特許第6101636号(P6101636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101636バナジウム錯体を用いたファルネサールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101636
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】バナジウム錯体を用いたファルネサールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/34 20060101AFI20170313BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20170313BHJP
   C07F 9/00 20060101ALI20170313BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C07C45/34CSP
   C07C47/21
   C07F9/00 A
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-551684(P2013-551684)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012083343
(87)【国際公開番号】WO2013099819
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-284112(P2011-284112)
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000113780
【氏名又は名称】マナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(72)【発明者】
【氏名】井上 宗宣
(72)【発明者】
【氏名】荒木 宏史
(72)【発明者】
【氏名】田中 豪
【審査官】 伊藤 佑一
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭52−009650(JP,B1)
【文献】 Anales Real Soc. Espan. Fis. Quim., 1963, Vol.59, p.30-36
【文献】 Organic Letters, 2011, Vol.13, p.1908-1911
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化30】

で表わされる(E)−ネロリドールを、下記一般式(2)
【化31】

(式中、
は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数2〜7のアシル基であり、
、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、フェニル基、ニトロ基、カルボキシル基又はハロゲン原子である)
で表わされるバナジウム錯体の存在下に、酸化剤と反応させることを特徴とする、下記式(3)
【化32】

で表わされるファルネサールの製造方法。
【請求項2】
一般式(2)で表されるバナジウム錯体が、下記一般式(4a)
【化33】

(式中、
nは2又は3であり、
は、基R′O−であるか、あるいは単独又は一緒になって、炭素数2〜8のアルカンジオナトであり、ここでR′は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基である)
で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩から選択されるバナジウム化合物を、下記一般式(5)
OH (5)
(式中、Rは、請求項1と同義である)で表わされる化合物の存在下(R≠R′の場合)又は非存在下(R=R′の場合)に、下記一般式(6)
【化34】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、請求項1と同義である)で表わされる8−キノリノール誘導体及び必要であれば酸化剤と反応させることにより調製されるものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)で表されるバナジウム錯体が、反応系内で生成される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
下記式(1)
【化35】

で表わされる(E)−ネロリドールを、下記一般式(4a)
【化36】

(式中、n及びRは、請求項2と同義である)で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩から選択されるバナジウム化合物、下記一般式(5)
OH (5)
(式中、Rは、請求項1と同義である)で表わされる化合物及び下記一般式(6)
【化37】

(式中、R、R、R、R、R及びRは、請求項1と同義である)で表わされる8−キノリノール誘導体の存在下、酸化剤と反応させることを特徴とする、下記式(3)
【化38】

で表わされるファルネサールの製造方法。
【請求項5】
が、炭素数1〜20のアルキル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
が、3,7,11−トリメチル−1,6,10-ドデカトリエン−3−イル基又は3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリニル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(4a)で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩から選択されるバナジウム化合物が、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)又はメタバナジン酸アンモニウムである、請求項2〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)で表されるバナジウム錯体の使用量が、式(1)で表わされる(E)−ネロリドール 1モルに対して、0.05〜0.2モルである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
酸化剤が、空気、酸素、ジメチルスルホキシド又はテトラメチレンスルホキシドである請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
芳香族系溶媒中で実施される、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
80〜140℃の温度で実施される、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バナジウム錯体を用いた(E)−ネロリドールからファルネサールを製造する方法に関する。また、本発明は、新規バナジウム錯体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファルネサール(3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエナール)は、医薬、農薬及び香料などの製造中間体として用いられる重要な化合物であることが知られている。特に、(2E,6E)−ファルネサールは、抗癌剤などとして有用であるポリイソプレノイド誘導体の製造中間体となりうる(例えば、特許文献1参照)。ファルネサールには、(2E,6E)−体、(2Z,6E)−体、(2E,6Z)−体及び(2Z,6Z)−体の4種の異性体が存在するため、(2E,6E)−ファルネサールを選択的に製造する方法について各種検討がなされている。
【0003】
例えば、(2E,6E)−ファルネソール((2E,6E)−3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール)を原料として、(2E,6E)−ファルネサールを得る方法が開示されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。これらの方法はいずれも、原料として(2E,6E)−ファルネソールを用いる必要がある。しかし、ファルネサール同様、4種の異性体が存在するファルネソールの(2E,6E)−体を効率的かつ選択的に得る方法は確立されていない。
【0004】
また、安価なネロリドール(3,7,11−トリメチル−1,6,10-ドデカトリエン−3−オール)からファルネサールを得る方法も知られている。例えば、(E)−ネロリドールから、クロム酸酸化剤を用いて、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの異性体混合物を、一段階で合成する方法が開示されている(例えば、非特許文献2、3参照)。しかし、クロム酸酸化剤を用いて反応を行った場合、得られる異性体混合物中の(2E,6E)−ファルネサール比が低く、かつ反応後に多量のタール分が生成するため、通常の後処理が困難となる。さらに、この方法は毒性の強いクロム化合物を過剰に使用するため、工業的な製造、特に医薬品の製造には適用できない。
【0005】
さらに、ネロリドールからからファルネサールを得る別の方法として、テトラヒドロリナリルオルトバナデートを触媒として用い、一段階で合成する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、原料や生成物のE/Z−異性体比率については記載されておらず、また触媒入手の面で工業的な実施は困難である。
【0006】
一方、アルコールのアルデヒドへの酸化に用いられる触媒として、酸化数IV又はVのバナジウム化合物、8−キノリノール及び低級アルコールから調製できるバナジウム錯体が報告されている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、(E)−ネロリドールのような3級アリルアルコールの異性化を伴った不飽和アルデヒドへの酸化反応に用いられた例は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−40826号公報
【特許文献2】米国特許第3944623号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jounal of American Chemical Society, 124(14), 3647-3655; 2002
【非特許文献2】Synthesis, (5), 356-364; 1979
【非特許文献3】Chemistry-A European Journal, 15(44), 11918-11927; 2009
【非特許文献4】Organic Letters, 13(8), 1908-1911; 2011
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の(E)−ネロリドールを用いた(2E,6E)−ファルネサールの製造方法は、工業的に実施不可能であるか、または効率が悪く、得られる(2E,6E)−ファルネサールが高価となるという欠点を有するものであった。本発明の課題は、(2E,6E)−異性体比の高いファルネサールを(E)−ネロリドールより効率良く、かつ安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、(E)−ネロリドールをバナジウム錯体の存在下に酸化剤と反応させることにより、(2E,6E)−異性体比の高いファルネサールを簡便に製造できること、さらにかかるファルネサールの製造において使用可能な、新規バナジウム錯体及びその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化1】
で表わされる(E)−ネロリドールを、下記一般式(2)
【化2】
(式中、
は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数2〜7のアシル基であり、
、R、R、R、R及びRは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、フェニル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はハロゲン原子である)
で表わされるバナジウム錯体の存在下に、酸化剤と反応させることを特徴とする、下記式(3)
【化3】
で表わされるファルネサールの製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、下記式(1)
【化4】
で表わされる(E)−ネロリドールを、下記一般式(4a)
【化5】
(式中、
nは2又は3であり、
は、基R′O−であるか、あるいは単独又は一緒になって、炭素数2〜8のアルカンジオナトであり、ここでR′は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基である)
で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩から選択されるバナジウム化合物、下記一般式(5)
OH (5)
(式中、Rは、前記と同義である)で表わされる化合物及び下記一般式(6)
【化6】
(式中、R、R、R、R、R及びRは、前記と同義である)で表わされる8−キノリノール誘導体の存在下、酸化剤と反応させることを特徴とする、下記式(3)
【化7】
で表わされるファルネサールの製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、下記一般式(2a)
【化8】
(式中、
1aは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基であり、
2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aは、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はハロゲン原子であるが、
但し、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aのいずれもが水素原子である場合、R1aは、炭素数1〜12のアルキル基、アリル基又はベンジル基ではなく;R2aがメチル基であり、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aが水素原子である場合、R1aは、炭素数1〜4のアルキル基ではなく;R2a、R3a、R4a、R6a及びR7aが水素原子であり、R5aがメチル基又はニトロ基である場合、R1aは、エチル基ではなく;R2a、R3a、R4a、R6a及びR7aが水素原子であり、R5aがハロゲン原子であるか、又はR2a、R3a、R4a及びR6aが水素原子であり、R5a及びR7aがハロゲン原子である場合、R1aは、炭素数1〜5のアルキル基ではない)
で表わされるバナジウム錯体に関する。
【0014】
さらに本発明は、下記一般式(4a)
【化9】
(式中、n及びRは、前記と同義である)で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩から選択されるバナジウム化合物を、下記一般式(5a)
1aOH (5a)
(式中、R1aは、前記と同義である)で表わされるアルコールの存在下(R1a≠R′の場合)又は非存在下(R1a=R′の場合)に、下記一般式(6a)
【化10】
(式中、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aは、前記と同義である)で表わされる8−キノリノール誘導体及び必要であれば酸化剤と反応させることを特徴とする、下記一般式(2a)
【化11】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aは、前記と同義である)で表わされるバナジウム錯体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、医薬、農薬及び香料の製造中間体として有用なファルネサール、とりわけ(2E,6E)−ファルネサールを、安価な原料から、毒性の強い試薬を用いることなく、効率良く製造する方法として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔用語の意義〕
先ず、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる用語について説明する。各用語は、他に断りのない限り、以下の意義を有する。
【0017】
用語「炭素数1〜20のアルキル基」は、炭素数1〜20の、直鎖状又は分岐状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基を意味し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等を例示することができる。同様に「炭素数1〜6のアルキル基」は、炭素数1〜6の、直鎖状又は分岐状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基を意味し、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができる。
【0018】
用語「炭素数3〜8のシクロアルキル基」は、炭素数3〜8の、環状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基を意味し、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等を例示することができる。同様に「炭素数3〜6のシクロアルキル基」は、炭素数3〜6の、環状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基を意味し、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。なお、用語「炭素数3〜8のシクロアルキル基」および「炭素数3〜6のシクロアルキル基」は、前記環状の脂肪族飽和炭化水素の一価の基が、炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシ基等により置換されている態様も包含する。そのような例として、2−メチルシクロプロピル基、1−メチルシクロペンチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、4−メチルシクロヘキシル基、2−ヒドロキシシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0019】
用語「炭素数2〜20のアルケニル基」は、炭素数2〜20の、直鎖状又は分岐状の脂肪族不飽和炭化水素の一価の基を意味し、エテニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−ヘキセニル基、オレイル基、(E)−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエニル基、3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン−3−イル基、3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル基等を例示することができる。同様に「炭素数2〜6のアルケニル基」は、他に断りのない限り、炭素数2〜6の、直鎖状又は分岐状の脂肪族不飽和炭化水素の一価の基を意味し、エテニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−ヘキセニル基等を例示することができる。
【0020】
用語「炭素数6〜18のアリール基」は、炭素数6〜18の、芳香族化合物の一価の基を意味し、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジル基等を例示することができる。なお、用語「炭素数6〜18のアリール基」は、前記芳香族化合物の一価の基が、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子等により置換されている態様も包含する。そのような例として、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基等を挙げることができる。
【0021】
用語「炭素数7〜20のアラルキル基」は、炭素数7〜20のアリールアルキル基(ここで、アリール部分は、炭素数6〜18のアリール基であり、アルキル部分は、炭素数1〜6のアルキル基である)を意味し、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、フェネチル基、ピリジルメチル基等を例示することができる。
【0022】
用語「炭素数2〜7のアシル基」は、基RCO−(ここで、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロアルキル基又はフェニル基である)を意味し、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等を例示することができる。
【0023】
用語「炭素数1〜6のハロアルキル基」は、1個以上のハロゲン原子で置換された炭素数1〜6のアルキル基を意味し、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、3−ブロモプロピル基、4−ブロモブチル基、5−ブロモペンチル基、6−ブロモヘキシル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、3−ヨードプロピル基、4−ヨードブチル基、5−ヨードペンチル基、6−ヨードヘキシル基、フルオロメチル基、2−フルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等を例示することができる。
【0024】
用語「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、基R′O−(ここで、R′は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基である)を意味し、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を例示することができる。
【0025】
用語「炭素数1〜6のアルキルチオ基」は、基R″S−(ここで、R″は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基である)を意味し、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を例示することができる。
【0026】
用語「ハロゲン原子」又は「ハロ」は、互換可能であり、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、フッ素原子を意味する。
【0027】
〔ファルネサール(3)の製造方法〕
次に、本発明のファルネサール(3)の製造方法について詳しく述べる。
【0028】
本発明のファルネサール(3)の製造方法は、(E)−ネロリドール(1)をバナジウム錯体(2)の存在下に、酸化剤と反応させることを特徴とする。出発原料である(E)−ネロリドール(1)は市販されており、Sigma-Aldrich社等の試薬供給業者から容易に入手することができる。また、公知の方法(例えば、特開平2−4726号公報記載の方法)に準じて合成することも可能である。
【0029】
本発明のファルネサール(3)の製造方法において使用されるバナジウム錯体(2)は、下記一般式(2)
【化12】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、前記と同義である)
で表わされる。
【0030】
一般式(2)の錯体において、Rが、炭素数1〜20のアルキル基であるものが、良好な収率の点から好ましい。またRが、炭素数2〜20のアルケニル基、特に3,7,11−トリメチル−1,6,10-ドデカトリエン−3−イル基(すなわち、ネロリドールに由来するもの)又は3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエニル基(すなわち、ファルネソールに由来するもの)であるものが、調製が容易な点から好ましい。さらに一般式(2)の錯体において、R、R、R、R、R及びRが、各々独立に、水素原子又はハロゲン原子であるものが、良好な収率及び調製が容易な点から好ましい。特に、R、R、R、R、R及びRが水素原子であるもの;R、R、R及Rが水素原子であり、R及びRが塩素原子であるもの;R、R、R及Rが水素原子であり、R及びRがフッ素原子であるもの;R、R、R及Rが水素原子であり、R及びRが臭素原子であるものが好ましい。
【0031】
用いるバナジウム錯体(2)の使用量はいわゆる触媒量でもよいが、反応効率の観点から、(E)−ネロリドール(1)1モルに対して、0.05〜0.2モルが好ましく、0.05〜0.1モルがさらに好ましい。
【0032】
本発明のファルネサール(3)の製造方法で用いる酸化剤は、特に限定はなく、例えば、空気、酸素や、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド等のスルホキシド類などが使用できる。これらの酸化剤のうち2種類以上を混合しても差し支えない。生産性、取扱いの容易さの観点から、空気、酸素、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド又はこれらの酸化剤の混合物を用いることが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法において、酸化剤として、酸素を使用する場合、酸素は、他のガスと混合して用いることもでき、例えば、酸素は、空気又は不活性ガス(窒素やヘリウム等)と混合して使用することができる。
【0034】
本発明の製造方法において、酸化剤として、空気又は酸素を使用する場合、空気又は酸素を供給する方法は特に限定されず、例えば、反応溶液が接する気相を空気又は酸素に置換する方法、反応溶液が接する気相に空気又は酸素に流通させる方法、反応溶液中に空気又は酸素を吹き込む方法等を使用することができる。
【0035】
本発明の製造方法において、酸化剤として、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド等のスルホキシド類を使用する場合、反応速度と反応効率の観点から、E−ネロリドール(1)1モルに対して、1〜20モルが好ましく、1〜10モルが更に好ましく、1〜5モルが更に好ましい。
【0036】
本発明のファルネサール(3)の製造方法は溶媒中で行ってもよく、用いることのできる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エチレンジクロリド、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゾニトリル等の芳香族ニトリル系溶媒などが使用でき、これらの溶媒のうち2種類以上を混合して用いても差し支えない。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒又は芳香族ニトリル系溶媒等の芳香族系溶媒を用いることが好ましく、特に収率の観点から、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒を用いることが好ましく、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン又はこれらの混合溶媒を用いることがさらに好ましい。溶媒の使用量は、E−ネロリドール(1)に対して3〜50倍量(重量基準)が好ましく、4〜30倍量(重量基準)がさらに好ましい。
【0037】
本発明のファルネサール(3)の製造方法は、室温から180℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。良好な収率の点から、80〜140℃が好ましく、110〜130℃がさらに好ましい。
【0038】
必要に応じて反応後の溶液からファルネサール(3)を単離・精製することができる。単離・精製する方法は特に限定はなく、当業者に公知の方法、例えば、溶媒抽出、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等の汎用的な方法でファルネサール(3)を単離・精製することができる。
【0039】
〔バナジウム錯体(2)の製造〕
本発明のファルネサール(3)の製造方法において使用されるバナジウム錯体(2)は、バナジウム化合物(4)を、アルコール/酸(5)の存在下又は非存在下に、8−キノリノール誘導体(6)と反応させることにより調製されるものであってもよい。かかる反応は、必要であればさらに酸化剤の存在下に実施してもよい。
【0040】
バナジウム化合物(4)は、下記一般式(4a)
【化13】
(式中、n及びRは、前記と同義である)で表わされる化合物又はメタバナジン酸塩(4b)から選択されるものである。
【0041】
一般式(4a)の化合物としては、nが2(すなわち、バナジウム(IV))の場合、Rが、単独又は一緒になって、炭素数2〜8のアルカンジオナト、例えば、エタンジオナト(オキサラト)、ペンタン−2,4−ジオナト(アセチルアセトナト)、オクタン−2,4−ジオナト等であるものが好ましい。nが3(すなわち、バナジウム(V))の場合、Rが基R′O−(ここでR′は、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜6のシクロアルキル基である)、すなわち炭素数1〜6のアルコキシ基であるのが好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。メタバナジン酸塩(4b)としては、メタバナジン酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)又はアンモニウム塩が好ましい。例えば、トリエトキシバナジウム(V)オキシド、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)、オキシしゅう酸バナジウム(IV)、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム等が市販されており、Sigma-Aldrich社等の試薬供給業者から容易に入手することができる。取扱い、入手の容易さの観点から、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)、メタバナジン酸アンモニウムが好ましい。
【0042】
アルコール/酸(5)は、下記一般式(5)
OH (5)
(式中、Rの意味及び好ましい態様は、前記と同義である)で表わされるアルコール又はカルボン酸化合物である。したがって、好ましいアルコール/酸(5)として、炭素数1〜20の飽和アルコール、炭素数2〜20の不飽和アルコール、特に、3,7,11−トリメチル−1,6,10-ドデカトリエン−3−オール(すなわち、ネロリドール)又は3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール(すなわち、ファルネソール)、あるいは炭素数2〜7の飽和カルボン酸、特に酢酸等を例示することができる。これらは市販されており、Sigma-Aldrich社等の試薬供給業者から容易に入手が可能である。アルコール/酸(5)の使用量はバナジウム化合物(4)1モルに対して1モル以上用いればよい。しかしながら、バナジウム化合物(4)として、一般式(4a)において、Rが基R′O−である化合物を、アルコール/酸(5)の非存在下に、8−キノリノール誘導体(6)及び必要であれば酸化剤と反応させると、一般式(2)において、R=R′であるバナジウム錯体を得ることができる。したがって、R=R′である場合、バナジウム錯体(2)の製造は、アルコール/酸(5)の非存在下に実施することができる。
【0043】
8−キノリノール誘導体(6)は、下記一般式(6)
【化14】
(式中、R、R、R、R、R及びRの意味及び好ましい態様は、前記と同義である)で表わされる。したがって、好ましい8−キノリノール誘導体(6)として、8−キノリノール、5−フルオロ−8−キノリノール、5,7−ジフルオロ−8−キノリノール、5,7−ジクロロ−8−キノリノール、5,7−ジブロモ−8−キノリノール等を例示することができる。これらの一部は市販されており、Sigma-Aldrich社等の試薬供給業者から入手が可能である。また、既知の方法に従って容易に調製が可能である。8−キノリノール誘導体の使用量はバナジウム化合物(4)1モルに対して2モル以上用いればよい。
【0044】
バナジウム錯体(2)の製造では、必要であれば酸化剤を用いることができる。用いることのできる酸化剤は、特に限定はなく、例えば、空気、酸素や、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド等のスルホキシド類などが使用できる。これらの酸化剤のうち2種類以上を混合しても差し支えない。生産性、取扱いの容易さの観点から、空気、酸素、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド又はこれらの酸化剤の混合物を用いることが好ましい。これら酸化剤の使用方法及び使用量などは、上述の〔ファルネサール(3)の製造方法〕の記載に準じる。
【0045】
バナジウム錯体(2)の製造は、溶媒中で行ってもよく、用いることのできる溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されず、所望する反応温度に応じて適宜選択される。例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エチレンジクロリド、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾントリル等のニトリル系溶媒などが使用できる。また溶媒を兼ねて、アルコール/酸(5)を過剰量で使用してもよい。これらの溶媒のうち2種類以上を混合して用いても差し支えない。収率の観点から、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒、ニトリル系溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることがさらに好ましい。
【0046】
バナジウム錯体(2)の製造は、0℃から180℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。良好な収率の点から、室温が好ましい。
【0047】
必要に応じて反応後の溶液からバナジウム錯体(2)を単離・精製することができる。単離・精製する方法は特に限定はなく、当業者に公知の方法、例えば、溶媒抽出、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等の汎用的な方法でバナジウム錯体(2)を単離・精製することができる。
【0048】
〔反応系内で生成されたバナジウム錯体(2)による製造方法〕
本発明のファルネサール(3)の製造方法において使用されるバナジウム錯体(2)は、反応系内で生成されるものであってもよい。例えば、上述のような方法に従い、バナジウム錯体(2)を調製した後、これを単離・精製することなく、続く(E)−ネロリドール(1)との反応に用いてもよい。あるいは(E)−ネロリドール(1)を、バナジウム化合物(4)、アルコール/酸(5)及び8−キノリノール誘導体(6)の存在下、酸化剤と反応させることにより、本発明のファルネサール(3)の製造方法を実施することもできる。
【0049】
したがって本発明はまた、(E)−ネロリドール(1)を、バナジウム化合物(4)、アルコール/酸(5)及び8−キノリノール誘導体(6)の存在下、酸化剤と反応させることを特徴とする、ファルネサール(3)の製造方法も提供する。かかる製造方法では、バナジウム化合物(4)の量は、(E)−ネロリドール(1)1モルに対して、0.05〜0.2モルが好ましく、0.05〜0.1モルがさらに好ましい。バナジウム化合物(4)に対するアルコール/酸(5)及び8−キノリノール誘導体(6)の量は、前記と同義である。但し、(E)−ネロリドール(1)はアルコールとして働くため、かかる製造方法ではアルコール/酸(5)は別途添加しなくてもよい。
【0050】
〔新規バナジウム錯体(2a)及びその製造方法〕
本発明は、下記一般式(2a)
【化15】
(式中、R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aは、前記と同義である)
で表わされる新規なバナジウム錯体を提供する。
【0051】
かかる新規なバナジウム錯体は、バナジウム化合物(4)を、下記一般式(5a)
1aOH (5a)
(式中、R1aは、前記と同義である)で表わされるアルコールの存在下又は非存在下に、下記一般式(6a)
【化16】
(式中、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a及びR7aは、前記と同義である)で表わされる8−キノリノール誘導体、及び必要であれば酸化剤と反応させることにより製造することができる。その反応条件は、上述の〔バナジウム錯体(2)の製造〕の記載に準じるものである。なお同様に、R1a=R′である場合、バナジウム錯体(2a)の製造は、アルコール(5a)の非存在下に実施することができる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の様態を明らかにするために実施例を示すが、本発明はここに示す実施例のみに限定されるわけではない。
【0053】
実施例で得られた反応溶液は、ガスクロマトグラフィー分析を行い、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの純度を面積百分率にて算出した。測定条件は以下の通りである。
【0054】
装置:GC−14A(島津製作所)
カラム:HP−ULTRA1(Agilent Technologies)
25m×I.D.0.32mm、0.52μmdf
カラム温度:100℃→[10℃/min]→250℃
インジェクション温度:250℃
キャリヤーガス:ヘリウムガス
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
【0055】
また、参考例及び実施例で単離した化合物のNMRスペクトルの測定条件は以下のとおりである。
【0056】
化合物と重CDCl(Cambrige Isotope Laboratories, Inc.製、0.05%TMS含有)とを混合した溶液を調製し、NMR(ブルカー(株)製 AVANCE 400)にて、H−NMR測定を行った。
【0057】
参考例1
【化17】
ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)(3.64g、20.6mmol)を2−プロパノール(100mL)に懸濁させ、8−キノリノール(5.97g、41.1mmol)を添加した。これを室温で7時間撹拌を行った後、析出した結晶をろ過し、2−プロパノール(20mL)で洗浄した。得られた湿結晶を、減圧下、40℃で17時間乾燥を行い、上記式(2−1)で表わされるバナジウム錯体(以下、「i−Pr錯体」と称する)(6.42g、収率75.2%)を得た。
【0058】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ8.60(s,1H),8.46(s,1H),8.09(d,1H,J=8.0Hz),8.02(d,1H,J=8.4Hz),7.51−7.56(m,2H),7.15−7.22(m,6H),6.26−6.32(m,1H),1.53(d,3H,J=11.6Hz),1.49(d,3H,J=6.4Hz)
【0059】
製造実施例1
【化18】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)(182mg、0.69mmol)をアセトニトリル(5mL)に懸濁させ、8−キノリノール(199mg、1.37mmol)及びフェノール(5mL)を添加した。これを室温で6時間撹拌を行った後、溶媒を減圧留去した。残渣にジイソプロピルエーテル(10mL)を加えた後、析出した結晶をろ過し、ジイソプロピルエーテル(5mL)で洗浄した。得られた湿結晶を、減圧下、40℃で7時間乾燥を行い、上記式(2a−1)で表わされるバナジウム錯体(264mg、収率85.7%)を得た。
【0060】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ8.64(d,1H,J=4.4Hz),8.49(d,1H,J=3.2Hz),8.15(d,1H,J=7.2Hz),8.04(d,1H,J=7.2Hz),7.54−7.60(m,2H),7.27−7.31(m,6H),7.17−7.23(m,4H),6.95−6.99(m,1H)
【0061】
製造実施例2
【化19】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)(182mg、0.69mmol)をアセトニトリル(5mL)に懸濁させ、8−キノリノール(199mg、1.37mmol)及び1−オクタデカノール(370mg、1.37mmol)を添加した。これを室温で5時間撹拌を行った後、析出した結晶をろ過し、アセトニトリル(5mL)で洗浄した。得られた湿結晶を、テトラヒドロフラン(5mL)に懸濁させ、室温で1時間撹拌を行った後、ろ過し、テトラヒドロフラン(5mL)で洗浄した。得られた湿結晶を、減圧下、40℃で16時間乾燥を行い、上記式(2a−2)で表わされるバナジウム錯体(285mg、収率66.4%)を得た。
【0062】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(d,1H,J=4.8Hz),8.47(d,1H,J=4.4Hz),8.11(d,1H,J=8.3Hz),8.03(d,1H,J=8.2Hz),7.52(t,2H,J=7.8Hz),7.14−7.25(m,6H),6.03(dt,1H,J=6.5,11.1Hz),5.63(dt,1H,J=6.5,11.1Hz),1.85(t,2H,6.5Hz),1.16−1.43(m,30H),0.88(t,3H,J=7.0Hz)
【0063】
製造実施例3
【化20】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
8−キノリノール(618mg、4.3mmol)をアセトニトリル(7mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.5mL、2.1mmol)、フェネチルアルコール(3.8mL、32mmol)を加えて、室温で18時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧下留去し、得られた残渣にヘキサンを加えて固化させ、生成した固体をろ取後、減圧下乾燥して、上記式(2a−3)で表わされるバナジウム錯体(445mg、44%)を得た。
【0064】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(d,1H,J=4.6Hz),8.44(d,1H,J=4.6Hz),8.12(d,1H,J=8.2Hz),8.04(d,1H,J=8.2Hz),7.56(dd,1H,J=4.6,8.2Hz),7.54(dd,1H,J=4.6,8.2Hz),7.12−7.30(m,7H),7.06−7.09(4H,m),6.12(ddd,1H,J=6.5,8.0,14.5Hz),5.80(ddd,1H,J=6.5,8.0,14.5Hz),3.27(ddd,1H,J=6.5,8.0,13.8Hz),3.11(ddd,1H,J=6.5,8.0,13.8Hz)
【0065】
製造実施例4
【化21】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)(182mg、0.69mmol)をアセトニトリル(5mL)に懸濁させ、8−キノリノール(199mg、1.37mmol)及び(E)−ネロリドール(305mg、1.37mmol)を添加した。これを室温で5時間撹拌を行った後、ジイソプロピルエーテル(5mL)を注入した。析出した結晶をろ過し、ジイソプロピルエーテル(5mL)で洗浄した。得られた湿結晶を、減圧下、40℃で6時間乾燥を行い、上記式(2a−4)で表わされるバナジウム錯体(232mg、収率58.6%)を得た。
【0066】
製造実施例5
【化22】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
5,7−ジブロモ−8−キノリノール(1.29g、4.3mmol)をアセトニトリル(7mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.5mL、2.1mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−5)で表わされるバナジウム錯体(977mg、63%)を得た。
【0067】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.60(dd,1H,J=1.2,4.8Hz),8.40(dd,1H,J=1.3,4.5Hz),8.37(dd,1H,J=1.3,8.4Hz),8.31(dd,1H,J=1.2,8.6Hz),8.00(s,1H),7.93(s,1H),7.44(dd,1H,J=4.8,8.6Hz),7.38(dd,1H,J=4.5,8.4Hz),6.54(sept,1H,J=6.1Hz),1.62(d,3H,J=6.1Hz),1.46(d,3H,J=6.1Hz)
【0068】
製造実施例6
【化23】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
5−ニトロ−8−キノリノール(810mg、4.3mmol)をアセトニトリル(7mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.5mL、2.1mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−6)で表わされるバナジウム錯体(974mg、91%)を得た。
【0069】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):9.45(dd,1H,J=1.2,8.8Hz),9.32(dd,1H,J=1.3,8.8Hz),8.77(d,1H,J=8.8Hz),8.72(d,1H,J=8.8Hz),8.71(dd,1H,J=1.2,4.5Hz),8.50(dd,1H,J=1.3,4.5Hz),7.61(dd,1H,J=4.5,8.8Hz),7.53(dd,1H,J=4.5,8.8Hz),7.20(d,1H,J=4.5Hz),7.14(d,1H,J=4.5Hz),6.56(sept,1H,J=6.2Hz),1.57(d,3H,J=6.2Hz),1.50(d,3H,J=6.2Hz)
【0070】
製造実施例7
【化24】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
7−フェニル−8−キノリノール(111mg、0.50mmol)をアセトニトリル(1mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(59μL、0.25mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−7)で表わされるバナジウム錯体(71mg,50%)を得た。
【0071】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.44(dd,1H,J=1.3,4.5Hz),8.34(dd,1H,J=1.3,4.5Hz),8.23(dd,2H,J=1.3,8.5Hz),8.17(dd,2H,J=1.3,8.5Hz),8.05(dd,1H,J=1.3,8.2Hz),8.00(dd,1H,J=1.3,8.2Hz),7.86(d,1H,J=8.5Hz),7.80(d,1H,J=8.5Hz),7.59(m,2H),7.54(m,2H),7.42(m,1H),7.39(m,1H),7.29(d,1H,J=8.5Hz),7.22(d,1H,J=8.5Hz),7.15(dd,1H,J=4.5,8.2Hz),7.12(dd,1H,J=4.5,8.2Hz),6.31(sept,1H,J=6.1Hz),1.55(d,3H,J=6.1Hz),1.47(d,3H,J=6.1Hz)
【0072】
製造実施例8
【化25】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
2−メチル−8−キノリノール(678mg、4.3mmol)をアセトニトリル(7mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.5mL、2.1mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−8)で表わされるバナジウム錯体(817mg、87%)を得た。
【0073】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):7.84(d,2H,J=8.3Hz),7.38(t,2H,J=7.8Hz),7.07(d,2H,J=8.3Hz),7.00(d,2H,J=7.8Hz),6.99(d,2H,J=7.8Hz),6.41(sept,1H,J=6.1Hz),2.93(s,6H),1.52(d,6H,J=6.1Hz)
【0074】
製造実施例9
【化26】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
2−シアノ−8−キノリノール(289mg、1.7mmol)をアセトニトリル(3mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.2mL、0.85mmol)を加えて、室温で24時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−9)で表わされるバナジウム錯体(382mg、97%)を得た。
【0075】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.25(d,2H,J=8.3Hz),7.74(t,2H,J=8.0Hz),7.58(d,2H,J=8.3Hz),7.41(d,2H,J=8.0Hz),7.29(d,2H,J=8.0Hz),6.43(sept,1H,J=6.2Hz),1.52(d,6H,J=6.2Hz)
【0076】
製造実施例10
【化27】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
7−tert−ブチル−8−キノリノール(341mg、1.7mmol)をアセトニトリル(3mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.2mL、0.85mmol)を加えて、室温で16時間撹拌した。生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジエチルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−10)で表わされるバナジウム錯体(322mg、72%)を得た。
【0077】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.49(dd,1H,J=1.4,4.5Hz),8.35(dd,1H,J=1.4,4.5Hz),8.02(dd,1H,J=1.4,8.3Hz),7.95(dd,1H,J=1.4,8.3Hz),7.64(d,1H,J=8.6Hz),7.63(d,1H,J=8.6Hz),7.16(d,1H,J=8.6Hz),7.10(dd,1H,J=4.5,8.3Hz),7.09(d,1H,J=8.6Hz),7.06(dd,1H,J=4.5,8.3Hz),6.23(sept,1H,J=6.1Hz),1.73(s,9H),1.69(s,9H),1.53(d,3H,J=6.1Hz),1.43(d,3H,J=6.1Hz)
【0078】
製造実施例11
【化28】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
5−ブロモ−7−tert−ブチル−8−キノリノール(479mg、1.7mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解し、トリイソプロポキシバナジウム(V)オキシド(0.2mL、0.85mmol)を加えて、室温で23時間撹拌した。反応液を、減圧下溶媒を留去し、得られた固体を減圧下乾燥して、上記式(2a−11)で表わされるバナジウム錯体(554mg、97%)を得た。
【0079】
製造実施例12
【化29】
で表わされる、バナジウム錯体の合成
ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)(182mg、0.69mmol)をアセトニトリル(5mL)に懸濁させ、8−キノリノール(199mg、1.37mmol)及びシクロヘキサノール(5mL)を添加した。これを室温で20時間撹拌を行った後、溶媒を減圧留去した。残渣にジイソプロピルエーテル(10mL)を加えた後、生成した沈殿物をろ取し、得られた固体をジイソプロピルエーテルで洗浄後、減圧下乾燥して、上記式(2a−12)で表わされるバナジウム錯体(266mg、85%)を得た。
【0080】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(d,1H,J=3.9Hz),8.46(d,1H,J=3.9Hz),8.10(d,1H,J=8.4Hz),8.03(d,1H,J=8.4Hz),7.54(m,2H),7.14−7.31(m,6H),6.04(m,1H),2.30(m,2H),1.29−1.78(m,7H),1.14(m,1H)
【0081】
実施例1〜15
(E)−ネロリドール(100mg、0.45mmol)をクロロベンゼン(MCB,2.0g)またはo−ジクロロベンゼン(DCB,2.0g)に溶解し、表1に示されるバナジウム錯体(0.045mmol)を加え、空気気流下、130℃で反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの生成をガスクロマトグラフィー分析で確認した。GC収率、異性体比((2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール)を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例16
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をo−ジクロロベンゼン(2.0g)に溶解し、i−Pr錯体(18.6mg,0.045mmol)を加え、空気気流下、130℃で反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの生成をガスクロマトグラフィー分析で確認した。GC収率及び異性体比((2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール)を表2に示す。反応液を、減圧下溶媒を留去し、得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1 Rf値=0.5)で精製して、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの異性体混合物(47mg,収率47.5%,(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=81.2:11.4,異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=7.12)を得た。
【0084】
(2E,6E)−ファルネサール:H−NMR(400MHz,CDCl)δ9.99(d,1H,J=8.0Hz),5.89(d,1H,J=8.0Hz),5.03−5.13(m,2H),2.18−2.29(m,4H),2.17(d,3H,J=1.2Hz),2.02−2.11(m,2H),1.94−2.02(m,2H),1.68(s,3H),1.61(s,3H),1.60(s,3H);
(2Z,6E)−ファルネサール:H−NMR(400MHz,CDCl)δ9.92(d,1H,J=8.2Hz),5.88(d,1H,J=8.2Hz),5.03−5.16(m,2H),2.60(t,2H,J=7.5Hz),2.21−2.30(m,2H),2.01−2.10(m,2H),1.94−2.01(m,2H),1.99(d,3H,J=1.2Hz),1.68(s,3H),1.60(s,6H)
【0085】
実施例17〜19
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)を表2に示す溶媒(2.0g)に溶解し、i−Pr錯体(18.6mg,0.045mmol)を加え、空気気流下、130℃で反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの生成をガスクロマトグラフィー分析で確認した。GC収率及び異性体比((2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール)を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例20
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2.0g)に溶解し、i−Pr錯体(9.3mg,0.0225mmol)を加え、空気気流下、130℃で23時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:57.1%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:5.8%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=9.84)を得たことを確認した。
【0088】
実施例21
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2.0g)に溶解し、i−Pr錯体(18.6mg,0.045mmol)を加え、空気気流下、100℃で23時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:70.1%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:8.4%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=8.35)を得たことを確認した。
【0089】
実施例22
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2.0g)に溶解し、i−Pr錯体(18.6mg,0.045mmol)、ジメチルスルホキシド(70mg,0.9mmol)を加え、130℃で21時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:66.4%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:8.6%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=7.72)を得たことを確認した。
【0090】
実施例23〜25
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2.0g)に溶解し、8−キノリノール(13mg,0.09mmol)、表3に示されるバナジウム化合物(0.045mmol)を加え、空気気流下、130℃で反応を行った。室温までし、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの生成をガスクロマトグラフィー分析で確認した。GC収率及び異性体比((2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール)を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例26
(E)−ネロリドール(1g,4.5mmol)をクロロベンゼン(5g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(53mg,0.45mmol)、8−キノリノール(131mg,0.90mmol)を加えて、空気をバブリングしながら130℃で12時間反応を行った。室温まで冷却し、得られた反応液を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)を用いてクロロベンゼンおよびバナジウム錯体を除去し、黄色油状の粗生成物(589mg,(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:65.4%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:8.04%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=8.1)を得た。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1 Rf値=0.5)で精製して、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの異性体混合物(478mg,収率48%,(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=68.7:10.9,(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=6.3)を得た。
【0093】
実施例27
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(5.3mg,0.045mmol)、8−キノリノール(13mg,0.09mmol)を加えて、酸素雰囲気下130℃で12時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:67.7%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:7.6%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=8.91)を得たことを確認した。
【0094】
実施例28
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(5.3mg,0.045mmol)、5,7−ジブロモ−8−キノリノール(27mg,0.09mmol)、ジメチルスルホキシド(70mg,0.9mmol)を加えて、130℃で10時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:81.6%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:18.4%)(異性体比:(2E,6E)−体/(2Z,6E)−体=4.43)で得たことを確認した。
【0095】
実施例29
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(5.3mg,0.045mmol)、5,7−ジクロロ−8−キノリノール(19mg,0.09mmol)、ジメチルスルホキシド(70mg,0.9mmol)を加えて、130℃で7.5時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:86.8%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:13.2%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=6.58)を得たことを確認した。
【0096】
実施例30
(E)−ネロリドール(100mg,0.45mmol)をクロロベンゼン(2g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(5.3mg,0.045mmol)、5−フルオロ−8−キノリノール(15mg,0.09mmol)、ジメチルスルホキシド(70mg,0.9mmol)を加えて、130℃で8.5時間反応を行った。室温まで冷却し、(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:92.3%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:7.7%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=11.99)を得たことを確認した。
【0097】
実施例31
(E)−ネロリドール(1g,4.5mmol)をクロロベンゼン(5g)に溶解し、メタバナジン酸アンモニウム(53mg,0.45mmol)、8−キノリノール(131mg,0.90mmol)、ジメチルスルホキシド(704mg,9.0mmol)を加えて、空気をバブリングしながら130℃で7時間反応を行った。室温まで冷却し、得られた反応液を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)を用いてクロロベンゼンおよびバナジウム錯体を除去し、黄色油状の粗生成物(633mg,(2E,6E)−ファルネサール(GC収率:62.6%)及び(2Z,6E)−ファルネサール(GC収率:8.8%)(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=7.1)を得た。この粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1 Rf値=0.5)で精製して、(2E,6E)−ファルネサール及び(2Z,6E)−ファルネサールの異性体混合物(457mg,収率46%,(2E,6E)−ファルネサール:(2Z,6E)−ファルネサール=66.5:11.0,(異性体比:(2E,6E)−ファルネサール/(2Z,6E)−ファルネサール=6.0)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の製造方法によれば、医薬、農薬及び香料の製造中間体として有用なファルネサール、とりわけ(2E,6E)−ファルネサールを、安価な原料から、毒性の強い試薬を用いることなく、効率良く製造することが可能となる。よって、本発明の方法は、工業的スケールでの製法として利用可能である。