(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フレームを貫通し且つ強度が十分にあるタッピングビスは、ねじ山の間隔が広く、フレームに2山以上かからない場合がある。
このような場合には、別途、他の部材によって、圧着端子とフレームとの一体化強度や導通を補強する必要がある。
【0007】
そこで、このような場合の対応としては、
図12に示すように圧着端子201とフレーム202の間に歯付き座金と呼ばれるワッシャー(以下、歯付き座金203)を入れて、圧着端子201とフレーム202を接続した構造が取られている。
【0008】
すなわち、一般的な太陽電池モジュールのフレームは、さびの防止や感電防止等の観点から金属単体の表面に金属酸化物被膜207が被膜されているので、圧着端子201にビス205を挿通した後に歯付き座金203を取り付けて、歯付き座金203の歯206によって金属酸化物被膜207を削る。そして、当該金属酸化物被膜207が削れた部位において、歯付き座金203の歯206を金属単体208に直接接触させる。この金属単体208への歯206の接触により、圧着端子201とフレーム202の一体化強度の補強と導通の確保がされている。
しかしながら、この構造の場合、取り付ける際に、ビス205に圧着端子201を通した後に、歯付き座金203を通す必要がある。そのため、作業時に不意にビス205から歯付き座金203が外れるおそれがあった。また、この構造の場合、作業者から現場でビス205に歯付き座金203を挿入する工程が増え手間がかかるので、煩わしいという不満があった。
特に上記したメガソーラー用太陽光発電システムでは、膨大な数の太陽電池モジュールを接地する必要がある。そのため、歯付き座金203を取り付ける作業だけでも時間がかかる。それ故に、試作した構造では、作業性が著しく低下するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、導電体と端子部との導通を確実にとれる結線構造を提供することを課題とする。また、この結線構造を形成するための接続部材を提供することを課題とする。さらに、この結線構造を形成する接続工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、電気機器又はアースに電気的に接続される端子部と、面状の導電体と、前記端子部と導電体を電気的に接続する接続部材を備えた結線構造において、前記端子部は、開口を有しており、前記接続部材は、少なくとも軸部と、導電部を有し、前記軸部は、前記端子部の開口を挿通し、導電体又は他の部材と係合することで導電体と一体化されており、前記端子部と導電体が電気的に接続された第1導電経路を備えており、前記導電部は、突出部を有し、前記第1導電経路と別の導電経路であって、かつ、前記突出部が前記端子部の縁よりも面方向の外側で導電体と接触することによって形成された第2導電経路を備えていることを特徴とする結線構造である。
【0011】
ここでいう「電気機器」とは、電気を使用する機器であり、太陽電池モジュールや評価機器、パワーコンディショナーなどの上位概念である。
ここでいう「アース」とは、大地接地のことを指す。
ここでいう「開口」とは、必ずしも連続した壁部で囲まれているものに限らず、切り欠きなどの一部が開放したものも含む。
【0012】
本発明の構成によれば、前記軸部は、前記端子部の開口を挿通し、導電体又は他の部材と係合することで導電体と一体化されている。すなわち、端子部は、接続部材と導電体との間に位置しており、接続部材の軸部と導電体又は他の部材の係合力によって、端子部と導電体の一体化強度が保たれる。また同時に、端子部と導電体が電気的に接続されて第1導電経路が形成される。
本発明の構成によれば、導電部は、突出部を有し、前記第1導電経路と別の導電経路であって、かつ、前記突出部が前記端子部の縁よりも面方向の外側で導電体と接触することによって形成された第2導電経路を備えている。すなわち、本発明の構成によれば、端子部と導電体が直接的又は間接的に接続される第1導電経路と、端子部が接続部材を経由して導電体に導電する第2導電経路を備えている。そのため、端子部と導電体間の導電を確実に確保することができる。また、突出部と導電体の接触によって接続部材がずれにくく、一体化強度を向上させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記第1導電経路は、端子部と導電体が前記軸部を経由して電気的に接続された導電経路であることを特徴とする請求項1に記載の結線構造である。
【0014】
本発明の構成によれば、第1導電経路が軸部を経由して形成されるため、第1導電経路を形成するにあたって、新たに部材を設ける必要がない。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記導電体は、金属単体の表面に当該金属単体よりも導電率が低い薄膜層が被覆して形成されるものであり、前記突出部は、前記導電体の薄膜層を貫通して金属単体と直接接触されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の結線構造である。
【0016】
ここでいう「薄膜層」とは、容易に削ることができる程度の薄さの層をいい、具体的には、平均厚さが0nmより大きく125μm以下の厚みの層をいう。
【0017】
本発明の結線構造は、導電体が芯体たる金属単体が導電率の低い薄膜層によって保護されている。すなわち、導電体は、金属単体を薄膜層によって表面加工を施したものである。
また、本発明の構成によれば、突出部は、端子部の縁よりも面方向の外側で、導電体の薄膜層を貫通して金属単体と直接接触されて第2導電経路を形成しているので、第1導電経路の導電が第2導電経路によって補完され、十分に端子部と導電体との導電を確保することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記導電体は、薄膜層の一部が剥がされた剥離部を有しており、前記突出部は、当該剥離部を通過して金属単体に当接されていることを特徴とする請求項3に記載の結線構造である。
【0019】
本発明の構成によれば、薄膜層によって導電が阻害されず、導電体と端子部間の十分な導電を確保することができる。
本発明の構成によれば、突出部は、薄膜層の一部が剥がれた剥離部を通過して金属単体に直接当接しているため、突出部と金属単体とを十分に接触させることができる。
また、本発明の構成によれば、突出部は、金属単体と当接している。すなわち、金属単体に食い込んでいるため、押圧することで接続部材を介した導電体と端子部との一体化強度を補強することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記導電部は、前記突出部よりも軸部側の位置に第2突出部を有し、当該第2突出部は、端子部と直接接触されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の結線構造である。
【0021】
本発明の構成によれば、導電部は、突出部の軸部側(中心側)の位置に第2突出部が存在し、第2突出部は、端子部と直接接触される。すなわち、第2突出部が端子部と接触することによって、第2突出部と端子部が互いに電気的に導通可能となり、さらに突出部が導電体と接触することによって互いに電気的に導通可能となる。
そのため、端子部から第2突出部、突出部を経由して導電体に至る第2導電経路が形成され、十分に導電体と端子部間で確実に導通をとることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記導電部は、板状の本体部を有し、前記突出部は、本体部と連続し、本体部から導電体に向かって立ち上がって形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の結線構造である。
【0023】
本発明の構成によれば、突出部は、連続する本体部から立ち上がって形成されているため、例えば、一枚の板状体に切り目を入れて折り曲げることによって容易に突出部を形成することができる。そのため、突出部を形成しやすい。
【0024】
請求項7に記載の発明は、前記導電部は、板状の本体部と、第2突出部を有し、前記第2突出部は、本体部と連続し、本体部から端子部に向かって立ち上がって形成されており、前記第2突出部は、前記突出部よりも軸部側の位置で端子部と直接接触されており、さらに、第2突出部は、前記突出部よりも突出長さが短いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の結線構造である。
【0025】
本発明の構成によれば、突出部は、連続する本体部から立ち上がって形成されているため、例えば、一枚の板状体に切り目を入れて折り曲げることによって容易に第2突出部を形成することができる。
また、本発明の構成によれば、第2突出部は、突出部よりも軸部側(中心側)の位置で端子部と直接接触されており、さらに、突出部よりも突出長さが短い。すなわち、突出部の先端部位と第2突出部の先端部位は、高さが異なっているため、接続部材と導電体との間に端子部を容易に配することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、前記突出部の先端は、先細りして尖っていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の結線構造である。
【0027】
本発明の構成によれば、突出部を薄膜層に食い込ませてあるいは剥がして金属単体に接触させることができる。
【0028】
請求項1乃至8のいずれかに記載の結線構造において、前記導電部は、突出部を複数有し、突出部は、軸部を中心として周方向に間隔を空けて並んでいることが好ましい(請求項9)。
【0029】
ところで、請求項9に記載の発明によれば、2以上の突出部が端子部の縁よりも外側に位置しており、2以上の突出部が導電体と接触する。すなわち、端子部上に接続部材が被さる構成となっているため、端子部に接続される配線を外部に逃がす必要がある。
【0030】
そこで、請求項10に前記端子部は、電気機器と配線によって接続されており、当該配線は、周方向に隣接する突出部間の間隔を通過していることを特徴とする請求項9に記載の結線構造である。
【0031】
本発明の構成によれば、容易に端子部に接続された配線を接続部材の外部に取り出すことができる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、前記導電部は、前記突出部よりも軸部側の位置に第2突出部を複数有し、当該第2突出部は、端子部と直接接触されるものであり、第2突出部は、軸部を中心として周方向に間隔を空けて並んでいることを特徴とする請求項9又は10に記載の結線構造である。
【0033】
本発明の構成によれば、少なくとも2以上の第2突出部が軸部を中心として周方向に並んでいるため、第2突出部と端子部間で十分な接触面積を確保することができる。
【0034】
請求項12に記載の発明は、前記接続部材は、前記軸部を備えたビス部材と、前記導電部を備えた座金部材から形成されており、ビス部材は、座金部材に対して相対的に移動可能であって、かつ、座金部材と不可分一体となっており、ビス部材は、さらに頭部を有し、ビス部材の軸部は、導電体又はナットと螺合されており、前記座金部材は、前記頭部によって、導電体に押圧されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の結線構造である。
【0035】
本発明の構成によれば、ビス部材は、座金部材に対して相対的に移動可能であって、かつ、座金部材と不可分一体となっている。すなわち、ビス部材と座金部材のうち一方が、例えばかしめや溶接等によって、分離不能となっているため、取り付け作業時に座金部材がビス部材から離れて落下することはない。それ故に、座金部材をビス部材に取り付ける手間や落下時に拾う手間が省け、作業性が向上する。
また、本発明の構成によれば、ビス部材の軸部と、導電体又はナットとの締結力がビス部材の頭部を介して座金部材に伝わり、導電体を押圧するため、突出部と金属単体を確実に接触させることができる。すなわち、確実に導電体と座金部材間の導電経路を確保することができる。
さらに、ビス部材の軸部と、導電体又はナットとの締結力によって座金部材が導電体を押圧するため、導電体と端子部の一体化強度が高い。
【0036】
請求項13に記載の発明は、複数の太陽電池モジュール間を接続する際に使用される結線構造であって、前記端子部は、電気機器に電気的に接続されており、当該電気機器は、一の太陽電池モジュールであり、前記導電体は、他の太陽電池モジュールの一部を形成する金属板であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の結線構造である。
【0037】
「太陽電池モジュールの一部を形成する金属板」とは、例えば、太陽電池モジュールのフレームや太陽電池モジュールの補強板などである。
【0038】
本発明の構成によれば、複数の太陽電池モジュール間の結線構造として使用できる。
【0039】
請求項14に記載の発明は、前記金属板は、太陽電池モジュールの一部を形成するフレームであることを特徴とする請求項13に記載の結線構造である。
【0040】
本発明の構成によれば、太陽電池モジュールの一部たるフレームを結線として使用するため、新たに配線を設ける必要がなく、コストを低減できる。
【0041】
請求項15に記載の発明は、電気機器又はアースに電気的に接続される面状の端子部と、導電体を接続する接続部材であって、前記端子部は、開口を有したものであり、接続部材は、少なくとも軸部と、導電部を有し、前記軸部は、前記端子部の開口を挿通し、導電体又は他の部材と係合して導電体と一体化可能であり、前記導電部は、突出部を有し、軸部を導電体と一体化されたときに、前記突出部は、前記端子部の縁よりも面方向の外側において、導電体と直接接触されることを特徴とする接続部材である。
【0042】
本発明の接続部材によれば、端子部の開口を挿通し、導電体又は他の部材と係合することで導電体と一体化されており、突出部は、端子部の縁よりも面方向の外側で、導電体と直接接触されている。すなわち、端子部は、接続部材と導電体との間に介在しており、接続部材の軸部と導電体又は他の部材の係合力によって、端子部と導電体の一体化強度が保たれる。
また、突出部は、端子部の縁よりも面方向の外側で、導電体と直接接触されているので、端子部と導電体の接触による導電経路とは別の突出部と導電体との接触による導電経路が形成することが可能であり、十分に端子部と導電体との導電を確保することができる。
【0043】
請求項16に記載の発明は、請求項4乃至14のいずれかに記載の結線構造を形成するための接続工法であって、前記軸部は、導電体又は他の部材と螺合可能であり、前記軸部を導電体又は他の部材に螺合することによって、前記導電部の突出部が薄膜層の一部を剥がして剥離部を形成する剥離部形成工程を含んでいることを特徴とする接続工法である。
【0044】
本発明の工法によれば、軸部を導電体又は他の部材に螺合するために回転する動作に伴って、導電部の突出部が薄膜層の一部を剥がして剥離部を形成するため、あらかじめ薄膜層を剥がさずとも金属単体と突出部を接続することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明の結線構造及び接続部材によれば、導電体と端子部との導通を確実にとることができる。
本発明の接続工法によれば、接続部材を導電体に取り付ける動作に伴って、導電体と端子部とを電気的に接続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、結線構造1の上下の位置関係は、
図3の姿勢を基準に説明する。すなわち、太陽電池モジュール101の入光側が下である。
また、図面は、理解を容易にするために全体的に実際の大きさ(長さ、幅、厚さ)に比べて極端に描写している。
【0048】
第1実施形態の結線構造1は、主にメガソーラー用の太陽光発電システム100に使用されるものであり、
図1のように複数の太陽電池モジュール101が縦横に並設された太陽光発電システム100に用いられるものである。
本実施形態の結線構造1は、各太陽電池モジュール101を接地するための導電経路の一部を形成するものである。また、結線構造1は、一の太陽電池モジュール101に電気的に接続された端子部2を、フレームグランドとして他の太陽電池モジュール101のフレーム部材103(導電体,金属板)に接続する際に使用されるものである。すなわち、結線構造1は、フレーム部材103と端子部2を電気的に接続することによって同電位にするものである。
また、本実施形態の結線構造1は、隣接する太陽電池モジュール101,101間を接続するものである。
本実施形態の結線構造1は、
図3のように、端子部2と、接続部材3と、配線部材105から形成されている。
【0049】
太陽光発電システム100は、
図1に示されるように太陽電池モジュール101が平面充填になるように配列されている。
太陽電池モジュール101は、
図1から読み取れるように、主に太陽電池パネル102と、フレーム部材103(導電体)から形成されている。
【0050】
太陽電池パネル102は、太陽電池に封止構造を形成したものである。
太陽電池としては、例えば、シリコン結晶型太陽電池や、シリコン薄膜型太陽電池、化合物半導体型太陽電池、ヘテロ接合型太陽電池などの公知の太陽電池を内蔵したものが使用できる。
また、この太陽電池の封止構造としては、例えばガラス封止構造やフィルム封止構造、アルミニウムなどの金属封止構造などの公知の封止構造が使用できる。
【0051】
太陽電池パネル102は、多角形状をしている。具体的には、太陽電池パネル102は、四角形状や三角形状をしている。
太陽電池パネル102の面積は、0.1m
2以上2m
2以下であることが好ましい。この範囲の面積であれば、太陽光を吸収して発電するのに十分な面積を確保することができる。
また、太陽電池パネル102の大きさは、使用する目的、用途及び機能によって適宜選択可能である。
本実施形態のようなメガソーラー用の太陽光発電システム100の場合には、太陽電池パネル102の面積が1m
2以上1.5m
2以下であることがより好ましい。この範囲であれば、大きすぎず、作業者が設置しやすい。また、小さすぎず、十分な受光面積を確保できる。
例えば、建材一体型の太陽光発電システムの場合には、太陽電池パネル102の面積が0.2m
2以上0.7m
2以下であることがより好ましい。この範囲であれば、建材として使用しやすい。
【0052】
フレーム部材103は、太陽電池パネル102の各辺に対応する端面を保護する部材である。
フレーム部材103は、
図1,
図2,
図3から読み取れるように、断面形状が「コ」字状の部材であり、入光面被覆部107と、背面被覆部108と、入光面被覆部107と背面被覆部108を接続する端面被覆部109から形成されている。
また、入光面被覆部107は、
図3に示されるように、太陽電池パネル102の太陽光の入射面を覆っており、端面被覆部109は、太陽電池パネル102を覆っており、背面被覆部108は、太陽電池パネル102の背面(太陽光の入射面と反対面)を覆っている。すなわち、フレーム部材103は、太陽電池パネル102の端面から太陽電池パネル102の表裏面側に向けて面状に延びている。
フレーム部材103は、
図4のように、金属単体10の表面に、金属単体10よりも導電率が低い薄膜層11が被覆されたものである。
【0053】
金属単体10としては、特に限定されないが、例えば、ステンレススチール製やアルミニウム製が使用できる。
薄膜層11としては、金属単体10よりも導電率が低いものであれば、特に限定されないが、例えば、錫や亜鉛などの金属や、金属酸化物、樹脂等が使用できる。
また、薄膜層11の金属単体10への被覆方法としては、電解めっき法や無電解めっき法などによって湿式めっきにより処理したり、真空めっきや溶融めっきなどの乾式めっきにより樹脂等を塗装したり、表面酸化処理したりすることによって被覆することができる。
【0054】
フレーム部材103は、
図3のように、接続部材3の軸部21と係合可能な係合孔106を備えている。
係合孔106は、フレーム部材103の背面被覆部108を部材厚方向に貫通した孔である。係合孔106の内側面は、薄膜層11と金属単体10の積層構造となっており、金属単体10が内側面に露出している。
【0055】
配線部材105は、絶縁樹脂が表面を被覆した導電線によって形成されており、
図2,
図3から読み取れるように、その両端部には、端子部2が接続可能となっている。
【0056】
結線構造1は、
図3,
図4から読み取れるように、一の太陽電池モジュール101のフレーム部材103に、配線部材105を介して電気的に接続された端子部2を、接続部材3によって固定する。
【0057】
端子部2は、接地をとるフレーム部材103から接地線を取り出すために使用する圧着端子であり、いわゆる丸端子と呼ばれるものである。端子部2は、配線部材105と接続可能となっている。
端子部2は、接続部材3に固定される固定部5と、固定部5の一部から外側に向かって延伸した圧着部6から形成されている。
端子部2として使用できる丸端子としては、R形、RD形、RAV形、RAP形、RBV形、RCV形などの丸端子が挙げられる。
その中でも、R形の丸端子は、固定部5が円環状であるため、後述する端子側開口部7から配線部材105との接続部位(圧着部6)までの寸法が確保しやすく好ましい。
本実施形態では、
図3のようにR形の圧着端子を使用している。
すなわち、本実施形態の固定部5の外形は、円形状であり、中央部に接続部材3の軸部21を挿通可能な端子側開口部7(開口)を有している。また、端子側開口部7の開口形状は、円形である。
固定部5は、外周から一部が外側に張り出しており、当該張出方向端部に圧着部6が接続されている。
圧着部6は、配線部材105に圧着することによって端子部2を配線部材105に対して一体化可能な部位である。
【0058】
接続部材3は、
図3のように、座金部材16(導電部)と、ビス部材17から形成されている。また、座金部材16とビス部材17は、別体であって、不可分一体となるように一体化されている。
【0059】
座金部材16は、座金の表面に歯を備える、いわゆる歯付き座金であり、
図5のように、本体部23と、複数の第1歯部24(突出部)と、複数の第2歯部25(第2突出部)から形成されている。
本体部23は、平面視環状となっており、中央に略円形の座金側開口部26を有している。
本実施形態の本体部23は、平面視円環状となっている。すなわち、座金側開口部26の開口形状は、円形である。
本体部23の外形寸法は、端子部2の固定部5の外形寸法よりも大きい。すなわち、本実施形態は、本体部23の外径は、端子部2の固定部5の外径よりも大きい。
【0060】
第1歯部24は、
図5のように、本体部23から下方(
図5では、上方)に向かって突出した部位である。
第1歯部24の形状は、内歯状、外歯状、内外歯状、皿歯状、重ね歯状などの形状が採用できる。本実施形態では、第1歯部24は、外歯状であって、突出方向先端側の部位が他の部位に比べて先細りして鋭く尖っている。
また、接続部材3の座金部材16の外径は、固定部5の外径よりも大きい。
第1歯部24の個数は、特に限定されるものではないが、後述する第1歯部24間の隙間を確保する観点から、2コ以上6コ以下であることが好ましい。特に端子部2の固定部5の張出部位を隙間に通す観点から3コ以上5コ以下であることがより好ましい。この範囲であれば、固定部5の張出部位を通過させるのに十分な隙間を形成することが可能である。本実施形態では、第1歯部24の個数は、4コである。
【0061】
第2歯部25は、
図5のように本体部23から第1歯部24の突出方向と同一方向に向かって突出した部位である。すなわち、第2歯部25は、本体部23から下方(
図5では、上方)に向かって突出している。第2歯部25の形状は、特に限定されるものではなく、上記した第1歯部24と同様の形状だけではなく、突出方向先端部位が丸まったものも採用できる。
本実施形態では、第2歯部25は、内歯状であって、突出方向先端側の部位が他の部位に比べて先細りして鋭く尖っている。
第2歯部25の突出長さL2は、第1歯部24の突出長さL1よりも短い。具体的には、第2歯部25の突出長さL2と第1歯部24の突出長さL1の差は、端子部2の固定部5の厚みと同等かやや長い。
第2歯部25の個数は、特に限定されるものではないが、端子部2との十分な接点を確保する観点から、2コ以上6コ以下であることが好ましい。
本実施形態では、第2歯部25の個数は、4コであり、第1歯部24と同一個数となっている。
【0062】
座金部材16の成形方法は、特に限定されないが、本実施形態では、座金部材16は、一枚の平板から一部を立ち上げて第1歯部24と、第2歯部25を形成している。すなわち、座金部材16は、一枚の平板に第1歯部24と第2歯部25を切り欠いて形成し、それを折り曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0063】
ここで、座金部材16の各部位の位置関係について説明すると、本体部23の座金側開口部26の外側に第2歯部25が位置しており、さらにその外側に第1歯部24が位置している。また、第1歯部24と第2歯部25は、座金側開口部26を中心として内外方向に同一直線上に並んでいる。
各第1歯部24は、座金側開口部26を中心として周方向に所定の間隔を空けて並んでいる。本実施形態では、各第1歯部24は、周方向に円環状に等間隔に並んでいる。
各第2歯部25は、座金側開口部26を中心として周方向に所定の間隔を空けて並んでいる。本実施形態では、各第2歯部25は、周方向に円環状に等間隔に並んでいる。
すなわち、第1歯部24及び第2歯部25は、本体部23の主面に対して部分的に設けられており、周方向に断続的に並んでいる。
また、周方向におけて隣接する第1歯部24,24間の隙間27と隣接する第2歯部25,25間の隙間28は、
図5,
図7から読み取れるように、内外方向(座金側開口部26側から外周縁側に向かう方向)に連通している。すなわち、軸部21側(中央側)から外側に向かって連通した隙間が形成されており、当該隙間に固定部5の張出部位を配することによって配線部材105を第1歯部24の外側に逃がすことが可能である。
【0064】
ビス部材17は、
図3,
図4,
図6から読み取れるように、頭部20と、軸部21と、縮径部22から形成されている。
頭部20は、軸部21と連続し、軸部21から外側に向けてフランジ状に張り出した部位である。頭部20は、軸部21に対して反対側の面に公知のドライバー等と係合可能な係合溝を有している。
頭部20の外径は、座金側開口部26の開口径よりも大きい。
軸部21は、外周面がねじ切りされており、フレーム部材103の係合孔106と螺合可能となっている。
軸部21の外径は、座金側開口部26の開口径よりも大きい。
縮径部22は、
図6のように、軸部21の側面よりも内側に凹んだ部位である。すなわち、縮径部22は、文字通り、ビス部材17の他の部位に比べて縮径された部位である。
縮径部22の外径は、軸部21の外径よりも小さく、頭部20の外径よりも小さい。
また、縮径部22の外径は、座金部材16の本体部23の座金側開口部26の開口径よりも小さい。
ここで、上記したようにビス部材17と座金部材16は一体不可分となっている。具体的には、接続部材3は、ビス部材17の縮径部22を座金部材16の座金側開口部26に差し込み、ビス部材17の頭部20と縮径部22は、溶接されている。一方、ビス部材17と座金部材16は、互いに溶接されていない。
そのため、接続部材3を組み立てたときに、座金部材16の座金側開口部26と、ビス部材17の縮径部22との間に隙間が形成される。
そのため、ビス部材17は、座金部材16の座金側開口部26に対して周方向に相対的に移動可能となっている。
【0065】
続いて、結線構造1を形成する接続工法について、組み立て手順に従って説明する。
あらかじめ係合孔106をフレーム部材103に形成しておき、係合孔106に接続部材3の軸部21を挿入する。
具体的には、ドライバー等によって、ビス部材17を周方向に回転させ、フレーム部材103の係合孔106に螺合させる。
このとき、ビス部材17の回転動作に伴って、座金部材16の第1歯部24とフレーム部材103とが近接する。同様に座金部材16の第2歯部25と端子部2の固定部5とが近接する。内側に位置する第2歯部25は、端子部2の固定部5の投影面上に位置しており、外側に位置する第1歯部24は、端子部2の固定部5の縁よりも面方向(固定部5の広がり方向)外側に位置している。
【0066】
その後、さらに、ビス部材17を周方向に回転させてフレーム部材103の係合孔106内に軸部21をさらに進入させる(剥離部形成工程)。
このとき、端子部2と第2歯部25が接触して端子部2が第2歯部25によって押圧される。また、第1歯部24がフレーム部材103の表面の薄膜層11に当接し、当接した状態で回転することによって締め付け力が働き、第1歯部24が薄膜層11に食い込んで傷つく。そして、薄膜層11の一部が剥がれて金属単体10が露出する剥離部12が形成され、第1歯部24は、剥離部12を通過して、金属単体10と直接接触する。
このように、本実施形態の結線構造1を形成する際に、フレーム部材103の表面の薄膜層11を傷つけることによって内部の金属単体10を露出させる。そのため、あらかじめ薄膜層11から金属単体10が露出した部位(剥離部12)を設けなくても、取り付け動作によって剥離部12を形成することができる。
【0067】
本実施形態の結線構造1の導電経路について説明する。
【0068】
上記したように本実施形態の結線構造1は、主に2つの導電経路を備えている。
すなわち、本実施形態の結線構造1は、第1導電経路30と第2導電経路31を備えている。
第1導電経路30は、
図8の矢印のように、端子部2から直接フレーム部材103の金属単体10に導電する経路である。
この第1導電経路30について具体的に説明すると、第1導電経路30は、フレーム部材103の係合孔106の内周面と軸部21の外周面の係合による接触を利用して、フレーム部材103の金属単体10に至る経路である。
すなわち、第1導電経路30においては、外部から端子部2に伝わる電流は、座金部材16の第2歯部25を介して本体部23に至り、本体部23からビス部材17の頭部20に至る。また、頭部20に至った電流は、ビス部材17内で縮径部22を通過して軸部21に至る。そして、軸部21に至った電流は、軸部21の外周面からフレーム部材103の金属単体10に至る。
一方、第2導電経路31は、
図9の矢印のように、端子部2から第2歯部25を介して本体部23に導通し、本体部23から第1歯部24を介してフレーム部材103の金属単体10に導電する経路である。
すなわち、第2導電経路31においては、外部から端子部2に伝わる電流は、座金部材16の第2歯部25を介して本体部23に至り、本体部23内で拡散して第1歯部24に至る。第1歯部24に至った電流は、剥離部12を通過して、フレーム部材103の金属単体10に至る。
このように、本実施形態の結線構造1は、端子部2から金属単体10への2つの導電経路を備えているため、より確実に導電することができる。
【0069】
第1実施形態の結線構造1であれば、第1歯部24が軸部21を中心として同一円上に並んでいるため、軸部21を回転させて締め付けた際に、フレーム部材103の表面の薄膜層11を同心円状に傷つける。すなわち、第1歯部24は、まばらに傷つけるよりも深く金属単体10に食い込むことになる。そのため、より確実に端子部2と金属単体10間の導電経路を確保することができる。
【0070】
第1実施形態の結線構造1であれば、接続部材3によって一体化強度及び導電経路が補強されているため、ビス部材17の軸部21がフレーム部材103に2山以上かからなくても、十分な一体化強度と、確実な導電経路を確保することができる。
【0071】
続いて、第2実施形態の結線構造50について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
第2実施形態の結線構造50は、第1実施形態の結線構造1と接続部材3が異なる。
第2実施形態の接続部材51は、第1実施形態のビス部材17の機能と座金部材16の機能の双方を有している。すなわち、接続部材51は、1つの金属から削りだして一体的に形成されている。
接続部材51は、
図10に示されるように、座金部52と軸部53を有している。
座金部52は、第1実施形態のビス部材17の頭部20と座金部材16が一体となった部位であり、円板状の部位である。
座金部52の下面には、
図11のように、第1歯部24と、第2歯部25を備えている。
第1歯部24と第2歯部25の位置関係は、第1実施形態とほぼ同様であり、第2歯部25は、軸部53側に設けられており、第1歯部24は、第2歯部25よりも外側に設けられている。
【0072】
第2実施形態の結線構造50によれば、座金部材16を取り付ける作業を省略することができるため、部材の点数が減り、同時に工数も削減することが可能になる。
【0073】
上記した第1実施形態では、接続部材3を頭部20、軸部21、座金部材16の3つの部材に分けて作製し、一体化して接続部材3を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接続部材3の形成方法は特に限定されない。
【0074】
上記した第1実施形態では、ビス部材17と座金部材16は一体不可分となっていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ビス部材17と座金部材16が分離可能であってもよい。
【0075】
上記した第2実施形態では、接続部材51を1つの金属から削りだして一体的に形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、接続部材51の形成方法は特に限定されない。例えば、接続部材51を座金部52と軸部53の2つの部材に分けて作製し、溶接等によって一体化させて形成してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、メガソーラー用の太陽光発電システム100に結線構造を使用した場合について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、建材一体型の太陽光発電システムなどの他の太陽光発電システムに使用してもよい。
また、本発明の結線構造は、太陽電池モジュール間の接続に限られず、例えば、太陽電池モジュールと測定装置の接続や太陽電池モジュールとパワーコンディショナーとの接続などにも使用することができる。さらに、本発明の結線構造は、太陽電池モジュールとアースとの接続に使用してもよい。
【0077】
上記した実施形態では、結線構造を太陽光発電システム100に使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の電気機器間の結線に使用してもよい。
【0078】
上記した実施形態では、第1歯部24と第2歯部25はそれぞれ同心円状に複数配されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各第1歯部24は、内外方向にずれていてもよい。同様に各第2歯部25は、内外方向にずれていてもよい。
【0079】
上記した実施形態では、複数の第2歯部25を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2歯部25は、一つであってもよいし、第2歯部25を備えていなくてもよい。第2歯部25を備えない場合には、座金部材16は、端子部2と面接触することとなる。
【0080】
上記した実施形態では、複数の第1歯部24を備えていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1歯部は、一つであってもよい。
【0081】
上記した実施形態では、導電体として、金属単体10に薄膜層11が被覆したものを使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、薄膜層11が形成されないもの、すなわち、金属単体10のみであってもよい。
この場合、端子部2は、金属単体10に直接面接触しており、端子部2と金属単体10を繋ぐ第3導電経路を形成している。
【0082】
上記した実施形態では、導電体として、太陽電池モジュール101の一部たるフレーム部材103を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、太陽電池モジュール101の他の一部であってもよい。導電体は、例えば太陽電池パネル102の封止部材や補強部材等に使用される金属板や金属箔であってもよい。また、導電体は、ガラス封止構造を備えた太陽電池モジュールの場合には、太陽電池モジュールを他の部材に固定するための桟であってもよい。導電体は、太陽電池モジュール101以外のものであってもよい。
【0083】
上記した実施形態では、端子部2として丸形端子を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形状の端子であってもよい。例えば、Y型端子でもよい。
【0084】
上記した実施形態では、軸部21とフレーム部材103が係合することによって一体化されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸部21とナットを係合させて一体化させてもよい。