(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送経路の上方に配置したインクジェットヘッドに複数のノズルを、前記搬送経路上を搬送される記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に沿って配置し、前記各ノズルからそれぞれインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記各ノズルから前記記録媒体に対するインクの吐出密度に基づいて、該各ノズルから吐出されるインクの推進力を補正する制御手段を備え、
前記吐出密度は、インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向と直交する主走査方向における連続ノズル数と、同一の前記ノズルがインクを吐出するドットの前記搬送方向における連続ライン数とのうち、少なくとも一方に基づいて決定されたものである、
ことを特徴とする画像形成装置。
搬送経路の上方に配置したインクジェットヘッドに複数のノズルを、前記搬送経路上を搬送される記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に沿って配置し、前記各ノズルからそれぞれインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記各ノズルから前記記録媒体に対するインクの吐出密度に基づいて、該各ノズルから吐出されるインクの推進力を補正する制御手段を備え、
前記吐出密度は、同一の前記ノズルが同一のドットに対して吐出するインクのドロップ数に基づいて決定されたものである、
ことを特徴とする画像形成装置。
搬送経路の上方に配置したインクジェットヘッドに複数のノズルを、前記搬送経路上を搬送される記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に沿って配置し、前記各ノズルからそれぞれインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記各ノズルから前記記録媒体に対するインクの吐出密度に基づいて、該各ノズルから吐出されるインクの推進力を補正する制御手段と、
前記インクジェットヘッドと前記記録媒体との間隔であるヘッドギャップを調整するヘッドギャップ調整手段を備え、
前記制御手段は、前記ヘッドギャップに応じて、前記ノズルによるインクの推進力を調整する制御を行う、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、インクジェットヘッドのノズルから記録媒体に向けて吐出されるインク液滴は、自己気流を生じさせることがある。この自己気流は、ノズルからインク液滴が吐出される方向と同じくノズルの直下に向かうものである。
【0008】
この自己気流は、ノズルから吐出されたインクの直進性をアシストする方向成分を含んでいるので、その強さ次第では、上述した搬送気流による記録媒体の搬送方向へのインクの着弾ずれの度合いに変化をもたらし、搬送気流による着弾ずれを抑制する制御の効果を妨げる可能性がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、搬送経路上を搬送される記録媒体にその上方のインクジェットヘッドの各ノズルからそれぞれインクを吐出して記録媒体に画像を形成する際に、搬送気流により発生するインクの着弾ずれに自己気流が影響を及ぼしても、着弾ずれを抑制した良好な画像を形成できる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1乃至
請求項3に記載した本発明の画像形成装置は、
搬送経路の上方に配置したインクジェットヘッドに複数のノズルを、前記搬送経路上を搬送される記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に沿って配置し、前記各ノズルからそれぞれインクを吐出して前記記録媒体に画像を形成する画像形成装置において、
前記各ノズルから前記記録媒体に対するインクの吐出密度に基づいて、該各ノズルから吐出されるインクの推進力を補正する制御手段を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明
の第1参考例に係る画像形成装置は、前記各ノズルから前記記録媒体にそれぞれ吐出するインクの推進力を、吐出したインクにより前記記録媒体に形成される画像の濃度ムラに応じて補正する補正手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記補正手段による前記各ノズルに対応する補正内容を、前記各ノズルから前記記録媒体に対するインクの吐出密度に基づいてそれぞれ補正することを特徴とする。
【0012】
さらに、
請求項1に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第2参考例に係る画像形成装置は、冒頭に記載した構成に加えて、前記吐出密度は、インクを吐出する前記ノズルの前記搬送方向と直交する主走査方向における連続ノズル数と、同一の前記ノズルがインクを吐出するドットの前記搬送方向における連続ライン数とのうち、少なくとも一方に基づいて決定されたものであることを特徴とする。
【0013】
また、
請求項2に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第3参考例に係る画像形成装置は、冒頭に記載した構成に加えて、前記吐出密度は、同一の前記ノズルが同一のドットに対して吐出するインクのドロップ数に基づいて決定されたものであることを特徴とする。
【0014】
さらに、
請求項3に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第4参考例に係る画像形成装置は、冒頭に記載した構成に加えて、前記インクジェットヘッドと前記記録媒体との間隔であるヘッドギャップを調整するヘッドギャップ調整手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記ヘッドギャップに応じて、前記ノズルから吐出されるインクの推進力を調整する制御を行うことを特徴とする。
【0015】
また、
本発明の第5参考例に係る画像形成装置は、
以上の各請求項に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第1乃至第4参考例に係る画像形成装置において、前記記録媒体の搬送速度に応じて、前記ノズルから吐出されるインクの推進力の制御内容を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送経路上を搬送される記録媒体にその上方のインクジェットヘッドの各ノズルからそれぞれインクを吐出して記録媒体に画像を形成する際に、搬送気流により発生するインクの着弾ずれに自己気流が影響を及ぼしても、着弾ずれを抑制した良好な画像を形成することができる。
【0017】
即ち、請求項1乃至
請求項3に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第1参考例に係る画像形成装置によれば、インクジェットヘッドのノズルによるインクの吐出密度が高くなると、ノズルと記録媒体(搬送経路)との間にインクの吐出方向に沿って発生する自己気流の度合いが強くなる。この度合いを示す自己気流度が高まると、記録媒体の搬送に伴い搬送方向の上流側から下流側に向かって発生する搬送気流によりインクが流される度合いが弱まり、インクの着弾位置が搬送方向の上流側にずれるようになる。
【0018】
これに対し、各ノズルが吐出するインクの推進力は、各ノズルから吐出されるインクの吐出密度に基づいて、制御手段によって制御される。したがって、インクの吐出方向に沿って発生した自己気流の影響で、吐出したインクが搬送気流によって搬送方向の下流側に流される度合いが変化しても、その分を考慮して、吐出させるインクの推進力を調整することで、インクの着弾位置が搬送方向にずれるのを抑制し、着弾ずれを抑制した良好な画像を形成することができる。
【0019】
また、
本発明の第1参考例に係る画像形成装置によれば、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、各ノズルが吐出するインクにより記録媒体に形成される画像の濃度ムラを、補正手段がインクを吐出する際の推進力の補正によって抑制する場合に、自己気流の影響でインクの着弾位置が搬送方向の下流側に流される度合いに変化が生じても、補正手段による補正内容をさらに補正することで、ノズルから吐出されたインクに搬送方向への着弾ずれが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することができる。
【0020】
さらに、
請求項1に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第2参考例に係る画像形成装置によれば、上流側のノズル列において、インクを吐出するノズルが主走査方向において隣り合って連続していると、複数の自己気流が合わさって帯状(壁状)に展開する。これにより、1つの自己気流よりも搬送気流に抗してインクが直進する作用が大きくなる。また、同一のノズルがインクを吐出するドットが搬送方向の複数ラインに亘って連続すると、そのノズルがインクを吐出する周期が短くなるので、インクの吐出により発生した自己気流の安定性が高まり、自己気流度が高くなる。
【0021】
そこで、インク吐出ノズルの主走査方向における連続ノズル数や、同一ノズルがインクを吐出するドットの搬送方向における連続ライン数に基づいて、各ノズルによるインクの吐出密度を決定することができる。そして、決定した吐出密度により、自己気流の度合いを考慮してインクを吐出する際の推進力を調整し、ノズルから吐出されたインクに搬送方向への着弾ずれが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することができる。
【0022】
また、
請求項2に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第3参考例に係る画像形成装置によれば、同一のノズルが同一のドットに対して吐出するインクのドロップ数により階調を調整する場合は、同一のドットに対して吐出するインクのドロップ数が多いほど自己気流の連続発生時間が長くなるので、インクの吐出により発生した自己気流の安定性が高まり、自己気流度が高くなる。
【0023】
そこで、インク吐出ノズルの主走査方向における連続ノズル数や、同一ノズルがインクを吐出するドットの搬送方向における連続ライン数だけでなく、同一のノズルが同一のドットに対して吐出するインクのドロップ数を考慮に入れて、各ノズルによるインクの吐出密度を決定することができる。そして、決定した吐出密度により、自己気流の発生度合いを考慮してインクを吐出する際の推進力を調整し、各ノズルから吐出されたインクに副走査方向への着弾ずれが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することができる。
【0024】
さらに、
請求項3に記載した本発明の画像形成装
置や本発明の第4参考例に係る画像形成装置によれば、例えば、封筒等の厚みが大きい記録媒体を使用する際には、インクジェットヘッドに記録媒体が衝突するのを防ぐために、インクジェットヘッドと記録媒体とのヘッドギャップをヘッドギャップ調整手段により拡げる場合がある。
【0025】
ヘッドギャップが拡がってインクジェットヘッドと記録媒体の間隔が大きくなると、搬送気流がインクジェットヘッドと記録媒体の間を流れやすくなる。また、ヘッドギャップが拡がることで、インクの飛翔距離及び飛翔時間が長くなるため、インクの流される量が増える。つまり、各ノズルから吐出されたインクが搬送気流によって副走査方向に流されやすくなる。
【0026】
そこで、制御手段がヘッドギャップに応じて各ノズルにより吐出させるインクの推進力の制御内容を調整することで、ヘッドギャップが記録媒体の厚み等に応じて調整される場合であっても、そのヘッドギャップに応じた内容でノズルにより吐出させるインクの推進力が制御されるようにして、各ノズルから吐出されたインクに副走査方向への着弾ずれが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することができる。
【0027】
また、
本発明の第5参考例に係る画像形成装置によれば、例えば、記録媒体の搬送速度が速くなると、搬送気流の速度が増し、各ノズルで発生した自己気流がインクを直進させる度合いに、搬送気流の速度増加に応じた変化が生じる。
【0028】
そこで、記録媒体の搬送速度に応じて各ノズルにより吐出させるインクの推進力の制御内容を調整することで、記録媒体の搬送速度が変更される場合であっても、その搬送速度に応じた内容でノズルにより吐出させるインクの推進力が調整されるようにして、各ノズルから吐出されたインクに副走査方向への着弾ずれが発生するのを抑制して、良好な画像を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0031】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0032】
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図、
図2は
図1のインクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図、
図3は
図1の搬送ベルトおよびプラテンプレートの部分拡大断面図、
図4は
図1のヘッドブロックの配置を示す説明図である。
【0033】
以下の説明において、
図1の紙面表方向を前方とする。また、
図1に示すように、紙面の上下左右を上下左右方向とする。また、
図1において破線で示す経路が、記録媒体である用紙PAが搬送される搬送経路Rである。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける上流、下流を意味する。
【0034】
図1、
図2に示すように、インクジェット印刷装置1は、給紙部2と、搬送部3と、印刷部4と、制御部5、読取部6とを備える。
【0035】
給紙部2は、用紙PAの給紙を行う。給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、レジストローラ13とを備える。給紙台11は、印刷に用いられる用紙PAが積載されるものである。
【0036】
給紙ローラ12は、給紙台11に積載された用紙PAを1枚ずつピックアップしてレジストローラ13に向けて搬送する。給紙ローラ12は、給紙台11の上側に配置されている。給紙ローラ12は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0037】
レジストローラ13は、給紙ローラ12により搬送されてきた用紙PAを一旦止めた後、搬送部3に向けて搬送する。レジストローラ13は、給紙ローラ12の下流側に配置されている。レジストローラ13は、図示しないモータにより回転駆動される。
【0038】
搬送部3は、レジストローラ13から搬送されてきた用紙PAを搬送する。搬送部3は、搬送ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23〜25と、ベルト駆動モータ26と、プラテンプレート27と、ファン28とを備える。
【0039】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23〜25に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト21には、
図3に示すように、用紙PAを吸着保持するための貫通穴であるベルト穴21aが多数形成されている。搬送ベルト21は、ファン28の駆動によりベルト穴21aに発生する吸着力により、用紙PAを用紙保持面(請求項の媒体保持面に相当)21b上に吸着保持する。用紙保持面21bは、駆動ローラ22と従動ローラ23との間で略水平となる搬送ベルト21の上面である。
【0040】
搬送ベルト21は、駆動ローラ22の回転駆動により、
図1における時計回り方向に回転する。これにより、搬送ベルト21は、無端移動することで、用紙保持面21b上に吸着保持した用紙PAを右方向へ搬送する。
【0041】
駆動ローラ22および従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21が掛け渡されるものである。駆動ローラ22は、ベルト駆動モータ26により回転駆動され、搬送ベルト21を回転させる。従動ローラ23〜25は、搬送ベルト21を介して駆動ローラ22に従動する。従動ローラ23は、駆動ローラ22と略同じ高さで、駆動ローラ22から左右方向に所定間隔だけ離間して配置されている。従動ローラ24,25は、駆動ローラ22および従動ローラ23の下方において、互いに左右方向に所定間隔だけ離間して、略同じ高さに配置されている。ベルト駆動モータ26は、駆動ローラ22を回転駆動させる。
【0042】
プラテンプレート27は、駆動ローラ22と従動ローラ23との間において搬送ベルト21の下側に配置され、搬送ベルト21の下面を摺動可能に支持する。プラテンプレート27は、ベルト穴21aが通過する箇所において上面から下面に向かって掘り下げられた複数の凹部27aと、凹部27aの底面の一部からプラテンプレート27の下面に貫通する複数の吸引穴27bとを有する。
【0043】
ファン28は、下方向への気流を生じさせる。これにより、ファン28は、プラテンプレート27の吸引穴27b、凹部27a、および搬送ベルト21のベルト穴21aを介して空気を吸引してベルト穴21aに負圧を発生させ、用紙PAを用紙保持面21b上に吸着させる。ファン28は、プラテンプレート27の下方に配置されている。
【0044】
印刷部4は、搬送部3により搬送される用紙PAに印刷を行う。印刷部4は、搬送部3の上側に設けられている。印刷部4は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)内に固定されている。印刷部4は、インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yと、ヘッドホルダ32と、ヘッドギャップ調整ユニット(請求項のヘッドギャップ調整手段に相当)33とを備える。なお、色の区別が必要ない場合等に、符号における色を示すアルファベットの添え字(C,K,M,Y)を省略することがある。
【0045】
インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、それぞれ、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、搬送部3の上方において、左右方向に並列して配置されている。インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yは、ライン型のインクジェットヘッドであり、
図4に示すように、それぞれ6個のヘッドブロック35を有する。
【0046】
各インクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yにおいて、6個のヘッドブロック35は、千鳥配置されている。具体的には、6個のヘッドブロック35は、前後方向(主走査方向)に配列され、かつ、1つおきに左右方向(副走査方向)における位置をずらして配置されている。
【0047】
ヘッドホルダ32は、
図1に示すように、搬送部3の上方において、インクジェットヘッド31のヘッドブロック35を保持する。ヘッドホルダ32は、中空状の略直方体形状に形成されている。
【0048】
各ヘッドブロック35は、下面である吐出面35a(
図3参照)に、複数のノズル38を有する。ノズル38は、主走査方向に所定のピッチPで等間隔に配置されている。各ヘッドブロック35の内部には、各ノズル38とそれぞれ連通する複数のインク室(図示せず)が設けられている。そして、制御部5の制御により各インク室の容積を変化させることで、対応するノズルからインク室内のインクが吐出される。
【0049】
このようなシェアモード型のヘッドブロック35では、例えば、各インク室の隔壁を構成する圧電部材を制御部5が駆動信号により駆動させることで、各インク室の容積を変化させるようにしている。この駆動信号はパルス状の信号であり、制御部5は、その電圧を変えたり波形を変えることで、ノズル38からインクを吐出させる際の推進力を調整することができる。
【0050】
なお、インクの推進力は吐出速度×インクの質量で表されるので、本実施形態では、制御部5がインクの吐出速度を推進力として調整するものとする。
【0051】
また、制御部5は、上述した駆動信号の波形を変えることで、各ヘッドブロック35の1つのノズル38から1つの画素に対して吐出するインクの液滴数(ドロップ数)を変えることができ、液滴数(例えば、1〜7ドロップ)により濃度を表現する階調印刷を行う。
【0052】
ヘッドギャップ調整ユニット33は、ヘッドギャップHを調整する。ヘッドギャップHは、
図3に示すように、搬送ベルト21の用紙保持面21bとインクジェットヘッド31の吐出面35aとの間の距離である。ヘッドギャップ調整ユニット33は、ヘッドギャップ調整機構41と、昇降モータ42と、接続部材43とを備える。
【0053】
ヘッドギャップ調整機構41は、インクジェットヘッド31に対して搬送部3を昇降させるものである。ヘッドギャップ調整機構41は、前後方向に離間して2つ設けられている。ヘッドギャップ調整機構41は、1対のプーリ46,47と、シャフト48と、ワイヤ49,50とを備える。
【0054】
プーリ46,47は、それぞれワイヤ49,50の巻き取りおよび繰り出しを行う。プーリ46,47は、互いに左右方向に離間して、ヘッドホルダ32内に回転可能に支持されている。
【0055】
シャフト48は、1対のプーリ46,47を互いに接続するものである。シャフト48は、左右方向に延びる長尺状の部材からなり、一端がプーリ46に固定され、他端がプーリ47に固定されている。これにより、1対のプーリ46,47が同期して回転される。
【0056】
ワイヤ49,50は、搬送部3を吊り下げ支持する。ワイヤ49,50の一端は、搬送部3に接続され、他端側は、プーリ46,47に巻き付けられている。ワイヤ49,50がプーリ46,47の回転により巻き取られたり繰り出されたりすることで、搬送部3が昇降し、ヘッドギャップHが変化する。
【0057】
昇降モータ42は、プーリ46,47を回転駆動させる。接続部材43は、ヘッドホルダ32と搬送部3とを接続する部材である。接続部材43は、ヘッドギャップHに応じて上下方向の長さが調整可能に構成されている。
【0058】
読取部6は、原稿のフィード装置と原稿画像の読み取り装置(いずれも図示せず)とを有しており、フィード装置のトレイにセットした原稿を搬送しながら読み取り装置により画像を読み取ってデータ化する。
【0059】
ところで、本実施形態のインクジェット印刷装置1による印刷時には、
図5に示すように、インクジェットヘッド31のヘッドブロック35からインクの液滴52が吐出されることで、ヘッドブロック35から用紙PAへ向かう自己気流W1が発生する。また、搬送部3による用紙PAの搬送およびファン28による空気の吸引により、搬送方向の気流である搬送気流W2が発生する。
【0060】
搬送気流W2は、インクの液滴52を搬送方向の下流側に流して着弾ずれさせるように働く。これに対して、上述した自己気流W1は、インクの液滴52の用紙PAに向かう直進性を高め、搬送気流W2による搬送方向下流側にインクの液滴52が着弾ずれ量を減らすように働く。
【0061】
この自己気流W1は、主走査方向において連続する複数のノズル38がインクをそれぞれ吐出していると、より強い流れとなる。また、自己気流W1は、同じノズル38が連続する複数ラインのドットに対してインクの吐出を繰り返す場合にも高くなる。さらに、自己気流W1は、同じノズル38が同じドットに対してインクの吐出を繰り返す場合にも高くなる。
【0062】
即ち、ノズル38が用紙PAに対して吐出するインクの単位面積当たりの密度(吐出密度)が高い高吐出密度領域が存在すると、インクの吐出により発生する自己気流W1の度合いが強くなる。したがって、自己気流W1の度合いを示す自己気流度は、搬送気流W2によって用紙PAの搬送方向の下流側にインクの液滴52を着弾ずれさせる度合いに影響する。
【0063】
例えば、
図6の説明図に示すように、シアン(C)とマゼンタ(M)の各ヘッドブロック35のノズルから、用紙PAの同一画素に対してそれぞれインクが吐出される場合、#5〜#7のノズル38に対応する画素には、シアン(C)とマゼンタ(M)の各インクが同じ密度で吐出されるので、各色間にインクの着弾ずれは生じない。しかし、#1〜#4のノズル38に対応する画素には、シアン(C)がマゼンタ(M)よりも低い密度で吐出されるので、吐出密度が低いシアン(C)のインクがマゼンタ(M)のインクよりも搬送気流W2により下流側に流され、マゼンタ(M)に対してインクの着弾位置が副走査方向にずれる。
【0064】
なお、
図6では副走査方向においてシアン(C)とマゼンタ(M)のインクの吐出密度が異なる場合を示しているが、主走査方向において吐出密度が異なる場合や、各ドットについての吐出密度が異なる場合にも、同様の状況が発生する。
【0065】
図6に示すような状況が発生した場合は、吐出密度の低い画素に対応するシアン(C)のインクを吐出する際の推進力を上げるか、マゼンタ(M)のインクを吐出する際の推進力を下げることで、同じ画素のマゼンタ(M)のインクとの着弾ずれを抑制することができる。
【0066】
そこで、
図2の制御部5は、高吐出密度領域のドットに対してヘッドブロック35のノズル38が吐出するインク液滴52の推進力を、自己気流W1の度合いに合わせて調整するために、補正テーブルを予め記憶している。
【0067】
補正テーブルは、搬送気流W2に流されたインクの着弾ずれ量が自己気流W1の度合いに応じて変化する(自己気流W1の度合いが大きければ着弾ずれの減る量が大、小さければ着弾ずれの減る量が小)ことを考慮して、自己気流W1の発生度合いである自己気流度を左右するインクの吐出密度に応じて、基準となる推進力に対するインクの推進力の調整量を規定したテーブルである。
【0068】
ここで、インクの吐出密度は、例えば、用紙PAの印字可能領域に対する実際に印字された領域の面積比を示す印字率によって表すことができる。そして、印字率は、主走査方向におけるインクの連続吐出ドット数と副走査方向におけるインクの連続吐出ドット数との一方又は両方によって、一次元又は二次元の範囲で定義することができる。
【0069】
そして、本実施形態の制御部5は、主走査及び副走査の両方向におけるインクの連続吐出ドット数により二次元の範囲で定義した印字率に応じて、基準となる推進力に対するインクの実際に吐出させる際の推進力の調整量を区分して規定した補正テーブルを、制御部5に記憶させて使用する。
【0070】
なお、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を加味したインクの吐出密度(印字率)に応じて、補正テーブルで規定するインクの推進力の基準値に対する調整量を区分してもよい。
【0071】
以上に説明した構成を有する本実施形態のインクジェット印刷装置1では、各色のインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yのヘッドブロック35のノズル38が、各色のインクをそれぞれ吐出する。したがって、上述した補正テーブルを用いたインクの吐出推進力の制御部5による調整は、各色のインクジェットヘッド31C,31K,31M,31Yの各ヘッドブロック35のノズル38に対してそれぞれ行われる。
【0072】
なお、ノズル38がインクを吐出する度に、補正テーブルを用いて各ノズル38にどのような補正内容を適用するかを、その指標となる印字率によって決定する際に、ノズル38の印字率は、例えば、次のようにして決定することができる。
【0073】
即ち、例えば、各ヘッドブロック35において、それぞれの補正対象のノズル38とその主走査方向において隣接するノズル38とが、過去所定ライン(例えば30ライン)に亘ってドットに吐出したインクの吐出パターン(主走査方向、副走査方向、同一ドット)に基づいて決定することができる。もちろん、印字率を決定するのにインクの吐出パターンを参照するノズル38の対象を、主走査方向にさらに拡げてもよい。
【0074】
また、印字率に応じた各区分の補正内容は、例えば、インクジェット印刷装置1で印刷した印字率(インクの吐出密度)別のテストパターンから、自己気流W1によるインクの副走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて決定することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、各ノズル38について印字率に応じた補正内容を決定する。このため、印字率に応じた各区分の補正内容を決定する際にインクジェット印刷装置1で印刷するテストパターンとしては、全ノズル38が、主走査方向と副走査方向とにおいてそれぞれ異なる印字率(吐出密度)でインクを吐出したパターンを、数多く含んでいるのが好ましい。
【0076】
また、本実施形態では、同じノズル38が同じドットに吐出するインクのドロップ数を印字率(吐出密度)に加味しているので、同一ドットに吐出するインクのドロップ数を異ならせたパターンを含んでいるのが好ましい。
【0077】
そこで、
図7の説明図に示すテストパターンを用いてもよい。このテストパターンには、インクを吐出させるノズル38の主走査方向における連続数を大、中、小(図中の「幅広」、「幅中」、「幅狭」)とした3つのグループが存在する。そして、各グループには、副走査方向における各ノズル38からのインクの連続吐出数を大、中、小とした3つのパターンがそれぞれ存在する。そして、3グループ3パターンのそれぞれに、同一ドットに吐出するインクのドロップ数を大、小、中、大(図中左側から順に)とした4つの領域をそれぞれ設けている。
【0078】
このようなテストパターンを用いることで、主走査及び副走査の両方向を含む二次元の印字率(ドット密度)に、同一ドットに吐出するインクのドロップ数を加味した印字率別に、自己気流W1の影響によるインクの副走査方向における着弾ずれの度合いを把握して、それに基づいて補正内容を決定することができる。
【0079】
次に、制御部5の例えばハードディスクに記憶される不図示の補正テーブルの補正内容を決定する際の手順について説明する。
【0080】
図8は、追加補正テーブルの補正内容を決定する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図8のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に
図7のテストパターンの画像データが入力されることにより開始となる。
【0081】
図8のステップS1において、制御部5は、例えばハードディスクから読み出されたテストパターン(ドット密度大、中、小の画像部分を含む)を印刷部4で印刷する。なお、このとき制御部5は、既にハードディスクに記憶されている補正テーブルを用い、搬送気流W2により副走査方向下流側へのインクの着弾ずれが発生する分だけ、各色のヘッドブロック35のノズル38によるインクの吐出推進力を、搬送気流W2がない場合の基準の推進力よりも上げるように補正する。
【0082】
テストパターンが用紙PAに印刷されたならば、印刷された用紙PA上のテストパターン画像上で、インクの着弾ずれが生じているか否かを確認する(ステップS3)。
【0083】
着弾ずれが生じている場合は(ステップS3でYES)、不図示の操作パネルのユーザによる操作等によって、着弾ずれを解消するための補正値(例えば、駆動信号の電圧や波形パターンの変更内容)をインクジェット印刷装置1に更新入力する(ステップS5)。そして、更新入力した補正値を、対応する色の対応するドット密度におけるインクの吐出推進力の補正値として、制御部5の不図示のハードディスク等に仮に記憶させ(ステップS7)、ステップS1にリターンする。
【0084】
また、ステップS3において着弾ずれが生じていない場合(NO)は、現在ハードディスク等に仮記憶されている補正値(例えば、駆動信号の電圧や波形パターンの変更内容)を、対応する色の対応するドット密度におけるインクの吐出推進力に対する補正値として、ハードディスク等に改めて本記憶させた後(ステップS9)、手順を終了する。
【0085】
なお、テストパターン画像を読取部6の読み取り装置により読み取らせて制御部5が着弾ずれの有無を判別し、その結果に基づいて補正値の更新入力を制御部5が行うようにして、テストパターンの印刷及び画像の読み取りを繰り返しつつ、補正テーブルの補正内容を制御部5が、ユーザの入力操作等を伴わずに決定するようにしてもよい。
【0086】
続いて、補正テーブルの補正内容を適用して、各ノズル38がインクを吐出する際の推進力をインクの吐出密度に応じて補正する際の、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0087】
図9は、不図示の補正テーブルの補正内容を適用して補正対象のノズルが吐出するインクの推進力を補正する際のインクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
図9のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷対象の画像データが入力されて、制御部5によりRGB形式の画像データから、インクジェットヘッド31による印刷に対応する形式の画像データであるドロップデータが生成されることにより開始となる。
【0088】
図9のステップS11において、制御部5は、各色毎に、ドロップデータの、1つのノズル38に対応する画素を注目画素とした場合に、その画素と周辺(主走査方向両側及び副走査方向上流側)の画素とのドロップデータから、注目画素のドット密度が大、中、小のいずれに属するかを判断する。
【0089】
次に、制御部5は、注目画素の、ステップS11で判断したドット密度(大、中、小)、つまり印字率に対応する補正内容を、不図示の補正テーブルにより決定する。そして、注目画素に対応するノズル38からインクを吐出させる際の推進力を、不図示の補正テーブルにより決定した推進力に切り替える(ステップS13)。
【0090】
したがって、制御部5は、切り替えた後の推進力で、対象のノズル38から、画像データに応じたドロップ数のインクを吐出させる(ステップS15)。
【0091】
インクを吐出する際の推進力(速度)を上げると、用紙PAに到達するまでのインクの飛翔時間が短くなるので、インクの着弾位置が副走査方向の上流側にずれる。反対に、推進力(速度)を下げると、用紙PAに到達するまでのインクの飛翔時間が長くなるので、インクの着弾位置が副走査方向の下流側にずれる。
【0092】
このため、例えば、同じドットに対して異なる吐出密度で各色のインクが吐出されても、インクの吐出推進力の調整で着弾位置を副走査方向にずらすことで、各色のインク吐出で発生する自己気流W1の違いにより双方のインク間に着弾ずれが生じるのを抑制することができる。よって、自己気流W1の度合いが異なる場合でも各インクの副走査方向における着弾位置を近づけて、濃度ムラによるカラー画像の色合い変化等の発生を抑えた良好な画像を形成することができる。
【0093】
ちなみに、着弾ずれ量は、用紙PAと吐出面35aとの間の距離が大きいほど、大きくなる。用紙PAと吐出面35aとの間の距離は、ヘッドギャップHから用紙PAの厚さを除いた距離に相当する。同じ種類の(厚さが同じ)用紙PAであれば、ヘッドギャップHが大きいほど、用紙PAと吐出面35aとの間の距離が大きくなる。
【0094】
しかし、例えば、厚さが異なる複数種類の用紙PAが、印刷に用いる用紙PA中に混在する場合等には、ヘッドギャップHが、厚手の用紙PAの厚さに合わせた寸法に維持される。したがって、薄手の用紙PAが吐出面35aの直下を通過する際には、用紙PAと吐出面35aとの距離が大きくなることがある。
【0095】
ここで、着弾ずれ量と、用紙PAと吐出面35aとの間の距離との関係を示す実験結果を
図10に示す。
図10(a)において、この実験でインクを吐出した隣接する複数のノズル38を黒で塗りつぶして示している。また、ノズル38における副走査方向の着弾ずれ量の平均値と、用紙PAと吐出面35aとの間の距離との関係を
図10(b)に示す。
図10(b)に示すように、用紙PAと吐出面35aとの間の距離が拡がるほど、副走査方向におけるインクの着弾ずれ量が大きくなっている。
【0096】
そこで、不図示の補正テーブルで規定するインクの吐出推進力の補正内容を、ヘッドギャップHの大きさによってさらに区分し、ヘッドギャップHが大きいほど、吐出時の推進力を上げる補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
【0097】
また、搬送気流W2は、その風速が速いほど強くなる。搬送気流W2の風速は搬送部3による用紙PAの搬送速度が高いほど高くなるので、不図示の補正テーブルで規定するインクの吐出推進力の補正内容を、搬送部3による用紙PAの搬送速度によってさらに区分し、搬送速度が速いほど、吐出時の推進力を上げる補正内容(の補正係数)が大きくなるようにしてもよい。
【0098】
なお、上述した実施形態では、自己気流W1の影響による副走査方向での着弾ずれ量の変化を考慮して、搬送気流W2に流されてインクの副走査方向下流側への着弾ずれが発生することで生じる濃度ムラの解消に用いられるインクの吐出推進力の補正内容を、追加で変更する場合について説明した。しかし、本発明は、インクの吐出密度に基づき、搬送気流W2と自己気流W1の発生度合い(自己気流度)とに応じてインクの吐出推進力を制御する場合に、広く適用可能である。
【0099】
また、上述した実施形態では、インクジェットヘッド31が、複数(6個)のヘッドブロック35を主走査方向に千鳥状に配置して構成されている場合について説明した。しかし、本発明は、主走査方向における印字幅をカバーするノズル列が単一部材のインクジェットヘッド31に設けられている場合にも適用可能である。
【0100】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。