(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、高圧で受電するための機器一式を金属製の外箱に収めた所謂キュービクルと呼ばれる受変電設備が普及されている。キュービクルには、高圧配電柱(電力供給源側)から高圧(公称電圧約6,600V)で受電した電圧を、100V又は200Vの低圧に変圧する所謂トランスと呼ばれる変圧器が備えられており、変圧器で降圧された電気が各電気負荷に供給されるようになっている。
【0003】
変圧器は、発電機や電動機と同じように電気機械(電気機器)に分類されているが、静止機器ということもあり、それ自体のエネルギー消費(損失)が比較的少ないは電気機器である。しかしながら、石油や石炭等の化石燃料の消費を低減し二酸化炭素の排出を低減することで地球環境保護に大きく貢献するという背景から、損失のより少ない省エネルギー目標基準をクリアした変圧器に従来品から切り替えるケースも増えてきている。
【0004】
変圧器は、巻線を冷却のために絶縁油で満たした油入変圧器が広く普及している。また、防災の観点から、不燃化するため油を使用しない変圧器も使用されており、乾式変圧器またはモールド変圧器と呼ばれている。
【0005】
変圧器の損失は、大別すると負荷に関係なく発生する無負荷損と負荷電流によって変化する負荷損に分けることができる。無負荷損は主として磁束の通路である鉄心に発生する鉄損であり、一定周波数の電源電圧が一次側に印加されている限り、二次側の負荷の有無にかかわらず変圧器内で発生する一定の損失である。また、負荷損は負荷電流による変圧器の巻線の抵抗による抵抗損(ジュール熱損)であり、銅損とも呼ばれる。負荷損は、負荷電流の二乗に比例する。負荷率は負荷電流に比例するが、一般に負荷率は一日中一定というわけではなく変動する。そして、通常は無負荷損と負荷電流の和として変圧器の損失が算出されている。
【0006】
変圧器の損失を求める方法としては、例えばJIS C 4304及びJIS C 4306に定める方法によって無負荷損及び負荷損を測定し、次式によって全損失を算出する方法が知られている。
全損失(W)=無負荷損(W)+(m/100)2×負荷損(W)
但し、mは基準負荷率であり、容量が500kVA以下の変圧器には40(%)とし、容量が500kVA超の変圧器には50(%)とする。
【0007】
ところで、近年では、省エネルギー化のための包括的なサービスを提供するESCO(Energy Service Company)と呼ばれる事業が注目されており、工場やビル等において導入される事例も増えている。ESCO事業では、ESCO事業者が対象建物の省エネルギー改修に係る設計、施工、改修費用の調達、計測検証、運転指導を一括して行い、その結果得られる省エネルギー効果を保証するとともに、省エネルギー改修に要した投資や経費等は、省エネルギーによる一定期間の経費削減分で償還されることを特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ESCO事業において、キュービクルに係る受変電設備を更新する際、変圧器における電力損失(ロス)を精度よく検証することが必要である。しかしながら、変圧器の負荷率は、電気負荷の使用状況によって刻一刻と変動する。また、変圧器の損失は、二次側の電気負荷の種類、数等によって影響を受ける。また、油入変圧器においては、巻線を冷却するための絶縁油の劣化等に起因して、変圧器の電力損失が経時的に変化する。そのため、従来では、キュービクル内の変圧器における電力損失を正確に評価することは難しいという実情があった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、変圧器を備えた受変電設備における電力損失を精度よく把握することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明は、受変電設備において受電する総電力量と、受変電設備に設置される変圧器から電気負荷に供給される二次側電力量を計測し、計測した総電力量および二次側電力量に基づいて受変電設備における電力損失を算出するようにした。
【0012】
より詳しくは、本発明に係る電力損失監視システムは、変圧器を備える受変電設備における電力損失を監視する電力損失監視システムであって、前記受変電設備において受電する総電力量を計測する総電力量計と、前記変圧器の二次側に設けられ、当該変圧器から電気負荷に供給される二次側電力量を計測する二次側電力量計と、前記総電力量計および前記二次側電力量計から前記総電力量および前記二次側電力量に関する計測データを取得し、ネットワークに送信する計測装置と、前記ネットワークを介して前記計測データを受信し、当該計測データから取得した前記総電力量および前記二次側電力量に基づいて、前記受変電設備における電力損失を算出する管理用装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、総電力量計によって計測した総電力量から、二次側電力量計によって計測した二次側電力量を差し引くことで、受変電設備全体での包括的な電力損失をリアルタイムで正確に精度よく把握することができる。そして、本発明によれば、変圧器から変圧後の電力が供給される電気負荷の使用(稼働)状況が変化したり、変圧器に接続される種類や数等が変動しても、それらの因子の影響を反映した電力損失を精度よく測定することができる。
【0014】
また、本発明に係る電力損失監視システムは、前記変圧器の一次側に設けられ、当該変圧器に供給される一次側電力量を計測する一次側電力量計を更に備え、前記計測装置は、前記一次側電力量計から取得した前記一次側電力量に関する計測データも前記管理用装置に送信し、前記管理用装置は、前記管理用装置から受信した前記一次側電力量および前記二次側電力量に関する計測データから取得した前記一次側電力量および前記二次側電力量に基づいて、前記変圧器における電力損失を算出してもよい。このように構成することで、変圧器が電圧を変換することに起因する電力損失を個別に把握することができる。
【0015】
また、電力損失監視システムにおいて、前記受変電設備には、複数の前記変圧器が設けられていてもよい。この場合、前記一次側電力量計および前記二次側電力量計は、各変圧器に対応する配電系統毎に当該変圧器の一次側および二次側にそれぞれ設けられ、前記管理用装置は、前記配電系統毎に設けられる前記二次側電力量計の計測データから取得した前記二次側電力量の和を前記総電力量から差し引くことで前記受変電設備全体における電力損失を算出し、且つ、前記配電系統毎に設けられる前記一次側電力量計の計測データから取得した前記一次側電力量から前記二次側電力量を差し引くことで前記変圧器毎の電力
損失を算出してもよい。
【0016】
また、本発明に係る電力損失監視システムは、前記ネットワークを介して前記管理用装置と通信可能であって、且つ、表示装置を有するクライアント端末を更に含み、前記管理用装置は、算出した電力損失に関するデータを前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末は、受信した前記電力損失に関するデータから取得した前記電力損失を前記表示装置に表示させてもよい。このように、管理用装置から送信されてくる電力損失に関するデータに基づいて取得した電力損失をクライアント端末の表示装置に表示させることで、クライアントは常に受変電設備において発生する電力損失を精度よく把握することができる。
【0017】
また、本発明は、変圧器を備える受変電設備として捉えることもできる。即ち、本発明は、変圧器を備える受変電設備であって、前記受変電設備において受電する総電力量を計測する総電力量計と、前記変圧器の二次側に設けられ、前記変圧器から電気負荷に供給される二次側電力量を計測する二次側電力量計と、前記総電力量計および前記二次側電力量計から前記総電力量および前記二次側電力量に関する計測データを取得し、取得した前記計測データを、前記受変電設備における電力損失を算出する管理用装置にネットワークを介して送信する計測装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本件によれば、変圧器を備えた受変電設備における変圧損失を精度よく把握することのできる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る受変電設備1を示す図である。
図2は、実施形態に係る電力損失監視システム100を示す図である。受変電設備1は、発電所から変電所を通して送られてくる高圧の電力を受電し、受電した高圧の電力を低圧の電力に変換して各種電気負荷に供給する設備であり、各種機器を金属製の外箱に収めたキュービクル10、分電盤20等を備える。キュービクル10は、例えば変電所から送電されてくる6,600Vの電気を引き込む引き込み線101を有する。引き込み線101には、受変電設備1において受電する総電力量(積算電力量)P0を計測する、所謂取引用メーターである総電力量計110が導通状態に接続されている。
【0022】
引き込み線101における総電力量計110の2次側(後段)には、遮断機120が設けられている。また、引き込み線101における遮断機120の2次側(後段)において、引き込み線101は第1電力線102Aおよび第2電力線102Bに分岐しており、そ
れぞれには第1変圧器(トランス)120Aおよび第2変圧器(トランス)120Bが配設されている。第1電力線102Aにおける第1変圧器120Aの2次側(後段)には、第1遮断器(ブレーカー)130Aが配設されており、第1遮断器130Aの2次側(後段)には第1分電盤20Aが接続されている。
【0023】
また、第2電力線102Bにおける第2変圧器120Bの2次側(後段)には、第2遮断器(ブレーカー)130Bが配設されており、第2遮断器130Bの2次側(後段)には第2分電盤20Bが接続されている。そして、第1分電盤20A内において、第1電力線102Aが複数の第1系統分岐配電線103Aに分岐しており、各第1系統分岐配電線103Aには、例えば動力設備、空調設備、照明設備などの第1系統電気負荷30Aが接続されている。また、第2分電盤20B内において、第2電力線102Bが複数の第2系統分岐配電線103Bに分岐しており、各第2系統分岐配電線103Bには動力設備、空調設備、照明設備などの第2系統電気負荷30Bが接続されている。
【0024】
変電所から送電されてくる6,600Vの高圧の電力は、キュービクル10の引き込み線101から第1電力線102Aおよび第2電力線102Bを介して、第1変圧器120Aおよび第2変圧器120Bに供給される。第1変圧器120Aおよび第2変圧器120Bは、例えばケイ素鋼又はアモルファスの鉄心と巻線を含んで構成されており、電磁誘導を利用して交流電力の電圧の高さを変換する電力機器・電子部品である。
【0025】
本実施形態では、引き込み線101から第1電力線102Aを経て第1変圧器120Aに供給される高圧電力は、第1変圧器120Aによって100V又は200Vの低圧の電力に変圧され、変圧後における低圧の電力が第1分電盤20Aに供給される。そして、第1分電盤20Aに供給された低圧の電力は、各第1系統分岐配電線103Aを経て、これに接続される第1系統電気負荷30Aに供給される。以下では、引き込み線101から第1電力線102A、第1変圧器120A、第1分電盤20A、第1系統分岐配電線103Aを経て、第1系統電気負荷30Aに供給される電力の系統を「第1系統S1」と呼ぶ。
【0026】
同様に、引き込み線101から第2電力線102Bを経て第2変圧器120Bに供給される高圧電力は、第2変圧器120Bによって100V又は200Vの低圧の電力に変圧され、変圧後における低圧の電力が第2分電盤20Bに供給される。そして、第2分電盤20Bに供給された低圧の電力は、各第2系統分岐配電線103Bを経て、これに接続される第2系統電気負荷30Bに供給される。以下では、引き込み線101から第2電力線102B、第2変圧器120B、第2分電盤20B、第2系統分岐配電線103Bを経て、第2系統電気負荷30Bに供給される電力の系統を「第2系統S2」と呼ぶ。
【0027】
キュービクル10の第1系統S1において、第1変圧器120Aの一次側には、第1変圧器120Aに供給される一次側の電力量(以下、「第1系統一次側電力量」という)P1を計測する第1系統一次側電力量計140Aが設けられている。より具体的には、第1系統一次側電力量計140Aは、第1変圧器120Aの一次側に延びる第1電力線102Aと導通状態に接続されている。また、第1系統S1において、第1変圧器120Aの二次側には、第1変圧器120Aから出力される二次側の電力量(以下、「第1系統二次側電力量」という)P2を計測する第1系統二次側電力量計150Aが設けられている。より具体的には、第1系統二次側電力量計150Aは、第1変圧器120Aの二次側から延びる第1電力線102Aと導通状態に接続されている。
【0028】
次に、キュービクル10の第2系統S2においても、第2変圧器120Bの一次側には、第2変圧器120Bに供給される一次側の電力量(以下、「第2系統一次側電力量」という)P3を計測する第2系統一次側電力量計140Bが設けられている。より具体的には、第2系統一次側電力量計140Bは、第2変圧器120Bの一次側に延びる第2電力
線102Bと導通状態に接続されている。また、第2系統S2において、第2変圧器120Bの二次側には、第2変圧器120Bから出力される二次側の電力量(以下、「第2系統二次側電力量」という)P4を計測する第2系統二次側電力量計150Bが設けられている。より具体的には、第2系統二次側電力量計150Bは、第2変圧器120Bの二次側から延びる第2電力線102Bと導通状態に接続されている。
【0029】
更に、キュービクル10には、総電力量計110、第1系統一次側電力量計140A、第1系統二次側電力量計150A、第2系統一次側電力量計140B、及び第2系統二次側電力量計150Bの各計測データを取得する計測装置40が付設されている。監視装置40には、パルス検出器41が接続されている。パルス検出器41は、各電力量計から発せられるパルスを検出し、検出したパルスを適宜増幅・整形して出力する。なお、総電力量計110、第1系統一次側電力量計140A、第1系統二次側電力量計150A、第2系統一次側電力量計140B、及び第2系統二次側電力量計150Bが電力量を計測する間隔(インターバル)は自由に変更することができ、特に限定されない。例えば、計測装置40は、30分毎に、各電力量計が計測した計測データを収集(取得)してもよい。
【0030】
以下、総電力量計110が出力する総電力量P0の計測結果に関するパルスデータを、「総電力量計測データD0」と呼ぶ。また、第1系統一次側電力量計140Aが出力する第1系統一次側電力量P1の計測結果に関するパルスデータを、「第1系統一次側電力量計測データD1」と呼ぶ。また、第1系統二次側電力量計150Aが出力する第1系統二次側電力量P2の計測結果に関するパルスデータを、「第1系統二次側電力量計測データD2」と呼ぶ。また、第2系統一次側電力量計140Bが出力する第2系統一次側電力量P3の計測結果に関するパルスデータを、「第2系統一次側電力量計測データD3」と呼ぶ。また、第2系統二次側電力量計150Bが出力する第2系統二次側電力量P4の計測結果に関するパルスデータを、「第2系統二次側電力量計測データD4」と呼ぶ。
【0031】
次に、電力損失監視システム100の詳細について説明する。実施形態に係る電力損失監視システム100は、キュービクル10内に設置される総電力量計110、第1系統一次側電力量計140A、第1系統二次側電力量計150A、第2系統一次側電力量計140B、および第2系統二次側電力量計150B、計測装置40、監視用サーバ50、ユーザ端末60等を含み、受変電設備1(キュービクル10)内における電力損失を監視するシステムである。電力損失監視システム100において、ネットワーク70を介して計測装置40、管理用装置としての管理用サーバ50、およびクライアント端末60がそれぞれ接続されている。管理用サーバ50は、例えばESCO事業を行うESCO事業者の管理センター等に設けられているコンピュータである。クライアント端末60は、例えばESCO事業者が省エネルギーサービスを包括的に提供するクライアントのコンピュータである。クライアント端末60は、パーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン等の携帯用端末であってもよい。
【0032】
実施形態に係る電力損失監視システム100は、例えばクライアントが所有、或いは管理するビルや工場等に設置される受変電設備1において、変圧器において変圧する際に電気の一部が熱に変換されてしまうことに起因する損失分を含むキュービクル10全体での包括的な電力損失をリアルタイムで監視し、その監視結果に関する情報をクライアント端末60に配信することでクライアントに提供するシステムである。
【0033】
図3は、実施形態に係るコンピュータ1000の一例を示す装置構成図である。計測装置40、管理用装置としての管理用サーバ50、およびクライアント端末60は、
図3に示すようなコンピュータ1000である。
図3に示すコンピュータ1000は、CPU(Central Processing Unit)1001、主記憶装置1002、補助記憶装置1003、通
信IF(Interface)1004、入出力IF(Interface)1005、ドライブ装置100
6、通信バス1007等を備えている。
【0034】
CPU1001は、プログラム(「ソフトウェア」又は「アプリケーション」とも呼ぶ)を実行することにより各種処理を行う。主記憶装置1002は、CPU1001が読み出したプログラムやデータをキャッシュしたり、CPUの作業領域を展開したりする。主記憶装置は、具体的には、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等である。補助記憶装置1003は、CPU1001により実行されるプログラムや、本実施形態で用いる各種情報を記憶する。補助記憶装置1003は、具体的には、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等である。
【0035】
通信IF1004は、他のコンピュータとの間でデータを送受信する。通信IF1004は、具体的には、有線又は無線のネットワークカード等である。計測装置40、管理用サーバ50、およびクライアント端末60は、通信IF1004を介してインターネット等のネットワーク70に接続されている。入出力IF1005は、入出力装置と接続され、ユーザから操作を受け付けたり、ユーザへ情報を提示したりする。入出力装置は、具体的には、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチパネル等である。ドライブ装置1006は、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の記憶媒体に記録されたデータを読み出したり、記憶媒体にデータを書き込む。以上のような構成要素が、通信バス1007で接続されている。
【0036】
なお、これらの構成要素はそれぞれ複数設けられていてもよいし、一部の構成要素(例えば、ドライブ装置1006等)を設けないようにしてもよい。また、入出力装置がコンピュータと一体に構成されていてもよい。また、ドライブ装置1006で読み取り可能な可搬性の記憶媒体や、フラッシュメモリのような可搬性の補助記憶装置1003、通信IF1004などを介して、本実施形態で実行されるプログラムが提供されるようにしてもよい。そして、CPU1001が所定のプログラムを実行することにより、
図3に示したコンピュータを電力損失監視システム100として機能させる。
【0037】
図4は、実施形態に係る電力損失監視システム100において実行されるシーケンス図である。まず、計測装置40は、パルス検出器41から出力されるパルスに基づいて、総電力量計110、第1系統一次側電力量計140A、第1系統二次側電力量計150A、第2系統一次側電力量計140B、および第2系統二次側電力量計150Bの計測データを取得する(
図4:S1)。即ち、計測装置40は、総電力量計測データD0、第1系統一次側電力量計測データD1、第1系統二次側電力量計測データD2、第2系統一次側電力量計測データD3、第2系統二次側電力量計測データD4を取得する。なお、計測装置40は、パルス検出器41が検出および出力したパルスデータを、入出力IF1005から入力し、補助記憶装置1003に記憶する。
【0038】
図5は、計測装置40における補助記憶装置1003の記憶データの一部を示すテーブルを例示した図である。計測装置40における補助記憶装置1003には、キュービクル10毎に割り当てられたキュービクルID、計測時刻、総電力量計測データD0(総電力量P0)、第1系統一次側電力量計測データD1(第1系統一次側電力量P1)、第1系統二次側電力量計測データD2(第1系統二次側電力量P2)、第2系統一次側電力量計測データD3(第2系統一次側電力量P3)、第2系統二次側電力量計測データD4(第2系統二次側電力量P4)等が記憶されている。
【0039】
そして、計測装置40は、取得した各電力量計測データD0〜D4を、ネットワーク70を介して管理用サーバ50に送信する(
図4:S2)。なお、計測装置40は、通信IF1004によって各電力量計測データD0〜D4の送信を行うことができる。また、計測装置40から管理用サーバ50に送信されるデータには、各電力量計測データD0〜D
4の他、キュービクルIDおよび計測時刻が含まれる。
【0040】
管理用サーバ50は、通信IF1004を通じて、計測装置40が送信したデータを受信し、補助記憶装置1003に記憶する。管理用サーバ50においても、計測装置40と同様、キュービクルID、計測時刻、および各電力量計測データD0〜D4が格納された
図5に示すテーブルが補助記憶装置1003に記憶されている。
【0041】
次いで、管理用サーバ50のCPU1001は、補助記憶装置1003に記憶している記憶データから総電力量計測データD0(総電力量P0)、第1系統二次側電力量計測データD2(第1系統二次側電力量P2)および第2系統二次側電力量計測データD4(第2系統二次側電力量P4)を読み出し、これらのデータに基づいて受変電設備1全体における電力損失の総量(以下、「総電力損失」という)ΣELを算出する(
図4:S3)。具体的には、管理用サーバ50のCPU1001は、総電力量計測データD0、第1系統二次側電力量計測データD2および第2系統二次側電力量計測データD4から、総電力量P0、第1系統二次側電力量P2、および第2系統二次側電力量P4をそれぞれ取得し、総電力量P0から第1系統二次側電力量P2および第2系統二次側電力量P4を差し引いた値を総電力損失ΣEL(kwh)として算出する(ΣEL=P0−(P2+P4))。
【0042】
更に、管理用サーバ50のCPU1001は、補助記憶装置1003から第1系統一次側電力量計測データD1(第1系統一次側電力量P1)、第1系統二次側電力量計測データD2(第1系統二次側電力量P2)、第2系統一次側電力量計測データD3(第2系統一次側電力量P3)、第2系統二次側電力量計測データD4(第2系統二次側電力量P4)を読み出し、これらのデータに基づいて第1系統S1の第1変圧器120Aにおいて発生している電力損失(以下、「第1系統変圧損失」という)EL1と、第2系統S2の第2変圧器120Bにおいて発生している電力損失(以下、「第2系統変圧損失」という)EL2をそれぞれ算出する(
図4:S4)。具体的には、管理用サーバ50のCPU1001は、第1系統一次側電力量計測データD1および第1系統二次側電力量計測データD2から第1系統一次側電力量P1および第1系統二次側電力量P2を取得し、第1系統一次側電力量P1から第1系統二次側電力量P2を差し引いた値を第1系統変圧損失EL1(kwh)として算出する。同様に、第2系統一次側電力量計測データD3および第2系統二次側電力量計測データD4から第2系統一次側電力量P3および第2系統二次側電力量P4を取得し、第2系統一次側電力量P3から第2系統二次側電力量P4を差し引いた値を第2系統変圧損失EL2(kwh)として算出する。
【0043】
次に、管理用サーバ50は、算出した総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2に関するデータを、ネットワーク70を介してクライアント端末60に送信する(
図4:S5))。
図6は、管理用サーバ50からクライアント端末60に送信されるデータの内容を例示するテーブルである。キュービクルID、計測時刻、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2が管理用サーバ50からクライアント端末60に送信される。
【0044】
クライアント端末60は、管理用サーバ50から受信したデータを補助記憶装置1003に記憶する。そして、クライアント端末60のCPU1001は、補助記憶装置1003に記憶した記憶データから、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2を読み出し、これらをディスプレイに表示する(
図4:S6)。
【0045】
クライアント端末60は、例えば、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2を時系列にディスプレイ表示してもよい。総電力損失ΣELに基づいて、クライアントは、所有或いは管理するビルや工場におけるキュービクル10全体での包括的な電力損失をリアルタイムで正確に精度よく把握することができる。また、
第1系統変圧損失EL1および第2系統変圧損失EL2は、キュービクル10に設定される変圧器120A,120B毎の電力損失を反映しているため、変圧器の系統別にどれだけ電力損失が発生しているのかを詳細に精度よく把握することができる。そして、本実施形態における電力損失監視システム100によれば、電気負荷30A,30Bの使用状況に応じて変圧器120A,120Bの負荷率が刻一刻と変動し、これら変圧器120A,120Bに接続される電気負荷30A,30Bの種類や数等が変動しても、総電力損失ΣELはそれらの因子の影響を反映したものであるため、キュービクル10における電力損失を精度よく監視、評価することができる。その結果、クライアントは、キュービクル10における電力損失の監視結果に基づいて、変圧器を新品に交換すべきか否かを適正に判断することができる。
【0046】
なお、クライアント端末60は、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2の時間的推移を表すグラフを、ディスプレイに表示させてもよい。これにより、クライアントは、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2を直接視覚的に把握することができる。また、管理用サーバ50は、総電力損失ΣEL、第1系統変圧損失EL1、および第2系統変圧損失EL2と電気料金の単価に基づいて、各電力損失に伴う損失額をそれぞれ算出し、その損失額に関するデータをクライアント端末60に送信してもよい。そして、クライアント端末60は、所定期間における電力損失に伴う損失額(例えば、1日分の損失額)をディスプレイに表示させることで、クライアントに情報を提供してもよい。また、電力損失に伴う損失額の算出は、クライアント端末60側のCPU1001が実行してもよい。
【0047】
また、電力損失監視システム100は、本件の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態においては、キュービクル10に複数の変圧器120A,120Bを設置しているが、変圧器を設定する数は特に限定されず、単一の変圧器を設定してもよい。