(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(D)ポリオレフィン樹脂0.5〜5質量部を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
(D)ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−α−オレフィン共重合体;アクリル酸エステル単位の含有量が5〜30重量%であるエチレンアクリル酸エステル共重合体;ポリオレフィン(d1)のブロックと親水性ポリマー(d2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合及びイミド結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を介して、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー;並びにこれらの変性物からなる群より選ばれる一種以上である、請求項4に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
≪ポリアセタール樹脂組成物≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物1〜5質量部、及び(C)着色剤0.01〜5質量部を含む樹脂組成物である。
【0013】
<(A)ポリアセタール樹脂>
ここで、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において使用することができる(A)ポリアセタール樹脂について、詳細に説明する。
【0014】
使用可能な(A)ポリアセタール樹脂としてはポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。
【0015】
具体的には、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみから成るポリアセタールホモポリマーや、ホルムアルデヒド単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソランや1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコールやジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル若しくは環状ホルマールとを、共重合させて得られるポリアセタールコポリマーが挙げられる。
【0016】
また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルとを、共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
【0017】
さらに、両末端又は片末端に水酸基などの官能基を有する化合物で構成されるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマー(両者をあわせて以下「ブロックポリマー」とも記す。)を用いることができる。
【0018】
上述したブロックポリマー中のブロック成分としては、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるブロック成分が好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【0019】
式(1)及び(2)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示し、複数のR1、R
2、及びR
3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは2〜6の整数を示し、2〜5の整数が好ましい。nは1〜1000の整数を示し、10〜250の整数が好ましい。上記一般式(1)で表される基は、アルコールのアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基であり、上記一般式(2)で表される基は、カルボン酸のアルキレンオキシド付加物から水素原子を脱離した残基である。前記ブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーは、例えば、特開昭57−31918号公報に記載の方法で調製できる。
【0020】
式(3)中、R
4は、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群より選ばれる1種の化学種を示し、複数のR
4はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、pは2〜6の整数を示し、2つのpは各々同一であっても異なっていてもよい。q、rはそれぞれ正の数を示し、qとrとの合計100モル%に対してqは2〜98モル%、rは2〜98モル%であり、−(CH(CH
2CH
3)CH
2)−単位及び−(CH
2CH
2CH
2CH
2)−単位はそれぞれランダム又はブロックで存在する。
【0021】
上述の式(1)、式(2)又は式(3)で表されるブロック成分は、ヨウ素価20g−I
2/100g以下の不飽和結合を有してもよい。不飽和結合としては、特に限定されないが、例えば炭素−炭素二重結合が挙げられる。
【0022】
前記ブロック成分を有するポリアセタールコポリマーは、例えば、国際公開第01/09213号に開示されたポリオキシメチレンブロック共重合体が挙げられ、その公報に記載の方法により調製できる。
【0023】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれる(A)ポリアセタール樹脂としては、上述のブロック成分を有するポリアセタールホモポリマー及び上述のブロック成分を有するポリアセタールコポリマーのいずれも用いられる。もちろんこれらを併用することもできる。また、(A)ポリアセタール樹脂は、例えば、分子量の異なるポリアセタール樹脂や、コモノマー量の異なるポリアセタールコポリマー等を2種以上併用してもよい。
【0024】
ブロックポリマー中のブロック成分挿入量は、ブロックポリマーを100%としたとき、少なくとも15%であることが好ましく、より好ましくは13%以上、さらに好ましくは10%以上である。ブロックポリマー中のブロック成分挿入量の上限は、特に限定されないが、例えば、30%以下である。
【0025】
ブロックポリマー中のブロック成分の分子量は、10000以下であることが好ましく、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは5000以下である。
【0026】
ブロックポリマー中のブロック成分を形成する化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、C
18H
37O(CH
2CH
2O)
40C
18H
37、C
11H
23CO
2(CH
2CH
2O)
30H、C
18H
37O(CH
2CH
2O)
70H、C
18H
37O(CH
2CH
2O)
40Hや、水素添加ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0027】
ポリアセタール樹脂(A)は、ブロックポリマーを含むことが好ましい。ブロックポリマーを含むポリアセタール樹脂(A)を用いることにより、ポリアセタール樹脂の非晶部分にブロック成分が多く存在する傾向にある。
【0028】
ポリアセタール樹脂(A)の中におけるブロックポリマーの比率は、(A)ポリアセタール樹脂を100質量%としたとき、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。当該ブロックポリマーの比率の上限は、特に限定されないが、例えば、99質量%以下である。
【0029】
当該ブロックポリマーの比率が前記範囲内であると、脂肪族系化合物(B)の分散性の観点で好ましい。
【0030】
なお、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物において、当該ブロックポリマーの比率は、
1H−NMRや
13C−NMR等により測定することができる。
【0031】
上述したように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれる(A)ポリアセタール樹脂としては、上述のポリアセタールホモポリマー及び上述のポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。もちろんこれらを併用することもできる。また、(A)ポリアセタール樹脂は、例えば、分子量の異なるポリアセタール樹脂や、コモノマー量の異なるポリアセタールコポリマー等を2種以上併用してもよい。
【0032】
<(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物>
次に本実施形態において用いることのできる(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物について詳細に説明する。(B)脂肪族系化合物の分子量が1万以下であると、ポリアセタール樹脂組成物は、着色剤を配合した場合であっても微小荷重摺動時における摩耗性能を十分に発揮することができる。(B)脂肪族系化合物の分子量のより好ましい上限は9500、さらに好ましい上限は9000である。(B)脂肪族系化合物の分子量の下限としては、例えば、50である。
【0033】
なお、本実施形態において、(B)脂肪族系化合物がポリマーの場合、(B)脂肪族系化合物の分子量は、重量平均分子量とする。また、(B)脂肪族系化合物の分子量は、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)や液体クロマトグラフ/質量分析(LC/MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型質量分析(MALDI−TOFMS)といった質量分析装置を用いることで知ることができる。これらは当業者であれば容易に測定することができる。
【0034】
本実施形態に用いる脂肪族系化合物(B)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4)、(5)、(6)で表わされる構造を有する脂肪族系化合物が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【0035】
ここで、式(4)、(5)、(6)中、R
11、R
12及びR
13は、各々独立して、炭素数1〜30のアルカンの残基、炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基の少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換若しくは非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基である。また、これらの基は、アルケン、アルキン、シクロ環を含む基でもよい。
【0036】
また、式(4)中、A
1及びA
2は、各々独立して、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、チオアミド結合、イミド結合、ウレイド結合、イミン結合、尿素結合、ケトキシム結合、アゾ結合、エーテル結合、チオエーテル結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、又はトリスルフィド結合である。
【0037】
また、式(5)、(6)中、A
3、A
4及びA
5は、各々独立して、ヒドロキシル基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アセチル基、アミノ基、スルホ基、アミジン基、アジ基、シアノ基、チオール基、スルフェン酸基、イソシアニド基、ケテン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ニトロ基、又はチオール基である。
【0038】
本実施形態の効果である微小荷重摺動時の摩耗特性の観点から、(B)脂肪族系化合物における上記一般式(4)、(5)、(6)で表わされる構造を以下の範囲内とすることが好ましい。
【0039】
R
11、R
12、R
13における炭素数は、好ましくは2〜30であり、より好ましくは3〜30であり、さらに好ましくは4〜30である。
【0040】
式(4)中、xは1〜100の整数を示し、1〜10の整数が好ましい。yは1〜1000の整数を示し、1〜20の整数が好ましい。
【0041】
式(4)中、好ましいA
1及びA
2は、各々独立して、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレイド結合、イミン結合、尿素結合、ケトキシム結合、エーテル結合、ウレタン結合であり、より好ましいA
1及びA
2は、各々独立して、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレイド結合、イミン結合、尿素結合、ケトキシム結合、エーテル結合、ウレタン結合である。
【0042】
式(5)、(6)中、好ましいA
3、A
4及びA
5は、各々独立して、ヒドロキシル基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アセチル基、アミノ基、アジ基、シアノ基、チオール基、イソシアニド基、ケテン基、イソシアネート基、チオイソシアネート基であり、より好ましいA
3、A
4及びA
5は、各々独立して、ヒドロキシル基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アセチル基、アミノ基、シアノ基、イソシアニド基、ケテン基、イソシアネート基である。
【0043】
(B)脂肪族系化合物の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミド、アルコール、脂肪酸、アルコールと脂肪酸とのエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、及び平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0044】
アミドとしては、1級アミド、2級アミド、3級アミドのいずれでもよい。
【0045】
1級アミドの例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アセトアミド、エタンアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、ペンタンアミド、ヘキサンアミド、ヘプタンアミド、オクタンアミド、ノナンアミド、デカンアミド、ウンデカンアミド、ラウリルアミド、ラウリルアミド、トリデシルアミド、ミリスチルアミド、ペンタデシルアミド、セチルアミド、ヘプタデシルアミド、ステアリルアミド、オレイルアミド、ノナデシルアミド、エイコシルアミド、セリルアミド、ベヘニルアミド、メリシルアミド、ヘキシルデシルアミド、オクチルドデシルアミド、ベンズアミドオレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
【0046】
2級アミドの例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−メチルベンズアミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスラウリル酸アミドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
【0047】
3級アミドの例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの飽和又は不飽和アミドが挙げられる。
【0048】
これらの中でも、摺動性の効率の観点から、炭素数10以上のアミドが好ましい。より好ましくは、炭素数11以上のアミドであり、さらに好ましくは炭素数13以上のアミドである。特に好ましいのはこれらの中でも飽和脂肪族アミドである。
【0049】
上記アミドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
アルコールとしては、1価アルコール、多価アルコールのいずれでもよい。
【0051】
1価アルコールの例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコールなどの飽和又は不飽和アルコールが挙げられる。
【0052】
多価アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトールが挙げられる。
【0053】
これらの中でも、摺動性の効率の観点から、炭素数11以上のアルコールが好ましい。より好ましくは炭素数12以上のアルコールであり、さらに好ましくは炭素数13以上のアルコールである。特に好ましいのはこれらの中でも飽和アルコールである。
【0054】
上記アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、摺動性の効率の観点から、炭素数10以上の脂肪酸が好ましい。より好ましくは炭素数11以上の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数12以上の脂肪酸である。特に好ましいのはこれらの中でも飽和脂肪酸である。
【0057】
上記脂肪酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、かかる成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸又はこれらの混合物等でもよい。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよく、合成脂肪族アルコールであるユニリンアルコールの末端をカルボキシル変性した合成脂肪酸でもよい。
【0059】
アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記に示すアルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。
【0060】
アルコールとしては、1価アルコール、多価アルコールのいずれでもよい。1価アルコールの例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和又は不飽和アルコールが挙げられる。
【0061】
多価アルコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールが挙げられる。このような多価アルコールの具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0062】
脂肪酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ナノデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸が挙げられる。また、かかる成分を含有してなる天然に存在する脂肪酸又はこれらの混合物等でもよい。これらの脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよい。また、合成脂肪族アルコールであるユニリンアルコールの末端をカルボキシル変性した合成脂肪酸でもよい。上記したアルコール、脂肪酸、及びアルコールと脂肪酸とのエステルの中では、炭素数12以上の脂肪酸とアルコールとのエステルが好ましく、炭素数12以上の脂肪酸と炭素数10以上のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数12〜 30の脂肪酸と炭素数10〜30のアルコールとのエステルがさらに好ましい。
【0063】
上記アルコールと脂肪酸とのエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
アルコールとジカルボン酸とのエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、メリシルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、デシルミリスチルアルコール、デシルステアリルアルコール、ユニリンアルコール等の飽和又は不飽和の一級アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸等のジカルボン酸とのモノエステル、ジエステル及びこれらの混合物が挙げられる。これらのアルコールとジカルボン酸とのエステルの中では、炭素数10以上のアルコールとジカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0065】
上記アルコールとジカルボン酸とのエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、以下の3種類が挙げられる。第1のポリオキシアルキレングリコールは、アルキレングリコールをモノマーとする重縮合物である。このような重縮合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロックポリマー等が挙げられる。これらの重縮合物の重合度の好ましい範囲は5〜1000、より好ましい範囲は10〜500である。第2のポリオキシアルキレングリコールは、第1のポリオキシアルキレングリコールで挙げた重縮合物と脂肪族アルコールとのエーテル化合物である。このようなエーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールオレイルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールセチルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜50)、ポリエチレングリコールステアリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールラウリルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル(エチレンオキサイド重合度5〜30)、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度2〜100)、ポリエチレングリコールオキチルフェニルエーテル(エチレンオキサイド重合度4〜50)等が挙げられる。第3のポリオキシアルキレングリコールは、第1のポリオキシアルキレングリコールで挙げた重縮合物と高級脂肪酸とのエステル化合物である。このようなエステル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート(エチレンオキサイド重合度2〜30)、ポリエチレングリコールモノステアレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)、ポリエチレングリコールモノオレート(エチレンオキサイド重合度2〜50)等が挙げられる。
【0067】
上記ポリオキシアルキレングリコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュラックワックス、蜜ろう、鯨ろう、セラックろう、ウールろう、カルバナワックス、木ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、はぜろう、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、及びこれらの高密度重合型、低密度重合型、酸化型、酸変性型、特殊モノマー変性型が挙げられる。
【0069】
上記オレフィン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本実施形態に用いる(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物の含有量は、(A)ポリアセタール100質量部に対して、1〜5質量部である。(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物の含有量を1質量部以上とすることにより、ポリアセタール樹脂組成物は、着色剤を配合した場合であっても、微小荷重摺動時の摩耗特性を改善することができる。(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物の含有量の下限は、より好ましくは1.3質量部、さらに好ましくは1.5質量部である。一方、(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物の含有量を5質量部以下とすることにより、ポリアセタール樹脂組成物の剛性低下を抑制し、ギヤ等への適用性を維持することができる。(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物の含有量の上限は、好ましくは4.5質量部、より好ましくは4.3質量部、さらに好ましくは4.0質量部である。
【0071】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(B)脂肪族系化合物の含有量の範囲を上記のとおり厳密に制御することにより、着色剤を配合した際の微小荷重摺動時の摩耗特性を改善し、さらには高荷重摺動時において、摩耗特性に優れ、かつ音鳴きを抑制できるという効果を奏する。
【0072】
<(C)着色剤>
次に、本実施形態において用いることのできる(C)着色剤について詳細に説明する。
【0073】
着色剤(C)として、以下に限定されるものではないが、例えば、無機系顔料及び有機系染顔料等が挙げられる。
【0074】
無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されている無機系顔料が挙げられる。無機系顔料の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、バライト粉、亜鉛黄1種、亜鉛黄2種、フェロシアン化鉄カリカオリン、チタンイエロー、コバルトブルー、ウルトラマリン青、カドミウム、ニッケルチタン、リトポン、ストロンチウム、アンバー、シェンナ、アズライト、マラカイト、アズロマラカイト、オーピメント、リアルガー、辰砂、トルコ石、菱マンガン鉱、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、サンゴ粉、白色雲母、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、ライトレッド、クロムオキサイドグリーン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレッド、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、プルシアンブルー、オーレオリン、雲母チタン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ファーナスブラック、植物性黒、骨炭、炭酸カルシウム、紺青等が挙げられる。
【0075】
微小荷重摺動時における摩耗特性をより一層改善するためには、モース硬度が6以下の無機系顔料を用いることが好ましい。このような無機系顔料の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化亜鉛、チタンイエロー、コバルトブルー、炭酸塩などが挙げられる。
【0076】
なお、本実施形態において、モース硬度は、モース硬度計により測定することができる。
【0077】
有機系染顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合アゾ系、キノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の有機系染顔料が挙げられる。
【0078】
ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性の観点から、有機系染顔料としては、縮合アゾ系、キノン系、フロタシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料であることが好ましい。より好ましくは、縮合アゾ系、キノン系、フロタシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。さらに好ましくは、キノン系、フロタシアニン系、アンスラキノン系、複素環系、キナクリドン系、ベリレン系、又はフタロシアニン系の有機系染顔料である。
【0079】
(C)着色剤の含有量は(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲である。
【0080】
(C)着色剤の含有量を5質量部以下とすることにより、ポリアセタール樹脂組成物は、着色剤を配合した場合であっても、微小荷重摺動時の摩耗特性を改善することができる。(C)着色剤の含有量の上限は、より好ましくは4.5質量部、さらに好ましくは4.0質量部、特に好ましくは3.5質量部である。
【0081】
一方、(C)着色剤の含有量を0.01質量部以上とすることにより、ポリアセタール樹脂組成物は、十分な着色性を維持することができる。(C)着色剤の含有量の下限は、好ましくは0.03質量部、より好ましくは0.05質量部、さらに好ましくは0.1質量部である。
【0082】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(C)着色剤の含有量の範囲を上記のとおり厳密に制御することにより、微小荷重摺動時の摩耗特性を改善し、さらには高荷重摺動時において、摩耗特性に優れ、かつ音鳴きを抑制できるという効果を奏する。
【0083】
(C)着色剤は、粒子であることが好ましい。
【0084】
微小荷重摺動時における摩耗特性を改善する観点から、(C)着色剤の粒径は、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。(C)着色剤の粒径の測定方法としてはPITA−3といった粉体画像解析装置を用いる方法が挙げられる。これらは当業者であれば容易に測定することができる。粒径が上記範囲であり、微細な(C)着色剤の場合は、上記のモース硬度以上の無機系顔料であっても摩耗特性への悪影響が少ないため使用可能である。
【0085】
<(D)ポリオレフィン樹脂>
次に、本実施形態において用いることのできる(D)ポリオレフィン樹脂について詳細に説明する。
【0086】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(D)ポリオレフィン樹脂0.5〜5質量部を含むことが好ましい。
【0087】
(D)ポリオレフィン樹脂の含有量は、0.5〜4.5質量部であることがより好ましく、1.0〜4.0質量部であることがさらに好ましい。
【0088】
本実施形態に用いる(D)ポリオレフィン樹脂は、下記一般式(7)で表されるオレフィン系化合物のホモ重合体、下記一般式(7)で表されるオレフィン系化合物を主たるモノマーとする共重合体、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる一種以上のポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【化7】
【0089】
前記式(7)中、R
21は水素原子又はメチル基であり、R
22は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表す。
【0090】
他のモノマーとしては上述の一般式(7)で表されるオレフィン系化合物と重合可能なモノマーから適宜選択することが可能である。
【0091】
本実施形態に用いる(D)ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−α−オレフィン共重合体;アクリル酸エステル単位の含有量が5〜30重量%であるエチレンアクリル酸エステル共重合体;ポリオレフィン(d1)のブロックと親水性ポリマー(d2)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合及びイミド結合からなる群より選ばれる少なくとも一種の結合を介して、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマー;並びにこれらの変性物からなる群より選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0092】
ポリオレフィン(d1)の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等が挙げられる。また、親水性ポリマー(d2)の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ乳酸等が挙げられる。
【0093】
本実施形態において用いることのできる(D)ポリオレフィン樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0094】
(D)ポリオレフィン樹脂としては変性されたポリオレフィン樹脂(変性体)も問題なく使用可能である。当該変性体としては、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物を共重合したものが挙げられる。
【0095】
これら上述の(D)ポリオレフィン樹脂は単独であっても混合物であっても使用することができる。
【0096】
これらの中でも、(D)ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体が好ましい。
【0097】
本実施形態に用いる(D)ポリオレフィン樹脂は、190℃,2.16kg荷重条件下におけるメルトフローレイト(以下「MFR」とも記す。)が0.01〜50g/10分であることが好ましい。
【0098】
(D)ポリオレフィン樹脂のMFRをこの範囲内とすることにより、微小荷重条件下における摩擦・摩耗特性の悪化を抑制することができ、鳴き音発生をも抑制することができる。
【0099】
(D)ポリオレフィン樹脂のMFRの下限は、より好ましくは0.02g/10分であり、さらに好ましくは、0.05g/10分であり、特に好ましくは0.07g/10分である。
【0100】
また、(D)ポリオレフィン樹脂のMFRの上限は、より好ましくは40g/10分であり、さらに好ましくは30g/10分であり、特に好ましくは2.5g/10分である。
【0101】
また(D)ポリオレフィン樹脂の融点は、特に限定はないが、30〜230℃の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、50〜200℃の範囲であり、特に好ましくは90〜170℃である。
【0102】
<その他の成分>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含有することができる。安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤が挙げられる。これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0103】
前記酸化防止剤としては、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0104】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
【0105】
また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
【0106】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0107】
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
【0108】
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが挙げられ、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
【0109】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、具体的にはカルシウム塩が好ましく、当該カルシウム塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられる。これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
【0110】
上述した各種安定剤の好ましい組み合せは、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
【0111】
上述したそれぞれの安定剤の添加量は、ポリアセタール樹脂(A)100質量部に対して、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
【0112】
≪ポリアセタール樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述した(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して、(B)分子量1万以下の脂肪族系化合物1〜5質量部、及び(C)着色剤0.01〜5質量部を含む原料成分を溶融混練することにより製造できる。
【0113】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。当該混練機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が特に好ましい。
【0114】
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。
【0115】
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
【0116】
ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法のいずれかによって成形することができる。
【0117】
上述のポリアセタール樹脂組成物から得られる本実施形態の成形体の用途としては、寸法精度と高い耐久性が要求される用途が好適である。
【0118】
本実施形態の成形体の用途としては、以下に限定されるものではないが、例えば、一般的なポリアセタール樹脂の用途が挙げられる。このような用途の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。また、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;さらにシャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
また、微小荷重摺動時の摩耗特性が改善されることから、HDD内部部品(例えば、ランプ、ラッチ、等)や時計内部部品(ギヤ、テンプ、アンクル、ガンギ車)にも好適に使用できる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記のように高い荷重のかかる成形体にも微小な荷重のかかる成形体にも適用することができ、いずれの成形体でも優れた摺動特性を発揮することができる優れたポリアセタール樹脂組成物である。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0120】
実施例及び比較例のポリアセタール樹脂組成物及び成形体に対する評価項目を以下に示す。
【0121】
1)物性評価
[1]微小荷重時の摺動試験
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度120℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISO294−1に準拠した多目的試験片を得た。この試験片を80℃の雰囲気下で60分乾燥し、摺動試験測定サンプルとした。得られたサンプルについて、Nano tribometer2(CSM Instruments(株)製 TTX−NTR2 型)を用いて、23℃、湿度50%の環境下で、荷重100mN、摺動速度200mm/sec、往復距離200μm、往復回数50万回、の条件で、摺動試験を実施した。相手材料としては、SUJ2試験片(直径1.5mmの球)を用いた。
【0122】
[2]高荷重時の摺動試験
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度120℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、成形品を得た。この成形品を80℃の雰囲気下で60分乾燥し、摺動試験測定サンプルとした。得られたサンプルについて、往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT−15MS型)を用いて、荷重19.6N、線速度30mm/sec、往復距離20m m、往復回数5,000回、及び23℃、湿度50%で、摺動試験を実施した。相手材料としては、SUS304試験片(直径5mmの球)を用いた。
【0123】
[3]高荷重ギヤ摺動時の音鳴き
ファナック(株)製の射出成形機(商品名「ROBOSHOTα−50iA」)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度80℃の条件にて、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ピッチ円直径60mm、モジュール1、歯数60、ねじれ角0度、歯幅5mm、ウエッブの厚さ2mmの歯車を得た。この歯車を23℃、50RHの環境下で24時間放置した後、東芝製の歯車耐久試験機の従動側にセットし、テナックC−45201製の同形状のギアを駆動側にセットした。次に、ピッチ円上の回転速度を0.5m/s、トルクを4.5kgf・cmに設定して歯車耐久試験機を運転させ、23℃、湿度50%の条件下で2.5時間連続運転を行った。当該運転時の従動側及び駆動側のギアの音の大きさを高荷重摺動時の音鳴き特性として以下の基準により評価した。なお、当該評価は、初期(経過時間:0〜0.5時間)、中期(経過時間:1.0〜1.5時間)、後期(経過時間:2.0〜2.5時間)に分けて行なった。
A:極めて小さい
B:小さい
C:標準
D:大きい
E:極めて大きい
【0124】
[4]摩耗量
[1]及び[2]の摺動試験後のサンプルの摩耗量(摩耗断面積)を、OPTELICS H1200(レーザーテック社製)を用いて、測定した。摩耗断面積はn=3で測定した数値の平均値とし、有効数字2桁で四捨五入した。この値は、摩耗断面積であるので、数値が低い方が摩耗特性に優れると評価した。
【0125】
2)原料成分
実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分を以下に説明する。
【0126】
(A)ポリアセタール樹脂
・ポリアセタール樹脂(A−1)
ポリアセタール樹脂(A−1)を下記のようにして調製した。
まず、十分に脱水乾燥されたパラホルムアルデヒドを150℃で熱分解させ、冷却トラップに数回通すことにより、純度99.9%のホルムアルデヒドガスを得た。このホルムアルデヒドガスと、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加したC
18H
37O(CH
2CH
2O)
70H(ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物)及び触媒であるテトラブチルアンモニウムアセテートのトルエン溶液とを、それぞれ同時に3時間連続して重合機に供給し、重合体を製造した。この際の重合温度は60℃に維持した。なお、ホルムアルデヒドガスの供給量を1時間当たり110質量部として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを微量添加したC
18H
37O(CH
2CH
2O)
70H(ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物)及びテトラブチルアンモニウムアセテートのトルエン溶液の供給量を1時間当たり500質量部とした。また、トルエン中におけるテトラブチルアンモニウムアセテートの濃度は1.0×10
-4モル/L、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを添加したC
18H
37O(CH
2CH
2O)
70Hの濃度は5.0×10
-3モル/Lとした。得られた重合体を含むトルエン溶液を供給量に見合って連続的に抜き出し、重合体をろ過によりトルエン溶液から分離した。ろ過後の重合体をアセトンで十分洗浄した後60℃にて真空乾燥し、289質量部の白色の重合体を得た。こうして得られた重合体のうち50質量部を、無水酢酸500質量部及び酢酸カリウム0.1質量部と混合して139℃にて3時間加熱し、冷却した。その後、得られた混合物を、上述と同様にアセトンで重合体を十分に洗浄し、同様に乾燥して、ポリアセタールの線状重合体49質量部を回収した。回収した重合体100質量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)(チバガイギー社製、商品名「IRGANOX245」)0.5質量部、ポリ−β−アラニン0.5質量部を添加混合して、ベント付き単軸押出機で溶融混錬してすることにより、ポリアセタール重合体組成物を得た。得られたポリアセタール重合体組成物を、ポリアセタール樹脂(A−1)とした。ポリアセタール樹脂(A−1)は、曲げ弾性率が2550MPaであり、メルトフローレイトが22.0g/10分(ISO−1133 条件D)であった。
【0127】
なお、本実施例において、曲げ弾性率は、島津製作所製オートグラフAG−I(ISO 178)により測定した。
【0128】
・ポリアセタール樹脂(A−2)
ポリアセタール樹脂(A−2)を下記のようにして調製した。
熱媒を通すことのできるジャケット付きの2軸パドル型連続重合機を80℃に調整した。水及び蟻酸を合わせて4ppm含むトリオキサンを40モル/時間、同時に、環状ホルマールとして1,3−ジオキソランを2モル/時間、重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートを、トリオキサン1モルに対し5×10
-5モルとなる量、連鎖移動剤として下記式(8)で表される両末端ヒドロキシル基水素添加ポリブタジエン(数平均分子量Mn=2330)をトリオキサン1モルに対し1×10
-3モルになる量で、前記重合機に連続的に供給し重合を行った。
【化8】
次に、前記重合機から排出されたポリマーを、トリエチルアミン1%水溶液中に投入し、重合触媒の失活を完全に行った後、そのポリマーを濾過、洗浄して、粗ポリアセタール共重合体を得た。
濾過洗浄後の粗ポリアセタール共重合体1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物として、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を窒素の量に換算して20質量ppmになるよう添加し、それらを均一に混合した後、120℃で乾燥した。
このようにして得られたポリアセタールブロック共重合体を、ポリアセタール樹脂(A−2)とした。ポリアセタール樹脂(A−2)は、曲げ弾性率が2550MPaであり、メルトフローレートが10.0g/10分(ISO−1133 条件D)であった。
【0129】
・ポリアセタール樹脂(A−3)
ポリアセタール樹脂(A−3)を下記のようにして調製した。
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。前記重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1モルに対して0.25×10
-3モルを連続的に添加した。
さらに前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対して1.5×10
-5モルで連続的に添加し重合を行った。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
不安定末端部分の分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
このようにして得られたポリアセタール
コポリマーを、ポリアセタール樹脂(A−3)とした。
【0130】
(B)脂肪族系化合物
・脂肪族系化合物(B−1)
エチレンビスステアリン酸アミド:分子量593 北広ケミカル社製
【0131】
・脂肪族系化合物(B−2)
エチレングリコールジステアレート:分子量623 北広ケミカル社製
【0132】
・脂肪族系化合物(B−3)
ミリスチン酸セチル:分子量453 北広ケミカル社製
【0133】
・脂肪族系化合物(B−4)
ポリエチレングリコールジステアレート:重量平均分子量(Mw)12000 花王ケミカル株式会社製
【0134】
なお、本実施例において、(B)脂肪族系化合物の分子量は、分子量1000以下の場合は、液体クロマトグラフ/質量分析により測定し、分子量が1000を超える場合は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにより測定した。
【0135】
(C)着色剤
・着色剤(C−1)
酸化チタン(粒径:150nm、モース硬度:7.3)
【0136】
・着色剤(C−2)
酸化亜鉛(粒径:200nm、モース硬度:4.5)
【0137】
・着色剤(C−3)
酸化鉄(粒径:140nm、モース硬度:6)
【0138】
なお、本実施例において、(C)着色剤の粒径は、粉体画像解析装置(PITA−3)により測定した。また、(C)着色剤のモース硬度は、モース硬度計により測定した。
【0139】
(D)ポリオレフィン樹脂
・ポリオレフィン樹脂(D−1)
ポリエチレン(融点:125℃、メルトフローレート:0.1g/10分(ISO1133条件D)以下、密度:930kg/m
3)(旭化成ケミカルズ株式会社製 サンファイン SH810)
【0140】
・ポリオレフィン樹脂(D−2)
エチレンアクリル酸エステル共重合体(エチルアクリレート含有量:8重量%、融点:105℃、メルトフローレイト(JIS K6922−2条件):0.8g/10分)(日本ユニカー株式会社製 NUC−6510)
【0141】
・ポリオレフィン樹脂(D−3)
ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールブロックポリマー(ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール:99.9%、融点:59℃)(花王株式会社製 エマルゲン PP290)
【0142】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造〕
2軸押出機を用いてポリアセタール樹脂組成物を製造した。
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いた。シリンダー温度を200℃に設定し、ブレンド物を定量フィーダーより供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0143】
〔実施例1〜21〕
各成分を表1及び2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットを用いて、上述の方法により高荷重時の摺動試験、音鳴きの測定、微小荷重時の摺動試験、及び摩耗量の測定を行った。測定及び評価結果を表1及び2に示す。
【0144】
〔比較例1〜5〕
各成分を表1及び2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
得られたポリアセタール樹脂組成物ペレットを用いて、上述の方法により高荷重時の摺動特性試験、音鳴きの測定、微小荷重時の摺動試験、及び摩耗量の測定を行った。測定及び評価結果を表1及び2に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
実施例2のB成分の分子量を変えたものを比較例1とした。実施例2と比較例1との結果を対比すると、高荷重の摺動条件下では両者とも摩耗特性に優れるが、微小荷重の摺動条件下では摩耗特性が大きく異なり、分子量が1万以下のB成分用いた実施例2の方が、微小荷重の摺動条件下での摩耗特性がより一層改善されることが分かった。
【0147】
また、実施例2のB成分の添加量を変えたものを比較例2及び3とした。B成分の添加量が少ない比較例2は、高荷重の摺動条件下では摩耗特性に優れるが、微小荷重の摺動条件下では摩耗特性が悪化し、音鳴きが大きくなることが分かった。B成分の添加量を過剰に加えた比較例3は、高荷重の摺動条件下でも、微小荷重の摺動条件下でも摩耗特性が悪化することが分かった。一方、B成分の添加量を適正な範囲に制御した実施例2では、高荷重及び微小荷重の摺動条件下での摩耗特性がより一層改善され、さらに高荷重摺動時の音鳴きも抑制できることが分かった。そのため、B成分の添加量を、A成分100質量部に対して、特定の範囲(例えば、1〜5質量部)に制御することが効果的であることが分かった。
【0148】
【表2】
【0149】
実施例13及び14のB成分を除いたものを、順に比較例5及び4とした。実施例13及び14と、比較例5及び4との結果を対比すると、B成分の添加した実施例13及び14の方が、高荷重摺動時における摩耗特性及び音鳴き、微小荷重摺動時における摩耗特性に優れることが分かった。そのため、B成分の添加が効果的であることが分かった。
【0150】
表1及び表2に示すように、実施例1〜21においては、高荷重摺動時における摩耗特性及び音鳴き、微小荷重摺動時における摩耗特性に優れたポリアセタール樹脂組成物が得られた。