特許第6101110号(P6101110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101110
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】血液リザーバータンク用ホルダ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   A61M1/14
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-37209(P2013-37209)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161622(P2014-161622A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 輝行
(72)【発明者】
【氏名】四井田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】西垣 孝行
【審査官】 白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−253818(JP,A)
【文献】 米国特許第05174533(US,A)
【文献】 特開平03−073165(JP,A)
【文献】 特表2001−522656(JP,A)
【文献】 特表2002−514473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00− 1/38
F16M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液リザーバータンクを支持部材に固定するための血液リザーバータンク用ホルダにおいて、
上記支持部材に取り付けられるアーム部材と、
上記血液リザーバータンクを保持する保持部材と、
上記アーム部材と上記保持部材とを連結する連結部とを備え、
上記連結部は、上記保持部材を、上記アーム部材における上記保持部材が連結される部位に対し、該部位の中心線周りに回動可能に、かつ、該中心線に対し傾動可能に連結し、
上記連結部は、可動部材と、該可動部材をクランプするためのクランプ機構とを備え、上記可動部材は、上記アーム部材と上記保持部材との一方の部材に固定され、上記クランプ機構は、上記アーム部材と上記保持部材との他方の部材に固定され、
上記可動部材には、上記保持部材の回動範囲及び傾動範囲を設定するためのストッパ部が突設されるとともに、該ストッパ部から離れた部位に柱状部が突設され、
上記クランプ機構が固定される部材には、上記ストッパ部が挿入されるストッパ部挿入孔と、上記柱状部が挿入される柱状部挿入孔とが形成され、
上記ストッパ部は、上記ストッパ部挿入孔の周縁部に係合することによって上記保持部材の回動範囲及び傾動範囲を設定し、
上記ストッパ部が上記ストッパ部挿入孔の周縁部に係合したときに、上記柱状部は上記柱状部挿入孔の周縁部から離れるように配置されることを特徴とする血液リザーバータンク用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば人工心肺装置の一部を構成する血液リザーバータンクを固定するためのホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人工心肺装置や補助循環装置は、血液循環ポンプや人工肺の他に、静脈血を一時的に貯留しておく血液リバーザータンクを備えた体外循環回路を有している。
【0003】
上記体外循環回路の各部材は、術中の監視を確実なものとするために視認性の高い状態で固定しておく必要がある。例えば、特許文献1には、架台から鉛直上向きに延びる支持部材に体外循環回路の各部材を固定しておくための体外循環装置用ホルダが開示されている。
【0004】
特許文献1のホルダは、支持部材に固定されて水平方向に延びる水平アーム部材と、水平アーム部材から鉛直下向きに延びる鉛直アーム部材とを備えている。鉛直アーム部材には、体外循環回路の各部材を保持するための棒材が水平方向に差し込まれて固定されるようになっている。棒材の鉛直アーム部材に対する差し込み位置を変更することで体外循環回路の各部材の高さ調整を行うことができ、また、棒材の鉛直アーム部材に対する差し込み量を変更することで体外循環回路の各部材の水平方向の位置調整を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−188269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、体外循環時には、特に血液リザーバータンクの血液レベルに細心の注意を払いながら血流量を調整する必要があるので、良好な視認性を確保するのはもちろんのこと、血液レベルを正確に把握できるように血液リザーバータンクを固定しておかなければならない。
【0007】
血液リザーバータンクには貯留血液量を示す目盛が刻まれており、この目盛を読むことで貯留血液量を把握するのであるが、血液リザーバータンクが仮に傾いて固定されていると、目盛が実際の血液レベルを示さない状態となってしまい、血液レベルを正確に把握することができなくなる。
【0008】
特に、小児患者で体外循環を行う場合には、絶対的な血液量が大人に比べて少ないことから血液リザーバータンクの血液レベルを正確に把握することがより一層重要なものとなる。
【0009】
特許文献1のホルダを用いて血液リザーバータンクを固定する場合を想定すると、このホルダでは、体外循環回路の各部材の高さ調整及び水平方向の位置調整しか行うことができないので、例えば、経年変化等によって架台の支持部材が鉛直線に対して傾いていると、血液リザーバータンクが正規の固定状態から傾いて固定されることになり、その結果、上述した血液レベルの正確な把握が困難になる場合が考えられる。また、特許文献1のホルダでは、製造上の誤差により、例えば水平アーム部材が水平線に対し傾いている場合や、鉛直アーム部材が鉛直線に対し傾いている場合にも、同様に血液リザーバータンクの血液レベルを正確に把握できない場合が考えられる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、支持部材が傾いている場合であっても血液レベルの正確な把握が可能となるように血液リザーバータンクを固定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、血液リザーバータンクを保持する保持部材を回動及び傾動可能にした。
【0012】
第1の発明は、血液リザーバータンクを支持部材に固定するための血液リザーバータンク用ホルダにおいて、
上記支持部材に取り付けられるアーム部材と、
上記血液リザーバータンクを保持する保持部材と、
上記アーム部材と上記保持部材とを連結する連結部とを備え、
上記連結部は、上記保持部材を、上記アーム部材における上記保持部材が連結される部位に対し、該部位の中心線周りに回動可能に、かつ、該中心線に対し傾動可能に連結し、
上記連結部は、可動部材と、該可動部材をクランプするためのクランプ機構とを備え、上記可動部材は、上記アーム部材と上記保持部材との一方の部材に固定され、上記クランプ機構は、上記アーム部材と上記保持部材との他方の部材に固定され、
上記可動部材には、上記保持部材の回動範囲及び傾動範囲を設定するためのストッパ部が突設されるとともに、該ストッパ部から離れた部位に柱状部が突設され、
上記クランプ機構が固定される部材には、上記ストッパ部が挿入されるストッパ部挿入孔と、上記柱状部が挿入される柱状部挿入孔とが形成され、
上記ストッパ部は、上記ストッパ部挿入孔の周縁部に係合することによって上記保持部材の回動範囲及び傾動範囲を設定し、
上記ストッパ部が上記ストッパ部挿入孔の周縁部に係合したときに、上記柱状部は上記柱状部挿入孔の周縁部から離れるように配置されることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、血液リザーバータンクを保持する保持部材を、アーム部材に対してその中心線周りに回動でき、しかも、中心線に対し傾動させることもできる。これにより、血液リザーバータンクの傾きを修正することが可能になる。
【0014】
また、例えば可動部材を保持部材に固定しておき、クランプ機構をアーム部材に固定した場合には、クランプ機構のクランプを解除することで、可動部材が自由に動けるようになるので、保持部材を、アーム部材に対してその中心線周りに回動させることや、中心線に対し傾動させることが容易に行えるようになる。一方、クランプ機構で可動部材をクランプすると、可動部材の動きが阻止されるので、保持部材を任意の位置で固定することが可能になる。尚、可動部材をアーム部材に固定し、クランプ機構を保持部材に固定した場合も同様である。
【0015】
また、保持部材を回動させたり、傾動させる際に、可動部材のストッパ部が挿入孔の周縁部に係合することで、保持部材が不意に大きく回動してしまったり、傾動してしまうのを抑制することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、血液リザーバータンクを保持する保持部材を、アーム部材に対してその中心線周りに回動させるとともに、中心線に対し傾動させることができるので、血液リザーバータンクの傾きを修正することができる。これにより、支持部材が傾いている場合であっても血液レベルの正確な把握が可能となるように血液リザーバータンクを固定することができる。
【0017】
また、連結部の可動部材をアーム部材と保持部材との一方の部材に固定し、可動部材をクランプするクランプ機構を他方の部材に固定したので、クランプ機構を操作することで保持部材の回動及び傾動可能状態と、固定状態とを容易に切り替えることができ、操作性を良好にすることができる。
【0018】
また、保持部材の回動範囲及び傾動範囲の少なくとも一方の範囲をストッパ部によって設定することができるので、保持部材が不意に大きく回動してしまったり、傾動してしまうのを抑制することができ、血液リザーバータンクの傾きを安全に、かつ、容易に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る血液リザーバータンク用ホルダの斜視図である。
図2】血液リザーバータンク用ホルダの使用状態を説明する側面図である。
図3】水平アームを省略した血液リザーバータンク用ホルダの斜視図である。
図4】保持部材を下方へ傾動させた状態の図3相当図である。
図5】保持部材を上方へ傾動させた状態の図3相当図である。
図6】保持部材を左へ回動させた状態の図3相当図である。
図7】保持部材を右へ回動させた状態の図3相当図である。
図8】連結部の構造を説明する右側から見た斜視図である。
図9】連結部の構造を説明する左側から見た斜視図である。
図10】連結部の分解斜視図である。
図11】ハウジングの斜視図である。
図12】実施形態の変形例に係る連結部近傍を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る血液リザーバータンク用ホルダ1の斜視図であり、図2は、血液リザーバータンク用ホルダ1の使用状態を説明する側面図である。血液リザーバータンク用ホルダ1は、支持部材としてのポールP(図2にのみ示す)に取り付けられるアーム部材10と、血液リザーバータンクT(図2にのみ示す)を保持するための保持部材30と、アーム部材10と保持部材30とを連結するための連結部50とを備えている。詳細は後述するが、保持部材30は、図4図7の矢印A〜Dに示すように上下方向に傾動するとともに、水平軸周りに回動するようになっており、これによって血液リザーバータンクTの傾きを修正することが可能となっている。
【0022】
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、図1等において保持部材30に向かったときに右となる側を単に「右」といい、左となる側を単に「左」という。
【0023】
図2に示すポールPは、例えば手術室等に設置される架台(図示せず)から鉛直上向きに延びるものである。また、血液リザーバータンクTは、人工心肺装置や補助循環装置の一部を構成する従来周知のものであり、静脈血を一時的に貯留することができるようになっている。血液リザーバータンクTには、貯留された血液量を知るための目盛が刻まれており、血液リザーバータンクTが、鉛直線に対して傾いていない正規の固定状態の時に正確な血液量を目盛によって把握することが可能である。
【0024】
図1及び図2に示すように、アーム部材10は、ポールPに取り付けられる水平アーム11と、水平アーム11から鉛直下方へ延びるシャフト12と、シャフト12の下部に取り付けられるブロック13とを備えている。水平アーム11は、ポールPを径方向に挟むコ字状に形成されたアームヘッド11aと、アームヘッド11aからポールPとは反対側へ突出するアーム部11bとを有しており、アームヘッド11a及びアーム部11bは一体成形されている。
【0025】
アームヘッド11aには、パイプクランプレバー14が設けられている。パイプクランプレバー14は、水平方向に延びるねじ軸14aと、ねじ軸14aの先端部に取り付けられた押し板14bとを有している。ねじ軸14aがアームヘッド11aに形成されたねじ孔に螺合しており、パイプクランプレバー14を上下に回動させることによって押し板14bが水平方向に移動してパイプPをクランプするように構成されている。
【0026】
水平アーム11のアーム部11bは、鉛直なポールPにアームヘッド11aが取り付けられたときに略水平に延びるように形成されている。アーム部11bの先端部には、シャフト12の上側が挿入されるシャフト挿入孔11cが上下方向に貫通するように形成されている。また、アーム部11bの先端部には、上記パイプクランプレバー14と同様に構成された上側シャフトクランプレバー15が設けられている。この上側シャフトクランプレバー15を上下に回動させることにより、シャフト12の上側をアーム部11bに対しクランプすることができるようになっている。
【0027】
アーム部材10のブロック13は、保持部材30が連結部50を介して連結される部位である。図3等にも示すように、ブロック13の中心線Xは水平方向に延びている。ブロック13の基端部には、シャフト12の下側が挿入されるシャフト挿入孔13aが上下方向に貫通するように形成されている。また、ブロック13の基端部には、上記パイプクランプレバー14と同様に構成された下側シャフトクランプレバー16が設けられている。この下側シャフトクランプレバー16を上下に回動させることにより、シャフト12の下側をブロック13に対しクランプすることができるようになっている。
【0028】
上側シャフトクランプレバー15及び下側シャフトクランプレバー16の一方または両方を操作することで、水平アーム11とブロック13とを接近させたり、シャフト12の長さの範囲で離したりすることができるようになっている。
【0029】
保持部材30は、本体部31と、一対の把持片32,32とを備えている。本体部31は、略水平方向に延びており、本体部31の基端部は、連結部50を介してアーム部材10のブロック13に連結される。本体部31の先端部は、図2に示す血液リザーバータンクTの円筒状保持部T1の形状に対応して円弧状に窪んでいる。把持片32,32は、本体部31の先端部において幅方向両側にそれぞれ取り付けられている。把持片32,32の形状は、血液リザーバータンクTの保持部T1の形状に対応して円弧状に湾曲している。把持片32,32は、本体部31への取り付け状態で、先端側が互いに接離する方向に回動するようになっている。血液リザーバータンクTの保持部T1は、把持片32,32によって径方向に挟持された状態で保持部材30に着脱可能に保持される。
【0030】
連結部50は、図10に示す球状部材(可動部材)51と、球状部材51をクランプするクランプ機構52とを備えている。この実施形態では、球状部材51は、保持部材30に固定される一方、クランプ機構52はアーム部材10に固定される。
【0031】
球状部材51には、該球状部材51の上端部から上方へ突出する円柱状のストッパ部51aと、該球状部材51の保持部材30側から水平方向に突出する円柱部51bと、円柱部51bの突出方向先端部に設けられた略矩形の取付板部51cとを有している。ストッパ部51aの中心線と円柱部51bの中心線とがなす角度は略90度である。また、ストッパ部51aの中心線と円柱部51bの中心線とは、仮想の同一鉛直面上に位置している。円柱部51bの外径は、ストッパ部51aの外径よりも大きく設定されている。取付板部51cは、円柱部51bの中心線に対し直交する方向に延びている。取付板部51cには、複数の取付孔51dが形成されている。取付板部51cは、取付孔51dに挿通した締結部材(ボルト、ビス等)によって保持部材30の本体部31の基端部に締結固定されるようになっている。従って、球状部材51は、保持部材30と一体化している。
【0032】
クランプ機構52は、左側及び右側クランプブロック53,54と、左側及び右側板部材55,56と、クランプレバー57(図8に示す)と、ハウジング60とを備えている。左側クランプブロック53は、例えばゴム等の弾性部材からなる直方体形状のものである。左側クランプブロック53の右側面には、球状部材51の外面のうち、左側の一部が嵌る形状の凹部53aが形成されている。右側クランプブロック54は左側クランプブロック53と同様に構成されており、右側クランプブロック54の左側面には、球状部材51の外面のうち、右側の一部が嵌る形状の凹部54aが形成されている。左側板部材55は、左側クランプブロック53の左側面に沿って延びるように形成されて該左側面に接するようにして配設されるものであり、左側クランプブロック53よりも硬い部材、例えばステンレス板等で構成されている。右側板部材56は左側板部材55と同様に構成されており、右側クランプブロック54の右側面に配設されている。
【0033】
ハウジング60は、球状部材51と、左側及び右側クランプブロック53,54と、左側及び右側板部材55,56とを収容するものである。ハウジング60は、左右方向の中央部において左右に分割された左側部材61と右側部材62とで構成されている。ハウジング60がアーム部材10のブロック13に固定されるようになっている。
【0034】
左側部材61には、左側クランプブロック53及び左側板部材55を収容する左側収容凹部61aが形成されている。左側部材61の上部の右縁部には、左側上部切欠部61bが形成されている。左側部材61における保持部材30側の右縁部には、左側下部切欠部61cが形成されている。また、図8に仮想線で示すように、左側部材61の左側壁部の略中央近傍には、左右方向に貫通する左側ねじ穴61dが形成されている。
【0035】
右側部材62は左側部材61と同様に形成され、図8に仮想線で示すように右側クランプブロック54及び右側板部材56を収容する右側収容凹部62aが形成されている。図10に示すように、右側部材62の上部の左縁部には、右側上部切欠部62bが形成されている。右側部材62における保持部材30側の左縁部には、右側下部切欠部62cが形成されている。また、右側部材62の右側壁部の略中央近傍には、左右方向に貫通する右側ねじ穴62dが形成されている。
【0036】
左側部材61と右側部材62とを合わせた状態で図示しない締結部材を用いて一体化することができるようになっている。一体化した状態では、球状部材51が左側クランプブロック53と右側クランプブロック54とで左右方向から挟まれて左右方向の略中央で保持される。
【0037】
図8に示すように、クランプレバー57は、ハウジング60の右側ねじ穴62dに螺合するねじ軸部57aを有している。ねじ軸部57aは略水平に延びている。ねじ軸部57aの基端部にはレバー本体57bが固定されている。ねじ軸部57aの先端面57cは、右側板部材56の右側面に当接するようになっている。
【0038】
ねじ軸部57aがハウジング60の右側ねじ穴62dに螺合する方向にクランプレバー57を回動させると、ねじ軸部57aの先端面57cが右側板部材56を左側へ押し、このとき左側板部材55はハウジング60内で固定されているので、球状部材51が左側及び右側クランプブロック53,54で挟持されてクランプ状態となり、ハウジング60に対して動かなくなる。一方、クランプレバー57を上記した方向とは反対に回動させると、ねじ軸部57aの先端面57cが右側に移動していき、球状部材51のクランプ状態が解除されてハウジング60に対する動きが許容される。
【0039】
また、左側部材61と右側部材62とが一体化した状態では、図11に示すように、左側部材61の左側上部切欠部61bと右側部材62の右側上部切欠部62bとの開放側同士が合致して、ストッパ部51aが挿入されるストッパ部挿入孔63が形成され、また、左側部材61の左側下部切欠部61cと右側部材62の右側下部切欠部62cとの開放側同士が合致して、円柱部51bが挿入される円柱部挿入孔64が形成されることになる。ストッパ部挿入孔63の形状は、左側上部切欠部61bと右側上部切欠部62bとの形状で設定することができ、円柱部挿入孔64の形状は、左側下部切欠部61cと右側下部切欠部62cとの形状で設定することができる。
【0040】
円柱部挿入孔64は、上下方向に長い長穴である。円柱部挿入孔64の長径方向(上下方向)の寸法は、球状部材51の円柱部51bの外径よりも所定長さ以上長く設定されている。円柱部挿入孔64の短径方向(左右方向)の寸法は、円柱部51bの外径と略同じに設定されているが、円柱部51bの外周面と円柱部挿入孔64の内周面とが強干渉しない程度に両者の間に僅かな隙を作っている。従って、円柱部51bは、円柱部挿入孔64内において、左右方向には移動しないが、上下方向には移動可能となっている。
【0041】
ストッパ部挿入孔63は、ハウジング60の奥行き方向に長い長穴である。ストッパ部挿入孔63の長径方向(奥行き方向)の寸法は、ストッパ部51aの外径よりも所定長さ以上長く設定されている。ストッパ部挿入孔63の短径方向(左右方向)の寸法も、ストッパ部51aの外径よりも長く設定されている。従って、ストッパ部51aは、ストッパ部挿入孔63内において、奥行き方向及び左右方向に移動可能となっている。
【0042】
ストッパ部挿入孔63及び円柱部挿入孔64が上記のように形成されているので、球状部材51は、クランプが解除された状態でハウジング60の内部において回動可能となっている。これにより、球状部材51が固定された保持部材30は、アーム部材10のブロック13に対する動きが許容される。保持部材30の動きの方向は、図4及び図5に矢印A、Bで示すようにアーム部材10のブロック13の中心線Xに対して上下に傾動する方向(傾動方向)と、図6及び図7に矢印C、Dで示すように中心線X周りに回動する方向(回動方向)とである。つまり、連結部50に球状部材51を設けてクランプするようにしたことで、ボールジョイントタイプの連結構造とすることができ、傾動及び回動を無段階に行うことができる。
【0043】
傾動方向の動きは、球状部材51のストッパ部51aがハウジング60のストッパ部挿入孔63内を奥行き方向に移動すること、及び、球状部材51の円柱部51bがハウジング60の円柱部挿入孔64内を上下方向に移動することによって実現される。このとき、球状部材51の円柱部51bは、円柱部挿入孔64内を上下方向にのみ移動して左右方向には移動しないので、保持部材30の動きが不安定になることはなく、上下方向にのみ傾動させることができる。すなわち、円柱部51bを円柱部挿入孔64によって上下方向に案内することができるようになっている。
【0044】
また、ストッパ部51aがストッパ部挿入孔63の周縁部のうち、前縁部に接触して係合することで、保持部材30の上方への傾動範囲が設定されることになり、また、ストッパ部51aがストッパ部挿入孔63の後縁部に接触して係合することで下方への傾動範囲が設定されることになる。ストッパ部51aがストッパ部挿入孔63の前縁部や後縁部に係合した際には、円柱部51bは、円柱部挿入孔64の上縁部や下縁部には係合しないようになっている。この実施形態では、保持部材30の傾動角度は中心線Xに対し上方へ11.5度に設定している。また、下方への傾動角度も同様に設定している。この傾動角度は、上記値に限られるものではなく、他の値に設定してもよい。
【0045】
保持部材30の回動方向の動きは、球状部材51のストッパ部51aがハウジング60のストッパ部挿入孔63内を左右方向に移動すること、及び、球状部材51の円柱部51bがハウジング60の円柱部挿入孔64内で該円柱部51bの中心線周りに回動することによって実現される。
【0046】
また、ストッパ部51aがストッパ部挿入孔63の周縁部のうち、右縁部に接触して係合することで保持部材30の右側への回動範囲が設定されることになり、また、ストッパ部51aがストッパ部挿入孔63の左縁部に接触して係合することで左側への回動範囲が設定されることになる。この実施形態では、保持部材30の回動角度は中心線X周りに右側へ9度に設定している。また、左側への回動角度も同様に設定している。この回動角度は、上記値に限られるものではなく、他の値に設定してもよい。
【0047】
次に、上記のように構成された血液リザーバータンク用ホルダ1の使用要領について説明する。まず、血液リザーバータンク用ホルダ1をポールPに取り付ける。このとき、パイプクランプレバー14を上下に回動させてパイプPをアームヘッド11aでクランプする。
【0048】
血液リザーバータンク用ホルダ1をポールPに取り付けた状態で、上側シャフトクランプレバー15や下側シャフトクランプレバー16を操作することにより、保持部材30の高さ調整が行えるとともに、シャフト12周りの位置調整も行える。
【0049】
血液リザーバータンクTを保持部材30に保持した状態で、血液リザーバータンクTの傾きが0、即ち、鉛直線に対して傾いていない状態となるように血液リザーバータンクTの傾きを修正する。傾きを修正する場合には、まず、クランプレバー57を緩み方向に回動させる。すると、球状部材51のクランプ状態が解除されて、球状部材51が左側クランプブロック53と右側クランプブロック54との間で動くことができるようになる。
【0050】
この状態で、保持部材30を上下に傾動させたり、左右に回動させて血液リザーバータンクTの傾きを0にする。保持部材30を上下に傾動させる際には、球状部材51の円柱部51bをハウジング60の円柱部挿入孔64によって上下方向に案内することができるので、不意に左右方向に傾動することはなく、作業性が良好である。
【0051】
また、保持部材30を傾動させると、ストッパ部51aがハウジング60のストッパ部挿入孔63の周縁部に係合して保持部材30が不意に大きく傾動してしまうのを抑制することが可能である。保持部材30を回動させる場合も、ストッパ部51aがハウジング60のストッパ部挿入孔63の周縁部に係合するので、保持部材30が不意に大きく回動してしまうのを抑制することが可能である。
【0052】
血液リザーバータンクTの傾きが0になったら、クランプレバー57を、そのねじ軸部57aがハウジング60の右側ねじ穴62dに螺合する方向に回動させる。すると、左側クランプブロック53と右側クランプブロック54とで球状部材51がクランプされ、球状部材51がハウジング60に対して動かなくなり、血液リザーバータンクTがポールPに固定される。
【0053】
以上説明したように、この実施形態に係る血液リザーバータンク用ホルダ1によれば、血液リザーバータンクTを保持する保持部材30を、アーム部材10に対してその中心線X周りに回動させるとともに、中心線Xに対し傾動させることができる。これにより、血液リザーバータンクTの傾きを修正することができる。よって、ポールPが傾いている場合であっても血液レベルの正確な把握が可能となるように血液リザーバータンクTを固定することができる。
【0054】
また、連結部50の球状部材51を保持部材30に固定し、その球状部材51をクランプするクランプ機構52をアーム部材10に固定している。これにより、クランプ機構52を操作することで保持部材30の回動及び傾動が可能な状態と、保持部材30の固定状態とを容易に切り替えることができ、操作性を良好にすることができる。
【0055】
また、保持部材30の回動範囲及び傾動範囲をストッパ部51aによって設定することができるので、保持部材30が不意に大きく回動してしまったり、傾動してしまうのを抑制することができ、血液リザーバータンクTの傾きを安全に、かつ、容易に修正することができる。
【0056】
尚、上記実施形態では、連結部50の球状部材51のストッパ部51aが上方に突出するようにしているが、これに限らず、図12に示す変形例のように、下方へ突出するようにしてもよい。この場合、ハウジング60のストッパ部挿入孔63は、該ハウジング60の下壁部に形成する。この変形例では、ハウジング60の上壁部にストッパ部挿入孔を設けなくてもよいので、埃等がハウジング60の内部に侵入するのを抑制することができ、長期間に亘って球状部材51の動きをスムーズにすることができる。
【0057】
また、上記実施形態では、連結部50の球状部材51を保持部材30に固定し、クランプ機構52をアーム部材10のブロック13に固定するようにしているが、これに限らず、連結部50の球状部材51をアーム部材10のブロック13に固定し、クランプ機構52を保持部材30に固定するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、連結部50の球状部材51のストッパ部51aとハウジング60のストッパ部挿入孔63とによって保持部材30の傾動及び回動の両方の範囲を設定するようにしているが、これに限らず、ストッパ部挿入孔63の形状を変更する等の方法によって、保持部材30の傾動範囲のみ、保持部材30の回動範囲のみを設定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、アーム部材10が水平アーム11、シャフト12及びブロック13の3つの部材に分割されているが、これに限らず、アーム部材10は一体成形品であってもよい。
【0060】
また、クランプレバー57は、ハウジング60の左側ねじ穴61dに螺合させてもよい。この場合もクランプレバー57によって球状部材51をクランプ状態とクランプ解除状態とに切り替えることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、球状部材51を硬質材料で構成し、左側及び右側クランプブロック53,54を弾性材料で構成しているが、これとは反対に、球状部材51を弾性材料で構成し、左側及び右側クランプブロック53,54を硬質材料で構成してもよい。この場合、左側板部材55及び右側板部材56を省略することができる。
【0062】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明に係る血液リザーバータンク用ホルダは、例えば、人工心肺装置や補助循環装置の血液リザーバータンクを固定する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 血液リザーバータンク用ホルダ
10 アーム部材
12 シャフト
13 ブロック
30 保持部材
50 連結部
51 球状部材(可動部材)
51a ストッパ部
52 クランプ機構
57 クランプレバー
60 ハウジング
63 ストッパ部挿入孔
T 血液リザーバータンク
P ポール(支持部材)
X 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12