特許第6101483号(P6101483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101483
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B62D1/19
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-284838(P2012-284838)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125155(P2014-125155A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】富士機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松野 充佳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠雄
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−154817(JP,A)
【文献】 実開昭53−026030(JP,U)
【文献】 特開2012−240628(JP,A)
【文献】 実開昭52−016129(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定され、側面に離脱溝を具備するスライドブロックと、
該スライドブロックが配置されつつ、縁部が該離脱溝内を摺動可能に設定された切欠凹部を具備する移動ブラケットと、
該切欠凹部に該スライドブロックが配置された状態で、該離脱溝を構成する壁部と該縁部とを貫通するピン孔と、
該ピン孔に樹脂材が射出成形されてなる剪断ピンとを備え、
該移動ブラケットに対して、該剪断ピンの剪断方向に設定値以上の荷重が掛かると、該移動ブラケットが該剪断ピンを剪断して、該離脱溝内をスライドし、該移動ブラケットが該車体から離脱するステアリングコラム装置であって、
前記壁部を構成する下壁部の上面に前記移動ブラケットを密接させることで、該壁部を構成する上壁部と該移動ブラケットとの間に隙間を形成し、
該隙間内に剪断ピンから延設された滑部を備え、
前記ピン孔は、前記壁部を貫通する前記スライドブロック側のピン孔と、前記縁部を貫通する前記移動ブラケット側のピン孔とで構成され
前記スライドブロック側のピン孔と前記移動ブラケット側のピン孔とは、異なる孔径に設定され
前記剪断ピンは、前記下壁部の前記スライドブロック側のピン孔から前記樹脂材が注入されて射出成形されてなる前記滑部を備えていることを特徴とするステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突事故の二次衝突の際に、衝撃荷重によって、コラムがステアリングシャフトと共に、車体から離脱するステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次衝突時に車体から車両前方へ離脱するように構成されたステアリングコラム装置として、特許文献1に示されるように、コラムジャケット(図示せず)を懸架するブラケット120と車体191との間にスライドブロック130を配置する支持構造110が提案されている。
【0003】
図8、および図9に示すように、ブラケット120には、板状の部材からなり、スライドブロック130が配置される切欠凹部121が形成されている。スライドブロック130は、上下方向に貫通するブロック側ボルト孔132を備えており、ブロック側ボルト孔132を貫通する固定ボルト192に固定ナット193を螺合することによって、スライドブロック130は車体191に固定される。また、スライドブロック130には、離脱溝131が設けられており、切欠凹部121の縁部122が、離脱溝131の溝内を摺動可能に配置される。そして、切欠凹部121の縁部122が、離脱溝131の溝内に配置された状態で、スライドブロック130の上壁部135と、切欠凹部121の縁部122とを連通するピン孔161が設けられ、ピン孔161に剪断ピン150が配置される。なお、剪断ピン150は、ピン孔161に樹脂材を射出成形することで、形成されている。ピン孔161に剪断ピン150が配置されることで、離脱溝131内での縁部122の移動が制限され、ブラケット120がスライドブロック130に支持される。そして、二次衝突によって、ブラケット120に対して、剪断ピン150の剪断方向に設定値以上の荷重が掛かると、ブラケット120が剪断ピン150を剪断しつつ、離脱溝131内をスライドし、コラムジャケットが車体191から離脱する。
【0004】
上記構成によって、通常の使用状態で掛かる荷重に対しては、剪断ピン150が剪断することなく十分な支持剛性を有し、ブラケット120が離脱することが無い上に、二次衝突時の大きな荷重が作用したときには、ブラケット120がスムーズに離脱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−154817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブラケット120が離脱する際に、縁部122が離脱溝131を抵抗無くスライドするために、縁部122の板厚が、離脱溝131の間隔よりも小さく設定されている。そして、離脱溝131内で縁部122の位置が規定されていない。このため、ピン孔161に樹脂材を射出成形する際に、モールド時に樹脂を押込む圧力によって、離脱溝131の上壁部135とブラケット120との隙間に樹脂材が流出したり、離脱溝131の下壁部134とブラケット120との隙間に流出したり、場合によって樹脂材の流出パターンが異なってしまう。
【0007】
そのため、このような構造では、通常使用状態での振動剛性が低くなるという問題を備えている。また、二次衝突時に剪断ピンが剪断する際の剪断荷重が安定しないという問題を有している。さらに、スライドブロックからブラケットが離脱する際の摺動抵抗が安定しない等の問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、通常使用状態での振動剛性が高く、二次衝突時に剪断ピンが剪断する剪断荷重が安定し、ブラケットがスライドブロックから離脱する際の摺動抵抗を安定させることができるステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、車体に固定され、側面に離脱溝を具備するスライドブロックと、該スライドブロックが配置されつつ、縁部が該離脱溝内を摺動可能に設定された切欠凹部を具備する移動ブラケットと、該切欠凹部に該スライドブロックが配置された状態で、該離脱溝を構成する壁部と該縁部とを貫通するピン孔と、該ピン孔に樹脂材が射出成形されてなる剪断ピンとを備え、該移動ブラケットに対して、該剪断ピンの剪断方向に設定値以上の荷重が掛かると、該移動ブラケットが該剪断ピンを剪断して、該離脱溝内をスライドし、該移動ブラケットが該車体から離脱するステアリングコラム装置であって、前記壁部を構成する下壁部の上面に前記移動ブラケットを密接させることで、該壁部を構成する上壁部と該移動ブラケットとの間に隙間を形成し、該隙間内に剪断ピンから延設された滑部を備え、前記ピン孔は、前記壁部を貫通する前記スライドブロック側のピン孔と、前記縁部を貫通する前記移動ブラケット側のピン孔とで構成され、前記スライドブロック側のピン孔と前記移動ブラケット側のピン孔とは、異なる孔径に設定され、前記剪断ピンは、前記下壁部の前記スライドブロック側のピン孔から前記樹脂材が注入されて射出成形されてなる前記滑部を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明において、通常使用状態では、下壁部の上面と移動ブラケットの下面が密接しつつ、上壁部の下面と移動ブラケットの上面との間の隙間内に滑部が形成されていることによって、振動剛性が向上するとともに、安定させることができる。
【0012】
また、二次衝突時に、スライドブロックから移動ブラケットが離脱する際に、滑部が摺動抵抗を下げ、摺動荷重を低減するとともに安定させることができる。
さらに、剪断ピンは小径のピン孔部分で剪断されるため、設定された荷重で剪断ピンを剪断することができる。
【0013】
次衝突時には、下壁部の上面と移動ブラケットの下面の接した部分で樹脂ピンが剪断するため、剪断荷重が安定する。また、上壁部にピン孔を設けないため、上壁部の下面を凹凸のない平面に形成できるため、滑部の摺動性の更なる向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態を示し、車両用ステアリングコラム装置の要部分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態を示し、スライドブロックを介して車体に支持する構造の断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】スライドブロックが切欠凹部から離脱した様子を示す平面図である。
図5】別態様のスライドブロックが切欠凹部から離脱した様子を示す平面図である。
図6】本発明の第2実施形態を示し、スライドブロックを介して車体に支持する構造の断面図を拡大した図である。
図7】本発明の第2実施形態の別態様を示し、スライドブロックを介して車体に支持する構造の断面図を拡大した図である。
図8】従来例のステアリングコラム装置における支持構造を示す側面図である。
図9】従来例のステアリングコラム装置における支持構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、車両用ステアリングコラム装置1は、円筒状の固定側コラムジャケット2aと、この固定側コラムジャケット2aの上端部に挿入された円筒状の移動側コラムジャケット2bと、固定側コラムジャケット2a及び移動側コラムジャケット2b内に配置されたステアリングシャフト3と、このステアリングシャフト3の最上端に固定されたステアリングホイール(図示せず)とを備えている。また、車両用ステアリングコラム装置1は、車体91に固定される前側固定ブラケット4aと移動ブラケット20とを介して、車体91に設置される。なお、移動ブラケット20は車体91に設けた後側固定ブラケット4bを介して支持される。また、後側固定ブラケット4bには、左右一対のブラケット側ボルト孔4cが形成されるとともに、ブラケット側ボルト孔4cと同軸上に固定ナット93が固着されており、固定ボルト92が下方から挿入され、固定ナット93に螺着されることによって、後述するスライドブロック30、およびエネルギー吸収部材40とともに、車両用ステアリング装置1が車体91に支持されている。
【0016】
固定側コラムジャケット2aは、前側固定ブラケット4aを介して車体91に固定されている。
【0017】
移動側コラムジャケット2bは、固定側コラムジャケット2aよりも大径に設定され、固定側コラムジャケット2aを内挿した状態で、軸方向に移動可能に配置されている。また、移動側コラムジャケット2bの外周には、ディスタンスブラケット5aが設けられている。このディスタンスブラケット5aは、ディスタンスボルト5bとディスタンスナット5cによって移動ブラケット20に固定されている。なお、移動ブラケット20は、後述する衝撃エネルギー吸収構造10を構成し、後側固定ブラケット4bから分離可能に配置されている。
【0018】
ステアリングシャフト3は、アッパーシャフトとロアシャフトから成り、固定側コラムジャケット2a、および移動側コラムジャケット2bの内部に軸受(図示せず)によって回転自在に支持されている。また、アッパーシャフトとロアシャフトとはスプライン結合部(図示せず)によってアッパーシャフトが軸方向に移動可能に配置され、ステアリングシャフト3が伸縮自在に構成されている。
【0019】
衝撃エネルギー吸収構造10は、衝突事故等によって、運転者がステアリングホイールに二次衝突した際の衝撃エネルギーを吸収するもので、移動ブラケット20、スライドブロック30、エネルギー吸収部材40、および剪断ピン50で構成されている。衝撃エネルギー吸収構造10は、移動ブラケット20に対して、剪断ピン50の剪断方向に設定値以上の荷重が掛かると、移動ブラケット20が剪断ピン50を剪断し、移動ブラケットが車体91から離脱する。そして、移動ブラケット20が車体91から離脱する際に、エネルギー吸収部材40が衝撃エネルギーを吸収する。
【0020】
移動ブラケット20は、図1に示すように、上面が板状の部材からなり、左右一対の切欠凹部21が形成されている。切欠凹部21は、車両後方に開口する略U字形状の溝からなり、溝底側から開口側に向かって溝の間隔が拡がる形状に設定されている。そして、各切欠凹部21には、スライドブロック30がそれぞれ配置される。また、切欠凹部21は、その縁部が摺接部22に設定されている。摺接部22には、移動ブラケット20を貫通するブラケット側ピン孔23が設けられている。本実施形態では、図4に示すように、ブラケット側ピン孔23は、切欠凹部21の各溝壁21a,21bの縁部22に2箇所ずつ、計4箇所形成されている。
【0021】
スライドブロック30は、図2、および図4に示すように、略等脚台形形状を備え、側面となる両斜辺面30aには、斜辺に沿った離脱溝31を備えている。離脱溝31を構成する上壁部35と下壁部34の間の溝幅が移動ブラケット20の板厚よりも広く設定されている。そして、スライドブロック30を切欠凹部21に配置した際に、摺接部22がスライドブロック30の離脱溝31内に位置し、離脱溝31と溝幅方向に係合する。そして、スライドブロック30が切欠凹部21から離脱する際に、摺接部22が離脱溝31内を摺動する。また、スライドブロック30の中央部には、上下方向に貫通するブロック側ボルト孔32が設けられている。ブロック側ボルト孔32には、固定ボルト92が下方から挿入され、車体91側の固定ナット93に螺着されることで、スライドブロック30が車体91に固定される。また、スライドブロック30は、切欠凹部21に組付けられた状態で、ブラケット側ピン孔23に連通するブロック側ピン孔33を備えている。そして、ブラケット側ピン孔23とブロック側ピン孔33とによって、ピン孔61が構成されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、ブロック側ピン孔33は、離脱溝31を構成する下壁部34を貫通するように設けられている。
【0022】
エネルギー吸収部材40は、図1に示すように、板状の金属材からなり、中心部分に他の部分より薄肉に形成された直線状の引裂部41を備えている。エネルギー吸収部材40の一端には係止部42が設けられ、この各係止部42が移動ブラケット20の左右一対の被係止部24にそれぞれ係止されている。エネルギー吸収部材40の他端には吸収部材側ボルト孔43がそれぞれ設けられ、この各吸収部材側ボルト孔43に上記した各固定ボルト92を挿通し、固定ナット93に螺着することによって、後側固定ブラケット4b、およびスライドブロック30とともに、車体91に固定される。そして、係止部42と吸収部材側ボルト孔43との間隔が拡がる際に、引裂部41が引裂かれ、衝撃エネルギーが吸収される。
【0023】
剪断ピン50は、図2、および図3に示すように、軸部51と滑部52とで構成され、溶融した樹脂材をピン孔61に射出し、冷却、固化することで形成される。なお、剪断ピン50を形成する際には、ブラケット側ピン孔23とブロック側ピン孔33とが連通するように、摺接部22を離脱溝31内に挿入しつつ、スライドブロック30を切欠凹部21に配置するとともに、離脱溝31の上壁部35と摺接部22の上面22aとの間に隙間62が形成されるように、摺接部22の下面22bを離脱溝31の下壁部34の上面34aに密接させた状態で、下壁部34の下方からブロック側ピン孔33に樹脂材を注入する。
【0024】
軸部51は、ピン孔61を構成するブラケット側ピン孔23とブロック側ピン孔33の内部に成形された部位である。なお、軸部51は、設定値以上の荷重が掛かると、下壁部34の上面34aと摺接部22の下面22bとの間で剪断するように軸径、材質、および剪断ピン50の数が設定されている。たとえば、本実施形態では、図4に示すように、1つのスライドブロック30に対して、4本の剪断ピン50が配置されているが、別態様として、図5に示すように、スライドブロック30Aを五角形に形成し、3本の剪断ピン50を等間隔に配置する構成としても良い。
【0025】
滑部52は、下壁部34の下方から樹脂材を注入し、ブラケット側ピン孔23から流出し、隙間62内に拡がった部位で、軸部51から延設されている。なお、滑部52は、スライドブロック30から移動ブラケット20が離脱する際に、摺動抵抗を下げ、スライドブロック30と移動ブラケット20とが互いに囓ることがないように配置されるものである。二次衝突時には、ステアリングコラム装置1が車体91に設置される角度、および衝撃エネルギーの方向等から、摺接部22が離脱溝31の上壁部35に押付けられつつ離脱する。このため、滑部52は、離脱溝31の上壁部35と摺接部22の上面22aとの間に配置されている。
【0026】
次に、衝撃エネルギー吸収構造10の組立手順を説明する。まず、スライドブロック30を移動ブラケット20の切欠凹部21に組付ける。スライドブロック30を組付ける際に、ブロック側ピン孔33とブラケット側ピン孔23が連通するように、摺接部22を離脱溝31内に配置する。次に、ブロック側ピン孔33とブラケット側ピン孔23が連通した状態で、ピン孔61に樹脂材を射出し、剪断ピン50を成形する。これにより、剪断ピン50が、スライドブロック30と移動ブラケット20とを連結し、スライドブロック30と移動ブラケット20がユニット化される。次に、吸収部材側ボルト孔43をスライドブロック30のブロック側ボルト孔32の下に重ねつつ、エネルギー吸収部材40の係止部42を移動ブラケット20の被係止部24に係合させて固定する。そして、移動ブラケット20にディスタンスブラケット5aを介して固定し、車両用ステアリング装置1を組立てる。最後に、後側固定ブラケット4bのブラケット側ボルト孔4c、ブロック側ボルト孔32、および吸収部材側ボルト孔43を下方から貫通するように固定ボルト92を挿入し、固定ナット93に螺着することで、車体91に車両用ステアリングコラム装置1が支持される。
【0027】
次に、衝撃エネルギー吸収構造10の動作を説明する。まず、通常の使用状態では、スライドブロック30と移動ブラケット20とが、剪断ピン50によって連結されるとともに、移動ブラケット20の下面22bがスライドブロック30の下壁部34aに直接支持されているため、高い振動剛性を備えた衝撃エネルギー吸収構造10を介して、ステアリングホイールが所定の場所で回動自在に支持されている。
【0028】
衝突事故等によって、運転者がステアリングホイールに二次衝突した場合、衝撃エネルギー吸収構造10には、移動側コラムジャケット2bを介して衝撃エネルギーが、車両後方から前方に向かって移動ブラケット20に入力され、剪断ピン50を剪断する。剪断ピン50が剪断されると、移動ブラケット20がスライドブロック30から離脱して、車両前方に移動する。エネルギー吸収部材40の係止部42は、移動ブラケット20に固定され、吸収部材側ボルト孔43は、固定ボルト92に固定されているため、移動ブラケット20が車両前方に移動することによって、エネルギー吸収部材40の係止部42と吸収部材側ボルト孔43と間隔が拡げられる。係止部42と吸収部材側ボルト孔43との間隔が拡げられることによって、引裂部41が引裂かれ、衝撃エネルギーが吸収される。
【0029】
以上のことから、通常の使用状態では、下壁部34の上面34aと摺接部22の下面22bが密接しつつ、隙間62内に滑部52が形成されていることによって、振動剛性が向上するとともに、安定することができる。
【0030】
また、滑部52を剪断ピン50に設けたことによって、運転者が二次衝突し、スライドブロック30から移動ブラケット20が離脱する際に、滑部52がスライドブロック30の上壁部35と移動ブラケット20の摺接部22との間の摺動抵抗を下げ、摺動荷重を低減するとともに、安定させることができる。
【0031】
剪断ピン50が剪断される際に、下壁部34の上面34aと摺接部22の下面22bの密接した部分が、剪断ピン50を剪断するため、剪断荷重が安定する。
【0032】
なお、スライドブロック30から移動ブラケット20が離脱する際の摺動抵抗を低減するために、滑部52は、摺接部22全体を覆う必要はない。滑部52が、摺接部22を3割程度覆うことで、摺動抵抗を下げる効果を十分に得ることができ、1割程度でも効果を得ることができる。
【0033】
ピン孔61を構成するブロック側ピン孔33とブラケット側ピン孔23は、異なる孔径に設定されている。これは、各ピン孔61を穿孔する際に、ブロック側ピン孔33とブラケット側ピン孔23の位置がズレた場合でも、小径のピン孔が大径のピン孔内に収まっていれば、剪断ピン50は、小径のピン孔部分で剪断ピン50は剪断されるため、設定された荷重で剪断ピン50を剪断することができる。
【0034】
なお、本実施形態のエネルギー吸収部材40は、塑性変形されつつ、引裂かれることによって衝撃エネルギーを吸収するものにて構成されているが、このような形態に限定されず、移動側コラムジャケット2bの車体前方移動時に衝撃エネルギーを吸収できる構成であれば、適用が可能である。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。上記第1実施形態と本実施形態とで、大きく異なる点は、衝撃エネルギー吸収構造11を構成するピン孔61B、および剪断ピン50Bの構成である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
本実施形態のピン孔61Bは、図6に示すように、離脱溝31を構成する上壁部35を貫通するブロック側ピン孔33Bと、移動ブラケット20を貫通するブラケット側ピン孔23とで構成される。
【0037】
ブロック側ピン孔33Bは、スライドブロック30を切欠凹部21に組付けた状態で、ブラケット側ピン孔23に連通するように、上壁部35に配置されている。また、ブロック側ピン孔33Bは、ブラケット側ピン孔23よりも小径に設定されている。
【0038】
剪断ピン50は、上記第1実施形態と同様に、溶融した樹脂材をピン孔61Bに射出し、冷却、固化することで形成される。また、剪断ピン50Bを形成する際には、ブラケット側ピン孔23とブロック側ピン孔33Bとが連通するように、スライドブロック30を切欠凹部21に配置するとともに、離脱溝31の上壁部35と摺接部22の上面22aとの間に隙間62が形成されるように、摺接部22の下面22bを離脱溝31の下壁部34に密接させた状態で、上壁部35の上方からブロック側ピン孔33Bに樹脂材を注入する。
【0039】
なお、本実施形態の衝撃エネルギー吸収構造11における組立手順、および動作は、上記第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0040】
以上のことから、本実施形態のステアリングコラム装置では、上記第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0041】
また、本実施形態の別態様として、図7に示す態様がある。本態様では、上壁部35のブロック側ピン孔33Bとブロック側ピン孔33Bの間に、上壁部35を貫通する注入孔33Cが設けられている。そして、ピン孔61Bに樹脂材を注入する際に、注入孔33Cにも樹脂材を注入し、形成される滑部52Bによって、スライドブロック30の上壁部35と、移動ブラケット20の摺接部22との間の隙間62が埋められ、摺接部22全体を覆うことができる。
【0042】
このような構成とすることで、滑部52Bによって、より広い範囲で隙間62が埋まり、スライドブロック30と移動ブラケット20との接触面積が拡がるため、振動剛性をさらに高めることができる。
【0043】
なお、注入孔33Cの孔径、および数は、隙間62の大きさ等によって適宜設定される。また、図7の注入孔33Cは、理解を容易にするため、説明の都合上、当該断面に図示されているが、実際には、ブロック側ピン孔33B間に配置される。
【符号の説明】
【0044】
1…車両用ステアリングコラム装置
20…移動ブラケット
21…切欠凹部
22…縁部(摺接部)
30…スライドブロック
31…離脱溝
34…下壁部(壁部)
34a…上面
35…上壁部(壁部)
50…剪断ピン
52…滑部
61…ピン孔
62…隙間
91…車体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9