(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ加工において、ワークの加工現象は複雑であるため、その加工状態を正確に管理することは容易でない。本願発明者等は、ワークのうちレーザ光が照射された加工対象部の立ち上がり温度の時間特性、及びレーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度がワークの加工状態に大きな影響を与えることを突き止めた。
【0006】
そこで、本発明は、ワークの加工状態を正確且つ容易に管理することができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザ加工方法は、ワークの加工対象部に対してレーザ光を照射して当該ワークを加工するレーザ加工方法であって、前記加工対象部に対して前記レーザ光を照射してから当該加工対象部の立ち上がり温度が当該加工対象部の融点以上の設定温度に到達するまでの経過時
間を監視する監視ステップと、前記監視ステップで得られた前記経過時間
が設定経過時間よりも長い場合に加工不良と判定する判定ステップと、を行
い、
少なくとも前記加工対象部の立ち上がり温度が前記設定温度に到達するまでの間、予め設定された照射条件に基づいて前記レーザ光を前記加工対象部に照射することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るレーザ加工方法によれば、レーザ光が照射された加工対象部の立ち上がり温度が当該加工対象部の融点以上の設定温度に到達するまでの経過時間
よりも長い場合に加工不良と判定するので、加工品の加工品質を向上させることが可能となる。また、レーザ加工中に加工不良を判定することができるので、レーザ加工終了後に加工の良否を判定する工程を新たに設ける必要がない。これにより、ワークの再加工等も効率的に行うことができる。
【0011】
上記のレーザ加工方法において、前記監視ステップでは、前記加工対象部のピーク温度を監視し、前記判定ステップでは、前記監視ステップで得られた前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低い場合に加工不良と判定してもよい。
【0012】
このような方法によれば、加工対象部のピーク温度が当該加工対象部の融点よりも低い場合に加工不良と判定するので、加工品の加工品質を一層向上させることができる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工方法
は、
ワークの加工対象部に対してレーザ光を照射して当該ワークを加工するレーザ加工方法であって、レーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度と前記レーザ光が照射された後における前記加工対象部の冷却速度
とを監視
する監視ステップと、
前記監視ステップで得られた前記到達温度が設定到達温度よりも低い場合と前記監視ステップで得られた前記冷却速度が設定冷却速度よりも大きい場合に加工不良と判定
する判定ステップとを行うことを特徴とする。
【0014】
本願発明者等の知見によれば、レーザ加工が良好に行われている場合には、加工対象部の溶融量が比較的多くなることから当該加工対象部の冷却速度は小さくなり、加工不良の場合には、加工対象部の溶融量が比較的少なくなることから当該加工対象部の冷却速度は大きくなると推察される。このような方法によれば、レーザ光が照射された後における加工対象部の冷却速度が設定冷却速度よりも大きい場合に加工不良と判定するので、加工品の加工品質をさらに向上させることができる。
【0015】
上記のレーザ加工方法において、前記監視ステップでは、前記経過時間を監視し、前記判定ステップでは、前記監視ステップで得られた前記経過時間が設定経過時間以下であるか否かを判定し、前記経過時間が前記設定経過時間以下であると前記判定ステップで判定された場合に、前記加工対象部の立ち上がり温度が前記設定温度に到達してからのレーザ照射時間を一定にする照射時間制御ステップを行ってもよい。
【0016】
ところで、通常、レーザ加工において、加工対象部に対するレーザ光の照射時間は、実際のレーザ加工を行う前にワークの材質や形状等に基づいて所定の時間に設定される。そうすると、加工対象部の立ち上がり温度が設定温度に到達するまでの経過時間が比較的長い場合には、加工対象部が溶融してからのレーザ照射時間が短くなるため、当該加工対象部の溶融量が少なくなることが考えられる。一方、前記経過時間が比較的短い場合には、加工対象部が溶融してからのレーザ照射時間が長くなるため、当該加工対象部の溶融量が多くなることが考えられる。
【0017】
このような方法によれば、監視ステップで得られた経過時間が設定経過時間以下であると判定された場合に、加工対象部の立ち上がり温度が当該設定温度に到達してからのレーザ照射時間を一定にする照射時間制御ステップを行うため、加工対象部の立ち上がり温度が設定温度に到達するまでの経過時間によらず、加工対象部の溶融量を略同一にすることができる。これにより、加工品の加工品質を一層向上させることができる。
【0018】
上記のレーザ加工方法において、前記監視ステップでは、前記加工対象部のピーク温度を監視し、前記判定ステップでは、前記監視ステップで得られた前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低いか否かを判定し、前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低いと前記判定ステップで判定された場合に、前記レーザ光の照射条件を変更して当該ピーク温度を上昇させるピーク温度調整ステップを行ってもよい。
【0019】
このような方法によれば、加工対象部のピーク温度が加工対象部の融点よりも低いと判定された場合に、レーザ光の照射条件を変更して当該ピーク温度を上昇させるピーク温度調整ステップを行うので、加工対象部のピーク温度を確実に当該加工対象部の融点以上にすることができる。これにより、ワークの加工不良を抑制することができる。
【0020】
上記のレーザ加工方法において、前記監視ステップでは、
レーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度を監視し、前記判定ステップでは、前記監視ステップで得られた前記到達温度が設定到達温度よりも低いか否かを判定し、前記到達温度が前記設定到達温度よりも低いと前記判定ステップで判定された場合に、前記レーザ光の照射条件を変更して当該到達温度を上昇させる到達温度調整ステップを行ってもよい。
【0021】
このような方法によれば、監視ステップで得られた到達温度が設定到達温度よりも低いと判定された場合に、レーザ光の照射条件を変更して当該到達温度を上昇させる到達温度調整ステップを行うので、前記到達温度を確実に設定到達温度以上にすることができる。これにより、ワークの加工不良を抑制することができる。
【0022】
本発明に係るレーザ加工装置は、ワークの加工対象部に対してレーザ光を照射するレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を制御するレーザ制御手段と、前記加工対象部に対して前記レーザ光を照射してから当該加工対象部の立ち上がり温度が当該加工対象部の融点以上の設定温度に到達するまでの経過時
間を監視する監視手段と、前記監視手段で得られた前記経過時間
が設定経過時間よりも長い場合に加工不良と判定する
加工判定
部と、を備
え、前記レーザ制御手段は、少なくとも前記加工対象部の立ち上がり温度が前記設定温度に到達するまでの間、予め設定された照射条件に基づいて前記レーザ光を前記加工対象部に照射することを特徴とする。
【0023】
本発明に係るレーザ加工装置によれば、レーザ光が照射された加工対象部の立ち上がり温度が加工対象部の融点以上の設定温度に到達するまでの経過時間
よりも長い場合に加工不良と判定するので、加工品の加工品質を向上させることが可能となる。また、レーザ加工中に加工不良を判定することができるので、レーザ加工終了後に加工の良否を判定する工程を新たに設ける必要がない。これにより、ワークの再加工等も効率的に行うことができる。
【0024】
上記のレーザ加工装置において、前記監視手段は、前記加工対象部のピーク温度を監視し
、前記監視手段で得られた前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低いか否かを判定するピーク温度判定部
をさらに備え、
前記加工判定部は、前記加工対象部のピーク温度が当該加工対象部の融点よりも低いと前記ピーク温度判定部が判定した場合に加工不良と判定
してもよい。
【0025】
このような構成によれば、加工対象部のピーク温度が当該加工対象部の融点よりも低い場合に加工不良と判定することができるので、加工品の加工品質を一層向上させることができる。
【0026】
本発明に係るレーザ加工装置
は、ワークの加工対象部に対してレーザ光を照射するレーザ照射手段と、前記レーザ照射手段を制御するレーザ制御手段と、レーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度と前記レーザ光が照射された後における前記加工対象部の冷却速度
とを監視
する監視手段と、前記監視手段で得られた前記冷却速度が設定冷却速度よりも大きいか否かを判定する冷却速度判定部と、
前記監視手段で得られた前記到達温度が設定到達温度よりも低い場合と前記冷却速度が前記設定冷却速度よりも大きいと前記冷却速度判定部が判定した場合に加工不良と判定する加工判定部と、を
備えることを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、レーザ光が照射された後における加工対象部の冷却速度が設定冷却速度よりも大きい場合に加工不良と判定することができるので、加工品の加工品質をさらに向上させることができる。
【0028】
上記のレーザ加工装置において、前記監視手段は、前記経過時間を監視し
、前記監視手段で得られた前記経過時間が設定経過時間以下であるか否かを判定する時間判定部を
さらに備え、前記レーザ制御手段は、前記経過時間が前記設定経過時間以下であると前記時間判定部が判定した場合に、前記加工対象部の立ち上がり温度が前記設定温度に到達してからのレーザ照射時間が一定になるように前記レーザ照射手段を制御してもよい。
【0029】
このような構成によれば、監視手段で得られた経過時間が設定経過時間以下である場合に、加工対象部の立ち上がり温度が当該設定温度に到達してからのレーザ照射時間を一定にすることができるので、加工対象部の立ち上がり温度が設定温度に到達するまでの経過時間によらず、加工対象部の溶融量を略同一にすることができる。これにより、加工品の加工品質を一層向上させることができる。
【0030】
上記のレーザ加工装置において、前記監視手段は、前記加工対象部のピーク温度を監視し
、前記監視手段で得られた前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低いか否かを判定するピーク温度判定部を
さらに備え、前記レーザ制御手段は、前記ピーク温度が前記加工対象部の融点よりも低いと前記ピーク温度判定部が判定した場合に、前記ピーク温度が上昇するように前記レーザ照射手段を制御してもよい。
【0031】
このような構成によれば、加工対象部のピーク温度が加工対象部の融点よりも低い場合に、ピーク温度が上昇するようにレーザ照射手段を制御することができるので、加工対象部のピーク温度を確実に当該加工対象部の融点以上にすることができる。これにより、ワークの加工不良を抑制することができる。
【0032】
上記のレーザ加工装置において、前記監視手段は、
レーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度を監視し
、前記監視手段で得られた前記到達温度が設定到達温度よりも低いか否かを判定する温度判定部を
さらに備え、前記レーザ制御手段は、前記到達温度が前記設定到達温度よりも低いと前記温度判定部が判定した場合に、当該到達温度が上昇するように前記レーザ照射手段を制御してもよい。
【0033】
このような構成によれば、監視手段で得られた到達温度が設定到達温度よりも低い場合に、当該到達温度が上昇するようにレーザ照射手段を制御することができるので、前記到達温度を確実に設定到達温度以上にすることができる。これにより、ワークの加工不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置によれば、レーザ光が照射された加工対象部の立ち上がり温度が当該加工対象部の融点以上の設定温度に到達するまでの経過時間、及びレーザ照射期間の後半における前記加工対象部の到達温度の少なくともいずれか一方を監視してワークの加工状態を判定するので、当該ワークの加工状態を正確且つ容易に管理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るレーザ加工装置とそれを用いたレーザ加工方法について好適な実施形態を例示して添付の図面を参照しながら説明する。
【0037】
先ず、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置としてのレーザ溶接装置10について説明する。
図1に示すように、レーザ溶接装置10は、ワークWの溶接対象部(加工対象部)100にレーザ光Lを照射して当該ワークWを溶接する(加工する)ための装置である。ワークWとしては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、銅合金等の各種金属を採用することができる。
【0038】
レーザ溶接装置10は、溶接装置本体(レーザ照射手段)12と、ワークWが載置されるテーブル14とを備えている。溶接装置本体12は、レーザ発振器16と、レーザ発振器16から発振されたレーザ光Lを伝送する光ファイバ18と、光ファイバ18から出射されたレーザ光LをワークWの溶接対象部100に導くレーザヘッド20と、制御部22とを備えている。
【0039】
レーザヘッド20は、光ファイバ18から出射されたレーザ光Lをコリメートするコリメートレンズ24と、コリメートされたレーザ光LをワークWの溶接対象部100に向けて反射するミラー26と、ミラー26から導かれたレーザ光Lを溶接対象部100に集光する集光レンズ28と、レーザ光Lが照射された溶接対象部100の温度を測定する温度測定部30とを有している。
【0040】
温度測定部30は、例えば、溶接対象部100の温度をリアルタイムで計測することができる放射温度計が用いられる。
図2Aに示すように、温度測定部30の温度測定領域(測定視野)Aは、溶接対象部100に照射されるレーザ光Lのスポット径(レーザ光Lのピーク強度の1/e
2レベルのビーム強度の径)d0よりも幾らか大きく設定されている。これにより、溶接対象部100に形成されるキーホール102のレーザ照射側の開口部を構成する壁面104から放射される赤外線を確実に受光することができるので、溶接対象部100の温度を精度良く測定することが可能となる(
図2B参照)。
【0041】
具体的には、温度測定領域Aの直径d1は、前記レーザ光Lのスポット径d0よりも0.1mm〜0.5mmの範囲で大きく設定すると好適である。温度測定領域Aの直径d1を当該スポット径d0よりも0.1mm未満の範囲で大きく設定した場合には、温度測定領域Aに含まれるキーホール102の割合が過大になり、正確な温度測定ができないことがある。また、温度測定領域Aの直径d1を当該スポット径d0よりも0.5mmを超える範囲で大きく設定した場合には、温度測定領域Aに含まれるレーザ光Lの非照射部(溶接対象部100のうちレーザ光Lが照射されていない部分)の割合が過大になり、正確な温度測定ができないことがある。
【0042】
本実施形態において、温度測定部30は、溶接対象部100に照射されるレーザ光Lの光軸と温度測定部30が受光する赤外光の光軸とが同軸となるように配設されている。なお、温度測定部30は、レーザヘッド20と別体に設けても構わない。
【0043】
制御部22は、レーザ発振器16を制御するレーザ制御部(レーザ制御手段)32と、溶接対象部100の温度と時間を監視する監視部(監視手段)34と、記憶部36と、ワークWの溶接状態(加工状態)を判定する判定部(判定手段)38とを含んでいる。
【0044】
レーザ制御部32は、レーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振及び停止を行う。また、レーザ制御部32は、レーザ照射中にレーザ光Lの出力や照射時間を変更することができる。監視部34は、溶接対象部100の温度、溶接対象部100に対してレーザ光Lが照射されてからの時間、及びレーザ光Lが照射された後の溶接対象部100の冷却速度Vを監視する。具体的には、監視部34は、例えば、溶接対象部100の温度の時間変化を示すグラフ(第1〜第4グラフ)を作成することができる(
図10〜
図13参照)。
【0045】
ここで、
図10は、アルミニウムで構成されたワークWに対してレーザ溶接を施した場合の溶接対象部100の温度と時間との関係を示したグラフであり、
図11は、ステンレス鋼で構成されたワークWに対してレーザ溶接を施した場合の溶接対象部100の温度と時間との関係を示したグラフであり、
図12は、銅で構成されたワークWに対してレーザ溶接を施した場合(溶接良好であった場合)の溶接対象部100の温度と時間との関係を示したグラフであり、
図13は、銅で構成されたワークWにレーザ溶接を施した場合(溶接不良であった場合)の溶接対象部100の温度と時間との関係を示したグラフである。
【0046】
各グラフにおいて、時点0は溶接対象部100にレーザ光Lが照射された時点を、時点t1は溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達した時点を、時点t2はレーザ照射期間の後半における任意の時点を、時点tsは溶接対象部100に対するレーザ光Lの照射が停止した時点をそれぞれ示している。なお、各グラフは、レーザ制御部32及び温度測定部30の各出力信号に基づいて作成される。
【0047】
記憶部36には、例えば、溶接を行う溶接対象部100(ワークW)の融点Tm、設定温度Ta、設定到達温度Tb、及び設定経過時間taが記憶されている。設定温度Taは、融点Tm以上であって溶接対象部100の想定されるピーク温度Tpよりも低い温度に設定されている。この場合、溶接対象部100に対してレーザ光Lを照射してから当該溶接対象部100が溶融初期に至るまでの経過時間を容易に取得することが可能となる。
【0048】
設定到達温度Tbは、レーザ照射期間の後半における溶接対象部100の到達温度T2に対応する温度であって、融点Tm以上に設定される。なお、設定到達温度Tbは、溶接対象部100の温度がピーク温度Tpに達してからレーザ光Lの照射が停止されるまでの期間の任意の時点t2における当該溶接対象部100の温度に対応する温度、又はレーザ光Lの照射が停止される直前の温度に対応する温度であってもよい。
【0049】
設定経過時間taは、溶接対象部100に対してレーザ光Lを照射してから溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達するまでの時間t1に対応する時間であって、ワークWの材質や形状等に応じて適宜設定される。
【0050】
判定部38は、ピーク温度判定部40、温度判定部42、時間判定部44、冷却速度判定部46、及び溶接判定部(加工判定部)48を有している。ピーク温度判定部40は、溶接対象部100のピーク温度Tpが溶接対象部100の融点Tm以下であるか否かを判定する。温度判定部42は、レーザ照射期間の後半における溶接対象部100の到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低いか否かを判定する。
【0051】
時間判定部44は、溶接対象部100に対してレーザ光Lを照射してから当該溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達するまでの経過時間t1が設定経過時間taよりも長いか否かを判定する。冷却速度判定部46は、レーザ光Lが照射された後における溶接対象部100の冷却速度Vが設定冷却速度Vaよりも大きいか否かを判定する。溶接判定部48は、ピーク温度判定部40、温度判定部42、時間判定部44、及び冷却速度判定部46の少なくともいずれか1つの判定部の判定結果に基づいて溶接の良否を判定する。
【0052】
本実施形態に係るレーザ溶接装置10は基本的に以上のように構成されるものであって、次に、当該レーザ溶接装置10を用いたレーザ溶接方法(第1〜第7方法)について説明する。
【0053】
(第1方法)
先ず、本実施形態に係る第1のレーザ溶接方法(第1方法)について説明する。
図3に示すように、第1方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始する(ステップS1)。このとき、レーザ制御部32は、ワークWの材質や形状等によって予め設定された溶接条件(レーザ照射時間及びレーザ光Lの出力等を含む溶接条件)に基づいてレーザ発振器16を制御する。なお、レーザ発振器16から発振されるレーザ光Lは、連続発振であってもパルス発振であっても構わない。
【0054】
レーザ発振器16から発振したレーザ光Lは、光ファイバ18に入射されてレーザヘッド20まで伝送される。光ファイバ18から出射したレーザ光Lは、コリメートレンズ24で平行化された後、ミラー26で反射されて集光レンズ28にてワークWの溶接対象部100に照射される。
【0055】
また、監視部34は、監視を開始する(ステップS2)。すなわち、例えば、監視部34は、レーザ制御部32の出力信号と温度測定部30の出力信号に基づいて溶接対象部100の温度の時間変化を示すグラフを作成する(
図10〜
図13参照)。
【0056】
溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇し融点Tmに達した時点で溶融が開始する。そして、溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達すると、監視部34は、溶接対象部100に対してレーザ光Lが照射されてから当該溶接対象部100の立ち上がり温度が設定温度Taに到達するまでの経過時間t1を時間判定部44に出力する。このとき、監視部34は、記憶部36を参照して設定温度Taを取得する。
【0057】
そして、時間判定部44は、監視部34で得られた経過時間t1が設定経過時間ta以下であるか否かを判定する(ステップS3:判定ステップ)。前記経過時間t1が設定経過時間taよりも長いと時間判定部44が判定した場合(ステップS3:NO)には、溶接判定部48は溶接不良(加工不良)と判定する(ステップS4)。この場合、溶接対象部100の立ち上がり温度が設定温度Taに到達した後の残余のレーザ照射時間(時点t1と時点tsの間の時間)が短くなるため、溶接対象部100を充分に溶融させることができない蓋然性が高いからである。
【0058】
その後、制御部22は、図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS5)。これにより、レーザ溶接装置10の使用者等は、レーザ溶接の最中に溶接不良であることを知ることができる。溶接不良であることを知った前記使用者等は、例えば、溶接途中でレーザ光Lの発振を停止することができる。この場合、早い段階で新たなレーザ溶接を行う等の処置を採ることができるため、時間を有効活用することができる。
【0059】
前記経過時間t1が設定経過時間ta以下であると時間判定部44が判定した場合(ステップS3:YES)には、溶接対象部100のレーザ溶接が続行される。すなわち、レーザ光Lの照射によって溶接対象部100の溶融量が増加すると共に当該溶接対象部100の温度が上昇する。そして、溶接対象部100の温度は、ピーク温度Tpを経過した後、低下して時点t2において到達温度T2となる。
【0060】
続いて、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を停止すると(ステップS6)、溶接対象部100の温度が融点Tmよりも低下して溶融部が凝固することにより溶接が完了する。その後、ステップS7において、監視部34が監視を終了し、今回のフローチャートが終了する。
【0061】
上述した第1方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS2)から終了する(ステップS7)までの間が監視ステップに相当することとなる。
【0062】
本実施形態に係る第1方法によれば、レーザ光Lが照射された溶接対象部100の立ち上がり温度T1が融点Tmよりも高い設定温度Taに到達するまでの経過時間t1を監視してワークWの溶接状態を判定しているので、当該ワークWの溶接状態を正確且つ容易に管理することができる。
【0063】
また、前記経過時間t1が設定経過時間taよりも長い場合に溶接不良と判定するので、当該レーザ溶接された製品の溶接品質(加工品の加工品質)を向上させることが可能となる。また、レーザ溶接中に溶接不良を判定することができるので、レーザ溶接終了後に溶接の良否を判定する工程を新たに設ける必要がない。これにより、ワークWの再溶接も効率的に行うことができる。
【0064】
(第2方法)
次に、本実施形態に係る第2のレーザ溶接方法(第2方法)について説明する。なお、第2方法において、第1方法と同様の処理についてはその詳細な説明を省略する。後述する第3方法、第5方法についても同様である。
【0065】
図4に示すように、第2方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始し(ステップS10)、監視部34が監視を開始する(ステップS11)。溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇する。そして、監視部34は、レーザ照射期間の後半における時点t2の到達温度T2を取得して温度判定部42に出力する。
【0066】
換言すれば、監視部34は、溶接対象部100の温度がピーク温度Tpに達してからレーザ光Lの照射が停止されるまでの期間の任意の時点t2の到達温度T2(レーザ光Lの照射が停止される直前の時点t2の到達温度T2)を取得して温度判定部42に出力する。
【0067】
次に、温度判定部42は、監視部34で得られた到達温度T2が設定到達温度Tb以上であるか否かを判定する(ステップS12:判定ステップ)。前記到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低い場合(ステップS12:NO、例えば、
図13のグラフの場合)には、溶接判定部48は溶接不良と判定する(ステップS13)。この場合、溶接対象部100が充分に溶融していない(溶接対象部100の裏面まで溶け込んでいない)蓋然性が高いからである。その後、制御部22は、図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS14)。
【0068】
また、前記到達温度T2が設定到達温度Tb以上である場合(ステップS12:YES、例えば、
図12のグラフの場合)には、溶接対象部100のレーザ溶接が続行される。そして、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を停止すると(ステップS15)、溶接対象部100の温度が融点Tmよりも低下して溶融部が凝固することにより溶接が完了する。
【0069】
その後、ステップS16において、監視部34が監視を終了し、今回のフローチャートが終了する。上述した第2方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS11)から終了する(ステップS16)までの間が監視ステップに相当する。
【0070】
本実施形態に係る第2方法によれば、レーザ照射期間の後半における溶接対象部100の到達温度T2を監視してワークWの溶接状態を判定するので、当該ワークWの溶接状態を正確且つ容易に管理することができる。
【0071】
また、前記到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低い場合に溶接不良と判定するので、当該レーザ溶接された製品の溶接品質を向上させることが可能となる。さらに、レーザ溶接中に溶接不良を判定することができるので、レーザ溶接終了後に溶接の良否を判定する工程を新たに設ける必要がない。これにより、ワークWの再溶接等も効率的に行うことができる。
【0072】
(第3方法)
次に、本実施形態に係る第3のレーザ溶接方法(第3方法)について説明する。
図5に示すように、第3方法では、ステップS21〜ステップS26が上述した第1方法のステップS1〜ステップS6(
図3参照)と同一である。そのため、ここでは、ステップS21〜ステップS26の説明を省略し、ステップS26の後の処理について説明する。
【0073】
レーザ光Lの発振を停止すると(ステップS26)、溶接対象部100の温度が低下する。そして、このとき、監視部34は、レーザ光Lが照射された後の溶接対象部100の冷却速度(時点ts以降の冷却速度)Vを算出して冷却速度判定部46に出力する。
【0074】
続いて、冷却速度判定部46は、監視部34で得られた冷却速度Vが設定冷却速度Va以下であるか否かを判定する(ステップS27:判定ステップ)。前記冷却速度Vが前記設定冷却速度Vaよりも大きいと冷却速度判定部46が判定した場合(ステップS27:NO)には、溶接判定部48は溶接不良と判定する(ステップS28)。この場合、溶接対象部100が充分に溶融していない蓋然性が高いからである。
【0075】
すなわち、本願発明者等の知見によれば、レーザ溶接が良好に行われている場合には、溶接対象部100の溶融量が比較的多くなることから当該溶接対象部100の冷却速度は小さくなる一方で、溶接不良の場合には、溶接対象部100の溶融量が比較的少なくなることから当該溶接対象部100の冷却速度は大きくなると推察される。このようなことより、前記冷却速度Vが設定冷却速度Vaよりも大きい場合には、溶接対象部100が充分に溶融していないことが考えられるのである。
【0076】
その後、制御部22は、図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS29)。また、前記冷却速度Vが設定冷却速度Vb以下であると冷却速度判定部46が判定した場合(ステップS27:YES)には、溶接対象部100が充分に溶融したと考えられるため、ステップS30において、監視部34が監視を終了して、今回のフローチャートが終了する。
【0077】
上述した第3方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS22)から終了する(ステップS30)までの間が監視ステップに相当する。
【0078】
本実施形態に係る第3方法によれば上述した第1方法と同様の効果を奏すると共に、レーザ光Lが照射された後における溶接対象部100の冷却速度Vが設定冷却速度Vbよりも大きい場合に溶接不良と判定するので、当該レーザ溶接された製品の溶接品質をさらに向上させることができる。
【0079】
(第4方法)
次に、本実施形態に係る第4のレーザ溶接方法(第4方法)について説明する。なお、第4方法において、上述した第2方法と同様の処理についてはその詳細な説明を省略する。後述する第6方法及び第7方法についても同様である。
【0080】
図6に示すように、第4方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始し(ステップS40)、監視部34が監視を開始する(ステップS41)。溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇する。そして、監視部34は、溶接対象部100のピーク温度Tpを取得してピーク温度判定部40に出力する。
【0081】
次に、ピーク温度判定部40は、監視部34で得られたピーク温度Tpが融点Tm以上であるか否かを判定する(ステップS42)。前記ピーク温度Tpが融点Tmよりも低いとピーク温度判定部40が判定した場合(ステップS42:NO)には、溶接判定部48は溶接不良と判定する(ステップS43)。この場合、溶接対象部100が溶融しないからである。その後、制御部22は、図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS44)。
【0082】
また、前記ピーク温度Tpが前記融点Tm以上であるとピーク温度判定部40が判定した場合(ステップS42:YES)には、溶接対象部100のレーザ溶接が続行される。そして、監視部34は、レーザ照射期間の後半における時点t2の到達温度T2を取得して温度判定部42に出力する。
【0083】
そして、温度判定部42は、監視部34で得られた到達温度T2が設定到達温度Tb以上であるか否かを判定する(ステップS45)。前記到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低い場合(ステップS45:NO)には、溶接判定部48が溶接不良と判定し(ステップS43)、制御部22が図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS44)。
【0084】
また、前記到達温度T2が設定到達温度Tb以上である場合(ステップS45:YES)には、溶接対象部100のレーザ溶接がさらに続行され、所定時間経過後にレーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を停止する(ステップS46)。そして、ステップS47において、監視部34が監視を終了し、今回のフローチャートが終了する。
【0085】
上述した第4方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS41)から終了する(ステップS47)までの間が監視ステップに相当する。また、ステップS42及びステップS45が判定ステップに相当する。
【0086】
本実施形態に係る第4方法によれば、上述した第2方法と同様の効果を奏すると共に、溶接対象部100のピーク温度Tpが当該溶接対象部100の融点Tmよりも低い場合に溶接不良と判定するので、当該レーザ溶接がされた製品の溶接品質を一層向上させることができる。
【0087】
(第5方法)
次に、本実施形態に係る第5のレーザ溶接方法(第5方法)について説明する。
図7に示すように、第5方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始し(ステップS50)、監視部34が監視を開始する(ステップS51)。溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇する。そして、監視部34は、溶接対象部100にレーザ光Lが照射されてから溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達するまでの経過時間t1を時間判定部44に出力する。
【0088】
そして、時間判定部44は、監視部34で得られた経過時間t1が設定経過時間ta以下であるか否かを判定する(ステップS52:判定ステップ)。前記経過時間t1が設定経過時間taよりも長いと時間判定部44が判定した場合(ステップS52:NO)には、溶接判定部48が溶接不良と判定し(ステップS53)、制御部22が図示しない報知手段に異常信号を出力する(ステップS54)。
【0089】
また、前記経過時間t1が設定経過時間ta以下であると時間判定部44が判定した場合(ステップS52:YES)には、レーザ制御部32は、照射時間制御を行う(ステップS55:照射時間制御ステップ)。具体的には、レーザ制御部32は、時点t1からのレーザ照射時間が一定になるようにレーザ発振器16を制御する。これにより、溶接対象部100の溶融が開始してからのレーザ照射時間を略一定にすることができるため、当該溶接対象部100を充分に溶融させる(溶接対象部100の裏面まで確実に溶け込ませる)ことが可能となる。
【0090】
そして、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を停止し(ステップS56)、ステップS57において、監視部34が監視を終了し、今回のフローチャートが終了する。
【0091】
上述した第5方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS51)から終了する(ステップS57)までの間が監視ステップに相当する。
【0092】
ところで、レーザ溶接の前段階においてレーザ光Lの発振時間を所定時間に設定すると、溶接対象部100の立ち上がり温度T1が設定温度Taに到達するまでの経過時間t1が比較的長い場合には、溶接対象部100が溶融してからのレーザ照射時間が短くなるため、当該溶接対象部100の溶融量が少なくなることが考えられる。一方、前記経過時間t1が比較的短い場合には、溶接対象部100が溶融してからのレーザ照射時間が長くなるため、当該溶接対象部100の溶融量が多くなることが考えられる。
【0093】
本実施形態に係る第5方法によれば、監視部34で得られた経過時間t1が設定経過時間ta以下であると判定された場合に、時点t1からのレーザ照射時間を一定にするため、前記経過時間t1によらず、溶接対象部100の溶融量を略同一にすることができる。これにより、溶接品質を一層向上させることができる。
【0094】
(第6方法)
次に、本実施形態に係る第6のレーザ溶接方法(第6方法)について説明する。
図8に示すように、第6方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始し(ステップS60)、監視部34が監視を開始する(ステップS61)。溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇する。そして、監視部34は、レーザ照射期間の後半における時点t2の到達温度T2を取得して温度判定部42に出力する。
【0095】
次に、温度判定部42は、監視部34で得られた到達温度T2が設定到達温度Tb以上であるか否かを判定する(ステップS62)。前記到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低いと温度判定部42が判定した場合(ステップS62:NO)には、レーザ制御部32は、到達温度調整制御を行う(ステップS63:到達温度調整ステップ)。
【0096】
具体的には、レーザ制御部32は、レーザ照射時間の後半における到達温度(時点t2よりも僅かに進んだ時点の到達温度)T2hが前記設定到達温度Tb以上になるようにレーザ発振器16を制御する。すなわち、レーザ制御部32は、レーザ光Lの出力が上昇するようにレーザ発振器16を制御するか、又はレーザ光Lの照射時間が延長される(追加照射される)ようにレーザ発振器16を制御する。なお、これら両方の制御を一緒に行っても構わない。
【0097】
ステップS63の処理の後、ステップS62において、温度判定部42は、レーザ照射時間の後半における到達温度T2hが設定到達温度Tb以上であるか否かを行う(ステップS62:判定ステップ)。
【0098】
前記到達温度T2(T2h)が設定到達温度Tb以上であると温度判定部42が判定した場合(ステップS62:YES)には、溶接対象部100のレーザ溶接が続行され、所定時間経過後にレーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を停止する(ステップS64)。そして、ステップS65において、監視部34が監視を終了して、今回のフローチャートが終了する。
【0099】
上述した第6方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS61)から終了する(ステップS65)までの間が監視ステップに相当する。
【0100】
本実施形態に係る第6方法によれば、監視部34で得られた到達温度T2が設定到達温度Tbよりも低いと温度判定部42が判定した場合に、レーザ照射期間の後半における到達温度T2hが設定到達温度Tb以上となるようにレーザ発振器16を制御する(レーザ光Lの照射条件を変更する)ので、当該到達温度T2hを確実に設定到達温度Tb以上にすることができる。これにより、ワークWの溶接不良を抑制することができる。
【0101】
(第7方法)
次に、本実施形態に係る第7のレーザ溶接方法(第7方法)について説明する。
図9に示すように、第7方法では、レーザ制御部32がレーザ発振器16を制御してレーザ光Lの発振を開始し(ステップS70)、監視部34が監視を開始する(ステップS71)。溶接対象部100にレーザ光Lが照射されると、その照射部位の温度が上昇する。そして、監視部34は、溶接対象部100のピーク温度Tpを取得してピーク温度判定部40に出力する。
【0102】
次に、ピーク温度判定部40は、監視部34で得られたピーク温度Tpが融点Tm以上であるか否かを判定する(ステップS72)。前記ピーク温度Tpが融点Tmよりも低いとピーク温度判定部40が判定した場合(ステップS72:NO)には、レーザ制御部32は、ピーク温度調整制御を行う(ステップS73:ピーク温度調整ステップ)。
【0103】
具体的には、レーザ制御部32は、溶接対象部100のピーク温度Tpが上昇するようにレーザ発振器16を制御する。すなわち、レーザ制御部32は、レーザ光Lの出力が上昇するようにレーザ発振器16を制御するか、又はレーザ光Lの照射時間が延長(追加照射される)ようにレーザ発振器16を制御する。なお、これら両方の制御を一緒に行っても構わない。そして、ステップS73の処理の後、ステップS72の処理に戻る。
【0104】
前記ピーク温度Tpが融点Tm以上であるとピーク温度判定部40が判定した場合(ステップS72:YES)には、溶接対象部100のレーザ溶接が続行され、ステップS74以降の処理を行う。第7方法において、ステップS74〜ステップS78の処理は、上述した第2方法のステップS12〜ステップS16の処理と同一であるためその説明を省略する。
【0105】
上述した第7方法では、監視部34の監視が開始して(ステップS71)から終了する(ステップS78)までの間が監視ステップに相当する。また、ステップS72及びステップS74が判定ステップに相当する。
【0106】
本実施形態に係る第7方法によれば、溶接対象部100のピーク温度Tpが溶接対象部100の融点Tmよりも低いとピーク温度判定部40が判定した場合に、当該ピーク温度Tpが融点Tm以上となるようにレーザ発振器16を制御する(レーザ光Lの照射条件を変更する)ので、当該ピーク温度Tpを確実に前記融点Tm以上にすることができる。これにより、ワークWの溶接不良を抑制することができる。
【0107】
本実施形態は上述した構成乃至方法に限定されない。例えば、第1〜第7方法を適宜組み合わせて本実施形態に係るレーザ溶接方法としてもよい。
【0108】
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。本発明に係るレーザ加工方法及びレーザ加工装置は、レーザ溶接に限定されるものではなく、広くレーザ加工に対して適用することが可能である。