(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101344
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】整形外科用衝撃を付与する電気モータ駆動式器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
A61B17/16
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-511440(P2015-511440)
(86)(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公表番号】特表2015-517341(P2015-517341A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】US2013029944
(87)【国際公開番号】WO2013169334
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】13/466,870
(32)【優先日】2012年5月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516210311
【氏名又は名称】メディカル エンタープライゼス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、ペディチニ
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−219583(JP,A)
【文献】
特表2000−510020(JP,A)
【文献】
特開2002−79476(JP,A)
【文献】
米国特許第5057112(US,A)
【文献】
米国特許第5108400(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/92
B25D 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を打撃するための整形外科用の衝撃付与器具であって、
モータ、
直線運動変換器、
前記直線運動変換器に動作可能に連結され、第1の端部及び第2の端部を有する圧縮ピストン、
空気圧縮室、
打撃体、
前記打撃体を適所に保持する戻り止め、
制御手段、
アンビル要素、
ブローチ、ノミ、拡孔器または他の手術用具を保持することが可能であり、前記アンビル要素に動作可能に連結されているアダプタ、
取っ手、を備え、
前記制御手段は、前記モータに、前記直線運動変換器を移動させるよう命令し、前記圧縮ピストンを移動させて前記空気室内の空気を圧縮または減圧し、
前記圧縮された空気が前記戻り止めの保持力を上回ると、前記打撃体は第1の位置から第2の位置に移動して前記アンビル要素を打撃し、
前記打撃体は、当該衝撃付与器具が対象物へ向けて付勢されると前記アダプタに対して第1の方向へ、当該衝撃付与器具が対象物から引き離されると前記アダプタに対して前記第1の方向とは逆方向へ、連続可能かつ制御可能な衝撃力を付与する、
ことを特徴とする整形外科用の衝撃付与器具。
【請求項2】
前記直線運動変換器は、スライダクランク機構を含む
請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記戻り止めは、機械的な戻り止め、磁気的な戻り止め及びソレノイドのうちの少なくとも1つから選択される
請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記制御手段は、一回の打撃衝撃、及び可変速度の打撃衝撃のうちの少なくとも一方を可能にする
請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記器具は、その器具の外面に配置される照明要素を備えている
請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記制御手段は少なくとも1つのセンサから少なくとも1つの位置を受信し、前記位置に基づいて前記直線運動変換器の動作を制御する
請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記器具は、ねじれセンサを備え、前記ねじれセンサは、前記器具の横方向への逸脱する移動または力を判断することが可能であり、前記ねじれセンサは前記逸脱を使用者に知らせることが可能である
請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記アダプタは、前記器具の中心軸から離れる、取り付けられたブローチ、ノミ、拡孔器または他の手術用具の取り付けのずれ調整部を含む
請求項1に記載の器具。
【請求項9】
対象物を打撃するための整形外科用の衝撃付与器具であって、
モータ、
直線運動変換器、
前記直線運動変換器に動作可能に連結され、第1の端部及び第2の端部を有する圧縮ピストン、
空気室、
打撃体、
前記打撃体に連結されているノーズピース、
前記打撃体を適所に保持する戻り止め、
制御手段、
アンビル要素、
ブローチ、ノミ、拡孔器または他の手術用具を保持することが可能であり、前記アンビル要素に動作可能に連結されているアダプタ、
取っ手、とを備え、前記制御手段は、前記モータに、前記直線運動変換器を移動させるよう命令し、前記圧縮ピストンを移動させて前記空気室内の空気を圧縮または減圧し、
前記圧縮ピストンの位置が、前記戻り止めの保持力を上回る力で前記打撃体の前記ノーズピースに接触すると、前記打撃体は第1の位置から第2の位置に移動して前記アンビル要素を打撃し、
それによって、前記打撃体は前記アダプタに少なくとも1つの方向への力を与える
ことを特徴とする整形外科用の衝撃付与器具。
【請求項10】
前記直線運動変換器は、スライダクランク機構を含む
請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記戻り止めは、機械的な戻り止め、磁気的な戻り止め、及び/またはソレノイドのうちの少なくとも1つから選択される
請求項9に記載の器具。
【請求項12】
前記打撃体の衝撃力は力調整制御部によって調整することができる
請求項9に記載の器具。
【請求項13】
衝撃力は、前記空気の幾らかが前記空気圧縮室から漏出することを可能にすることによって低下させることができる
請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記器具は、ねじれセンサを備え、前記ねじれセンサは、前記器具の横方向への逸脱する移動または力を判断することが可能であり、前記ねじれセンサは前記逸脱を使用者に知らせることが可能である
請求項9に記載の器具。
【請求項15】
前記制御手段はセンサから少なくとも1つの位置を受信し、前記位置に基づいて前記直線運動変換器の動作を制御する
請求項9に記載の器具。
【請求項16】
対象物を打撃するための整形外科用の衝撃付与器具であって、
モータ、
直線運動変換器、
前記直線運動変換器に動作可能に連結され、第1の端部及び第2の端部を有する圧縮ピストン、
空気室、
打撃体、
前記打撃体に連結されているノーズピース、
前記打撃体を適所に保持する戻り止め、
制御手段、
ブローチ、ノミ、拡孔器または他の手術用具を保持することが可能なアダプタ、
取っ手、を備え、
前記制御手段は、前記モータに、前記直線運動変換器を移動させるよう命令し、前記圧縮ピストンを移動させて前記空気室内の空気を圧縮または減圧し、
前記圧縮ピストンの位置が、前記戻り止めの保持力を上回る力で前記打撃体の前記ノーズピースに接触すると、前記打撃体は第1の位置から第2の位置に移動し、
それによって、前記打撃体は前記アダプタに少なくとも1つの方向への力を与える
ことを特徴とする整形外科用の衝撃付与器具。
【請求項17】
前記戻り止めは、機械的な戻り止め、磁気的な戻り止め及び/またはソレノイドのうちの少なくとも1つから選択される
請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記制御手段はセンサから少なくとも1つの位置を受信し、前記位置に基づいて前記直線運動変換器の動作を制御する
請求項16に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、係属中の特許文献1の継続出願であり、米国特許法第120条に基づく優先権を主張するものであり、また、係属中の特許文献2の一部継続出願であり、米国特許法第120条に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の開示は参照により援用される。
【0002】
本開示は、整形外科用途において衝撃を付与する電動器具、より詳細には、或る領域(例えば骨構造)において開口を形成してその領域内に補綴材を確実に受け入れるために、ブローチ、ノミまたは他の装置に制御された衝撃を付与することが可能な、整形外科用の衝撃を付与するための、電気モータ駆動式の器具に関する。
【背景技術】
【0003】
整形外科の分野では、人工関節等の補綴具が多くの場合に、患者の骨の空洞に補綴具を着座させることによって患者の身体内に埋め込まれるかまたは着座される。空洞は、補綴材を着座させるかまたは埋め込む前に作らなければならず、従来から、医師は、空洞が形成される領域から、摩耗した、余分なまたは罹患した骨構造を除去し、次に、骨の髄管に沿って空洞を空けて中空にすることができる。補綴材は通常、空洞内に挿入される補綴材の特定の部分として働く軸部または他の突起を含む。
【0004】
そのような空洞を作るために、医師はブローチを用いることができ、このブローチは、補綴材の軸部の形状に一致する。当該技術分野において既知の解決策は、ハンドルにブローチを設けることを含み、そのハンドルを、医師がブローチを埋め込み領域に打ち込む間に把持することができる。残念ながら、この手法は手際が悪く、特定の医師の技量に左右されるため予測不可能である。この手法はほとんど常に必ず、空洞の位置及び形態が不正確となる。さらに、この手法には、医師が意図しない領域の骨構造に損傷を与えるという危険性を伴う。
【0005】
補綴材用の空洞を作る別の技法は、ブローチを空気圧によって、すなわち圧縮空気によって駆動することである。この手法は、例えば、空気を器具から滅菌術野に排出する連結空気管路の存在によって衝撃付与器具の可搬性が妨げられ、また、器具を操作する医師が疲労するという点で不都合である。さらに、この手法は、特許文献3に例示されているように、衝撃力または頻度の正確な制御を可能とせず、むしろ、作動されたときに削岩機に非常によく似た機能を果たす。この場合も同様に、このように正確な制御のいかなる措置もないことにより、空洞を正確にブローチングすることがより難しくなる。
【0006】
当該技術分野において既知である器具の別の不都合点は、長時間の使用中に、そのような器具の取っ手に体液または水分等の流体が蓄積することである。例えば、外科的処置中に、取っ手が体液で濡れる可能性があり、したがって医師が当該技術分野において既知であるブローチに衝撃を付与する装置を保持しにくくなる可能性があるため、そのような従来技術の装置の操作の難しさが高まる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第13/337,075号
【特許文献2】米国特許出願第12/980,329号
【特許文献3】米国特許第5,057,112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その結果、従来技術における種々の不都合点を克服する、衝撃付与器具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の前述の不都合点を考慮して、従来技術の全ての利点を含むとともに、従来技術に固有の欠点を克服するように構成されている、電気モータ駆動式の整形外科用の衝撃付与器具が提供される。器具は、整形外科医が、例えば臀部、膝及び肩において整形外科用の衝撃を付与するために用いることができる。器具は、ブローチ、ノミまたは他の装置を保持し、ブローチ、ノミまたは他の装置を、制御された打撃衝撃によって空洞内に優しく打ち付けることが可能であり、その結果、補綴材または移植片がより良く嵌まる。さらに、そのような電気的に操作されるブローチ、ノミまたは他の装置によって可能となる制御は、患者の特定の骨の種類または他の外形に従って衝撃設定を調整することを可能にする。器具は、補綴材または移植片の、埋め込み空洞内へのまたは埋め込み空洞からの適切な着座または取り出しを更に可能にする。
【0010】
一実施形態では、電気モータ駆動式の整形外科用の衝撃付与器具は、制御手段、ハウジング、直線運動変換器、少なくとも1つの減速装置、衝撃付与要素(本明細書では打撃体とも称される)、空気室、圧縮ピストン、及び力調整制御部を備える。器具は、モータ、LED、器具を快適に把持するための少なくとも1つの取っ手を有するハンドル部分、アダプタ、電池、フィードバックシステム、及びアダプタのノーズピースを更に含むことができる。種々の構成要素の少なくとも幾つかは、好ましくはハウジング内に収容される。器具は、ブローチ、ノミ若しくは他の装置、または移植片に周期的な衝撃力を印加するとともに、衝撃力を複数のレベルの衝撃力に微調整することが可能である。
【0011】
一実施形態では、器具は制御手段を更に備え、この手段は、力調整制御部(本明細書では代替的には「力調整部」と称される)を含み、この力調整制御部は、衝撃力を制御し、制御されない衝撃によって生じる損傷を回避することができる。力は、電子的に、または機械的な戻り止めの使用によって調節することができる。機械的な戻り止めは、ブローチの機械加工作業の制御または正確さを犠牲にすることなく、高い衝撃力を可能にする。
【0012】
器具は、アンビル要素(本明細書では代替的には「アンビル」と称される)を更に含むことができ、このアンビルは、前後双方の衝撃点、及び、打撃体が実質的に軸方向に移動することを抑制する案内部を含む。動作時に、アンビルの案内部に沿う打撃体の移動は、打撃体が衝撃点に当たるまで前方方向または後方方向に続く。この文脈において用いられる場合、「前方方向」とは、ブローチまたは患者に向かう打撃体の移動を含意し、「後方方向」とは、ブローチまたはノミまたは患者から離れる打撃体の移動を含意する。衝撃点が器具の正面、すなわち前方方向である場合、衝撃によって打撃力がブローチまたはノミに伝達され、ブローチまたはノミを更に空洞内に押す。衝撃点が器具の後方である場合、打撃力は、ブローチまたはノミを空洞から引き出す傾向にある。衝撃を双方向に付与するかまたは一方向に付与するかを選択することは、物質を除去するかまたは物質を締め固めるかという選択が多くの場合に外科的処置において重要な決定であるという点で、物質を切削するかまたは埋め込み空洞内で圧縮する上で外科医に自由度を与える。衝撃点は、アンビルの一端または各端に配置される板の形態であり得る。
【0013】
器具は、打撃体の頻度を調節することが更に可能である。打撃体の頻度を調節することによって、器具は、同じ衝撃の大きさを維持しながらも、より大きい総時間加重の打撃衝撃を与えることができる。このことは、外科医がブローチまたはノミの切削速度を制御することを可能にする。例えば、外科医は、ブローチまたはノミの移動の大部分の間に、より速い速度(高い頻度の衝撃付与)で切削することを選択し、次に、ブローチまたはノミが所望の深さに近づくと切削速度を遅くすることができる。
【0014】
使用者は、ハンドル部分によって器具をしっかりと保持し、LEDが発する光を用いて、作業領域を照らすとともに、ブローチ、ノミまたは他の装置を補綴材または移植片の所望の位置に正確に位置決めすることができる。ブローチ、ノミまたは他の装置に与えられる往復運動によって、移植片及び/またはブローチ、ノミ若しくは他の装置が打ち付けられ、それによって、補綴材若しくは移植片を、埋め込み空洞内に若しくは埋め込み空洞から適切に着座させるか若しくは取り出すか、または、ブローチ、ノミ若しくは他の装置に制御された衝撃を付与し、埋め込み空洞を作るか若しくは形作ることが可能となる。器具は、特定の大きさを上回る曲げまたはずれた向きがブローチ、ノミまたは他の装置/移植片の界面において検出されると、外科医に警告するフィードバックシステムも含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の例示的な実施形態による、整形外科用の衝撃付与器具の斜視図
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、電池式の整形外科用の衝撃付与器具の空気圧縮室内で空気を圧縮する圧縮ピストンの斜視図
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、磁気的な戻り止めから解放されるとともにアンビルに向かって加速する打撃体を示す説明図
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、アンビルに衝撃を付与してブローチを空洞内に駆動する打撃体を示す説明図
【
図5】本開示の例示的な実施形態による、戻ることで打撃体に真空を形成して打撃体に方向を変えさせるとともに後方に移動させる圧縮ピストンを示す説明図
【
図6】本開示の例示的な実施形態による、打撃体室の後方に衝撃を付与する打撃体を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
これらは、本開示の他の態様と一緒に、本開示を特徴付ける新規性の種々の特徴とともに、添付の特許請求の範囲において具体的に指摘され、本開示の一部を形成する。本開示、その動作上の利点、及びその使用によって得られる特定の目的のより良い理解のために、添付の図面、及び本開示の例示的な実施形態が示される。
【0017】
本発明の利点及び特徴は、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照してより良く理解され、添付の図面において、同様の要素は同様の符号を用いて特定される。
【0018】
図面の幾つかの図の説明を通して、同様の参照符号は同様の部分を指す。
【0019】
本開示を実施するための最良の形態を、本明細書では添付の図面に示されるその好ましい実施形態に関して提示する。本明細書において例示のために詳細に記載される好ましい実施形態は、多くの変形形態が可能である。状況により示唆されるかまたは好都合になり得るため均等物の種々の省略及び置換が意図されるが、本開示の主旨または範囲から逸脱することなくその適用または実施態様を包含することが意図されることが理解される。
【0020】
「1つの(a及びan)」という言葉は、本明細書では、数量の限定を示すものではなく、むしろ、言及される要素のうちの少なくとも1つの存在を示すものである。
【0021】
本開示は、制御された打撃衝撃を用いる、電気モータ駆動式の整形外科用の衝撃付与器具を提供する。器具は、一回または複数回の衝撃を加えることができること、並びに、可変の方向、力及び頻度の衝撃を付与することを含む。衝撃力は、打撃体が解放されるときに空気室内の空気の体積の量を制御することによって調整される。これは、例えば(図示されていない)力調整部18としての針弁によって非常に簡単に行うことができる。この装置において用いられる戻り止めは、有利には磁気的に操作されるようになっているが、他の戻り止め機構を使用することができることが明らかである。戻り止めは、ブローチ、ノミ若しくは他の装置、または手術領域において有意な衝撃を付与するために十分な打撃力を生成することを容易にする。
【0022】
器具はハウジングを含む。ハウジングは器具の複数の構成要素を確実に覆って保持する。一実施形態では、ハウジングは、モータ、少なくとも1つの減速装置、直線運動変換器、圧縮室、打撃体、力調整部、制御手段、並びに、前方衝撃面及び後方衝撃面を有するアンビル(この衝撃面は、例えばアンビルの一部、打撃体案内部の一部、またはブローチアダプタの一部であるものとすることができる)を収容する。
【0023】
器具は、使用中に器具を快適かつ確実に保持するための少なくとも1つの取っ手を有するハンドル部分、アダプタ、電池、位置センサ、方向センサ、及びねじれセンサを更に含むことができる。器具は、使用者が器具を使用する作業領域において明かりを提供するためにLED等の照明要素を更に含むことができる。アンビルは、アダプタの使用によってブローチに連結することができる。そのようなアダプタは、異なるブローチの大きさの迅速な変更を容易にするために迅速接続機構を有することができる。
【0024】
一実施形態において、またここで
図1を参照すると、直線運動変換器12はスライダクランク機構から構成され、このスライダクランクはモータ8及び減速装置7に動作可能に連結される。器具は、圧縮ピストン6を受け入れる空気圧縮室5を更に含み、この圧縮ピストン6は直線運動変換器12によって作動される。圧縮ピストン6の前方部分と打撃体の鼻部9との間に配置される空気部分は、「圧縮空気室部分」または「圧縮空気室」または「空気圧縮室」5と称される。
【0025】
本開示の一実施形態において、器具のモータは、圧縮ピストンの前方端と打撃体の鼻部9との間に配置される圧縮空気室5内に十分な圧力が形成され、そうでなければ打撃体4を後方位置に保持している戻り止め10を克服するまで、直線運動変換器に圧縮ピストンを移動させる。戻り止め10は、空気圧力が圧縮空気室5内に形成される間に打撃体4をその後方位置に保持する任意の手段である。戻り止めの更なる特徴は、戻り止めが一旦克服されると、打撃体4に対する戻り止めの保持力が、打撃体4の最初の20%の移動内で少なくとも50%低下することである。力が低下するこの特徴は、打撃体4がアンビルの前方衝撃面16またはアダプタに、50%超増大した出力で衝撃を付与することを予期せず可能にする。
【0026】
更なる実施形態では、器具のモータは、ピストン6の前方部分が打撃体の鼻部9に衝撃を付与し、打撃体4を後方位置に保持する戻り止め10を克服する十分な距離だけ圧縮ピストンが移動するまで、直線運動変換器に圧縮ピストンを移動させる。打撃体4が戻り止めから解放されると、圧縮空気室5内の圧縮空気が空気通路19に急激に流れ込み、空気圧力の力が打撃体4を加速させ、この打撃体4は、器具のハウジングの内部の空洞を軸方向に摺動し(この空洞は一実施形態では打撃体案内部11を含む)、アンビルの前方衝撃面16またはアダプタを打撃する。結果として生じる力は、衝撃面16に近接するアンビル14を通って、任意選択的にはアダプタ1を通って(このアダプタは以下でより詳細に説明する)伝えられ、アダプタ1には、移植片または補綴材を着座させるかまたは除去するブローチ、ノミまたは他の装置を取り付けることができる。打撃体案内部11は、打撃体の正面の空気が逃げることでアンビル14に対する打撃体4の衝撃力を高めることを可能にする空気室通気孔20を有する。
【0027】
圧縮ピストン6は、その行程を継続すると、後方方向に向かって移動し、これによって、(
図5及び
図6に示されているように)圧縮空気室5が真空引きされる。上記真空は、空気通路19を通して連通され、この連通された真空は打撃体4の後面に作用する。これによって、打撃体が逆方向になり、打撃体案内部11の後部15に向かって加速し、最終的に打撃体案内部11の後部15に衝撃を付与する。これによって、後方への力が器具に伝わり、これを例えば空洞内で動かなくなっているブローチを取り出すために用いることができる。この真空は打撃体4を打撃体案内部11の後部15に向かって付勢する戻しばね(図示せず)によって補助することができる。さらに、これによって、戻り止め10が打撃体4を別の衝撃に備えて適所に固定することを可能にする。圧縮ピストンは、その後方への行程を完了し、圧縮空気室の下死点でまたは下死点付近で静止する。圧縮空気室は、その側壁に開口を含むことができ、この開口は、失われた幾らかの空気を補充することを可能にする。したがって、1つの完全な周期において、前方及び/または後方への向きの衝撃力を、ブローチ、ノミ若しくは他の装置、または移植片/補綴材に印加することができる。さらに、衝撃の方向を器具及び行程制限部13への使用者の力によって制御することができることに留意されたい。例えば、器具が空洞から引き離される場合、打撃体はアンビル(またはブローチアダプタ)には衝撃を付与しないが、打撃体案内部の正面に衝撃を付与し、したがってブローチにいかなる前方への推進力も伝えない。さらに、これが維持される場合、打撃体は、戻るときに、打撃体案内部11の後部15に衝撃を付与し、したがってブローチに除去する力を伝える。したがって、器具の別の利点は、使用者が器具に付勢を与えることによって衝撃を付与する方向を制御することができることである。使用者は、衝撃の方向を制御可能である場合、アダプタが実質的に前後に振動するかまたは主に一方向に振動するかを制御することが可能である。これは、振動または嵌入を必要とする方法に用途を有する。
【0028】
器具のスライダクランクの実施形態は、打撃体及びアンビル(またはアダプタ)の制御された連続的な衝撃付与を容易にする。そのような連続的な衝撃付与の場合、圧縮ピストンによる圧縮後に、スライダクランクがその行程の下部に戻り、このように戻ることによって打撃体に真空が引かれ、打撃体をその最初の静止位置に戻らせる。制御された連続的な衝撃付与の場合、この周期を無制限に繰り返すことができることが明らかであろう。
【0029】
一回の行程の場合、(本明細書において記載されるスライダクランク等の)直線運動変換器は後方位置においてまたは後方位置付近で止まり、したがって打撃体に対する前方への圧力を解放し、打撃体が別の行程に備えてその開始位置に戻ることを可能にする。この動作形態では、使用者は、器具に(繰り返しとは対照的に)選択的に衝撃を付与させることができ、したがって、例えば、衝撃、及び手術領域を形成することまたは形作ることの更なる制御を可能にする。
【0030】
更なる実施形態では、力調整部18として弁または他の空気ブリードオフ手段が用いられる。特定の量の圧縮空気がピストン6の前方移動中にブリードオフすることを可能にすることによって、打撃体4を加速させるのに利用可能な空気の量が減り、したがって、アンビル及びブローチに対する衝撃力を低下させることを可能にする。この力の低下は、例えば、円周骨折の危険性なく外科医が骨に効果的にブローチングするという点で、患者の古くなったまたは弱化した骨に有用である。
【0031】
制御手段に動作可能に連結されているセンサを設け、直線運動変換器の好ましい周期的動作を調節することを補助することができる。例えば、センサは少なくとも1つの位置を制御手段に通信することができ、直線運動変換器が完全に戻った位置においてまたは完全に戻った位置付近に静止することを可能にする。これは、器具が次の衝撃のための圧力を生成することに備えることを可能にする。
【0032】
制御手段は、周期毎の衝撃力の量を更に調整することが可能である。衝撃力を制御することによって、器具は、制御されない衝撃または過度の力の衝撃によって生じる損傷を回避することができる。例えば、使用者は、骨粗鬆症を患っている高齢の患者の場合には衝撃の設定を下げることができるか、またはより回復力に富む若しくは無傷の強健な骨構造に対しては衝撃設定を高めることができる。
【0033】
1つのそのような力の制御は、好ましくは、打撃体を保持する戻り止めにおける選択可能な解放の設定を含む。打撃体を戻り止めから取り外すのに必要な圧力が増大する場合に、打撃体がより大きい力でアンビルまたはアダプタに衝撃を付与することが明らかであろう。別の実施形態では、戻り止めはソレノイドを含むことができ、このソレノイドは、所定の圧力が形成されると起動することができ、その後で打撃体4を解放し、アンビルに衝撃を付与することを可能にする。
【0034】
更なる実施形態では、圧縮空気室は、圧縮空気の幾らかが室から漏出することを可能にする調整可能なまたは一定の漏出部を更に含むことができる。これによって、打撃体を加速させるのに利用可能な空気の量が減り、したがってアンビルに対する衝撃力が低下する。調整可能な漏出部の場合、漏出部を最大に調整することは、打撃体から最も低い衝撃力を与え、漏出部を遮断する(漏出ゼロ)ように調整することは、打撃体から最も高い衝撃力を与えることが明らかであろう。
【0035】
器具は照明要素を更に含むことができ、一実施形態では、照明要素はLED構成を有することができ、この照明要素は使用者の作業領域を照明することが可能である。一実施形態では、LEDは、器具のハウジングに配置することができ、患者の身体または外科的な空洞に向けることができる。
【0036】
器具は、手術領域に対して遠位の器具の端部に板または他の平坦な面を更に含むことができ、この板は、使用者が、手術状態または物理的状態によって決定されるような、ブローチ、ノミ若しくは他の装置、または外科用移植片に対する選択的な手動の圧力を印加することを可能にすることができる。例えば、器具の操作によってはブローチが取り出されないようにブローチが空洞内にしっかりと入っている場合、使用者は板を手でたたいてブローチを取り出すことができる。
【0037】
器具はねじれセンサを更に含むことができ、このセンサは、器具の横方向へのすなわち逸脱する力または移動を判断することが可能であり、それによって、器具がブローチ/移植片の界面において所定の大きさから逸脱していることが感知されると、信号を発して使用者にそのような逸脱を知らせることができる。このように及び別様に、器具は、一貫性のある軸方向のブローチング及び移植片の着座を容易にする。
【0038】
更なる実施形態では、アダプタは連結構成を含むことができる。この実施形態では、アダプタは、前方または後方の関節置換のためにブローチを受け入れることができる。アダプタの連結機構は、ブローチを受け入れ、中心位置、またはずれた左側若しくは右側の位置等の種々の位置の向きにすることを容易にすることができる。アダプタは、ブローチを、器具の本体及び打撃体に平行であるかまたは同一直線上にある向きに維持する。アダプタは、器具の操作中にブローチ、ノミまたは他の装置を確実に保持することができる挟持装置、万力、または任意の他の締結具も含むことができる。
【0039】
器具は、取り出し可能な電池パックを更に含むことができる。この電池パックは、使い捨てであるかまたは充電式であるものとすることができる。使い捨ての電池パックの利点は、電池パックが滅菌周期によって引き起こされる劣化を受けず、使用されるまで滅菌包装内にあることである。
【0040】
器具は、器具のハウジングに配置される取っ手を更に含むことができ、この取っ手は、除去可能に配置されるゴム引きの、または他の粘着性のあるコーティングを含むことができる。そのようなコーティングは、器具の快適な操作を容易にし、器具の制御を高めるとともに器具の操作中の疲労を低減するために、使用者の器具の保持を改善する。
【0041】
使用時に、外科医等の使用者は、ハンドル把持部(単数または複数)によって器具をしっかりと保持し、LEDが発する光を用いて作業領域を照明し、器具に取り付けられているブローチ、ノミまたは他の装置を、補綴材または移植片の所望の位置に正確に位置決めする。器具がブローチ、ノミまたは他の装置に与える往復運動によって、移植片が打ち付けられ、それによって、補綴材または移植片を埋め込み空洞内にまたは埋め込み空洞から適切に着座させることまたは取り出すことを可能にする。警告システムが、特定の大きさを上回る曲げモーメントがブローチ(またはノミ若しくは他の装置)/移植片の界面において検出される場合に、使用者に注意を喚起することができる。
【0042】
本明細書において開示される器具は、従来技術に勝る種々の利点を提供する。器具は、手術部位において衝撃を制御して付与することを容易にし、これによって、患者の身体に対する不必要な損傷が最小限に抑えられるとともに、移植片または補綴材の座部を正確に形作ることが可能となる。器具は、使用者が衝撃の方向及び力を変えることも可能にし、これによって、使用者の器具を操作する能力が改善される。衝撃設定の力制御調整は、使用者が、特定の骨の種類または患者の他の外形に従って衝撃力を設定することを可能にする。器具はそれによって、補綴材または移植片を埋め込み空洞内にまたは埋め込み空洞から適切に着座させることまたは取り出すことを可能にする。
【0043】
本開示の特定の実施形態の上記の記載は、例示及び説明のために提示されている。それらの説明は、網羅的であることも、本開示を、開示の正確な形態に限定することも意図せず、明らかに、上記教示を踏まえて多くの変更形態及び変形形態が可能である。例示的な実施形態は、本開示の原理及びその実際的な適用を最も良く説明し、それによって、当業者が本開示及び種々の変更形態を含む種々の実施形態を意図される特定の用途に適したものとして最も良く使用することを可能にするために選択され記載されている。
【符号の説明】
【0044】
1 アダプタ
2 空気圧縮室の入口孔
3 ブローチ
4 打撃体
5 空気圧縮室
6 圧縮ピストン
7 減速装置
8 モータ
9 打撃体の鼻部
10 戻り止め
11 打撃体案内部
12 直線運動変換器
13 行程制限部
14 アンビル
15 打撃体案内部の後部
16 アンビルの前方衝撃面
17
18 力調整部
19 空気通路
20 打撃体案内部の通気孔
21 制御手段
22 センサ