(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101260
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ダルナビル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/34 20060101AFI20170313BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20170313BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170313BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20170313BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20170313BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170313BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
A61K31/34
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P31/12
A61K9/28
A61K47/38
A61K47/12
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-517820(P2014-517820)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公表番号】特表2014-520786(P2014-520786A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】EP2012063242
(87)【国際公開番号】WO2013004816
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2015年5月29日
(31)【優先権主張番号】11173066.9
(32)【優先日】2011年7月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・ユーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デラエト,アーバイン アルフォンズ シー
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ,フィリップ エルナ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンズ,ユージーン マリア ヨゼフ
【審査官】
近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/048604(WO,A1)
【文献】
特表2010−531301(JP,A)
【文献】
特表2010−534222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/34
A61K 9/28
A61K 45/00
A61K 47/12
A61K 47/38
A61P 31/12
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダルナビルまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和化合物、ヒプロメロース、および顆粒化からのあらゆる残留水からなるダルナビル顆粒組成物。
【請求項2】
前記ダルナビルがそのエタノラートの形態で存在し、前記ヒプロメロースが15mPa.sのヒプロメロース2910である、請求項1に記載のダルナビル顆粒組成物。
【請求項3】
約0.4〜0.6重量%(w/w)の潤滑剤、約2〜4重量%(w/w)の崩壊剤、微結晶セルロース、および約50〜90重量%(w/w)の請求項1または2に記載のダルナビル顆粒を含んでなり、コアが任意選択的にフィルムコーティングで被覆される、経口剤形。
【請求項4】
前記微結晶セルロースの少なくとも一部がCeolus KG802である、請求項3に記載の経口剤形。
【請求項5】
前記コアが追加的な活性成分をさらに含んでなる、請求項3または4に記載の経口剤形。
【請求項6】
前記追加的な活性成分がチトクロームP450阻害剤である、請求項5に記載の経口剤形。
【請求項7】
約0.5重量%(w/w)の潤滑剤を含んでなる、請求項3〜6のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項8】
前記崩壊剤(desintegrant)がポリプラスドンXL−10であり、前記潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項3〜7のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項9】
約800mgの遊離形態当量のダルナビルを含んでなる、請求項3〜8のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項10】
−水と15mPa.sのヒプロメロース2910を混合して、この最初の混合物をダルナビルまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和化合物粉末に噴霧し、このように得られたダルナビル顆粒を乾燥させることで、顆粒化ダルナビルを提供するステップと、
−微結晶セルロースおよび崩壊剤を含んでなる、第2の混合物を提供するステップと、
−顆粒化ダルナビルを混合物に添加して、引き続き乾式混合するステップと、
−潤滑剤を添加して、均質になるまで混合するステップと、
−前記混合物を圧搾して経口剤形を提供し、次に前記経口剤形を任意選択的にフィルムコートするステップと
を含んでなる、請求項3〜9のいずれか一項に記載の経口剤形を調製する方法。
【請求項11】
医薬品で使用するための、請求項3〜9のいずれか一項に記載の経口剤形。
【請求項12】
HIV感染症の治療で使用するための、請求項3〜9のいずれか一項に記載の経口剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIV阻害剤ダルナビルの固体経口剤形、およびその複合製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因として知られている、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療は、依然として主要な医療の挑戦である。HIVは免疫学的圧力を回避して、多様な細胞型および増殖条件に適応でき、目下利用できる薬剤療法に対する耐性を生じる。薬剤療法としては、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTI)、HIV−プロテアーゼ阻害剤(PI)、およびより最近の融合阻害剤が挙げられる。
【0003】
HIVの抑制には効果的ではあるが、これらの薬剤のそれぞれは、単独で使用すると、耐性変異株の出現に直面する。これは、通常異なる活性プロファイルを有する、いくつかの抗HIV作用薬の併用療法の導入をもたらした。特に「HAART」(高活性抗レトロウイルス療法)の導入は、抗HIV治療法に顕著な改善をもたらし、HIV関連の罹患率および死亡率の大幅な低下につながった。抗レトロウイルス療法に対する現行のガイドラインは、初期治療のためでさえもこのような三剤併用療法レジメンを推奨する。しかし目下利用できる薬剤療法のいずれも、HIVを完全に根絶できない。HAARTでさえも、頻繁に抗レトロウイルス療法の非アドヒアランスと、非持続に起因する耐性出現に直面する。これらの場合、その成分の1つを別のクラスのものに置換することで、HAARTを再度有効にし得る。正しく適用されれば、HAART併用による治療は最高数10年間の長年にわたり、もはやAIDSの大流行引き起こし得ないレベルまで、ウイルスを抑制し得る。
【0004】
それらの薬物動態特性と、最小値レベルを超える血漿レベルを保つ必要性のために、目下使用される抗HIV薬剤は、比較的高用量での頻繁な投与を必要とする。投与されなくてはならない剤形の数および/または体積は、通常「錠剤負担」と称される。高い錠剤負担は、摂取頻度などの多くの理由から、大型剤形を嚥下しなくてはならない不都合、ならびに多数のまたは大型の丸薬を貯蔵し輸送する必要性と頻繁に相まって、望ましくない。高い錠剤負担は、患者が彼らの全用量を服用せず、その結果処方される投薬計画に従わないリスクを増大させる。治療有効性を低下させるのみならず、これはまたウイルス耐性の出現をももたらす。高い錠剤負担に付随する問題は、患者が異なる抗HIV作用薬の組み合わせ、または薬物動態特性を改善するためのいわゆるブースターと組み合わされた作用薬を服用しなくてはならない場合に、倍増する。
【0005】
比較的小さなサイズを有する高用量形態を提供することは、摂取の便宜に寄与し、したがって錠剤負担の問題の克服もまた助ける。
【0006】
したがって実用的サイズの剤形投与を伴い、さらに頻繁な投薬を要求しない、錠剤負担を低下させるHIV抑制療法を提供することが、望ましいであろう。
【0007】
HAARTで使用されるHIV薬剤の1つのクラスはPIに属し、米国、欧州連合、およびいくつかのその他の国々で認可され、商品名Prezista(商標)の下に入手できる、ダルナビル(TMC114)が挙げられる。ダルナビルは、化学名[(1S,2R)−3−[[(4−アミノフェニル)スルホニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−カルバミン酸(3R,3aS,6aR)−ヘキサヒドロフロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルモノエタノレートを有する、ダルナビルモノエタノレートの形態で目下市販される。その分子式はC
27H
37N
3O
7S・C
2H
5OHで、分子量は593.73であり、以下の化学構造を有する:
【化1】
ダルナビルならびにその調製方法は、全て参照によって本明細書に援用する、欧州特許第715618号明細書、国際公開第99/67417号パンフレット、米国特許第6,248,775号明細書、およびBioorganic and Chemistry Letters,Vol.8、pp.687−690,1998,”Potent HIV protease inhibitors incorporating high−affinity P
2−ligands and (R)(hydroxyethylamino)sulfonamide isostere”で開示される。
【0008】
例えば、ダルナビルと、チトクロームP
450阻害剤などの薬物動態学的ブースターとの改善された組み合わせ製剤が、国際公開第03/049746号パンフレットで開示される。
【0009】
ダルナビルの高用量形態は、不可避的にサイズが大型なので、より高用量のまたは併用剤形は、便宜障壁を上回るサイズになる。高い錠剤負担を低下させるために、剤形あたりのダルナビルの重量%が増大している剤形を実現することが、望ましいであろう。それによって、より高用量の錠剤の作成、または現在の用量の錠剤のサイズ低下のいずれかが容易になるであろう。1つの剤形中に、ダルナビル、特に高用量のダルナビルと、例えばリトナビルなどの薬物動態学的ブースター作用物質とを組み合わせることが、さらに望ましいであろう。
【0010】
600mgの活性成分を含有して、錠剤あたり1250mgの総重量を有するダルナビル錠剤が、国際公開第2009/013356号パンフレットで開示される。経口剤形は、成分の直接圧縮によって形成される。
【0011】
目下市販される600mg錠剤から用量比例的に得られる、より高用量のダルナビル製剤は、それらの大型サイズのために、患者による使用に望ましいと見なされなかった。
【0012】
さらに製剤中のダルナビル百分率を増大させると、直接圧縮法は粗悪な結果をもたらした。このような製剤の限定的な滑りと流動能力のために、粗悪な結果が得られる。これはまた、その他の活性種を製剤に添加した場合にも当てはまる。
【0013】
本発明は、配合前のダルナビルの顆粒化によって、剤形あたり高重量%のダルナビルの装入が促進されるという、意外な発見に基づく。
【0014】
したがって本発明によるダルナビル顆粒化は、なおも許容されるサイズの剤形を有する、単回投与形態中のダルナビルの高い装入量(>80%(w/w))、またはダルナビルと他の活性成分の組み合わせを容易にする。
【0015】
したがって本発明は、潜在的に組み合わせ製剤としての、許容されるサイズのダルナビル剤形の投与を伴う抗HIV治療法を提供し、それによって必要な投薬頻度が低下する。したがって本剤形は、患者の錠剤負担および薬剤服薬遵守の観点から、有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様では、本発明は、ダルナビルまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和化合物、ヒプロメロース、および顆粒化からのあらゆる残留水からなる、ダルナビル顆粒組成物に関する。
【0017】
好ましくは、ダルナビルはそのエタノレートの形態で存在し、ヒプロメロースは15mPa.sのヒプロメロース2910である。
【0018】
別の態様では、本発明は、約0.4〜0.6重量%(w/w)の潤滑剤、約2〜4重量%(w/w)の崩壊剤、微結晶セルロース、および請求項1または2に記載の約50〜90重量%(w/w)のダルナビル顆粒を含んでなる経口剤形に関し、コアは任意選択的にフィルムコーティングで被覆される。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、
−水とヒプロメロースを混合し、この最初の混合物をダルナビルまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和化合物の粉末上に噴霧して、このように得られたダルナビル顆粒を乾燥させることで、顆粒化ダルナビルを提供するステップと、
−微結晶セルロースおよび崩壊剤を含んでなる、第2の混合物を提供するステップと、
−顆粒化ダルナビルを混合物に添加して、引き続き乾式混合するステップと、
−潤滑剤を添加して、均質になるまで混合するステップと、
−混合物を圧搾して経口剤形を提供し、次に前記経口剤形を任意選択的にフィルムコートするステップ
を含んでなる、本発明に従った経口剤形を調製する方法に関する。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、医薬品で使用される、より具体的にはHIV感染症の治療で使用される、本発明に従った経口剤形に関する。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、本発明に従った経口剤形の有効量を対象に投与するステップを含んでなる、対象においてHIV感染症を治療する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、最初にダルナビル顆粒を提供することで製造される、任意選択的にその他の活性成分を含む、ダルナビルの経口剤形を提供する。
【0023】
この顆粒を利用することで、剤形あたりのダルナビルの重量百分率を増大させ、したがってダルナビルの遊離形態当量を高用量(例えば800mg)で含む、経口剤形を作り出し得る。さらに既存の剤形(例えば400または600mg)のサイズおよび重量を約25%低下させ得る。
【0024】
有利には、固体経口剤形は、任意選択的に例えばリトナビルなどの薬物動態学的ブースターなどの追加的な活性成分を含み得て、なおも許容されるサイズである。本発明の剤形のサイズ、すなわち剤形の総重量は、患者の幾人かが剤形を服用する困難さを感じはじめるサイズ未満である、便宜限界未満であるべきである。
【0025】
本発明の経口剤形は、好ましくは錠剤である。
【0026】
本明細書の用法では、「ダルナビル」という用語は、基本形態、あらゆるその薬学的に許容可能な酸付加塩、ならびにあらゆるその薬学的に許容可能な溶媒和化合物を含んでなることが意図される。上で言及される薬学的に許容可能な付加塩、ダルナビルが形成できる治療効果のある無毒の酸付加塩形態。一実施形態では、「ダルナビル」という用語は、基本形態、ならびにあらゆるその薬学的に許容可能な溶媒和化合物を含んでなることが意図される。
【0027】
薬学的に許容可能な溶媒和化合物という用語は、ダルナビルが形成し得る水和物および溶媒付加形態を含んでなる。このような形態の例は、例えば水和物、例えばメタノラート、エタノラート、およびプロパノラートなどのアルコラートである。特定の溶媒和化合物は、例えばモノエタノラートなどのエタノラートである。
【0028】
本明細書の用法では、「遊離形態当量」という用語は、遊離形態(または基本形態)中に、または塩または溶媒和化合物として存在するかどうかに関わりなく、所与の量の遊離形態ダルナビルに相当する、ダルナビルの量を指す。例えば650mgのダルナビルモノエタノラートは、600mgの遊離形態当量ダルナビルに相当する。
【0029】
成人における用途では、高い量の活性成分を使用してもよい。このような場合、本発明の剤形は、剤形単位当たり例えば約800mgなど、約500〜約900mg、特に約600mg〜約800mgの遊離形態当量ダルナビルを含有する。
【0030】
本発明の剤形中のダルナビルは、ダルナビルまたはその薬学的に許容可能な塩または溶媒和化合物、ヒプロメロース、および顆粒化からのあらゆる残留水からなる、ダルナビル顆粒組成物の形態で、調合工程に添加される。
【0031】
好ましくは、ダルナビルはそのエタノレートの形態で存在し、ヒプロメロースは15mPa.s.のヒプロメロース2910である。
【0032】
顆粒組成物中のダルナビルの量は、ダルナビルと15mPa.sのヒプロメロース2910を含んでなる顆粒組成物の総重量に対して、重量で約95%〜約100%、特に約97%〜約99.9%、または約98%〜約99%の範囲であってもよい。顆粒組成物は、加工中に完全に除去されない残留水をさらに含有してもよい。
【0033】
顆粒の平均粒度は、100〜500μm、より好ましくは150〜400μm、なおもより好ましくは約300μmである。
【0034】
本明細書の用法では、平均粒度という用語は、当業者に知られているその従来の意味を有し、例えば沈降場流動分画、光子相関分光法、レーザー回折またはディスク遠心分離などの技術分野で既知の粒度測定技術によって、測定され得る。本明細書で言及される平均粒子サイズは、粒子の重量分布に関連していてもよい。その場合、「約150μmの平均粒度」とは、粒子重量の少なくとも50%が平均で50μm未満の粒度を有し、言及される他の粒子サイズにもそれが当てはまることを意味する。同様に、平均粒子サイズは粒子の体積分布に関連してもよいが、通常これは、平均有効粒度について同一のまたはほぼ同一の値をもたらす。
【0035】
ダルナビルの顆粒化は、好ましくは流動床造粒機内で実施される。好ましくは、ダルナビルはヒプロメロースを使用して顆粒化される。より好ましくは、15mPa.sのヒプロメロース2910が使用される。本発明に従って、ダルナビルは、錠剤コアの調合前に、いかなる増量剤またはその他の賦形剤もなしに顆粒化される。
【0036】
好ましくは、本発明に従った経口剤形は、1つまたは複数のその他の活性成分を含んでなる。活性成分は、薬物動態学的または薬理学的効果がある化合物である。このような活性化合物の非限定的例は、チトクロームP
450阻害剤またはHIV阻害剤である。後者は、好ましくはその他のクラスのHIV阻害剤、特にNRTIまたはNNRTIを含み、融合阻害剤もまた含む。選択によって同時投与されてもよいHIV阻害剤は、HAART組み合わせで使用されるものである。
【0037】
好ましくは、本発明に従った経口剤形は、チトクロームP
450阻害剤などの薬物動態学的ブースターを含んでなる。このようなブースターの適切な例は、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、アンプレナビル、ロピナビル、ラシナビル、パリナビル、テリナビル、チプラナビル、モゼナビル、アタザナビル、およびその薬学的に許容可能な塩およびエステルを含んでなる群から選択される。より具体的に、前記阻害剤は、リトナビル、アンプレナビル、ネルフィナビルまたは薬学的に許容可能なその塩またはエステルを含んでなる群から選択されてもよい。
【0038】
本発明に従った経口剤形は、好ましくは薬学的に許容可能な担体および賦形剤を含んでなる。特にバインダー、増量剤、崩壊剤、流動促進剤、および潤滑剤などの不活性成分が添加されて、錠剤をまとめるのを助け、それに強度を与える。
【0039】
多種多様なバインダーが使用されてもよく、いくつかの一般的なものとしては、乳糖、第二リン酸カルシウム、スクロース、コーン(トウモロコシ)スターチ、微結晶セルロース、および変性セルロース(例えばヒドロキシメチルセルロース)が挙げられる。その他のこのような物質は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、滑石、カオリン、粉末セルロース、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、乳糖、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性物質である。このような作用物質は、時に「増量剤」と称されることもある。
【0040】
使用し得る微結晶セルロースとしては、以下が挙げられる。特にAvicel PH105(登録商標)(20μm)、Avicel PH101(登録商標)(50μm)、Avicel PH301(登録商標)(50μm)などのFMC BioPolymerから入手できるAvicel(商標)シリーズ製品;特にVivapur(登録商標)105(20μm)、Vivapur(登録商標)101(50μm)、Emcocel(登録商標)SP 15(15μm)、Emcocel(登録商標)50M 105(50μm)、Prosolv(登録商標)SMCC 50(50μm)などのJRS Pharmaから入手できる微結晶セルロース製品;特にPharmacel(登録商標)105(20μm)、Pharmacel(登録商標)101(50μm)などのDMVから入手できる微結晶セルロース製品;特にTabulose(Microcel)(登録商標)101(50μm)、Tabulose(Microcel)(登録商標)103(50μm)などのBlanverから入手できる微結晶セルロース製品;Ceolus(登録商標)PH−F20JP(20μm)、Ceolus(登録商標)PH−101(50μm)、Ceolus(登録商標)PH−301(50μm)、Ceolus(登録商標)KG−802(50μm)などの旭化成株式会社から入手できる微結晶セルロース製品。
【0041】
特に好ましい微結晶セルロースは、平均粒度(50μm)のCeolus(登録商標)KG−802である。Ceolus(登録商標)KG−802の追加的な特性は、約0.2(g/cm
3)の嵩密度と、約49度の安息角である。
【0042】
微結晶セルロースの平均粒度は、例えば約20μmなどの5μm〜60μm、特に10μm〜50μmの範囲であってもよい。
【0043】
上に示される成分のいずれかの存在に加えて、本発明に従った錠剤処方は、潤滑剤を含有する。これは、医薬品混合物を錠剤に圧搾する際の錠剤固着などの製造上の問題を回避する製剤を提供する。
【0044】
潤滑剤は好ましくはステアリン酸マグネシウムであり、通常0.4〜0.6%w/w、特に約0.5%w/wの量で存在する。
【0045】
錠剤処方はまた崩壊剤も含有して、患者に投与した際の製剤の崩壊と溶解を助ける。好ましい崩壊剤は、クロスポビドン、すなわちポリプラスドンXL−10として市販される架橋N−ビニル−2−ピロリドンの合成ホモポリマーであり、好ましくは1〜4%w/w、特に約3%w/wの量で存在する。使用してもよいその他の崩壊剤としては、Acdisolとして市販されるクロスカルメロースナトリウム(架橋カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩)が挙げられる。
【0046】
上の錠剤処方を使用して、例えば好ましくは篩掛けされる成分を最初に乾式混合して、従来の様式で錠剤コアを製造し得る。引き続いて、錠剤コア混合物全部の最終乾式混合のために、乾式混合された混合物に潤滑剤を添加して、次にそれを所望のサイズと重量を有する錠剤に圧搾した。
【0047】
味覚マスキングおよび審美的理由から、本発明に従った錠剤コアは、通常、錠剤コアを基準にして約4%w/wの量で通常使用される、例えばOpadryフィルムコーティングなどのフィルムコーティングと共に提供される。錠剤強度を識別するために、フィルムコーティング中で異なる着色剤を使用してもよい。
【0048】
コーティングは、例えば精製水などのコーティング懸濁液中でコアに塗布し得て、被覆コアの乾燥がそれに続く。
【0049】
本発明に従った剤形の投与は、HIV感染症を治療するのに十分であってもよいが、その他のHIV阻害剤の同時投与が推奨されることもある。後者は、好ましくは、特にNRTIまたはNNRTIである、その他のクラスのHIV阻害剤を含むが、融合阻害剤もまた添加し得る。選択によって同時投与されてもよいHIV阻害剤は、HAART組み合わせで使用されるものである。
【0050】
場合によっては、HIV感染症の治療は、さらなるHIV阻害剤の同時投与なしに、本発明の剤形のみに限定されてもよい。このオプションは、例えばウイルス負荷(規定体積の血清中のウイルスRNAのコピー数として表される)が、約200コピー/ml未満、特に約100コピー/ml未満、より特には50コピー/ml未満、明確にウイルス検出限界未満の場合など、例えばウイルス負荷が比較的低い場合に推奨されてもよい。このタイプの単剤療法は、血漿中のウイルス負荷が、上述の低ウイルスレベルに達するまでの一定期間内のHAART組み合わせのいずれかなどのHIV薬剤組み合わせによる最初の治療後に、適用されてもよい。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、HIV感染対象の維持療法のための薬剤を製造するための本発明に従った剤形の使用に関する。本発明はまた、HIV感染対象を治療するための薬剤を製造するための本発明に従った剤形の使用にも関し、剤形は、2つの異なるNRTIまたはNNRTIと組み合わされる。
【0052】
本明細書の用法では、「HIV感染症の治療」という用語は、HIV感染対象の治療状況に関する。「対象」という用語は、特にヒトに関する。
【0053】
本発明の剤形中のダルナビルと任意選択のその他の活性化合物の用量は、2回の投与の間に、ダルナビルの血漿濃度が最小血漿レベルを超えて維持されるように選択される。この文脈で「最小血漿レベル」という用語は、最低の有効血漿レベルを指し、後者は、HIVの効果的な治療を提供する活性血漿レベルである。より低いレベルでは、薬剤はもはや効果的でなく、その結果、変異リスクを増大させるので、抗HIV化合物の血漿レベルは、これらの閾値血漿レベルを超えて維持されるべきである。
【0054】
本発明の剤形は、HIV感染症の効果的な治療を提供し、ウイルス複製の抑制を維持しながら、ウイルス負荷を低下させる。限定された薬剤投与回数は、処方される治療法への患者の服薬遵守を高める。
【0055】
本明細書の用法では、「実質的に」と言う語は、「完全に」を除外せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に」と言う語は、本発明の定義から省かれてもよい。数値との関連で「約」という用語は、数値の文脈におけるその通常の意味を有することが意図される。必要ならば「約」と言う語は、数値±10%、または±5%、または±2%、または±1%によって置き換えられてもよい。本明細書で引用される全ての文献は、その内容全体を参照によって援用する。
【実施例】
【0056】
概要
実施例全体を通じて使用される賦形剤を表1に列挙する。
【0057】
【表1】
【0058】
凹型押および錠剤サイズの違いに組み合わされたフィルムコーティングは、錠剤強度の識別を助ける。フィルムコーティングの二次機能は、味覚マスキングである。
【0059】
Opadry II red 85F250001で使用される賦形剤を表2に列挙する。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1:ダルナビル顆粒化
1:顆粒化
目下市販される600mg錠剤から用量比例的に誘導される、例えば800mgダルナビル製剤などの高用量製剤は、その大型サイズのために、患者による使用に適すると認識されなかった。さらに800mg製剤の直接圧縮は、極度に限定的な滑りと流動能力のために、可能でないことが判明した。研究された製剤を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
直接圧縮製剤A:
ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分を0.95mmのステンレス鋼スクリーン上で篩掛けし、実験室規模遊星形ミキサーを使用して10分間混合した。第2の混合ステップでは、ステアリン酸マグネシウムを篩掛けして5分間混合した。混合物は、流動性(安息角)が悪いため圧搾されなかった。
【0064】
湿式造粒製剤B:
内相(API/MCC)の粉末を、篩孔0.95mmのステンレス鋼スクリーグ上で篩掛けして、流動床造粒機GPCG1の顆粒化インサート内に移し入れた。
【0065】
精製水(バインダーなし)を粉末混合物上に噴霧した。顆粒化の加工条件を下の表に報告する。
【0066】
【表4】
【0067】
外相の乾燥顆粒および賦形剤を篩掛けし(0.95mm)、10分間混合した。第2のステップでは、ステアリン酸マグネシウムを篩掛けして添加し、5分間混合した。篩掛け後に、粒度分析およびLODについて顆粒を試験した。
【0068】
単発式打錠機を使用して、異なる圧搾力(750−−>2000kg)でこの最終混合物を圧搾した。得られた錠剤(公称重量1200mg、パンチAC27/42:20mm×9.5mm、半径3mm、長円形)を硬度、崩壊時間、および溶出について分析した。
【0069】
湿式造粒製剤C:
APIを篩孔0.95mmのステンレス鋼スクリーグ上で篩掛けして、流動床造粒機GPCG1の顆粒化インサート内に移し入れた。
【0070】
バインダー溶液(15cpsのHPMCの4%水溶液)を粉末混合物上に噴霧した。顆粒化の加工条件を下の表に報告する。
【0071】
【表5】
【0072】
外相の乾燥顆粒および賦形剤を篩掛けし(0.95mm)、10分間混合した。第2のステップでは、ステアリン酸マグネシウムを篩掛けして添加し、5分間混合した。
【0073】
圧搾混合物(BおよびCの錠剤特性を表6に示す。混合物の不十分な流動性(高い安息角)のために、直接圧縮構想Aは圧搾されなかった。産業基準に従って、錠剤硬度を測定した。
【0074】
【表6】
【0075】
15mPa.sの水性HPMCバインダー溶液およびProsolv HD90増量材と共に、ダルナビルが単独で顆粒化される構想(C)は、追加的顆粒状(extra−granularly)(すなわち最終乾燥混合物中で)を付け加えて、優れた加工を提供した。
【0076】
2:ダルナビル800mg代表的製剤
顆粒化をはじめとする優れた方法に基づいて、800mgのダルナビル遊離形態(free from)当量を含んでなる、代表的な経口剤形を調合した。このような代表的な経口剤形の定性的および定量的組成を表7に提供する。
【0077】
【表7】
【0078】
3:本発明に従った大規模製造工程
以下の仕様に従って、いくつかの大規模飾り名板(badges)を製造した。
【0079】
4%バインダー溶液の調製:
−精製水全量の1/3を75〜85°Cに加温した。
−強力なボルテックスで混合しながら、15mPa.sのヒプロメロース2910を添加した。
−10〜20分の混合後、ボルテックスで5〜10分間混合しながら、(冷)精製水の残りを添加した。容器壁に沿って水を緩慢に注ぐことで、気泡の発生を回避した。
−溶液を冷却し、透明で温度が30°C以下になるまで脱気した。
−顆粒化開始前に、穏やかな混合を1〜2分間実施した
【0080】
湿式顆粒化条件(GPCG−30造粒機上)
ダルナビルを流動床造粒機GPCG−30の顆粒化インサートに移し入れ、予備加温した。バインダー溶液(15cpsのHPMCの4%水溶液)を粉末混合物上に噴霧して、最終的に顆粒を乾燥させた。それぞれ標的条件、乾式条件、および湿式条件における、バッチ顆粒化のために使用されたGPCG−30流動床パラメータを以下の表に列挙する。
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
混合および圧搾条件
0.95mm孔サイズの手動篩を通して乾燥顆粒を篩掛けし、引き続いてGallay箱型ブレンダー内で、(0.95mm孔サイズの手動篩を通して篩掛けした)外相賦形剤と9rpmで10分間混合した。第2のステップでは、ステアリン酸マグネシウムを篩掛けして添加し、5分間混合した。
【0086】
顆粒および最終混合物(圧搾混合物)の物理的特性を以下の表に列挙する。
【0087】
【表12】
【0088】
【表13】
【0089】
圧搾結果
寸法19×9.5mmのデモパンチ(卵型)セットを使用して、CourtoyモジュールS高速ロータリー式打錠機(10〜16個のパンチ)上で、バッチの最終配合物を異なる圧搾力と速度で、名目上の重量(1100mg)で圧搾した。得られた錠剤を重量、硬度、厚さ、縦横比、崩壊時間、および脆砕性について分析した。圧搾中に、突出力をはじめとする圧搾設定をモニターした。
【0090】
標的圧縮力(13N)で圧搾された錠剤コアはまた、最終製剤組成に従って(4%レベルのOpadry I redで)実験室規模コーター上で被覆した。
【0091】
使用されたGPCG−30流動床顆粒化条件の適度に幅広い変動にもかかわらず、全例において、顆粒および最終混合物の許容される物理的特性が得られる(表12および13)。予期されたように、乾燥機熱力学条件を使用すると、より微細で密度の低い顆粒が得られる。混合物流動性は、エアロシルの添加によって改善し[(バッチE(エアロシルあり)では37°40’であるのに対し、バッチD(エアロシルなし)では43°20’]、エアロシル流動促進材の機能性が確認される。外相賦形剤の添加は、材料流動性に対して有益な効果を有する。
【0092】
(ほぼ)同一の顆粒化条件下で製造されたバッチDおよびEの顆粒について、非常に良く似た物理的特性が得られ、流動床顆粒化工程の再現性が確認される。
【0093】
流出空気温度が37°Cに達するまでの顆粒の乾燥は、顆粒では5.2〜6.0%、最終混合物では5.6〜6.1%の狭いLOD結果範囲をもたらし、使用される顆粒化(熱力学の)条件にかかわらず、乾燥工程の再現性が確認される。