が非多孔性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
微粒子の大部分が、直径約5μm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
微粒子が、病原体と同じサイズ範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
免疫活性抗原又は抗原性エピトープを含み、該免疫活性抗原又は抗原性エピトープが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド又は組換えタンパク質である、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本PCT出願は、その内容がこの参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、「生体分子を細胞へトランスフェクトするための組成物(Compositions for Transfection of Biomolecules into Cells)」と題され、2009年4月20日に出願されたGrandicsらによる米国仮出願シリアル番号第61/170,945号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生物学的に活性な分子を哺乳動物細胞に導入(トランスフェクト)できる組成物を提供する。核酸のトランスフェクションは、試薬(例えば、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム、リポフェクチン、ウイルスベクター)、エレクトロポレーション、遺伝子銃又はマイクロインジェクションのような種々の方法を利用する、分子生物学の十分に開発された領域である。タンパク質送達法はまた、陽イオン性脂質、リポソーム及び担体ペプチドを含む。炭水化物のトランスフェクションは、特定の金属の制御された用量の導入のほかに十分に開発されていない。さらに、樹状細胞、マクロファージ及びB細胞をはじめとする食細胞のような特定の細胞部分集合に、多数の生物学的に活性な成分(核酸及び誘導体、リポペプチド、リポ多糖、ペプチドグリカン、脂質、タンパク質及びペプチド、イオン、チオール化合物、抗生物質、ビタミン、バイオフラボノイド、抗酸化物質など)の制御された用量の同時送達を可能にするトランスフェクション法を開発することは重要であろう。これらの分子の大きく異なる物理化学的特徴は、in vivoでさまざまな細胞種を非特異的に標的とする現在の送達ビヒクルへの組み込みにおける障害をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、食細胞への、恐らくは最大範囲の生体分子の同時トランスフェクションのためにin vitro及びin vivoの両方で働く新規細胞送達システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従って、食細胞への種々の生体分子の同時の、制御された用量送達のための新規組成物が記載されている。
したがって、本発明の一態様は、生物学的に活性なであって、
(1)以下の生物学的に活性な成分:
(a)核酸又はその誘導体、
(b)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体、
(c)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体、
(d)リポ多糖又はその誘導体、
(e)ペプチドグリカン又はその誘導体、
(f)炭水化物又はその誘導体、
(g)脂質又はその誘導体、
(h)リポペプチド又はその誘導体、
(i)金属イオン、
(j)チオール、
(k)抗生物質又はその誘導体、
(l)ビタミン又はその誘導体、
(m)バイオフラボノイド又はその誘導体、
(n)抗酸化物質又はその誘導体、
(o)免疫応答修飾因子、
(p)抗体、
(q)生物学的に活性な非金属、
(r)ヒスタミン又は抗ヒスタミン剤、及び
(s)キナーゼ阻害剤
のうち少なくとも1種と、
(2)組成物を食細胞に送達し、その結果、生物学的に活性な成分が、食細胞によって取り込まれ、その生物活性に影響を及ぼすのに有効な少なくとも1種の担体と
を含む上記組成物である。
【0005】
組成物中では、分子は、混合物として存在し得る。或いは、分子は、化学的に一緒に結合していてもよい。担体は、通常、微粒子である。微粒子は、狭いサイズ分布範囲を有することが好ましい。微粒子は、多孔性であっても、非多孔性であってもよい。一般に、微粒子は、直径約10μm未満であり、より一般には、微粒子は、直径約5μm未満である。一般に、微粒子は、生体高分子で作られている。一代替法では、成分は、非共有結合によって微粒子に結合されている。別の代替法では、成分は、共有結合によって微粒子に結合されている。
【0006】
本発明の別の態様は、細胞培養物若しくは細胞部分集合において、又は植物、動物若しくはヒト被験体などの多細胞生物において、生物学的応答を誘発する方法であって、微粒子と会合している選択された生物学的に活性な成分を含む組成物の有効量を投与するステップを含み、微粒子は、病原体より小さい、又は病原体と同じサイズ範囲にある、上記方法である。
【0007】
本発明によれば、宿主への組成物の投与は、細胞培養物において、又は粘膜経路、非経口経路又は経皮経路によって実施できる。或いは、他の投与経路を使用してもよい。
【0008】
本発明の別の態様は、急性感染症、アレルギー、喘息、自己免疫状態からなる群から選択される慢性炎症性疾患及び癌又は腫瘍転移の影響を研究する方法であって、
(1)アレルギー、喘息、自己免疫状態、癌及び腫瘍転移からなる群から選択される状態に感受性である動物モデルを提供するステップと、
(2)組成物中で、微粒子が、病原体と同じサイズ範囲にあり、組成物が、免疫活性抗原又は抗原性エピトープを含み、免疫活性抗原又は抗原性エピトープが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド又は組換えタンパク質である本発明の組成物を動物モデルに投与して、この組成物の投与に起因する免疫応答によって、動物モデルにおいて感染を治療又は予防するステップと、
(3)アレルギー、喘息、自己免疫状態、癌及び腫瘍転移からなる群から選択される状態に対する、ステップ(2)において投与された組成物の効果を調べるステップと
を含む、上記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明には、組成物及び動物モデルにおいてこのような組成物を特定の細胞集団に標的化し、免疫応答を誘発する方法が記載されている。
【0010】
相互排他的な物理化学的特徴を有する複数の生物学的に活性な分子の制御された用量送達のための薬剤及び送達ビヒクルを製造する必要がある。例えば、核酸又はリポ多糖は、ポリアミン分子、塩基性ペプチド及び/又は遷移金属(例えば、Znイオン)の存在下で析出し、この現象は、たとえ細胞への制御された用量投与が、特定の生理反応(例えば、防御免疫)を惹起するために必要であっても、他の生物学的に活性な分子との混合投与及び同時投与を妨げる。陽イオン性脂質/リポソーム送達ビヒクルは、陽イオン性分子の送達にとって有効ではない。本発明者らは、病原体サイズの微粒子が、リガンドの選択的、連続的結合が可能であることから、非常に異なる物理化学的特性の生体分子(本明細書において生物学的に活性な成分としても記載される)の送達のための最適な方法を提供すると推論した。したがって、本発明によって、多数の食細胞への生物学的に活性な分子の標的化された投与を実施できるであろう。
【0011】
本発明者らは、未変性アガロースなどの多糖を含む担体又は他の生分解性担体による特定の細胞への生物学的に活性な分子の標的化を研究した。アガロースは、天然多糖、生分解性であり、哺乳動物細胞と適合すると証明されているD−ガラクトースポリマーであるという利点を有する。非経口的投与されたアガロース微粒子は、弱いマクロファージ活性化能及び水酸化アルミニウムに匹敵するアジュバント特性を示すことがわかっている(Gronlund H.ら「炭水化物ベースの粒子:アレルゲン特異的免疫療法のための新規アジュバント(Carbohydrate−based particles: a new adjuvant for allergen−specific immunotherapy.)」Immunology、2002年、107、523〜529頁)。
【0012】
エンドユーザー視点からは、組成物が冷蔵保存を必要とせず、それでも長い保存可能期間を有することは重要である。アガロース粒子は、これらの必要条件を満たす。また、組成物の投与ができる限り簡単であることが重要である。したがって、経粘膜投与可能な組成物は、非経口物を上回る利点を有する。しかし、粘膜適用は、消化系の異化効果による安定性の問題を抱えてきた。
【0013】
本発明者らは、多孔性アガロースマトリックスに結合している生体分子は、Gl管の内側の分解から保護されるであろうと推論した。また、アガロース微粒子の大きさ(<5μm)が、それらを粒子がパイエルパッチ(PP)に通過するのを可能にするのに適したものにし得る。
【0014】
本発明者らは、動物が、マイコプラズマの攻撃に先立って本発明の組成物を投与された場合に、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)の感染性株に対して相当な程度の免疫保護が達成され得る動物モデル系を確立した。さらに、予め感染した動物で特徴的な病的症状の回復も観察され、このことは、このような微粒子が罹患動物を治療するのに有効であることを示した。微生物の種々の株の蔓延した抗生物質耐性のために、これは重大である。さらに、本発明者らは、この方法によって防御反応を誘発するためには、抗原を組み込んだ微粒子を使用する文献に記載される100μgを上回るものとは対照的に、動物1体あたりごく少量の抗原(1〜10μg)しか必要でないことを見い出した(Brayden,D.2001年European Journal of Pharmaceutical Sciences 14:183〜189頁)。このことは、免疫調節性粒子(単数又は複数)が、動物において腸を通過する間に分解されないこと及び標的化された粘膜免疫細胞に有効な方法で送達されることを示唆する。
【0015】
生物活性分子は、微粒子に、非共有結合によって、又は共有結合によって結合され得る。共有結合法は、当技術分野で既知であり、例えば、P.Tijssen、「酵素免疫測定の実施及び理論(Practice and Theory of Enzyme Immunoassays)」(Elsevier, Amsterdam, 1985年、283〜289頁に、S.S.Wong、「タンパク質コンジュゲーション及び架橋の化学(Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking)」(CRC Press, Boca Raton, Florida、1993年)に、T.E.Creighton編「タンパク質機能:実際的なアプローチ(Protein Function: A Practical Approach)」(IRL Press, Oxford、1989年)に、及びG.T.Hermanson、「バイオコンジュゲート技術(Bioconjugate Techniques)」(Academic Press, San Diego、1996年)に記載されており、そのすべては、この参照により本明細書に組み込まれる。通常、微粒子が、アガロースなどの生分解性の天然多糖である場合は、生物活性分子は、生分解性の天然多糖のポリマー鎖のヒドロキシル基に結合されている。一般に、その後の求核置換にとって良好な脱離基を含有する中間反応性誘導体を形成する特定の化合物は、多糖のヒドロキシル残基を活性化できる。これらの活性化されたヒドロキシルの、アミン(例えば、タンパク質又はペプチド中のリシン基)などの求核剤との反応は、生物活性分子を生分解性の天然多糖のポリマー鎖と架橋する安定な共有結合をもたらす。適した試薬として、カルボニルジイミダゾール、クロロホルメート誘導体、塩化トレシル、塩化トシル、臭化シアン、ジビニルスルホン、塩化シアヌル及びビス−エポキシドが挙げられる。或いは、アガロースなどの炭水化物ポリマーのヒドロキシル基をクロロ酢酸を用いて修飾し、カルボキシレート官能基を作製してもよい。別の代替法として、多糖;炭水化物分子の還元末端上にアミン官能基を作製してもよく、又は作製されたアルデヒドを、低鎖長(すなわち、通常、鎖中、約6個未満の炭素原子)のジアミン化合物と反応させて短いアルキルアミンスペーサーを生じさせてもよく、これをその後のコンジュゲーション反応に使用してもよい。ビス−ヒドラジド化合物を使用してヒドラジド基を同様に作製してもよい。次いで、得られた官能基を、種々の反応を使用して生物活性分子とカップリングしてもよい。例えば、カルボキシル基が生じる場合には、ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用する混合無水法、カルボジイミド法又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステル法によって、それをタンパク質又はペプチドとコンジュゲートしてもよい。脂肪族アミンは、カルボジイミド、トリレン−2,4−ジイソシアネート又はマレミド(malemide)化合物、特に、マレミド誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含めた種々の方法によってタンパク質又はペプチドとコンジュゲートしてもよい。このような化合物の例として、4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸がある。別の例として、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルがある。使用できるさらに別の試薬として、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートがある。また、ジメチルピメリミデート、ジメチルアジピミデート又はジメチルスベリミデートなどの二機能エステルを使用して、アミノ基含有部分をタンパク質とカップリングしてもよい。ペプチド、タンパク質及び炭水化物をはじめとする化合物並びに他の化合物の、固相支持体との共有結合のための他の方法は、当技術分野で既知である。非共有結合のための方法は、水素結合、疎水結合、金属キレート及び相互作用を安定化し得る塩結合などの複数の非共有結合性相互作用に依存する。
【0016】
通常、送達される生体分子(本明細書において、生物学的に活性な成分としても記載される)は、以下のうち少なくとも1種である:
(1)核酸又はその誘導体、
(2)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体、
(3)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体;
(4)リポ多糖又はその誘導体、
(5)ペプチドグリカン又はその誘導体、
(6)炭水化物又はその誘導体、
(7)脂質又はその誘導体、
(8)リポペプチド又はその誘導体、
(9)金属イオン、
(10)チオール、
(11)抗生物質又はその誘導体、
(12)ビタミン又はその誘導体、
(13)バイオフラボノイド又はその誘導体、
(14)抗酸化物質又はその誘導体、
(15)免疫応答修飾因子、
(16)抗体、
(17)生物学的に活性な非金属、
(18)ヒスタミン又は抗ヒスタミン剤、及び
(19)キナーゼ阻害剤。
【0017】
本明細書において使用される、用語「核酸」とは、一本鎖又は二本鎖の形態及びコーディング又は非コーディング(例えば、「アンチセンス」)形態を含めたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。この用語は、天然ヌクレオチドの既知類似体を含有する核酸を包含する。この用語はまた、修飾又は置換された塩基が、相補ヌクレオチドのワトソン−クリック結合も、亜鉛フィンガータンパク質などの特異的に結合するタンパク質によるヌクレオチド配列の結合も干渉しない限りは、修飾又は置換された塩基を含む核酸も包含する。この用語はまた、合成骨格を含む核酸様構造を包含する。本発明によって提供されるDNA骨格類似体として、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、アルキルホスホトリエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチリミノ)、3’−N−カルバメート、モルホリノカルバメート及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる;Oligonucleotides and Analogues, a Practical Approach、F.Eckstein編、Oxford University PressのIRL Press(1991年);Antisense Strategies、Annals of the New York Academy of Sciences、第600巻、Baserga and Denhardt編(NYAS 1992年);Milligan(1993年)J. Med. Chem.36:1923〜1937頁;Antisense Research and Applications(1993年, CRC Press)を参照のこと。PNAは、N−(2−アミノエチル)グリシン単位などの非イオン性骨格を含有する。
ホスホロチオエート結合は、例えば、米国特許第6,031,092号、同6,001,982号、同5,684,148号によって記載されており、WO97/03211、WO96/39154;Mata(1997年)Toxicol.Appl.Pharmacol.144:189〜197頁も参照のこと。この用語によって包含される他の合成骨格として、メチルホスホネート結合又は交互のメチルホスホネート及びホスホジエステル結合(例えば、米国特許第5,962,674号、Strauss−Soukup(1997年)Biochemistry36:8692〜8698を参照のこと)及びベンジルホスホネート結合(例えば、米国特許第5,532,226号、Samstag(1996年)Antisense Nucleic Acid Drug(Dev 6:153〜156頁を参照のこと)が挙げられる。
【0018】
本明細書において使用される、用語「核酸」はまた、DNA及びRNAの両方並びにDNA及びRNA両方の,天然に存在する形態及び合成形態の両方並びにRNA−DNAハイブリッドを含む。DNAに関しては、用語「核酸」は、一本鎖及び二本鎖DNAの両方、並びに、部分二本鎖DNAを包含し、さらに、直鎖及び環状DNAの両方並びにメッセンジャーRNA(mRNA)の逆転写によって調製されるcDNAを包含する。RNAに関しては、用語「核酸」は、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)及びメッセンジャーRNA(mRNA)などのRNAの形態並びにRNA干渉経路において活性であり、特定の遺伝子の発現を干渉する、いずれかの末端の2−ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する、長さが20〜25ヌクレオチドである短い二本鎖RNA分子である低分子干渉RNA(siRNA)などのRNA分子並びに低分子ヘアピン型RNAを包含する。本発明に組み込むことができる核酸のクラスの別の例として、マイクロRNAがある。これらは、遺伝子発現の強力な調節因子であり、種々の組織における形を作る細胞発達及び分化において中心的な役割を果たす非コーティングオリゴヌクレオチドである。調節不全のマイクロRNAレベルは、種々の悪性腫瘍と関連している。本発明に組み込むことができる別の種類の核酸として、Toll様受容体(TLR)3と相互作用することがわかっている免疫賦活薬であり、B細胞及び樹状細胞の細胞内コンパートメントにおいて発現されるポリI:C(例4)がある。ポリI:Cは、いくつかのウイルスにおいて存在しており、TLR3の「天然」賦活薬である二本鎖RNAと構造的に類似している。したがって、ポリI:Cは、二本鎖RNAの合成類似体と考えることができる。Toll様受容体7、8及び9はすべて、病原体由来核酸又はオリゴヌクレオチドの感知に関与している。
【0019】
多数のヌクレオチド及びヌクレオシドが、生物学的に活性であることがわかっている。例として、それだけには限らないが、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)及び環状AMP(cAMP)が挙げられる。ATP及びGTPは、エネルギー供給源であるのに対し、cAMPは、多数のシグナル伝達系においてシグナル伝達モジュレーター又はセカンドメッセンジャーとして作用する。他の生物学的に活性なヌクレオチド及びヌクレオシドが当技術分野で既知である。
【0020】
タンパク質は、酵素、膜タンパク質、分泌タンパク質、輸送タンパク質、受容体タンパク質、構造タンパク質、抗体、抗体フラグメント及び他の生物活性タンパク質を含む。本明細書において使用される、用語「タンパク質」は、単一ポリペプチド鎖を含むタンパク質と、タンパク質がサブユニットを含み、サブユニットが共有結合又は非共有結合相互作用によって一緒にまとめられ得る場合には「サブユニット」と呼ばれることもある、複数のポリペプチド鎖を含むタンパク質の両方を包含する。本明細書において「タンパク質」への言及は、マルチサブユニットタンパク質の個々のサブユニットへの言及を含む。ペプチドは、約50未満の長さのアミノ酸のポリ−α−アミノ酸鎖であり、より長い鎖のポリ−α−アミノ酸は、一般に、タンパク質又はタンパク質のサブユニットとして分類される。多数のペプチドが、生物学的に活性であり、例として、それだけには限らないが、チムリン、サブスタンスP並びにニューロキニンA及びBなどのタキキニンペプチド、血管作動性腸管ペプチド、エンケファリンペプチド、抗菌性塩基性ペプチド、アンジオテンシン、プロリンリッチペプチド、カルシトニン、アミリン、グルカゴン及びセクレチンが挙げられる。本発明の組成物に組み込むことができる、生物活性を有する他のペプチドとして、それだけには限らないが、ポリリシンなどの多塩基性ペプチド及び抗菌性塩基性ペプチド並びにMHC I及びMHC IIペプチドエピトープ混合物(G1/9+G2/4)(例4)又はペプチドB3(例8〜10)などのペプチドエピトープ及びペプチドエピトープの混合物が挙げられる。多数の他のものが当技術分野で既知である。また、本発明の組成物に含めることができる生物活性タンパク質又はペプチドの範囲内に、組換えタンパク質、組換えペプチド及びマルチペプチドがある。さらに、本発明の組成物に含めることができる生物活性タンパク質の範囲内に、タンパク質キナーゼ阻害剤として作用するモノクローナル抗体、例えば、それだけには限らないが、VEGFのリン酸化を標的化するベバシズマブ、Erb1のリン酸化を標的化するセツキシマブ、Erb2のリン酸化を標的化するトラスツズマブ、VEGFのリン酸化を標的化するラニブズマブ(ranibzumab)及びEGFRのリン酸化を標的化するパニツムマブがある。mTORの阻害剤もまた、細胞増殖、代謝及び血管新生を調節する組成物に含めることができる。タンパク質mTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)はまた、FK506結合タンパク質12−ラパマイシン関連タンパク質1(FRAP1)としても知られている。細胞成長、細胞増殖、細胞運動、細胞生存、タンパク質合成及び転写を調節するセリン/トレオニンタンパク質キナーゼである。mTORの阻害剤として、ラパマイシン、FK506(タクロリムス)及びその類似体及び誘導体が挙げられる。
【0021】
リポグリカンとしても知られるリポ多糖は、共有結合によって結合している脂質及び多糖からなる大分子である。それらは、グラム陰性菌の外膜中に位置し、エンドトキシンとして作用し、強い免疫応答を誘発する。リポ多糖は、3種の成分:(1)多糖(O)側鎖;(2)コア多糖(いくつかの種ではコアオリゴ糖)及び(3)脂質Aを含む。リポ多糖は、特定の構造を示すよう修飾され得る。
【0022】
ペプチドグリカンは、細菌の細胞膜の外側に網目様層を形成し、細胞壁を形成する、糖及びアミノ酸からなるポリマーである。糖成分は、交互のβ−(1,4)結合N−アセチルグルコサミンの残基及びN−アセチルムラミン酸残基からなる。N−アセチルムラミン酸に結合されるのが、3〜5個のアミノ酸のペプチド鎖である。ペプチド鎖は、別の鎖のペプチド鎖に架橋され、3D網目様層を形成し得る。細菌細胞壁中のペプチドグリカン層は、2種の交互のアミノ糖、すなわち、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc又はNAG)及びN−アセチルムラミン酸(MurNAc又はNAM)の直鎖から形成される結晶格子構造である。交互の糖は、β−(1,4)−グリコシド結合によって連結されている。各MurNAcは、大腸菌(Escherichia coli)(グラム陰性)の場合には、D−アラニン、D−グルタミン酸及びメソ−ジアミノピメリン酸を含有し、又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(グラム陽性菌)の場合には、L−アラニン、D−グルタミン、L−リシン及びD−アラニンを含有する、短い(4〜5残基)アミノ酸鎖に結合されている。L−アミノ酸を除くこれらのアミノ酸は、タンパク質中にはなく、ほとんどのペプチダーゼによる攻撃に対する防御に役立つと考えられる。トランスペプチダーゼとして知られる酵素による異なる直鎖アミノ糖鎖中のアミノ酸間の架橋は、強くて、硬い3−次元構造をもたらす。特定のアミノ酸配列及び分子構造は、細菌種によって異なる。
【0023】
炭水化物は、単糖、オリゴ糖及び多糖を含む。多糖は、ヘテロ多糖及びホモ多糖を含み得、それらは、分岐及び直鎖ポリマーの両方を含む。多数の炭水化物が、受容体並びに免疫応答及びシグナル伝達に関与する他の分子の重要な成分である。
【0024】
脂質は、脂肪酸、トリアシルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール及びジホスファチジルグリセロールなどのグリセロホスホ脂質、セラミド、スフィンゴミエリン及びセレブロシドなどのスフィンゴ脂質並びにコレステロールなどのステロールを含む。脂質は、細胞膜の重要な成分であり、細胞膜の構造の維持及び溶質の透過性の調節において重要な役割を果たす。それらはまた、免疫応答の誘発及び調節に関与している。
【0025】
リポペプチドは、ペプチドと共有結合している脂質からなる分子である。それらは、細菌によって発現され、TLR1及び他のToll様受容体によって特異的に結合される。例として、それだけには限らないが、サーファクチン及びダプトマイシンが挙げられる。リポペプチドは、この参照によりその全文が本明細書に組み込まれるHillらの米国特許第6,911,525号に記載されている。
【0026】
Zn2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+及びMn2+などの金属イオンは、補因子として酵素反応に頻繁に関与している。さらに、正に帯電している金属イオンは、亜鉛フィンガータンパク質の一部として負に帯電している核酸と結合し得、正に帯電している金属イオン、特に、Fe2+はまた、ミオグロビン及びヘモグロビンなどの酸素輸送タンパク質の一部である。
【0027】
チオールは、生物学的還元剤であり、酸化システイン残基をその還元型へ変換する、タンパク質中のジスルフィド結合の還元など、いくつかの生物学的に重要な酸化還元プロセスに関与している。生物学的に活性なチオール分子の例として、グルタチオン及びN−アセチルシステインがあり、両方とも免疫応答において重要な役割を果たす。
【0028】
抗生物質は、一般に、望ましくない微生物を死滅させるか、成長を阻止する、細菌又は真菌から産生されるか、由来する分子である。多数の抗生物質が、当技術分野で既知であり、例えば、抗生物質は、それだけには限らないが、オフロキサシン、チアムリン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、ペニシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、セファロスポリン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、バンコマイシン及びリファマイシンであり得る。他の抗生物質の使用も可能である。これら及び他の抗生物質の構造及び使用は、この参照により本明細書に組み込まれる、J.G.Hardman & L.G.Limbird編、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(第9版、McGraw−Hill, New York, 1996年)、1073〜1153頁に開示されている。さらに、特定のタンパク質又はタンパク質の誘導体は、抗菌活性を有し、本明細書において使用される「抗生物質」の定義に含まれる。これらとして、ラクトフェリン及びラクトフェリシンが挙げられる。抗生物質はまた、その抗菌作用に加え、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方に影響を及ぼす。
【0029】
ビタミンは、一般に、生化学反応において補酵素又は補因子として作用する。ビタミンとして、ビタミンA(レチノイド)、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン又はナイアシンアミド)、ビタミンB(リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール及びトコトリエノール)及びビタミンK(フィロキノン及びメナキノン)が挙げられる。ビタミンはまた、免疫応答に直接的に影響を及ぼし得る。
【0030】
バイオフラボノイドは、生物学的抗酸化物質であり、他の機能の中でも、フリーラジカルによって生物システムにおいて引き起こされる損傷を防ぐ、又は遅延させる。例えば、バイオフラボノイドは、それだけには限らないが、ケルセチン、ケルシトリン、ケンフェロール、ケンフェロール3−ルチノシド、3’−メトキシケンフェロール3−ルチノシド、5,8,4’−トリヒドロキシル−6,7−ジメトキシフラボン、カテキン、エピカテキン(epicachetin)、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカケチン(epigallocachetin gallate)、ヘスペリジン、ナリンジン、ルチン、ビクセチン(vixetin)、プロアントシアニジン、アピゲニン、ミリセチン、トリセチン、ケルセチン、ナリンジン、ケンフェロール、ルテオリン、ビフラボニル(biflavonyl)、シリビン、シリジアニン及びシリクリスチン又はこれらの化合物の誘導体及びグリコシドであり得る。バイオフラボノイドは、例えば、この参照により本明細書に組み込まれるNairらの米国特許第6,576,271号に記載されている。
【0031】
生物学的抗酸化物質は、タンパク質、核酸、炭水化物又は脂質を酸化し、従って、細胞損傷の一因となり得る、生物学的酸化反応を阻害、減速、遅延又は防止する特性を有する。これらの生物学的抗酸化物質は、通常、例えば、過酸化水素(H)、次亜塩素酸(HOCl)並びにヒドロキシルラジカル(・OH)及びスーパーオキシドアニオン(O)などのフリーラジカルをはじめとする反応性酸素種によって引き起こされる損傷を防ぐことによって働く。このような生物学的抗酸化物質として、上記の、グルタチオンなどのチオール、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンEなどのビタミン並びにクルクミン、尿酸、リポ酸、カロチン及びユビキノール(補酵素Q)が挙げられる。他のものも当技術分野で既知である。
【0032】
免疫応答修飾因子は、免疫系を活性化する。一例として、イミキモドがある。イミキモドは、一般に細胞表面での病原体認識に関与している、toll様受容体7(TLR7)を介して免疫細胞を活性化する。TLR−7を介してイミキモドによって活性化された細胞は、サイトカイン(主に、インターフェロン−α(IFN−α)、インターロイキン−6(IL−6)及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α))を分泌する。イミキモドは、皮膚に塗布されると、ランゲルハンス細胞の活性化につながり、その後、局所リンパ節に移動して、適応免疫系を活性化し得るという証拠がある。イミキモドによって活性化される他の細胞種として、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ及びB−リンパ球が挙げられる。新規研究によって、イミキモドの抗増殖効果は、オピオイド増殖因子受容体(OGFr)のレベルを増大することによって発揮されるということが示されている。siRNA技術を用いてOGFr機能を阻止することは、イミキモドの任意の抗増殖性効果の喪失をもたらした。
【0033】
抗体の構造及び活性は、当技術分野で周知である。抗体は、相補的非共有結合相互作用によってその対応する抗原と特異的に結合する。抗体は、免疫系によって外来と認識される物質による攻撃に対する免疫応答の一部として、すべての脊椎動物において作製される免疫グロブリンと呼ばれる血清糖タンパク質の一般的クラスに属する。天然に存在する抗体は、ジスルフィド結合によって一緒にまとめられている、各々約50kDaの分子量を有する2つの同一の重(H)鎖と、各々約25kDaの分子量を有する2つの同一の軽(L)鎖で構成されているY型タンパク質である。天然に存在する抗体は各々、可変領域、より詳しくは、可変領域内の超可変領域と表される、重鎖及び軽鎖両方の特定の部分によって形成される2つの抗原結合部位を有する。抗体分子との抗原の特異的結合が、可変領域とは異なる定常領域と表される、重鎖及び軽鎖の部分によるいくつかの生物学的機能を活性化する。これらの生物学的機能として、補体活性化、病原体のオプソニン化及びいくつかの細胞種の活性化が挙げられる。
【0034】
このような抗体の調製は、当技術分野で周知であり、本明細書においてさらに記載される必要はない。一般に、本発明の抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM又はIgYなど、任意のクラスのものであり得るが、通常、IgG抗体が好ましい。抗体は、ヒト、ネズミ(マウス又はラット)、ロバ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラクダ、ウマ又はニワトリをはじめ、任意の哺乳動物又は鳥類起源のものであり得る。いくつかの代替法では、抗体は、二重特異性であり得る。抗体は、抗体との任意の種類の分子の共有結合によって修飾され得る。例えば、制限するものではないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基(blocking group)による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド若しくは他のタンパク質との結合又は当技術分野で既知の他の修飾によって修飾されている抗体を含む。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体及びファージディスプレイ技術又はそれらの組合せの使用をはじめとする当技術分野で既知の幅広い技術を使用して調製できる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で既知の、例えば、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563〜681頁(Elsevier, N.Y.、1981年)中、Hammerlingらにおいて教示されるものをはじめとするハイブリドーマ技術又は当技術分野で既知の他の標準的な方法を使用して製造できる。本明細書において使用される、用語「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマ技術によって製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」とは、それが製造される方法ではなく、任意の真核生物クローン、原核生物クローン又はファージクローンをはじめとする単一クローンに由来する抗体を指す。例えば、適した抗体は、ファージディスプレイ又は他の技術によって製造できる。さらに、制限するものではないが、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ法をはじめとする種々の技術によって、及び機能性内因性免疫グロブリンを発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスの使用によって製造できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体を、無作為に、又は相同組換えによって、マウス胚幹細胞へ導入できる。抗体はまた、これらの抗体をコードするポリヌクレオチドの発現によって製造できる。さらに、本発明の抗体は、ペプチドタグなどのマーカー配列と融合して、精製を促進でき、適したタグとして、ヘキサヒスチジンタグがある。抗体はまた、当技術分野で既知の方法によって診断薬又は治療薬とコンジュゲートしてもよい。このようなコンジュゲートを調製する技術は、当技術分野で周知である。
【0035】
これらのモノクローナル抗体、並びに、キメラ抗体、ヒト化抗体及び一本鎖抗体を調製する他の方法は、当技術分野で既知である。いくつかの場合には、ヒトモノクローナル抗体は、組成物において使用するのに適しており、ファージディスプレイ技術及びヒト抗体を産生するよう遺伝子改変されたマウスをはじめとするいくつかの当技術分野で既知の方法によって調製できる。
【0036】
本明細書において使用される場合、具体的に制限されない限り、用語「抗体」は、それだけには限らないが、天然に存在する抗体、モノクローナル抗体、遺伝子改変された抗体、一本鎖抗体、誘導体化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び他の種類の抗体をはじめとする本明細書に記載されるすべての種類の抗体を含む。
【0037】
生物学的に活性な非金属として、必須微量栄養素であり、異常アミノ酸セレノシステイン及びセレノメチオニンの成分であるセレンが挙げられる。ヒトでは、セレンは、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素並びに動物及び一部の植物において見られる特定の形態のチオレドキシンレダクターゼの還元のための補因子として機能する微量元素栄養素である。
【0038】
ヒスタミンは、ヒスチジンの脱炭酸生成物である。ヒスタミンは、少なくとも4種の別個の受容体、H受容体、H受容体、H受容体及びH受容体に対して作用する。血管透過性を増大させ、その効果及び他の効果によって、炎症反応のメディエーターである。抗ヒスタミン剤は、アレルギーをはじめとする種々の炎症状態を治療するために広く使用されている。抗ヒスタミン剤として、それだけには限らないが、塩酸ドキセピン、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、クエン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミン、クエン酸トリペレナミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジン、塩酸プロメタジン、塩酸シプロヘプタジン、酒石酸フェニンダミン、アクリバスチン、塩酸セチリジン、塩酸アゼラスチン、塩酸レボカバスチン、ロラチジン(loratidine)、デスロラチジン(desloratidine)、エバスチン、ミゾラスチン及びフェキソフェナジン並びにその塩、溶媒和物、類似体、同族体、バイオイソスター、加水分解生成物、代謝産物、前駆体及びプロドラッグが挙げられる。
【0039】
キナーゼ阻害剤は、セリン、チロシン、トレオニンのリン酸化を、場合によっては、タンパク質のヒスチジン残基を阻害する。キナーゼ阻害剤は、小分子キナーゼ阻害剤を含む。このような小分子キナーゼ阻害剤の例として、それだけには限らないが、EGFR及びHer2/neuを阻害し、化学構造N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[[(3S)−テトラヒドロ−3−フラニル]オキシ]−6−キナゾリニル]−4(ジメチルアミノ)−2−ブテンアミドを有するBIBW2992、チロシンキナーゼ酵素を阻害し、化学構造4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)メチル]−N−[4−メチル−3−[(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イル)アミノ]フェニル]ベンズアミドを有するイマチニブ(Gleevec)、EGFRのチロシンキナーゼドメインを阻害し、化学構造N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリン−4−イルプロポキシ)キナゾリン−4−アミンを有するゲフィニチブ、VEGFを阻害するペガプタニブ、いくつかのタンパク質キナーゼを阻害し、化学構造4−[4−[[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]−N−メチル−ピリジン−2−カルボキサミドを有するソラフェニブ、同様に、いくつかのタンパク質キナーゼを阻害し、化学構造N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−[[6−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−メチル−4−ピリミジニル]アミノ]−5−チアゾールカルボキサミド一水和物を有するダサチニブ、いくつかの受容体タンパク質キナーゼを阻害し、化学構造N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−5−[(Z)−(5−フルオロ−1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−3−イリジン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミドを有するスニチニブ、EGFRチロシンキナーゼを阻害し、化学構造N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミンを有するエルロチニブ、チロシンキナーゼ阻害剤であり、化学構造4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イル)アミノ]ベンズアミドを有するニロチニブ並びに癌遺伝子EGFR及びHer2/neuと関連しているチロシンキナーゼ活性を阻害し、化学構造N−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6−[5−[(2−メチルスルホニルエチルアミノ)メチル]−2−フリル]キナゾリン−4−アミンを有するラパチニブが挙げられる。それだけには限らないが、ラパマイシン、FK506(タクロリムス)及びその類似体及び誘導体を含めたmTOR阻害剤などのさらに他の小分子キナーゼ阻害剤が、当技術分野で既知である。
【0040】
したがって、本発明の組成物は、上記の生物学的に活性な成分のうち1種又は複数を任意の適した組み合わせで含み得る。本発明に従う組成物に組み込むことができる組合せの例として、それだけには限らないが、(1)核酸又はその誘導体及びペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体、(2)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及びペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体、(3)炭水化物又はその誘導体及び脂質又はその誘導体、(4)炭水化物又はその誘導体及びリポペプチド又はその誘導体、(5)核酸又はその誘導体及び金属イオン、(6)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及び金属イオン、(7)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及び金属イオン、(8)核酸又はその誘導体及びチオール、(9)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及びチオール、(10)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及びチオール、(11)核酸又はその誘導体及び抗生物質又はその誘導体、(12)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及び抗生物質又はその誘導体、(13)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及び抗生物質又はその誘導体、(14)核酸又はその誘導体及びビタミン又はその誘導体、(15)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及びビタミン又はその誘導体、(16)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及びビタミン又はその誘導体、(17)核酸又はその誘導体及びバイオフラボノイド又はその誘導体、(18)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及びバイオフラボノイド又はその誘導体、(19)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及びバイオフラボノイド又はその誘導体、(20)核酸又はその誘導体及び抗酸化物質又はその誘導体、(21)ヌクレオシド、ヌクレオチド又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体及び抗酸化物質又はその誘導体、又は(22)ペプチド、タンパク質又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体及び抗酸化物質又はその誘導体が挙げられる。3、4、5、6又は最大16種の生物学的に活性な成分を含む組成物などの他の組合せが可能である。複数の生物学的に活性な成分を含む種々の組合せが、以下の例6〜10に記載されている。成分の正確な組合せに応じて、単一反応で複数の成分を担体に加えてもよく、或いは、複数のラウンドの反応を使用し、単一成分又は複数の成分が各ラウンドの反応で加えられてもよい。複数の成分が単一ラウンドの反応で、又は複数のラウンドの反応のいずれかで加えられるこれらの組合せの例が、以下の例6〜10に記載されている。例6では、生物学的に活性な成分は、オフロキサシン、クルクミン、ルチン、G1/9ペプチド(CKRNIFKSY)(配列番号1)、G2/4ペプチド(CQIDKNKPKYYILDMFPYPSG)(配列番号2)及びB3ペプチド(CKPKDMVDNYPSTWRERRRKKR)(配列番号3)である。最初の3種の成分(オフロキサシン、クルクミン及びルチン)は、最初のラウンドの反応で加えられる。最後の3種の成分(G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチド)は、第2のラウンドの反応で加えられる。例7では、生物学的に活性な成分は、レチノイン酸、ルチン、G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチドである。最初の2種の成分(レチノイン酸及びルチン)は、最初のラウンドの反応で加えられる。最後の3種の成分(G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチド)は、第2のラウンドの反応で加えられる。例8では、生物学的に活性な成分は、LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド、G2/4ペプチド、B3ペプチド、ノボビオシン、グルタチオン及びチアムリンである。最初の4種の成分(LPS、PG、DNA及びイミキモド)は、最初のラウンドの反応で加えられる。次の3種の成分(G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチド)は、第2のラウンドの反応で加えられる。最後の3種の成分(ノボビオシン、グルタチオン及びチアムリン)は、第3のラウンドの反応で加えられる。例9では、生物学的に活性な成分は、LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド、G2/4ペプチド、B3ペプチド、レチノイン酸及びチアムリンである。最初の4種の成分(LPS、PG、DNA及びイミキモド)は、最初のラウンドの反応で加えられる。次の3種の成分(G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチド)は、第2のラウンドの反応で加えられる。最後の2種の成分(レチノイン酸及びチアムリン)は、第3のラウンドの反応で加えられる。例10では、生物学的に活性な成分は、LPS(リポ多糖)、PG(ペプチドグリカン)、DNA、イミキモド、G1/9ペプチド、G2/4ペプチド、B3ペプチド、ラクトフェリシン及びチムリンである。最初の4種の成分(LPS、PG、DNA及びイミキモド)は、最初のラウンドの反応で加えられる。次の3種の成分(G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチド)は、第2のラウンドの反応で加えられる。最後の2種の成分(ラクトフェリシン及びチムリン)は、第3のラウンドの反応で加えられる。いくつかの場合には、単一ラウンドの反応で複数の成分が加えられる場合に、規定された連続順で成分を加えることが好ましい場合がある。例えば、G1/9ペプチド、G2/4ペプチド及びB3ペプチドが単一ラウンドの反応で加えられる場合には、それらをその順序(最初に、G1/9ペプチド、次いで、G2/4ペプチド、最後に、B3ペプチド)で加えることが好ましい。
【0041】
したがって、概して、本発明の生物学的に活性な組成物は:
(1)以下の生物学的に活性な成分:
(a)核酸又はその誘導体、
(b)ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はヌクレオシド若しくはヌクレオチドの誘導体、
(c)ペプチド、タンパク質、又はペプチド若しくはタンパク質の誘導体、
(d)リポ多糖又はその誘導体、
(e)ペプチドグリカン又はその誘導体、
(f)炭水化物又はその誘導体、
(g)脂質又はその誘導体、
(h)リポペプチド又はその誘導体、
(i)金属イオン、
(j)チオール、
(k)抗生物質又はその誘導体、
(l)ビタミン又はその誘導体、
(m)バイオフラボノイド又はその誘導体、
(n)抗酸化物質又はその誘導体、
(o)免疫応答修飾因子、
(p)抗体、
(q)生物学的に活性な非金属、
(r)ヒスタミン又は抗ヒスタミン剤、及び
(s)キナーゼ阻害剤
のうち少なくとも1種と、
(2)組成物を食細胞に送達し、その結果、生物学的に活性な成分が、食細胞によって取り込まれ、その生物活性に影響を及ぼすのに有効な少なくとも1種の担体と
を含む。
【0042】
一代替法では、組成物は、免疫活性抗原又は抗原性エピトープを含み得る。免疫活性抗原又は抗原性エピトープは、それだけには限らないが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド又はマルチペプチド又は組換えタンパク質であり得る。組成物が免疫活性抗原性エピトープを含む場合には、組成物は、in vivoで防御免疫応答を誘発し得る。
【0043】
別の代替法では、組成物は、二本鎖RNA、siRNA、プレ−miRNA、miRNA、ポリU又はGUリッチヌクレオチド配列を含み得る。
【0044】
組成物中では、分子は、混合物として存在し得る。或いは、分子は、化学的に一緒に結合していてもよく、この代替法では、少なくとも1種の生物学的に活性な成分が担体と結合している。担体は、通常、微粒子である。微粒子は、狭いサイズ分布範囲を有することが好ましい。微粒子は、多孔性であっても、非多孔性であってもよい。一般に、微粒子は、直径約10μm未満であり、より一般には、微粒子は、直径約5μm未満である。一般に、微粒子は、生体高分子で作られている。一代替法では、成分は、非共有結合によって微粒子に結合されている。別の代替法では、成分は、共有結合によって微粒子に結合されている。通常、微粒子は、病原体と同じサイズ範囲にある。微粒子が、病原体と同じサイズ範囲にある場合には、組成物は、免疫活性抗原抗原性エピトープ又は免疫モジュレーター(単数又は複数)を含み得、免疫活性抗原又は抗原性エピトープは、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド、組換えタンパク質、脂質、炭水化物又はこれらの組合せであり得る。組成物は、免疫活性抗原又は抗原性エピトープと免疫モジュレーター(単数又は複数)の両方を含み得る。
【0045】
一代替法では、少なくとも1種の生物学的に活性な成分が、担体と可逆的に結合されている。少なくとも1種の生物学的に活性な成分は、ジスルフィド結合によって担体と可逆的に結合され得る。或いは、少なくとも1種の生物学的に活性な成分は、固定化金属キレートを含む結合によって、担体と可逆的に結合され得る。固定化金属キレートは、亜鉛、銅、鉄又は他の金属のキレートを含み得る。別の代替法では、可逆的結合は、イオン性又は疎水性結合であり得る。
【0046】
本発明の別の態様は、細胞培養物、細胞部分集合又は植物、動物若しくはヒト被験体などの多細胞生物において生物学的応答を誘発する方法であって、微粒子と会合している選択された生物学的に活性な成分を含むある量の組成物を投与するステップを含み、微粒子が病原体よりも小さいか、同じサイズ範囲にある、上記方法である。投与される量は、細胞培養物、細胞部分集合又は多細胞生物被験体において免疫応答を誘発するのに十分である。方法が、細胞部分集合において生物学的応答を誘発する方法である場合には、組成物は、細胞培養物に投与され得る。
【0047】
本発明によれば、組成物の投与は、細胞培養物において、又は植物、動物若しくはヒトなどの多細胞宿主へ粘膜経路、非経口経路若しくは経皮経路によって実施してよい。或いは、他の投与経路を使用してもよい。
【0048】
本発明の組成物の毒性及び有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物において標準的な医薬手順によって決定できる。毒性効果及び治療効果間の用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができ、大きな治療指数を示す組成物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータを、ヒトにおいて、又は他の動物において使用するための投与量の範囲の策定において使用できる。このような組成物の投与量は、ED50を含み、ほとんど又は全く毒性を有さない循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は、使用される投与形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で異なり得る。
【0049】
本発明の別の態様は、(i)アレルギー、喘息及び自己免疫状態からなる群から選択される慢性炎症性疾患及び(ii)癌及び腫瘍転移からなる群から選択される悪性状態からなる群から選択される状態の病因に対する急性感染症の影響を研究する方法であって、
(1)(i)アレルギー、喘息及び自己免疫状態からなる群から選択される慢性炎症性疾患及び(ii)癌及び腫瘍転移からなる群から選択される悪性状態からなる群から選択される状態に対して感受性である動物モデルを提供するステップと、
(2)組成物中では、微粒子が病原体と同じサイズ範囲にあり、組成物が免疫活性抗原又は抗原性エピトープを含み、免疫活性抗原又は抗原性エピトープが、ペプチド、タンパク質、組換えペプチド若しくはマルチペプチド又は組換えタンパク質である本発明の組成物を動物モデルに投与して、組成物の投与に起因する免疫応答によって動物モデルにおいて感染を治療又は予防するステップと、
(3)(i)アレルギー、喘息及び自己免疫状態からなる群から選択される慢性炎症性疾患及び(ii)癌及び腫瘍転移からなる群から選択される悪性状態からなる群から選択される状態に対する、ステップ(2)において投与された組成物の効果を調べるステップと
を含む、上記方法である。
【0050】
本発明は、以下の実施例によって例示される。これらの実施例は、単に例示目的のために含まれるのであって、本発明を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0051】
(例1)
微粒子の選択
1〜10μmの範囲のアガロース微粒子が、Sterogene Bioseparations, Inc.(Carlsbad、CA)によって製造されており、Saturn DigiSizer 5200(Micromeritis Instrument Corp)を使用して調べた。結果は、粒子分布は、75%が5μm未満であり、24%が5〜10μmであり、1%が10μmを超えることを示した。
【0052】
(例2)
活性化されたアガロース微粒子
粒子は、2種の異なる方法によって活性化した。活性化法は、Sterogene Bioseparations, Inc.(Carlsbad、CA)によってチオール−ジスルフィドリガンド交換化学を使用して実施された。リガンドの可逆的共有結合を提供するこの結合化学では、微粒子を、高密度のチオール基で官能化した。ペプチド及び他の生体分子は、2−チオピリジル部分又はエポキシド基のいずれかで官能化した。2−チオピリジル官能化ペプチドは、細胞内部移行後に、強い細胞内還元環境のために微粒子から放出されるであろう。この化学の別の利点は、高度に有効で、再現性のあるリガンドの固定化である。
【0053】
別の固定化法を、固定化金属キレート化(IMAC)化学を使用して実施した。アガロース微粒子を標準法に従ってZn2+イオンを用いて官能化した。選択ペプチド並びに他の生物学的に活性な化合物は、固定化されたZn2+イオンを容易にキレートできるキレート化部分(例えば、リシン、システイン、トリプトファン、複素環式環構造、アミド結合、硫黄含有残基など)を含有する。
【0054】
(例3)
病原体の抗原性タンパク質の生物情報科学分析はまた、高い抗原性能力のペプチドエピトープの同定につながり得る。このような分析を、M・ガリセプチカム(M.gallisepticum)MGAタンパク質について実施した。抗原性領域を、直鎖抗原性モチーフとの関連でさらに分析した。
【0055】
(例4)
チオール官能化微粒子でのMGペプチド免疫モジュレーターの調製 免疫調節性組成物の調製:2.5mlのチオール官能化微粒子(Sterogene Bioseparations,Inc.、Carlsbad、CA)に、エポキシ化50μg LPS、50μgペプチドグリカン(PG)及び250μg大腸菌(E.coli)DNAの混合物を加えた。4時間撹拌した後、スラリーを遠心分離し、LAL水で1回洗浄した。次いで、125μgのチオール化ポリ−I:Cを加え、カップリングを4時間継続した。その後、遠心分離し、LAL水で3回洗浄し、0.125mgの2−cys−チオピリジルB3ペプチドを加え、カップリングを4時間継続した。次いで、混合物をLAL水で1回洗浄し、0.125mgの単回の、N末端2−cys−チオピリジル部分を含有するMHC I及びMHC IIペプチドエピトープ混合物(G1/9+G2/4)を加え、カップリングを4時間継続した。(これらのペプチドは、チオール粒子とのカップリングのためのN末端2−チオピリジル反応性基を含有する)。上清においてOD343によってカップリング効率を測定した。LAL水で洗浄した後、粒子を等量のLAL水に再懸濁した。
【0056】
別のカップリング反応では、Znキレート化微粒子を以下のように同一ペプチド及びアゴニスト濃度で使用した:2mlのZnキレート化微粒子(Sterogene Bioseparations,Inc.、Carlsbad、CA)に、40μg LPS、40μg PG、100μgポリ−I:C及び200μg DNAの混合物を加え、3時間、穏やかに揺り動かした。混合物を遠心分離し、6mlのLAL水で2回洗浄した。その後、60μgのG1/9、60μgのG2/4及び60μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加えた(2ml最終容量中)。12時間穏やかに揺り動かした後、懸濁液を遠心分離し、6mlのLAL水で3回洗浄した。粒子を等量のLAL水に再懸濁した。
【0057】
(例5)
他の生物学的に活性な分子の固定化
本発明者らは、Znキレート化微粒子に以下のさらなるアゴニストを固定化した:クルクミン及びルチンのようなキナーゼ阻害剤、ラクトフェリン、ラクトフェリシン、細胞内酸化還元電位を改善するためのグルタチオン及びN−アセチルシステイン、チムリン、抗生物質(例えば、オフロキサシン及びチアムリン)、セレン、イミキモド、ポリ−リシンのような多塩基性ペプチド、抗菌性塩基性ペプチド、プロリンリッチペプチド、抗酸化物質及びビタミン。
【0058】
(例6)
2mlのZnキレート化微粒子に、最初に0.5mgのオフロキサシン、0.5mgのクルクミン及び0.5mgのルチンを加え、1時間穏やかに揺り動かす。遠心分離し、上清を残し、6mlのLAL水で1回洗浄し、プールする。さらに1回洗浄し、洗浄液を廃棄する。その後、20μgのG1/9、20μgのG2/4及び20μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加える(2ml量)。1時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。さらに各2回洗浄を反復する。等量のLAL水に再懸濁し、次いで、等量の2つのバイアルに分ける。上清及び最初の洗浄混合物からカップリング効率を求めた。
【0059】
(例7)
2mlのZnキレート化微粒子に、最初に0.5mgのレチノイン酸及び0.5mgのルチンを加え、1時間穏やかに揺り動かす。遠心分離し、上清を残し、6mlのLAL水で1回洗浄し、プールする。さらに1回洗浄し、洗浄液を廃棄する。その後、20μgのG1/9、20μgのG2/4及び20μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加える(2ml量)。1時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。さらに各2回洗浄を反復する。等量のLAL水に再懸濁し、次いで、等量の2つのバイアルに分ける。上清及び最初の洗浄混合物からカップリング効率を求めた。
【0060】
(例8)
2mlのZnキレート化微粒子に、40μgのLPS、40μgのPG、200μgのDNA及び10μgのイミキモドの混合物を加え、1時間穏やかに揺り動す。その後、20μgのG1/9、20μgのG2/4及び20μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加える(2ml量)。1時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。次いで、0.5mgのノボビオシン、0.5mgのグルタチオン及び0.5mgのチアムリンを加える。3時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。さらに各2回洗浄を反復する。等量のLAL水に再懸濁し、次いで、等量の2つのバイアルに分ける。上清及び最初の洗浄混合物からカップリング効率を求めた。
【0061】
(例9)
2mlのZnキレート化微粒子に、40μgのLPS、40μgのPG、200μgのDNA及び10μgのイミキモドの混合物を加え、1時間穏やかに揺り動す。その後、20μgのG1/9、20μgのG2/4及び20μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加える(2ml量)。1時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。次いで、0.5mgのレチノイン酸及び0.5mgのチアムリンを加える。3時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水でさらに1回洗浄し、上清とともにプールする。さらに各2回洗浄を反復する。等量のLAL水に再懸濁し、次いで、等量の2つのバイアルに分ける。上清及び最初の洗浄混合物からカップリング効率を求めた。
【0062】
(例10)
2mlのZnキレート化微粒子に、40μgのLPS、40μgのPG、200μgのDNA及び10μgのイミキモドの混合物を加え、1時間穏やかに揺り動す。その後、20μgのG1/9、20μgのG2/4及び20μgのB3ペプチドをこの順序で、各添加後に穏やかに手作業で混合しながら加える(2ml量)。1時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。次いで、50μgのラクトフェリシン及び50μgのチムリンを加える。3時間穏やかに揺り動かした後、遠心分離し、上清を残しておく。6mlのLAL水で1回洗浄し、上清とともにプールする。さらに各2回洗浄を反復する。等量のLAL水に再懸濁し、次いで、等量の2つのバイアルに分ける。上清及び最初の洗浄混合物からカップリング効率を求めた。
【0063】
(例11)
動物研究
免疫調節性組成物を、3日齢のニワトリ(M.ガリセプチカム(MG)及びM.シノビエ(M.synoviae)(MS)を含まず、ELISAによって検出されるMG及びMS移行抗体を有さない)に経口投与した。各群に、10羽のニワトリがあった。ニワトリの個々の体重を記録した。ニワトリを、各群の平均体重が統計的な差がないよう割り当てた。各トリは、適当な形態で記録された処理及び体重に従って、有色の、番号付けされたウィングタグによって識別された。実験の14日目に、ニワトリにM.ガリセプチカムRlow株を用いて抗原投与した。研究は28日で終結させた。
【0064】
群は以下のように設定した:G1及びG2は負及び正の対照とした。G1抗原投与していない及び未処理G2=抗原投与され、未処理。G3=チオールベースの官能化微粒子(0.2ml/ニワトリ)で経口処理され、抗原投与された。G4=Znキレートベースの官能化微粒子(0.2ml/ニワトリ)で経口処理され、抗原投与された。
【0065】
スケジュール
−1日目:群G1〜G4の設定。ELISAアッセイ、PCR並びにM.ガリセプチカム及びM.シノビエの培養のために10羽のニワトリを屠殺し、実験ニワトリが、移行抗体並びにM.ガリセプチカム及びM.シノビエの存在について陰性であることを確認した。
【0066】
0日目:0.2mlの微粒子組成物を使用することによる、抗原投与の前のG3〜G4の経口ワクチン投与。
【0067】
14日目:群G2〜G4の抗原投与。動物に、約8.0log10CFU/mlの力価のM.ガリセプチカムの病原性R株の新鮮なブロス培養物を使用して抗原投与した。この新鮮なブロス培養物10mlを、噴霧技術を使用してこれらの群の各々に投与した。手短には、トリを単離ユニットに入れた。次いで、新鮮なM.ガリセプチカムR株培養物(10粒子/ml)を単離ユニット中に噴霧し、ニワトリを20分間曝露させた。
【0068】
14及び28日目:ニワトリを出血させ、血清プレート凝集(SPA)試験及びブロッキングELISAを使用してMG特異的抗体について試験される血清を得た。
【0069】
28日目:G1〜G4。安楽死、剖検及び特定の臓器、気管、気嚢及び肺からのM.ガリセプチカム(MG)の単離のためのプレーティング。気管及び肺の組織学的検査を実施した。
【0070】
安楽死及び病理学
実験研究の最後の28日目に、すべての群を安楽死させた。各トリを剖検し、MGと関連している肉眼的病変についてスコア化した。気管、左及び右胸部気嚢並びに腹膜中の浸出液の存在を記録した。病変を、以下のシステムに従ってスコア化した:気管中:0=浸出液なし、1=わずかに発赤及び少量の浸出液、2=粘膜の発赤、浸出液。左及び右気嚢:0=病変なし、1=漿液性浸出液、2=小片のフィブリンを含む漿液性浸出液、3=漿液性、フィブリン性浸出液、わずかに肥厚した気嚢壁、4=多量のフィブリン性浸出液、極めて肥厚した気嚢壁。腹膜:0=浸出液なし、1=漿液性浸出液、2=小片のフィブリンを含む漿液性浸出液、3=漿液性フィブリン性浸出液。
【0071】
MG再単離
剖検検査の際に、気管、胸部気嚢、肝臓、肺、脾臓、腎臓及び心臓を、スワブを使用して無菌的に試料採取した。次いで、スワブから得た材料を、マイコプラズマ寒天(MA)上にプレーティングし、5% COインキュベーター中、37℃でインキュベートした。2、4及び7日目に、次いで、週間隔で最大3週間、プレートをマイコプラズマについて観察した。陽性コロニーを、PCRによって試験し、M.ガリセプチカム及びM.シノビエを同定した。
【0072】
剖検
MG抗原投与に続いて、気嚢及び腹膜において、顕著な病理学的病変が認識された。しかし、免疫活性ペプチド及びアゴニストを含有する粒子で処理された群(G3、G4 p<0.001)では、対照(G2)の未処理、抗原投与群と比較して、病変スコアの顕著な低減が記録された。
【0073】
マイコプラズマの再単離
マイコプラズマは、未処理の、感染対照ニワトリの内部臓器から再単離できることが多い。マイコプラズマの完全な排出(呼吸器+内部臓器からの)は、未処理の、対照(G2)群と比較して、官能化微粒子で処理された群(G3、G4)において見られた。同様の結果が、実験群の気道(気管、肺、気嚢)からの、又は他の内部臓器(肝臓、脾臓、腎臓及び心臓)からのマイコプラズマの再単離率を比較した場合に得られた。
【0074】
表1に結果が示されている。
【表1】
【0075】
血清学的結果
群の血清反応は、実験の最後で異なっていた。未処理の、抗原投与群(G2)の反応は低かった。同時に、粒子及びペプチドエピトープ及びアゴニストを用いて処理された群(G3、4)において有意に強い反応が見られた(p<0.05)。
【0076】
考察
M.ガリセプチカムは、気管、気嚢及び肺への定着を伴う、気嚢及び腹膜における顕著な炎症を引き起こし得る。マイコプラズマはまた、内部臓器から検出され得ることが多い。本発明者らは、微生物のサイズ範囲にあり(<5μm)、種々のアゴニスト免疫調節性分子とともに固定化された、抗原性エピトープペプチド又は他の抗原を有する微粒子からなる、新規種類の「病原体を摸倣する」免疫学的に活性な組成物を開発した。
【0077】
本発明者らの結果は、抗原性分子が、選択された免疫調節性化合物で被覆された粒子に加えられると、マイコプラズマ特異的血清反応が増強されることを示した。臓器への定着は、わずかなレベルに低減し、病理学的病変のスコアは低かった。この効果は、微粒子が、抗原投与の前に粘膜によって導入された場合には、より多く観察された。
【0078】
組成物の投与後、抗原投与に先立って、処理されたニワトリを毎日調べ、組成物の安全性を評価した。ニワトリは臨床的に健常であると見られ、副作用は示さなかった。研究の過程で剖検された動物は、炎症の徴候又は臓器の大きさ/重量の変化を示さなかった。組成物は、安全であると思われる。これらの組成物は、予防に加え、臨床的に確立された感染を治療するために使用できる。これは、感染症、アレルギー、自己免疫及び癌などの慢性炎症状態の間に存在する関連のために重要である。
【0079】
本発明の利点
本発明は、食細胞への、複数の生物学的に活性な分子の制御された投与量導入のための改善された組成物及び方法を提供する。これらの組成物は、安定であり、所望の生物学的効果を引き起こすためにさまざまな濃度で調製できる。このような効果の一例として、免疫応答がある。それらは、種々の経路によるin vitro及びin vivo投与の両方に適している。それらの構造は、in vivoで、エフェクター分子の早過ぎる分解又は放出を防ぐ。粒子は、粘膜とのその相互作用を改善し、取り込みを促進し得る、固有の粘液接着性を有する。
【0080】
本発明の組成物は、細胞に、特に、食細胞に、生物学的に活性な成分を送達し、食細胞とのその相互作用を介して他の細胞種の機能に影響を及ぼすための産業上の利用可能性を有する。
【0081】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない、任意の要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)の不在下で適宜実施してよい。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などは、拡張的に読み取られ、制限されないものとする。さらに、本明細書において使用される用語及び表現は、説明の用語として使用されており、制限ではなく、このような用語及び表現の使用において、今後示され、記載される任意の等価物又は任意のその一部を排除する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書に開示される発明の改変及び変法が、当業者によって用いられ得ること、及びこのような改変及び変法は、本明細書に開示される発明の範囲内にあると考えられることは理解されるべきである。本発明は、本明細書において、広く、一般的に記載されている。属の開示内容の範囲内に入る、より狭い種及び亜属の分類の各々もまた、これらの発明の一部を形成する。これは、削除される材料が明確にそれに属するかどうかにかかわらず、その属の任意の対象を除外する条件又は負の制限つきで、各発明の属の説明を含む。
【0082】
さらに、本発明の特徴又は態様が、マーカッシュ群の観点で記載される場合には、当業者ならば、本発明はまた、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点でも記載されることを認識するであろう。上記の記載は例示的なものであって、制限的なものではないと意図されることも理解されるべきである。上記の記載を再考察すると、当業者には多数の実施形態が明らかとなろう。したがって、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲を、このような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲とともに、参照して決定されるべきである。特許公報を含むすべての論文及び参考文献の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]