特許第6101093号(P6101093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101093
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 65/02 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   D05B65/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-17873(P2013-17873)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-147524(P2014-147524A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】高木 務
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓也
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−074286(JP,A)
【文献】 特開2001−276463(JP,A)
【文献】 特開2005−205015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0211145(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0307400(US,A1)
【文献】 米国特許第05025737(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00 − 97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針が装着された針棒と、該針棒の上下動作と協働して縫い目を形成するための下糸を捲回した下糸ボビンを収納した水平釜と、該水平釜をベッド内に収納してベッド上面部の開口部を覆う針板と、該針板の開口部を覆う開口蓋とを備えたミシンにおいて、前記針板の下面側に装着される下糸を案内するための案内スリットを有する底板と、前記下糸ボビンから供給される下糸を案内する案内溝を形成して且つ該案内溝の終端位置に前記案内溝に沿って案内された下糸を適正長さに切断する切断刃を配設した下糸案内部材とからなり、該下糸案内部材は前記底板に配置固着されると共に前記案内溝内に下糸の切断時の状態を保持するように下糸端部を挟持する挟持部材が前記下糸案内部材又は前記底板に設けられてなることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記挟持部材は、前記案内溝を塞ぐように設けたことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記挟持部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記挟持部材は、フェルト材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシン。
【請求項5】
前記挟持部材は、スポンジ材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシン。
【請求項6】
前記挟持部材は、ゴム材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシン。
【請求項7】
前記挟持部材は、ブラシ状部材としてなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシン。
【請求項8】
前記挟持部材は、バネとしてなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針板に下糸切断刃を備え、縫製作業の準備段階において、ミシンベッド内に下糸ボビンを収納装着し、針板上に下糸を引き出して適正長さに切断すると共に下糸を切断時の緊張状態に保持し、下糸と上糸との適正な絡みを確実に行えるようにすることができるミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭用のミシンによる縫製作業において、準備段階の作業は、上糸と下糸とのセットから始まり、その準備作業過程は、以下のように行われる。まず、下糸ボビンを水平釜の内釜に収容する。次に、前記下糸ボビンを内釜の張力付与装置に引掛けながら、下糸を針板上に引き出す。
【0003】
このとき、下糸は、針板上に張力発生部からある程度の余裕を有して引き出しておく。針板から引き出された糸は、適正な長さに切断する。そして、ミシンを始動して水平釜の動作にて、下糸が捕捉されつつ、下糸と上糸とを適正に絡み合わせてセットが完了する。
【0004】
下糸を針板から引き出した部分の切断は、針板の一部に切断装置が装着され、針板上に引き出した下糸を切断装置の切断刃によって適正長さに切断される。このように針板に切断装置を具備した構成のミシンが種々存在し、具体的には、特許文献1,2及び3に開示されている。
【0005】
特許文献1,2及び3では、ミシンのベッド部上面に形成した凹部に配設された覆い部材と、この覆い部材の下面と前記凹部との間に形成された保持空間と、前記ベッド部に設けられた切断刃と、前記ベッド部内で前記保持空間と連通すると共に前記ベッド部上面に前記収容口から前記切断刃に向けて連続的に延びて設けられ該収容口から引き出した下糸を該切断刃に案内する案内溝とを具備し、前記保持空間は前記案内溝を通された下糸を上方への抜け止め状態に保持する構成としたものである。
【0006】
このような構成としたことにより、針板上に引き出した下糸を極めて簡単且つ適正な長さに切断することができ、外釜と内釜とからなる水平釜と、下糸ボビンとから構成された装置により下糸のセットが効率的に行われるものとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−96790号公報
【特許文献2】特開平4−96791号公報
【特許文献3】特開2002−336579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2及び3では、前述したように、下糸のセット作業における下糸を適正長さに切断する作業を簡易且つ迅速に行うことができるようにしたものである。しかし、特許文献1,2及び3等の従来技術では、以下のような欠点が存在する。図8は従来技術における、下糸mの切断過程を示すものである。この下糸mを適正長さに切断する作業では、下糸mを切断装置の切断刃tにて切断する際に、下糸mは一旦緊張状態となる。
【0009】
つまり、下糸mを切断刃tに僅かながらでも、強く押し付けることになるため、該切断刃tに強く押し付けるときに下糸mは緊張状態となる。そして、下糸mが適正長さに切断されたときには、下糸mが緊張状態から開放されることとなり、その反動で下糸mは、水平釜s側に引き戻されることとなる。
【0010】
引き戻された下糸mは、針板の下方内で緩み状態(或いは弛み状態)となってしまう。このような状況によって、ミシンを始動して縫い始めにおける下糸mと図示しない上糸との適正な絡みを形成し損ねることがある。いわゆる縫い始めの目とび、釜食い等の不適正な糸絡みが生じるおそれがある。
【0011】
また、下糸には、種々のものが存在し、その中には、細いもの、太いもの、柔らかいもの、硬いもの等もある。これらは、糸筋形状が一直線状になりにくく、一旦緩む(弛む)と、その緩んだ状態が保持されてしまい、前述したように縫い始めの目とび、釜食い等の不適正な糸絡みが生じるおそれがある。
【0012】
このように、下糸のセッティングが上手くできないと、そのあとに続く作業にも悪影響を及ぼし、作業時間が多くなったり、その他のミシン作業も円滑に行われなくなるおそれも十分に出てくるものであった。そこで、本発明が解決しようとする技術的課題(目的)は、下糸のセットにおいて、緊張した下糸の余分な部分を切断刃によって切断しつつ、その下糸を切断時の緊張状態に保持し、これによって、縫い始めにおける下糸と上糸との適正な絡み合わせを確実に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意、研究を重ねた結果、請求項1の発明を、針が装着された針棒と、該針棒の上下動作と協働して縫い目を形成するための下糸を捲回した下糸ボビンを収納した水平釜と、該水平釜をベッド内に収納してベッド上面部の開口部を覆う針板と、該針板の開口部を覆う開口蓋とを備えたミシンにおいて、前記針板の下面側に装着される下糸を案内するための案内スリットを有する底板と、前記下糸ボビンから供給される下糸を案内する案内溝を形成して且つ該案内溝の終端位置に前記案内溝に沿って案内された下糸を適正長さに切断する切断刃を配設した下糸案内部材とからなり、該下糸案内部材は前記底板に配置固着されると共に前記案内溝内に下糸の切断時の状態を保持するように下糸端部を挟持する挟持部材が前記下糸案内部材又は前記底板に設けられてなるミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項2の発明を、前記挟持部材は、前記案内溝を塞ぐように設けたことを特徴とする請求項1に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、前記挟持部材は、弾性部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項4の発明を、前記挟持部材は、フェルト材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、前記挟持部材は、スポンジ材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項6の発明を、前記挟持部材は、ゴム材からなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項7の発明を、前記挟持部材は、ブラシ状部材としてなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、前記挟持部材は、バネとしてなることを特徴とする請求項1,2又は3のいずれか1項に記載のミシンとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明では、針板の下面側に装着されるボビンからの下糸を案内するための案内スリットを有する底板と、前記下糸ボビンから供給される下糸を案内する案内溝を形成して且つ該案内溝の終端位置に前記案内溝に沿って案内された下糸を適正長さに切断する切断刃を配設した下糸案内部材とからなり、該下糸案内部材は前記底板に配置固着されると共に前記案内溝内に、下糸の切断時の状態を保持するように下糸端部を挟持する挟持部材が設けられたものである。
【0018】
つまり、挟持部材は、案内溝の始端位置と終端位置との間に位置し、前記切断刃の位置よりも始端位置側に位置している。したがって、余裕を持って長く引き出された下糸を下糸案内部材に装着された切断刃により、適正長さに切断するときに、下糸は切断刃に押し付けるために、下糸は緊張すると共に挟持部材によって、その位置で略固定される。
【0019】
したがって、下糸は、案内溝の終端位置で切断刃によって、切断された後であっても、下糸案内部材と水平釜との間における下糸は緊張状態が保持される。これによって、下糸は下糸案内部材と水平釜との間で弛み(緩み)の無い一直線状の糸道軌跡を得ることができ、下糸と上糸との適正な絡みを確実に行うことができる。
【0020】
特に、本発明では、下糸が細いもの、太いもの或いは柔らかいもの、硬い(コシのある)ものであっても、前記挟持部材(フェルト,スポンジ,ゴム,ブラシ,バネ等)によって、挟持固定されるので、切断刃による切断後の緊張状態を十分に保持できる。
【0021】
請求項2の発明では、前記挟持部材は、下糸の前記案内溝を塞ぐように設けたことにより、案内溝に挿入されて通過する下糸を確実に保持することができ、下糸切断後における下糸の緊張を保持することができる。請求項3の発明では、挟持部材を弾性部材としたことにより、その弾性によって、案内溝内で下糸を比較的強固に挟持固定することができ、特に太いタイプの下糸に対して好適である。
【0022】
請求項4の発明では、前記挟持部材は、フェルト材としたことにより、下糸を固定するときには、柔軟な固定にでき、特に細く、耐久性の無い下糸に好適なものにすることができる。請求項5の発明では、挟持部材をスポンジ材としたことにより、スポンジ材は柔軟な弾性を有しているので、細い下糸から太い下糸まで安定した状態で挟持固定することができる。
【0023】
請求項6の発明では、前記挟持部材は、ゴム材としたことにより、その弾性と共に、ゴム表面の適度の粗さによって、その挟持力が大きくなり、下糸を比較的強固に固定することができる。請求項7の発明では、挟持部材をブラシ状部材としたことにより、下糸を保護しつつ、挟持固定することができる。請求項8の発明では、挟持部材は、バネとしたことにより、下糸を強固に挟持固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)は本発明におけるミシン本体の斜視図、(B)は(A)の(ア)部拡大図、(C)は(B)の(イ)部拡大図である。
図2】(A)は針板の収納開口部箇所の拡大図、(B)は下糸案内部材の平面図、(C)は開口蓋の平面図である。
図3】(A)は下糸案内部材の上半体部と下半体部と切断刃とを分離した状態の斜視図、(B)は(A)のX1―X1矢視拡大断面図、(C)は下糸案内部材の一部切除した斜視図である。
図4】(A)は上半体部の図示を省略した下糸案内部材を収納開口部に装着した拡大平面図、(B)は(A)の上半体部を含むY1−Y1矢視拡大断面図、(C)は(A)の上半体部を含むX2−X2矢視拡大断面図、(D)は底板部に挟持部材が装着された針板と下糸案内部材とを分離した状態の拡大断面図である。
図5】(A)乃至(C)は下糸を案内溝に挿入配置する過程を示す状態図である。
図6】(A)乃至(C)は下糸を切断刃によって切断し、切断後に下糸の緊張状態を保持している状態を示す状態図である。
図7】(A)は挟持部材を下糸案内部材に装着した実施形態の要部拡大断面図、(B)は下糸案内部材側に挟持部材を装着した状態の斜視図、(C)は挟持部材をブラシタイプとした実施形態の要部拡大断面図、(D)は(C)の(ウ)部拡大図、(E)は挟持部材を板バネとした実施形態の要部拡大断面図、(F)は(E)の(エ)部拡大図である。
図8】(A)乃至(C)は従来技術による下糸を切断刃する過程を示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、本発明は、特にミシンの縫製作業準備段階において、下糸nを巻いた下糸ボビン6を、ミシン本体8の針板1の下方にセットする際に、下糸ボビン6から下糸の引出した部分を適正長さに切断し、切断後の下糸nを切断時における緊張状態に保持し、準備段階から縫い始めにおける下糸nと図示しない上糸との適正な絡みを確実に行えるようにしたものである。
【0026】
本発明の主要な構成は、図1図2等に示すように、針板1,底板2,下糸案内部材3,挟持部材4,水平釜5及び下糸ボビン6等である。針板1は、図1(A)に示すように、ミシン本体8のベッド部81に備わっている。ミシン本体8の正面とは、図1(A)に示すように、操作部及びディスプレイが設けられた面である。
【0027】
針板1は、通常のミシンと同様にミシン本体8正面より見て、左側端部寄りの位置に装着される。針板1の装着されているベッド部内には、外釜51と内釜52とからなる水平釜5が収められている〔図2(A),図4(A)参照〕。
【0028】
針板1には、収納開口部11が形成されており、該収納開口部11から、前記水平釜5の内釜52に下糸ボビン6の出し入れを行うことができるようになっている。前記収納開口部11は、略長方形状の貫通孔である。
【0029】
針板1の収納開口部11の周縁の一部には、底板2が設けられている〔図2(A)参照〕。該底板2は、針板1の裏面側にビス等の固着具によって固着されるものであって、後述する下糸案内部材3及び開口蓋7が装着されるためのベース板としての役目をなす部分である。
【0030】
底板2は、具体的には、収納開口部11の左側縁寄りの位置と、右側縁寄りの位置と、手前側縁寄りの位置に亘って形成されている。なお、収納開口部11の左,右及び手前は、ミシン本体8を正面より見た場合のものである。底板2には、下糸ボビン6から引き出された下糸を、針板1上に案内する案内スリット21が形成されている〔図2(A),図4(A)参照〕。
【0031】
次に、下糸案内部材3は、図3に示すように、上半体部31と下半体部32と切断刃33とからなり、上半体部31と下半体部32と切断刃33とが上下に重ね合わせられて〔図3(B)参照〕、下糸案内部材3が構成される〔図3(C),図4(C),(D)等参照〕。
【0032】
上半体部31は、主に、厚肉案内部31aと薄肉周縁部31bとから構成さる。そして、前記厚肉案内部31aの上面側で且つ外周から外方に向かって水平面状に突出するように薄肉周縁部31bが形成される。前記厚肉案内部31aは、薄肉周縁部31bに対して、下方に向かって扁平状且つ平坦面として膨出する部位となる。
【0033】
厚肉案内部31aは、裏面側より見て略V字形状とした三角形状に形成されており、その三角形状の頂部となる先端角部は、略半円とした円弧状に形成されている〔図3(A)参照〕。また、厚肉案内部31aには、切断刃装着部31cが形成されている。該切断刃装着部31cは、切断刃33が装着される部位であって、該切断刃33と同等形状となる略平行四辺形状の扁平状且つ平坦な窪み部分である。切断刃装着部31cは、後述する案内溝34の終端位置34bに形成される。
【0034】
切断刃装着部31cの一部分で且つ後述する案内溝34の終端位置34bで連通するようにして、切断案内溝部31dが形成されている〔図1(C),図3(A)参照〕。切断刃33は、前記切断刃装着部31cに装着された状態で、前記切断案内溝部31d内において外部に露出するようになっている〔図1(C),図3(C)等参照〕。
【0035】
そして、後述する案内溝34から切断案内溝部31dに案内された下糸nは、切断案内溝部31d内で露出した切断刃33によって切断される構成となっている〔図1(C),図3(C)参照〕。
【0036】
上半体部31の厚肉案内部31aには、接合主突起31e及び接合副突起31fが形成されている〔図3(A)参照〕。前記接合主突起31eと接合副突起31fは、共に円筒状に形成されている。接合主突起31eは、厚肉案内部31aの略中心箇所に形成され、接合副突起31fは、前記厚肉案内部31aの円弧状の頂部箇所に形成されている。
【0037】
接合副突起31fは、厚肉案内部31aの円弧形状の頂部箇所を構成する部位となることもある〔図3(A)参照〕。また、厚肉案内部31aの外周箇所には位置合せ突起31gが形成されることもある。位置合せ突起31gは、2個形成されている〔図3(A)参照〕。上半体部31には、取付用爪部31hが形成され、針板1と底板2によって構成された下糸案内部材3の取付位置に装着することができるようになっている。
【0038】
下半体部32は、図3(A),図4(A),(B)等に示すように、主に、厚肉案内部32aと薄肉周縁部32bとから構成される。そして、前記厚肉案内部32aの裏面側且つ外周から外方に向かって水平面状に突出するように薄肉周縁部31bが形成される。前記厚肉案内部32aは、下半体部32の表面側より上方に向かって扁平状且つ平坦面として膨出する部位となる〔図3(A)参照〕。
【0039】
厚肉案内部32aは、前記上半体部31の厚肉案内部31aと略同等形状で略V字形状の三角形に形成されている〔図3(A)参照〕。厚肉案内部32aには、接合主孔32eと、接合副孔32fが形成されている。また、厚肉案内部32aには、位置合せ孔32gが形成される。
【0040】
また、下半体部32には、取付用爪部32h,32jが形成されている。取付用爪部32h,32jは、前記上半体部31の取付用爪部31hと共に針板1と底板2によって構成された嵌合溝12に嵌合装着することができるようになっている〔図4(B),(D)参照〕。
【0041】
そして、上半体部31と下半体部32とを組み合わせて下糸案内部材3を形成する。まず、上半体部31の切断刃装着部31cに切断刃33が配置固定され、前記上半体部31の裏面側と、下半体部32の表面側とを合わせて、厚肉案内部31aと厚肉案内部32aとを当接させる。
【0042】
このとき、接合主突起31eは、接合主孔32eに挿入され、また接合副突起31fは接合副孔32fに挿入される。さらに位置合せ突起31gは、位置合せ孔32gに挿入される〔図3(A),(B)参照〕。
【0043】
上半体部31の厚肉案内部31aと薄肉周縁部31b、及び下半体部32の厚肉案内部32aと薄肉周縁部32bとによって、下糸案内部材3の外周には案内溝34が形成される〔図1(C),図3(C),図4(A),(B),(D)等参照〕。
【0044】
案内溝34は、始端位置34aと終端位置34bとが存在する。始端位置34aは、水平釜5側に位置し、終端位置34bは、切断刃33の略装着位置となる。さらに、案内溝34は、上半体部31の厚肉案内部31aと、下半体部32の厚肉案内部32aとの三角状先端部は、案内溝34の折返し部34cとなる。
【0045】
該折返し部34cは、略半円の円弧状に形成され、下糸nが円滑に案内溝34に案内されるときに下糸nを保護し、案内溝34と共に下糸nの飛び出しを防止する役目をなしている。このように、案内溝34は、略V字形状或いは略U字形状に形成される。
【0046】
また、下半体部32の薄肉周縁部32bには、該薄肉周縁部32bが形成されない、非形成領域32kが存在する〔図3(A),(C)参照〕。つまり、下半体部32の薄肉周縁部32bが存在する部分では、案内溝34は、上下方向において、薄肉周縁部31b,32bから構成される。
【0047】
また、下半体部32の非形成領域32kでは、切断刃33に対向する糸道とするため、案内溝34は上半体部31の薄肉周縁部31bのみにて構成される。下半体部32の非形成領域32kでは、前記底板2の一部が前記上半体部31の薄肉周縁部31bと共に案内溝34を構成する〔図1(C),図4(A),(B),(C)参照〕。
【0048】
さらに、下半体部32の薄肉周縁部32bには、案内溝34の始端位置34aの付近に案内突出部35が形成される〔図1(C),図3(C)参照〕。該案内突出部35は、略三角形状に形成された膨出状部であって、前記案内溝34の始端位置34aへ下糸nを案内し挿入し易くする役目をなす。
【0049】
下糸案内部材3は、針板1の収納開口部11の周縁の一部に装着されるものであり、具体的には収納開口部11の左側寄りの位置で、底板2上に配置固着される〔図1(B),(C)参照〕。
【0050】
底板2には、2つの取付孔22,22が形成されており〔図2(A)参照〕、下糸案内部材3の接合主突起31eと接合副突起31fとが挿入されるようになっており、挿入された接合主突起31eと接合副突起31fには底板2の裏面側から止環等の固着具36によって固着される。
【0051】
また、下糸案内部材3の上半体部31及び下半体部32に形成された取付用爪部31h,32h,32jを介して前記針板1と底板2とによって形成された嵌合溝12,12に嵌合固定される〔図4(B),(D)参照〕。
【0052】
次に、挟持部材4は、前記切断刃33によって切断された下糸nを挟持状態で押さえ付けて固定し、収納開口部11内の水平釜5と下糸nを切断後においても切断時の緊張状態を保持する役目をなすものである〔図6(C)参照〕。挟持部材4は、前記底板2に配置固着された下糸案内部材3の案内溝34内に設けられる。具体的には、前記挟持部材4は、下糸nの案内溝34を塞ぐように設けられたものである。
【0053】
挟持部材4は、後述するように、底板2側に固着される実施形態と、下糸案内部材3側に固着される実施形態が存在する。挟持部材4が底板2に固着される場合には、挟持部材4と下糸案内部材3(の上半体部31の薄肉周縁部31b)とは当接するのみであり、接着剤等にて固着されるものではない。
【0054】
また、挟持部材4が下糸案内部材3に固着される場合では、挟持部材4の下端は、底板2と当接するのみであり、接着剤にて固着されるものではない。したがって、下糸案内部材3の案内溝34を通過する下糸nは、案内溝34を塞ぐように配置された挟持部材4の上端と下糸案内部材3(の上半体部31の薄肉周縁部31b)との間に挿入される〔図4(B)参照〕。又は下糸nは挟持部材4の下端と底板2との間に挿入される。
【0055】
挟持部材4が底板2側に固着される実施形態では、挟持部材4は、底板2と下糸案内部材3との間で且つ前記案内溝34内において、該案内溝34の始端位置34aから終端位置34bの間の適所に位置するように設けられる〔図1(C),図4(A)参照〕。
【0056】
具体的には、挟持部材4の装着される位置は、案内溝34内において前記切断刃33の装着位置と切断案内溝部31dの形成位置よりも始端位置34a側に位置する。また、挟持部材4の位置は切断案内溝部31dに近接した位置となる。
【0057】
上記の構成に基づく挟持部材4の装着される具体的な位置は、下糸案内部材3が底板2の所定位置に装着された状態で、下半体部32の非形成領域32kに対応する底板2の位置であり、この位置に前記挟持部材4が固着される〔図1(C),図4(A),(D)参照〕。
【0058】
したがって、案内溝34の始端位置34aから導入された下糸nは、折返し部34cを通過して、前記挟持部材4と上半体部31の薄肉周縁部31bによって挟持押圧され、ここで、下糸nの端部が緊張状態で保持される(図6参照)。
【0059】
挟持部材4の実施形態としては、弾性部材によってブロック41として形成されたものである。この弾性部材の材質としては、フェルト材、スポンジ材及びゴム材等の材質から形成される。
【0060】
これらの材質を使用したものでは、挟持部材4は軟質性のブロック41としたもので、略直方体状に形成される。また、ブロック41とした挟持部材4は、円筒形状に形成されたものでもかまわない。ブロック41は、接着剤等の固着手段にて固着される。
【0061】
ブロック41とした挟持部材4は、下糸nを適正な押圧力にて固定できるように、挟持部材4と上半体部31の薄肉周縁部31bとは当接すると共に、挟持部材4には常時、薄肉周縁部31bに対して押圧力Fを有して接触することが好ましい〔図4(B),(C)参照〕。この押圧力Fは、下糸nを引き抜き可能程度に押さえ付け、且つその状態を保持できることが必要である。
【0062】
挟持部材4の別の実施形態としては、ブラシ形状としたものが存在する〔図7(C),(D)参照〕。このブラシ42とした挟持部材4は、略歯ブラシ形状としたものであり、多数のブラシ毛の束として構成される。そして、ブラシ42の多数のブラシ毛によって、下糸nを上半体部31の薄肉周縁部31bに押さえ付けて固定しようとするものである〔図7(D)参照〕。
【0063】
挟持部材4のさらに別の実施形態、バネタイプとしたものである。具体的には前記底板2の一部に切り抜き部分を形成し、その切り抜き部分を上方に向かって突出させ、レバー状の板バネ43としたものである〔図7(E)参照〕。
【0064】
挟持部材4は、前述した実施形態では、底板2に固着又は形成したものであるが、前記挟持部材4が下糸案内部材3側に固着又は形成される実施形態も存在する〔図7(A),(B)参照〕。
【0065】
この実施形態では、特にフェルト材、スポンジ材及びゴム材等のブロック41としたものに好適である。そして通常では上半体部31の薄肉周縁部31bの裏面側に接着剤によって固着され、ブロック41の下面が底板2上に押圧力Fを有して接触するものである。
【0066】
該板バネ43としたものでは、該板バネ43の先端部分が上半体部31の薄肉周縁部31bに弾性力を有して当接し、下糸nを板バネ43の先端と薄肉周縁部31bとで挟持押圧して、その位置に固定する〔図7(F)参照〕。
【0067】
水平釜5は、外釜51と内釜52とから構成され、外釜51内に内釜52が装着される。内釜52には下糸ボビン6が着脱自在に装着される。外釜51には、捕捉爪部51aが形成されている。そして、外釜51は水平面上を回転しつつ、図示しない上糸を捕捉しつつ、下糸ボビン6から突出した下糸nと上糸とを適正に絡み合わせるものである。
【0068】
本発明における下糸nの切断及びその切断後の緊張保持について図5図6に基づいて説明する。まず下糸ボビン6に巻き付けられた下糸を収納開口部11の外部に引き出す。そして、下糸nを底板2の案内スリット21に挿入且つ通過させ、下糸nを下糸案内部材3の案内溝34の始端位置34aから挿入してゆく〔図5(A)参照〕。次いで、下糸nを案内溝34の折返し部34cで折り返すようにして通過させ、そのまま終端位置34bに向けて挿入してゆく〔図5(B),(C)参照〕。
【0069】
このとき、下糸nを、前記案内溝34内に設けた挟持部材4と、前記下糸案内部材3の上半体部31の薄肉周縁部31bとによって挟持固定する〔図6(A)参照〕。つまり、挟持部材4の頂面部と、上半体部31の薄肉周縁部31bとの間に下糸nを挿入する。そして、下糸nの端部を案内溝34の終端位置34bに位置する切断案内溝部31d内に案内し、該切断案内溝部31d内で外部に露出した切断刃33によって下糸nの端部を切断する〔図6(B)参照〕。
【0070】
下糸nを切断刃33によって切断するときには、下糸nは、切断刃33に押し当てつつ引っ張ることになるため、下糸nが緊張した状態となる〔図6(A),(B)参照〕。切断刃33によって切断された下糸nの端部は、挟持部材4によって、案内溝34の終端位置34bにて挟持固定されており、案内溝34内の下糸nは、緊張状態に保持される。
【0071】
したがって、針板1の下方でベッド内における水平釜5との間の下糸nの糸道は、一直線状態にあり、外釜51の捕捉爪部51aが図示しない上糸を捕捉し、緊張状態の下糸nに上糸が適正に絡むことにより、縫い作業の準備段階における下糸nのセットができるものである。
【符号の説明】
【0072】
1…針板1、11…収納開口部、2…底板、21…案内スリット、3…下糸案内部材、
33…切断刃、34…案内溝、4…挟持部材、5…水平釜、6…下糸ボビン、n…下糸。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8