特許第6101417号(P6101417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6101417-密閉構造及びこれを備えた搬送ロボット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101417
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】密閉構造及びこれを備えた搬送ロボット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/43 20060101AFI20170313BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20170313BHJP
   F16J 15/54 20060101ALI20170313BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20170313BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20170313BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   F16J15/43
   F16J15/52 Z
   F16J15/54
   F16J3/04 C
   B25J19/00 Z
   H01L21/68 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-553901(P2014-553901)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2012008465
(87)【国際公開番号】WO2014102887
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139815
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 忠克
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛晃
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−004964(JP,U)
【文献】 特開2000−002338(JP,A)
【文献】 特開平10−181870(JP,A)
【文献】 特許第4106172(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 − 15/56
B25J 19/00
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材に対して回転軸体を介して連結された第2部材との連結部を密閉する密閉構造であって、
当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有し、
前記ベローズ密閉部のベローズは、その一端側が前記第2部材に対して固定されると共に、他端側が前記磁気密閉部に固定されており、
前記磁気密閉部は、前記ベローズの他端側が固定された一方の磁性シール部材と、前記第1部材側に固定された他方の磁性シール部材とを備えており、
前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材が対向して配置される筒部を備えており、
前記他方の磁性シール部材は、前記一方の磁性シール部材の筒部に対向して配置される円周部を備えており、
前記一方の磁性シール部材の筒部と前記他方の磁性シール部材の円周部との間に前記磁性流体が配置され、
前記回転軸体は、前記第2部材に固定されており、
前記一方の磁性シール部材の回転と前記第2部材の回転とを同期させる回転同期機構をさらに備え、該回転同期機構は、前記回転軸体の外周面に形成された突起部と、前記一方の磁性シール部材の内周面に形成され、前記突起部が係合される溝部とを備えていることを特徴とする密閉構造。
【請求項2】
第1部材と、前記第1部材に対して回転軸体を介して連結された第2部材との連結部を密閉する密閉構造であって、
当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有し、
前記ベローズ密閉部のベローズは、その一端側が前記第2部材に対して固定されると共に、他端側が前記磁気密閉部に固定されており、
前記磁気密閉部は、前記ベローズの他端側が固定された一方の磁性シール部材と、前記第1部材側に固定された他方の磁性シール部材とを備えており、
前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材が対向して配置される筒部を備えており、
前記他方の磁性シール部材は、前記一方の磁性シール部材の筒部に対向して配置される円周部を備えており、
前記一方の磁性シール部材の筒部と前記他方の磁性シール部材の円周部との間に前記磁性流体が配置され、
前記回転軸体は、前記第1部材に固定されており
前記一方の磁性シール部材を前記第2部材に対して固定する回転同期機構をさらに備え、該回転同期機構は、前記回転軸体の外周面に形成された突起部と、前記一方の磁性シール部材の内周面に形成され、前記突起部が係合される溝部とを備えていることを特徴とする密閉構造。
【請求項3】
記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材の内側に配置されており、
前記一方の磁性シール部材の筒部は、磁性素材で構成された外周面を備えており、
前記他方の磁性シール部材の円周部は、前記筒部の外周面に対向配置された磁極部材を備えており、
前記一方の磁性シール部材の筒部の外周面と前記他方の磁性シール部材の円周部の磁極部材との間に磁性流体が配置されている請求項1又は請求項2に記載の密閉構造。
【請求項4】
前記回転同期機構は、前記回転軸体と前記一方の磁性シール部材との間に設けられている請求項1又は請求項2に記載の密閉構造。
【請求項5】
前記突起部と前記溝部とによる係合箇所を少なくとも1箇所設けた請求項1又は請求項2に記載の密閉構造。
【請求項6】
前記他方の磁性シール部材と前記一方の磁性シール部材は、軸受け部材を介して回転可能に係合されている、請求項1又は請求項2に記載の密閉構造。
【請求項7】
前記ベローズは、前記一端側及び前記他端側に接続部材を備え、
他端側の前記接続部材と前記一方の磁性シール部材とが固定されると共に、他端側の前記接続部材と前記一方の磁性シール部材との間に、着脱自在な弾性体で構成された弾性シール部材が介挿される、請求項1又は請求項2に記載の密閉構造。
【請求項8】
ベース側部材と、回転側部材とを回転可能に連結する関節部を備えた搬送ロボットであって、
前記関節部は、前記ベース側部材である第1部材と前記回転側部材である第2部材とを相対回転可能に連結する回転軸体を備えており、
前記関節部を密閉する密閉構造をさらに備えており、
当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有し、
前記ベローズ密閉部のベローズは、その一端側が前記第2部材に対して固定されると共に、他端側が前記磁気密閉部に固定されており、
前記磁気密閉部は、前記ベローズの他端側が固定された一方の磁性シール部材と、前記第1部材側に固定された他方の磁性シール部材とを備えており、
前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材が対向して配置される筒部を備えており、
前記他方の磁性シール部材は、前記一方の磁性シール部材の筒部に対向して配置される円周部を備えており、
前記一方の磁性シール部材の筒部と前記他方の磁性シール部材の円周部との間に前記磁性流体が配置され、
前記回転軸体は、前記第2部材に固定されており、
前記一方の磁性シール部材の回転と前記第2部材の回転とを同期させる回転同期機構をさらに備え、該回転同期機構は、前記回転軸体の外周面に形成された突起部と、前記一方の磁性シール部材の内周面に形成され、前記突起部が係合される溝部とを備えている
ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項9】
ベース側部材と、回転側部材とを回転可能に連結する関節部を備えた搬送ロボットであって
記関節部は、前記回転側部材である第1部材と前記ベース側部材である第2部材とを相対回転可能に連結する回転軸体を備えており、
前記関節部を密閉する密閉構造をさらに備えており、
当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有し、
前記ベローズ密閉部のベローズは、その一端側が前記第2部材に対して固定されると共に、他端側が前記磁気密閉部に固定されており、
前記磁気密閉部は、前記ベローズの他端側が固定された一方の磁性シール部材と、前記第1部材側に固定された他方の磁性シール部材とを備えており、
前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材が対向して配置される筒部を備えており、
前記他方の磁性シール部材は、前記一方の磁性シール部材の筒部に対向して配置される円周部を備えており、
前記一方の磁性シール部材の筒部と前記他方の磁性シール部材の円周部との間に前記磁性流体が配置され、
前記回転軸体は、前記第1部材に固定されており、
前記一方の磁性シール部材を前記第2部材に対して固定する回転同期機構をさらに備え、該回転同期機構は、前記回転軸体の外周面に形成された突起部と、前記一方の磁性シール部材の内周面に形成され、前記突起部が係合される溝部とを備えている
ことを特徴とする搬送ロボット。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉構造に関するものであり、特に、搬送機器や搬送ロボットなどの機械の駆動部分を密閉する密閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送機器などの機械では、駆動部分における塵埃等の発生が問題になることがある。特に、真空チャンバなどの密閉容器やクリーンルーム等で用いられる機械では、機械の駆動部分で発生した塵埃等の物質の飛散や流出を防止する必要性がある。
【0003】
例えば、密閉容器内で用いられる搬送装置としては、昇降可能に設置された被搬送物支持具の駆動機構を、接触式のシール部材であるベローズを用いて密閉したものがある(特許文献1参照)。ベローズは、伸縮性を有する部材であり、直線運動する部材相互の間をシールする部材として用いられる。
また、真空チャンバ内で用いられる搬送ロボットとしては、支持部材に揺動可能に支持された揺動部材と支持部材との関節部を、磁性流体シールを用いた磁気シールユニットで密閉したものがある(特許文献2参照)。磁性流体シールは、回転運動する部材相互の間隙に磁性流体を保持させる被接触式のシール構造であり、搬送機器の駆動部分などの回転運動部のシールに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−181870号公報
【特許文献2】特許第4106172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ベローズは、ねじりに対する強度が高くないため、回転運動する部材相互の間をシールする部材としては不向きである。
他方、磁性流体シールは、上述したように、回転運動部のシール構造として適している。ところが、磁性流体シールで安定したシール性能を得るためには、回転運動部の変形を防止する必要がある。
このようなことから、上述した搬送ロボットでは、磁気シールユニットを支持軸と支持部材との間に弾性シール材を介して配置することにより、支持軸の撓み(曲げ変形)による間隙の増大変化を弾性シール材で吸収しようとしている。ところが、弾性シール材で吸収できる変化量は必ずしも大きくない。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、磁性流体シールを用いた回転運動部の密閉構造であって、例えば支持軸の曲げ変形など、回転運動部に変形が生じても安定したシール性能が得られる密閉構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願に係る発明は、第1部材と、前記第1部材に対して回転軸体を介して連結された第2部材との連結部を密閉する密閉構造であって、当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有することを特徴とする密閉構造である。
そして、前記ベローズ密閉部のベローズは、その一端側が前記第2部材に対して固定されると共に、他端側が前記磁気密閉部に固定されており、前記磁気密閉部は、前記ベローズの他端側が固定された一方の磁性シール部材、前記第1部材側に固定された他方の磁性シール部材とを備えており、前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材が対向して配置される筒部を備えており、前記他方の磁性シール部材は、前記一方の磁性シール部材の筒部に対向して配置される円周部を備えており、前記一方の磁性シール部材の筒部と前記他方の磁性シール部材の円周部との間に前記磁性流体が配置されている。
また、前記一方の磁性シール部材の回転と前記第2部材の回転とを同期させる回転同期機構をさらに備えている。
また、前記回転軸体は、前記第2部材に固定されており、前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材の内側に配置されており、前記一方の磁性シール部材の筒部は、磁性素材で構成された外周面を備えており、前記他方の磁性シール部材の円周部は、前記円筒部の外周面に対向配置された磁極部材を備えており、前記一方の磁性シール部材の筒部の外周面と前記他方の磁性シール部材の円周部の磁極部材との間に磁性流体が配置されている。
また、前記回転同期機構は、前記回転軸体と前記一方の磁性シール部材との間に設けられている。
また、前記回転同期機構は、前記回転軸体の外周面に形成された突起部と、前記一方の磁性シール部材の内周面に形成され、前記突起部が係合される溝部とを備えている。
また、前記突起部と前記溝部とによる係合箇所を少なくとも1箇所設けている。
また、前記回転軸体は、前記第1部材に固定されており、前記一方の磁性シール部材は、前記他方の磁性シール部材の内側に配置されており、前記一方の磁性シール部材の筒部は、磁性素材で構成された外周面を備えており、前記他方の磁性シール部材の円周部は、前記円筒部の外周面に対向配置された磁極部材を備えており、前記一方の磁性シール部材の筒部の外周面と前記他方の磁性シール部材の円周部の磁極部材との間に磁性流体が配置されている。
また、前記一方の磁性シール部材を前記第2部材に対して固定する同期機構をさらに備えている。
また、前記他方の磁性シール部材と前記一方の磁性シール部材は、軸受け部材を介して回転可能に係合されている。
また、前記一方の磁性シール部材と前記ベローズとの間に、着脱自在な弾性体で構成されたシール部材が装着された密閉連結部をさらに備えている。
【0007】
本出願に係る別の発明は、ベース側部材と、回転側部材とを回転可能に連結する関節部を備えた搬送ロボットであって、前記関節部は、前記ベース側部材と前記回転側部材とを相対回転可能に連結する回転軸体を備えており、前記関節部を密閉する密閉構造をさらに備えており、当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有するものである。
そして、ベース側部材と、回転側部材とを回転可能に連結する関節部を備えた搬送ロボットであって、前記ベース側部材は、前記第1部材及び前記第2部材のうちの一方であり、前記回転側部材は、前記第1部材及び前記第2部材のうちの残る他方であり、前記関節部は、前記ベース側部材と前記回転側部材とを相対回転可能に連結する前記回転軸体を備えており、前記関節部を密閉する密閉構造をさらに備えており、当該密閉構造は、磁性流体による磁気密閉部と、ベローズで構成されたベローズ密閉部とを有するものであり、前記密閉構造は、上述した構成の密閉構造である。
【発明の効果】
【0008】
本出願に係る発明によれば、回転可能に連結された2つの部材の連結部の密閉構造を、磁気密閉部とベローズを用いて構成しているので、回転可能な状態を維持しつつ、連結部の回転軸体の曲げ変形がベローズで吸収され、安定した密閉状態が確保される。
そして、ベローズ側に固定された磁気シールケーシングを用意し、この磁気シールケーシングと軸受け支持部材と、両者の間に配置した磁性流体で磁気密閉部を構成したので、より確実な密閉状態が確保される。
また、磁気シールケーシングの回転とベローズが固定された第2部材の回転とを同期させる回転同期機構を備えたので、ベローズのねじれ変形が確実に防止され、さらに確実な密閉状態が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本出願の発明に係る密閉構造を備える搬送ロボットの一例を示す斜視図である。
図2図2(A)は、本出願の発明の実施形態の密閉構造について、図2(B)に示されるA−A面における断面を示す断面図であり、図2(B)は、図2(A)に示されるB1−B2面における断面を示す断面図である。
図3図2(B)に示される密閉構造の要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0010】
10…搬送ロボット、10a…脚部、10b…アーム部、
11…第1アーム(第1部材又は第2部材)、11a…筐体、11b…筐体の開口部、
12…第2アーム(第1部材又は第2部材)、12a…筐体、
13…第3アーム(ハンド部)、
20…連結部(第1連結部)、21…駆動モータ、
22…減速機ユニット、22a…減速機、22b…出力回転部、22c…軸受け部、
23…回転軸体、
30…第1密閉構造、40…ベローズ密閉部、41…ベローズ、42,43…接続部材、
49…Oリング(弾性シール部材)、50…磁気密閉部、
51…筒状部材(一方の磁性シール部材、磁気シールケーシング)、
52…筒部、52a…筒部の外周面、53…フランジ部、
61…磁性シールユニット(他方の磁性シール部材、軸受け支持部材)、
62…円周部、63…磁極部材(ポールピース)、64…磁性流体、
66…ベアリング(軸受け部材)、
70…第1同期機構(回転同期機構)、71…突起部、72…キー溝部、
72a…キー溝部の底面、
C…間隙、P…第1密閉構造の内側空間、S…作業空間。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る密閉構造を備えた搬送ロボットについて、図面を参照しつつ説明する。
図1に示される搬送ロボット10は、減圧された真空の作業空間である真空チャンバ内に設置されている。
【0012】
搬送ロボット10は、真空チャンバの床面に設置された脚部10aと、脚部10aの上端部に設置されたアーム部10bとで構成されている。アーム部10bは、脚部10aの上端に回転可能に設置された第1アーム11と、第1アーム11の先端部に回転可能に取り付けられた第2アーム12と、第2アーム12の先端部に回転可能に取り付けられた搬送ハンドとも称される第3アーム13を備えている。第1及び第2アーム11,12は、筐体11a,12a(図2(B)参照)を有しており、後述する駆動モータ21などの部材を筐体内に設置できるようになっている。また、各アーム11,12の筐体11a,12aは密閉性を有するものであるので、筐体の開口部分を密閉すると、筐体内部空間を作業空間Sから遮断した状態でしかも気圧差を維持しつつ密閉できる。なお、搬送ロボット10の全体構成など、基本的な構成は、周知のものであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0013】
アーム部10bの第2アーム(第2部材、回転側部材)12は、上述したように、第1アーム(第1部材11、ベース側部材)に対して揺動可能に連結されている。
【0014】
第1アーム11と第2アーム12との連結部(以下、第1連結部と称する)20は、両アーム11,12を相対回転可能に連結する関節部である。
第1連結部20は、第1アーム11内に設置された駆動モータ21と、駆動モータ21の回転を変速して伝達する減速機ユニット22と、減速機ユニット22に支持された回転軸体23とを備えている。
減速機ユニット22は、第1アーム11内に設置されており、ハウジング22aと、出力回転部22bと、ベアリング22cと、入力シャフト26と、駆動モータ21の回転を入力シャフト26に伝達するタイミングベルト25とを備えている。ハウジング22aは、上側に開口した開口部28と、底部の中央に形成された下側に延びる貫通穴とを備えており、開口部28内にベアリング22cを介して出力回転部22bが回転可能に設置されている。出力回転部22bには、上側に延びる回転軸体23と、貫通穴を通って下側に延びる入力シャフト26とが固定されている。この入力シャフト26は、シャフト部26bの下端部にギア部26aを備えており、このギア部26aに駆動モータ21の回転がタイミングベルト25を介して伝達されるようになっている。つまり、駆動モータ21の回転は、タイミングベルト25及び入力シャフト26を介して出力回転部22bに伝達され、回転軸体23に伝達される。回転軸体23は、第1アーム11の筐体11aに形成された開口部11bから外側(図3では上方)に突出する状態で出力回転部22bに固定されている。そして、回転軸体23の先端側である上端部に第2アーム12が取り付けられている。つまり、第1アーム11と第2アーム12は回転軸体23を介して回転可能に連結されている。従って、駆動モータ21を作動させると、第2アーム12が第1アーム11に対して回転、回動される。
【0015】
搬送ロボット10は、さらに、第1連結部20を密閉する第1密閉構造30を備えている。この第1密閉構造30は、搬送ロボット10が設置された作業空間Sとは遮断された空間に第1連結部20を密閉する構造である。
【0016】
第1密閉構造30は、第2アーム側に固定されたベローズ密閉部40と、ベローズ密閉部40に連結された磁気密閉部50とを備えている。
【0017】
ベローズ密閉部40は、筒状の部材であるベローズ41を備えている。ベローズ41は、第1連結部20の回転軸体23を取り囲むように配置されている。そして、ベローズ41の上端部(一端側)はリング状の接続部材(フランジ部材)42を介して第2アーム12にボルト締結により固定されている。そして、ベローズ41の下端部(他端側)には、リング状の接続部材(フランジ部材)43を介して磁気密閉部50が締結されている。
なお、ベローズ41の上端側の接続部材42と第2アーム12の間は、ゴム製のOリング(弾性シール部材)49が介挿された状態でボルト締結により固定されている。これにより、ベローズ41の両端の接続部分における密閉性が確保されている。なお、ベローズ41の下端側の接続部材43と磁気密閉部50の後述の筒状部材51の間や、後述の磁性シールユニット61と第1アーム11との間も同様の固定構造である。
【0018】
磁気密閉部50は、ベローズ41の下端が連結された筒状部材(一方の磁性シール部材)51と、第1アーム11側に固定された磁性シールユニット(他方の磁性シール部材)61とを備えている。筒状部材51は磁性シールユニット61の内側に配置されている。そして、筒状部材51と磁性シールユニット61の間に、ベアリング66が介挿されている。このような構成にすると、相互間のスムーズな回転を実現できる。また、筒状部材51と磁性シールユニット61との間に、容易に、一定間隔の間隙Cを全周に亘って形成することができる。さらに、筒状部材51がベアリング66を介して磁性シールユニット61に安定状態で保持され、筒状部材51の回転位置が安定する。つまり、磁性シールユニット61及びベアリング66は、筒状部材51の、第1アーム11に対する回転位置を安定させる手段(軸受け部材)ということができる。筒状部材51の回転位置が安定していると、ベローズ41の伸縮以外の変形(例えばねじり変形)が抑制される。なお、ベアリング66は、筒状部材51の後述の筒部52の上端位置と下端位置にそれぞれ配置されている。
【0019】
筒状部材51は、回転軸用材料として慣用的に使用されている磁性を有する鋼材で構成されており、回転軸体23を取り囲むように配置された筒部52と、筒部52の上端および下端に設けられたフランジ部53とを備えている。各フランジ部53は、筒部52から径方向外側に向けて広がった平板でリング状の部分である。
【0020】
磁性シールユニット61は、磁場を発生させるユニットであり、筒状部材51の筒部52を全周に亘って取り囲む円周部62を備えている。この円周部62には、磁場を発生させるための部材である磁極部材63が配置されている。つまり、磁極部材63を有する円周部62は、筒状部材51の筒部52と対向配置されている。磁極部材63は、リング状のマグネット63aと、マグネット63aの上下に配置されるリング状のポールピース63bとで構成される。そして、両ポールピース63bと筒部52の外周面52aとの間に磁性流体64を保持させる構成になっている。従って、磁性シールユニット61を作動させると、第1アーム11に対する第2アーム12の回転が可能な状態で、筒状部材51と磁性シールユニット61の間の密閉状態が磁性流体64によって確保される。なお、本実施形態では、磁極部材63は、上下のベアリング66に隣接する位置に、それぞれ配置されており、上下のベアリング66に隣接する位置に磁性流体64が保持されている。
【0021】
第1密閉構造30は、さらに、筒状部材51の回転と第2アーム12との回転とを同期させる第1同期機構(回転同期機構)70を備えている。この第1同期機構70は、回転軸体23の外周面に形成された突起部71と、筒状部材51の内周面に形成されたキー溝部72とを備えている。キー溝部72は、回転軸体23の軸方向(上下方向)に延在している。そして、回転軸体23の突起部71は、突起部71の先端とキー溝部72の底面72aとの間に隙間が確保された状態で、キー溝部72に係合している。この構造であると、回転軸体23が曲げ変形してキー溝部72に対する突起部71の相対位置が変化しても、曲げ変形に起因する力が突起部71からキー溝部72に作用することはない。また、第1同期機構70により、回転軸体23の回転、すなわち第2アーム12の回転と、筒状部材51の回転とは同期するため、ベローズ41の上下端で回転にばらつきが生じることはない。その結果、ベローズ41にねじれが加わる恐れはなく、ベローズ41に破損が生じるおそれはない。その結果、第1密閉構造30において、高い密閉信頼性が得られる。
【0022】
このように、第1密閉構造30は、第1アーム11と第2アーム12の間に存する第1連結部20を取り囲む配置である。そして、第1密閉構造30の一端すなわちベローズ41の上端は、第2アーム12の筐体12aに密閉状態で固定され、第1密閉構造30の他端すなわち磁気密閉部50の磁性シールユニット61は、第1アーム11の筐体11aに密閉状態で固定されている。つまり、第1密閉構造30の内側空間P(図2(B)参照)は、密閉が確保された状態で、第1密閉構造30及び第2アーム12の筐体12aの底面に囲まれていると共に第1アーム11の筐体内部空間に開口部11bを介して連通しており、作業空間Sから遮断されている。
従って、搬送ロボット10の第1アーム11内の減速機22a等の第1連結部20で塵埃等が生じたとしても、生じた塵埃が第1アーム11内から作業空間Sに流出することが防止される。
【0023】
また、第1アーム11と第2アーム12の連結部20では、第2アーム12の荷重のほとんど全てを回転軸体23で支持し、第2アーム12を揺動させる回転力を、回転軸体23を介して第1アーム11側から第2アーム12側に伝達している。つまり、第2アーム12の荷重や第2アーム12を回転させるための回転力を受ける部分と、密閉(シール)を行う部分とを完全に分離している。すなわち、ベローズ41及び磁気密閉部50を含む第1密閉構造30に、第2アーム12の荷重や第2アーム12を回転させるための回転力が作用することが防止されている。このような構造であると、磁気密閉部50の変形が防止されて筒状部材51と磁性シールユニット61の間の磁性流体64の保持状態が安定し、ベローズ41のねじれ変形が防止されるので、密閉状態が確保される。
さらに、回転軸体23は、第2アーム12の荷重を受けて曲げ変形する可能性がある。しかし、第1密閉構造30は、ベローズ41を有しているので、回転軸体23の曲げ変形に起因する変位はベローズ41の伸縮変形によって吸収され、曲げ変形に起因する力が磁気密閉部50には作用しない。つまり、回転軸体23に曲げ変形が生じたとしても、磁気密閉部50の密閉性は確保される。
従って、搬送ロボット10の第1アーム11内で生じた塵埃が第1アーム11内から作業空間Sに流出することが防止される。
【0024】
なお、上述したように、脚部10aと第1アーム11との間や、第2アーム12と第3アーム13との間も、相互に回転可能に連結されているが、これらの連結部の構成は、上述した第1アーム11と第2アーム12の連結部である第1連結部20と同様である。従って、ここでは、これらの連結部の構造については、その詳細な説明を省略する。
【0025】
また、本発明に係る密閉構造は、上記実施形態の構造に限られるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された密閉構造は、本発明の範囲に含まれる。
【0026】
例えば、ベローズ41は、上記実施形態では、第1連結部20の回転軸体23の一部を取り囲むように配置されているが、第1連結部(又は第1連結部が配置された空間)20と作業空間Sとを遮断する配置になっていれば良い。また、ベローズ41は第2アーム12と一体に回転するようになっていれば良い。つまり、ベローズ41の上端部の固定先の部材は、第2アーム12に限られず、例えば回転軸体23でも良い。
【0027】
また、筒状部材51は、円筒形である筒部52の外周面52aの円筒軸と回転軸体23の軸心とが一致するように配置されていることが好ましい。このような配置であると、ベローズ41の変形が最小限に抑制される。また、上記実施形態では、筒状部材51と磁性シールユニット61の間にベアリング66が介挿されているが、例えばメタル軸受け構造などの軸受け構造でもよい。また、筒状部材51としては、一体構造物でなくてもよく、例えば、両方又は一方のフランジ部53が筒部52に対して着脱可能な構造であってもよい。
【0028】
また、ベローズ密閉部40と磁気密閉部50との締結部(固定部)は、上述したボルト締結に限られるものではなく、例えば溶接による連結でも良い。これは、ベローズ密閉部40や磁気密閉部50と、第1アーム11や第2アーム12との締結部についても同様である。
【0029】
また、同期機構については、磁気密閉部50の筒状部材51と磁性シールユニット61との間の回転抵抗が小さい場合、同期機構を用いない構造を採用することが考えられるが、同期機構を用いた方がベローズ41のねじれ変形を防止でき好ましい。
上記実施形態では、第1同期機構70の突起部71及びキー溝部72はそれぞれ2つであり、突起部71とキー溝部72との周方向における係合箇所は2箇所であるが、突起部71及びキー溝部72の数は少なくとも1つ以上であればよく、係合箇所も少なくとも1つ以上であればよい。そして、複数の同期機構を設ける場合は、等間隔で配置することが好ましい。例えば、2つ設ける場合は、回転軸体23を挟んで対向配置するのが好ましく、3つ設ける場合は回転軸体23を取り囲むように120度間隔で設けるのが好ましい。
また、突起部71を筒状部材51に設けると共にキー溝部72を回転軸体23に設けても良い。
また、第1同期機構70は、筒状部材51の回転と第2アーム12との回転とを同期させるものであれば良い。つまり、突起部71の形成先の部材は、第2アーム12と一体に回転する部材であれば回転軸体23に限られず、例えば第2アーム12自体に突起部71を形成しても良い。
また、突起部71は、突起部71の両側面がキー溝部72の両側面に接触した状態になるものでもよいし、一方の側面だけが接触する状態になるものでもよい。一方の側面だけが接触する構造の場合、突起部71の側面とキー溝部72の側面との隙間距離が最大になった状態での位相差は、ベローズ41のねじれ変形の許容回転角度より小さく設定される。
【0030】
また、上記実施形態では、第1アーム11側(下側)に磁気密閉部50が固定され、第2アーム12側(上側)にベローズ41が配置されているが、逆に、第1アーム11側にベローズ41が配置され、第2アーム12側に磁気密閉部50を配置した構造でもよい。この場合、ベローズ41の一端側が第1アーム11に固定され、他端側が磁気密閉部50に固定される。そして、例えばベローズ41の他端側を磁気密閉部50の筒状部材51に固定した場合、磁気密閉部50の磁性シールユニット61は第2アーム12に固定される。
より具体的には、回転軸体23が第2アーム(この場合、第2アームが第1部材)12に固定され、筒状部材51が磁性シールユニット61の内側に配置され、筒状部材51の筒部52は凸状の外周面を備え、磁性シールユニット61の円周部62が筒部52の外周面52aに対向配置され、筒状部材51の筒部52の外周面52aと磁性シールユニット61の円周部62の磁極部材63との間に磁性流体64が配置される。そして、筒状部材51を第1アーム(この場合、第1アームが第2部材)11に対して固定する同期機構が備えられている。この同期機構としては、例えば、筒状部材51の内側に、第1アーム11の筐体11aに固定された状態で設けられた支持部材を挙げることができる。この支持部材で筒状部材51を支持すると、磁性シールユニット61と筒状部材51との間の回転抵抗に起因する力は、第1アーム11に固定された支持部材が受けることになり、ベローズ41のねじれ変形が防止される。
【0031】
また、上記実施形態では、第1アーム11がベース側部材であり、第2アーム12が回転側部材であるが、逆でも良い。さらに、上記実施形態は、筒状部材51の筒部52が磁性シールユニット61の円周部62に取り囲まれた構造であり、筒部52の円筒形の外面が磁性シールユニット61に対して外向きで、円周部62の表面(外面)が筒状部材51に対して内向きの配置であるが、その逆の配置でも良い。つまり、円周部62の表面(外面)が筒状部材51に向けて外向きで、筒部52の円筒形の表面(外面)が磁性シールユニット61に対して内向きになる配置でもよい。
図1
図2
図3