特許第6101596号(P6101596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101596
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/14 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   G01L9/14
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-166271(P2013-166271)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34768(P2015-34768A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸之
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−113710(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3179928(JP,U)
【文献】 特開2011−033443(JP,A)
【文献】 実開昭61−094742(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L 27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正圧及び負圧の両方を検出可能な圧力検出装置であって、
流体が出入り可能な連通部を有する筐体と、この筐体を仕切って第1空間と第2空間とを形成し、前記連通部に連通する第1空間内の圧力に応じて変形可能なダイヤフラムと、前記第2空間に配置され、前記ダイヤフラムの変形に応じて移動可能な移動部材と、前記ダイヤフラムを変形可能に支持する付勢部材と、前記第2空間に配置され、前記移動部材の移動を検出する検出手段とを具備し、
前記付勢部材は、前記ダイヤフラム側に固定される第1部分と、前記筐体側に固定される第2部分と、前記第1部分と第2部分との間に設けられた弾性変形可能な変形部とを備えた板ばねからなり、前記第1空間に配設され
前記筐体は、前記連通部を含む第1ケースと、この第1ケースに取り付けられると共に前記移動部材が収容される第2ケースとを備え、前記第1ケースと第2ケースとによって、前記ダイヤフラムの周縁部と前記付勢部材の第2部分とが挟持されることを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
前記移動部材は、前記第2空間を形成する前記筐体の内周面に隙間を介して位置する移動体を含み、
前記ダイヤフラムは、前記移動体に取り付けられる基部と、前記基部と前記周縁部との間に位置する薄肉部とを有し、
前記薄肉部は、前記移動体の外周面と前記筐体の内周面との間で前記第2空間側に突出するように折り返されて折り返し部を形成し、当該折り返し部の位置は、前記第1空間内の流体における圧力変化により変位して前記移動部材を移動可能とすることを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
前記付勢部材は、平面形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項4】
前記付勢部材は、その中央領域を形成する第1部分と、その外周側領域を形成する円環状の第2部分を備え、当該第2部分と当該第1部分との間には、弾性変形可能な変形部が連なって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項5】
前記ダイヤフラムの前記薄肉部は、U字状をなすよう折り返された形状をなしており、その下部領域において前記折り返し部を形成していることを特徴とする請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項6】
前記ダイヤフラムは、前記基部から前記第1空間側に突出した突出部を有し、この突出部に前記付勢部材の第1部分が支持されると共に、前記付勢部材の変形部が前記基部から離間していることを特徴とする請求項2に記載の圧力検出装置。
【請求項7】
前記移動部材は、前記付勢部材の第1部分より外側に位置する領域において、前記ダイヤフラムの基部に固定されていることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の圧力検出装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記移動部材と共に移動する磁石と、この磁石に対向する磁気センサとからなることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の圧力検出装置。
【請求項9】
前記移動部材の移動方向における前記磁石と前記磁気センサとの相対位置を調整する第1調整機構を有することを特徴とする請求項8に記載の圧力検出装置。
【請求項10】
前記移動部材の移動方向に対して交差する方向における前記磁石と前記磁気センサとの相対位置を調整する第2調整機構を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置に関し、特に、ダイヤフラムによって仕切られた空間内の圧力を検出することができる圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力検出対象となる流体の圧力変化に応じてダイヤフラムを変形させ、当該変形量を磁気センサで検出して流体の圧力を検出する圧力検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この圧力検出装置においては、ダイヤフラムによって圧力室と大気圧室とに仕切られ、圧力室内に圧力検出対象となる流体が導入されている。ダイヤフラムの両面には、コイルばねがそれぞれ設けられている。圧力室と大気圧室とが等圧のときに、各コイルばねが発揮する弾性力のバランスによってダイヤフラムが所定位置に保たれる。この状態から、圧力室内の圧力が変化すると、ダイヤフラムが変形し、一方のコイルばねが伸び、他方のコイルばねが縮むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3470129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した圧力検出装置においては、コイルばねを2つ必要とするため、1つ目のコイルばねを装着した後、2つ目のコイルばねを装着するときに、1つ目のコイルばねによる力を受けながら装着作業が行われる。このため、2つのコイルばねや、ダイヤフラムを組み立てる作業が困難になるという問題がある。また、大気圧室にもコイルばねが設けられるので、圧力を検出するための磁石や磁気センサ等の検出手段を配置する場所について制約を受けるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、レイアウトの制約を緩和することができ、組み立て作業の容易化を図ることができる圧力検出装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の圧力検出装置は、正圧及び負圧の両方を検出可能な圧力検出装置であって、流体が出入り可能な連通部を有する筐体と、この筐体を仕切って第1空間と第2空間とを形成し、前記連通部に連通する第1空間内の圧力に応じて変形可能なダイヤフラムと、前記第2空間に配置され、前記ダイヤフラムの変形に応じて移動可能な移動部材と、前記ダイヤフラムを変形可能に支持する付勢部材と、前記第2空間に配置され、前記移動部材の移動を検出する検出手段とを具備し、前記付勢部材は、前記ダイヤフラム側に固定される第1部分と、前記筐体側に固定される第2部分と、前記第1部分と第2部分との間に設けられた弾性変形可能な変形部とを備えた板ばねからなり、前記第1空間に配設され、前記筐体は、前記連通部を含む第1ケースと、この第1ケースに取り付けられると共に前記移動部材が収容される第2ケースとを備え、前記第1ケースと第2ケースとによって、前記ダイヤフラムの周縁部と前記付勢部材の第2部分とが挟持されることを特徴とする。
【0007】
上記圧力検出装置によれば、付勢部材を板ばねとしたので、従来の装置のように2つのコイルばねによる付勢力を単一の板ばねによって作用させることができる。従って、コイルばねを2つ設置せずに、単一の板ばねでダイヤフラムを支持でき、それらの組み立て作業の容易化を図ることができる。また、第1空間内に付勢部材が配設されるので、第2空間に配置される検出手段等のレイアウトの自由度を高めることができる。
また、第1ケースと第2ケースとによる挟持という簡単な構成により、ダイヤフラムの周縁部と付勢部材の第2部分を容易に筐体に固定することができる。
【0008】
上記圧力検出装置において、前記移動部材は、前記第2空間を形成する前記筐体の内周面に隙間を介して位置する移動体を含み、前記ダイヤフラムは、前記移動体に取り付けられる基部と、前記基部と前記周縁部との間に位置する薄肉部とを有し、前記薄肉部は、前記移動体の外周面と前記筐体の内周面との間で前記第2空間側に突出するように折り返されて折り返し部を形成し、当該折り返し部の位置は、前記第1空間内の流体における圧力変化により変位して前記移動部材を移動可能とすることが好ましい。この場合には、圧力変化によってダイヤフラムにおける折り返し部の位置が変位することから、ダイヤフラムの反力が発生しにくくなり、圧力検出の精度を高めることができる。
【0009】
上記圧力検出装置において、前記ダイヤフラムは、前記基部から前記第1空間側に突出した突出部を有し、この突出部に前記付勢部材の第1部分が支持されると共に、前記付勢部材の変形部が前記基部から離間していることが好ましい。この場合には、第1空間が負圧となって当該第1空間側にダイヤフラムが変形しても、付勢部材の変形部とダイヤフラムの基部とが接触することを防止でき、当該接触による圧力検出への影響をなくすことができる。
【0011】
上記圧力検出装置において、前記移動部材は、前記付勢部材の第1部分より外側に位置する領域において、前記ダイヤフラムの基部に固定されていることが好ましい。この場合には、ダイヤフラムの基部が移動部材から離れることを防止することができ、薄肉部が不所望な形状に変形することを防ぐことができる。これにより、薄肉部の変形によって意図しない反力が発生することを回避でき、より安定した圧力検出を行うことが可能となる。
【0012】
上記圧力検出装置において、前記検出手段は、前記移動部材と共に移動する磁石と、この磁石に対向する磁気センサとからなることが好ましい。移動部材の移動を検出する検出手段として、移動部材の移動に伴ってLC共振回路の発振周波数を変化させるものが考えられる。しかしながら、このような検出手段においては、共振回路を構成するコイル自体が有する抵抗に起因して検出精度が低下する事態が発生し得る。上記構成によれば、磁石と磁気センサとにより検出手段が構成されることから、そのような検出精度の低下を防止することが可能となる。また、磁気センサをGMR素子とした場合、磁束の向きを検出することで磁石の磁力が弱くなっても、検出精度を確保することができる。
【0013】
上記圧力検出装置において、前記移動部材の移動方向における前記磁石と前記磁気センサとの相対位置を調整する第1調整機構を有することが好ましい。この場合には、第1調整機構によって移動部材の移動方向における磁石と磁気センサとの相対位置を調整することで、検出する圧力に対する磁気センサの出力特性を調整することができ、複数の製品における出力特性の相違をより良くなくすことができる。
【0014】
上記圧力検出装置において、前記移動部材の移動方向に対して交差する方向における前記磁石と前記磁気センサとの相対位置を調整する第2調整機構を有することが好ましい。この場合には、第2調整機構によって磁石と磁気センサとの相対位置を調整することで、検出する圧力に対する磁気センサの出力特性を調整でき、これによっても、複数の製品における出力特性の相違をより良くなくすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1空間内に付勢部材としての板ばねが配設されるので、第2空間内におけるレイアウトの制約を緩和することができ、組み立て作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る圧力検出装置の分解斜視図である。
図2】上記実施の形態に係る圧力検出装置の断面図である。
図3】上記実施の形態に係る圧力検出装置を組み立てた状態の斜視図である。
図4】上記実施の形態に係る圧力検出装置が有する下ケースの斜視図である。
図5図5A及び図5Bは、磁気センサと磁石の位置関係の説明図であり、図5C及び図5Dは、磁気センサの出力と第1空間の圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る圧力検出装置は、例えば、洗濯機などにおける水位変化に伴うエアトラップの圧力検出に用いられるものである。なお、本実施の形態に係る圧力検出装置の用途については、これらに限定されるものではなく、任意の装置の圧力検出に適用可能である。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る圧力検出装置1の分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る圧力検出装置1の断面図である。図3は、本実施の形態に係る圧力検出装置1の外観を示す斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す上下方向及び左右方向を、それぞれ「圧力検出装置1の上下方向」及び「圧力検出装置1の左右方向」と呼ぶものとする。また、図1に示す紙面手前側を「圧力検出装置1の前方側」と呼び、図1に示す紙面奥側を「圧力検出装置1の後方側」と呼ぶものとする。
【0019】
図1図3に示すように、本実施の形態に係る圧力検出装置1は、筐体2を構成する上ケース(第1ケース)3及び下ケース(第2ケース)4を備え、筐体2の内部をダイヤフラム5で仕切って第1空間S1及び第2空間S2(図2参照)を形成している。上ケース3及び下ケース4は、ダイヤフラム5及び付勢部材6の各外周側を挟み込み、下ケース4の係合凸部41が、上ケース3の係合穴31に係合することで一体化されている。ダイヤフラム5の下面側には移動部材7が取り付けられ、移動部材7の柱状部71には、保持部材8及びねじ部材9が取り付けられている。また、下ケース4には、基板10が保持されている。なお、上ケース3、下ケース4、移動部材7、保持部材8及びねじ部材9は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して形成される。
【0020】
上ケース3は、下方側に開口した蓋形状を有し、内部に第1空間S1を画成するものである。上ケース3の頂壁部32は、上面視円形状に形成され、その周囲から下方側に延伸する側壁部33が形成されている。側壁部33は、円筒状に形成されており、その周方向に所定間隔を隔てて上述した係合穴31が複数形成されている。側壁部33の内周における上部位置には、下側を開放する周溝33aが形成されている(図2参照)。周溝33aの隣接位置には、下方に突出して付勢部材6の上面に接触する突出部33bが形成されている。また、側壁部33の外周面には、外側(右側)に延伸するように管状の連通部34が連設され、連通部34は、第1空間S1に連通している。連通部34には、外部からの測定対象となる空気(気体)が通過する図示しない配管が接続される。従って、第1空間S1には、連通部34を通して圧力が検出される空気が流入あるいは流出されることとなる。
【0021】
下ケース4は、上方側に開口した容器形状を有し、内部に第2空間S2を画成するものである。下ケース4の周壁部42は、概して円筒状に形成されている。周壁部42の上端には、上方に突出して環状をなすリブ42aが形成されており、リブ42aは、上ケース3の周溝33a内に挿入される(図2参照)。周壁部42におけるリブ42aの下部内面側には、ダイヤフラム5及び付勢部材6が載置される段部からなる載置部42bが形成されている。周壁部42の外周面には、上ケース3の係合穴31に対応する位置に上述した係合凸部41が複数形成されている。係合凸部41は、その下部領域の外周縁が係合穴31の下部内周縁に当接した状態で係合しており、これにより、下ケース4に対して上ケース3が上昇することと、それらが周方向に相対回転することとが規制される。
【0022】
図4は、下ケース4を上方から見た概略斜視図である。図4に示すように、周壁部42の内周面は円筒に沿う形状に形成されている。周壁部42の下端側には、上面側に種々の段差を有する底壁部43が形成されている。底壁部43は、左側において周壁部42との間に方形状の第1開口部M1を形成している。また、底壁部43の右側では、周壁部42との間に方形状の第2開口部M2を形成している。第1開口部M1は、下ケース4の下側から見たときに、第2空間S2内に位置する保持部材8を外部に露出できるように形成されている(図2参照)。第2開口部M2の前後両側には、上下方向に延びる保持溝44がそれぞれ形成されている。保持溝44の内部には、基板10の端部が挿入されて保持されるように構成されている。なお、周壁部42の内周面は、完全な円筒面とせず、円筒状となる面に対して多少の凹み等を施した形状に形成してもよい。
【0023】
底壁部43の平面視中央位置には、上下方向に延びる円筒状の案内部45が形成されている。案内部45の内部には、ねじ部材9が挿入され、ねじ部材9の上下動と回転とが円滑に案内されるようになる。案内部45の前後両側には、上下方向に延びる角柱部46がそれぞれ連設され、各角柱部46には、ガイド溝46aが形成されている。ガイド溝46aの内部には、移動部材7の後述するガイド凸部72dが挿入される。
【0024】
ダイヤフラム5は、例えば、ゴム等の弾性材料で成形されている。ダイヤフラム5は、図2に示すように、移動部材7の上面に面接触する円盤状の基部51を有する。この基部51の上面中央位置には、突出部51aが上方向に突設され、この突出部51aは、テーパ面が形成されたフランジ部51bを上端に備えた形状に設けられる。また、基部51の上面であって突出部51aを囲む位置には、円環状リブ51cが突設されている。円環状リブ51cの高さは、フランジ部51bの下端より若干低く形成されている。これにより、円環状リブ51cの上端とフランジ部51bの下端とにより付勢部材6の第1部分61を上下方向から挟み込んで保持可能となっている。基部51の下面には、複数の係合突部51dが形成され、各係合突部51dは、移動部材7の後述する係合穴72cに嵌り合うように構成されている。
【0025】
ダイヤフラム5は、その外周に周縁部52を備えており、この周縁部52は、上ケース3の突出部33bと、下ケース4の載置部42bとにより挟まれて筐体2に固定される。周縁部52と基部51との間には、基部51よりも薄い厚さの薄肉部53が連なって形成されている。薄肉部53は、図2の断面視で第2空間S2側に凸形状に突出し、U字状をなすよう折り返された形状をなしており、その下部領域において折り返し部53aを形成している。薄肉部53は、基部51の上下動により折り返し部53aの位置が上下方向に変位するよう変形可能に構成されている。薄肉部53の厚み及び硬さは、かかる変形によって反力が生じないように設定されている。
【0026】
付勢部材6は、平面視で外形が円形状をなす板ばねからなり、第1空間S1に配設される。付勢部材6は、その中央領域を形成する第1部分61を備えている。第1部分61の面内中央位置には、ダイヤフラム5の突出部51aが貫通する丸穴61aが形成されている。丸穴61a内に突出部51aが貫通すると、円環状リブ51cの上端の上に第1部分61が載置され、円環状リブ51cの上端とフランジ部51bの下端とにより第1部分61が挟み込まれる。なお、第1部分61を載置して支持する突出部を、本実施の形態においては、円環状リブ51cとしているが、第1部分61を支持できる形状であれば、円環状に限定されない。例えば、突出部51aの周囲に、円形状や多角形状をなした複数の突出部を配設したものでも良い。
【0027】
付勢部材6は、その外周側領域を形成する円環状の第2部分62を備えている。第2部分62は、ダイヤフラム5の周縁部52と共に、上ケース3の突出部33bと、下ケース4の載置部42bとにより挟まれて筐体2に固定される。第2部分62と第1部分61との間には、弾性変形可能な変形部63が連なって設けられている。変形部63は、第1部分61の周方向90°間隔毎に4箇所の位置で形成され、それぞれの向きを異ならせただけで、同一の平面形状に形成されている。変形部63は、平面視で、第1部分61の外縁から第2部分62の内縁に向かって蛇行するように延在している。変形部63は、図2に示す状態から、第1部分61が上方及び下方の何れの方向に変位しても弾性変形可能となり、当該変位量に比例し、変位方向とは反対方向の力で第1部分61を付勢する。また、変形部63は、第1部分61が円環状リブ51cの上で支持されてダイヤフラム5に固定され、第2部分62が筐体2に固定された状態で、ダイヤフラム5の基部51と離間するように配設されている。
【0028】
移動部材7は、基部51の下面と薄肉部53とに面接触する移動体72を有する。移動体72は、平面視円形の本体板72aと、この本体板72aの外周に連なって下方に向けられた垂下部72bとを有する。本体板72aには、下面中央位置から下方に延びる柱状部71が連設され、柱状部71の外周面には、雄ねじ71aが形成されている。本体板72aの面内4箇所の位置には係合穴72cが形成され、この係合穴72cに係合突部51dが挿入された状態で係合することで、基部51の下面に移動体72が固定されている。係合穴72c及び係合突部51dは、平面視で、第1部分61より外側に位置している。垂下部72bは、下ケース4における周壁部42の内周面に隙間を介して位置しており、この隙間に薄肉部53が配設されている。垂下部72bには、内方に突出する一対のガイド凸部72d(図1で一方のみ図示)が連設されている。ガイド凸部72dは、ガイド溝46a(図4参照)内に挿入されて移動体72における周方向の回転を規制し、且つ、ガイド溝46a内で上下方向にスライド自在に構成されている。
【0029】
保持部材8は、内部に柱状部71が挿通される貫通穴81aを有する貫通部81を備えている。貫通穴81aは、柱状部71の外面と非接触となる内径寸法に設定され、柱状部71と保持部材8とが柱状部71の軸線周りで相対回転可能に設けられる。貫通部81の右側には、下方を開口する保持凹部82が形成されている(図2参照)。保持凹部82には、後述する磁石13が受容されて保持される。貫通部81の左側には、腕状をなす一対の突出部83が連なって形成されている。各突出部83の突出方向は、左方向となっており、移動部材7の移動方向となる上下方向に交差する方向に向けられている。
【0030】
ねじ部材9は、内周面に雌ねじ91aが形成された円筒状のねじ本体91を有する(図2参照)。雌ねじ91aは、柱状部71の雄ねじ71aと噛み合い、ねじ本体91を柱状部71の軸線周りに回転させることで、当該軸線方向(上下方向)にねじ本体91を移動可能に構成されている。ねじ本体91の外径寸法は、案内部45の内径寸法より若干小さく設定されている。これにより、案内部45の内周面でねじ本体91の回転が案内され、且つ、ねじ本体91の上下移動も案内される。ねじ本体91の底部には六角穴91bが形成され、この六角穴91bに六角レンチ等の工具を挿入してねじ本体91を回転操作可能に構成される。ねじ本体91の上部には、保持部材8を支持する支持部92が形成されている。支持部92は、ねじ本体91の上部から外向き突出するフランジ状に形成され、貫通部81の下面が接した状態で保持部材8を下方から支持している。
【0031】
ねじ本体91の上部には、一対の係止片93が上方に突出するよう形成されている。各係止片93は、保持部材8の貫通穴81aに挿通され、この挿通によって、ねじ部材9に対し、保持部材8が前後及び左右方向に移動することが規制される。各係止片93は、先端が鉤状に形成され、保持部材8の貫通穴81aに挿通された状態で貫通部81の上面に係止可能に設けられている。この係止状態で、支持部92と係止片93とにより保持部材8が上下方向から挟み込まれ、ねじ部材9に対し、保持部材8が上下方向に移動することが規制される。従って、ねじ部材9及び保持部材8は一体化された状態となり、この状態で、ねじ本体91の軸線周りにおいて、それらを相対回転可能に構成されている。また、係止片93による係止状態では、保持凹部82の開口側が支持部92によって閉塞され、後述する磁石13が保持凹部82から脱落不能になっている。なお、移動部材7とねじ部材9とが結合された状態において、ねじ部材9は、保持部材8を柱状部71に対して回転可能に支持する。この保持部材8及びねじ部材9は、磁石13と磁気センサ12との相対位置を調整可能な後述する第2調整機構を構成する。
【0032】
基板10は、上半部領域の前後両端側を保持溝44内に差し込んだ状態で固定される。基板10は、ハーネス11を介して不図示の外部装置と電気的に接続されている。基板10には、磁気センサ12が実装され、この磁気センサ12は、磁気抵抗効果素子の一種であるGMR(Giant Magneto−Resistive)素子によって構成されている。GMR素子は、基本的な構成として、交換バイアス層(反強磁性層)、固定層(ピン止め磁性層)、非磁性層及び自由層(フリー磁性層)をウエハー(図示せず)上に積層して形成されている。磁気センサ12は、保持部材8に保持された磁石13における磁束の向きを検出可能に設けられている。磁石13は、磁気センサ12側となる右側がN極、磁気センサ12側とは反対側となる左側がS極となり、左右方向で互いに異極となるように着磁されている。ここで、磁気センサ12及び磁石13により移動部材7の移動を検出する検出手段が構成される。
【0033】
次に、圧力検出装置1の組み立て方法について説明する。先ず、保持部材8の保持凹部82内に磁石13を挿入(圧入)してから、貫通穴81aに各係止片93を挿通して貫通部81に係止する。これにより、保持部材8とねじ部材9とが一体化され、保持凹部82が支持部92で閉塞されて磁石13が保持部材8から脱落しないように保持される。
【0034】
次いで、一体化した保持部材8及びねじ部材9に対し、移動部材7を結合する。この結合では、貫通穴81a内に柱状部71の先端を通過させ、雄ねじ71aをねじ本体91の雌ねじ91aに噛み合わせてねじ結合する。このねじ結合により、六角穴91bに工具を挿入して柱状部71の軸線周りに回転操作することで、保持部材8とねじ部材9とを柱状部71の延在方向である軸線方向(上下方向)に移動することが可能となる。
【0035】
また、移動部材7には、移動体72の上方から被せるようにダイヤフラム5を取り付ける。この取り付けにおいては、移動体72の係合穴72cに対し、ダイヤフラム5の係合突部51dを挿入して嵌合する。これにより、基部51と移動体72の本体板72aとが上下に重なり合うように移動部材7とダイヤフラム5とが一体となる。
【0036】
ダイヤフラム5の上面側には、付勢部材6を取り付ける。この取り付けにおいては、第1部分61の丸穴61a内に突出部51aを挿入し、円環状リブ51cの上端とフランジ部51bの下端とにより付勢部材6を上下方向から挟み込む。このとき、周縁部52の上面に付勢部材6における第2部分62の外周下面が面接触し、基部51の上面から変形部63が離間して非接触となる。
【0037】
以上により、保持部材8(保持される磁石13を含む)、ねじ部材9、移動部材7、ダイヤフラム5及び付勢部材6が一体に組み立てられたユニットとなり、このユニットを下ケース4の上方から収納する。この収納にあたり、案内部45内にねじ本体91を挿入し、且つ、ガイド溝46aに移動部材7のガイド凸部72dを差し込んだ状態とする。また、保持部材8の突出部83が第1開口部M1の大まかに真上に位置するよう位置合わせし、ダイヤフラム5の周縁部52を下ケース4の載置部42bに載せる。この状態から、下ケース4の上部領域に上ケース3を被せるように配設した後、上ケース3の係合穴31に係合凸部41を係合する。これにより、筐体2として上ケース3及び下ケース4が一体となり、周縁部52及び付勢部材6の第2部分62が、載置部42bと上ケース3の突出部33bとにより挟み込まれる。この状態で、付勢部材6によってダイヤフラム5が上方から支持され、ダイヤフラム5から、移動部材7と、これにねじ結合されたねじ部材9と、ねじ部材9に保持される保持部材8とが吊り下げられたような状態となる。
【0038】
基板10は、下ケース4の第2開口部M2を通じて、前後両端側を保持溝44内に差し込んだ状態として固定する。この固定の手段としては、保持溝44への圧入としたり、接着剤を用いた接着としたりすることができる。
【0039】
なお、上述の圧力検出装置1の組立方法については、一例を示したものであり、これに限定されるものではなく、組み立ての順序等、適宜変更が可能である。図2及び図3に示すように、各構成部材が組み立てられた状態とすることができれば、どのような組立方法を採用しても良い。
【0040】
このように圧力検出装置1を組み立てると、上ケース3とダイヤフラム5とによって第1空間S1が形成される。第1空間S1に配設される構成部材は、付勢部材6だけとなり、付勢部材6の中央位置となる第1部分61に突出部51a及び円環状リブ51cを介してダイヤフラム5の基部51が固定されている。
【0041】
圧力検出装置1を組み立てた状態において、下ケース4におけるダイヤフラム5の下方には第2空間S2が形成される。第2空間S2には、移動部材7と、移動部材7にねじ結合されるねじ部材9と、ねじ部材9に係止される保持部材8と、基板10とが配設されている。従って、保持部材8に保持される磁石13と、基板10に実装される磁気センサ12とにおいても、第2空間S2に配設されている。
【0042】
下ケース4に第1開口部M1及び第2開口部M2が形成されるので、第2空間S2は、大気圧と等圧に設定される。一方、第1空間S1は、上ケース3の連通部34を閉塞すると密閉された空間となり、その圧力は、連通部34を通過して第1空間S1に流入する空気によって変化する。ここで、例えば、図2に示すように、付勢部材6の上面及び下面が水平な状態なときに、第1空間S1の圧力が大気圧と等圧になるとする。この状態から、第1空間S1が大気圧より高圧の正圧となると、第1空間S1の容積が膨張しようとすることから、基部51を押し下げる力が作用して下方に変位する。この変位によって、付勢部材6の各変形部63が変形し、基部51が上昇するような弾性力を発揮する。そして、第1空間S1の圧力と、各変形部63の弾力とが均衡する位置まで基部51が下方に向かって変位する。また、第1空間S1が大気圧より低圧の負圧となった場合には、第1空間S1の容積が縮小しようとすることから、基部51を引き上げる力が作用して上方に変位する。この変位によって、付勢部材6の各変形部63が変形し、基部51が下降するような弾性力を発揮する。そして、第1空間S1の圧力と、各変形部63の弾力とが均衡する位置まで基部51が上方に向かって変位する。
【0043】
ここで、ダイヤフラム5において、基部51が上下方向に移動する際、薄肉部53の折り返し部53aの位置が上下方向に変位するように変形する。この変形では、ダイヤフラム5は、基部51が殆ど変形せずに薄肉部53だけが変形するようになる。また、基部51の上下移動に応じて移動部材7も同一の移動量で上下に移動し、ひいては、ねじ部材9を介して支持される保持部材8及びこれに保持される磁石13も同様に上下に移動する。従って、第1空間S1の圧力変化に比例して、磁石13を上下方向に変位させることができ、この変位量を後述するように検出することで、第1空間S1の圧力を検出する。
【0044】
次に、本実施の形態に係る圧力検出装置1が有する第1調整機構と、第1調整機構による調整方法について説明する。第1調整機構は、上述の柱状部71と、ねじ部材9とを備え、移動部材7の移動方向(上下方向)における磁石13と磁気センサ12との相対位置を調整可能に設けられている。この位置調整においては、先ず、第1開口部M1に棒状の治具(不図示)を挿入し、一対の突出部83の間に治具を通して保持部材8の回転を規制する。柱状部71の雄ねじ71aと、ねじ部材9の雌ねじ91aとは噛み合っているので、ねじ部材9の六角穴91bに工具を挿入して回転操作することによって、ねじ部材9及び保持部材8が上下方向に移動する。保持部材8には磁石13が保持されるので、磁石13も保持部材8と共に上下方向に移動し、磁気センサ12に対する磁石13の上下方向の相対位置が調整される。なお、治具によって保持部材8の回転が規制されるので、ねじ部材9を回転操作しても、貫通穴81aにおいて係止片93が空回りし、磁石13が左右方向で磁気センサ12に対向するよう保持部材8の向きが保たれる。
【0045】
次いで、本実施の形態に係る圧力検出装置1が有する第2調整機構と、第2調整機構による調整方法について説明する。第2調整機構は、相対回転可能なねじ部材9及び保持部材8を備え、移動部材7の移動方向(上下方向)に対して交差する方向であって、磁石13の各極を結ぶ方向(左右方向)と交差する方向、すなわち、前後方向(図2の紙面と交差する円弧に沿った方向)における磁石13と磁気センサ12との相対位置を調整可能に設けられている。この位置調整においては、先ず、六角穴91bに工具を挿入することで、柱状部71の周方向にねじ部材9が回転することを規制し、ねじ部材9及び磁石13(保持部材8)が上下に移動することを規制した状態とする。この状態で、上述の治具を第1開口部M1に挿入し、治具によって突出部83を前後方向に変位させることで、柱状部71及びねじ部材9の係止片93周りで保持部材8を回転する。すると、保持部材8の右端側に保持された磁石13が前後方向に移動し、磁石13と磁気センサ12との相対位置が調整される。
【0046】
次に、磁気センサ12の出力の調整について図5を参照して説明する。図5A及び図5Bは、磁気センサ12と磁石13の位置関係の説明図であり、図5Aは正面図、図5Bは、図5Aの左側面図である。また、図5C及び図5Dは、磁気センサ12の出力と第1空間S1の圧力との関係を示すグラフである。なお、磁気センサ12の出力調整は、本実施の形態では、製造時や製品出荷前等、圧力検出装置1での圧力検出を行う前段階において、第1空間S1及び第2空間S2の等圧状態で行われるものである。
【0047】
上述したように圧力検出装置1を組み立てた際、図5A及び図5Bに示すように、磁石13は磁気センサ12から後方向及び左方向に離れて配設される。この磁石13と磁気センサ12との位置関係において、磁気センサ12は、磁石13の磁束の向きを検出することで、磁石13の上下方向の変位量に比例して出力電圧が増減するよう構成されている。具体的には、磁気センサ12は、磁石13が下方に変位する程、出力電圧が大きくなり、磁石13が上方に変位する程、出力電圧が小さくなるように構成されている。上述のように、磁石13の上下方向の変位量は、第1空間S1の圧力変化に比例するので、図5C及び図5Dのグラフにおいて実線で示すように、第1空間S1の圧力が上昇するに従って出力電圧が大きくなる比例関係にある。
【0048】
図5A及び図5Bに示す状態から、第1調整機構によって磁石13を上下方向に移動することができる。磁石13を下方に移動すると、磁気センサ12の出力電圧が大きくなるので、図5Cのグラフにおいて、実線の上方に位置する点線で示すように磁気センサ12の出力電圧が設定される。一方、磁石13を上方に移動すると、磁気センサ12の出力電圧が小さくなるので、図5Cのグラフにおいて、実線の下方に位置する点線で示すように磁気センサ12の出力電圧が設定される。これにより、第1空間S1及び第2空間S2の等圧状態において、第1調整機構によって磁石13を上下方向に移動することで、出力電圧を一定値に設定する原点調整を行うことができる。更に、複数の圧力検出装置1を製造する場合、各圧力検出装置1において、検出する圧力に対する出力電圧を一定に保つことができ、圧力検出装置1毎に出力がばらつくことを回避することができる。
【0049】
また、図5A及び図5Bに示す状態から、第2調整機構によって磁石13を前後方向に移動することができる。磁石13を前方に移動すると、磁気センサ12に磁石13が接近するので、図5Dのグラフにおいて、実線より急勾配となる点線で示すように磁気センサ12の出力電圧が設定される。一方、磁石13を後方に移動すると、磁気センサ12から磁石13が離れるので、図5Dのグラフにおいて、実線より緩勾配となる点線で示すように磁気センサ12の出力電圧が設定される。これにより、第2調整機構によって磁石13を前後方向に移動することで、図5Dのグラフにおける傾き(単位圧力当たりの出力電圧)を一定に調整でき、この調整を複数の圧力検出装置1に対して行うことで、圧力検出装置1毎に出力がばらつくことを回避することができる。
【0050】
なお、各調整機構による位置調整を行い、磁気センサ12の出力調整が完了した後、各調整機構において相対変位可能な柱状部71、ねじ部材9及び保持部材8は接着剤によって固定される。この接着剤の注入は、第1開口部M1を通じて第2空間S2内に不図示のノズルを挿入することにより行われる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る圧力検出装置1による第1空間S1の圧力検出方法について説明する。上述したように、連通部34を出入りする気体によって第1空間S1の圧力が変化すると、この圧力変化に比例して、磁石13が上下方向に変位する。そして、磁石13が変位すると、磁気センサ12における磁石13の磁束の向きも変化する。この磁束の向きの変化によって磁気センサ12の出力電圧が変化し、当該出力電圧と原点調整した時点の出力電圧との差によって、磁気センサ12における出力電圧の変化特性から、第1空間S1の圧力値が求められる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る圧力検出装置1においては、付勢部材6を単一の板ばねとしたので、付勢部材6の穴61aに突出部51aを挿通してからダイヤフラム5を下ケース4に配設することで、付勢部材6の組み付けを完了でき、2つのコイルばねを用いた従来装置に比べ、組み立ての作業性を改善することができる。しかも、第1空間S1が正圧となって基部51が下降する場合だけでなく、第1空間S1が負圧となって基部51が上昇する場合でも、板ばねとなる付勢部材6によって付勢力を発揮することができる。これにより、第1空間S1が正圧だけでなく負圧になっても、圧力変化に比例して基部51や磁石13が変位するように薄肉部53を変形させることができ、正圧及び負圧の両方を検出することが可能となる。
【0053】
また、第1空間S1に付勢部材6が配設され、第2空間S2には付勢部材6を配設しなくてよいので、第2空間S2にスペースの余裕ができ、第2空間S2内に位置する各部材のレイアウトや形状等の設計上の自由度を高めることができる。
【0054】
更に、第1空間S1の圧力変化により、ダイヤフラム5では、折り返し部53aの位置が変位するよう薄肉部53を変形して基部51が上下に変位するので、薄肉部53の変形による反力を抑制でき、基部51の変位量と第1空間S1の圧力との比例関係を維持して圧力検出の精度を高めることができる。
【0055】
また、付勢部材6の変形部63が基部51の上面から離れた位置関係となるので、特に、第1空間S1が負圧となるような圧力変化によって、変形部63と基部51とが接触することを防止することができる。これにより、変形部63が意図しない形状に変形することを回避でき、付勢力を安定して発揮して圧力検出を安定して行うことができる。
【0056】
更に、平面視で第1部分61より外側に位置する係合穴72c及び係合突部51dが係合することで、ダイヤフラム5に移動部材7が固定されるので、基部51と移動体72とが離れて薄肉部53が不所望の形状に変形することを防止することができる。
【0057】
また、移動部材7の移動を検出する検出手段として、移動部材7の移動に伴ってLC共振回路の発振周波数を変化させるものが考えられる。しかしながら、このような検出手段においては、共振回路を構成するコイル自体が有する抵抗に起因して検出精度が低下する事態が発生し得る。上記実施の形態によれば、磁石13と磁気センサ12とにより検出手段が構成されることから、そのような検出精度の低下を防止することが可能となる。また、磁気センサ12をGMR素子としたので、磁石13の磁力が弱くなっても、検出精度を確保することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0059】
例えば、上記の実施の形態においては、第1空間S1に流れ込む流体を空気としたが、他の気体としたり、水や湯水等の液体としたりしてもよい。
【0060】
また、ダイヤフラム5は、薄肉部53等を有する形状としたが、上記実施の形態のように機能し得る限りにおいて、任意の形状を採用することができる。但し、上記実施の形態のように基部51や薄肉部53を有する構成とした方が、検出する圧力の変化に伴うダイヤフラム5の反力が発生しにくくなる点等の理由から有利となる。
【0061】
更に、磁気センサ12は、移動部材7の移動を検出できる限りにおいて、ホールICに変更してもよい。また、磁気センサ12は、コイル(L)に挿入される鉄心(コア)の量の変位によって、コイル(L)と、このコイル(L)に並列接続されたコンデンサ(C)とで構成されるLC共振回路の発振周波数が変動する検出装置に変更してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 圧力検出装置
2 筐体
3 上ケース(第1ケース)
34 連通部
4 下ケース(第2ケース)
5 ダイヤフラム
51 基部
51a 突出部
51c 円環状リブ(突出部)
52 周縁部
53 薄肉部
53a 折り返し部
6 付勢部材
61 第1部分
62 第2部分
63 変形部
7 移動部材
72 移動体
12 磁気センサ
13 磁石
S1 第1空間
S2 第2空間
図1
図2
図3
図4
図5