【文献】
原嶋 郁郎, 外4名,試圧時におけるレジン餅状物の圧力,歯科材料・器械,日本,1983年,Vol. 2, No. 3,p. 302-309
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
餅状レジンを用いた義歯の製作は、概略、以下のような工程によって行われている。
通法に従って作製された蝋義歯を作業模型ごとフラスコ埋没し、次いで、フラスコを分割し、流蝋して得られた石膏型に形成された義歯床成形用の空隙を構成する石膏面に餅状レジンを手指で填入し、フラスコを閉じて試圧を行った後、フラスコを加圧し、加圧状態において餅状レジンを加熱重合させ、重合後、フラスコから義歯を石膏型ごと取り出し、石膏型から作業模型とともに義歯を割り出し、次いで、義歯のバリ取り、研磨等の仕上げを施す。
餅状レジンの填入に際しては、フラスコ内の義歯床成形用の空隙に餅状レジンを填入するために、
図14に示されるような一枚のポリエチレンフィルム101が使用される。ポリエチレンフィルムとしては、略11cm四方で厚さ25μm程度のものが例示できる。
【0003】
以下、ポリエチレンフィルムを用いた填入操作についてさらに説明する。
すなわち、例えば、人工歯を埋入しているフラスコ上部102内の上部石膏型103の義歯床成形用の石膏面103aに、餅状レジンに直接手指が触れないようにポリエチレンフィルムを介して餅状レジン104を手指で均等に填入する。次いで、新しいポリエチレンフィルム101を餅状レジン104に載せ、フラスコ下部105を合わせてフラスコを閉じ、餅状レジンが義歯床成形用の空隙の細部にまで填入されるよう、フラスコプレス等によって徐々に圧を餅状レジン104に加え、試圧を行う。
図15(a)は、試圧におけるフラスコ上部102、フラスコ上部内の上部石膏型103、餅状レジン104、ポリエチレンフィルム101、フラスコ下部105、フラスコ下部内の作業模型106を含んだ下部石膏型107の関係を示している。なお、
図15は上顎全部床義歯を製作する場合を示しているが、下顎全部床義歯も同様にして製作される。
試圧を行った後、フラスコを開いて、餅状レジン104のバリからポリエチレンフィルム101を剥がし、バリを、例えば、歯科技工用の彫刻刀等を用いて除去する。
そして、試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、ポリエチレンフィルム101を取り除き、フラスコ上部102とフラスコ下部105を完全に閉じ(
図15(b))、加圧した状態で餅状レジン104を通法に従って重合させる。
【0004】
また、上部石膏型の義歯床成形用の石膏面、下部石膏型の義歯床成形用の石膏面のそれぞれに餅状物を手指により填入し、ポリエチレンフィルムをフラスコ上部の餅状レジンとフラスコ下部の餅状レジンの間に介在させ試圧を行う操作を採用することもある。
【0005】
ポリエチレンフィルムは、部分床義歯の製作においても全部床義歯の製作と同様に使用される。
【0006】
つまり、ポリエチレンフィルムは、試圧による餅状レジンの填入の際、餅状レジンを変形、流動させつつ余剰の餅状レジンをバリとして除去し、義歯床成形用の空隙の細部にまで填入させようとするものである。
【0007】
ポリエチレンフィルムを用いた餅状レジンのフラスコへの填入については、例えば、非特許文献1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
試圧に伴って、石膏型内の義歯床成形用の空隙に填入された餅状レジンは、義歯床成形用の空隙内での偏りや不均一さを解消しつつ、空隙の形状に合致するようにバリを生じたりしながら徐々に変形、流動したりすることになるが、空隙内での餅状レジンの偏りや不均一さは十分には解消されず、石膏型内で餅状レジンが不足した箇所が生じたり、空隙の細部にまで餅状レジンが十分に行き渡らないことがあり、また、餅状レジンが変形、流動したりする際にポリエチレンフィルムが破損することがある。これは、ポリエチレンフィルムの片面が餅状レジンと、他方の面が石膏面または餅状レジンと密着していることにより、ポリエチレンフィルムの動きの自由度が極めて低く、試圧に伴った餅状レジンの変形、流動が制限されたり、ポリエチレンフィルムを介した餅状レジンと餅状レジンのそれぞれの変形、流動が制限されることになるものと解されるがはっきりしていない。
餅状レジンの不足が填入段階で判明すれば、餅状レジンとポリエチレンフィルムを廃棄し、再度餅状レジンの調製からやり直すことになり、一方、そのまま重合して義歯になってから空隙の細部にまで餅状レジンが十分に行き渡っていないことが判明した場合は、蝋義歯からやり直すことにもなり、ロスが多く、コスト、手間がかかることになる。また、ポリエチレンフィルムが破損した場合は、フラスコを開いてバリを除去する際に、新たなポリエチレンフィルムと交換する必要があり、餅状レジンから破損したポリエチレンフィルムを剥がし、破損箇所の餅状レジンの状態を調整したりした後、交換することになり、手間がかかり、作業効率が低下することになる。
この発明は、上記のような実情に鑑み鋭意研究の結果創案されたものであり、試圧において、餅状レジンがバリを生じながら徐々に空隙の形状に合致するように変形、流動したりする際、餅状レジンの石膏型の義歯床成形用の空隙内での偏りや不均一さを解消し、餅状レジンが不足した箇所が生じたりせず、空隙の細部にまで餅状レジンを十分に行き渡らせることができ、また、破損することのない試圧用フィルムを安価に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は、(1).義歯製作において使用する熱可塑性樹脂フィルムからなる
矩形状の試圧用フィルムであって、
一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルムが二つ折りによって二枚重ねとなっており、
さらに、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、二つ折りによって形成された折り目に直交する一方の側縁またはその近傍において、少なくとも一箇所で一体となっていることを特徴とする。
(2).
義歯製作において使用する熱可塑性樹脂フィルムからなる矩形状の試圧用フィルムであって、一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルムが二つ折りによって二枚重ねとなっており、さらに、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、二つ折りによって形成された折り目と直交する一方の側縁またはその近傍において、該一方の側縁に沿って細幅直線状に一体となっていることを特徴とするものでもよい。
(3).
義歯製作において使用する熱可塑性樹脂フィルムからなる矩形状の試圧用フィルムであって、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルムが二枚重ねとなっており、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、一側縁またはその近傍において、該一側縁に沿って細幅直線状に一体となっており、さらに、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、前記細幅直線状に一体となっている一側縁に直交する一方の側縁またはその近傍において、少なくとも一箇所で一体となっていることを特徴とするものでもよい。
(4).
義歯製作において使用する熱可塑性樹脂フィルムからなる矩形状の試圧用フィルムであって、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルムが二枚重ねとなっており、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、一側縁またはその近傍において、該一側縁に沿って細幅直線状に一体となっており、さらに、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、前記細幅直線状に一体となっている一側縁に直交する一方の側縁またはその近傍において、該一方の側縁に沿って細幅直線状に一体となっていることを特徴とするものでもよい。
(5).(1)ないし
(4)のいずれかにおいて、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムの側縁またはその近傍における少なくとも一箇所が、熱融着によって一体となっていることが好ましい。
(6).(1)ないし
(5)のいずれかにおいて、前記二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムは、横幅が12.0〜15.0cm、縦幅が13.0〜20.0cmの矩形状であることが好ましい。
(7).(1)ないし
(6)のいずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルムは、厚さが10〜30μmであることが好ましい。
(8).(1)ないし
(7)のいずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、この発明の試圧用フィルムは、二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムの側縁またはその近傍において、少なくとも一箇所が一体となっている。
試圧において、この発明の試圧用フィルムを使用することによって、石膏型内の義歯床成形用の空隙に填入された餅状レジンは、空隙内での偏りや不均一さを解消しつつ、空隙の形状に合致するようにバリを生じながら徐々に変形、流動したりして行き、石膏型内で餅状レジンが不足した箇所が生じたりせず、空隙の細部にまで餅状レジンを十分に行き渡らせることができ、また、試圧の際に試圧用フィルムが破損することがない。これは、試圧用フィルムは二枚重ねであって、空隙に填入された餅状レジンと試圧用フィルムの一方のフィルムの片面が密着し、他方のフィルムの片面が石膏面または餅状レジンと密着するものの、二枚のフィルムの対向する面同士の間は何も存在せず単に接しているだけの状態であることから、一方のフィルムと他方のフィルムとは相対的に滑ってずれることができる自由度があり、そのため、例えば、試圧に伴った餅状レジンの変形、流動に一方のフィルムが追従したり、試圧用フィルムを介した餅状レジンと餅状レジンのそれぞれの変形、流動に二枚のフィルムがそれぞれ別々に追従したりすることができること等によるものと解されるがはっきりしていない。
この発明の試圧用フィルムを用いることによって、餅状レジンが不足して再度餅状レジンの調製からやり直したり、試圧用フィルムを交換したりする等の無駄がなく、また、レジンが歯間乳頭部等の細部にまで到達した良好な義歯を提供することができる。
また、この発明の試圧用フィルムは、二枚重ねの熱可塑性樹脂フィルムの側縁またはその近傍において、少なくとも一箇所が一体となっていることから、バラバラにはならず、取り扱い易い。これに比べ、単に二枚重ねフィルムとしただけでは、バラバラになりやすく取り扱いにくい。
そして、この発明の試圧用フィルムは、簡単な構造であることから安価であり、製造も容易である。
この発明の試圧用フィルムのサイズを、従来のサイズより大きくすると、餅状レジンやフラスコに対し、十分な余裕をもって安全かつ確実に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
図1は、この発明の試圧用フィルムの一実施の形態を示す。
この試圧用フィルム1は、平面視矩形状であって、
図1(a)に示されるように、一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム2が二つ折りされて二枚重ねとされ、
図1(b)に示されるように、二つ折りによって形成された折り目3に直交する一側縁(
図1においては上側縁)の稍内側において、一側縁に沿って細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部4を有する。なお、
図1(b)においては、試圧用フィルム1の理解のため、便宜上、フィルム2aはフィルム2bに対しその左下隅がめくれ上がっている状態で示している(以下同様。)。
熱融着は、ヒートシールバー等適宜の融着手段によって行えばよい。
図1(b)に示されるように、試圧用フィルム1は、折り目3とこれに直交する上側縁に沿った細幅直線状の熱融着部4によって隣接する二側縁が平面視L字状に一体となっているが、左側縁と下側縁は一体となっておらず、一体となっている部分を除き、フィルム2a、2bが相対的に滑ってずれることができる。
図1(b)に示す試圧用フィルム1は、二方開の試圧用フィルムということができる。
【0014】
試圧用フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムは、常温において柔軟であることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムに用いる熱可塑性合成樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、テトラフルオロエチレン、ポリウレタン、アイオノマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアクリロニトリル等が例示できる。このうち、LLDPEは、餅状レジンに含まれるMMA等のモノマーとの親和性がなく、可塑剤等の添加剤が少なく、入手しやすく安価で経済的であることから好ましい。
【0015】
試圧用フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、10〜30μmであることが好ましい。
試圧用フィルムに用いる熱可塑性樹脂フィルムの厚さが10μm未満では、試圧の際にフィルムが破れる恐れがあり好ましくない。
熱可塑性樹脂フィルムの厚さが30μmを超えると、石膏型に形成された義歯床成形用の空隙に填入された餅状レジンの変形、流動に追従し難く好ましくない。
【0016】
試圧用フィルムは、横幅が12.0〜15.0cm、縦幅が13.0〜20.0cmとすることが好ましく、このサイズであれば、種々のサイズの異なるフラスコに十分な余裕をもって対処することができる。
【0017】
図2は、
図1に示す試圧用フィルム1を用いた試圧操作の一例を示している。
通法に従って作製された蝋義歯を作業模型5ごとフラスコ埋没し、次いで、フラスコを分割し、流蝋して得られたフラスコ上部6内の人工歯を埋入している上部石膏型7の義歯床成形用の石膏面7aに、図示していないが、餅状レジンに直接手指が触れないように、試圧用フィルム1(なお、ポリエチレンフィルムでもよい。)を介して餅状レジン8を手指で均等に填入する(填入した後の状態については、
図2(a)を参照)。そして、新たな試圧用フィルム1を填入された餅状レジン8に載せ、フラスコ下部9を合わせてフラスコを閉じ、フラスコプレス等によって徐々に圧を餅状レジン8に加え試圧を行う。
図2は上顎全部床義歯を製作する場合であって、
図2(a)は、試圧におけるフラスコ上部6、フラスコ上部内の上部石膏型7、餅状レジン8、試圧用フィルム1、フラスコ下部9、フラスコ下部内の作業模型5を含んだ下部石膏型10の関係を示している。
図3は、試圧に際し、フラスコ上部6とフラスコ下部9を合わせてフラスコを閉じた平面視状態を示している。
試圧を行った後、フラスコを開いて、餅状レジン8のバリから試圧用フィルム1を剥がし、バリを、例えば、歯科技工用の彫刻刀等を用いて除去する。
そして、試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、試圧用フィルム1を取り除き、フラスコ上部6とフラスコ下部9を完全に閉じ(
図2(b))、加圧した状態で餅状レジンを通法に従って重合させる。
【0018】
図4は、
図1に示す試圧用フィルム1を用いた試圧操作の他例を示している。
この試圧操作は、フラスコ上部6内の人工歯を埋入している上部石膏型7の義歯床成形用の石膏面7aと、フラスコ下部9内の下部石膏型10の義歯床成形用の石膏面10aの双方に餅状レジンを填入するものである。
すなわち、通法に従って作製された蝋義歯を作業模型5ごとフラスコ埋没し、次いで、フラスコを分割し、流蝋して得られたフラスコ上部6内の人工歯を埋入している上部石膏型7の義歯床成形用の石膏面7aと、フラスコ下部9内の下部石膏型10の義歯床成形用の石膏面10aの双方に、図示していないが、餅状レジンに直接手指が触れないように、試圧用フィルム1(なお、ポリエチレンフィルムでもよい。)を介して餅状レジン8a、8bを手指で均等に填入する(填入した後の状態については、
図4(a)参照)。そして、それぞれ餅状レジン8a、8bが填入されたフラスコ上部6とフラスコ下部9との間に新たな試圧用フィルム1を介在させ、フラスコ上部6とフラスコ下部9を合わせてフラスコを閉じ、フラスコプレス等によって徐々に圧を餅状レジン8a、8bに加え試圧を行う。
図4は上顎全部床義歯を製作する場合であって、
図4(a)は、試圧におけるフラスコ上部6、フラスコ上部内の上部石膏型7、餅状レジン8a、8b、試圧用フィルム1、フラスコ下部9、フラスコ下部内の作業模型5を含んだ下部石膏型10の関係を示している。
試圧を行った後、フラスコを開いて、餅状レジン8a、8bのバリから試圧用フィルム1を剥がし、バリを、例えば、歯科技工用の彫刻刀等を用いて除去する。
そして、試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、試圧用フィルム1を取り除き、フラスコ上部6とフラスコ下部9を完全に閉じ(
図4(b))、加圧した状態で餅状レジンを通法に従って重合させる。
下顎全部床義歯、部分床義歯も前記した試圧操作に準じて試圧を行えばよい。
【0019】
試圧において、この試圧用フィルムを使用することによって、石膏型内の義歯床成形用の空隙に填入された餅状レジンは、空隙内での偏りや不均一さを解消しつつ、空隙の形状に合致するようにバリを生じたりしながら徐々に変形、流動したりして行き、石膏型内で餅状レジンが不足した箇所が生じたりせず、空隙の細部にまで餅状レジンを十分に行き渡らせることができ、また、試圧の際に試圧用フィルムが破損することがない。これは、試圧用フィルムは二枚重ねであって、空隙に填入された餅状レジンと試圧用フィルムの一方のフィルムの片面が密着し、他方のフィルムの片面が石膏面または餅状レジンと密着するものの、二枚のフィルムの対向する面同士の間は何も存在せず単に接しているだけの状態であることから、一方のフィルムと他方のフィルムとは相対的に滑ってずれることができる自由度があり、そのため、例えば、試圧に伴った餅状レジンの変形、流動に一方のフィルムが追従したり、試圧用フィルムを介した餅状レジンと餅状レジンのそれぞれの変形、流動に二枚のフィルムがそれぞれ別々に追従したりすることができること等によるものと解されるがはっきりしていない。
この試圧用フィルムを使用することによってレジンが歯間乳頭部等の細部にまで到達した良好な義歯が得られる。
【0020】
図5に、この発明の試圧用フィルムの他の実施の形態を示す。
図5に示す試圧用フィルム11は、一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム12が二つ折りされて二枚重ねとされ、二つ折りによって形成された折り目13に直交する一側縁(上側縁)が、細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部14を有する。
この試圧用フィルム11を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
【0021】
図6に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図6に示す試圧用フィルム21は、一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム22が二つ折りされて二枚重ねとされ、二つ折りによって形成された折り目23に直交する一側縁(上側縁)の稍内側で左端部寄りの一箇所において、円状に熱融着されてなる熱融着部24を有する。
この試圧用フィルム21を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
なお、熱融着部24は、円形だけでなく、楕円形であってもその他の形状であってもよい。
【0022】
図7に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図7に示す試圧用フィルム31は、一枚の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム32が二つ折りされて二枚重ねとされただけのものである。
図7に示す試圧用フィルム31は、三方開の試圧用フィルムということができる。
この試圧用フィルム31を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
【0023】
図8に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図8に示す試圧用フィルム41は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム42、43を二枚重ねとし(
図8(a)参照)、隣接する二側縁(右側縁と上側縁)のそれぞれの稍内側に、これらの側縁に沿って細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部44、45を有する(
図8(b)参照)。熱可塑性樹脂フィルム42、43が矩形状であることから、試圧用フィルム41の熱融着部44、45は直交している。
この試圧用フィルム41を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
【0024】
図9に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図9に示す試圧用フィルム51は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム52、53を二枚重ねとし、隣接する二側縁(右側縁と上側縁)のそれぞれが細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部54、55を有する。熱可塑性樹脂フィルム52、53が矩形状であることから、試圧用フィルム51の熱融着部54、55は直交している。
この試圧用フィルム51を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
なお、隣接する二側縁(右側縁と上側縁)のうちのどちらか一方の側縁の熱融着部は、側縁の稍内側に、該側縁に沿って細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部であってもよい。
【0025】
図10に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図10に示す試圧用フィルム61は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム62、63を二枚重ねとし、右側縁が細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部64を有し、上側縁の稍内側で左端部寄りの一箇所において円形に熱融着されてなる熱融着部65を有する。
この試圧用フィルム61を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
なお、右側縁の熱融着部は、右側縁の稍内側に、右側縁に沿って細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部であってもよい。
【0026】
図11に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図11に示す試圧用フィルム71は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム72、73を二枚重ねとし、右側縁が細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部74を有する。
この試圧用フィルム71を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
なお、右側縁の熱融着部は、右側縁の稍内側に、右側縁に沿って細幅直線状に熱融着されてなる熱融着部であってもよい。
【0027】
図12に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図12に示す試圧用フィルム81は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム82、83を二枚重ねとし、右側縁の稍内側で下端部寄りの一箇所において円形に熱融着されてなる熱融着部84を有し、上側縁の稍内側で左端部寄りの一箇所において円形に熱融着されてなる熱融着部85を有する。
この試圧用フィルム81を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
【0028】
図13に、この発明の試圧用フィルムのさらに他の実施の形態を示す。
図13に示す試圧用フィルム91は、一対の矩形状の熱可塑性樹脂フィルム92、93を二枚重ねとし、右側縁の稍内側で上端部寄りの一箇所において円形に熱融着されてなる熱融着部94を有する。
この試圧用フィルム91を用いた試圧操作は、前述した試圧用フィルム1について説明したと同様なことから説明は省略する。
なお、以上においては、細幅直線状の熱融着部に代え、点線状の熱融着部であってもよい。
【0029】
試圧用フィルムにおいて、二枚重ねとなった熱可塑性樹脂フィルムの側縁またその近傍における熱融着等による一体化については、いわば、二方開、三方開等の試圧用フィルムについて説明したが、これに限られず、種々の形態が採用可能であり、例えば、三方が熱融着された試圧用フィルムや、周縁全体に沿って熱融着された試圧用フィルムであってもよい。
【0030】
この発明の試圧用フィルムの外形形状は、矩形状に限られず、円形、多角形等種々の形状が採用可能である。
なお、この発明の試圧用フィルムにおける二枚重ねの状態としては、同一サイズや同一形状の熱可塑性樹脂フィルムが重なった状態に限られず、稍サイズや形状が異なった熱可塑性樹脂フィルムが重なった状態であってもよい。
【0031】
試圧用フィルムにおいて、二枚重ねとなった熱可塑性樹脂フィルムの側縁またはその近傍における一体化は、接着剤によって一体化するようにしてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0032】
次に、実施例を比較例とともに示しさらに詳しく説明する。
(実施例1)
厚さ20μmのLLDPEフィルムを用い、
図1の形態の試圧用フィルムを作製した。
細幅直線状の熱融着部のヒートシールバーの設定温度は170℃、ヒートシール時間1秒に設定した。試圧用フィルムのサイズは、横幅13.0cm、縦幅18.0cmとした。
細幅直線状の熱融着部は上側縁から1.3mm内側で、熱融着部の幅は1mmに設定した。
試圧用フィルムを用いて、
図2について説明した操作手順に従って試圧を行った。
餅状レジンには、MMAと粉末のPMMAを用いた加熱重合型餅状レジン(商品名;アクロン、株式会社ジーシー製)を使用した。
試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、試圧用フィルムを取り除き、餅状レジンの填入状態を確認した所、餅状レジンが不足した箇所はなく、偏りなく填入されていた。また、試圧の途中で、試圧用フィルムが破損することがなかった。
次いで、フラスコ上部とフラスコ下部を完全に閉じ、フラスコを加圧し、加圧した状態で餅状レジンを通法に従って重合させた。
重合は、フラスコを冷水の中に入れ、約30分で沸騰するように加熱し、沸騰後30〜40分間係留した。重合後、30分以上室温に放置した後、冷水に入れて完全に冷却し、石膏から義歯を取り出した。
得られた義歯の義歯床は、欠損部がなく、歯間乳頭部等にレジンが到達していた。
【0033】
(実施例2)
実施例1で使用した試圧用フィルムと同一条件で作製した試圧用フィルムを使用した。
試圧用フィルムを用いて、
図4について説明した操作手順に従って試圧を行った。
餅状レジンは実施例1と同一の餅状レジンを使用した。
試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、試圧用フィルムを取り除き、餅状レジンの填入状態を確認した所、餅状レジンが不足した箇所はなく、偏りなく填入されていた。また、試圧の途中で、試圧用フィルムが破損することがなかった。
次いで、フラスコ上部とフラスコ下部を完全に閉じ、フラスコを加圧し、加圧した状態で餅状レジンを実施例1と同様にして重合させ、冷却した後、石膏から義歯を取り出した。
得られた義歯の義歯床は、欠損部がなく、歯間乳頭部等にレジンが到達していた。
【0034】
(比較例1)
図14に示すと同様な市販のポリエチレンフィルム(商品名;ジーシーポリエチレンフィルム、株式会社ジーシー製)を使用した。ポリエチレンフィルムの厚さは25μm、サイズは11cm四方である。
ポリエチレンフィルムを使用して、
図15について説明した操作手順に従って試圧を行った。
餅状レジンは実施例1と同一の餅状レジンを使用した。
試圧を繰り返し、バリが生じない状態となったら、ポリエチレンフィルムを取り除き、餅状レジンの填入状態を確認した所、餅状レジンの充填の不足は特に認められなかった。試圧の途中で、ポリエチレンフィルムが破損することがなかった。
次いで、フラスコ上部とフラスコ下部を完全に閉じ、フラスコを加圧し、加圧した状態で餅状レジンを実施例1と同様にして重合させ、冷却した後、石膏から義歯を取り出した。
得られた義歯の義歯床は、歯間乳頭部にレジンが十分到達していない箇所があった。