特許第6101400号(P6101400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101400血液サンプリング移送デバイスならびに血液分離および検査実施システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101400
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】血液サンプリング移送デバイスならびに血液分離および検査実施システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20170313BHJP
   A61B 5/154 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61M1/02 103
   A61B5/14 300E
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-509002(P2016-509002)
(86)(22)【出願日】2014年4月14日
(65)【公表番号】特表2016-521163(P2016-521163A)
(43)【公表日】2016年7月21日
(86)【国際出願番号】US2014033930
(87)【国際公開番号】WO2014172242
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年12月14日
(31)【優先権主張番号】61/811,918
(32)【優先日】2013年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ディー.フレッチャー
(72)【発明者】
【氏名】シー.マーク ニュービー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー エム.ウィルキンソン
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−019126(JP,A)
【文献】 特表2012−530256(JP,A)
【文献】 特開平02−075332(JP,A)
【文献】 特開2010−237050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0052675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61B 5/154
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送デバイスにおいて、
始動部材を有する第1の構成要素と、
前記第1の構成要素に除去可能に接続されている第2の構成要素であって、
入口ポートと、
流路と、
前記入口ポートと出口ポートとが前記流路を介して流体連通している、出口ポートと、
前記流路の内部の前記入口ポートと前記出口ポートとの間に配設されているフィルタと、
前記入口ポートと前記フィルタとの間に画定されている第1の室と、
前記フィルタと前記出口ポートとの間に画定されている移送室とを含み、
前記入口ポートは、前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合され、前記フィルタは、前記細胞部分を前記第1の室内に捕捉するようにかつ前記血漿部分が前記フィルタを通過して前記移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第2の構成要素と
を備えることを特徴とする血液サンプリング移送デバイス。
【請求項2】
前記第1の構成要素は、再使用可能な構成要素であることを特徴とする請求項1に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項3】
前記第2の構成要素は、使い捨て構成要素であることを特徴とする請求項1に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項4】
前記フィルタは、接線流フィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項5】
前記接線流フィルタは、クロスフロー濾過を利用して、前記血漿部分を前記細胞部分から分離することを特徴とする請求項4に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項6】
前記接線流フィルタ上で前記血液サンプルを振動させる音響焦点要素をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項7】
前記入口ポートは、採血デバイスへの接続により前記血液サンプルを受容するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項8】
前記出口ポートは、前記移送室からポイントオブケア検査実施デバイスへの前記血漿部分の一部の閉じた移送のために、前記ポイントオブケア検査実施デバイスへの接続に適合されていることを特徴とする請求項1に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項9】
閉じた移送のために前記出口ポートが前記ポイントオブケア検査実施デバイスに接続されている状態で、前記始動部材の始動時に前記血漿部分は前記移送室から前記ポイントオブケア検査実施デバイスへ移送されることを特徴とする請求項8に記載の血液サンプリング移送デバイス。
【請求項10】
細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルのための、血液分離および検査実施システムにおいて、
前記血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送デバイスであって、
始動部材を有する第1の構成要素と、
前記第1の構成要素に除去可能に接続されている第2の構成要素であって、
入口ポートと、
流路と、
前記入口ポートと出口ポートとが前記流路を介して流体連通している、出口ポートと、
前記流路の内部の前記入口ポートと前記出口ポートとの間に配設されているフィルタと、
前記入口ポートと前記フィルタとの間に画定されている第1の室と、
前記フィルタと前記出口ポートとの間に画定されている移送室とを含み、前記入口ポートは、前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合され、前記フィルタは、前記細胞部分を前記第1の室内に捕捉するようにかつ前記血漿部分が前記フィルタを通過して前記移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第2の構成要素と、を含む血液サンプリング移送デバイスと、
前記移送室から前記血液検査実施デバイスへの前記血漿部分の一部の閉じた移送のために前記血液サンプリング移送デバイスの前記出口ポートを受容するように適合されている受容ポートを有する、血液検査実施デバイスと
を備えることを特徴とする血液分離および検査実施システム。
【請求項11】
閉じた移送のために前記出口ポートが前記血液検査実施デバイスに接続された状態で、前記始動部材の始動時に前記血漿部分は前記移送室から前記血液検査実施デバイスへ移送されることを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項12】
前記血液検査実施デバイスは、ポイントオブケア検査実施デバイスを含むことを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項13】
前記第1の構成要素は、再使用可能な構成要素であることを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項14】
前記第2の構成要素は、使い捨て構成要素であることを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項15】
前記フィルタは、接線流フィルタを含むことを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項16】
前記接線流フィルタは、クロスフロー濾過を利用して、前記血漿部分を前記細胞部分から分離することを特徴とする請求項15に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項17】
前記接線流フィルタ上で前記血液サンプルを振動させる音響焦点要素をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項18】
前記入口ポートは、採血デバイスへの接続により前記血液サンプルを受容するように適合されていることを特徴とする請求項10に記載の血液分離および検査実施システム。
【請求項19】
血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送システムであって、
始動部材を有する再使用可能な構成要素と、
前記再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素であって、第1の入口ポートを有し、前記第1の入口ポートは前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合されている、第1の使い捨て構成要素と、
前記再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素であって、第2の入口ポートを有し、前記第2の入口ポートは前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合されている、第2の使い捨て構成要素と
を備えることを特徴とする血液サンプリング移送システム。
【請求項20】
細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送システムであって、
始動部材を有する再使用可能な構成要素と、
前記再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素であって、第1の入口ポートと、第1の流路と、第1の出口ポートとを有し、前記第1の入口ポートと前記第1の出口ポートとは前記第1の流路を介して流体連通し、前記第1の流路の内部の前記第1の入口ポートと前記第1の出口ポートとの間に配設されている第1のフィルタと、前記第1の入口ポートと前記第1のフィルタとの間の第1の室と、前記第1のフィルタと前記第1の出口ポートとの間の第1の移送室と、を含み、前記第1の入口ポートは前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合され、前記第1のフィルタは、前記細胞部分を前記第1の室内に捕捉するようにかつ前記血漿部分が前記第1のフィルタを通過して前記第1の移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第1の使い捨て構成要素と、
前記再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素であって、第2の入口ポートと、第2の流路と、第2の出口ポートとを有し、前記第2の入口ポートと前記第2の出口ポートとは前記第2の流路を介して流体連通し、前記第2の流路の内部の前記第2の入口ポートと前記第2の出口ポートとの間に配設されている第2のフィルタと、前記第2の入口ポートと前記第2のフィルタとの間の第2の室と、前記第2のフィルタと前記第2の出口ポートとの間の第2の移送室と、を含み、前記第2の入口ポートは前記始動部材の始動時に前記血液サンプルを受容するように適合され、前記第2のフィルタは、前記細胞部分を前記第2の室内に捕捉するようにかつ前記血漿部分が前記第2のフィルタを通過して前記第2の移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第2の使い捨て構成要素と
を備えることを特徴とする血液サンプリング移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、脈管アクセスデバイスとの使用に適合されているデバイス、アセンブリ、およびシステムに関する。より詳細には、本開示は、ポイントオブケア(point-of-care)検査実施において使用するために、生物サンプルを採取するのに適合されているデバイス、アセンブリ、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液サンプリングは、患者からの少なくとも血液滴の抜出しを含む一般的なヘルスケア手法である。血液サンプルは、一般的に、フィンガスティック(finger stick)、ヒールスティック(heel stick)、または静脈穿刺のいずれかにより、入院患者、在宅治療患者、および救急治療室患者から採られる。また、血液サンプルは、静脈ラインまたは動脈ラインにより患者から採られてもよい。採取されると、血液サンプルは分析されて、例えば化学組成、血液病学、または凝固を含む、医学的に有用な情報を得ることができる。
【0003】
血液検査は、疾病、ミネラル含有量、薬物有効性、および臓器機能などの、患者の生理学的状態ならびに生化学的状態を判定する。血液検査は、臨床検査室内でまたは患者の身辺でのポイントオブケアで実施されてもよい。ポイントオブケア血液検査実施の一例が、フィンガスティックによる血液の取出しおよび診断カートリッジ内への機械的採血を含む、患者の血糖レベルの定期検査である。その後、診断カートリッジは血液サンプルを分析し、臨床医に患者の血糖レベルの示度数をもたらす。血液ガス電解質レベル、リチウムレベル、およびイオン化カルシウムレベルを分析する他のデバイスが利用可能である。いくつかの他のポイントオブケアデバイスが、急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)および深部静脈血栓症/肺塞栓症(DVT/PE:deep vein thrombosis/pulmonary embolism)のマーカを同定する。
【0004】
ポイントオブケア検査実施およびポイントオブケア診断の急速な進歩にも関わらず、血液サンプリング技術は相対的に不変のままである。血液サンプルは、針もしくはカテーテルアセンブリの近位端に取り付けられている皮下注射針または真空管を使用して抜き取られることが多い。いくつかの場合に、臨床医は、カテーテル内に挿入される針および注射器を使用し、挿入されたカテーテルを通して患者から血液を抜き出して、カテーテルアセンブリから採血する。これらの手法は、通常は採取された血液サンプルが検査実施の前に抜き出される中間デバイスとして、針および真空管を利用する。このように、これらのプロセスは装置集約的(device intensive)であり、血液サンプルを得る、準備する、かつ検査するプロセスにおいて、複数のデバイスを利用する。各付加的デバイスは、検査実施プロセスの時間およびコストを増大させる。
【0005】
ポイントオブケア検査実施デバイスは、分析のために検査室に血液サンプルを送ることを必要とせずに、血液サンプルが検査されることを可能にする。したがって、ポイントオブケア検査実施システムと共に、容易な、安全な、再現性のある、かつ正確なプロセスを実現するデバイスを作り出すことが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、細胞部分と血漿部分とを有する血液サンプルを受容するように適合されている、血液サンプリング移送デバイスなどの生体液サンプリング移送デバイスを提供する。血液サンプルの採取後、血液サンプリング移送デバイスは、血漿部分を細胞部分から分離することができる。分離後、血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプルの血漿部分をポイントオブケア検査実施デバイスへ移送することができる。また、本開示の血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプルの暴露を低減する閉じたサンプリングおよび移送システムを実現し、サンプル安定剤との血液サンプルの高速混合を実現する。サンプル安定剤は、抗凝固剤、または例えばRNA、タンパク質検体、もしくは他の要素などの、血液中の特定の要素を保存するように設計されている物質であり得る。血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプリング移送デバイスから血液検査実施デバイスへの血漿部分の一部の閉じた移送のために、血液検査実施デバイスと係合可能である。血液検査実施デバイスは血漿部分を受容して、血液サンプルを分析し、検査結果を得るように適合されている。
【0007】
先行システムを凌ぐ、本開示の血液サンプリング移送デバイスならびに血液分離および検査実施システムの利点のいくつかは、それが血液サンプル暴露を低減する閉じたシステムであること、それがサンプル安定剤との血液サンプルの受動高速混合を実現すること、それが血液サンプルを別個のデバイスに移送することなく、血液サンプルの分離を促進すること、およびそれがポイントオブケア検査実施デバイスへ純粋な血漿を移送することができることである。本開示の血液サンプリング移送デバイスは、遠心分離を用いずに、閉じたシステムにおける統合された採血および血漿生成を可能にする。臨床医は血液サンプルを採取し、分離することができ、次いで、さらなる操作なしで、その血漿部分をポイントオブケア検査実施デバイスへ即刻移送し得る。このことは、血液への暴露のない、血漿の採取およびポイントオブケア検査実施デバイスへの移送を可能にする。さらに、本開示の血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプリング移送デバイスの内部でかつ外部機械類を用いずに血液を処理することにより、処理時間を最小限にする。さらに、少量の血液のみを必要とする検査では、それは真空管を用いた採血および血漿分離に関連する無駄を省く。
【0008】
本発明の実施形態によれば、細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送デバイスが、始動部材を有する第1の構成要素と、第1の構成要素に除去可能に接続されている第2の構成要素とを備え、第2の構成要素は、入口ポート;流路;出口ポート、入口ポートと出口ポートとは流路を介して流体連通しており;流路の内部の入口ポートと出口ポートとの間に配設されているフィルタ;入口ポートとフィルタとの間に画定されている第1の室;およびフィルタと出口ポートとの間に画定されている移送室を含み、入口ポートは、始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されており、フィルタは、細胞部分を第1の室内に捕捉するようにかつ血漿部分がフィルタを通過して移送室内に入ることを可能にするように適合されている。
【0009】
一構成では、第1の構成要素は再使用可能な構成要素である。別の構成では、第2の構成要素は使い捨て構成要素である。さらに別の構成では、フィルタは接線流フィルタを備える。一構成では、接線流フィルタはクロスフロー濾過を利用して、血漿部分を細胞部分から分離する。別の構成では、血液サンプリング移送デバイスは、接線流フィルタ上で血液サンプルを振動させる音響焦点要素(acoustic focus element)を含む。さらに別の構成では、入口ポートは、採血デバイスへの接続により血液サンプルを受容するように適合されている。一構成では、出口ポートは、移送室からポイントオブケア検査実施デバイスへの血漿部分の一部の閉じた移送のために、ポイントオブケア検査実施デバイスへの接続に適合されている。別の構成では、閉じた移送のために出口ポートがポイントオブケア検査実施デバイスに接続されている状態で、始動部材の始動時に血漿部分は移送室からポイントオブケア検査実施デバイスへ移送される。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルのための、血液分離および検査実施システムなどの生体液分離および検査実施システムが、血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送デバイスを備え、血液サンプリング移送デバイスは、始動部材を有する第1の構成要素と、第1の構成要素に除去可能に接続されている第2の構成要素とを備え、第2の構成要素は、入口ポート;流路;出口ポート、入口ポートと出口ポートとは流路を介して流体連通しており;流路の内部の入口ポートと出口ポートとの間に配設されているフィルタ;入口ポートとフィルタとの間に画定されている第1の室;およびフィルタと出口ポートとの間に画定されている移送室を備え、入口ポートは、始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されており、フィルタは、細胞部分を第1の室内に捕捉するようにかつ血漿部分がフィルタを通過して移送室内に入ることを可能にするように適合されており、血液検査実施デバイスは、移送室から血液検査実施デバイスへの血漿部分の一部の閉じた移送のために血液サンプリング移送デバイスの出口ポートを受容するように適合されている受容ポートを有する。
【0011】
一構成では、閉じた移送のために出口ポートが血液検査実施デバイスに接続された状態で、始動部材の始動時に血漿部分は移送室から血液検査実施デバイスへ移送される。別の構成では、血液検査実施デバイスはポイントオブケア検査実施デバイスを含む。さらに別の構成では、第1の構成要素は再使用可能な構成要素である。一構成では、第2の構成要素は使い捨て構成要素である。別の構成では、フィルタは接線流フィルタを備える。さらに別の構成では、接線流フィルタは、クロスフロー濾過を利用して、血漿部分を細胞部分から分離する。一構成では、血液分離および検査実施システムは、接線流フィルタ上で血液サンプルを振動させる音響焦点要素を含む。別の構成では、入口ポートは、採血デバイスへの接続により血液サンプルを受容するように適合されている。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送システムが、始動部材を有する再使用可能な構成要素と、再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素であり、第1の入口ポートを有し、第1の入口ポートは始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されている、第1の使い捨て構成要素と、再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素であり、第2の入口ポートを有し、第2の入口ポートは始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されている、第2の使い捨て構成要素とを備える。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、細胞部分および血漿部分を有する血液サンプルを受容するように適合されている血液サンプリング移送システムが、始動部材を有する再使用可能な構成要素と、再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素であり、第1の入口ポート;第1の流路;第1の出口ポート、第1の入口ポートと第1の出口ポートとは第1の流路を介して流体連通しており;第1の流路の内部の第1の入口ポートと第1の出口ポートとの間に配設されている第1のフィルタ;第1の入口ポートと第1のフィルタとの間の第1の室;および第1のフィルタと第1の出口ポートとの間の第1の移送室を有し、第1の入口ポートは始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されており、第1のフィルタは、細胞部分を第1の室内に捕捉するようにかつ血漿部分が第1のフィルタを通過して第1の移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第1の使い捨て構成要素と、再使用可能な構成要素に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素であり、第2の入口ポート;第2の流路;第2の出口ポート、第2の入口ポートと第2の出口ポートとは第2の流路を介して流体連通しており;第2の流路の内部の第2の入口ポートと第2の出口ポートとの間に配設されている第2のフィルタ;第2の入口ポートと第2のフィルタとの間の第2の室;および第2のフィルタと第2の出口ポートとの間の第2の移送室を有し、第2の入口ポートは始動部材の始動時に血液サンプルを受容するように適合されており、第2のフィルタは、細胞部分を第2の室内に捕捉するようにかつ血漿部分が第2のフィルタを通過して第2の移送室内に入ることを可能にするように適合されている、第2の使い捨て構成要素とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の前述のかつ他の特徴および利点ならびにそれらを達成する方法はより明らかになり、本開示自体は、添付図面と併用される、本開示の実施形態の以下の記載を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0015】
図1】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの組立斜視図である。
図3】採血デバイスを伴う、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの斜視図である。
図4】採血デバイスが血液サンプリング移送デバイスに取り付けられている状態の、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの斜視図である。
図5】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスおよびポイントオブケア検査実施デバイスの斜視図である。
図6】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの上面図である。
図7】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの第1の構成要素の内部の概略図である。
図8】フィルタが血液サンプルの血漿部分を血液サンプルの細胞部分から分離している状態の、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスのフィルタの横断面図である。
図9】本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの側面立面図である。
図10】第1の構成要素が第2の構成要素から除去されている状態の、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスの斜視図である。
図11】本発明の実施形態による血液サンプリング移送システムの分解斜視図である。
図12】セプタムが閉位置にある状態の、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスのセプタムの横断面図である。
図13】セプタムが開位置にある状態の、本発明の実施形態による血液サンプリング移送デバイスのセプタムの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する参照文字が、いくつかの図を通じて対応する部分を示す。本明細書に記載されている例示は本開示の例示的実施形態を説明しており、そのような例示は、いかなる形にしろ、本開示の範囲を限定しているとみなされるべきではない。
【0017】
以下の記載は、本発明を実施するために検討されている、記載されている実施形態を、当業者が作製し、使用することを可能にするために与えられている。しかし、種々の修正形態、等価物、変形形態、および代替案が、当業者には依然として容易に明らかであろう。ありとあらゆるそのような修正形態、変形形態、等価物、および代替案は、本発明の精神および範囲内に入ることが意図されている。
【0018】
以下の記載の目的のために、用語「上(部/方)の」、「下(部/方)の」、「右の」、「左の」、「垂直の」、「水平の」、「最上部の」、「底部の」、「横方向の」、「長手方向の」、およびそれらの派生語は、それが図面において配向されているように、本発明に関連するものとする。しかし、本発明は、反対のことが明記されている場合を除き、代替的な変形形態およびステップ順序を前提とする可能性があることを理解されたい。また、添付の図面に示されておりかつ以下の明細書に記載されている特定のデバイスおよびプロセスは、本発明の例示的実施形態に過ぎないことを理解されたい。したがって、本明細書において開示されている実施形態に関連する特定の寸法および他の物理的特徴が、限定的とみなされるべきではない。
【0019】
種々のポイントオブケア検査実施デバイスが本技術分野において知られている。そのようなポイントオブケア検査実施デバイスは、検査実施および分析のために、試験紙、スライドガラス、診断カートリッジ、または他の検査実施デバイスを含む。試験紙、スライドガラス、および診断カートリッジは、血液サンプルを受容し、その血液を1または複数の生理学的状態および生化学的状態に関して検査する、ポイントオブケア検査実施デバイスである。カートリッジを基礎とする構造を使用して、分析のためにサンプルを検査室に送ることを必要とせずに、患者のベッドサイドで非常に少量の血液を分析する多数のポイントオブケアデバイスがある。これは、長期的に見れば結果を得ることの時間を節約するが、非常に型にはまった検査室環境と比べて、課題の別の群を生じる。そのような検査実施カートリッジの例が、アボット(Abbot)企業グループによるi−STAT(登録商標)検査実施カートリッジを含む。i−STAT(登録商標)カートリッジなどの検査実施カートリッジは、化学薬品および電解質の存在、血液病学、血液ガス濃度、凝固、または心臓マーカを含む種々の状態に関して検査するのに使用され得る。そのようなカートリッジを使用する検査の結果は臨床医に迅速にもたらされる。
【0020】
しかし、そのようなポイントオブケア検査実施カートリッジに供給されるサンプルは、現在、開放されたシステムを用いて手作業で採取され、一貫性のない結果の原因となることが多い手作業でポイントオブケア検査実施カートリッジへ移送されるか、またはカートリッジの故障がサンプル採取および検査実施プロセスの繰返しにつながり、それによりポイントオブケア検査実施デバイスの利点を無効にする。したがって、より安全な、再現性のある、より正確な結果をもたらす、サンプルを採取しかつポイントオブケア検査実施デバイスへ移送するシステムに対するニーズが存在する。したがって、本開示のポイントオブケア採取および移送システムが以下に記載される。本開示のシステムは、1)サンプリングおよび移送システムのより閉じたタイプを組み込むこと、2)サンプルの開放暴露を最小限にすること、3)サンプルの質を向上させること、4)全体的な使い易さを向上させること、および5)採取時点でサンプルを分離することにより、ポイントオブケア検査実施デバイスの信頼性を高める。
【0021】
図1図9は、本開示の例示的実施形態を示す。図1図9を参照すると、本開示の血液サンプリング移送デバイスなどの生体液サンプリング移送デバイス10が、細胞部分14と血漿部分16とを有する血液サンプル12を受容するように適合されている。血液サンプル12の採取後、血液サンプリング移送デバイス10は、血漿部分16を細胞部分14から分離することができる。分離後、血液サンプリング移送デバイス10は、血液サンプル12の血漿部分16をポイントオブケア検査実施デバイスへ移送することができる。また、本開示の血液サンプリング移送デバイス10は、血液サンプルの暴露を低減する閉じたサンプリングおよび移送システムを実現し、サンプル安定剤との血液サンプルの高速混合を実現する。
【0022】
図5は、本開示の例示的実施形態を示す。図5を参照すると、本開示の、血液分離および検査実施システムなどの生体液分離および検査実施システム20が、血液サンプリング移送デバイス10と、血液サンプリング移送デバイス10から血液検査実施デバイス22への血漿部分16の部分の閉じた移送(図8)のために、血液サンプリング移送デバイス10と係合可能な血液検査実施デバイスまたはポイントオブケア検査実施デバイス22とを含む。血液検査実施デバイス22は、血漿部分16を受容して、血液サンプルを分析し、検査結果を得るように適合されている。
【0023】
図11は、本開示の例示的実施形態を示す。図11を参照すると、本開示の血液サンプリング移送システム200が、再使用可能な構成要素30と、再使用可能な構成要素30に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素202と、再使用可能な構成要素30に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素204とを含む。
【0024】
先行システムを凌ぐ、本開示の血液サンプリング移送デバイスおよび血液分離および検査実施システムの利点のいくつかは、それが血液サンプル暴露を低減する閉じたシステムであること、それがサンプル安定剤との血液サンプルの受動高速混合を実現すること、それが血液サンプルを分離デバイスへ移送することなく、血液サンプルの分離を促進すること、およびそれがポイントオブケア検査実施デバイスへ純粋な血漿を移送することができることである。本開示の血液サンプリング移送デバイスは、遠心分離を用いずに、閉じたシステムにおける統合された採血および血漿生成を可能にする。臨床医は血液サンプルを採取し、分離することができ、次いで、さらなる操作なしで、その血漿部分をポイントオブケア検査実施デバイスへ即刻移送し得る。このことは、血液への暴露のない、血漿の採取およびポイントオブケア検査実施デバイスへの移送を可能にする。さらに、本開示の血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプリング移送デバイスの内部でかつ外部機械類を用いずに血液を処理することにより、処理時間を最小限にする。さらに、少量の血液のみを必要とする検査では、それは真空管を用いた採血および血漿分離に関連する無駄を省く。
【0025】
図1図9を参照すると、血液サンプリング移送デバイス10は、第1の構成要素または再使用可能な構成要素30と、第1の構成要素30に除去可能に接続可能な第2の構成要素または使い捨て構成要素50とを含む。血液サンプリング移送デバイス10は、細胞部分14と血漿部分16とを有する血液サンプル12を受容するように適合されている。
【0026】
図1図7を参照すると、第1の構成要素30は、一般に、始動部材32と、内部小型ポンプ36の対と、論理制御ボード38と、電源40と、指示要素44と、第1の固定部(securement portion)46と、ハンドル部48とを含む。一実施形態では、始動部材32は双方向電源スイッチまたは電源ボタン34を含む。一実施形態では、電源40は電池42を含む。一実施形態では、指示要素44は着色LEDを含む。
【0027】
図1図9を参照すると、第2の構成要素50は、一般に、入口ポート52と、流入チャネル56および流出チャネル(exit channel)58を有する流路54と、流路54を介して入口ポート52と流体連通している流出ポートまたは出口ポート60と、第1の室64および第2の室または移送室66を有する分離室62と、流路54の内部の入口ポート52と出口ポート60との間に配設されているフィルタ68と、音響焦点要素70と、第2の固定部72とを含む。分離室62の第1の室64は入口ポート52とフィルタ68との間に画定されている。分離室62の第2の室66はフィルタ68と出口ポート60との間に画定されている。
【0028】
第1の構成要素30と第2の構成要素50とは共に除去可能に接続可能であり、第1の構成要素30と第2の構成要素50との間での著しい相対移動が防止されるようになっている。一実施形態では、第1の構成要素30と第2の構成要素50とは、第2の構成要素50の第2の固定部72との第1の構成要素30の第1の固定部46の係合により、共に除去可能に接続可能である。他の実施形態では、同様の接続機構が使用されていてもよい。例えば、スナップ嵌め係合機構または摩擦嵌め係合機構が使用されていてもよい。血液サンプリング移送デバイス10の第2の構成要素50は、その中に血液サンプル12を受容するように適合されている。血液サンプル12は細胞部分14と血漿部分16とを含んでいてもよい。
【0029】
第1の構成要素30と第2の構成要素50とが接続されている状態で、以下により詳細に検討されている通り、入口ポート52は、始動部材32の始動時に血液サンプルを受容するように適合されている。血液サンプルが血液サンプリング移送デバイス10の内部に受容されている状態で、ポンプ36は、血液サンプルをフィルタ68上で前後に振動させる機構をもたらす。ポンプ36は論理制御ボード38により制御される。電源40は始動部材32に電力を供給する。
【0030】
図3および図4を参照すると、血液サンプリング移送デバイス10の入口ポート52は、採血セットまたは採血デバイス100に接続されて、血液サンプリング移送デバイス10内への血液サンプル12の採取を可能にするように適合されている。入口ポート52は、針アセンブリまたはIV接続アセンブリなどの分離デバイスとの係合のための大きさに作製されかつそれに適合されていてもよく、したがって、従来知られている係合ための機構を含んでいてもよい。例えば、一実施形態では、入口ポート52は、それとの取付けのためのそのような別個のデバイスの任意選択の別個のルアー嵌合い構成要素との係合のためのルアーロック(luer lock)またはルアー先端部を含んでいてもよい。例えば、図3および図4を参照すると、採血セット100は、血液サンプリング移送デバイス10の入口ポート52との係合のためのルアー構成要素102を含んでいてもよい。このようにして、入口ポート52は、血液サンプリング移送デバイス10内への血液サンプルの採取のために、採血セット100に接続可能である。さらに、また、入口ポート52と採血セット100との間の係止係合のための機構が設けられていてもよい。そのようなルアー接続およびルアー係止機構は本技術分野において周知されている。採血セット100は、針アセンブリ、IV接続アセンブリ、PICCライン、動脈留置ライン、または同様の採血手段を含んでいてもよい。
【0031】
また、入口ポート52は、閉位置と開位置との間で移行可能な再封止可能なセプタムを含んでいてもよい。セプタムが開位置にある状態で、血液サンプル12が、入口ポート52を通り流路54の流入チャネル56経由で分離室62の第1の室64へ流動してもよい。
【0032】
図8を参照すると、分離室62は、血液サンプル12の細胞部分14が分離室62の第1の室64の内部に含まれておりかつ以下に検討されている通り血液サンプル12の血漿部分16がフィルタ68を通過することにより第1の室64を出て第2の室または移送室66へ行くことができるように封止されている。血液サンプル12の血漿部分16はフィルタ68を通過することができる。
【0033】
また、血液サンプリング移送デバイス10の第2の構成要素50は、音響焦点要素70と、出口ポート60にバルブまたはセプタム86(図12および図13)を含んでいてもよい。以下により詳細に記載されている通り、出口ポート60は、血液サンプリング移送デバイス10から出口ポート60を介してポイントオブケア検査実施デバイス22への血漿部分16の部分の閉じた移送のために、ポイントオブケア検査実施デバイス22への接続に適合されている。図8を参照すると、出口ポート60は、第2の室または移送室66と流体連通している。出口ポート60のバルブまたはセプタム86は閉位置と開位置との間で移行可能である。バルブまたはセプタム86が開位置にある状態で(図13)、血液サンプル12の血漿部分16は、出口ポート60を通って血液検査実施デバイスまたはポイントオブケア検査実施デバイス22(図5)へ流動し得る。
【0034】
一実施形態では、音響焦点要素70は第2の構成要素50の内部に配設されており、図8に示されている通り、フィルタ68上で血液サンプル12を振動させる。音響焦点要素70は、フィルタ68を通過する前に、分離室62およびフィルタ68の中心へ赤血球を集めてもよい。
【0035】
一実施形態では、また、流路54または入口ポート52の部分がサンプル安定剤の層を含んでいてもよい。サンプル安定剤は、抗凝固剤、または例えばRNA、タンパク質検体、もしくは他の要素などの、血液中の特定の要素を保存するように設計されている物質であり得る。一実施形態では、サンプル安定剤の層はフィルタ68上に配設されていてもよい。他の実施形態では、サンプル安定剤の層は入口ポート52とフィルタ68との間のどこかに配置されていてもよい。このようにして、血液サンプル12が入口ポート52を通って分離室62の第1の室64内へ流動する際、血液サンプリング移送デバイス10は、サンプル安定剤との血液サンプル12の受動高速混合を実現する。
【0036】
図8に示されている通り、血液サンプリング移送デバイス10の第2の構成要素50は、第1の室64と第2の室66との間に配設されているフィルタ68を含む。図8に示されている通り、フィルタ68は、血液サンプル12の細胞部分14を第1の室64の内部に捕捉するようにかつ血液サンプル12の血漿部分16がフィルタ68を通過し第2の室66へ行くことを可能にするように適合されている。一実施形態では、フィルタ68は接線流フィルタを含む。接線流フィルタはクロスフロー濾過を利用して、血漿部分16を細胞部分14から分離する。
【0037】
一実施形態では、フィルタ68は、市販の中空繊維薄膜フィルタ、または市販の飛跡エッチフィルタなどの平膜フィルタのどちらかであってもよい。薄膜フィルタの細孔径および多孔性は、効率的な方法でのきれいな(すなわち赤血球のない、白血球のない、かつ血小板のない)血漿の分離を最適にするように選択され得る。別の実施形態では、フィルタ68は側方流薄膜を含む。他の実施形態では、フィルタ68は、血液サンプル12の細胞部分14を第1の室64の内部に捕捉することができかつ血液サンプル12の血漿部分16がフィルタ68を通過して第2の室66へ行くことを可能にすることができる任意のフィルタを備えていてもよい。
【0038】
図5を参照すると、血液検査実施デバイスまたはポイントオブケア検査実施デバイス22は、血液サンプリング移送デバイス10の出口ポート60を受容するように適合されている受容ポート24を含む。血液検査実施デバイス22は、血液サンプリング移送デバイス10から血液検査実施デバイス22への血漿部分16の部分の閉じた移送(図8)のために、血液サンプリング移送デバイス10の出口ポート60を受容するように適合されている。血液検査実施デバイス22は、血漿部分16を受容して、血液サンプルを分析し、検査結果を得るように適合されている。
【0039】
前段で検討されている通り、血液サンプリング移送デバイス10の出口ポート60は、閉位置と開位置との間で移行可能なバルブまたはセプタム86を含んでいてもよい。バルブまたはセプタム86が開位置にある状態で(図13)、血液サンプル12の血漿部分16は、出口ポート60を通って血液検査実施デバイスまたはポイントオブケア検査実施デバイス22(図5)へ流動し得る。
【0040】
一実施形態では、図12および図13を参照すると、バルブ86は、一般に、移送チャネル90と、ベローまたは変形可能な壁部材92と、第1の障壁96および第2の障壁98を有するセプタムまたは障壁94とを含んでいてもよい。図12を参照すると、バルブ86は閉位置にあって、血液サンプル12の血漿部分16が出口ポート60を通って流動しないようにする。このようにして、血漿部分16は血液サンプリング移送デバイス10の内部に封止される。図13を参照すると、バルブ86は、血液サンプル12の血漿部分16が出口ポート60を通って血液検査実施デバイスまたはポイントオブケア検査実施デバイス22(図5)へ流動し得るように、開位置にある。
【0041】
図12を参照すると、血漿部分16が血液サンプリング移送デバイス10の移送室66の内部に受容されている状態で(図8)、血液サンプリング移送デバイス10の出口ポート60は、次いで、ポイントオブケア検査実施デバイス22の受容ポート24を覆って配置されている。矢印Bの方向に押し下げることが、変形可能な壁部材92を圧縮し、図12に示されている通り、セプタム94の第1の障壁96と第2の障壁98とを切り開く。バルブ86が開位置にある状態で、血液サンプル12の血漿部分16は、臨床医および患者への暴露を低減する閉じた方法で、出口ポート60および受容ポート24を通ってポイントオブケア検査実施デバイス22へ流動することを可能にされる。
【0042】
血液サンプリング移送デバイス10のバルブ86は、出口ポート60がポイントオブケア検査実施デバイス22の受容ポート24上で押圧された場合にのみ開く。これは、隔離された血漿部分16を、直接、ポイントオブケア検査実施デバイス22の受容ポート24内に解放し、したがって患者の血液への不要な暴露を軽減する。
【0043】
図11を参照して、本開示の血液サンプリング移送システム200がここで検討される。血液サンプリング移送システム200は、再使用可能な構成要素30と、再使用可能な構成要素30に除去可能に接続可能な第1の使い捨て構成要素202と、再使用可能な構成要素30に除去可能に接続可能な第2の使い捨て構成要素204とを含む。
【0044】
以下に検討される通り、使い捨て構成要素50の使用後、使い捨て構成要素50は、図10に示されている通り、第1の構成要素30から除去されることが可能であり、使い捨て構成要素50はバイオハザード容器内に廃棄され得る。本開示の血液サンプリング移送システム200の1つの利点は、複数の使い捨て構成要素50すなわち第1の使い捨て構成要素202および第2の使い捨て構成要素204が、再使用可能な構成要素30と共に使用され得ることである。他の実施形態では、任意の数の使い捨て構成要素が再使用可能な構成要素30と共に使用され得る。このようにして、始動部材32を含む再使用可能な構成要素30は繰り返し使用されることが可能であり、一方、関連する鋭利なものを含む使い捨て構成要素が処分され得る。使い捨て構成要素50が使用されると、それは、図10に示されている通り、第1の構成要素30から除去されることが可能であり、使い捨て構成要素50はバイオハザード容器内に廃棄され得る。血液サンプリング移送デバイス10を再度使用することが所望された場合、新しいきれいな使い捨て構成要素が選択され、再使用可能な構成要素30と共に使用されることが可能である。
【0045】
図1図10を参照して、本開示の血液サンプリング移送デバイスならびに血液分離および検査実施システムの使用がここで記載される。図3および図4を参照すると、前段で検討されている通り、血液サンプリング移送デバイス10の入口ポート52は、採血セット100に接続されて、血液サンプリング移送デバイス10内への血液サンプル12の採取を可能にするように適合されている。採血セット100が患者に接続されると、第1の構成要素30の始動部材32は始動され、例えば電源スイッチ34が押し下げられ、血液サンプルを第2の構成要素または使い捨て構成要素50の分離室62内へ抜き取る。これが起こると、血液サンプル12はフィルタ68上で前後に振動される。また、血液サンプル12が血液サンプリング移送デバイス10をゆっくり満たすと、それは収集され、サンプル安定剤の層上で安定化される。図8を参照すると、血液サンプル12の血漿部分16は、次いで、フィルタ68を通って流動し、血漿部分16が細胞部分14から分離されるようになっている。血漿部分16はフィルタ68を通過し、第2の室または移送室66内に入る。第1の構成要素30の指示要素44が作動した、例えば緑色LEDが作動した、場合、臨床医は採取を止め、移送室66内に採取されていた血漿部分16を移送し続けることができる。例えば、次のステップは、血漿部分16をポイントオブケア検査実施デバイス22へ移送させることである。
【0046】
血液サンプリング移送デバイス10を採血セット100または他の採血ラインから切断した後、血液サンプリング移送デバイス10は血液検査実施デバイス22と係合されてもよい。次に、図5に示されている通り、出口ポート60はポイントオブケア検査実施デバイス22の受容ポート24を覆って配置される。次いで、電源ボタン34は押下されて、血漿部分16を前進させ、採取された血漿部分16をポイントオブケア検査実施デバイス22へ移送する。血液検査実施デバイス22は、血液サンプリング移送デバイス10から血液検査実施デバイス22への血漿部分16の部分の閉じた移送のために、血液サンプリング移送デバイス10の出口ポート60を受容するように適合されている。血液検査実施デバイス22は、血漿部分16を受容して、血液サンプルを分析し、検査結果を得るように適合されている。その後、図10に示されている通り、使い捨て構成要素50は第1の構成要素30から除去されることが可能であり、使い捨て構成要素50はバイオハザード容器内へ廃棄され得る。
【0047】
血液サンプリング移送デバイス10は、有利に、以下のa)ポイントオブケア検査実施デバイス22への移送のために細胞部分を迅速に分離してきれいな血漿サンプルにする安全な閉じたシステム、b)細胞部分をフィルタ68を通して繰り返し再循環させることにより、血漿が効率的に生成されること、c)分離された血漿がセプタム対応出口ポート60経由でポイントオブケア検査実施デバイス22へ安全に移送されること、d)搭載された血液入口ポート52を通して多くの様々な採血モダリティから細胞部分を容易に受け入れることができるシステム、およびe)任意選択で、音響焦点要素70が使用されて、流体通路内の赤血球を流動の中心方向に集めかつフィルタ68から離し、フィルタ68における血漿分離の効率性をさらに高めること、を可能にする。
【0048】
先行システムを凌ぐ、本開示の血液サンプリング移送デバイスならびに血液分離および検査実施システムのその他の利点のいくつかは、それが血液サンプル暴露を低減する閉じたシステムであること、それがサンプル安定剤との血液サンプルの受動高速混合を実現すること、それが血液サンプルを別個のデバイスに移送することなく、血液サンプルの分離を促進すること、およびそれがポイントオブケア検査実施デバイス22へ純粋な血漿を移送することができることである。本開示の血液サンプリング移送デバイスは、遠心分離を用いずに、閉じたシステムにおける統合された採血および血漿生成を可能にする。臨床医は血液サンプルを採取し、分離することができ、次いで、さらなる操作なしで、その血漿部分をポイントオブケア検査実施デバイス22へ即刻移送し得る。このことは、血液への暴露のない、血漿の採取およびポイントオブケア検査実施デバイス22への移送を可能にする。さらに、本開示の血液サンプリング移送デバイスは、血液サンプリング移送デバイスの内部でかつ外部機械類を用いずに血液を処理することにより、処理時間を最小限にする。さらに、少量の血液のみを必要とする検査では、それは真空管を用いた採血および血漿分離に関連する無駄を省く。
【0049】
例示的設計を有するように本開示が記載されたが、本開示は、本開示の精神および範囲内でさらに修正されることが可能である。したがって、本願は、任意の変形形態、用途、またはその一般的原理を用いる本開示の適合を包含することが意図されている。さらに、本願は、本開示が関連するかつ添付の特許請求の範囲の制限内に入る、本技術分野の既知の、または慣例的な実践の範囲内に入る、本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13