(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記したように、ロータが基点位置でストッパに当接し停止した後、当該ステッピングモータに駆動パルス信号を入力し続けると、あるステップでロータが反対の相(磁極)に引き寄せられて反転し、さらにステッピングモータに駆動パルス信号を入力し続けると、再びロータが反転してストッパに再度当接する。
【0008】
例えば、ステータコイルへの所定の励磁順序により該コイルの磁極パターンが8ステップ毎に繰り返される場合、
図8に示すように、ステップ7からステップ4では、駆動パルス信号の入力毎に、ロータが所定角度回転駆動してロータ側のストッパがロータの基点位置に設けられた固定側のストッパに接近していく。そして、ステップ3では、ロータ側のストッパと固定側のストッパとが当接し、ロータは基点位置で停止する。その後、ステップ2からステップ0では、駆動パルス信号が入力されても、ロータの回転駆動は阻止されており、当該ロータは基点位置で停止し続ける(足踏)。なお、
図8において、想像線(二点鎖線)で描かれたマークは、固定側ストッパが存在しないと仮定した場合にロータ側ストッパが回転を続ける様子を示している。
【0009】
しかし、ステータコイルへの励磁がステップ0からステップ7へ移行されると、ロータは反対の相(磁極)に引き寄せられて反転し、ロータ側のストッパは固定側のストッパと離間する(8ステップ反転)。すなわち、ステップ2からステップ0においては固定側ストッパに当接したロータ側ストッパは二点鎖線で示される位置へ引き寄せられるが、ステップ0から再びステップ7に移行すると、後続する相にロータが引き寄せられてロータが反転する。
【0010】
特許文献2に開示されている電動弁の駆動装置では、このような当接・反転動作を交番型のホールIC等を用いてデジタル信号化し、通常の駆動波形と比較することによってロータの停止を検知している。
【0011】
しかしながら、上記する当接・反転動作は周期運動であり、検出位置によっては当接・反転動作に伴う駆動波形と通常の駆動波形とが同期するおそれ、すなわち当接・反転動作に伴う駆動波形と通常の駆動波形とがあまり変化しなくなるおそれがある。そのため、当接・反転動作を利用してロータの基点位置出しを行う上記方法においては、ストッパとの当接によるロータの停止を確実に検知することができないといった問題が生じ得る。
【0012】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、簡単な構成でストッパに対するロータの停止、すなわちロータの基点位置出しを精緻にかつ確実に行うことのできるステッピングモータ及びそれを用いた電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記する課題を解決するために、本発明に係るステッピングモータは、ステータと、該ステータによって回転駆動されるロータと、を備え
、前記ロータの回転位置を検出する検出ロータを有し、該検出ロータは、前記ロータと同軸心上に回転自在に配置されて該ロータと前記検出ロータとの間の回転駆動機構を介して該ロータによって回転駆動され、前記回転駆動機構は、回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊びを有し
、前記ロータが反転した際に前記駆動遊びの長さ又は角度だけ前記ロータから前記検出ロータへの回転駆動力の伝達が抑止されることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るステッピングモータは、ステータと、該ステータによって回転駆動されるロータと、を備え、前記ロータの回転位置を検出する検出ロータを有し、該検出ロータは、前記ロータと同軸心上に回転自在に配置されて該ロータと前記検出ロータとの間の回転駆動機構を介して該ロータによって回転駆動され、前記回転駆動機構は、回転方向に所定の長さ間隔又は角度間隔を置いて配置された前記ロータの複数の突起と、前記ロータの前記複数の突起の間に配置された前記検出ロータの別途の突起と、から構成され、回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊びを有していることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るステッピングモータは、ステータと、該ステータによって回転駆動されるロータと、を備え、前記ロータの回転位置を検出する検出ロータを有し、該検出ロータは、前記ロータと同軸心上に回転自在に配置されて該ロータと前記検出ロータとの間の回転駆動機構を介して該ロータによって回転駆動され、前記回転駆動機構は、回転方向に所定の長さ間隔又は角度間隔を有する前記ロータの駆動遊び凹部と、前記ロータの前記駆動遊び凹部に遊嵌された前記検出ロータの突起と、から構成され、回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊びを有していることを特徴としている。
【0016】
好ましい形態では、前記ステッピングモータは、前記ロータの回転を阻止する回転ストップ機構を有し、前記回転駆動機構の前記駆動遊びの長さ又は角度は、前記回転ストップ機構によって前記ロータの回転が阻止された際の該ロータの反転長さ又は反転角度以上である。
【0017】
また、好ましい形態では、前記検出ロータには、該検出ロータの回動を抑制する付勢力が付与されており、好ましくは、前記付勢力は、前記検出ロータの外側に設けられた磁性体によって生成される。
【0018】
また、本発明に係る電動弁は、前記ステッピングモータを含み、弁室および該弁室に開口する弁口を有する弁本体と、前記弁口を開閉すべく前記弁室に昇降自在に配置される弁体と、前記ステッピングモータの前記ロータの回転運動を前記弁体の昇降運動に変換する変換機構と、を備え、前記ステッピングモータは、前記ステータによって前記ロータを回転駆動させ、前記変換機構によって前記弁体を昇降させて前記弁体が所定の位置に到達した際に、回転ストップ機構によって前記ロータの回転が阻止されるようになっていることを特徴としている。
【0019】
好ましい形態では、前記所定の位置は、前記弁体が前記弁口を閉弁する位置もしくは前記弁体が前記弁口を全開する位置である。
【0020】
また、好ましい形態では、前記弁本体にはキャンが固着され、前記ロータおよび前記検出ロータは、前記キャンの内部に配置されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のステッピングモータ及びそれを用いた電動弁によれば、ロータの回転位置を検出する検出ロータが、ロータの回転軸心と同軸心上に回転自在に配置されて該ロータにより回転駆動され、ロータと検出ロータとの間の回転駆動機構が、回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊びを有していることによって、ロータが反転した際に前記駆動遊びの長さ又は角度だけロータから検出ロータへの回転駆動力の伝達が抑止されるため、ロータがストッパに当接して振動しても、この振動が検出ロータへは伝達されない。したがって、この検出ロータに基づく信号を検出することによって、例えば電動弁の弁体が所定の位置に到達したことを確実に検知することができ、ロータの基点位置出しを精緻に行うことができる。また、回転駆動機構の駆動遊びの長さ又は角度がロータの反転長さ又は反転角度以上であることによって、ロータが反転した際のロータから検出ロータへの回転駆動力の伝達がさらに確実に抑止されるため、ロータの基点位置出しをより精緻に行うことができる。さらに、検出ロータに該検出ロータの回動を抑制する付勢力が付与されていることによって、ロータが反転した際の検出ロータに基づく信号が安定するため、ロータのストッパ当接状態の検知、すなわちロータの基点位置出しをより一層精緻に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るステッピングモータとそのステッピングモータを用いた電動弁の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る電動弁の実施の形態の基本構成を示したものであり、その閉弁状態を示している。図示する電動弁1は、例えばヒートポンプ式冷暖房システム等に使用されるものである。また、
図2は、
図1に示す電動弁に適用されるステッピングモータの基本構成を模式的に示したものであり、
図3は、
図2のA−A矢視断面図である。
【0025】
図1に示す電動弁1は、主として、弁室21および該弁室21に開口する弁口22aを有する弁本体20と、弁口22aを開閉すべく弁室21に昇降自在に配置される軸状の弁体25と、弁体25を昇降させるステッピングモータ50と、を備えている。
【0026】
弁本体20の弁室21には、その下部に弁室21に開口する弁座22付き弁口22aが形成されると共に、その側部に第1入出口11が開口され、弁口22aの下部には該弁口22aに連通する第2入出口12が開口されている。
【0027】
弁本体20の上方開口部には、天井部を有する筒体状のキャン58の下端部が固着され、弁本体20の上方内周部には、筒体状のガイドブッシュ26の下端部が圧入固定され、ガイドブッシュ26の内側に弁体25が摺動自在に嵌挿されている。ガイドブッシュ26の上方縮径部26bの外周には雄ねじ28が形成されると共に、その周囲に筒体状の弁体ホルダ32が外嵌され、弁体ホルダ32の内周には雌ねじ38が形成され、ガイドブッシュ26の雄ねじ28と弁体ホルダ32の雌ねじ38とが螺合している。
【0028】
また、弁体25の上方縮径部25bは、弁体ホルダ32の上部(天井部)に摺動自在に挿通された状態で筒体状の回転軸(支持軸)56に圧入等により固着されている。また、弁体25の上方縮径部25bの外周、かつ、弁体ホルダ32の天井部および弁体25の下部大径部25aと上方縮径部25bの間の段部の間には圧縮コイルばね34が配置され、このコイルばね34によって弁体25が下方(閉弁方向)に付勢されている。
【0029】
一方、ステッピングモータ50は、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53及び樹脂モールドカバー54等で構成され、キャン58に外嵌固定されるステータ55と、キャン58の内側に該キャン58に対して回転自在に配置されるロータ57とを有している。ロータ57は、例えば、磁性材料が樹脂に混入されて成形され、N極及びS極が所定の間隔で着磁されたマグネットから形成されている。ロータ57の上端部には支持リング36が一体に固着され、この支持リング36に弁体ホルダ32の上部突部がかしめ固定されている。したがって、ロータ57と支持リング36と弁体ホルダ32とが一体に連結され、また回転軸56が固着された弁体25がコイルばね34を介して弁体ホルダ32に摺動自在に支持されている。よって、ロータ57が回転して上下動すると、弁体25も上下動するようになっている。
【0030】
また、ロータ57の上方かつキャン58の内側には、ロータ57の回転軸56に形成された突状の支持部56aに載置され、ロータ57の回転軸56に対して相対的に回転自在にかつロータ57の回転軸心Lと同軸心上に配置され、ロータ57の回転駆動力によって回転駆動する検出ロータ47が配置されている。この検出ロータ47は、ロータ57の直径と同一又は異なる直径を備えており、ロータ57と同一のパターン(N極及びS極の角度間隔がロータ57のそれと同一となるようなパターン)で磁化されている。そして、検出ロータ47及びロータ57は、それぞれの磁力が互いに影響を与えない程度に離間して配置されている。なお、検出ロータ47の外周に形成される磁化パターンのN極及びS極の角度間隔は、ロータ57のそれと異なる角度間隔であってもよい。
【0031】
ロータ57の上面には、該ロータ57の回転方向に所定の長さ間隔(又は角度間隔)R1を置いて配置される2つの突起57b、57cが設けられ、検出ロータ47の下面には、先端がロータ57の2つの突起57b、57cの間に配置される棒状突起47aが設けられている(
図2参照)。このように、棒状突起47aの先端がロータ57の2つの突起57b、57cの間に配置されることによって、検出ロータ47が、ロータ57の回転方向に所定の長さ間隔(又は角度間隔)R1の内側(すなわちR1の範囲内)で該ロータ57に対して相対的に回転自在となっている(
図3参照)。この間隔R1は、
図8を参照して前述したように、ロータ側ストッパが固定側ストッパに当接した後、ロータが後続の相(磁極)により反転される長さ(反転長さ)あるいは角度(反転角度)以上回転可能となるように設定されている。
【0032】
なお、回転軸56の上端は、キャン58に内接して配置される支持部材48の中心部に形成された孔に挿通されて支持されている。
【0033】
また、検出ロータ47の外側には磁性体46が配置され、この磁性体46により検出ロータ47の周囲に形成された磁場によって検出ロータ47の回動を抑制する付勢力(ディテントトルクともいう)が付与されている。さらに、検出ロータ47の外側には、検出ロータ47による磁気の変化を検出するホールIC45が配置され、このホールIC45で検出される出力信号に基づいてロータ57の回転位置が検出される。
【0034】
さらに、ガイドブッシュ26の外側にストッパ(固定側ストッパ)27が固着され、弁体ホルダ32の外側にはストッパ37が固着され、弁体25が所定の位置に到達した際、例えば弁体25の下端の弁体部24が弁口22aを閉弁する位置までロータ57が回転下降した際、ロータ57がそれ以上回転するのを阻止するようになっている。すなわち、本実施の形態では、ガイドブッシュ26のストッパ27と弁体ホルダ32のストッパ37によってロータ57の回転を阻止する回転ストップ機構59が構成されている。
【0035】
上記する電動弁1において、ステータ55に第1の態様(閉弁方向への駆動態様)で駆動パルス信号を供給すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対してロータ57や弁体ホルダ32、回転軸56等が一方向(例えば、
図1中、上方から視て右回り)へ回転し、ガイドブッシュ26の雄ねじ28と弁体ホルダ32の雌ねじ38のねじ送りによって弁体ホルダ32が下降し、圧縮コイルばね34を介して弁体25の弁体部24が弁口22aに押し付けられて弁口22aを閉弁する。このガイドブッシュ26の雄ねじ28や弁体ホルダ32の雌ねじ38等によってステッピングモータ50のロータ57の回転運動を弁体の昇降運動に変換する変換機構が構成される。その際、検出ロータ47の下面の突起47aとロータ57の上面の突起57cとが当接し、突起57c、47aを介してロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達され、検出ロータ47がロータ57に追従して一方向へ回転する。なお、検出ロータ47は、検出ロータ47とロータ57の間隔が略一定に維持されるように、ロータ57の回転に応じて下降する。
【0036】
弁口22aが閉弁すると、弁体ホルダ32のストッパ37がガイドブッシュ26のストッパ27に衝接し、ステータ55に駆動パルス信号が供給されても弁体ホルダ32の下降は強制的に阻止され、検出ロータ47の突起47aとロータ57の突起57cとが当接した状態で、ロータ57や検出ロータ47の回転が阻止される。
【0037】
さらにステータ55に駆動パルス信号が供給されると、ロータ57はあるステップで反対の相(磁極)に引き寄せられて反転し、例えばガイドブッシュ26のストッパ27と弁体ホルダ32のストッパ37が離間する。一方、検出ロータ47は、ロータ57に対して相対的に回転自在となっており、上述のようにロータ57の突起57b、57c同士の回転方向の間隔R1は、その内側で検出ロータ47の棒状突起47aがロータ57の反転長さ(又は反転角度)以上回転できるように設定されている(
図3参照)。そのため、ロータ57が反対の相に引き寄せられて反転しても、検出ロータ47の突起47aは、ロータ57の突起57bに接触せず、ロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達されず、磁性体46により付勢力が付与された検出ロータ47は回動しない。すなわち、一旦弁体25が弁口22aを閉弁した位置で停止した検出ロータ47は、ロータ57が反転してもその位置で停止し続ける。この検出ロータ47で発生する磁気をホールIC45を用いて検出することによって、弁体25の下降が停止し弁口22aを閉弁したことを確実に検出する(ロータ57の基点位置出しを行う)ことができる。
【0038】
また、その後、ステータ55への通電を停止すれば、ガイドブッシュ26のストッパ27と弁体ホルダ32のストッパ37の当接による振動や騒音の発生も抑止することができる。
【0039】
さらに、検出ロータ47の外側に磁性体46を配置したので、検出ロータ47及び磁性体46間の磁力により、ロータ57が反転しても検出ロータ47はその位置で安定して停止し続けることができる。
【0040】
なお、弁口22aの閉弁状態からステータ55に第2の態様(開弁方向への駆動態様)にて駆動パルス信号を供給し、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対してロータ57や弁体ホルダ32、回転軸56等を他方向(例えば、
図1中、上方から視て左回り)へ回転させると、ガイドブッシュ26の雄ねじ28と弁体ホルダ32の雌ねじ38のねじ送りによって弁体ホルダ32が上昇し、弁体25の弁体部24が弁口22aから離間して弁口22aが開弁し、例えば冷媒が弁口22aを通過する。その際、あるステップ分だけ検出ロータ47は停止し続けた後、検出ロータ47の下面の突起47aとロータ57の上面の突起57bとが当接し、その後、突起57b、47aを介してロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達され、検出ロータ47がロータ57に追従して他方向へ回転する。
【0041】
次に、
図4を参照して、ロータ57等が一方向(例えば、
図1中、上方から視て右回り)へ回転する場合の、検出ロータ47とロータ57の駆動をより詳細に説明する。例えば、
図8の場合と同様に、ステータコイルへの所定の励磁順序により該コイルの磁極パターンが8ステップ毎に繰り返される場合、まず、
図4の上側の図に示されたステップ7では、ステータ55の駆動パルス信号に基づいてロータ57が一方向へ回転することによって、ロータ57の上面に設けられた突起57cと検出ロータ47の下面に設けられた突起47aが当接している。
【0042】
次いで、ステップ7からステップ4では、駆動パルス信号が入力されると、突起57c、47aを介してロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達され、検出ロータ47は、磁性体46による付勢力に抗してロータ57と共に回転駆動する。これにより、弁体ホルダ32のストッパ37(ロータ57側ストッパ)がガイドブッシュ26のストッパ27(固定側ストッパ)に近接していき、ロータ57の突起57cと検出ロータ47の突起47aがロータ57の基点位置に対応する位置に接近していく。そして、ステップ3では、駆動パルス信号が入力されると、弁体ホルダ32のストッパ37(ロータ57側ストッパ)とガイドブッシュ26のストッパ27(固定側ストッパ)が当接し、ロータ57の突起57cと検出ロータ47の突起47aが当接した状態でロータ57が基点位置で停止する。その後、ステップ2からステップ0では、駆動パルス信号が入力されても、ロータ57と検出ロータ47の回転が阻止されており、ロータ57は基点位置で停止し続ける(足踏)。
【0043】
次に、ステップ0からステップ7へ移行されて駆動パルス信号が入力されると、
図4の下側の図に示されるようにロータ57は反対の相(磁極)に引き寄せられて反転し、弁体ホルダ32のストッパ37(ロータ57側ストッパ)はガイドブッシュ26のストッパ27(固定側ストッパ)から離間する。一方、検出ロータ47は、ロータ57に対して相対的に回転自在となっており、上述のようにロータ57の突起57b、57c同士の回転方向の間隔R1は、その内側で検出ロータ47の棒状突起47aがロータ57の反転長さ(又は反転角度)以上回転できるように設定されている。そのため、ロータ57が反対の相に引き寄せられて反転しても、ロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達されず、検出ロータ47は、ロータ57の基点位置で停止し続ける。そして、一旦ロータ57の基点位置で停止した検出ロータ47は、ロータ57の当接・反転動作が繰り返し発生してもロータ57の基点位置で停止し続ける。この検出ロータ47で発生する磁気をホールIC45を用いて検出することによって、ロータ57が反転してもロータ57が所定の基点位置に到達したことを確実に検出する(ロータ57の基点位置出しを行う)ことができる。
【0044】
図5を参照して、特許文献1に開示されたような、内側に上下から一対の磁極歯が設けられたコイルが上下に2段重ねに設けられているステータを備えたステッピングモータ50を使用し、ロータ57等が一方向(例えば、
図1中、上方から視て右回り)へ回転する場合の、ステッピングモータ50の検出ロータ47とロータ57の駆動とホールIC45の出力信号を更に具体的に説明する。
【0045】
まず、ステータ55の駆動パルス信号に基づいてロータ57が一方向へ回転することによって、ロータ57の上面に設けられた突起57cと検出ロータ47の下面に設けられた突起47aが当接する(図中、丸1)。ロータ57の突起57cと検出ロータ47の突起47aが接触した状態で、ステータ55のN極とS極が順次入れ替わると、突起57c、47aを介してロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達され、マグネットからなるロータ57が回動し、検出ロータ47がロータ57と共に回転し、ホールIC45によって例えば0Vから5V、5Vから0V、0Vから5Vへ変化する矩形波形の出力信号が検出される(図中、丸1〜丸10)。
【0046】
次のステップでは、弁体ホルダ32のストッパ37(ロータ57側ストッパ)とガイドブッシュ26のストッパ27(固定側ストッパ)が当接し、ロータ57の突起57cと検出ロータ47の突起47aが当接した状態でロータ57と検出ロータ47の回転が阻止される(図中、丸11:
図4のステップ3に対応)。このように弁体ホルダ32のストッパ37(ロータ57側ストッパ)とガイドブッシュ26のストッパ27(固定側ストッパ)が当接した状態で、ステータ55のN極とS極が順次入れ替わっても、ロータ57と検出ロータ47は回転せず、ロータ57と検出ロータ47はロータ57の基点位置で停止し続け、ホールICによって例えば5Vの一定の電圧が検出される(図中、丸12〜丸14:
図4のステップ2〜ステップ0に対応)。
【0047】
次のステップでは、ロータ57のN極とS極がステータ55の反対の相(後続する磁極)のN極とS極に引き寄せられ、ロータ57が前記一方向と反対方向(他方向)へ4ステップ分の反転長さだけ反転する。ここで、検出ロータ47は、ロータ57に対して相対的に回転自在となっており、ロータ57の突起57b、57c同士の間隔R1は、ロータ57がその反転長さ(又は反転角度)以上空転できる程度の間隔となっている。そのため、ロータ57が反対の相に引き寄せられて前記反転長さ(又は反転角度)だけ反転しても、検出ロータ47の突起47aは、ロータ57の突起57b、57cと接触せず、検出ロータ47はロータ57の反転に追従して反転せず、ロータ57の基点位置で停止し続け、ホールICによって例えば5Vの一定の電圧が検出される(図中、丸15:
図4のステップ7に対応)。
【0048】
その後、ステータ55のN極とS極が入れ替わってロータ57が回転しても、検出ロータ47の突起47aはロータ57の突起57b、57c同士の間に配置されており、検出ロータ47はロータ57の基点位置で停止し続ける。その際、磁性体46により検出ロータ47の周囲に形成された磁場によって検出ロータ47の回動を抑制する付勢力が付与されており、ホールICによって例えば5Vの一定の電圧が検出される(図中、丸16:
図4のステップ6に対応)。このホールIC45の一定電圧を検知することにより、ロータ57が所定の基点位置に到達したことを確実に検出する(ロータ57の基点位置出しを行う)ことができる。
【0049】
なお、ロータ57が他方向(例えば、
図1中、上方から視て左回り)へ回転する場合には、あるステップ分だけ検出ロータ47は停止し続け、すなわち検出ロータ47は所定の駆動遊びをもって停止し続け、あるステップでロータ57の上面に設けられた突起57bと検出ロータ47の下面に設けられた突起47aが当接し、その後、突起57b、47aを介してロータ57から検出ロータ47へ駆動力が伝達され、検出ロータ47がロータ57と共に回転し、検出ロータ47の外側に設けられたホールICによって矩形波形の出力信号が検出される。
【0050】
このように、本実施の形態では、ロータ57の上面に設けられた2つの突起57b、57cと検出ロータ47の下面に設けられた棒状突起47aによってロータ57から検出ロータ47へ回転駆動力を伝達する回転駆動機構が構成され、この回転駆動機構が、ロータ57の回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊び、具体的にはロータ57の反転長さ又は反転角度以上の駆動遊びを有することによって、ロータ57が反転した際のロータ57から検出ロータ47への回転駆動力の伝達が駆動遊びの長さ又は角度だけ抑止されるため、弁体25が弁口22aを閉弁したことを確実に検出する(ロータ57の基点位置出しを精緻に行う)ことができ、電動弁の継続的な異音や振動の発生や電動弁の耐久性の低下を抑制でき、ステッピングモータ50のステータ55の不要な駆動を抑制することができる。
【0051】
なお、上記する実施の形態では、弁体25が弁口22aを閉弁した際に弁体ホルダ32のストッパ37がガイドブッシュ26のストッパ27に衝接し、弁口22aの閉弁位置で回転ストップ機構によってロータ57の回転が阻止される形態について説明したが、閉弁の際に若干の流体の漏れを許容するような構成としても良く、また例えば弁体25の全開位置(ロータ57の終点位置)等、適宜の位置にロータ57の回転を阻止する回転ストップ機構を設定することができ、ロータ57の所望の回転位置を検出することもできる。
【0052】
また、上記する実施の形態では、検出ロータ47が、ロータ57の回転軸56に形成された支持部56aに載置され、ロータ57の回転軸56に対して相対的に回転自在に配置される形態について説明したが、例えば検出ロータ47と回転軸56を一体とし、回転軸56を弁体25の上方縮径部25bに遊嵌させると共に、回転軸56の下部を弁体ホルダ32の上部に載置し、検出ロータ47と回転軸56とが一体としてロータ57と支持リング36と弁体ホルダ32に対して相対的に回転自在となっていてもよい。
【0053】
図6は、
図1に示す電動弁に適用されるステッピングモータの他の実施の形態の基本構成を模式的に示したものであり、
図7は、
図6のB−B矢視断面図である。
【0054】
図6および
図7に示す実施の形態のステッピングモータ50Aは、
図2および
図3に示すステッピングモータ50に対し、回転駆動機構と回転ストップ機構の構成が相違しており、その他の構成は
図2および
図3に示すステッピングモータ50とほぼ同様である。したがって、
図2および
図3に示すステッピングモータ50と同様の構成については、同様の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
図6に示すロータ57Aの上面には、このロータ57Aの回転方向に所定の長さ間隔(又は角度間隔)を有する凹部(駆動遊び凹部)57Adが形成され、ロータ57Aの上方に配置された検出ロータ47Aの下面には、先端がロータ57Aの凹部57Ad内に遊嵌される棒状突起47Aaが設けられている。ここで、凹部57Adは、ロータ57Aの上面の外縁よりも内側に形成されている。このように、棒状突起47Aaの先端がロータ57Aの凹部57Ad内に遊嵌されることによって、検出ロータ47Aが、ロータ57Aの回転方向の所定の長さ(又は角度)、すなわちロータ57Aの凹部57Adの側面57Abと側面57Acの長さ間隔(又は角度間隔)R2の内側(すなわちR2の範囲内)でロータ57Aに対して相対的に回転自在となっている(
図7参照)。この間隔R2は、前述の間隔R1と同様に、その内側で検出ロータ47Aの棒状突起47aAがロータ57Aの反転長さ(又は反転角度)以上回転できるように設定されている。
【0056】
検出ロータ47Aの棒状突起47Aaがロータ57Aの凹部57Adの側面57Acと当接した状態で、ロータ57Aが一方向(例えば、図中、上方から視て右回り)へ回転駆動されると、ロータ57Aから検出ロータ47Aへ駆動力が伝達され、検出ロータ47Aがロータ57Aに追従して強制的に前記一方向へ回転する。一方で、検出ロータ47Aの棒状突起47Aaがロータ57Aの凹部57Adの側面57Abと当接した状態で、ロータ57Aが他方向(例えば、図中、上方から視て左回り)へ回転駆動されると、検出ロータ47Aがロータ57Aに追従して強制的に前記他方向へ回転するようになっている。
【0057】
また、キャン58のロータ57Aの下方にはストッパ58Aaが固定され、ロータ57Aの下面にはストッパ57Aaが設けられ、ロータ57Aが一方向へ所定の回転数だけ回転した際に、ストッパ57Aaとストッパ58Aaが当接してロータ57Aの回転が阻止されるようになっている。すなわち、
図6および
図7に示す実施の形態では、ロータ57Aに設けられたストッパ57Aaとキャン58の内部に設けられたストッパ58Aaによってロータ57Aの回転を阻止する回転ストップ機構59Aが構成される。
【0058】
このように、
図6および
図7に示す実施の形態では、ロータ57Aの上面に設けられた凹部57Adと検出ロータ47Aの下面に設けられた棒状突起47Aaによってロータ57Aから検出ロータ47Aへ回転駆動力を伝達する回転駆動機構が構成され、この回転駆動機構が、ロータ57Aの回転方向に所定の長さ又は角度の駆動遊び、例えばロータ57Aの反転長さ又は反転角度以上の駆動遊びを有することによって、ロータ57Aが反転した際のロータ57Aから検出ロータ47Aへの回転駆動力の伝達が駆動遊びの長さ又は角度だけ抑止される。そのため、ロータ57Aが回転ストッパ機構59Aにより強制的に停止された後にステータ55に対する駆動電流の供給が継続されても、ロータ57Aが振動するだけで検出ロータ47Aは停止したままとなり、ロータ57Aがストッパに当接したことを正確に検知し、ロータ57Aの基点位置出しを精緻に行うことができ、例えば電動弁の継続的な異音や振動の発生や電動弁の耐久性の低下を抑制でき、ステッピングモータのステータの不要な駆動を抑制することができる。
【0059】
なお、上記する実施の形態では、ロータ57に回転方向で間隔を置いて配置される2つの突起57b、57cを設け、検出ロータ47にロータ57の2つの突起57b、57cの間に配置される突起47aを設ける形態や、ロータ57Aに回転方向で所定の長さ間隔(又は角度間隔)を有する凹部57Adを設け、検出ロータ47Aにロータ57Aの凹部57Adに遊嵌される突起47Aaを設ける形態について説明したが、例えば検出ロータ47に回転方向で間隔を置いて配置される複数の突起を設け、ロータ57に検出ロータ47の複数の突起の間に配置される突起を設けてもよいし、検出ロータ47Aに回転方向で所定の長さ間隔(又は角度間隔)を有する凹部を設け、ロータ57Aに検出ロータ47Aの凹部に遊嵌される突起を設けてもよい。また、ロータの突起や凹部等の位置や形状は、適宜変更することができる。
【0060】
また、上記する実施の形態では、ロータ57、57Aが反転した際に検出ロータ47、47Aが回動しないように、ロータ57の突起57b、57c同士の間隔R1やロータ57Aの凹部57Adの側面57Ab、57Ac同士の間隔R2をロータの反転長さ(又は反転角度)以上とする形態について説明したが、例えばロータ57の突起57b、57c同士の間隔R1やロータ57Aの凹部57Adの側面57Ab、57Ac同士の間隔R2がロータの反転長さ(又は反転角度)よりも小さい場合であっても、ロータ57、57Aが反転した際に検出ロータ47、47Aがロータ57、57Aに追従して回転しない範囲が存在する(すなわち駆動遊びが存在する)ため、通常の駆動波形と確実に識別することができ、ロータ57、57Aの基点位置出しを精緻に行うことができる。
【0061】
また、上記する実施の形態では、弁体ホルダ32に設けられたストッパ37とガイドブッシュ26に設けられたストッパ27や、ロータ57Aに設けられたストッパ57Aaとキャンに設けられたストッパ58Aaによってロータの回転を阻止する回転ストップ機構が構成される形態について説明したが、ステータの内側に配されたロータの回転を阻止できれば回転ストップ機構の構成は適宜変更することができる、
【0062】
また、上記する実施の形態では、磁性体46によりロータの周囲に形成された磁場によってロータの回動を抑制する形態について説明したが、例えば摩擦抵抗等の適宜の付勢力によってロータの回動を抑制してもよい。
【0063】
さらに、上記する実施の形態では、本発明に係るステッピングモータを電動弁に適用し、弁体が所定の位置に到達した際のロータの基点位置出しを行う形態について説明したが、本発明に係るステッピングモータは、ロータの所定の回転位置を検出する必要のある電動弁以外の他の装置にも適用することができる。