特許第6101515号(P6101515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101515易剥離性多層フィルムおよび易剥離性医療用包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101515
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】易剥離性多層フィルムおよび易剥離性医療用包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/06 20060101AFI20170313BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20170313BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20170313BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B32B7/06
   B32B5/24
   B65D65/40 D
   B65D77/20 H
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-36497(P2013-36497)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-162162(P2014-162162A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−004641(JP,U)
【文献】 特開平10−151151(JP,A)
【文献】 特開平04−359274(JP,A)
【文献】 特開昭54−043987(JP,A)
【文献】 特開平10−129720(JP,A)
【文献】 特開2012−116061(JP,A)
【文献】 特開2006−256144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 77/00−77/40
B65D 65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
135℃以下でポリエチレン製不織布とヒートシール可能であり、かつ剥離時に当該不織布との界面剥離性を有するイージーピール層を表面層に有し、
前記イージーピール層が、融点70℃〜100℃であり、かつJIS K 7210に準じて、190℃、21.18N荷重の条件で測定したメルトフローレイト(MFR)が0.1g/10分〜10g/10分の範囲内にあり、エチレン−α−オレフィン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂より構成される
ことを特徴とする易剥離性多層フィルム。
【請求項2】
イージーピール層とポリエチレン製不織布との剥離強度が、25℃において、0.8〜5.0N/15mm幅の範囲である請求項に記載の易剥離性多層フィルム。
【請求項3】
中間層または表面最外層にナイロン系樹脂層を有し、該ナイロン系樹脂層と前記イージーピール層との間にエチレン−酢酸ビニル共重合体層またはポリエチレン層を有する請求項1または2に記載の易剥離性多層フィルム。
【請求項4】
イージーピール層の厚みが0.1〜30μmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性多層フィルム
【請求項5】
JIS K 7128に準じて測定した外部ヘーズが15%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の易剥離性多層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の共押出易剥離性多層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の易剥離性多層フィルムよりなる深絞り底材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の易剥離性多層フィルムの前記イージーピール層と、前記ポリエチレン製不織布とがヒートシールされてなることを特徴とする易剥離性医療用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、業務用のガーゼ、綿棒等の医療用包装に好適に使用できる易剥離性多層フィルムおよび易剥離性医療用包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、深絞り包装体および四方袋などに代表される医療用包装体中に収容された業務用ガーゼ、綿棒等が薬局、スーパー、コンビニエンスストア等で流通されている。特に深絞り包装体は、例えば図1に示すように、略中央部に凹部30を有する底材20と、高密度ポリエチレン製不織布または滅菌紙の蓋材10とをヒートシール等により接合して得られるものである。ガーゼ等40は、底材20の凹部30中に収容されている。
【0003】
従来、医療用包装体の底材として、ポリエステル系フィルムやナイロン系フィルムと、ヒートシール可能な樹脂フィルムとをラミネート(ラミネート法)させたラミネートフィルムが広く一般に使用されている(例えば、特許文献1)。対する蓋材としては、前述のとおりポリエチレン製不織布や滅菌紙が使用されている。これはエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌などの工程の際に滅菌ガスの通気性が必要なためである。
【0004】
また、医療用包装体はその使用環境、使用状況から易開封性を要求されるケースがしばしばある。易開封性付与のためには、ポリエチレン製不織布や滅菌紙のシール側に易剥離性のコート層を設けるたり、接着剤を塗布する場合(特許文献2、3)もあるが、製造コスト増に影響しやすくエンドユーザーにとっては真に喜ばしいことではない。また、イージーピール強度が大きいと、蓋材がポリエチレン製不織布や滅菌紙で形成されている場合、特に滅菌紙で形成されている場合には、紙繊維の凝集力がポリエチレン製不織布や一般のプラスチック製蓋材と比較して弱いため、開封時に蓋材が破れて内容物が取り出しにくくなってしまったり、紙粉の発生により衛生度が低下してしまったりするという問題がある。
【0005】
かかる問題点の大きさより、医療用包装体の特性上、衛生性が重視されるという観点からはしばしばポリエチレン製不織布が選定されてきたが、ポリエチレン製不織布は一般的に滅菌紙より高価であり、前述の易開封性付与の加工がなされるとさらに高価な包装材料となりがちである。したがって、易剥離性機能はポリエチレン製不織布とシールされるフィルム側へ付与されるのが望ましい。
【0006】
一方、上記問題を解決するために、ポリエチレン製不織布や滅菌紙と良好なイージーピール性を有する深絞り包装用共押出多層フィルムが検討されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、前記フィルムのイージーピール層は、内面にむき出しの凝集破壊層であるため、表面に微細な凹凸が形成され、外部ヘーズに劣るという欠点もある。含気包装することの多い当該包装体において、外観上、安全衛生上の観点から内容物の視認性は要望されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−115119号公報
【特許文献2】特開2007−302292号公報
【特許文献3】実用新案第2601192号公報
【特許文献4】特開2006−256144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、135℃以下の温度でポリエチレン製不織布とヒートシール可能で、かつ良好なイージーピール性を有し、かつ透明性に優れた多層フィルムおよび易剥離性医療用包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用すれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、135℃以下でポリエチレン製不織布とヒートシール可能であり、かつ剥離時に当該不織布との界面剥離性を有するイージーピール層を表面層に有し、前記イージーピール層が、融点70℃〜100℃であり、かつJIS K 7210に準じて、190℃、21.18N荷重の条件で測定したメルトフローレイト(MFR)が0.1g/10分〜10g/10分の範囲内にあり、エチレン−α−オレフィン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂より構成される易剥離性多層フィルム、深絞り底材、ならびに易剥離性医療用包装体に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルムは、135℃以下の温度でポリエチレン製不織布とヒートシール可能で、かつ界面剥離性を有するEP層を少なくとも有する。この構成により、本発明であれば、包装体を形成した場合、開封時に不織布を破ることなく底材と蓋材とを開封可能なイージーピール性が付与でき、かつ視認性の高い深絞り包装体を得ることができる。また、本発明の包装体は、本発明のフィルムを含むため、不織布に対して所望のイージーピール性を有する、例えば、医療用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】接合前の包装体を示す概略説明図である。
図2】蓋材と底材の接合後の包装体を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「界面剥離性を有する」とは、深絞り包装体を開封する際に、イージーピール層(以下、EP層と略記することがある)と、ポリエチレン製不織布との間で所望の強度で剥離することをいう。また、「ポリエチレン製不織布とヒートシール可能」とは、所定の温度でヒートシールした場合、本発明のフィルムとポリエチレン製不織布とを所望のイージーピール強度でシールできることをいう。
【0015】
本発明において、前記EP層は、主成分がエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂組成物で構成されることが好ましい。
【0016】
本発明のフィルムは、最内層として135℃以下の温度でポリエチレン製不織布とヒートシール可能なEP層を有することが重要である。すなわち、EP層において135℃以下、好ましくは130℃以下、さらに好ましくは125℃以下であり、かつ100℃以上、好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上のシール温度でポリエチレン製不織布とヒートシール可能な樹脂を用いることが重要である。かかる樹脂でEP層を構成することにより、例えば、深絞り包装機を用いてヒートシールする際にポリエチレン製不織布が溶融し、不織布側のシール部分が透明になって見栄えが悪くなることを防止することができる。
【0017】
EP層を構成する樹脂は、前記シール温度範囲内でポリエチレン製不織布とヒートシール可能であり、かつポリエチレン製不織布との界面剥離性を有する。EP層は、以下に説明する樹脂より構成することができる。
【0018】
EP層は、融点が通常120℃以下であり、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは75〜85℃であり、JIS K 7210に准ずる190℃、21.18N荷重の条件で測定したメルトフローレイト(MFR)が通常0.1g/10分〜10g/分、好ましくは1g/10分〜10g/10分、より好ましくは2g/10分〜5g/10分の範囲内にあり、エチレン−α−オレフィン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂組成物により構成されることが好ましい。
【0019】
EP層を前記融点範囲内、かつMFR範囲内より選定することで、包装機上での前述シール温度範囲におけるシール時にポリエチレン製不織布界面への溶着度合い、含浸度合いが適度にコントロールされ、前述シール温度範囲内での安定、かつ適切なイージーピール強度を発現し、フィルム製造時の巻取り、および包装機での成型、搬送の際、ブロッキング等の不具合を起こしにくく生産効率、ハンドリング性が向上する。
【0020】
また、EP層厚みは、製膜性および剥離外観性の観点から通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲とする。EP層の厚みを0.1μm以上とすることにより、安定した製膜性が得られる。一方、EP層の厚みを30μm以下にすることにより、より安定なイージーピール強度が得られ、剥離時のケバ立ちを抑制することができ、良好な剥離外観が得られる。
【0021】
EP層と不織布との界面剥離イージーピール強度は、易開封性およびシール性のバランスの点から、25℃で、通常0.8N/15mm幅以上、好ましくは1.0N/15mm幅以上であり、5N/15mm幅以下、好ましくは3.0N/15mm幅以下である。イージーピール強度は、本発明のフィルムで医療用包装体のシール部分を15mm幅の短冊状に切断し、引張試験機を用いて200mm/minの速度で蓋材と底材を剥離したときの最大荷重から求めることができる。
【0022】
本発明のフィルムは、JIS K 7128に准ずる外部ヘーズ測定結果が、15%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0023】
本発明の包装体は、深絞り包装体用底材として上記本発明の底材を使用し、かつ深絞り包装体用蓋材として高密度ポリエチレン製不織布を使用する深絞り包装体であることが好ましい。
【0024】
本発明の多層フィルムは、EP層の他に、耐ピンホールや光沢、剛性確保などを目的に、以下の樹脂を用いることができる。樹脂は一例であり、種々目的達成のために組み合わせても良いし、特に限定されることはない。
【0025】
本発明の多層フィルム構成例として、前記EP層側の面とは反対側に、少なくとも1層以上のナイロン系樹脂層(以下「PA層」ともいう。)、ポリプロピレン樹脂層(以下「PP層」ともいう。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体層(以下「EVA層」ともいう)またはポリエチレン樹脂層(以下「PE層」ともいう)、接着樹脂層などを有する構成が挙げられる。
【0026】
耐ピンホール性の観点からはナイロン系樹脂(PA)を用いることが好ましい。多層の中間層に配される場合もあれば、光沢性も付与するために表面最外層に配する場合もある。Nyとしては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の縮合単位の重合体またはこれら2種以上との共重合体、さらにはこれらの混合物を挙げることができる。中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが好ましい。
【0027】
フィルムの硬さ、コシという点では、ポリプロピレン系樹脂(PP)も好適に使用される。表面最外層や中間層いずれにも使用することができる。
【0028】
柔軟性という観点では、エチレン−酢酸ビニル共重合体層(EVA層)またはポリエチレン層(PE層)などが好適に使用される。フィルムの耐熱性も合わせて考慮すると、表面最外層というよりは中間層へ配す方が好ましいが、多層の構成に関しては特に限定されるものではない。
【0029】
EVA層を配す場合に使用されるEVAの酢酸ビニル含有率も特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から1モル%以上、好ましくは1.5モル%以上であり、かつ20モル%以下、好ましくは15モル%以下であることが望ましい。
【0030】
PE層を配設する場合にも、PE層で使用されるPEは特に限定されるものではなく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)またはLDPEとHDPEの混合物を使用することができる。LDPEとHDPEの混合物における混合比は所望の柔軟性を付与する目的で適宜決定することができ、例えば、LDPEとHDPEの混合比を質量比で40〜80:60〜20、好ましくは50〜80:50〜20、さらに好ましくは60〜80:40〜20とすることができる。
【0031】
LDPEまたはLLDPEは、密度が0.90以上のものが好ましく、HDPEは、密度0.94以上のものが好適に使用される。密度の高いものを使用することにより、PE層に柔軟性を維持しつつ、適度の硬さを付与することができる。
【0032】
本発明のフィルムは、上記中間層や外層において、各層を接着するために接着樹脂層を配設することもできる。接着樹脂層で使用される接着樹脂は、PA層、PE層、PP層を必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また接着樹脂として、前記不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができ、さらに誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等のほか、酢酸ビニルを用いることができる。市販の接着樹脂としては、例えば、三井化学(株)製、商品名アドマーが挙げられ、これらを好適に使用することができる。
【0033】
接着樹脂層は、層間接着強度をより高める観点からは上記PA層と上記EP層との間、および/または上記PA層とPP層の間に少なくとも1層以上設けることが好ましい。具体的には、PA層とEP層の間、PA層とPE層の間、PA層とEVA層の間、PA層とPP層の間のいずれかに1層以上設けることが好ましい。
【0034】
接着樹脂層の厚みは、各層を必要な接着強度で接合できれば特に限定されないが、通常2μm以上、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが望ましい。
【0035】
本発明のフィルムの層構成は、最外層としてPA層、最内層としてシール層、シール層に隣接したEP層を配すれば、その他の層の層構成は特に制限されない。例えば、PA層(A)、PE層(B)、EVA層(C)、PP層(D)、EP層(E)、および接着樹脂層(F)で表した場合、以下の層構成を形成することができる。中でも好ましい層構成は、下記(1)、(3)、(5)または(8)であり、最も好ましい層構成は(1)または(8)である。
【0036】
(1)A/F/B/E
(2)A/F/B/C/E
(3)D/F/A/F/B/E
(4)D/F/A/F/C/E
(5)A/F/A/F/B/E
(6)A/F/A/F/C/E
(7)B/F/A/F/C/E
(8)B/F/A/F/B/E
(9)D/F/A/F/A/F/B/E
(10)D/F/A/F/A/F/C/E
【0037】
本発明のフィルムは、EP層と、PA層やPE層、EVA層などの中間に形成される中間層と、PA層やPP層などのEP層側の面とは反対側の面上に形成される外層とを同時または逐次的に積層して作製することができる。
【0038】
本発明のフィルムは、Tダイ法、チューブラ法など既存の方法により、ダイを備えた押出機を用いて共押出しすることにより、ポリアミド樹脂層、イージーピール層、シール層、中間層および外層を同時に作製することができる。また、前記積層フィルムは、各層を構成する樹脂を別々にシート化した後にプレス法やロールニップ法、ドライラミネート法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。
【0039】
また、各基材層には各々の特性を損なわない範囲で、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、または顔料等、各種添加剤が配合されていてもよい。
【0040】
本発明の多層フィルムのEP層とヒートシールされるポリエチレン製不織布を構成するPEは、EP層とヒートシール可能であり、かつ不織布を形成した場合に、通気性と容器内への菌類の侵入を防止する特性(防菌性)を発揮できるものであれば、特に限定されない。そのようなPEとしては、HDPE、LDPE、LLDPEなど各種のPEを使用できるが、中でもヒートシール性に優れたHDPEを使用することが好ましい。ポリエチレン製不織布は、深絞り包装容器を形成した場合に、通気性と防菌性を発揮し得る程度の小孔を有することが好ましく、例えば、0.00001dtex以上20dtex未満の範囲内の繊維で構成され、目付が10g/m以上500g/m未満である不織布であることが望ましい。
【0041】
本発明のフィルムは、深絞り成形後、ガーゼ等の内容物を充填し、その上に蓋材フィル
ムを被せてヒートシールすることにより深絞り包装体として用いることができる。特に本
発明のフィルムを深絞り包装体の底材として用いる場合、良好な深絞り包装体を得ること
ができる。深絞り包装体用底材として用いる場合、例えば、本発明のフィルムを深絞り成
形型で所望の形状および大きさに成形した後(フィルム供給工程およびフィルム成形工程
)、その中にガーゼ等の内容物を充填し(内容物充填工程)、さらにその上から蓋
材フィルムでシールして(蓋材フィルム供給工程およびシール工程)、真空包装し(真空
包装工程)、冷却し(冷却工程)、カットすることにより(切断工程)、深絞り包装体を
作製することができる。
【0042】
本発明の深絞り包装体の蓋材は、包装体ごとエチレンオキサイドガス(EOG)で殺菌される場合は通気性のあるものが望ましい。そのような観点から、本発明の深絞り包装体の蓋材としてポリエチレン(特にHDPE)製の不織布が好適に用いられる。
【0043】
本発明の包装体は、上記の蓋材と、本発明の底材とを、ヒートシール等の接着手段により接着することにより作製することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
実施例1:
下記層構成のフィルムを得て、実施例1とした。
Ny(20μm)/接着樹脂(15μm)/LLDPE1(50μm)/EP1(3μm)
Ny:三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバミッド(6Ny)
接着樹脂:三井化学製アドマー
LLDPE1:出光石油化学製モアテック
EP1:日本ポリエチレン製レクスパールEMA(融点:77℃、MFR:2.6)
【0046】
実施例2:
下記層構成のフィルムを得て、実施例2とした。
PE(15μm)/接着樹脂(10μm)/Ny(20μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP2(30μm)
接着樹脂:三井化学製アドマー
Ny:三菱エンジニアリングプラスチックス製ノバミッド(66Ny比率15%の6−66共重合Ny)
EP2:日本ポリエチレン製ノバテックEVA(融点:89℃、MFR:2.0)
【0047】
比較例1:
下記層構成のフィルムを得て、比較例1とした。
Ny(40μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP3(5μm)
EP3:融点80℃のEVA(60%)とポリブテン(40%)のブレンド
【0048】
比較例2:
下記層構成のフィルムを得て、比較例2とした。
PP(20μm)/接着樹脂(10μm)/Ny(30μm)/接着樹脂(10μm)/EVA1(20μm)/EP4(10μm)
EP4:融点125℃のLLDPE
【0049】
実施例3
下記層構成のフィルムを得て、実施例3とした。
PP(50μm)/接着樹脂(10μm)LLDPE1(30μm)/EP1(50μm)
【0050】
比較例
下記層構成のフィルムを得て、比較例とした。
Ny(40μm)/接着樹脂(10μm)/LLDPE1(40μm)/EP5(15μm)
EP5:融点:95℃、MFR:20.0のLLDPE
【0051】
[パックサンプルの作製]
深絞り包装機(大森機械工業社製FV6300)によって、縦160mm、横120mm、絞り深さ50mmの形状に深絞り成型し、ガーゼ50gを入れて蓋材を被せて枠シールした。なお、蓋材は高密度ポリエチレンの不織布を使用した。
【0052】
[評価方法]
<最低ヒートシール温度>
深絞り包装機において、シール時間2秒で、ヒートシールが十分に行われる温度を最低ヒートシール温度とした。
<イージーピール強度>
パック品のシール部をフィルム流れ方向に対して15mm幅の短冊状に切断し、引張試験機で200mm/minの速度で蓋材と底材を剥離したときの最大荷重をイージーピール強度とした。
<剥離性>
パック品を手で剥離したときに蓋材が破れないものを○、破れるものを×とした。
<外観性>
ヒートシール部の高密度ポリエチレンの不織布がヒートシールの際に溶融せずに白色のままであるものを○、溶融して透明に変色しているものを×とした。
<ヘーズ>
成型前のフラット状態のフィルムにおいて、JIS K 7128に准ずる外部ヘーズ測定を実施した。
<ケバ立ち>
パック品を手で剥離したときに剥離面よりケバ立ちの発生しなかったものを○、発生したものを×とした。
【0053】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の易剥離性多層フィルムおよび易剥離性医療用包装体は、例えば、業務用のガーゼ、綿棒等の医療用包装に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 蓋材
20 底材
30 凹部
40 ガーゼ等の内容物
50 ヒートシール部
図1
図2