特許第6101147号(P6101147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6101147-樹脂組成物 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101147
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20170313BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170313BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170313BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170313BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20170313BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20170313BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C08G18/22
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J7/02 Z
   C08L101/06
   C08K5/29
   C08J5/18
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-105828(P2013-105828)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-43550(P2014-43550A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-169353(P2012-169353)
(32)【優先日】2012年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】伊関 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】徐 創矢
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅彦
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−76426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/22
C08K 5/29
C08L 101/06
C09J 7/02
C09J 11/06
C09J 175/04
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OH基を2個以上有するポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および触媒(C)を含む、樹脂組成物であって、
該ポリオール(A)100重量部に対する該多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合が1重量部〜100重量部であり、
該ポリオール(A)が、2種類以上のポリオールであって、その少なくとも1種類がOH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールであり、別の少なくとも1種類がOH基を3個以上有する数平均分子量Mnが400〜3200のポリオールであり、
該ポリオール(A)が、該OH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールを、50重量%以上含有し、
該触媒(C)が鉄錯体化合物である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記触媒(C)がトリス(アセチルアセトナート)鉄である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)が、前記OH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールを、67重量%以上含有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項に記載の粘着剤組成物を硬化させて得られる粘着剤層。
【請求項6】
基材層の少なくとも片面に請求項に記載の粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項7】
基材層の片面に請求項に記載の粘着剤層を有する、表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に高い反応性を有する樹脂組成物に関する。本発明は、また、そのような樹脂組成物を含む粘着剤組成物に関する。本発明は、また、そのような粘着剤組成物を用いて形成される、透明性が高い粘着剤層に関する。本発明は、さらに、そのような粘着剤層を有する粘着シートや表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD、有機EL、これらを用いたタッチパネル、カメラのレンズ部、電子機器などの光学部材や電子部材は、加工、組立、検査、輸送などの際の表面の傷付き防止等のために、一般に、露出面側に粘着シートや表面保護フィルムが貼着されることがある。このような粘着シートや表面保護フィルムは、表面保護の必要がなくなった等の時点で、光学部材や電子部材から剥離される。
【0003】
このような粘着シートや表面保護フィルムは、光学部材や電子部材の製造工程から、組立工程、検査工程、輸送工程などを経て、最終出荷されるまで、同じものを使用し続けるケースが多くなってきている。この場合、このような粘着シートや表面保護フィルムは、各工程において、手作業によって貼着、剥離、再貼着される場合が多い。
【0004】
手作業によって粘着シートや表面保護フィルムを貼着する場合、被着体と粘着シートや表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込むことがある。このため、貼着の際に気泡を巻き込まないように、粘着シートや表面保護フィルムの濡れ性を向上させる技術がいくつか報告されている。例えば、濡れ速度の速いシリコーン樹脂を粘着剤層に用いた粘着シートや表面保護フィルムが知られている。しかし、シリコーン樹脂を粘着剤層に用いた場合、その粘着剤成分が被着体を汚染しやすく、光学部材や電子部材などの特に低汚染が要求される部材の表面を保護するための粘着シートや表面保護フィルムとして用いるには問題がある。
【0005】
粘着剤成分に由来する汚染の少ない粘着シートや表面保護フィルムとして、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた粘着シートや表面保護フィルムが知られている。しかし、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた粘着シートや表面保護フィルムは、濡れ性に劣るため、手作業によって貼着する場合、被着体と粘着シートや表面保護フィルムとの間に気泡を巻き込むことがある。また、アクリル系樹脂を粘着剤層に用いた場合、剥離時に糊カスが発生しやすいという問題があり、光学部材や電子部材などの特に異物混入を嫌う部材の表面を保護するための粘着シートや表面保護フィルムとして用いるには問題がある。
【0006】
優れた濡れ性、低汚染性、糊カス低減を両立し得る粘着シートや表面保護フィルムとして、最近、ポリウレタン系樹脂を粘着剤層に用いた粘着シートや表面保護フィルムが報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ポリウレタン系樹脂は、ポリオールを多官能イソシアネート化合物によって架橋反応させることによって得られる。このような架橋反応は、時間とともに進行し、安定化するまでにある程度の時間が必要となる。また、架橋反応の進行にともなって、発現される粘着力も変化する。このため、安定した粘着力を発現する粘着剤層を得るためには、粘着剤層を形成させる材料である粘着剤組成物について、できるだけ速やかに架橋反応を完了させることが必要となる。ポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応を速やかに完了させるために、従来、ジブチル錫ジラウレートやジオクチル錫ジラウレートなどの錫化合物が触媒として用いられている。しかしながら、近年の環境対応の観点により、錫などの特定金属の使用に対して規制がかけられるようになっている。
【0008】
以上のことから、ポリウレタン系樹脂を含む粘着剤層を形成させる材料である粘着剤組成物となり得る樹脂組成物であって、錫化合物を触媒に用いることなく、非常に高い反応性を示し、ポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行して粘着剤層を提供できる、樹脂組成物が求められる。
【0009】
また、粘着シートや表面保護フィルムには、透明性が要求されることが多い。粘着シートや表面保護フィルムの透明性が高いことにより、例えば、光学部材や電子部材の表面に貼着した状態で正確に検査などを行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−182795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ポリウレタン系樹脂を含む粘着剤層を形成させる材料である粘着剤組成物となり得る樹脂組成物であって、錫化合物を触媒に用いることなく、非常に高い反応性を示し、ポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行して透明性が高い粘着剤層を提供できる、樹脂組成物を提供することにある。また、そのような樹脂組成物からなる粘着剤組成物を提供することにある。また、そのような粘着剤組成物を用いて形成される透明性が高い粘着剤層を提供することにある。さらに、そのような粘着剤層を有する粘着シートや表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、
OH基を2個以上有するポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および触媒(C)を含む、樹脂組成物であって、
該ポリオール(A)100重量部に対する該多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合が1重量部〜100重量部であり、
該触媒(C)が鉄錯体化合物である。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記触媒(C)が鉄キレート化合物である。
【0014】
本発明の粘着剤組成物は、本発明の樹脂組成物を含む。
【0015】
本発明の粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を硬化させて得られる。
【0016】
本発明の粘着シートは、基材層の少なくとも片面に本発明の粘着剤層を有する。
【0017】
本発明の表面保護フィルムは、基材層の片面に本発明の粘着剤層を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ポリウレタン系樹脂を含む粘着剤層を形成させる材料である粘着剤組成物となり得る樹脂組成物であって、錫化合物を触媒に用いることなく、非常に高い反応性を示し、ポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行して透明性が高い粘着剤層を提供できる、樹脂組成物を提供することができる。また、そのような樹脂組成物からなる粘着剤組成物を提供することができる。また、そのような粘着剤組成物を用いて形成される透明性が高い粘着剤層を提供することができる。さらに、そのような粘着剤層を有する粘着シートや表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪A.樹脂組成物≫
本発明の樹脂組成物は、OH基を2個以上有するポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および触媒(C)を含む。ポリオール(A)のOH基の数の上限は特に限定されないが、例えば、好ましくは10個以下であり、より好ましくは8個以下であり、さらに好ましくは6個以下であり、特に好ましくは4個以下である。
【0021】
本発明の樹脂組成物においては、ポリオール(A)100重量部に対する多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合が1重量部〜100重量部であり、好ましくは3重量部〜80重量部であり、より好ましくは5重量部〜60重量部であり、さらに好ましくは10重量部〜50重量部であり、特に好ましくは12重量部〜48重量部である。ポリオール(A)100重量部に対する多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の樹脂組成物は非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行し、また、透明性の高い粘着剤層を形成し得る。
【0022】
本発明の樹脂組成物においては、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは1.0〜5.0であり、より好ましくは1.3〜4.2であり、さらに好ましくは1.4〜3.8であり、特に好ましくは1.5〜3.5である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0023】
本発明の樹脂組成物においては、触媒(C)が鉄錯体化合物である。触媒(C)として鉄錯体化合物を採用することにより、本発明の樹脂組成物は非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行し、また、透明性の高い粘着剤層を形成し得る。
【0024】
本発明の樹脂組成物においては、触媒(C)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0025】
鉄錯体化合物としては、例えば、一般式(1):Fe(X)a(Y)b(Z)cとして表される化合物が挙げられる。ここで、一般式(1)において、a、b、cは、それぞれ0〜3の整数であり、a+b+c=3またはa+b+c=2である。また、一般式(1)において、(X)、(Y)、(Z)は、それぞれFeに対する配位子である。X、Y、Zとしては、例えば、β−ジケトン、β−ケトエステルなどが挙げられる。
【0026】
X、Y、Zがβ−ジケトンの場合、該β−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、ノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、1−フェニルブタン−1,3−ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0027】
X、Y、Zがβ−ケトエステルの場合、該β−ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸n−ブチル、プロピオニル酢酸sec−ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物においては、触媒(C)として、鉄錯体化合物の中でも、鉄キレート化合物が好ましい。このような鉄キレート化合物としては、β−ジケトンを配位子として有する鉄キレート化合物が好ましく、トリス(アセチルアセトナート)鉄がより好ましい。触媒(C)として、このような化合物を採用することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0029】
本発明の樹脂組成物においては、ポリオール(A)100重量部に対する触媒(C)の含有割合が、好ましくは0.0005重量部〜0.5重量部であり、より好ましくは0.0006重量部〜0.4重量部であり、さらに好ましくは0.008重量部〜0.2重量部であり、特に好ましくは0.01重量部〜0.1重量部である。ポリオール(A)100重量部に対する触媒(C)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。ポリオール(A)100重量部に対する触媒(C)の含有割合が多すぎると、樹脂組成物のままの状態での保存段階において粘度上昇が生じやすく、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成したときの粘着特性に悪影響を与えるおそれがある。ポリオール(A)100重量部に対する触媒(C)の含有割合が少な過ぎると、架橋反応の進行が遅くなり、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成したときの粘着特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0030】
ポリオール(A)は、1種類のみであっても良いし、2種類以上であっても良い。本発明においては、ポリオール(A)が1種類のみであっても十分に本発明の効果を発現できるが、ポリオール(A)が2種類以上のポリオールである場合には、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0031】
ポリオール(A)が1種類のみの場合、ポリオール(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは500〜20000であり、より好ましくは800〜15000であり、特に好ましくは1000〜12000である。このようなポリオール(A)を採用することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0032】
ポリオール(A)が2種類以上のポリオールである場合、2種類以上のポリオールは、好ましくは、その少なくとも1種類がOH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールであり、その少なくとも1種類がOH基を3個以上有する数平均分子量Mnが400〜3200のポリオールであり、より好ましくは、その少なくとも1種類がOH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3500〜12000のポリオールであり、その少なくとも1種類がOH基を3個以上有する数平均分子量Mnが400〜3200のポリオールである。このようなポリオール(A)を採用することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0033】
ポリオール(A)が2種類以上のポリオールである場合、ポリオール(A)は、OH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールを、好ましくは50重量%以上含有し、より好ましくは55重量%以上含有し、さらに好ましくは60重量%以上含有し、さらに好ましくは62重量%以上含有し、特に好ましくは65重量%以上含有し、最も好ましくは67重量%以上含有する。このようなポリオール(A)を採用することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0034】
ポリオール(A)が2種類以上のポリオールである場合、ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個以上有する数平均分子量Mnが3200〜20000のポリオールは、その数平均分子量Mnが、好ましくは3200〜18000であり、より好ましくは3500〜16000であり、さらに好ましくは3500〜14000であり、特に好ましくは3500〜12000である。ポリオール(A)中に含み得るOH基を2個以上有するポリオールの数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することにより、本発明の樹脂組成物はより非常に高い反応性を示し、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0035】
ポリオール(A)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
【0037】
ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0038】
酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、ダイマー酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0040】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、σ−バレーロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0041】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0042】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0043】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種類のみであっても良いし、2種類以上であっても良い。
【0044】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(B)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0045】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート,1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート,1,3−シクロへキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート,水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
多官能芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソソアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、多官能芳香族系ジイソシアネート化合物が好ましい。多官能イソシアネート化合物(B)として多官能芳香族系ジイソシアネート化合物を採用することにより、樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成してそれを有する粘着シートや表面保護フィルムとした際に、白化を抑制でき、高い透明性を付与できる。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)を含んでいても良い。ケト−エノール互変異性とは、一般に良く知られているように、カルボニル化合物のα−炭素原子に結合している水素原子がカルボニル基の酸素原子に移る、いわゆるエノール化としても知られている異性化である。本発明の樹脂組成物がケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)を含むことにより、触媒(C)との作用によって、樹脂組成物のままの状態での保存段階におけるポットライフを十分に長くでき、他方、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応が速やかに進行する。
【0050】
ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)としては、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、ノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、1−フェニルブタン−1,3−ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸などのβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸n−ブチル、プロピオニル酢酸sec−ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどのβ−ケトエステル類;無水酢酸などの酸無水物類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、メチルフェニルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;などが挙げられる。
【0051】
本発明の樹脂組成物においては、ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)として、β−ジケトン類が好ましく、アセチルアセトンがより好ましい。ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)として、このような化合物を採用することにより、樹脂組成物のままの状態での保存段階におけるポットライフをより一層十分に長くでき、他方、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより一層速やかに進行する。
【0052】
本発明の樹脂組成物がケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)を含む場合、該化合物(D)と触媒(C)との含有割合は、モル比で、化合物(D)/触媒(C)が、好ましくは0.006〜300であり、より好ましくは0.007〜100であり、さらに好ましくは0.008〜20であり、さらに好ましくは0.009〜1.1であり、さらに好ましくは0.010〜1.0であり、さらに好ましくは0.010〜0.9であり、特に好ましくは0.010〜0.8であり、最も好ましくは0.010〜0.7である。化合物(D)と触媒(C)との含有割合を上記範囲内に調整することにより、樹脂組成物のままの状態での保存段階におけるポットライフをより一層十分に長くでき、他方、該樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより一層速やかに進行する。また、特に、化合物(D)/触媒(C)のモル比が、0.006〜0.7の範囲内にあれば、樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成してそれを有する粘着シートや表面保護フィルムとした際に、白化を効果的に抑制でき、非常に高い透明性を付与できる。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、任意の適切な溶剤を含む。本発明の樹脂組成物の固形分(溶剤を除いた成分)中の、OH基を2個以上有するポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、および触媒(C)の合計量の含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは98重量%〜100重量%である。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の他の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤などが挙げられる。
【0055】
≪B.粘着剤組成物および粘着剤層≫
本発明の粘着剤組成物は、本発明の樹脂組成物を含む。本発明の粘着剤組成物中の本発明の樹脂組成物の含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%であり、より好ましくは70重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは90重量%〜100重量%であり、特に好ましくは95重量%〜100重量%であり、最も好ましくは98重量%〜100重量%である。本発明の粘着剤組成物中の本発明の樹脂組成物の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の粘着剤組成物はより非常に高い反応性を示し、該粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成させる際にはポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行し、また、透明性のより高い粘着剤層を形成し得る。
【0056】
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の樹脂組成物以外の、任意の適切な成分を含み得る。このような成分としては、例えば、任意の適切な樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤などが挙げられる。
【0057】
本発明の粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物を硬化させて得られる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物を硬化させて本発明の粘着剤層を得る方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など一般的に用いられる方法を採用し得る。粘着剤層は、任意の適切な支持体上に塗布して形成して得ることができる。この場合、表面保護フィルムの基材層となる部材を支持体として用いても良いし、他の任意の適切な支持体上に形成して得た粘着剤層を、最終的に、表面保護フィルムの基材層となる部材上に転写して、表面保護フィルムとしても良い。
【0059】
本発明の粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコートなどが挙げられる。
【0060】
本発明の粘着剤層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは3μm〜800μmであり、さらに好ましくは5μm〜500μmである。本発明の粘着剤層を表面保護フィルムに用いる場合には、粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜100μmであり、より好ましくは3μm〜50μmであり、さらに好ましくは5μm〜30μmである。
【0061】
本発明の粘着剤層は、透明性が高いことが好ましい。本発明の粘着剤層の透明性が高いことにより、光学部材や電子部材の表面に貼着した状態で正確に検査などを行うことが可能となる。本発明の粘着剤層は、ヘイズが、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0062】
本発明の粘着剤層は、形成直後の室温におけるゲル分率が、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、特に好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。本発明の粘着剤層の形成直後の室温におけるゲル分率を上記範囲内に調整することにより、本発明の粘着剤層はポリオールと多官能イソシアネート化合物の架橋反応がより速やかに進行して得られたものとなり、また、透明性のより高い粘着剤層となり得る。
【0063】
≪C.粘着シートおよび表面保護フィルム≫
本発明の粘着シートは、基材層の少なくとも片面に本発明の粘着剤層を有する。本発明の表面保護フィルムは、基材層の片面に本発明の粘着剤層を有する。
【0064】
図1は、本発明の好ましい実施形態による表面保護フィルムの概略断面図である。表面保護フィルム10は、基材層1と粘着剤層2を備える。本発明の表面保護フィルムは、必要に応じて、任意の適切な他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。
【0065】
基材層1の粘着剤層2を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材層に、脂肪酸アミド、ポリエチレンイミン、長鎖アルキル系添加剤等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層を設けたりすることができる。
【0066】
本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、離型性を有する剥離ライナーが貼り合わせられていても構わない。
【0067】
本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。
【0068】
本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、透明性が高いことが好ましい。本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムの透明性が高いことにより、光学部材や電子部材の表面に貼着した状態で正確に検査などを行うことが可能となる。本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、ヘイズが、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、最も好ましくは1%以下である。
【0069】
基材層の厚みとしては、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは5μm〜300μmであり、より好ましくは10μm〜250μmであり、さらに好ましくは15μm〜200μmであり、特に好ましくは20μm〜150μmである。
【0070】
基材層は、単層でも良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層は、延伸されたものであっても良い。
【0071】
基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。基材層は、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。
【0072】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体;などが挙げられる。
【0073】
基材層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。基材層に含有され得る添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材層に含有され得る添加剤の種類、数、量は、目的に応じて適切に設定され得る。特に、基材層の材料がプラスチックの場合は、劣化防止等を目的として、上記の添加剤のいくつかを含有することが好ましい。耐候性向上等の観点から、添加剤として特に好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤が挙げられる。
【0074】
酸化防止剤としては、任意の適切な酸化防止剤を採用し得る。このような酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。酸化防止剤の含有割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは1重量部以下であり、より好ましくは0.5重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.2重量部である。
【0075】
紫外線吸収剤としては、任意の適切な紫外線吸収剤を採用し得る。このような紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.5重量部である。
【0076】
光安定剤としては、任意の適切な光安定剤を採用し得る。このような光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。光安定剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜0.5重量部である。
【0077】
充填剤としては、任意の適切な充填剤を採用し得る。このような充填剤としては、例えば、無機系充填剤などが挙げられる。無機系充填剤としては、具体的には、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。充填剤の含有割合は、基材層を形成するベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部〜10重量部である。
【0078】
さらに、添加剤としては、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系、低分子量系および高分子量系帯電防止剤も好ましく挙げられる。特に、汚染、粘着性維持の観点から、高分子量系帯電防止剤やカーボンが好ましい。
【0079】
本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、任意の適切な用途に用い得る。好ましくは、本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、光学部材または電子部材の表面保護に用いられる。
【0080】
本発明の粘着シートおよび表面保護フィルムは、任意の適切な方法により製造することができる。このような製造方法としては、例えば、
(1)粘着剤層の形成材料(例えば、本発明の粘着剤組成物)の溶液や熱溶融液を基材層上に塗布する方法、
(2)それに準じ、セパレーター状に塗布、形成した粘着剤層を基材層上に移着する方法、
(3)粘着剤層の形成材料(例えば、本発明の粘着剤組成物)を基材層上に押出して形成塗布する方法、
(4)基材層と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、
(5)基材層上に粘着剤層を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、
(6)粘着剤層とフィルムやラミネート層等の基材層形成材料とを二層または多層ラミネートする方法、
などの、任意の適切な製造方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。なお、「部」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量部」を意味し、「%」と記載されている場合は、特記事項がない限り「重量%」を意味する。
【0082】
<評価用表面保護フィルムの作製>
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=38μm)上に、配合直後の樹脂組成物からなる粘着剤組成物を塗布し、130℃で30秒間乾燥することにより溶剤を除去することによって、PETフィルム上に粘着剤層(厚さ=10μm)を形成し、その後、離型剤で表面処理した離型フィルムで覆い、50℃で12時間放置した後に室温(25℃)で1時間放置し、評価用表面保護フィルムとした。
【0083】
<粘着力の測定>
評価用表面保護フィルムについて粘着力を測定した。すなわち、作製した評価用粘着保護フィルムを、幅20mm、長さ100mmのサイズにカットし、粘着剤層面をガラス(松浪ガラス(株)社製、商品名「青板切断品」、厚さ1.35mm、縦100mm×横100mm、縁磨)の非スズ面に、2kgローラーを転がして一往復する方法で圧着して粘着力評価用サンプルとした。この粘着力評価用サンプルを、23℃×50%RHの測定環境下に30分放置後、さらに50℃で4日間放置した後に、引張試験機を用いて、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力(N/20mm)を測定した。
【0084】
<透明性の評価>
評価用表面保護フィルムについて、さらに50℃で4日放置した後に、ヘイズメーターHM−150(株式会社村上色彩技術研究所製)を使用し、JIS−K−7136に準拠し、ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。
【0085】
<ゲル分率の測定>
離型剤で表面処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ=38μm)上に配合直後の樹脂組成物からなる粘着剤組成物を塗布し、130℃で30秒間乾燥することにより溶剤を除去して、粘着剤層(厚さ=10μm)を形成した。その後、粘着剤層を離型剤で表面処理した離型フィルムで覆い、ゲル分率測定用サンプルを得た。
得られたゲル分率測定用サンプルを作製して4時間以内に粘着剤層をW1g(約0.1g)取出し、酢酸エチルに約25℃下で1週間浸漬した。その後、浸漬処理した粘着剤層を酢酸エチル中から取出し、130℃で2時間乾燥後の重量W2gを測定し、(W2/W1)×100(%)として計算される値をゲル分率とした。
【0086】
〔実施例1〕
ポリオール(A)として、OH基を3個有する数平均分子量Mnが10000のポリオール(旭硝子株式会社製、プレミノールS3011)100重量部に対し、多官能イソシアネート化合物(B)として、多官能脂環族系イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体)(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートHX)9.8重量部、触媒(C)としてトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)0.04重量部を添加し、さらに酢酸エチルで固形分濃度が35重量%になるよう希釈後、攪拌して、樹脂組成物(1)を得た。
得られた樹脂組成物(1)を粘着剤組成物(1)とし、樹脂組成物(1)または粘着剤組成物(1)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0087】
〔実施例2〕
ポリオール(A)として、OH基を3個有する数平均分子量Mnが2000のポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセルL320AL)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(2)を得た。
得られた樹脂組成物(2)を粘着剤組成物(2)とし、樹脂組成物(2)または粘着剤組成物(2)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0088】
〔実施例3〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有する数平均分子量Mnが2000のポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセルCD220PL)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(3)を得た。
得られた樹脂組成物(3)を粘着剤組成物(3)とし、樹脂組成物(3)または粘着剤組成物(3)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0089】
〔実施例4〕
ポリオール(A)として、OH基を2個有する数平均分子量Mnが5500のポリオール(旭硝子株式会社製、プレミノールS4006)70重量部、OH基を3個有する数平均分子量Mnが1500のポリオール(三洋化成株式会社製、サンニックスGP−1500)18重量部、OH基を4個有する数平均分子量Mnが1100のポリオール(旭電化株式会社製、EDP−1100)12重量部に対し、多官能イソシアネート化合物(B)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)40重量部、触媒(C)としてトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)0.04重量部を添加し、さらに酢酸エチルで固形分濃度が35重量%になるよう希釈後、攪拌して、樹脂組成物(4)を得た。
得られた樹脂組成物(4)を粘着剤組成物(4)とし、樹脂組成物(4)または粘着剤組成物(4)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0090】
〔実施例5〕
ポリオール(A)として、OH基を3個有する数平均分子量Mnが10000のポリオール(旭硝子株式会社製、プレミノールS3011)85重量部、OH基を3個有する数平均分子量Mnが3000のポリオール(三洋化成株式会社製、サンニックスGP−3000)12重量部、OH基を3個有する数平均分子量Mnが1000のポリオール(三洋化成株式会社製、サンニックスGP−1000)3重量部に対し、多官能イソシアネート化合物(B)として、多官能脂環族系イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体)(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートHX)15重量部、触媒(C)としてトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業株式会社製、商品名:ナーセム第2鉄)0.04重量部を添加し、さらに酢酸エチルで固形分濃度が35重量%になるよう希釈後、攪拌して、樹脂組成物(5)を得た。
得られた樹脂組成物(5)を粘着剤組成物(5)とし、樹脂組成物(5)または粘着剤組成物(5)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0091】
〔比較例1〕
触媒(C)として、トリス(アセチルアセナート)アルミニウム(Al(acac))(川研ファインケミカル株式会社製、商品名:アルミキレートA(W))0.04重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(C1)を得た。
得られた樹脂組成物(C1)を粘着剤組成物(C1)とし、樹脂組成物(C1)または粘着剤組成物(C1)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0092】
〔比較例2〕
触媒(C)として、2−エチルヘキシル酸第二鉄(Fe(2eh))(日本化学産業株式会社製、商品名:ニッカオクチックス鉄6%(T))0.055重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(C2)を得た。
得られた樹脂組成物(C2)を粘着剤組成物(C2)とし、樹脂組成物(C2)または粘着剤組成物(C2)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0093】
〔比較例3〕
触媒(C)として、ナフテン酸第一鉄(Fe(nap))(日本化学産業株式会社製、商品名:ナフテックス鉄5%(T))0.035重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(C3)を得た。
得られた樹脂組成物(C3)を粘着剤組成物(C3)とし、樹脂組成物(C3)または粘着剤組成物(C3)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0094】
〔比較例4〕
触媒(C)としてジオクチルスズジラウレート(東京ファインケミカル株式会社製、商品名:エンビライザーOL−1)0.04重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、樹脂組成物(C4)を得た。
得られた樹脂組成物(C4)を粘着剤組成物(C4)とし、樹脂組成物(C4)または粘着剤組成物(C4)について各種評価を行った。
結果を表1に示した。
【0095】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の樹脂組成物を含む粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層を有する粘着シートや表面保護フィルムは、例えば、光学部材や電子部材の表面に貼着して該表面を保護する用途などに用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 基材層
2 粘着剤層
10 表面保護フィルム
図1