(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
十分な締め代を確保するためには、圧入する前に測定されるセラミックヒータの外径と金属外筒の内径との径差である圧入代を大きくして、金属外筒の変形量を大きくする必要がある。しかしながら、圧入代が大きいと圧入荷重も大きくなりやすく、圧入時にセラミックヒータの折損が発生したりや圧入ができない等の問題が発生する場合があった。また、圧入代が小さいと十分な締め代を確保することができず、セラミックヒータと金属外筒との機械的な接合強度及び電気的な接続信頼性を確保することができない場合があった。
【0005】
本発明の主な利点は、セラミックヒータを金属外筒に圧入する場合の不具合の可能性を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
金属外筒と、前記金属外筒に圧入されたセラミックヒータと、を備えるヒータモジュールを製造する製造方法であって、
金属外筒に、ダミー部材を圧入し、
前記圧入されたダミー部材を、前記金属外筒から取り外し、
前記ダミー部材が取り外された後に、前記金属外筒に、セラミックヒータを圧入する、
製造方法。
【0008】
この構成によれば、セラミックヒータを圧入する際の圧入荷重が、ダミー部材の圧入によって低減されるので、セラミックヒータを金属外筒に圧入する場合の不具合の可能性を低減できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の製造方法であって、
前記ダミー部材のうち前記圧入によって前記金属外筒の内周面と接触する部分を含む同一外径部の長さは、前記セラミックヒータの同一外径部のうち前記圧入後に前記金属外筒の前記内周面と接触している部分の長さよりも短い、製造方法。
【0010】
この構成によれば、長いダミー部材を用いる場合と比べて、ダミー部材の金属外筒への圧入を容易に行うことができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2に記載の製造方法であって、
前記ダミー部材の外径は、前記ダミー部材が圧入される前の前記金属外筒の内径よりも大きく、かつ、前記セラミックヒータの外径以下である、製造方法。
【0012】
この構成によれば、ダミー部材の外径が、ダミー部材が圧入される前の金属外筒の内径よりも大きいので、ダミー部材を金属外筒に圧入することによって、金属外筒の内径を拡張することができる。従って、セラミックヒータを圧入する際の圧入荷重を低減することができる。また、ダミー部材の外径が、セラミックヒータの外径以下であるので、金属外筒の内径がセラミックヒータの外径よりも大きく拡張されることを抑制できる。以上により、セラミックヒータを金属外筒に圧入する場合の不具合の可能性を低減できる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし3に記載の製造方法であって、
前記ダミー部材の硬さは、前記金属外筒の硬さよりも大きい、製造方法。
【0014】
この構成によれば、金属外筒にダミー部材を圧入する場合に、ダミー部材の変形を抑制できるので、金属外筒の内径を確実に拡張することができる。従って、セラミックヒータを金属外筒に圧入する場合の不具合の可能性を低減できる。
【0015】
[適用例5]
適用例4に記載の製造方法であって、
前記ダミー部材の硬さは、セラミックの硬さ以上である、製造方法。
【0016】
この構成によれば、金属外筒にダミー部材を圧入する場合に、ダミー部材の変形を効果的に抑制できるので、金属外筒の内径をより確実に拡張することができる。従って、セラミックヒータの圧入時の不具合の要因を、適切に軽減することができる。
【0017】
[適用例6]
グロープラグを製造する製造方法であって、
適用例1ないし5のいずれかに記載の製造方法に従って、ヒータモジュールを製造し、
前記製造されたヒータモジュールを、主体金具に固定する、
製造方法。
【0018】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ヒータモジュールの製造方法、その方法に従って製造されたヒータモジュール、グロープラグの製造方法、その方法に従って製造されたグロープラグ、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.実施例:
A1.グロープラグの構成:
本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのグロープラグを示す説明図である。グロープラグ10は、図示しない内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)の始動補助等のための熱源として機能する。
図1(A)は、グロープラグ10の縦断面図であり、
図1(B)は、グロープラグ10の一部分(ヒータモジュール740を含む部分)を示す拡大断面図である。図示されたラインCLは、グロープラグ10の中心軸を示している。以下、中心軸CLのことを「軸線CL」とも呼び、中心軸CLと平行な方向を「軸線方向」とも呼ぶ。図中の第1方向D1と第2方向D2とは、軸線CLと平行であり、第2方向D2は、第1方向D1と反対の方向である。後述するように、通電によって発熱するヒータモジュール740は、グロープラグ10の第1方向D1側の端部を形成している。以下、このような第1方向D1側を「先端側」とも呼び、第2方向D2側を「後端側」とも呼ぶ。また、グロープラグ10の種々の部材の第1方向D1側の端を「先端」とも呼び、第2方向D2側の端を「後端」とも呼ぶ。
【0021】
グロープラグ10は、主体金具20と、中軸30と、セラミックヒータ40と、Oリング50と、絶縁部材60と、金属外筒70(以下、単に「外筒70」とも呼ぶ)と、端子部材80と、を含んでいる。主体金具20は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔20xを有する筒状の部材である。また、主体金具20は、第2方向D2側の端部に形成された工具係合部28と、工具係合部28よりも第1方向D1側に設けられた雄ネジ部22と、を含んでいる。工具係合部28は、グロープラグ10の脱着時に、図示しない工具と係合する部分である。雄ネジ部22は、図示しない内燃機関の取付孔の雌ネジに螺合するためのネジ山を含んでいる。主体金具20は、導電性材料(例えば、炭素鋼等の金属)で形成されている。
【0022】
主体金具20の貫通孔20xには、中軸30が収容されている。中軸30は、丸棒状の部材である。中軸30の先端部31は、貫通孔20xの内部に位置している。中軸30の後端部39は、主体金具20の第2方向D2側の開口OP2から第2方向D2に向かって突出している。中軸30は、導電材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。
【0023】
開口OP2の近傍において、中軸30の外面と、主体金具20の貫通孔20xの内面と、の間には、Oリング50が設けられている。Oリング50は、弾性材料(例えば、ゴム)で形成されている。さらに、主体金具20の開口OP2には、リング状の絶縁部材60が装着されている。絶縁部材60は、筒状部62と、筒状部62の第2方向D2側に設けられたフランジ部68と、を含んでいる。筒状部62は、中軸30の外面と、主体金具20の開口OP2の内面と、の間に挟まれている。絶縁部材60は、例えば、樹脂で形成されている。主体金具20は、これらの部材50、60を介して、中軸30を支持している。
【0024】
主体金具20よりも後端側(具体的には、絶縁部材60の第2方向D2側)には、端子部材80が配置されている。端子部材80は、キャップ状の部材であり、導電材料(例えば、ニッケル等の金属)で形成されている。端子部材80と主体金具20との間には、絶縁部材60のフランジ部68が挟まれている。端子部材80には、中軸30の後端部39が挿入されている。端子部材80が加締められることによって、端子部材80が後端部39に固定されている。これにより、端子部材80は、後端部39に、電気的に接続される。
【0025】
主体金具20の先端部(具体的には、第1方向D1側の開口OP1)には、外筒70が固定されている。外筒70は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔70xを有する筒状の部材である。外筒70は、第1薄肉部71と、第1薄肉部71の第2方向D2側に設けられた厚肉部75と、厚肉部75の第2方向D2側に設けられた第2薄肉部79と、を含んでいる。第2薄肉部79は、主体金具20の開口OP1に圧入されている。外筒70は、導電性材料(本実施例では、ステンレス鋼)で形成されている。
【0026】
外筒70の貫通孔70xには、通電によって発熱するセラミックヒータ40が圧入されている。セラミックヒータ40は、中心軸CLに沿って延びるように配置された丸棒状の部材である。セラミックヒータ40の外周面は、外筒70によって保持されている。セラミックヒータ40の先端部41は、外筒70の先端よりも第1方向D1側に突出し、セラミックヒータ40の後端部49は、外筒70の後端よりも第2方向D2側に突出している。セラミックヒータ40の後端部49は、主体金具20の貫通孔20xに挿入されている。以下、外筒70とセラミックヒータ40との全体を、「ヒータモジュール740」とも呼ぶ。
【0027】
セラミックヒータ40の後端部49には、接続部材90が固定されている。接続部材90は、中心軸CLに沿って延びる貫通孔を有する円筒状の部材であり、導電性材料(例えば、ステンレス鋼)で形成されている。接続部材90の先端側には、セラミックヒータ40の後端部49が圧入されている。接続部材90の後端側には、中軸30の先端部31が圧入されている。これにより、先端部31は、接続部材90に電気的に接続される。
【0028】
次に、ヒータモジュール740の詳細について、説明する。
図1(B)には、外筒70とセラミックヒータ40とのより詳細な断面図が示されている。セラミックヒータ40は、軸線CLに沿って延びる丸棒状の基体210と、基体210の内部に埋設された、略U字状の発熱素子220(「発熱体220」とも呼ぶ)と、を含んでいる。
【0029】
基体210は、絶縁性セラミック(本実施例では、窒化珪素)で形成されている。基体210の先端部41は、先端側に向かって徐々に細くなっている。発熱素子220は、導電性セラミックで形成されている。本実施例では、発熱素子220は、基体210と同じ窒化珪素に、導電材料としてのタングステンカーバイトを混合して得られるセラミックで形成されている。
【0030】
発熱素子220は、2本のリード部221、222と、それらのリード部221、222を接続する接続部223と、電極取出部281、282と、を含んでいる。各リード部221、222は、セラミックヒータ40の後端部49から先端部41の近傍まで軸線CLと平行に延びている。接続部223は、セラミックヒータ40の先端部41に埋設され、第1リード部221の先端と第2リード部222の先端とを接続する。接続部223の形状は、セラミックヒータ40の先端部41の丸い形状に合わせて湾曲する略U字状である。接続部223の断面積は、リード部221、222のそれぞれの断面積よりも、小さい。従って、通電時には、接続部223の温度が、他の部分と比べて、急速に上昇する。
【0031】
第1リード部221の第2方向D2側の部分には、第1電極取出部281が接続されている。第1電極取出部281は、径方向に沿って延びる部材であり、内側の端部は第1リード部221に接続され、外側の端部は、セラミックヒータ40の外面に露出する。第1電極取出部281の露出部分は、外筒70の内周面に接触している。これにより、外筒70と第1リード部221とが、電気的に接続される。
【0032】
第2リード部222の第2方向D2側の部分には、第2電極取出部282が接続されている。第2電極取出部282は、径方向に沿って延びる部材であり、第1電極取出部281よりも、第2方向D2側に配置されている。第2電極取出部282の内側の端部は、第2リード部222に接続され、外側の端部は、セラミックヒータ40の外面に露出する。第2電極取出部282の露出部分は、接続部材90の内周面に接触している。これにより、接続部材90と第2リード部222とが、電気的に接続される。
【0033】
A2.グロープラグの製造方法:
図2は、グロープラグ10の製造方法のフローチャートである。
図2のフローチャートは、セラミックヒータ40と外筒70と用いてヒータモジュール740を製造する方法を詳細に示している。
図3は、ヒータモジュール740の製造方法を示す概略図である。図中には、ダミー部材40dと、外筒70と、セラミックヒータ40との断面図が示されている。製造工程は、
図3(A)〜
図3(E)の順番に、進行する。
【0034】
図2の最初のステップS100では、セラミックヒータ40と、外筒70と、ダミー部材40dと、を含むグロープラグ10の部材が準備される。セラミックヒータ40(
図3(D))は、例えば、未焼成のセラミック材料をプレス成形することによって得られる成形体を、焼成することによって、製造される。ただし、製造する代わりに、購入することによって、セラミックヒータ40を準備してもよい。
図3(D)には、準備されるセラミックヒータ40の外径D40が示されている。この外径D40は、完成したヒータモジュール740(
図3(E))のセラミックヒータ40のうちの、外筒70の貫通孔70xの内周面に接触して、外筒70によって保持される部分45の外径である。
【0035】
外筒70(
図3(A))は、例えば、導電性材料を用いた鍛造、または、切削によって、製造される。ただし、製造する代わりに、購入することによって、外筒70を準備してもよい。
図3(A)には、準備される外筒70の内径D70と外径D71、D75とが示されている。内径D70は、貫通孔70xの内径である。第1外径D71は、薄肉部71、79に共通な外径である。第2外径D75は、厚肉部75の外径である。外筒70の内径D70は、セラミックヒータ40の外径D40よりも小さい。
【0036】
ダミー部材40d(
図3(A))は、本実施例では、セラミックヒータ40の長さを短くすることによって得られる形状とおおよそ同じ形状を有する部材であり、セラミックヒータ40の絶縁性セラミック(すなわち、基体210)と同じ材料(ここでは、窒化珪素)で形成されている。ダミー部材40dの先端部41dは、セラミックヒータ40の先端部41(
図3(D))と同様に、先端側に向かって徐々に細くなっている。ダミー部材40dは、例えば、未焼成のセラミック材料をプレス成形することによって得られる成形体を、焼成することによって、製造される。ただし、製造する代わりに、購入することによって、ダミー部材40dを準備してもよい。
図3(A)には、準備されるダミー部材40dの外径D40dが示されている。この外径D40dは、後述のステップS110で、
図3(B)に示すように、ダミー部材40dが外筒70に圧入される場合に、外筒70の貫通孔70xの内周面に接触する部分の外径である。ダミー部材40dの外径D40dは、外筒70の内径D70よりも大きく、セラミックヒータ40の外径D40以下である。
【0037】
グロープラグ10の他の部材の準備方法(例えば、製造方法)としては、公知の方法を採用可能であり、詳細な説明を省略する。
【0038】
図2の次のステップS110では、
図3(A)、
図3(B)に示すように、外筒70の貫通孔70xに、ダミー部材40dが圧入される。例えば、ダミー部材40dよりも細い圧入部材900を用いて、ダミー部材40dの後端部49dに、第1方向D1の力が印加される。ダミー部材40dは、外筒70の後端側から第1方向D1に向かって、圧入される(
図3(A)、
図3(B))。ダミー部材40dの先端部41dは、先端側に向かって徐々に細くなるので、ダミー部材40dの圧入を、容易に行うことができる。
【0039】
上述したように、ダミー部材40dの外径D40dは、外筒70の第1内径D70よりも大きい。従って、ダミー部材40dを外筒70に圧入することによって、外筒70の貫通孔70xの内径を拡げることができる。なお、
図3(A)に示す内径D70は、外筒70にダミー部材40dが圧入される前の内径である(以下、「第1内径D70」とも呼ぶ)。
【0040】
図2の次のステップS120では、
図3(C)に示すように、外筒70から、ダミー部材40dが、取り外される。例えば、圧入部材900を、外筒70の先端71eまで押し込むことによって、ダミー部材40dを、外筒70の第1方向D1側から取り外すことができる。これにより、押し広げられた貫通孔70xの内径は、若干小さくなる。ただし、ダミー部材40dが圧入される前の第1内径D70(
図3(A))と比べ、圧入されたダミー部材40dが取り外された後の貫通孔70xの内径D70n(
図3(C))は、若干大きい。このように、負荷を取り除くことによって内径が小さくなり、かつ、負荷を取り除いた後の内径D70nが、負荷を印加する前の内径D70よりも大きくなる理由は、金属外筒70の塑性変形と弾性変形との両方が起きるからである。以下、圧入されたダミー部材40dが取り外された後の外筒70の内径D70nを「第2内径D70n」とも呼ぶ。
【0041】
図2の次のステップS130では、
図3(D)、
図3(E)に示すように、外筒70の貫通孔70xに、セラミックヒータ40が、圧入される。この圧入は、ダミー部材40dの圧入と同様に、行われる。上述のステップS110、S120で、貫通孔70xの第2内径D70nはダミー部材40dによって拡げられているので、セラミックヒータ40の圧入を容易に行うことができる。以上により、ヒータモジュール740が形成される。なお、
図3(D)、
図3(E)の例では、事前に接続部材90がセラミックヒータ40に装着されているが、接続部材90の装着は、セラミックヒータ40の圧入の後に行われてもよい。
【0042】
図2の次のステップS140では、グロープラグ10の組み立てが行われる。組み立て方法としては、公知の種々の方法を採用可能である。例えば、中軸30が接続部材90に固定される。そして、中軸30の後端部39が主体金具20の開口OP1に挿入され、そして、ヒータモジュール740(具体的には、外筒70(
図1)の第2薄肉部79)が、主体金具20の開口OP1に、圧入される。これにより、ヒータモジュール740が、主体金具20に、固定される。次に、Oリング50が中軸30の後端部39に嵌め込まれ、さらに、絶縁部材60が中軸30の後端部39に嵌め込まれる。そして、端子部材80が、中軸30の後端部39に加締められる。以上により、グロープラグ10が完成する。
【0043】
セラミックヒータ40の外径D40は、締め代を確保するために外筒70の内径が十分に拡張される値に設定される。このとき、ダミー部材40dを外筒70に圧入すると、外筒70の第1内径D70は第2内径D70nまで拡張され(
図3(C))、拡張後の外筒70に圧入されるセラミックヒータ40の圧入代は、ダミー部材40dを圧入せずにセラミックヒータ40を圧入する場合と比べて、相対的に小さくなる。このため、セラミックヒータ40を外筒70に圧入する際の圧入荷重を低減することができる。以上により、セラミックヒータ40を外筒70に圧入する場合の不具合の可能性を低減できる。
【0044】
また、本実施例では、ダミー部材40dの外径D40dは、セラミックヒータ40の外径D40(
図3(D))以下である。従って、ダミー部材40dの圧入によって、外筒70の内径が、セラミックヒータ40の外径D40よりも大きく拡張されることが、抑制される。この結果、外筒70によるセラミックヒータ40を保持する十分な力を容易に実現できる。また、外筒70と、セラミックヒータ40の発熱素子220(より具体的には、第1電極取出部281(
図1))と、の間の良好な電気的接触を容易に実現できる。
【0045】
また、ダミー部材40dの圧入と取り外しによって、外筒70の貫通孔70xの内周面の面粗度と外筒70の内径を、それぞれ、ダミー部材40dの圧入と取り外しとを行わない場合よりも狭い範囲に揃えることができる。以上により、セラミックヒータ40の折損等の不具合の可能性を低減できる。
【0046】
また、上述したように、ダミー部材40dは、窒化珪素で構成され、外筒70は、ステンレス鋼で構成されている。一般に、窒化珪素は、ステンレス鋼よりも硬い。すなわち、ダミー部材40dは、外筒70よりも、硬い。従って、ダミー部材40dの圧入時にダミー部材40dが変形することを抑制できるので、外筒70の内径を確実に拡張することができる。このため、セラミックヒータ40を外筒70に圧入する際の圧入荷重をより低減することができる。なお、セラミックヒータ40と外筒70との硬さとしては、いわゆるビッカース硬さを採用可能である(ビッカース硬さが大きいほど、硬い)。また、上述したように、ダミー部材40dは、セラミックヒータ40の基体210と同じ材料で形成されているので、ダミー部材40dの硬さは、セラミックヒータ40の硬さと、同じである。このように、ダミー部材40dの硬さをセラミックの硬さ以上(セラミックヒータ40の硬さ以上)にすると、外筒70の内径をより確実に拡張することができ、セラミックヒータ40を外筒70に圧入する際の圧入荷重を十分に低減することができる。
【0047】
また、
図3に示すように、ダミー部材40dのうち圧入によって外筒70の内周面(すなわち、貫通孔70xの内周面)と接触する部分を含む同一外径部40dsの長さL40dsは、セラミックヒータ40の同一外径部40sのうち圧入後に外筒70の内周面と接触している部分(ここでは、部分45(「接触部分45」とも呼ぶ))の長さL45よりも短いことが好ましい。これにより、ダミー部材40dの同一外径部40dsの長さL40dsがセラミックヒータ40の同一外径部40sのうちの接触部分45の長さL45以上である場合と比べて、ダミー部材40dを外筒70に圧入するときにダミー部材40dと外筒70との間に発生する摩擦力を低減することができ、ダミー部材40dを外筒70に圧入する際の圧入荷重を効果的に低減することができる。このため、ダミー部材40dの同一外径部40dsの長さL40dsがセラミックヒータ40の同一外径部40sのうちの接触部分45の長さL45以上である場合と比べて、ダミー部材40dの外筒70への圧入を容易に行うことができる。ただし、ダミー部材40dの同一外径部40dsの長さL40dsが、セラミックヒータ40の同一外径部40sのうちの接触部分45の長さL45以上であってもよい。なお、
図3の実施例では、接触部分45の長さL45は、外筒70の貫通孔70xの長さL70と、同じである。
【0048】
A3.評価試験:
次に、種々のダミー部材を用いた評価試験の結果について説明する。以下の表1は、1番から7番までの7つの試験の結果を示している。
【0050】
1番から7番の各試験では、上記の実施例に従って、5つのヒータモジュール740(
図1、
図3(E))が製造された。1番から6番の各試験では、
図2のステップS110〜S130の製造方法に従って、ダミー部材40dを用いて、ヒータモジュール740が製造された。7番の試験では、ダミー部材40dを用いずに、すなわち、ステップS120、S130を省略して、ヒータモジュール740が製造された。
【0051】
各試験では、5つのヒータモジュール740(
図1)を製造した場合の、平均圧入荷重と、平均接触抵抗と、が測定され、そして、セラミックヒータ40の折損の割合が、計算された。平均圧入荷重は、セラミックヒータ40を所定速度で圧入した場合の最大荷重の平均値(すなわち、5つのヒータモジュール740の平均値)である。平均接触抵抗は、外筒70と、セラミックヒータ40の発熱素子220と、の間の電気抵抗値の平均値である。折損割合は、5つのヒータモジュール740を製造した場合の、圧入によって折損したセラミックヒータ40の数の割合である。
【0052】
各試験に共通な寸法は、以下の通りである。
外筒70(
図3(A))の第1内径D70 :3.0mm
薄肉部71、79の第1外径D71 :4.4mm
厚肉部75の第2外径D75 :8.0mm
セラミックヒータ40(
図3(D))の外径D40 :3.1mm
なお、ダミー部材40dの外径D40dの数値は、実測値であり、他の寸法D70、D71、D75、D40の数値は、いずれも、設計値である。
【0053】
表1に示すように、1番から6番のダミー部材40dの外径は、それぞれ、3.12mm、3.10mm、3.08mm、3.06mm、3.04mm、3.02mmである。このように、6種類のダミー部材40dの外径は、いずれも、外筒70の第1内径D70(3.0mm)よりも大きい。また、1番の試験のダミー部材40dの外径(3.12mm)は、セラミックヒータ40の外径D40(3.1mm)よりも大きい。2番から6番の試験のダミー部材40dの外径は、セラミックヒータ40の外径D40以下である。なお、外筒70の第1内径D70(3.0mm)は、セラミックヒータ40の外径D40(3.1mm)よりも小さい。
【0054】
また、平均圧入荷重は、ダミー部材40dの外径が小さいほど大きく、ダミー部材40dを用いない場合が、最も大きかった。具体的には、1番から7番の平均圧入荷重は、それぞれ、24、193、299、299、559、736、846であった(単位は、kgf)。
【0055】
また、平均接触抵抗については、以下の通りである。すなわち、1番の平均接触抵抗は、ゼロより大きく(具体的には、4.0オーム)、2番から7番の平均接触抵抗は、ゼロであった。すなわち、ダミー部材40dの外径D40dがセラミックヒータ40の外径D40以下である場合(2番から7番)、外筒70と、セラミックヒータ40の発熱素子220と、の間の良好な電気的接触が実現された。ダミー部材40dの外径D40dがセラミックヒータ40の外径D40よりも大きい場合(1番)、外筒70と、セラミックヒータ40の発熱素子220と、の間の電気的接触が、緩かった。この理由は、セラミックヒータ40よりも太いダミー部材40dによって、外筒70の貫通孔70xが過剰に拡げられたからと推定される。
【0056】
折損割合については、以下の通りである。すなわち、1番から4番の折損割合はゼロであった。5番、6番、7番の折損割合は、それぞれ、3/5、3/5、2/5であった。このように、ダミー部材40dの外径D40dが小さい場合(具体的には、外径が3.04mm以下の場合)に、折損割合がゼロよりも大きかった。この理由は、ダミー部材40dの外径D40dが小さい場合には、外筒70の貫通孔70xの拡張が十分ではなく、圧入に用いられる荷重が大きいからと推定される。
【0057】
以上のように、ダミー部材40dの外径D40dは、セラミックヒータ40の外径D40以下であることが好ましい。外筒70の構成やセラミックヒータ40の構成が、上記サンプルと異なっていても、ダミー部材40dの外径D40dが、セラミックヒータ40の外径D40以下であれば、外筒70の貫通孔70xがセラミックヒータ40の外径D40よりも拡張されることを抑制できる。従って、外筒70の構成やセラミックヒータ40の構成に寄らず、ダミー部材40dの実際の外径D40dが、セラミックヒータ40の実際の外径D40以下となるようにダミー部材40dを形成すれば、外筒70によるセラミックヒータ40を保持する力が弱くなることを抑制できる、と推定される。
【0058】
ダミー部材40dの外径D40dの下限は、ヒータモジュール740の構成に応じて、折損割合が小さくなるように、実験的に決定可能である。いずれの場合も、外筒70の貫通孔70xを押し広げるためには、ダミー部材40dの実際の外径D40dが、外筒70の実際の第1内径D70よりも大きくなるように、ダミー部材40dが形成される。
【0059】
B.変形例:
(1)セラミックヒータ40の構成としては、
図1で説明した構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、発熱素子220の材料としては、導電性セラミックに限らず、他の導電性材料を採用可能である。例えば、高融点金属(例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、レニウム(Re)等の融点が摂氏2000度以上の金属)を採用してもよい。
【0060】
また、セラミックヒータの一部の形状が、外径が変化するテーパ状であってもよい。例えば、
図3(E)に示す実施例において、セラミックヒータのうちの外筒70内の途中の位置から先端までの部分が、先端に向かって外径が徐々に小さくなるテーパ部分であってもよい。このようなテーパ部分は、セラミックヒータの圧入後に外筒70の内周面と接触していない。従って、セラミックヒータの同一外径部のうちの、圧入後に外筒70の内周面と接触している接触部分の長さは、外筒70の貫通孔70xの長さL70よりも短くなる。この場合も、ダミー部材40dの同一外径部40dsの長さL40dsは、セラミックヒータの同一外径部のうちの接触部分の長さよりも、短いことが好ましい。こうすれば、ダミー部材40dを外筒70に圧入する際の圧入荷重を低減できる。
【0061】
(2)外筒70の構成としては、
図1で説明した構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、厚肉部75が省略されてもよい。一般的には、外筒70の形状としては、セラミックヒータ40が圧入される貫通孔を有し、主体金具20への固定に適した任意の形状を採用可能である。また、外筒70の材料としては、ステンレス鋼に限らず、種々の金属を採用可能である。例えば、炭素鋼を採用してもよい。
【0062】
(3)ヒータモジュール740の構成としては、
図1で説明した構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、電極取出部281、282の少なくとも一方が省略され、この代わりに、省略された電極取出部を代替する端子(すなわち、発熱素子220に接続された端子)が設けられても良い。
【0063】
(4)ダミー部材40dの構成としては、
図3で説明した構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、ダミー部材40dの材料が、セラミックヒータ40とは異なるセラミック(例えば、アルミナ)であってもよい。この場合も、ダミー部材40dの圧入によって、外筒70の貫通孔70xの内周面がセラミックによって研磨されるので、セラミックヒータ40の圧入時の不具合の要因(例えば、セラミックに対する外筒70の内周面の粗さ)を、適切に軽減することができる。また、ダミー部材40dの構成が、セラミックヒータ40の構成と、同一であってもよい。
【0064】
一般的には、ダミー部材40dの表面(特に、圧入時に外筒70の内周面と接触する表面。以下「接触表面」とも呼ぶ)を形成する部分が、セラミックで形成されていることが好ましい。さらに、ダミー部材40dの接触表面は、セラミックヒータ40の絶縁性セラミック(特に、外筒70の内周面と接触して、外筒70に保持される部分の表面を形成するセラミック)と同じセラミックで形成されていることが特に好ましい。ダミー部材40dの内部には、別の材料で形成された部分(例えば、金属で形成された芯)が、埋め込まれていてもよい。
【0065】
いずれの場合も、ダミー部材40dの硬さと、外筒70の硬さとを比較する場合には、ダミー部材40dの接触表面を形成する材料と同じ材料の硬さと、外筒70の貫通孔70xの内周面を形成する材料と同じ材料の硬さと、を比較することが好ましい。同様に、ダミー部材40dの硬さと、セラミックヒータ40の硬さとを比較する場合には、ダミー部材40dの接触表面を形成する材料と同じ材料の硬さと、セラミックヒータ40の表面(特に、圧入時に外筒70の内周面と接触する表面)を形成する材料と同じ材料の硬さと、を比較することが好ましい。
【0066】
また、
図3(B)に示す実施例では、ダミー部材40dの長さ(特に接触表面を形成する部分の長さ。
図3(B)の例では、同一外径部40dsの長さL40ds)が、外筒70の貫通孔70xの長さ(
図3の実施例では、セラミックヒータ40と接触してセラミックヒータ40を保持する部分の長さL70と同じ)よりも短い。この代わりに、ダミー部材40dの同一外径部40dsの長さL40dsが、外筒70の貫通孔70xの長さL70以上であってもよい。
【0067】
なお、ダミー部材40dの材料としては、セラミック以外の材料(例えば、炭化タングステン等の超硬合金)を採用してもよい。また、ダミー部材40dの硬さが、外筒70の硬さ以下であってもよい。また、ダミー部材40dの硬さが、セラミックヒータ40の硬さ未満であってもよい。
【0068】
(5)グロープラグ10とヒータモジュール740とのそれぞれの製造方法としては、上記実施例の方法とは異なる種々の方法を採用可能である。例えば、
図3の実施例において、ダミー部材40dは、外筒70の後端側(第2方向D2側)から、取り外されてもよい。この場合、ダミー部材40dを取り外す前に、外筒70の貫通孔70xの後端側から、貫通孔70xの先端部(第1方向D1側の端部)まで、ダミー部材40dの同一外径部40dsを押し込むことが好ましい。こうすれば、貫通孔70xの全体を拡張することができる。ただし、拡張される部分が、貫通孔70xの一部のみであってもよい。いずれの場合も、取り外されたダミー部材40dは、他のヒータモジュール740の製造に、再利用可能である。
【0069】
また、ダミー部材40dを外筒70に圧入する方法としては、ダミー部材40dの側面を保持する部材を用いてダミー部材40dに荷重を印加する方法を採用可能である。セラミックヒータ40の圧入についても、同様である。また、ヒータモジュール740(具体的には、外筒70)を主体金具20に固定する方法としては、圧入に限らず、溶接(例えば、レーザ溶接)やロウ付等の任意の方法を採用可能である。
【0070】
(6)グロープラグ10の構成としては、
図1の構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、中軸30の後端部39に雄ねじを形成し、端子部材80に雌ねじを形成して、端子部材80を後端部39にねじ込んでもよい。
【0071】
また、上記実施例のヒータモジュールは、内燃機関の始動補助のために利用されるグロープラグに限らず、種々のグロープラグに適用可能である。例えば、排気ガスを昇温するための排気ガスヒータ装置や、触媒やディーゼル粒子フィルタ(DPF: Diesel Particulate Filter)を再活性化するためのバーナーシステムや、冷却水を昇温するためのウォータヒータ装置等の種々の装置に利用されるグロープラグに、上記実施例のヒータモジュールを適用可能である。
【0072】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。