特許第6101595号(P6101595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101595プレスブレーキ及びクラウニング制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101595
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】プレスブレーキ及びクラウニング制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B21D5/02 K
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-164744(P2013-164744)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-33704(P2015-33704A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】上杉 悟
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−136224(JP,A)
【文献】 特開平5−329549(JP,A)
【文献】 特開2002−120017(JP,A)
【文献】 特開2005−7410(JP,A)
【文献】 特開2000−15342(JP,A)
【文献】 特開2000−51950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/02
B30B 15/14−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ金型を保持するための上部テーブルと、
前記上部テーブルを上下動させるためのメインシリンダと、
ダイ金型を保持するための下部テーブルと、
前記下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせるためのクラウニングシリンダと、
前記メインシリンダの面積全体での第1の加圧力に第1の係数を乗算することにより、前記第1の加圧力に比例した前記クラウニングシリンダ用の第2の加圧力を生成する第1の乗算器と、
前記パンチ金型と前記ダイ金型とによって板材を曲げ加工する際の理論曲げ荷重値に第2の係数を乗算することにより、前記第2の加圧力をオフセットさせる第3の加圧力を生成する第2の乗算器と、
前記第2の加圧力と前記第3の加圧力とを加算して第4の加圧力を生成する加算器と、
前記第1の加圧力に、前記上部テーブルを前記第1の加圧力で前記下部テーブルを加圧する加圧状態から加圧の解除を開始した解除開始時点における、前記メインシリンダの面積全体での実際の第5の加圧力と、前記クラウニングシリンダの面積全体での実際の第6の加圧力との比によって算出される第3の係数を乗算することにより、前記解除開始時点以降に用いる前記クラウニングシリンダ用の第7の加圧力を生成する第3の乗算器と、
前記加圧状態では前記第4の加圧力を選択し、前記解除開始時点以降では前記第7の加圧力を選択する第1の選択部と、
前記第1の選択部で選択された加圧力を前記クラウニングシリンダの単位面積当たりの圧力に変換する変換部と、
前記クラウニングシリンダの圧力が前記変換部で変換された圧力となるように制御する制御部と、
を備えることを特徴とするプレスブレーキ。
【請求項2】
前記第1の加圧力が閾値以上であるとき前記第3の加圧力を選択し、前記第1の加圧力が前記閾値未満であるとき加圧力0を選択する第2の選択部をさらに備え、
前記加算器は、前記第1の加圧力が前記閾値未満であるとき、前記第2の加圧力を出力し、
前記第1の選択部は、前記加圧状態では前記第2の加圧力を選択する
ことを特徴とする請求項1記載のプレスブレーキ。
【請求項3】
上部テーブルを上下動させるためのメインシリンダの面積全体での第1の加圧力に第1の係数を乗算することにより、下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせるためのクラウニングシリンダ用の、前記第1の加圧力に比例した第2の加圧力を生成し、
前記上部テーブルに保持されたパンチ金型と前記下部テーブルに保持されたダイ金型とによって板材を曲げ加工する際の理論曲げ荷重値に第2の係数を乗算することにより、前記第2の加圧力をオフセットさせる第3の加圧力を生成し、
前記第2の加圧力と前記第3の加圧力とを加算して第4の加圧力を生成し、
前記第1の加圧力に、前記上部テーブルを前記第1の加圧力で前記下部テーブルを加圧する加圧状態から加圧の解除を開始した解除開始時点における、前記メインシリンダの面積全体での実際の第5の加圧力と、前記クラウニングシリンダの面積全体での実際の第6の加圧力との比によって算出される第3の係数を乗算することにより、前記解除開始時点以降に用いる前記クラウニングシリンダ用の第7の加圧力を生成し、
前記加圧状態では前記第4の加圧力を選択し、前記解除開始時点以降では前記第7の加圧力を選択し、
選択された加圧力を前記クラウニングシリンダの単位面積当たりの圧力に変換し、
前記クラウニングシリンダの圧力を変換された圧力となるように制御して、前記下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせる
ことを特徴とするクラウニング制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部テーブルをクラウニングさせるクラウニング機構を備えるプレスブレーキ及びクラウニング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキは、パンチ金型を装着する金型ホルダが取り付けられた上部テーブルと、ダイ金型を装着する金型ホルダが取り付けられた下部テーブルとを備える。板材を曲げ加工する際には、オペレータは、それぞれの金型ホルダにパンチ金型とダイ金型とを装着する。プレスブレーキは、上部テーブルを下部テーブルへと下降させて、板材をパンチ金型とダイ金型とで挟んで折り曲げる。
【0003】
板材を折り曲げるために上部テーブルが下部テーブル方向に圧力をかけると、下部テーブルがわずかに撓む。下部テーブルが撓んだ状態のままで板材を加工すると、的確な通り角度が得られず、通り精度のよくない製品となる。材料によっては加工すらできないこともある。
【0004】
そこで、特許文献1,2に記載のように、プレスブレーキは、下部テーブルの撓みを補正するように、下部テーブルを上部テーブル方向へと押し上げるクラウニング機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−243345号公報
【特許文献2】特開平8−155553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のプレスブレーキにおいては、上部テーブルの加圧力に応じて下部テーブルの加圧力を変化させるのが一般的である。しかしながら、従来のプレスブレーキでは、望ましい通り精度が得られないことがあり、改善が求められている。
【0007】
本発明はこのような要望に対応するため、通り精度を向上させることができるプレスブレーキ及びクラウニング制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、パンチ金型を保持するための上部テーブルと、前記上部テーブルを上下動させるためのメインシリンダと、ダイ金型を保持するための下部テーブルと、前記下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせるためのクラウニングシリンダと、前記メインシリンダの面積全体での第1の加圧力に第1の係数を乗算することにより、前記第1の加圧力に比例した前記クラウニングシリンダ用の第2の加圧力を生成する第1の乗算器と、前記パンチ金型と前記ダイ金型とによって板材を曲げ加工する際の理論曲げ荷重値に第2の係数を乗算することにより、前記第2の加圧力をオフセットさせる第3の加圧力を生成する第2の乗算器と、前記第2の加圧力と前記第3の加圧力とを加算して第4の加圧力を生成する加算器と、前記第1の加圧力に、前記上部テーブルを前記第1の加圧力で前記下部テーブルを加圧する加圧状態から加圧の解除を開始した解除開始時点における、前記メインシリンダの面積全体での実際の第5の加圧力と、前記クラウニングシリンダの面積全体での実際の第6の加圧力との比によって算出される第3の係数を乗算することにより、前記解除開始時点以降に用いる前記クラウニングシリンダ用の第7の加圧力を生成する第3の乗算器と、前記加圧状態では前記第4の加圧力を選択し、前記解除開始時点以降では前記第7の加圧力を選択する第1の選択部と、前記第1の選択部で選択された加圧力を前記クラウニングシリンダの単位面積当たりの圧力に変換する変換部と、前記クラウニングシリンダの圧力が前記変換部で変換された圧力となるように制御する制御部とを備えることを特徴とするプレスブレーキを提供する。
【0009】
上記のプレスブレーキにおいて、前記第1の加圧力が閾値以上であるとき前記第3の加圧力を選択し、前記第1の加圧力が前記閾値未満であるとき加圧力0を選択する第2の選択部をさらに備え、前記加算器は、前記第1の加圧力が前記閾値未満であるとき、前記第2の加圧力を出力し、前記第1の選択部は、前記加圧状態では前記第2の加圧力を選択することが好ましい。
【0010】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、上部テーブルを上下動させるためのメインシリンダの面積全体での第1の加圧力に第1の係数を乗算することにより、下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせるためのクラウニングシリンダ用の、前記第1の加圧力に比例した第2の加圧力を生成し、前記上部テーブルに保持されたパンチ金型と前記下部テーブルに保持されたダイ金型とによって板材を曲げ加工する際の理論曲げ荷重値に第2の係数を乗算することにより、前記第2の加圧力をオフセットさせる第3の加圧力を生成し、前記第2の加圧力と前記第3の加圧力とを加算して第4の加圧力を生成し、前記第1の加圧力に、前記上部テーブルを前記第1の加圧力で前記下部テーブルを加圧する加圧状態から加圧の解除を開始した解除開始時点における、前記メインシリンダの面積全体での実際の第5の加圧力と、前記クラウニングシリンダの面積全体での実際の第6の加圧力との比によって算出される第3の係数を乗算することにより、前記解除開始時点以降に用いる前記クラウニングシリンダ用の第7の加圧力を生成し、前記加圧状態では前記第4の加圧力を選択し、前記解除開始時点以降では前記第7の加圧力を選択し、選択された加圧力を前記クラウニングシリンダの単位面積当たりの圧力に変換し、前記クラウニングシリンダの圧力を変換された圧力となるように制御して、前記下部テーブルを前記上部テーブルの方向へとクラウニングさせることを特徴とするクラウニング制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法によれば、通り精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態のプレスブレーキを示す構成図である。
図2図1中のクラウニング制御部22の機能的な内部構成を示すブロック図である。
図3】一実施形態のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法の動作を説明するためのタイミング図である。
図4】一実施形態のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法による作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法について、添付図面を参照して説明する。図1に示す一実施形態のプレスブレーキは、概略的には、入力装置10と、プレスブレーキ制御装置20と、上部テーブル30と、下部テーブル40とを備える。プレスブレーキ制御装置20は、NC装置によって構成することができる。
【0014】
上部テーブル30は、左右に設けたメインシリンダ35L,35Rによって、上下動される。上部テーブル30は、下部テーブル40に近付く方向及び下部テーブル40から離れる方向に位置制御される。下部テーブル40は、左右に設けたクラウニングシリンダ45L,45Rによって、上部テーブル30方向へのクラウニングが制御される。
【0015】
図1においては、上部テーブル30と下部テーブル40それぞれを駆動するシリンダの数を2個ずつとしているが、これに限定されるものではない。
【0016】
上部テーブル30には図示していない上部金型ホルダが取り付けられ、下部テーブル40には図示していない下部金型ホルダが取り付けられている。上部金型ホルダにはパンチ金型31が装着され、下部金型ホルダにはダイ金型41が装着されている。パンチ金型31とダイ金型41は、それぞれ、直接的または間接的に上部テーブル30と下部テーブル40に保持されていればよい。加工(折り曲げ)の対象である板材Wは、パンチ金型31とダイ金型41とによって挟まれて折り曲げられる。
【0017】
一実施形態のプレスブレーキの具体的な構成及び動作は以下のとおりである。図1において、オペレータは、入力装置10によって、板材Wの板厚,材質,曲げ位置,曲げ長さと、パンチ金型31及びダイ金型41の金型情報とを入力する。金型情報はV字状先端部の幅や角度等である。
【0018】
オペレータは、入力装置10によって、板材Wの加工の開始を指示する。プレスブレーキ制御装置20は、入力装置10からの加工開始の指示に応答して、メインシリンダ35L,35R及びクラウニングシリンダ45L,45Rそれぞれを制御する。
【0019】
プレスブレーキ制御装置20は、機能的な構成として、曲げ情報計算部21とクラウニング制御部22とを有する。また、プレスブレーキ制御装置20は、D/A変換器23,25L,25Rと、カウンタ入力部24L,24Rと、A/D変換器26とを有する。D/A変換器23,25L,25R及びA/D変換器26を、プレスブレーキ制御装置20の外部に設けてもよい。
【0020】
プレスブレーキ制御装置20は、上部テーブル30を下降または上昇させる際の位置を制御するためのデジタル値よりなる制御データを生成する。D/A変換器25L,25Rは、制御データをアナログ値よりなる制御値に変換する。増幅器32L,32Rは、制御値を増幅してモータ33L,33Rに供給する。モータ33L,33Rは、双方向回転ポンプ34L,34Rを正転または逆転させる。
【0021】
双方向回転ポンプ34L,34Rを正転させることによって、メインシリンダ35L,35Rを下降させることができる。双方向回転ポンプ34L,34Rを逆転させることによって、メインシリンダ35L,35Rを上昇させることができる。
【0022】
メインシリンダ35L,35Rの上側の油圧室には圧力センサ36L,36Rが接続されている。メインシリンダ35L,35Rの下側の油圧室には圧力センサ37L,37Rが接続されている。圧力センサ36L,36R,37L,37Rは、単位面積当たりの圧力の検出値をA/D変換器26へと供給する。
【0023】
A/D変換器26は、圧力センサ36L,36R,37L,37Rそれぞれの検出値をデジタル値に変換する。
【0024】
メインシリンダ35Lの加圧力は、圧力センサ36Lの検出値(デジタル値)に、圧力センサ36L側のメインシリンダ35Lの面積を乗じた加圧力と、圧力センサ37Lの検出値(デジタル値)に圧力センサ37L側のメインシリンダ35Lの面積を乗じた加圧力との差分となる。
【0025】
メインシリンダ35Rの加圧力は、圧力センサ36Rの検出値(デジタル値)に、圧力センサ36R側のメインシリンダ35Rの面積を乗じた加圧力と、圧力センサ37Rの検出値(デジタル値)に圧力センサ37R側のメインシリンダ35Rの面積を乗じた加圧力との差分となる。
【0026】
メインシリンダ35L,35Rまたはクラウニングシリンダ45L,45Rの面積とは、2つのシリンダの面積を合計した面積である。シリンダが1つであれば、1つのシリンダの面積であり、シリンダが複数ある場合にはそれぞれのシリンダの面積を合計した面積である。
【0027】
A/D変換器26は、メインシリンダ35Lの加圧力F1とメインシリンダ35Rの加圧力F2とをクラウニング制御部22に供給する。厳密には、後述するように、プレスブレーキ制御装置20は、加圧力F1,F2の加算値をクラウニング制御部22に供給する。ここでの加圧力F1,F2は、メインシリンダ35L,35Rの加圧力である。
【0028】
位置検出器38L,38Rは、上部テーブル30の上下方向の位置を検出する。位置検出器38L,38Rは、上部テーブル30の位置をカウンタの値として検出することができる。位置検出器38L,38Rは、位置検出値(カウント値)をカウンタ入力部24L,24Rへと供給する。これによって、プレスブレーキ制御装置20は、上部テーブル30の上下方向の位置を知ることができる。
【0029】
曲げ情報計算部21は、入力装置10より入力された上記の情報のうち、曲げ位置及び曲げ長さに基づいて、クラウニング比例係数αを算出する。曲げ情報計算部21は、上記の各情報に基づいて、理論曲げ荷重値BFを算出する。クラウニング比例係数α及び理論曲げ荷重値BFはクラウニング制御部22に入力される。
【0030】
クラウニング比例係数αとは、上部テーブル30による下方への圧力に対する下部テーブル40による上方へのクラウニング圧力の比である。例えば、上部テーブル30による圧力が10トンで、クラウニング比例係数αが200%であれば、下部テーブル40によるクラウニング圧力は20トンとなる。
【0031】
クラウニング比例係数αは、NC装置によって自動的に計算することができる。理論曲げ荷重値BFは、特許文献1,2に記載されているように求めることができ、同様に、NC装置によって自動的に計算することができる。
【0032】
クラウニング比例係数α及び理論曲げ荷重値BFは、クラウニング制御部22に入力される。クラウニング制御部22は、後述するようにしてデジタル値よりなるクラウニング制御データDccを出力する。D/A変換器23は、クラウニング制御データDccをアナログ値よりなる制御値に変換する。
【0033】
増幅器42は、D/A変換器23より出力された制御値を増幅してモータ43に供給する。モータ43は、双方向回転ポンプ44を正転または逆転させる。双方向回転ポンプ44には、タンク46が接続されている。
【0034】
双方向回転ポンプ44を正転させることによって、クラウニングシリンダ45L,45Rを上昇させることができる。双方向回転ポンプ44を逆転させることによって、クラウニングシリンダ45L,45Rを下降させることができる。
【0035】
クラウニングシリンダ45L,45Rには、圧力センサ47が接続されている。圧力センサ47は、単位面積当たりの圧力の検出値をA/D変換器26へと供給する。A/D変換器26は、圧力センサ47の検出値をデジタル値に変換する。
【0036】
A/D変換器26は、クラウニングシリンダ45L,45Rの圧力(クラウニング圧力)Fc1をクラウニング制御部22に供給する。ここでのクラウニング圧力Fc1は、クラウニングシリンダ45L,45Rの単位面積当たりの圧力である。
【0037】
図2を用いて、クラウニング制御部22の機能的な内部構成及び動作について説明する。クラウニング制御部22の動作は、一実施形態のクラウニング制御方法を示す。クラウニング制御部22は、乗算器221〜223,227,229と、選択部224,226と、加算器225と、減算器228とを有する。
【0038】
図2において、乗算器221,222には、メインシリンダ35Lの加圧力F1とメインシリンダ35Rの加圧力F2との加算値である加算加圧力(F1+F2)が入力される。乗算器223には、理論曲げ荷重値BFが入力される。加算加圧力(F1+F2)を第1の加圧力とする。
【0039】
乗算器221は、加算加圧力(F1+F2)に係数αd(第3の係数)を乗算する。係数αdは、式(1)に基づいて算出される。
【0040】
αd=Fc10/(F1+F2) …(1)
【0041】
係数αdは、クラウニングシリンダ45L,45Rによる下部テーブル40の加圧の解除を開始した時点、いわゆる圧抜き開始時点でのメインシリンダ35L,35Rの加圧力(第5の加圧力)とクラウニングシリンダ45L,45Rの加圧力(第6の加圧力)との比を示す。Fc10は、クラウニング圧力Fc1にクラウニングシリンダ45L,45Rの面積を乗じた加圧力を示す。
【0042】
係数αdは現実に発生している圧力比であり、圧抜きのタイミングによって圧力比は異なることから、可変値となる。乗算器221は、式(1)より、クラウニングシリンダ45L,45Rの面積全体でのクラウニング加圧力Fc10(第7の加圧力)を出力する。
【0043】
乗算器222は、加算加圧力(F1+F2)に係数αp(第1の係数)を乗算する。乗算器223は、理論曲げ荷重値BFに係数αoを乗算する。係数αp,αoは次のように設定される。発散しないクラウニング比例係数αの限界値をαLmtとする。限界値αLmtは実験によって求めることができる。係数αoは、式(2)に基づいて算出される。
【0044】
αo=α−αLmt …(2)
【0045】
αo≦0のとき、係数αoを0、係数αpを係数αと設定する。αo>0のとき、係数αpを限界値αLmtと設定する。
【0046】
乗算器222は、加算加圧力(F1+F2)に係数αpを乗算して、クラウニング比例加圧力指令値Fcp(第2の加圧力)を出力する。乗算器223は、理論曲げ荷重値BFに係数αo(第2の係数)を乗算して、クラウニングオフセット加圧力指令値Fco(第3の加圧力)を出力する。
【0047】
選択部224の端子taにはクラウニングオフセット加圧力指令値Fcoが入力され、端子tbには加圧力0を示す値0が入力される。選択部224には、クラウニングオフセット加圧力指令値Fcoによるオフセットを有効とするか無効とするかの閾値Thoが設定されている。選択部224は、破線にて示すように加算加圧力(F1+F2)を参照して、(F1+F2)≧Thoを満たすとき、端子taを選択し、(F1+F2)<Thoを満たすとき、端子tbを選択する。
【0048】
メインシリンダ35L,35Rの加圧力である加算加圧力(F1+F2)が閾値Tho以上であれば、クラウニングオフセット加圧力指令値Fcoによるオフセットが有効となる。これによって、板材Wがパンチ金型31とダイ金型41とによって挟まれる前にクラウニングシリンダ45L,45Rが動作しないようにすることができる。
【0049】
加算器225は、クラウニング比例加圧力指令値Fcpと選択部224の出力とを加算して、クラウニング加圧力指令値Fc(第4の加圧力)を出力する。
【0050】
選択部226は、メインシリンダ35L,35Rによる上部テーブル30の加圧時には端子taに接続し、圧抜き時には端子tbに接続する。選択部226からは、加圧時にはクラウニング加圧力指令値Fcが出力され、圧抜き時にはクラウニング加圧力Fc10が出力される。
【0051】
選択部226の出力は、乗算器227に入力される。乗算器227は、選択部226の出力に1/Acを乗じて出力する。Acは、クラウニングシリンダ45L,45Rの面積である。よって、乗算器227からは、加圧時にはクラウニング加圧力指令値Fcの単位面積当たりの圧力が出力され、圧抜き時にはクラウニング加圧力Fc10の単位面積当たりの圧力が出力される。
【0052】
乗算器227は、選択部226で選択された加圧力をクラウニングシリンダ45L,45Rの単位面積当たりの圧力に変換する変換部として動作している。
【0053】
減算器228は、乗算器227の出力よりクラウニング圧力Fc1を減算する。減算器228からは、加圧時にはクラウニング加圧力指令値Fcの単位面積当たりの圧力とクラウニング圧力Fc1との誤差が出力され、圧抜き時にはクラウニング加圧力Fc10の単位面積当たりの圧力とクラウニング圧力Fc1との誤差が出力される。
【0054】
減算器228の出力は、乗算器229に入力される。乗算器229は、減算器228の出力にクラウニング圧力ループゲインKpを乗算して、クラウニング制御データDccとして出力する。
【0055】
減算器228からクラウニングシリンダ45L,45Rまでの範囲と、クラウニングシリンダ45L,45Rから減算器228までの範囲とで、クラウニング圧力Fc1を制御する制御ループCLPを構成する。
【0056】
クラウニング圧力Fc1は、制御ループCLPの働きによって減算器228より出力される誤差がなくなるように制御される。制御ループCLPは、クラウニング圧力Fc1が乗算器227より出力された圧力となるように制御する制御部として動作している。
【0057】
よって、加圧時には、クラウニング圧力Fc1は、クラウニング加圧力指令値Fcから得られるクラウニング指令圧力となるように制御され、圧抜き時には、クラウニング圧力Fc1は、クラウニング加圧力Fc10から得られるクラウニング圧力と一致するように制御される。
【0058】
図3に示すタイミング図を用いて、一実施形態のプレスブレーキの動作、及び、クラウニング制御方法についてさらに説明する。図3の(a)は、上部テーブル30の位置を示している。前述のように、上部テーブル30の位置は位置検出器38L,38Rによって検出される。上部テーブル30は、タイミングT1で下部テーブル40に対する加圧を開始し、タイミングT2で圧抜きを開始する。
【0059】
図3の(b)は、上部テーブル30による加圧力、即ち、加算加圧力(F1+F2)を示している。図3の(c)は、図2で説明したクラウニング比例加圧力指令値Fcpを示している。クラウニング比例加圧力指令値Fcpは、加算加圧力(F1+F2)と比例した値となっている。図3の(d)は、図2で説明したクラウニングオフセット加圧力指令値Fcoを示している。
【0060】
図3の(e)は、図2で説明したクラウニング加圧力指令値Fcを示している。選択部224が端子taを選択している状態では、クラウニング加圧力指令値Fcは、図3の(c)に示すクラウニング比例加圧力指令値Fcpと図3の(d)に示すクラウニングオフセット加圧力指令値Fcoとを加算した値となる。
【0061】
図3の(e)に示すクラウニング加圧力指令値Fcを用いれば、単に加算加圧力(F1+F2)と比例させた図3の(c)に示すクラウニング比例加圧力指令値Fcpを用いる場合と比較して、メインシリンダ35L,35Rの加圧力に対するクラウニングシリンダ45L,45Rの加圧力の比率を大きくすることができる。よって、下部テーブル40の撓みの補正量が不足することがなく、通り精度を向上させることができる。
【0062】
クラウニング加圧力指令値Fcを用いると、破線の円で囲んで示しているように、圧抜きを開始したタイミングT2で加圧力が急激に低下する。よって、上部テーブル30による加算加圧力(F1+F2)と、下部テーブル40によるクラウニング加圧力指令値Fcとのバランスがくずれて、通り精度が悪化する場合がある。
【0063】
そこで、一実施形態のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法においては、好ましい構成として乗算器221及び選択部226を設けて、タイミングT2でクラウニング加圧力Fc10を選択するようにしている。前述のように、クラウニング加圧力Fc10は、加算加圧力(F1+F2)に対して係数αdを乗算した加圧力である。
【0064】
これによって、選択部226の出力は図3の(f)に示すようなに加圧力となる。破線の円で囲んで示しているように、タイミングT2で加圧力が急激に低下することがない。よって、上部テーブル30による加算加圧力(F1+F2)と、下部テーブル40によるクラウニング加圧力とのバランスがくずれにくい。
【0065】
タイミングT2で、クラウニング加圧力Fc10に切り換えることによって、図3の(e)に示すクラウニング加圧力指令値FcをタイミングT2以降も用いる場合と比較して、通り精度を向上させることができる。
【0066】
前述のように、係数αdは、圧抜きを開始したタイミングT2での実際のメインシリンダ35L,35Rの加圧力とクラウニングシリンダ45L,45Rの加圧力との比によって算出される係数である。従って、上部テーブル30による加圧力と下部テーブル40によるクラウニング加圧力とのバランスがくずれにくく、通り精度を向上させることが可能となる。
【0067】
図4を用いて、一実施形態のプレスブレーキ及びクラウニング制御方法による作用効果を模式的に説明する。図4では、上部テーブル30及び下部テーブル40の撓みの状態を誇張して図示している。
【0068】
図4の(a)は、図3の(f)に示すクラウニング加圧力を用いた場合を示している。上部テーブル30による加圧力と下部テーブル40によるクラウニング加圧力とのバランスがくずれなければ、圧抜きを開始した以降も上部テーブル30と下部テーブル40との間隔が適切な状態に維持される。
【0069】
一方、図4の(b)は、上部テーブル30による加圧力と下部テーブル40によるクラウニング加圧力とのバランスがくずれた状態を示している。上部テーブル30による加圧力と下部テーブル40によるクラウニング加圧力とのバランスがくずれることによって、上部テーブル30の左右両端部において、上部テーブル30と下部テーブル40との間隔が狭くなってしまう。上部テーブル30と下部テーブル40との間隔が不適切な状態となる。
【0070】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
30 上部テーブル
35L,35R メインシリンダ
40 下部テーブル
45L,45R クラウニングシリンダ
221〜223,229 乗算器
225 加算器
227 乗算器(変換部)
224,226 選択部
CLP 制御ループ(制御部)
図1
図2
図3
図4