特許第6101332号(P6101332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101332レバミピドを含有する口腔内疾患治療用医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101332
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】レバミピドを含有する口腔内疾患治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4704 20060101AFI20170313BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170313BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61K31/4704ZMD
   A61P1/02
   A61K9/10
   A61K47/34
   A61K47/36
   A61K47/38
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-221929(P2015-221929)
(22)【出願日】2015年11月12日
(62)【分割の表示】特願2013-543443(P2013-543443)の分割
【原出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2016-94417(P2016-94417A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-66353(P2011-66353)
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】松田 貴邦
(72)【発明者】
【氏名】佐古 信朋
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴子
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一志
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507566(JP,A)
【文献】 特表2010−535757(JP,A)
【文献】 ISHIYAMA,H. et al.,"Therapeutic effect of rebamipide in a modified acetic acid-buccal mucosal ulcer model",Inflammopharmacology,2002年,Vol.10,No.4-6,P.391-399
【文献】 安田卓史 外4名,"1-E-2-2 口腔粘膜疾患に対するrebamipideの応用 第1報:頭頸部癌化学療法、放射線療法時の口内炎に対する効果の検討",日本口腔科学会雑誌,日本,2005年 1月10日,Vol.54,No.1,P.113
【文献】 安田卓史 外5名,"OS053-2 口腔癌化学放射線療法時の口腔粘膜炎へのRebamipide含嗽液の有効性の検討",日本癌治療学会誌,日本,2009年 9月14日,Vol.44,No.2,P.520
【文献】 河田圭司 外11名,"診療の実際から レバミピド含嗽液による癌化学治療および放射線療法における口内炎発症の予防効果に関する検討",新薬と臨牀,日本,2001年 2月10日,Vol.50,No.2,P.273-280
【文献】 安田卓史 外5名,"口腔癌の化学・放射線療法による口腔粘膜炎に対するRebamipide含嗽液の使用経験",癌と化学療法,日本,2008年 7月15日,Vol.35,No.7,P.1157-1161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4704
A61K 9/10
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径500nm未満のレバミピドを有効成分として10mg/mL〜50mg/mL含有し、少なくとも1種の分散剤を含有し、かつ少なくとも1種の粘度増強剤を15mg/mL以上の濃度で含有する薬剤であって、
水性懸濁液の形態であり、
含嗽または含嗽内服の形態で服用される、
口腔粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害の予防および/又は治療に用いる薬剤。
【請求項2】
粘度増強剤がヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンK90、およびプルランから選択される請求項1の薬剤。
【請求項3】
レバミピドの平均粒子径が300nm未満であり、その含有量が20mg/mL〜40mg/mLである請求項1または2の薬剤。
【請求項4】
粘度増強剤がレバミピド粒子に対して凝集作用を有さないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬剤。
【請求項5】
レバミピドの平均粒子径が200nm未満である請求項1〜のいずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
レバミピドの形状が、長径1000nm未満、短径60nm未満で、長径と短径の比が3を超える均質な針状結晶である請求項1〜のいずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害が放射線治療および/又は化学療法に伴う請求項1〜6のいずれかに記載の薬剤。
【請求項8】
粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害が放射線治療に伴う請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
口腔内に含ませる一回量が3mL〜20mLである、請求項1〜8のいずれかに記載の薬剤。
【請求項10】
1日4〜6回服用されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の薬剤。
【請求項11】
1日あたり服用するレバミピドの量が400mg〜2400mgである、請求項1〜10のいずれかに記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒子径500nm未満(好ましくは平均粒子径300nm未満)のレバミピド[化学名:2−(4−クロルベンゾイルアミノ)−3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)プロパン酸]を有効成分として含有する、口腔内及び咽頭内疾患の治療に適し、特に口腔粘膜障害治療に適した医薬組成物およびその製造方法およびその使用用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の医薬組成物の薬効成分であるレバミピドまたはその塩は、胃炎・胃潰瘍治療剤として有用であることが知られている。また、ドライアイ、すなわち、眼球乾燥症に関しても有効であることが示されており(特許文献1)、レバミピドを含有する唾液分泌促進用医薬組成物も知られている(特許文献2)。さらに、特許文献3には、レバミピドの経口剤が、インターロイキン−8産生抑制作用を有すること、およびその適用の一つに口内炎治療が含まれることが開示されている。
【0003】
一方、頭頸部癌の治療は、外科的切除および放射線単独もしくは抗癌剤との併用療法が中心になっている。放射線治療を行った場合には、副作用として口腔粘膜障害(口内炎)が高頻度に生じ、重篤な場合は、食事も出来なくなり、放射線治療の中断や中止を余儀なくされることもある。このように、口内炎は、頭頸部癌治療上の問題となっているが、有効な治療法がないのが現状である。
【0004】
放射線治療前にレバミピドを含む含嗽液で含嗽することにより、放射線療法による口内炎の予防に効果があることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、ここでの報告はレバミピドの口内炎の予防効果の示唆にとどまり、ここで用いられている含嗽液のレバミピドの濃度は比較的低く、服用容量や服用回数の点でなお問題がある。
【0005】
他にも、レバミピドを液体製剤として用いた例として、レバミピド錠剤を粉砕し、水やカルボキシメチルセルロースナトリウムに懸濁した例や、レバミピド錠剤をアルコックス(登録商標、ポリエチレンオキサイド)とイナゲル(登録商標)の混合溶液に懸濁した例(非特許文献2)があるが、いずれも低濃度で、300mg/300mLまたは600mg/300mL(1mg/mLまたは2mg/mL)で1回50mL程度が使用されており、またそのレバミピドは市販錠剤中に含まれている大きな粒子が使用されていた。また、アルコックス(ポリエチレンオキサイド)は工業用添加剤であり、医薬品添加剤として使用するには問題が残されている。
【0006】
口内炎用スプレー剤として、レバミピド100mg、イナゲル(F−13)2g、アルコックス(E−30)5gを滅菌精製水に混和し、パラベン類とエタノールを加え500mLにした製剤例(レバミピド0.2mg/mL)も報告されているが、レバミピドが低濃度の製剤であり、そのレバミピドの粒子の大きさについては特に検討されていなかった(特許文献4)。
【0007】
更に、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和して得られる改善された透明性を有するレバミピド微粒子懸濁溶液が報告されているが、当該特許には眼科用途しか記載がなく、当該特許組成物には粘度増強剤は含まれていない(特許文献5)。
また、水溶性高分子および界面活性剤から選択される少なくとも1種の化合物、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和して得られる微粒子懸濁溶液、および高分子量のヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはメチルセルロースを含む、懸濁性ハイドロゲルが報告されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−301866号公報
【特許文献2】特表2006−528662号公報
【特許文献3】特開平8−012578号公報
【特許文献4】特開2002−255852号公報
【特許文献5】WO2006/052018
【特許文献6】WO2007/132907
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】河田圭司ら:新薬と臨床, 50:273-280,2001
【非特許文献2】花輪剛久ら:月刊薬事, 50:1717-1724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
レバミピドを含有する含嗽液、または含嗽内服用薬液が放射線治療や癌化学療法に伴う口内炎治療に広く用いられるためには、レバミピドの濃度を高めて、口腔粘膜への付着性を高める必要がある一方、高濃度で課題となる分散性の確保や凝集の防止が課題であり、口内炎に対する効果がより高く、患者が使用しやすいレバミピドを含有する含嗽液、または含嗽内服用薬液の開発が待ち望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径500nm未満のレバミピドを有効成分として10mg/mL〜50mg/mL含有し、少なくとも1種の分散剤を含有し、かつ少なくとも1種の粘度増強剤を含有し、その粘度増強剤が平均粒子径500nm未満のレバミピド粒子に対して凝集作用を有さず、薬液粘度が10mPa・s〜500mPa・sの範囲内にある水性懸濁液の形態である医薬組成物が高い口内炎治療効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は下記の態様のものを含む。
[1] 平均粒子径500nm未満のレバミピドを有効成分として10mg/mL〜50mg/mL含有し、少なくとも1種の分散剤を含有し、かつ少なくとも1種の粘度増強剤を含有し、
薬液粘度が10mPa・s〜500mPa・sの範囲内にある医薬組成物。
【0013】
[2] レバミピドの平均粒子径が300nm未満であり、その含有量が20mg/mL〜40mg/mLであり、薬液粘度が20mPa・s〜300mPa・sの範囲内にある[1]の医薬組成物。
【0014】
[3] 分散剤に、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種が含まれる、[1]または[2]の医薬組成物。
[4] 分散剤にポリビニルピロリドンが含まれる[3]に記載の医薬組成物。
[5] 分散剤にポリビニルピロリドンK25および/又はポリビニルピロリドンK30が含まれる[4]に記載の医薬組成物。
【0015】
[6] 粘度増強剤にポリビニルピロリドンK90が含まれる[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7] 粘度増強剤にプルランが含まれる[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[8] 粘度増強剤にポリビニルピロリドンK90とプルランが含まれる[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[9] 粘度増強剤としてポリビニルピロリドンK90を5mg/mL〜30mg/mL含有し、プルランを10mg/mL〜30mg/mL含有する[8]に記載の医薬組成物。
【0016】
[10] 粘度増強剤がレバミピド粒子に対して凝集作用を有さないことを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの医薬組成物。
【0017】
[11] 少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して平均粒子径500nm未満のレバミピドの水性懸濁溶液を得て、これに粘度増強剤を加えて得られる[1]〜[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[12] 少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して平均粒子径500nm未満のレバミピドの水性懸濁溶液を得て、これに塩基を加えてpH3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7に調整して得られるレバミピドの水性懸濁溶液に粘度増強剤を加えて得られる[11]に記載の医薬組成物。
【0018】
[13] レバミピドの平均粒子径が200nm未満である[1]〜[12]の医薬組成物。
[14] レバミピドの形状が、長径1000nm未満、短径60nm未満で、長径と短径の比が3を超える均質な針状結晶である[1]〜[13]のいずれかに記載の医薬組成物。
【0019】
[15] さらに、保存剤(防腐剤)としてパラオキシ安息香酸類を含有する[1]〜[14]のいずれかに記載の医薬組成物。
[16] さらに、等張化剤、甘味剤、香料を含有する[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[17] 甘味剤としてステビアを配合する[16]に記載の医薬組成物。
[18] 水性懸濁液の形態である[1]〜[17]のいずれかに記載の医薬組成物。
【0020】
[19] 少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して平均粒子径500nm未満のレバミピドの水性懸濁溶液を得て、これに塩基を加えてpH3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7に調整して得られるレバミピドの水性懸濁溶液に粘度増強剤と、必要に応じて保存剤(防腐剤)、等張化剤、甘味剤、および/又は香料を加えて得られる[1]〜[18]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
【0021】
[20] [1]〜[18]のいずれかに記載の医薬組成物を口腔内に含ませることを特徴とする口腔粘膜障害の予防および/又は治療方法。
[21] [1]〜[18]のいずれかに記載の医薬組成物3mL〜20mLを口腔内に含ませた後、内服することを特徴とする口腔粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害の予防および/又は治療方法。
【0022】
[22] [21]に記載の口腔内に含ませる医薬組成物の量が5mL〜10mLである放射線及び化学療法に伴う口腔粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害の予防および/又は治療方法。
[23] [21]あるいは[22]に記載の方法を1日2〜6回繰り返す口腔粘膜障害予防および/又は治療方法。
【0023】
[24] [21]あるいは[22]に記載の方法を1日2〜6回繰り返す放射線及び化学療法に伴う口腔粘膜障害および/又は咽頭粘膜障害の予防および/又は治療方法。
[25] [1]〜[18]のいずれかに記載の医薬組成物を口腔内に含ませることを特徴とする口腔内乾燥症および/又は唾液分泌低下の予防又は治療方法。
[26] レバミピドが結晶である[1]〜[18]に記載の医薬組成物、およびその医薬組成物での上記製造方法、並びに上記予防および/又は治療方法。
【0024】
本発明のレバミピド含有医薬組成物は、以下を含む。
(a)平均粒子径500nm未満(好ましくは300nm未満)のレバミピド
(b)1以上の分散剤
(c)平均粒子径500nm未満(好ましくは300nm未満)のレバミピド粒子に対して凝集作用を有さない1以上の粘度増強剤
(d)精製水
(e)必要に応じて平均粒子径500nm未満のレバミピドを調製時に必要な1以上の酸又は1以上の塩基
(f)必要に応じて1以上のpH調整剤
(g)必要に応じて1以上の防腐剤
(h)必要に応じて1以上の甘味剤
(i)必要に応じて1以上の等張化剤
(j)必要に応じて1以上の香料
【0025】
本発明の口腔粘膜障害治療に適したレバミピドを含む医薬組成物のレバミピド平均粒子径は、500nm未満に制御されることが好ましい。また、好ましくは平均300nm未満、さらに好ましくは平均200nm未満に制御されることが好ましい。
【0026】
用語「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱法によって測定される体積平均直径をいう。粒度分布は、レーザー回折・散乱法により測定され、そして平均粒子径は、粒度分布から測定される。ここで用いられるレーザー回折・散乱の装置としては、例えば島津製作所のレーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J)などが挙げられる。
本発明の医薬組成物中の平均粒子径が500nm未満のレバミピドは、種々の方法で製造することが出来る。例えば、レバミピドを分散剤が含まれる水性溶液に懸濁して得た懸濁液を、ビーズミルやボールミルのような湿式媒体粉砕機を使用して粉砕することで、平均粒子径が500nm未満のレバミピドの懸濁液を製造することが可能である。このような湿式媒体粉砕機としては、ダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)、ウルトラアペックスミル(寿工業(株)製)、スターミル(アシザワ・ファインテック(株)製)等が挙げられる。
また、例えば、レバミピドを分散剤が含まれる水性溶液に懸濁して得た懸濁液を、高圧湿式分散機又は高圧湿式粉砕機を使用して粉砕することで、平均粒子径が500nm未満のレバミピド懸濁液を製造することが可能である。このような高圧湿式分散機又は高圧湿式粉砕機としては、ラニエ型やゴーリン型の高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、スターバースト((株)スギノマシン製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株)製)またはナノジェットパル((株)常光製)が挙げられる。
【0027】
本発明の医薬組成物中の平均粒子径が500nm未満のレバミピドを得る別の方法としては、分散剤、および/または糖類等とレバミピドを混合し、それをジェットミルやビーズミル等の乾式粉砕機を用いて混合粉砕を行い、媒体水溶液中に分散させる方法もあり得る。
本発明の医薬組成物中の平均粒子径が500nm未満のレバミピドを得る好ましい方法としては、少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和することにより、レバミピドの水性懸濁溶液を製造する方法である。
酸水溶液の酸は、たとえば一般的な酸である、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、クエン酸等が使用可能であるが、好ましくは塩酸が使用される。
【0028】
水溶性レバミピド塩含有水溶液を調製するために添加される塩基は、例えば一般的な塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トロメタノール(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、メグルミン、ジエタノールアミン等が使用可能であるが、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。レバミピドは塩の状態でも遊離酸でも使用可能であるが、水溶性レバミピド塩含有水溶液の状態では、いずれにせよレバミピドが塩基と共存して、水中で溶解した状態である。
【0029】
使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、ポリソルベート80、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、水溶性キトサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、ゼラチン等の内、1種または複数種類使用される。
その中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度グレード(2%水溶液)は、好ましくは20mPa・s以下であり、カルボキシメチルセルロースナトリウムの粘度グレード(2%水溶液)は、好ましくは50mPa・s以下である。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールは、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(プルロニックF68)が好ましい。
分散剤の中で、最も好ましいのはポリビニルピロリドンである。ポリビニルピロリドンの平均分子量は5万以下が好ましく、より好ましいのはポリビニルピロリドンK25又はポリビニルピロリドンK30である。
本発明の医薬組成物中の分散剤の添加濃度は、好ましくは0.1〜10%(w/v)、より好ましくは0.3〜5%(w/v)、さらに好ましくは0.5〜3%(w/v)で、最も好ましいのは1〜2%(w/v)である。
【0030】
上記、少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、および水溶性レバミピド塩含有水溶液を混和するには、(i)少なくとも1種の分散剤を含有する酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和するか、
(ii)酸水溶液、少なくとも1種の分散剤を含有する水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和するか、あるいは
(iii)少なくとも1種の分散剤を含有する酸水溶液、同じ少なくとも1種の分散剤を水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和してもよい。
溶液を混和する方法は特に限定されるものではないが、ディスパーザーやホモミキサー、ホモジナイザーなど、一般的に製剤用途として使用される攪拌、分散装置中で剪断力を与えながら、混和させる方法が好ましく使用される。また、混和時に超音波を使用してもよい。
【0031】
上記のように、少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して得られたレバミピド結晶の水性懸濁液に、塩基を加え、pHを3〜7に調整後、撹拌・分散工程および/または透析工程を加えることが好ましい。ここで使用される塩基は前記塩基と同じものが使用される。
撹拌・分散装置としては、ディスパーザーやホモミキサー、ホモジナイザーなど、一般的に医薬用途として使用される撹拌・分散装置であれば種々選択が可能である。その中でも、液中で凝集している粒子を効率的に分散させることが出来る撹拌・分散装置が望ましい。ロボミックス(プライミクス(株)製)やクレアミックス(エム・テクニック(株)製)等の回転式ホモジナイザーの他、湿式ジェットミルや高圧ホモジナイザー等が例として挙げられる。その中でも、スクリーンとローターが各々逆方向に高速で回転することにより、強烈な液−液剪断力を有するWモーション型クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を使用することで、上記のように調製したレバミピド水性懸濁液の一次粒子の分散性が顕著に向上する。
本発明者らは、上記のように晶析調製したレバミピド水性懸濁液に、透析工程を加えて、レバミピド結晶の平均粒子径を500nm未満にすることで、長期保管してもレバミピド粒子の「凝集作用を有さない」懸濁液が調製可能であることを見出した。透析装置としては、ペリコン(日本ミリポア(株)製)やプロスタック(日本ミリポア(株)製)、ザルトコン(ザルトリウス(株)製)等一般的に医薬用途として使用される透析装置であれば種々選択が可能である。透析を行うレバミピド水性懸濁液は、pHが低いと凝集のため透析膜の通過性が悪く、一方、pHが高いとレバミピドが溶解し含量損出が生じるため、pHは3〜7、好ましくはpH4〜7、より好ましくはpH5〜7で行うことが望ましい。透析工程と分散・撹拌工程は、それぞれ単独で行い製造することも可能である。又、両工程を組み合わせ、透析工程を行った後、分散・撹拌工程を行うことも可能であるし、分散・撹拌工程を行った後、透析工程を行うことも可能である。
【0032】
少なくとも1種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して得られたレバミピドの形状は、長径1000nm未満、短径60nm未満で、長径と短径の比が3を超える均質な針状結晶となる。
分散剤としてポリビニルピロリドンを用いた場合には、長径500nm未満、短径60nm未満、好ましくは長径300nm未満、短径50nm未満で、長径と短径の比が3を超える均質な針状結晶、さらに好ましくは長径200nm程度、短径40nm程度で、長径と短径の比が5程度の均質な針状結晶の懸濁液を上記の方法により得ることができる。
【0033】
本発明の医薬組成物中には、粘度増強剤が含有されるが、その粘度増強剤は平均粒子径500nm未満のレバミピド粒子に対して凝集作用を有さないことが好ましい。「凝集作用を有さない」とは、その粘度増強剤を平均粒子径500nm未満のレバミピド懸濁液に加えた時、そのレバミピドの平均粒子径が500nm未満であることをいう。好ましくは、その粘度増強剤を平均粒子径300nm未満のレバミピド懸濁液に加えた時、そのレバミピドの平均粒子径が300nm未満であることをいう。さらに、医薬品としての流通を確保するために、少なくとも1年間以上保管した後のレバミピドの平均粒子径が500nm未満で維持される必要がある。
平均粒子径500nm未満のレバミピド懸濁液は、粘度増強剤の添加により凝集を引き起こしやすく、凝集作用を引き起こさない粘度増強剤は稀である。一般的に粘度増強剤として使用されるカラギーナン(カラゲニン)、グアーガム、ジェランガム、ヒアルロン酸、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムは、上記により調製された平均粒子径500nm未満のレバミピド粒子を凝集させるため、本発明には使用出来ない。
【0034】
本発明で使用される粘度増強剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンK90、プルラン等が挙げられる。
分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する場合には、粘度増強剤としてヒドロキシプロピルセルロース、プルラン等を用いることが好ましい。分散剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを使用する場合には、粘度増強剤としてポリビニルアルコール、プルラン等を用いることが好ましい。分散剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用する場合には、粘度増強剤として高分子量(高粘度グレード)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン K90、およびプルランを用いることが好ましい。分散剤としてポリビニルピロリドンK25又はポリビニルピロリドンK30を使用した場合、粘度増強剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンK90、プルラン等を用いることが好ましい。
本発明の医薬組成物における粘度増強剤の好ましい配合量は、5mg/mL〜150mg/mLである。より好ましくは、10mg/mL〜60mg/mLであり、さらに好ましくは15mg/mL〜40mg/mLである。
また、粘度増強剤が配合された本発明の医薬組成物は、粘凋な溶液であり、薬液粘度が10mPa・s〜500mPa・sであり、好ましくは薬液粘度が20mPa・s〜300mPa・sであり、最も好ましくは30mPa・s〜200mPa・sである。粘度は、日本薬局方粘度測定法に準じて、例えば円すい−平板型回転粘度計(コーンプレート型粘度計)を用いて、25℃において測定された値をいう。
【0035】
本発明者等は、鋭意努力した結果、分散剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した場合、粘度増強剤としてヒドロキシプロピルセルロースおよび/またはプルランの添加がレバミピドの凝集を引き起こさず粘度増強作用をもたらすことを見出した。また、分散剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを使用した場合、粘度増強剤としてポリビニルアルコールおよび/またはプルランの添加がレバミピドの凝集を引き起こさず粘度増強作用をもたらすことを見出した。分散剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムを使用した場合、粘度増強剤として高分子量(高粘度グレード)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン K90、および/またはプルランの添加がレバミピドの凝集を引き起こさず粘度増強作用をもたらすことを見出した。さらには、分散剤としてポリビニルピロリドンK25又はポリビニルピロリドンK30を使用した場合、粘度増強剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンK90および/またはプルランの添加がレバミピドの凝集を引き起こさず粘度増強作用をもたらすことを見出した。レバミピドの分散剤の種類により、凝集を引き起こさない粘度増強剤の種類が特異的に異なる事は、予想外であった。
【0036】
特に、分散剤にポリビニルピロリドンK25又はポリビニルピロリドンK30を使用した場合、粘度増強剤としてポリビニルピロリドンK90とプルランの組み合わせを添加することで、レバミピドの凝集を引き起こさず、好ましい薬液粘度を達成することが可能となった。さらに、意外な事に、平均粒子径が1μmを超える10mg/mL〜40mg/mLのレバミピド水性懸濁液にポリビニルピロリドンK90とプルランを加えても、ポリビニルピロリドンK90とプルランのみの溶液と比較して粘度が増大しなかったのにも関わらず、平均粒子径が500nm未満の10mg/mL〜40mg/mLのレバミピド水性懸濁液にポリビニルピロリドンK90とプルランを加えた場合、顕著に粘度が上昇し、好ましい薬液粘度を達成することが可能となった。これは、まことに予想外であった。粘度増強剤として配合するポリビニルピロリドンK90の好ましい添加範囲は5mg/mL〜50mg/mLとプルランの好ましい添加範囲10mg/mL〜100mg/mLの組み合わせである。より好ましいポリビニルピロリドンK90の添加範囲は5mg/mL〜30mg/mLとより好ましいプルランの添加範囲は10mg/mL〜30mg/mLの組み合わせである。最も好ましい添加範囲は、ポリビニルピロリドンK90を10mg/mL〜20mg/mLと、プルランを20mg/mLで両成分ともに配合した場合に、室温におけるレバミピド粒子の沈降や凝集を生じず、適正な薬液粘度が達成される。
【0037】
我々は鋭意研究を続けた結果、上記平均粒子径500nm未満のレバミピドを有効成分として10mg/mL〜50mg/mL含有し、少なくとも一種の分散剤を含有し、かつ少なくとも1種の粘度増強剤を含有し、その粘度増強剤が平均粒子径500nm未満のレバミピド粒子に対して凝集作用を有さず、薬液粘度が10mPa・s〜500mPa・sの範囲内にある水性懸濁液の形態である医薬組成物、好ましくは、平均粒子径300nm未満のレバミピドを有効成分として20mg/mL〜40mg/mL含有し、少なくとも一種の分散剤を含有し、かつ少なくとも1種の粘度増強剤を含有し、その粘度増強剤が平均粒子径300nm未満のレバミピド粒子に対して凝集作用を有さず、薬液粘度が20mPa・s〜300mPa・sの範囲内にある水性懸濁液の形態である医薬組成物が、ラット口内炎モデルにおいて顕著に口腔内潰瘍に対する治癒効果があることを発見した。これは、従来用いられていた平均粒子径が1μm以上の1mg/mLまたは2mg/mLのレバミピド懸濁液では認められていない効果であり、誠に驚くべきことである。比較例に示すように、平均粒子径が1μm以上のレバミピド懸濁液ではたとえ20mg/mLの濃度にしても、口腔内潰瘍に対する治癒効果が認められないのにも関わらず、本発明である平均粒子径500nm未満のレバミピドでは20mg/mLの濃度でラット口内炎モデルにおいて口腔内潰瘍に対する治癒効果が確認された。また、本発明の医薬組成物は、レバミピド粒子に対して凝集作用を有さず、医薬品として流通可能な安定性を維持出来ることも産業用メリットである。
本発明品は、レバミピド粒子が凝集を引き起こさない粘凋性と流動性のある懸濁液であり、WO2007/132907公報に示されるような懸濁性ハイドロゲルは含まない。懸濁性ハイドロゲルは、平均粒子径500nm未満のレバミピドの結晶間で相互作用(凝集)を生じることから、チキソトロピー性を有するハイドロゲルを形成する。このようなハイドロゲルは、粒子が凝集していることから、本発明の口内炎用途には好ましくない。
【0038】
また、本発明の医薬組成物には、必要に応じて、経口用液剤として一般的に使用される保存剤(防腐剤)、等張化剤、甘味剤、香料、pH調整剤等各種成分を添加し、さらに有用な製剤とすることが可能である。
【0039】
本発明の医薬組成物には、医薬品として流通中における発明品中の菌汚染を抑制するために、保存剤(防腐剤)を配合する事が出来る。保存剤(防腐剤)の例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩、グルコン酸クロルヘキシジン等の陽イオン化合物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール化合物、デヒドロ酢酸ナトリウム、チメロサール等が挙げられるが、レバミピド粒子の凝集を生じさせないことが望ましい。本発明者は、鋭意研究した結果、レバミピド粒子の凝集を生じさせない保存剤として、パラオキシ安息香酸エステル類が好ましく、その中でも、パラオキシ安息香酸メチルとパラオキシ安息香酸エチルが最も好ましいことを見出した。パラオキシ安息香酸メチルとパラオキシ安息香酸エチルは、それぞれ単独で配合することも可能であるが、組み合わせて配合する方がより好ましい。パラオキシ安息香酸メチルの好ましい配合量は、0.5mg/mL〜2mg/mLであり、パラオキシ安息香酸エチルの好ましい配合量は0.1mg/mL〜0.8mg/mLである。
【0040】
本発明の医薬組成物には、口内炎に対する刺激を抑制するために、等張化剤を添加することが出来る。等張化剤として、非イオン性等張化剤が望ましい。非イオン性等張化剤は、一般的な医薬用途の非イオン性等張化剤であるマンニトール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、キシリトール、トレハロース、マルトース、マルチトール等が使用出来き、それぞれ等張になる添加量を配合することが好ましい。
【0041】
本発明の医薬組成物は、苦み物質として知られるレバミピドを主成分として配合するため、苦みを有し、苦みを抑制するために、甘味剤を配合することが出来る。甘味剤としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。本発明者は、鋭意研究した結果、レバミピド粒子の凝集を生じさせず、本発明品を口腔内に含むことが出来るほど苦みを抑制できる好ましい甘味剤として、ステビアを見出した。ステビアの好ましい配合量は、0.5mg/mL〜1mg/mLである。
【0042】
本発明の医薬組成物には、さらにレバミピドの苦みを抑制するために、香料を配合することが出来る。香料の例として、オレンジフレーバー、オレンジエッセンス、グレープフルーツフレーバー、イチゴフレーバー、ミントフレーバー、ココアフレーバー、コヒーフレーバー、チョコレートフレーバー等、一般的に医療用香料として入手できるものを使用可能である。香料の好ましい配合量は0.5mg/mL〜1mg/mLである。
【0043】
レバミピド水性懸濁液に、pH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、クエン酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トロメタノール(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン)、メグルミン、ジエタノールアミン等の塩基を添加することによって、口腔内刺激の少ないpHとしてpH5〜7、好ましくはpH5.5〜6.5に調整することが可能である。
【0044】
さらに、必要に応じて、緩衝剤、安定化剤等も配合することが可能である。
緩衝剤の例としては、酢酸及び酢酸ナトリウム等の酢酸塩、クエン酸及びクエン酸塩、リン酸二水素一ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二カリウム等のリン酸塩、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸塩、ホウ酸及びその塩が挙げられる。
安定化剤の例としては、アスコルビン酸及びその塩、トコフェロール、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
本発明の医薬組成物の製造方法としては、上記のように、分散剤が含まれる平均粒子径が500nm未満のレバミピドの水性懸濁液に、粘度増強剤を加え、必要に応じて、保存剤(防腐剤)、等張化剤、甘味剤、香料、等各種成分を添加し、pH調整剤により、pHを5〜7、好ましくは、pH5.5〜6.5に調整することで製造される。
最も好ましい方法としては、少なくとも一種の分散剤、酸水溶液、水溶性レバミピド塩含有水溶液、および任意の他の成分もしくは溶媒を混和して得られるレバミピド結晶の水性懸濁溶液に、塩基を加えてpH3〜7にし、分散および/または透析を行った後、pHを5〜7に調整して得られるレバミピド結晶の水性懸濁溶液に、粘度増強剤と、必要に応じて保存剤(防腐剤)、等張化剤、甘味剤、香料を加えた製造方法である。
【0046】
上記のように、本発明の医薬組成物は、保存剤(防腐剤)としてはパラオキシ安息香酸エステル類、等張化剤として非イオン性等張化剤、甘味剤としてステビア、及び香料、pH調整剤を配合することが出来る、好ましくは、パラオキシ安息香酸メチルを0.5mg/mL〜2mg/mL、パラオキシ安息香酸エチルを0.1mg/mL〜0.8mg/mL、非イオン性等張化剤を等張になる量、ステビアを0.5mg/mL〜1mg/mL、及び香料を配合し、pH調整剤により、pHを5.5〜6.5に調整することによって、平均粒子径が500nm未満のレバミピドを凝集させることなく、医薬品として流通中における発明品中の細菌等の増殖を抑制し、レバミピドの苦みを口腔内溶液として服用するのに問題ない程度で、口腔内への刺激も抑制することが可能となった。この点も、本発明品の産業用利用において、非常に有用である。
【0047】
本発明医薬組成物の用途としては、口腔粘膜障害および/または咽頭粘膜傷害の予防および/または治療が挙げられ、好ましくは、癌治療のための放射線及び化学療法に伴う口腔粘膜障害の予防および/または治療である。さらに、好ましくは、頭頸部癌治療のための放射線療法に伴う、口腔粘膜障害の予防および/または治療である。さらには、口腔内乾燥症及び/又は唾液分泌低下の予防又は治療にも有用である。
【0048】
本発明医薬組成物の使用方法として、本発明組成物を口腔内に含む(含嗽)、好ましくは口腔内に含ませた後に内服する(含嗽内服)ことで、口腔粘膜障害の予防および/または治療に有用である。服薬量は、1回に3mL〜20mL、好ましくは5mL〜10mL、さらに好ましくは7mL〜8mLである。上記、含嗽、又は、含嗽内服は、1日2回〜6回、好ましくは1日4回〜6回、さらに好ましくは1日4回繰り返すことが好ましい。従来のレバミピド懸濁製剤は、平均粒子径が1μm以上のレバミピドを1〜2mg/mLの濃度で懸濁した製剤である。しかし、比較例1に示すように、このような製剤は、20mg/mLの濃度にしても、ラット口内炎モデルにおいて口腔内潰瘍に対する治癒効果が認められない。
【0049】
一方、本発明組成物である平均粒子径500nm(好ましくは300nm)未満のレバミピドの薬液粘度が10mPa・s〜500mPa・s(好ましくは20mPa・s〜300mPa・s)の範囲内にある水性懸濁液では、ラット口内炎モデルにおいて従来の製剤(比較例1)や本特許範囲外の製剤(比較例2、3)で効果が認められない20mg/mLの濃度で顕著に口腔内潰瘍に対する治癒効果があった。
【0050】
本発明の医薬組成物は、含嗽、及び、含嗽内服のどちらでも使用可能であるが、頭頸部癌治療のための放射線療法に伴う口腔粘膜障害の予防及び治療の場合、咽頭炎、食道炎も伴う場合があるため、含嗽内服がより好ましい。含嗽内服の場合、全身性副作用を考えた場合、投与量を下げることが出来る効果の高い医薬組成物が好ましい。本発明の医薬組成物は、このような点でも有用である。
【発明の効果】
【0051】
ラット口内炎モデルにおける口腔内潰瘍に対する治癒効果に優れた本発明の医薬組成物は、癌治療上の問題となっている口内炎に対する治療薬として、非常に有用な医薬組成物であり、産業的にも有意義である。さらに、本発明組成物は、ラット放射線照射モデルにおける口腔内潰瘍を抑制することも判明した。このことから、口腔内潰瘍に対する治療効果に加え、頭頸部癌治療上の問題となっている放射線治療に伴う口腔粘膜障害(口内炎)に本医薬品組成物が優れた予防効果を発揮し、その結果として、臨床的に放射線治療の継続が可能になり、頭頸部癌の治療成績の向上に繋がる可能性が示唆される。
【0052】
加えて、本発明品は、平均粒子径が500nm未満のレバミピドを凝集させることなく、医薬品として流通可能な安定性を維持出来る。また、平均粒子径が500nm未満のレバミピドを凝集させることなく、医薬品として流通中における発明品中の細菌等の増殖を抑制することが出来る。さらに、レバミピドを単純に溶解した水溶液は非常に苦みが強く服用に耐えることが出来ないが、本発明品では、レバミピドの苦みは口腔内溶液として服用するのに問題なく、さらに口腔内への製剤の刺激も抑制することが出来る。以上の事から、本発明品は、癌治療上の問題となっている口内炎に対する治療薬として、極めて有用な特徴を有しており、癌治療に貢献することが期待される、医療上・産業上極めて有用な医薬組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に本発明を、実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)(7L2P、Ashland社製)20gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(7L2P)−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム17.6gを約2600gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)81.6gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を2940gとして、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製し、この調製液から1470gを分取した。
氷冷下のカルボキシメチルセルロースナトリウム−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で5500rpmの速度で撹拌しながら、約50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液をカルボキシメチルセルロースナトリウム−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を全て添加し、その薬液を20分間撹拌した。一夜放置後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約5.8に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで40分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム(セロゲンPRS、第一工業製薬(株)製)を3%、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を4%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、33mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.18μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0055】
[比較例1]
下表の量に従い、精製水100mLにカルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業(株)製)とD−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を溶解し、pHを6.0〜6.2に調整した。さらにレバミピド原末(大塚製薬(株)製)を懸濁し、2%レバミピド懸濁液を調製した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、12mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は13.9μmであった(超音波非照射、屈折率2.00−0.20i)。
【0056】
[試験例1]
焼灼法による口腔内潰瘍を以下のように惹起した。即ち、通常飼育したラットをイソフルラン吸入により麻酔した。仰向けにし,開胸器を用いて上顎と下顎を開けて視野を取りながら左側口腔粘膜の中央部に先端の直径が2mmのモノポーラーを当て、約10〜20秒間、設定出力20で円形(直径3〜4mm)に焼灼することにより口腔内潰瘍を惹起した。焼灼後は飼育ケージに戻し、自然覚醒させた。
口腔内潰瘍惹起日を開始日(Day0)とした。口腔内潰瘍惹起2日後(Day2)、体重に基づき、層別無作為抽出法を用いてラットの群分けを行った。焼灼法により口腔内潰瘍を惹起した3日後(Day3)から、1日4回(8:00、11:00、14:00及び17:00前後)を5日間、実施例1の2%レバミピド懸濁液と比較例1の2%レバミピド懸濁液及びそれぞれの製剤用溶媒(実施例および比較例からレバミピドを除いた溶媒)を0.5mL/kgの用量でラットの口腔内に投与した。イソフルラン吸入により麻酔したラットを左側臥位に寝かせ、ピンセットまたは開胸器を用いて口腔内を開いた状態で潰瘍を作製した左頬に各試験サンプルを投与した。
Day8における口腔内潰瘍面積を測定した。溶媒投与群に対して、実施例1の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められた(n=6、p<0.01、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対する実施例1のレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は20.1%であった。
一方、溶媒投与群に対して比較例1の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められなかった(n=6、n.s.、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対する比較例1のレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は8.7%であった。
【0057】
[実施例2]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(TC−5E、信越化学工業(株)製)40gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのHPMC(TC−5E)−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム17.6gを約2600gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)81.6gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を2940gとして、水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を調製し、この調製液から1470gを分取した。
氷冷下のHPMC(TC−5E)−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で5500rpmの速度で撹拌しながら、約50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、HPMC(TC−5E)−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加し、その薬液を20分間撹拌した。一夜放置後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約5.8に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで40分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達(株)製)を2%、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を4%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、42mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.17μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0058】
[比較例2]
実施例2の濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、D−ソルビトールを4%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、8mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.08μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0059】
[試験例2]
試験例1と同様に、口腔内潰瘍をラットに惹起し、群分けを行った。焼灼法により口腔内潰瘍を惹起した3日後(Day3)から、1日4回(8:00、11:00、14:00及び17:00前後)を5日間、実施例2の2%レバミピド懸濁液と比較例2の2%レバミピド懸濁液及びそれぞれの製剤用溶媒(実施例および比較例からレバミピドを除いた溶媒)を0.5mL/kgの用量でラットの口腔内に投与した。イソフルラン吸入により麻酔したラットを左側臥位に寝かせ、ピンセットまたは開胸器を用いて口腔内を開いた状態で潰瘍を作製した左頬に各試験サンプルを投与した。
Day8における口腔内潰瘍面積を測定した。溶媒投与群に対して、実施例2の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められた(n=6、p<0.05、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対する実施例2のレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は18.1%であった。
一方、溶媒投与群に対して比較例2の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められなかった(n=6、n.s.、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対する比較例2のレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は10.2%であった。
【0060】
[実施例3]
ポリビニルピロリドンK25(PVPK25)(BASF社製)40gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK25−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム17.6gを約2600gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)81.6gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を2940gとして、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製し、この調製液から1470gを分取した。
氷冷下のPVPK25−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で5500rpmの速度で撹拌しながら、約50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK25−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を全て添加し、その薬液を20分間撹拌した。一夜放置後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約5.8に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで40分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)を3%、ステビア(ステビロンC、守田化学工業(株)製)を0.05%、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を4%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、25mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.09μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0061】
[実施例4]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)20gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム17.6gを約2600gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)81.6gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を2940gとして、水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を調製し、この調製液から1470gを分取した。
氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で3000rpmの速度で撹拌しながら、約50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加し、その薬液を30分間撹拌した。一夜放置後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約5.8に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで40分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、プルランを5%、ステビアを(ステビロンC、守田化学工業(株)製)を0.05%、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を4%、メチルパラベンを0.1%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、27mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.17μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0062】
[比較例3]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)20gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム17.6gを約2600gの精製水を加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)81.6gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を2940gとして、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製し、この調製液から1470gを分取した。
氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で3000rpmの速度で撹拌しながら、約50℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加し、その薬液を30分間撹拌した。一夜放置後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約5.8に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで40分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定し、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)を1%、ステビアを(ステビロンC、守田化学工業(株)製)を0.05%、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)を4%、メチルパラベンを0.1%になるように添加し、2%レバミピド懸濁液になるように、精製水で希釈した。
回転粘度計(TOKI SANGYO RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、5mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.09μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0063】
[試験例3]
試験例1と同様に、口腔内潰瘍をラットに惹起し、群分けを行った。焼灼法により口腔内潰瘍を惹起した3日後(Day3)から、1日4回(8:00、11:00、14:00及び17:00前後)を5日間、実施例3と実施例4の2%レバミピド懸濁液と比較例3の2%レバミピド懸濁液及びそれぞれの製剤用溶媒(実施例および比較例からレバミピドを除いた溶媒)を0.5mL/kgの用量でラットの口腔内に投与した。イソフルラン吸入により麻酔したラットを左側臥位に寝かせ、ピンセットまたは開胸器を用いて口腔内を開いた状態で潰瘍を作製した左頬に各試験サンプルを投与した。
Day8における口腔内潰瘍面積を測定した。溶媒投与群に対して、実施例3の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められた(n=6、p<0.01、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対するレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は25.1%であった。また、溶媒投与群に対して、実施例4の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められた(n=6、p<0.01、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対するレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は24.8%であった。
一方、溶媒投与群に対して比較例3の2%レバミピド懸濁液投与群は、有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められなかった(n=6、n.s.、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対するレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率は11.9%であった。
【0064】
[実施例5]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)20gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム8.8gを約1300gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)40.8gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を1470gとして、水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を調製した。
氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で3000rpmの速度で撹拌しながら、50−55℃に維持した水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を全て添加した後、その薬液を30分間撹拌した。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約6.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで60分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定したところ3.13w/v%であった。この薬液193.6gに、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)6g、プルラン((株)林原製)6g、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)11.4g、ステビア(ステビロンC、守田化学工業(株)製)0.21g、パラオキシ安息香酸メチル(和光純薬工業(株)製)0.30g、ストロベリーフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.24gを加えた後、精製水を加え、全量300mLにした。添加した添加剤を溶解後、pHを塩酸又は水酸化ナトリウムでpHを6.2に調整した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、50mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.11μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0065】
[実施例6]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)10gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム8.8gを約1300gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)40.8gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を1470gとして、水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を調製した
氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で3000rpmの速度で撹拌しながら、50−55℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加した後、その薬液を30分間撹拌した。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約6.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで60分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定したところ4.98w/v%であった。この薬液243.6gに、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)6g、プルラン((株)林原製)6g、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)11.4g、ステビア(ステビロンC、守田化学工業(株)製)0.21g、パラオキシ安息香酸メチル(和光純薬工業(株)製)0.30g、ストロベリーフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.24gを加えた後、精製水を加え、全量300mLにした。添加した添加剤を溶解後、pHを塩酸又は水酸化ナトリウムでpHを6.2に調整した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、140mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.17μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0066】
[実施例7]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)40gを約400gの精製水に溶解し、濃塩酸28.4gを加え、さらに精製水を加えて、550gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム8.8gを約1300gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)40.8gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を1470gとして、水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を調製した
氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(ロボミックス、プライミクス(株)製)で3000rpmの速度で撹拌しながら、50−55℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加した後、その薬液を30分間撹拌した。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液をその薬液に添加し、pHを約6.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18000rpm、スクリーンを約16000rpmで60分間、分散を行った。この薬液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行った。
濃脱縮塩を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定したところ2.29w/v%であった。この薬液132.1gに、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)6g、プルラン((株)林原製)6g、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)11.4g、ステビア(ステビロンC、守田化学工業(株)製)0.21g、パラオキシ安息香酸メチル(和光純薬工業(株)製)0.30g、ストロベリーフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.24gを加えた後、精製水を加え、全量300mLにした。添加した添加剤を溶解後、pHを塩酸又は水酸化ナトリウムでpHを6.2に調整した。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、26mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.18μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0067】
[試験例4]
試験例1と同様に、口腔内潰瘍をラットに惹起し、群分けを行った。焼灼法により口腔内潰瘍を惹起した3日後(Day3)から、1日4回(8:00、11:00、14:00及び17:00前後)を5日間、1%(実施例7)、2%(実施例5)、4%(実施例6)レバミピド懸濁液及び製剤用溶媒(実施例からレバミピドを除いた溶媒)を0.5mL/kgの用量でラットの口腔内に投与した。イソフルラン吸入により麻酔したラットを左側臥位に寝かせ、ピンセットまたは開胸器を用いて口腔内を開いた状態で潰瘍を作製した左頬に各試験サンプルを投与した。
Day8における口腔内潰瘍面積を測定し、溶媒投与群の潰瘍面積に対するレバミピド懸濁液投与群の潰瘍面積の減少率を求めた。溶媒投与群に対して、実施例7に相当する1%レバミピド懸濁液投与群で口腔内潰瘍面積縮小傾向が認められ、実施例5、6に相当する2%、4%レバミピド懸濁液投与群で有意な口腔内潰瘍面積縮小が認められた(n=7、p<0.01、t検定)。溶媒投与群の潰瘍面積に対する、1%、2%及び4%レバミピド懸濁液投与群潰瘍面積の減少率は、それぞれ13.9%、25.3%及び33.0%であった(n=7)。
【0068】
[実施例8]
ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)(BASF社製)60gを約1400gの精製水に溶解し、濃塩酸溶液85.2gを加え、さらに精製水を加えて、1650gのPVPK30−塩酸水溶液を調製した。一方、水酸化ナトリウム26.4gを約4000gの精製水に加えて調製した水酸化ナトリウム水溶液に、レバミピド(大塚製薬(株)製)122.4gを加温溶解し、さらに精製水を加え、全量を4410gとして、水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を調製した。氷冷下のPVPK30−塩酸水溶液を分散機(クレアミックスW-モーション、エム・テクニック(株)製)でローターを約6000rpm、スクリーンを約4100rpmの速度で撹拌しながら、50−55℃に維持した水酸化ナトリウム−レバミピド溶液を、PVPK30−塩酸水溶液中に徐々に添加し、レバミピド結晶を析出させた。水酸化ナトリウム-レバミピド溶液を全て添加した後、30分間撹拌した。溶液を脱泡後、5N水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを約6.0に調整した。
このようにして得られたレバミピド水性懸濁溶液を、クレアミックスWモーション(エム・テクニック(株)製)を用いて、ローターを約18100rpm、スクリーンを約16000rpmで180分間、分散を行った。この溶液を透析装置(ペリコン2ミニ、日本ミリポア(株)製)で濃縮脱塩を行い、ろ過フィルター(Acropak500 capsule 0.8/0.45μm、PALL社製)でろ過を行った。
濃脱縮塩、ろ過を行ったサンプルのレバミピド濃度を測定したところ5.10w/v%であった。この溶液792.16gに、ポリビニルピロリドンK90(PVPK90)(BASF社製)10g、プルラン((株)林原製)20g、D−ソルビトール(和光純薬工業(株)製)38g、ステビア(ステビロンC、守田化学工業(株)製)0.7g、パラオキシ安息香酸メチル(和光純薬工業(株)製)1.30g、パラオキシ安息香酸エチル(和光純薬工業(株)製)0.55g、ストロベリーフレーバー(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.8gを加えた。添加した添加剤を溶解後、水酸化ナトリウムでpHを6.2に調整した後、精製水を加えて全量1000mLにした。
回転粘度計(RC-100A、東機産業(株)製)で測定した粘度は、37.4mPa・sであった。レーザー回折粒度分布測定装置(SALD-3000J、(株)島津製作所製)を用いて、レバミピド懸濁液を水中に分散させて測定した平均粒子径は0.23μmであった(超音波非照射、屈折率1.70−0.20i)。
【0069】
[試験例5]
X線照射による舌炎を以下のように惹起した。即ち、通常飼育したラットをペントバルビタールナトリウム溶液を腹腔内投与し、麻酔した。口吻部のみ照射するために、ラットを鉛板(厚さ0.5 mm)で二重に被覆することで遮へいし、露出した口吻部に15Gyの線量にて照射した。X線照射後、ラットを飼育ケージに戻し、自然覚醒させた。
X線照射日を開始日(Day0)とした。
試験開始日の8日前に、体重に基づき、層別無作為抽出法を用いて群分けを行った。試験開始日の7日前から、実施例7の方法に準じて(但し、製造スケールおよび、パラオキシ安息香酸メチルとパラオキシ安息香酸エチルの濃度は異なり、それぞれ0.13%と0.055%)製造した1%レバミピド懸濁液、実施例5の方法に準じて(但し、製造スケールおよび、パラオキシ安息香酸メチルとパラオキシ安息香酸エチルの濃度は異なり、それぞれ0.13%と0.055%)製造した2%レバミピド懸濁液、実施例8の4%レバミピド懸濁液、及びその溶媒(実施例からレバミピドを除いた溶媒)を、0.5mL/kgの用量で口腔内に14日間(Day6まで)、1日6回、ラットに投与した。
X線照射をDay0とし、Day7における舌炎傷害面積を測定した。レバミピド懸濁液投与群における舌炎傷害面積は、溶媒投与群と比較して用量依存的に縮小した。溶媒投与群と比較して、レバミピド懸濁液投与群における舌炎傷害面積は、1%より有意な縮小が認められ(n=12、p<0.05、Williams検定)、2%、4%においても有意な縮小が認められた(n=10〜11、p<0.01、Williams検定)。溶媒投与群の傷害面積に対するレバミピド懸濁液の潰瘍面積の減少率は1%、2%及び4%レバミピド懸濁液投与群で順に、23.8%、49.3%及び58.0%であった。