(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一方が可動部に支持されて互いに接近し離反するダイならびにカッターと、前記可動部を駆動するモータと、前記モータの回転量を制御して前記ダイと前記カッターとの間に供給されるワークに対するハーフカット深さを調整するモータ駆動部とが設けられたハーフカット装置において、
カッターを予め測定することでカッター毎に得られる個体情報が入力されるカッター情報記憶部と、前記個体情報に基づいて、前記モータの回転量を算出する回転量算出部と、前記カッター情報記憶部に入力すべき前記個体情報を示す情報指示部とが設けられていることを特徴とするハーフカット装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2には、ハーフカットに関する技術が開示されている。ワークに対してハーフカットを適正な深さで形成するためには、カッターの寸法精度が大きく影響を与える。例えば、カッターの刃に歪みが生じていると、カッターとダイとの相対距離を精度よく設定したとしても、ハーフカットの深さを適正に設定することはできない。
【0007】
寸法精度のばらつきの小さなカッターを製造しようすると、個々のカッターが非常に高価なものとなる。一方で、フープ鋼板から切断して加工したカッターなどは比較的低価格であるが、この種のカッターは刃の湾曲などの寸法精度のばらつきが大きくなる。このカッターをハーフカット装置に搭載すると、ハーフカットが浅すぎたり深すぎたりして適正な深さを設定するのが困難になる。また、カッターの寸法精度のばらつきが大きいと、個々の製品ごとに、カッターとダイとの相対距離の調整するときにその調整幅が非常に広くなり、調整作業が煩雑である。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、搭載するカッターの寸法精度に比較的大きなばらつきがあったとしても、ハーフカットの深さを適正に設定することができるハーフカット装置および前記ハーフカット装置を搭載したプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも一方が可動部に支持されて互いに接近し離反するダイならびにカッターと、前記可動部を駆動するモータと、前記モータの回転量を制御して前記ダイと前記カッターとの間に供給されるワークに対するハーフカット深さを調整するモータ駆動部とが設けられたハーフカット装置において、
カッターを予め測定することでカッター毎に得られる個体情報が入力されるカッター情報記憶部と、前記個体情報に基づいて、前記モータの回転量を算出する回転量算出部とが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のハーフカット装置は、カッター毎の個体情報をカッター情報記憶部に入力して記憶させることが可能である。そのため、それぞれのカッターの寸法に応じてモータの回転量を自動的に適正な値に設定することが可能であり、最適なハーフカット深さを実現することができるようになる。
【0011】
本発明のハーフカット装置は、
上記構成においてさらに、前記カッター情報記憶部に入力すべき前記個体情報を示す情報指示部が設けられている
ことを特徴とする。例えば、前記情報指示部では、前記個体情報がバーコードで表示されている。
あるいは、上記構成においてさらに、前記個体情報は、前記カッターの刃に設定される測定点と基準線との距離のデータを
含み、前記可動部に前記カッターが固定されるカッターホルダが設けられており、前記カッターホルダには、カッターの刃に沿う方向へ間隔を空けて前記ダイに当接する一対の規制部が設けられ、前記基準線は、前記規制部と前記ダイとの当接部よりも前記ダイから離れた位置に平行に設定され、前記モータで駆動される押圧駆動部によって、一対の前記規制部の中間で、前記カッターホルダが前記ダイに向けて押圧させられることを特徴とする。
【0012】
上記のように、予めカッターを測定して得られた個体情報をそのカッターを搭載したハーフカット装置に添付して指示しておくことにより、使用しているカッターの個体情報をカッター情報記憶部に間違いなく記憶させることができ、個々のカッターの形状に応じた最適な駆動量で可動部を動作させることができる。
【0014】
また、前記押圧駆動部で押圧されたときに、前記カッターホルダが、一対の前記規制部の中間で弾性歪みを生じることが好ましい。
【0015】
カッターホルダに弾性歪みが生じることで、カッターホルダに固定されたカッターの刃と、ダイとの距離を、刃の寸法のばらつきに応じて矯正することが可能になる。
【0016】
あるいは、上記構成においてさらに、使用されるワークの情報を検知するワーク識別部が設けられており、前記回転量算出部では、前記カッターの個体情報と前記ワーク情報の双方から回転量が算出される
ことを特徴とする。
【0017】
例えば、前記ワーク情報には、前記カッターの刃の延びる方向での前記ワークの幅寸法が含まれる。
【0018】
また、本発明のプリンタは、印字ヘッドとこれに対向するプラテンとを有し、前記印字ヘッドによる印字が完了したワークの進行方向の前方に前記ハーフカット装置が搭載されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明では、前記プリンタに、前記カッター情報記憶部に入力すべき前記個体情報を示す情報指示部が設けられているものとすることが可能である。例えば、前記情報指示部では、前記個体情報がバーコードで表示されている。
【0020】
さらに、本発明は、搭載するカッターを予め測定して得られたデータを含むものであって前記カッター情報記憶部に入力すべき個体情報がプリンタに添付されているものであってもよい。
【0021】
例えば、プリンタの製造番号などのプリンタの識別データと、これに搭載されるカッターの個体情報が記載されたデータシートが添付される。または、前記識別データと前記個体情報とを記憶したICメモリなどの記憶媒体が添付される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のハーフカット装置およびこのハーフカット装置を搭載したプリンタは、使用しているカッターの寸法のばらつきがあっても、常に適正な深さのハーフカットを行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すプリンタ1は、カセット装着部2を有している。カセット装着部2に開口するガイド口3の前方に、印字ヘッド4とプラテンローラ5が設けられており。プラテンローラ5はローラモータ6によって回転駆動され、ガイド口3に供給されたシート状のワークWは、プラテンローラ5と印字ヘッド4との間に挟持され、プラテンローラ5の回転力によって前方へ送り出される。
【0025】
印字ヘッド4の前方に終段ガイド7が設けられ、その前方にフルカット装置8が設けられている。フルカット装置8は、カッターホルダ8aにカッター8bが保持されている。カッター8bの下にカットダイ8cが対向している。カッターホルダ8aがフルカットモータを有する駆動装置で駆動され、印字後のワークWがハーフカットされた後にフルカット装置8でフルカットされる。
【0026】
プリンタ1の前端部にハーフカット装置10が取り付けられている。
図2に示すように、ハーフカット装置10は、カットユニット11と駆動ユニット31とから構成されている。
【0027】
カットユニット11は、金属製のハーフカットダイ12を有している。
図2に示すように、ハーフカットダイ12は取付けねじ13,13によって、プリンタ1のシャーシ部に固定されている。
図3に示すように、ハーフカットダイ12の上面は平坦な受け面12aであり、受け面12aは、フルカット装置8のカットダイ8cの上面と同一面上に位置しており、プリンタ1のワーク搬送基準面と平行に位置している。
【0028】
図2に示すように、カットユニット11に可動部14が設けられている。可動部14は、金属製の回動部材15と金属製のカッターホルダ16とで構成されている。回動部材15とカッターホルダ16との間にカッター17が保持されている。
図3に示すように、カッター17には3か所の保持穴17bが開口している。一方、
図2に示す回動部材15には、保持穴17bと対向する位置に支持穴が開口しており、カッターホルダ16に保持穴17bと対向する雌ねじ穴が形成されている。
【0029】
カッター17が回動部材15とカッターホルダ16との間に挟まれた状態で、回動部材15の支持穴とカッター17の保持穴17bに
図2に示す固定ねじ13が挿入されてカッターホルダ16の雌ねじ穴に螺着される。これにより、カッター17が、回動部材15とカッターホルダ16との間に挟持される。カッター17の保持穴17bの内径寸法と、固定ねじ13のねじ山の直径とがほぼ一致しており、保持穴17bに固定ねじ13が挿通されることによって、カッター17はカッターホルダ16に位置決めされて固定される。
【0030】
図3に示すように、カッターホルダ16の下部には、カッター17の下端縁の刃17aに沿う方向へ間隔を空けて一対の規制部16a,16aが一体に形成されている。規制部16aと規制部16aとの間には逃げ凹部16bが形成されている。カッター17がカッターホルダ16に位置決めされて固定された状態では、刃17aが逃げ凹部16bの上縁よりも下側に位置し、刃17aは規制部16aよりも上側に位置している。
【0031】
図2に示すように、回動部材15の右端部は、プリンタ1の内部に固定された支持軸21に回動自在に支持されている。支持軸21の外周にトーションばねで構成されたばね部材22が装着されており、このばね部材22によって、可動部14は、カッター17がハーフカットダイ12から離れる方向へ付勢されている。
図3は、カッター17がハーフカットダイ12から最も離れた状態を示しており、カッターホルダ16は
図3に示す角度以上は開かないようにストッパで止められている。
【0032】
図2に示すように、可動部14に加圧カム23が設けられている。
図3に示すように、カッターホルダ16には上向きの支持突起16cが一体に形成されており、加圧カム23が支持突起16cに嵌着されて固定されている。加圧カム23は、支持軸21に向く側に突曲面状の加圧面23aを有している。
【0033】
図2に示すように、駆動ユニット31は駆動回転体32を有している。
図1に示すように、駆動回転体32はプリンタ1の上部に設置されており、支持軸33に回転自在に支持されている。駆動回転体32の外周には歯32aが形成されている。プリンタ1には減速歯車34,35が設けられ、減速歯車34の下部のピニオン部が駆動回転体32の歯32aに噛み合っている。また、減速歯車34と35も互いに噛み合っている。
【0034】
図2に示すように、プリンタ1にはハーフカット駆動モータ36が設けられている。ハーフカット駆動モータ36の回転軸にウオーム歯車37が固定されており、このウオーム歯車37が減速歯車35に噛み合っている。ハーフカット駆動モータ36の回転力は減速歯車34,35で減速されて駆動回転体32に伝達される。
図5に示すように、ハーフカット駆動モータ36の出力軸に回転量検出部41が接続されており、出力軸の回転量を検知できるようになっている。回転量検出部41は、ハーフカット駆動モータ36の出力軸と共に回転する磁石と、磁石からの磁界を検知する磁気検知素子とから構成されている。あるいは、出力軸と共に回転するシャッタが光学検知素子で検知されるものあってもよい。
【0035】
図2に示すように、駆動ユニット31に駆動レバー38が設けられている。駆動レバー38は支持軸39を支点として回動自在に支持されている。駆動レバー38の基部に設けられたフォロワー部38aが、駆動回転体32の上に形成されたカム溝である駆動カム32bに挿入されている。また、駆動レバー38の先部の折曲げ部によって押圧駆動部38bが形成されている。
【0036】
駆動回転体32が回転すると、駆動カム32bによって駆動レバー38がα方向へ回動させられ、押圧駆動部38bで加圧カム23の加圧面23aが押される。これにより、可動部14が下向きに回動させられ、カッターホルダ16の規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け面12aに突き当てられる。
【0037】
図7と
図8に示すように、規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け面12aに突き当てられた後に駆動回転体32をα方向へ回動させると、駆動レバー38の押圧駆動部38bが加圧面23aに乗り上がろうとし、カッターホルダ16に下向きの押圧駆動力Fが与えられる。
【0038】
前記押圧駆動力Fは、カッターホルダ16の規制部16aと規制部16aとの間に作用する。そのため、規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け面12aに突き当てられた後に、駆動レバー38をα方向へ回動させて押圧駆動力Fを増加させると、金属製のカッターホルダ16には、規制部16aと規制部16aとの間で下向きにわずかな弾性歪みが発生する。
【0039】
また、受け面12aに設置されるワークWの厚さやカッター17の刃17aの形状によっては、規制部16aと規制部16aとの間で、カッターホルダ16に上向きに弾性歪みを発生させることも可能である。
【0040】
図5に示すように、ハーフカット装置10の制御回路には、ハーフカット駆動モータ36の回転を制御するモータ駆動部(モータドライバ)42が設けられている。ハーフカット駆動モータ36の回転量を検出する回転量検出部41からの出力はモータ駆動部42に与えられる。
【0041】
制御回路には、制御部として回転量算出部43が設けられている。カッター情報記憶部44には、ハーフカット装置10に取り付けられているカッター17の歪や変形を数値化した個体情報が記憶される。
図1に示すように、プリンタ1のカセット装着部2にはカセットセンサー45が取り付けられており、このカセットセンサー45からの検知出力がワーク識別部46に格納される。回転量算出部43は、カッター情報記憶部44に記憶されているカッター17の個体情報と、ワーク識別部46で識別されたワーク情報に基づいて、ハーフカット駆動モータ36の適正な回転量を算出する。
【0042】
図1に示すように、プリンタ1のカセット装着部2にテープカセット50が装填される。テープカセット50の内部のテープリールにテープ原反51が回転自在に保持されている。テープ状のワークWは、テープ原反51から引き出されてガイド口3に供給される。
【0043】
テープ状のワークWは幅寸法が相違するものが複数種類使用される。
図4には、幅寸法B1が最長であるワークW1と、幅寸法B2が最短であるワークW2とが示されている。ワークWは、粘着剤層53を有するラベルテープ52と、前記粘着剤層53を覆う離型テープ54とが重ねられて構成されている。一般に、ラベルテープ52の厚さt1は200μm程度、粘着剤層53の厚さt2は20μm程度で、離型テープ54の厚さt3は60μm程度である。
【0044】
図1に示すように、テープカセット50には識別部55が設けられており、テープカセット50がカセット装着部2に装填されると、プリンタ1に設けられたカセットセンサー45が識別部55に接触する。識別部55はICなどで構成されており、そのテープカセット50に収納されているテープ状ワークWの幅寸法などのワーク情報が記憶されている。このワーク情報はカセットセンサー45で読み出され、
図5に示すワーク識別部46に格納される。
【0045】
次に、カッター17の個体情報の測定からハーフカット装置10によるハーフカット動作までの流れを
図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0046】
図9に示す第1のプロセスP1は、ハーフカット装置10とプリンタ1の組立ならびに調整工程において行われる。
【0047】
第1のプロセスP1のST1(ステップ1)では、カッター17の刃17aの歪や変形の測定が行われる。
図6にその測定方法が示されている。
【0048】
ハーフカット装置10に使用されるカッター17は、例えばフープ鋼材から切断されて加工されたものであり、刃17aの直線度の公差が大きくなっている。
【0049】
図6(A)に示す測定方向では、テーブル60の上に設置された一対の基準治具61,61の上に、カッター17の刃17aが下向きに設置される。カッター17の長手方向の寸法を二分する中心の測定点17cの付近、すなわち2つの基準治具61,61の距離の中心付近で、刃17aの一部を含むスポットSがカメラで撮影される。
図6(B)に示すように、このスポットSが画像処理され、基準線(基準水平線)Hから、刃17aの中心の測定点17cまでの垂直距離hが計測される。
【0050】
基準線Hは、2つの基準治具61の先端の刃支持部61aを結んだ水平線である。基準線Hは本来の刃17aが位置すべき直線であり、カッターホルダ16の規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け部12aに当接したときに、基準線Hは受け面12aから離れた位置で、受け面12aと平行に位置する。
【0051】
図6に示す例では、カッター17は刃17aが下向きに突形状となるように歪んでおり、基準線Hと刃17aの測定点17cとの間の距離(誤差:公差)hがプラスである。逆に、刃17aが凹形状に歪んでいるときは、基準線Hと測定点17cとの距離hがマイナスとなる。
【0052】
図9に示すST2では、カッター17ごとに測定された前記距離hを含む固定情報が、そのカッター17を組み込んだハーフカット装置10に付与される。
図2に示す例では、ハーフカット装置10に情報指示部62が設けられている。この情報指示部62には、前記距離hを含むカッター17の個体情報がバーコードで指示されている。
【0053】
または、ハーフカット装置10を組み込んだプリンタ1にバーコード指示などの情報指示部62が設けられていてもよい。
【0054】
情報指示部62は、個々のハーフカット装置10に搭載されているカッター17の刃17aの歪や変形を表す寸法情報である個体情報を指示するものである。情報指示部62は、バーコードである必要はなく、個体情報を記憶したICなどであってもよい。
【0055】
さらには、カッター17の個体情報と、そのカッター17を搭載するプリンタ1の製造番号などのプリンタの識別データとが記載されたデータシートがプリンタ1またはハーフカット装置10単体に添付されていてもよい。または、前記個体情報と前記識別データとを記憶したICメモリなどの記憶媒体がプリンタ1またはハーフカット装置10単体に添付されてもよい。ここでの添付とは、データシートや記憶媒体が、プリンタ1またはハーフカット装置10単体と一緒に梱包されることなどを意味している。
【0056】
第1のプロセスP1のST3では、
図5に示す回路ブロックを含む回路基板がプリンタ1に取り付けられた後にあるいはその前に、情報指示部62の表示がバーコードリーダなどで読み取られ、前記距離hを含む個体情報が、回路ブロックのカッター情報記憶部44に記憶される。
【0057】
図9に示す第2のプロセスP2は、プリンタ1にテープカセット50が装着された直後の動作準備工程を示している。
【0058】
ST4では、プリンタ1にテープカセット50が装填されると、テープカセット50の識別部55に書き込まれているワーク情報が、プリンタ1に装備されたカセットセンサー45によって読み取られ、ワーク識別部46に送られる。ワーク識別部に送られるワーク情報は、
図4に示すワークWの幅寸法B1,B2や、ラベルテープ52の厚さt1と粘着剤層53の厚さt2ならびに離型テープ54の厚さt3、さらにはラベルシート52の材質(硬さを示すデータ)などである。
【0059】
ST5では、カッター情報記憶部44に記録されている距離hを含む個体情報が回転量算出部43に読み出される。
【0060】
ST6では、回転量算出部43において、カッター情報記憶部44から読み出されたカッター17の刃17aの歪や変形を表す寸法情報である個体情報と、ワーク識別部46で識別されたワーク情報とから、ハーフカット装置10においてカッターホルダ16に作用させる最適な押圧駆動力Fが算出される。さらに最適な押圧駆動力Fを得るために必要となるハーフカット駆動モータ36の回転量(回転角度)が算出される。
【0061】
図9に示す第3のプロセスP3は、プリンタ1とハーフカット装置10の動作を示している。
【0062】
ST7において、プリンタ1の印字動作が開始されると、
図1に示すプラテンローラ5と印字ヘッド4との間でワークWが挟持される。ローラモータ6によってプラテンローラ5が駆動されてワークWが送り出され、印字ヘッド4によってラベルテープ52の表面に文字や数字などが印字される。ST8では、印字完了後に、プラテンローラ5の回転力によって、ワークWの所定箇所がハーフカット位置、すなわちハーフカットダイ12とカッター17の刃17aとで挟まれる位置まで送り出される。
そして、ST9ではハーフカット装置10によってハーフカット動作が行われる。
【0063】
ハーフカット動作では、
図2に示すハーフカット駆動モータ36の駆動力によって駆動回転体32が回転させられ、駆動回転体32の駆動カム32bによって駆動レバー38がα方向へ回動させられる。駆動レバー38の先部に設けられた押圧駆動部38bが、加圧カム23の加圧面23aに乗り上げることによって、可動部14が支持軸21を支点として下向きに押し下げられる。
【0064】
ST9のハーフカット動作では、ST6において算出された回転量に基づいてハーフカット駆動モータ36の出力軸の回転量が決められる。出力軸の回転量は
図5に示す回転量検出部41で検出されてモータ駆動部42にフィードバックされる。これにより、ハーフカット駆動モータ36を、ST6で算出された回転量だけ正確に回転させることができる。
【0065】
図7と
図8に示すように、前記押圧駆動力Fによって可動部14が下降させられると、カッターホルダ16の規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け面12aに当接する。ワークWは、ハーフカットダイ12の逃げ凹部16bとハーフカットダイ12の受け面12aとの間に位置しており、逃げ凹部16bに露出している刃17aによってワークWがその厚み寸法の途中まで切り込まれる。
【0066】
図4に示すように、ワークWがラベルテープ52を有するものである場合、ハーフカット動作において、刃17aによって、ラベルテープ52の厚さt1と粘着剤層53の厚さt2を加えた深さ(t1+t2)を超える位置まで切り込まれ、切り込み深さはワークWの全体の厚さ(t1+t2+t3)未満となるように設定される。
【0067】
図7と
図8では、説明の都合上、カッター17の刃17aの突形状の歪み量と凹形状の歪み量をかなり誇張して図示している。
【0068】
図7は、カッター17の刃17aが下向きの突形状に歪んでいる例、すなわち、
図6に示す距離hがプラスとなる例を示している。
図7(A)では、短幅寸法B2のワークW2がハーフカット処理され、
図7(B)では、長幅寸法B1のワークW1がハーフカット処理されている。
【0069】
図8は、カッター17の刃17aが凹形状に歪んでいる例、すなわち、
図6に示す距離hがマイナスとなる例を示している。
図8(A)では、短幅寸法B2のワークW2がハーフカット処理され、
図8(B)では、長幅寸法B1のワークW1がハーフカット処理されている。
【0070】
図9のST6では、カッター17の個体情報から得られる刃17aの歪みに関する前記距離hと、ワーク情報から得られるワークWの幅寸法Bに基づいて、最適となるハーフカット駆動モータ36の回転量が算出される。この算出値に基づいて駆動回転体32が駆動されて、駆動レバー38のα方向への回動距離が決められる。α方向への回動距離が大きくなるにしたがって、押圧駆動部38bから加圧カム23に与えられる下向きの押圧駆動力Fが増大する。
【0071】
図7と
図8に示すように、押圧駆動力Fは、カッターホルダ16の規制部16aと規制部16aとの間に作用する。2つの規制部16a,16aがハーフカットダイ12の受け面12aに当接している状態で、2つの規制部16a,16aの間で押圧駆動力Fが作用すると、2つの規制部16a,16aの間で金属製のカッターホルダ16に下向きへのわずかな弾性歪みが発生する。また、ワークWの厚さや刃17aの歪み方向によっては、カッターホルダ16が上向きの弾性歪みを発生することもある。
【0072】
押圧駆動力Fを変化させることにより、カッターホルダ16の下方への歪み量が可変させられ、カッター17の刃17aの受け面12aに向けての突っ込み量が変化させられる。これによって、ワークWに対するハーフカットの深さが適正に設定される。
【0073】
図7(A)に示すように、突形状に歪んでいる刃17aで短幅寸法B2のワークW2がハーフカットされるときは、押圧駆動力Fが比較的に弱く設定され、
図7(B)に示すように、長幅寸法B1のワークW1がハーフカットされるときは、
図7(A)よりも押圧駆動力Fがやや強めに設定される。
【0074】
図8に示すように、カッター17の刃17aが凹形状に歪んでいる場合には、
図7(A)(B)よりも押圧駆動力Fが強めに設定される。
図8(B)の長幅寸法B1のワークW1をハーフカット処理するときは、
図8(A)よりもさらに押圧駆動力Fが強めに設定される。
【0075】
ハーフカット処理が完了した後に、ワークが前方に送り出され、
図1に示すフルカット装置8の動作によって、印字が完了しハーフカット処理が完了したワークWが所定長さで完全に切断される。
【0076】
なお、前記実施の形態のハーフカット装置10では、カッター17を保持するカッターホルダ16が可動部14となっているが、ハーフカットダイ12がハーフカット駆動モータで駆動される可動部であってもよい。この場合には、ハーフカットダイ12に規制部16a,16aが形成され、ハーフカットダイ12に対して2つの規制部16a,16aの中間で押圧駆動力Fが与えられ、ハーフカットダイ12が弾性歪みを発生できるようにする。
【0077】
また、カッターホルダ16とハーフカットダイ12の双方が可動部となって駆動されてもよい。