特許第6101640号(P6101640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101640高圧線送電塔及び風力タービン鉄塔のためのリフト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101640
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】高圧線送電塔及び風力タービン鉄塔のためのリフト
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/00 20060101AFI20170313BHJP
   F03D 13/00 20160101ALI20170313BHJP
【FI】
   B66B9/00 C
   F03D13/00
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-557051(P2013-557051)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2014-512318(P2014-512318A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】EP2012053595
(87)【国際公開番号】WO2012119932
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月27日
(31)【優先権主張番号】00402/11
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】510066260
【氏名又は名称】ハイステップ・システムズ・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】マウラー・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】モーゼッティ・パスカル
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−338480(JP,A)
【文献】 特開平08−012219(JP,A)
【文献】 特開平10−203790(JP,A)
【文献】 特開2009−107746(JP,A)
【文献】 特表2010−538937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/00
F03D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に高圧線送電塔、風力タービンのための鉄塔、建造物、高層倉庫などのような高さあるいは少なくとも大幅な垂直方向の距離を克服するための装置であって、
− 少なくとも長手方向に延在するレール状の1つの形鋼(7)又はガイド要素と、
− 前記形鋼又はガイド要素に沿って昇降移動可能な駆動部分(3)及び少なくとも1人の人を受容するためのプラットフォーム(5)で構成され、前記形鋼に着脱自在に固定された少なくとも1つのリフト要素と
を備え、前記リフト要素に設けられた、電池(49)、バッテリ又は燃料タンクのようなエネルギー貯蔵装置から駆動部へエネルギー供給可能であり、前記リフト要素が1人の人によって持ち運び可能であること、及び前記リフト要素が、ロッカスイッチ(73)を有する側方の把持部(75)が設けられた、保護カバー(65)を有するヘッド部(13)を備え、該ヘッド部(13)の左側にも、また右側にも前記ロッカスイッチ(73)が設けられていることを特徴とする前記装置。
【請求項2】
前記電池(49)、前記バッテリ又は前記燃料タンクのような前記エネルギー貯蔵装置が、着脱自在に前記リフト要素、好ましくは前記プラットフォーム(5)に配置されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記プラットフォーム(5)が、前記駆動部分(3)に着脱自在に結合されていることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記リフト要素が、レール状の前記形鋼によって支持可能でありつつ独立しているとともに、持ち運び性及び耐負荷性のために、少なくとも部分的にアルミニウム若しくはアルミニウム合金、繊維強化性複合材料及び/又はこれに類似のもので構成された軽量構造で製造されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
レール状の前記形鋼がU字状、V字状又は少なくともほぼ直線状であるバンド状に形成されていること、及び前記駆動部分において、長手方向に見てそれぞれ前記形鋼を側方で包囲する固定部材が前記駆動部分に設けられており、前記駆動部分の前記形鋼における確実な固定を保障するために、前記固定部材がその前記駆動部分を固定する位置において係合可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
駆動部からレール状の前記形鋼におけるラック状の孔又は開口部へ力を伝達するために、前記駆動部分が少なくとも1つの歯車を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記駆動部分に非常停止装置が設けられており、該非常停止装置が、基準から外れた動作条件において自動的に非常停止が作動されるよう位置センサ、運動センサ及び/又は速度センサに接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
レール状の前記形鋼が、長手方向に延在する1つのラック部を少なくとも備えた、互いに接合可能又は差込可能な少なくとも2つ又はそれより多くの形鋼要素から成り、該形鋼要素それぞれの少なくとも1つの壁部において延在しつつ均等な間隔をあけられた第1の穿孔部が存在するとともに、該第1の穿孔部が前記ラック部に連結されていること、及びそれぞれ2つの前記形鋼要素が、これら両形鋼要素の各壁部に隣接するために設けられつつ長手方向に延在する、第2の穿孔部を有する少なくとも1つの他の壁部を備えた結合要素に結合されており、前記第2の穿孔部が前記各形鋼要素の壁部における前記第1の穿孔部と互いに位置が対応するものであり、これら第1の穿孔部が前記壁部において一致した間隔をあけられており、そのため互いに位置が対応するものであり、前記形鋼要素及び前記結合要素を前記穿孔部内で互いに固結するために、リベット、ボルト、差込ピンなどのような前記結合部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記固定部材が、前記駆動部分のレール状の前記形鋼への当接時に、前記固定部材のそれぞれの側方において前記形鋼を後方から係合するようにロック可能あるいは折畳み可能であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記リフト要素を使用する人を保護するためにベルトが設けられていること、及び前記ベルトの確実な配置を保証する監視センサが設けられており、人が前記ベルトによって拘束されている場合にのみ前記リフト要素の動作が実行可能であるように前記リフト要素の動作が前記監視センサと連携されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記プラットフォームの交換によっても前記エネルギー貯蔵装置の交換が可能であるか、あるいは前記駆動部分から離間して前記エネルギー貯蔵装置の再充電が実現可能であるよう、前記エネルギー貯蔵装置が前記プラットフォームに着脱自在に配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記駆動部分あるいは前記リフト要素が、無線で遠隔制御されて動作可能であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
高圧線送電塔、風力タービンの鉄塔及びこれらに類似のもののような高い鉄塔へ登るための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いる方法において、
前記鉄塔に固定されつつ長手方向に延長されたレール状の形鋼又はガイド要素において、該形鋼又はガイド要素から独立し、可動で、好ましくは持ち運び可能であリフト要素が、前記形鋼又は前記ガイド要素に後方から係合するか、若しくはこれに係合する係入可能な保持部材によって前記形鋼又は前記ガイド要素に配置されること、駆動部分に着脱自在に結合されるプラットフォームが少なくとも1人の人によって上昇されるか、又は荷物によって負荷をうけること、及び前記駆動部分が、レール状の前記形鋼又は前記ガイド要素に沿って前記鉄塔において上方へ走行するために、電池、バッテリ若しくは燃料タンクのようなエネルギー貯蔵装置からエネルギー供給されて作動されることを特徴とする方法。
【請求項14】
上昇の終了後及び再度の下降後、場合によっては他の鉄塔へ登るために使用するために、特に駆動部分であるリフト要素が、再度レール状の前記形鋼又は前記ガイド要素から離間されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高圧線送電塔及び風力タービン鉄塔に登るための、請求項1に基づく内容による装置並びに例えば高圧線送電塔又は風力タービン鉄塔の固定のための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高圧線送電塔、風力タービンのための鉄塔などのような高い鉄塔についてのメンテナンス作業及び修理作業のために、高められた安全性要求が重要であり、そのため、手間がかかり、かつ、コストのかかるリフトシステム又はガイドシステムをこれら鉄塔内又はこれら鉄塔に配置する必要がある。しかしながら、ガイドへの昇降は危険であり、例えばダルムシュタット工科大学の調査によれば、事故のうち約70%が、例えば上述のような高圧線送電塔に固設されたガイドの上昇に関連して起きている。
【0003】
従来技術においては一連のいわゆる上昇補助具が記載されており、これら上昇補助具は、高い物体に登るために提案されている。例えば、特許文献1には、上方へ垂直に延びる区間を進むための装置が開示されている。これには、筋力によって操作可能な上昇補助具が記載されており、この上昇補助具は、位置固定されて設けられたガイドにおいてキャタピラ状に昇降移動可能となっている。他の上昇補助具が例えば引用文献2〜4に記載されている。
【0004】
また、特許文献5には救助ガイド又は救助リフトのような救助装置が記載されており、この救助装置は、建物の正面において、ラック状に形成されたガイド面を昇降移動できるようになっている。このとき、救助されるべき人がベルトシステムによってスライダ又はリフトに保持され、その他、人の確実な救助が可能となるよう、自動的に作用するブレーキシステムが設けられている。このようなシステムは、動作において手間がかかりすぎ、コストが大きすぎ、及び鈍重すぎるため、ドイツのみで500000本に達する高圧線送電塔に対して不適である。
【0005】
そして、特許文献6には例えば高圧線送電塔の上昇及び/又は下降のための装置が記載されており、主に、手動にもモータによる駆動にも使用可能な2つの分離された上昇コンソールによって上昇がなされるようになっている。1つの実施形態によれば、両上昇コンソールを互いに連結してリフトとして動作させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10201965号明細書
【特許文献2】米国特許第3968858号明細書
【特許文献3】米国特許第4310070号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/051341号
【特許文献5】米国特許第4828072号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/016461号明細書
【特許文献7】国際公開第2009/034010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、全ての公知のシステムは、例えば上述の高圧線送電塔の上昇が高い安全性規定により非常に時間がかかるとともに面倒であり、当該システムが特に特に想定されるコスト、特に動作におけるコストが大きすぎるという欠点を有している。
【0008】
他の欠点は、上昇装置あるいはリフトの重量が大きく、その結果、様々な鉄塔における使用が、例えば運搬車両による鉄塔から次の鉄塔への面倒な運搬を引き起こすという点にある。
【0009】
そこで、本発明の目的とするところは、安価で、簡易に取り付けることができ、簡易に使用でき、特に上述の高圧線送電塔への迅速、確実かつ単純な上昇を可能にする装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、鉄塔に配置された固定用形鋼から独立しているとともに様々な鉄塔において使用可能であるかあるいは持ち運び可能であって容易に運搬可能な上昇装置を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の記載に基づく装置が提案される。
【0012】
また、特に高圧線送電塔、風力タービンのための鉄塔、建造物、高層倉庫などを登るための装置が提案されており、この装置は、長手方向に延在するレール状の1つの形鋼又はガイド要素と、前記形鋼又はガイド要素に着脱自在に固定可能であり、支持可能であり、持ち運び可能な、前記形鋼又はガイド要素に沿って昇降移動可能な駆動部分及び少なくとも1人の人又は荷物を受容するためのプラットフォームで構成されたリフト要素とを備え、リフト要素又は外部のエネルギー源において設けられた、電池、バッテリ又は燃料タンクのようなエネルギー貯蔵装置から駆動部又は前記駆動部分へエネルギー供給可能である。
【0013】
また、前記電池又は前記バッテリを、着脱自在に前記リフト要素、好ましくは前記プラットフォームに配置することが可能である。
【0014】
一実施形態によれば、前記プラットフォームを前記駆動部分に着脱自在に結合させることが提案される。
【0015】
また、一実施形態によれば、前記リフト要素を、全体としての耐負荷性を保障するために、部分的にアルミニウム若しくはアルミニウム合金、繊維強化性複合材料及び/又はこれに類似のもので構成された軽量構造で製造することが提案される。
【0016】
他の実施形態によれば、レール状の前記形鋼をU字状、V字状又は少なくともほぼ直線状であるバンド状に形成すること、及び前記形鋼が、前記駆動部分において、長手方向に見てそれぞれ側方で包囲する固定部材を備えており、前記駆動部分の前記形鋼における確実な固定を保障するために、前記固定部材がその固定する位置において係合可能であることが提案される。
【0017】
さらに、駆動部からラック状の孔又は開口部を有するレール状の前記形鋼へ力を伝達するために、前記駆動部分が少なくとも1つの歯車を備えていることが提案される。
【0018】
また、前記駆動部分に前記ラックに係入可能な少なくとも1つの非常停止装置が設けられており、該非常停止装置が、位置センサ、運動センサ及び/又は速度センサに接続されていることが提案される。
【0019】
また、他の実施形態によれば、レール状の前記形鋼が、長手方向に延在する1つのラック部を備えた、互いに接合可能又は差込可能な少なくとも2つ又はそれより多くの形鋼要素から成ることが提案される。形鋼要素それぞれの少なくとも1つの壁部において、前記ラック部に一致しつつ均等な間隔をあけられた穿孔部を有する長手方向のパターン要素が配置されている。また、各形鋼要素の壁部で長手方向に延在しつつ前記穿孔部に一致したすなわち等しい穿孔部に隣接するために、それぞれ2つの前記形鋼要素の間にそれぞれ他の壁部を有する結合要素が設けられている。また、前記ラック部分が1つの形鋼要素から他の形鋼要素へ一定に移行するよう、複数の形鋼要素及び前記結合要素が、前記穿孔部の孔に配置されたリベット、ピン、ボルトなどによって互いに結合されている。
【0020】
また、長手方向に延在する形鋼の代わりに、リフト要素が、柱のようなガイド要素、1つ若しくは複数の棒状要素又は1つ若しくは複数のワイヤロープにおいて昇降移動することが可能である。
【0021】
さらに、例えばスライドローラのような前記固定部材が、前記駆動部分のレール状の前記形鋼又は前記ガイド要素への当接時に、それぞれの側方において前記形鋼を後方から係合するようにロック可能あるいは折畳み可能であることが提案される。
【0022】
本発明による装置の他の実施形態は、従属請求項において特徴付けられている。
【0023】
また、高圧線送電塔、風力タービンの鉄塔及びこれらに類似のもののような鉄塔へ登るための方法において、前記鉄塔に固定されつつ長手方向に延長されたレール状の形鋼又はガイド要素に、該形鋼又はガイド要素から独立しつつ着脱自在なリフト要素を前記形鋼に配置し、該リフト要素が、各側方において、前記形鋼又は前記ガイド要素に後方から係合するか、若しくはこれに係合する係入可能な保持部材によって配置されることが提案される。また、駆動部分に着脱自在に結合されるプラットフォームが少なくとも1人の人によって上昇されるか、又は荷物によって負荷を受け、前記駆動部分が、レール状の前記形鋼又は前記ガイド要素に沿って前記鉄塔において上方へ走行するために、電池、若しくはバッテリのようなエネルギー貯蔵装置又は外部のエネルギー源からエネルギー供給/作動され、このとき、場合によって前記エネルギー貯蔵装置が前記リフト要素に配置されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安価で、簡易に取り付けることができ、簡易に使用でき、特に上述の高圧線送電塔への迅速、確実かつ単純な上昇を可能にする装置を提供することが可能であるとともに、鉄塔に配置された固定用形鋼から独立しているとともに様々な鉄塔において使用可能であるかあるいは持ち運び可能であって容易に運搬可能な上昇装置を提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1a】本発明によるリフト要素を異なる視点から示す斜視図である。
図1b】本発明によるリフト要素を異なる視点から示す斜視図である。
図2a】本発明によるリフト要素を異なる視点から示す斜視図である。
図2b】本発明によるリフト要素を異なる視点から示す斜視図である。
図3】結合されるべき2つのレール状の形鋼及び結合のために設けられた結合要素を概略的に示す斜視図である。
図4】本発明によるリフト要素をレール状の形鋼の断面を含む重要な個々の部材に分解して示す図である。
図5】本発明によるリフト要素の駆動モータを概略的に示す斜視図である。
図6】リフト要素のプラットフォームの斜視図である。
図7a】レール状の形鋼へのフィルと要素の固定した配置を示す図である。
図7b】レール状の形鋼へのフィルと要素の固定した配置を示す図である。
図7c】レール状の形鋼へのフィルと要素の固定した配置を示す図である。
図7d】レール状の形鋼へのフィルと要素の固定した配置を示す図である。
図8a】リフト要素の非常停止装置の機能を示す断面図である。
図8b】リフト要素の非常停止装置の機能を示す断面図である。
図9】リフト要素の操作コンソールを示す斜視図である。
図10a】リフト要素の持ち運びユニットの概略を示す図である。
図10b】リフト要素の持ち運びユニットの概略を示す図である。
図10c】リフト要素の持ち運びユニットの概略を示す図である。
図11】レール状の形鋼を鉄塔へ固定するための固定要素を概略的に示す斜視図である。
図12】鉄塔において、本発明によるリフト要素によって、レール状の形鋼に沿って上昇する人を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1には本発明によるリフト要素1の異なる2つの視点における斜視図が示されており、このリフト要素は、例えば高圧線送電塔における修理作業において人の昇降に寄与するものである。本発明によるリフト要素1は、主に2つのメイン部分、すなわち駆動及びガイド部3と、人又は荷物の土台としての役割を果たすために設けられたプラットフォーム5とを備えている。
【0028】
図2には、ここでも、長手方向に延在するレール上の形鋼7に取り付けられたリフト要素1の異なる2つの視点における斜視図が示されている。駆動部分3は形鋼7に固設されているが、この固定の形態については後述する。駆動部分3に結合されたプラットフォーム5上には、人2が存在し、この人は、例えば修理作業又は取付作業のために、高圧線送電塔を昇る必要がある。そして、形鋼7には固定要素又は固定ハンガ9が設けられており、この固定要素又は固定ハンガを用いて、形鋼7又はガイド部材が鉄塔に固設されている。なお、プラットフォームの代わりに人用のシートを設けることも当然可能である。
【0029】
図3には、ここでも、概略的かつ斜視図において、リフト要素あるいは例えば修理作業の実行のためにリフトを使用した人の昇降用の高圧線送電塔に沿ったレール状の形鋼全体の形成のためにどのように2つの形鋼要素が互いに結合されるかが示されている。図3に示された形鋼要素101’,101”は、U字状の形鋼のコーナ部に配置された長手パイプ115’,115”と共にU字状の断面を備えている。図3から明らかに分かるように、形鋼要素101’,101”は長手方向に延在するラック部分105’,105”を備えており、このラック部分は、このラック部分に係合する歯車によって駆動部分が形鋼に沿って上方及び下方へ移動できるようになっている。両形鋼要素101’,101”の接合のために、ラック部分105’,105”が一方の形鋼から次の形鋼へ同様の間隔をもって連続していることが重要である。この理由から、ラック部105’,105”の同様の間隔を保証するために、少なくとも1つの結合要素121の使用が提案される。また、両形鋼要素は、側方の2つの脚部面109’,109”において長手方向へ延在しつつ個々の孔113’,113”を有する穿孔部111’,111”を備えている。両形鋼に対して鏡面対称に同様にU字状に形成された結合要素121の両脚部面109’,109”において、同様にそれぞれ長手方向に延在しつつ個々の孔127を有する穿孔部125が設けられている。個々の孔127は、孔113’,113”のように少なくともほぼ同様の孔断面を備えているとともに、同様に間隔をあけられている。穿孔部は正確に重なり合って配置されており、これにより、例えば図3において示されたリベット129による、結合要素121の両形鋼要素101’,101”への結合が可能となる。リベットの挿入は、例えばいわゆる電池動作式のリベットガンを用いて最も簡易な形態で行われる。ラック部105’,105”が一方の形鋼から次の形鋼へ同様の間隔をもって連続していることは、側壁部における各孔の間隔が一方ではラック部105’,105”の個々の孔107’,107”へ整列されているとともに同様に間隔をあけられていることによって達成される。2つの形鋼要素の図3に示された結合はその他の点では特許文献7において開示されており、これについて、この特許文献7の内容は本発明の構成要素として含まれるものである。形鋼要素101’,101”の結合は、ピン133によってなされる。
【0030】
図4には、リフト要素の個々の部分が概略的に示されているとともに長手方向に延在するレール状の形鋼7が断面において示されている。駆動部分3は例えば2つのモータユニット15’,15”を備えており、これらモータユニットは、レール状の形鋼7に沿ってリフト要素を上方及び下方へ移動させる役割を担うものである。なお、このモータユニットについては、図5において別に詳細に説明する。
【0031】
駆動部分の上端部にはヘッド部13が設けられており、このヘッド部は、特に把持部、操作要素、表示部、速度センサなどを備えている。このヘッド部については、図9において詳細に説明する。カバー21を有する電子部品ケーシング17においては、セーフティリレー、コントローラ、無線通信装置、非常停止装置などの駆動部分の動作に必要な様々な要素が配置されている。図4には2つの非常停止装置19が概略的に示されているが、その機能については、図8に関連して詳細に説明する。駆動部分の下端部にはプラットフォーム支持部材23が設けられており、このプラットフォーム支持部材には、例えば機械的又は電気的な接続部を用いてプラットフォーム5を固設することができるようになっている。また、人用の立面を有するプラットフォーム5には、一方に、バッテリ又は電池のためのホルダ及び対応する充電電子部品が設けられている。
【0032】
図5には、レール状の形鋼からの視点から見た駆動モータ15’,15”の概要が斜視図で示されている。駆動部のために複数の歯車37が設けられており、これら歯車は、例えば一体化されたかみ合い継手に結合されることが可能である。歯車37の駆動は駆動モータによってなされ、この駆動モータは、駆動部カバー31によって側部でそれぞれ覆われている。駆動部分あるいはリフト要素のガイドのためにガイドローラ33,34が設けられており、ガイドローラ34は、例えば駆動部分のレール状の形鋼又はガイド部材への固設時にそれぞれ旋回軸42周りに旋回可能となっている。駆動モータのメインケーシングあるいは電子部品ケーシングとの結合のため、又はプラットフォームの結合のために、カム状のピン41が設けられている。
【0033】
図6には下側から見たプラットフォーム5が例えば透明なカバーと共に示されており、そのため、プラットフォーム5に配置された例えばリチウムリン酸鉄電池セルである電池セル49が見て取れる。側方には充電電子部品が符号47で概略的に示されており、駆動部分のエネルギー供給を遮断するために、同時にメインスイッチを設けることが可能である。プラットフォーム5における前側には、駆動部分のための電子コネクタ51が設けられているとともに、各側方には、駆動部分における固定のための脚部52が設けられている。なお、この脚部には機械式のロック部材45を配置することができる。
【0034】
このようなプラットフォーム5の駆動部分からの着脱性の利点は、いつでも電池の充電のためにこの電池をプラットフォームと共に分離することができるとともに、例えば把持部53を用いることで容易に持ち運ぶことができることにある。また、プラットフォームの駆動部分からの分離により、リフト要素全体を本質的に容易に持ち運ぶことが可能である。なぜなら、これにより良好に持ち運び可能な2つの要素が得られる一方、リフト要素全体を手動で持ち運ぶことはやはり困難であるためである。また、プラットフォームの取外し性により、特に電池が故障したり、又は新たな世代の電池を使用すべき場合に、異なる電池を使用可能とすることができる。
【0035】
図7に基づき、本発明によるリフト要素がどのようにレール状の形鋼7に固定して位置決めされるべきかが概略的に示されている。工程全体が図7a及び図7bに概略的に示されている。
【0036】
図7aには上側から見た駆動部分3が示されており、したがって、操作要素を備えたヘッド部13と、側方へ突出した駆動部のカバー31が視認可能となっている。駆動部分3は、レール状の形鋼7に固定して配置されるようになっており、この形鋼においては、結合要素121が視認可能となっているとともに、形鋼のコーナ部に配置された4つの長手パイプ115も視認できる。形鋼7は、その側において取付要素9を介して高圧線送電塔6に固定して配置されている。駆動部分3の固定した配置のために、側方で離間するように旋回する2つのガイドローラ34が設けられており、これらガイドローラは、取付時にレール状の形鋼を側方で包囲するものである。
【0037】
次に、図7bに示されているように、駆動部分が、駆動部分に近接する両長手パイプ115が両ガイドローラ33に係合するまでレース状の形鋼7に対して案内される。レール状の形鋼7への押圧時には、図7cに示されているように、駆動部分を形鋼に固結するために、外側の両長手パイプ115を包囲するように、離間した両ガイドローラ34が自動的に一方向へ旋回する。一方向への移動と同時に、ローラ34は自動的にかみ合い、その結果、形鋼7からの駆動部分の分離が不可能となる。
【0038】
駆動部分3が形鋼7において固定して配置されている場合には、プラットフォーム5も駆動部分3に結合されることができる。なお、これが図7c及び図7dに概略的に示されている。プラットフォーム5の配置においても、図6に関連して記載した機械的なロック部材45がかみ合うようになっており、その結果、プラットフォーム5の分離が不可能となっている。図7dに基づく図示においては、リフト要素が形鋼7に固結されており、その結果、例えば組立工が高圧線送電塔を登ることが可能となっている。
【0039】
図8(a及びb)には重要な安全要素が示されており、この安全要素は、レール状の形鋼における駆動部分の制御不能の移動を不可能にすることを保証するものである。特に、リフト要素が、制御不能下で上昇したり、制御不能下でレール状の形鋼の上端部又は下端部を通り過ぎてしまうのを不可能とする必要がある。
【0040】
図8aには、中立位置における掛け金151が示されており、この掛け金は、ベアリング152内で自由に移動可能であり、バネ153によってレール101の格子部105内へ係入されるようになっている。これにより、駆動部分3がレール101に固設され、リフトが移動できないようになる。非常時には、掛け金駆動部(磁石)154の通電が遮断され、バネ153が掛け金151を自動的にレール101の格子部105へ押し込む。
【0041】
図8bには、通電された磁石154、緊張されたバネ153及び復帰するよう引張られた/緊張された掛け金151を備えた駆動部が示されている。通常かつ妨害されないリフトの走行時には、掛け金151はこの後ろの位置に緊張され、リフトは移動することができない。
【0042】
図9には、図4に基づくヘッド部13がこれに配置された様々な部材及び要素と共に詳細に示されている。上部中央には非常ボタン61が設けられており、この非常ボタンにより、駆動部分あるいはリフト要素の非常ブレーキが作動され得るようになっている。また、例えばリモート動作のための超音波センサ63も同様に認識できる。側方では、ヘッド部13が保護カバー65を備えており、リフトの人が把持できるよう、この保護カバーには、その側方に把持部75が設けられている。同様に、側方には谷走行又は山走行のためのロッカスイッチ73が設けられている。当然、このロッカスイッチ73を左及び/又は右の側方に配置することができる。
【0043】
他の操作要素67は、リフト要素の動作のために設けられている。
【0044】
ディスプレイ69には動作に関連した様々なデータを表示することが可能であり、このデータは、複数の他の操作要素71を用いて調整可能である。また、様々な情報をディスプレイ69に表示するために、これら操作要素71によって、様々なメニューを選択することが可能である。
【0045】
そして、ヘッド部あるいはヘッドコンソール13を駆動部ケーシングへ結合するために、結合ピン77が設けられている。
【0046】
図10にはリフト要素の様々な部材が再度概略的に示されており、図10aでは、搬送のために駆動部分3とプラットフォーム5が互いに分離されている。動作のために、プラットフォーム5と駆動部分3が互いに結合され、図10cによれば、プラットフォーム及び駆動部分を分離すべきでない場合に、側方に取付輪を配置することも本質的に可能である。
【0047】
図11には、固定要素9によってレール状の形鋼7がどのように高圧線送電塔に固定され得るかが示されている。レール状の形鋼7は周知のように互いに当接する2つの形鋼部分101の範囲に結合要素121を備えており、この結合要素には、固定要素をネジ結合部143によって固定して配置することができる。固定要素9は、形鋼とは反対側に孔状の開口部145を備えており、この開口部145により、ここでも例えばネジ結合部によって形鋼を高圧線送電塔に取り付けることが可能である。
【0048】
最後に、図12には、本発明によるリフト装置1によって人2がどのようにしてレール状の形鋼7に沿って高圧線送電塔又は風力タービンの鉄塔を登り、あるいはこれから再び降りることができるかが原理図を用いて示されている。駆動部分3及びプラットフォーム5から成る本発明によるリフト装置1は、高圧線送電塔6におけるレール状の形鋼に沿って上方へ走行するために、人2によって使用される。このとき、人がヘルメット84をかぶり、ベルト85で保護されていることが重要であり、ベルトを締めることは、例えば監視手段87によって保障されることが可能である。リフトの駆動がベルトを締めた人によってのみ実行可能であるよう、リフト要素の動作が監視センサと連携されているのが好ましい。また、プラットフォームにおける過剰な負荷を荷重センサ89によって保障するため、例えばプラットフォームの範囲に配置された速度センサ91によって動作を監視するためなどのために他の監視要素を設けることも可能である。
【0049】
図1図12に関連して示された要素、形鋼部材、リフト装置の構成部材などは、本発明の良好な説明のための単なる例を示すものである。当然、形状は、各要求に適合されるべきであるとともに、本発明に基づき示されたリフト要素は、他の構成部材によって補足されてもよい。また、レール状の形鋼の形状も様々なものとすることが可能であり、U字状の形状は単なる例示にすぎない。言及し、及び図において記載したレール状の形鋼の代わりに、他の形態で形成された、記載されたリフト要素の昇降のためのガイド部材も考えられる。さらに、例えばスタンド状のガイド部材又は一部材若しくは多部材から成るガイド部材も考えられ、これらにおいてリフト要素を固定し及び移動させることが可能である。しかし、例えば高圧線送電塔に固定して配置されたガイドロープも場合によっては本発明に基づき記載されたリフト要素の着脱自在な取付に適し得る。
【0050】
また、リフト要素が、駆動部分と、この駆動部分に着脱自在なプラットフォームとの少なくとも二部材から成ることが好ましい。リフト要素は、独立して搬送及び持ち運び可能であるべきであり、使用する場所から使用する場所へ(多くの固定して設けられたレールへ)持ち運べるべきである。負荷に関しては、例えば最大30kgの重量というような対応する規則が定義された法的な規定が参照される。また、持ち運び性は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、繊維強化性複合材料などの軽量構造材料によってリフト要素が軽量構造で製造されることによりサポートされる。また、リフト要素のレール状の形鋼又はガイド部材からの完全な独立を保証するために、リフト要素自体に配置された駆動部が電池又は燃料タンクからエネルギー供給されるのが望ましい。最後に、リフト要素の操作は、無線で遠隔制御されることが可能である。すなわち、駆動部は、遠隔制御によって操作可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 リフト要素
2 人
3 駆動部分及びガイド部
5 プラットフォーム
6 高圧線送電塔
7 形鋼
9 固定要素又は固定ハンガ
13 ヘッド部
15’,15” モータユニット
19 電子部品ケーシング
21 カバー
23 プラットフォーム支持部材
31 駆動部カバー
33,34 ガイドローラ
37 歯車
41 ピン
42 旋回軸
45 ロック部材
49 電池セル
51 電子コネクタ
52 脚部
53 把持部
61 非常ボタン
63 超音波センサ
65 保護カバー
67 操作要素
69 ディスプレイ
71 操作要素
73 ロッカスイッチ
75 把持部
77 結合ピン
84 ヘルメット
85 (安全)ベルト
87 監視(部、手段、装置)
89 荷重センサ
91 速度センサ
101 レール
101’,101” 形鋼要素
105 格子部
105’,105” ラック部分
107’,107” 孔
109’,109” 脚部面
111’,111” 穿孔部
113’,113” 孔
115’,115” 長手パイプ
121 結合要素
123 側方脚部
125 穿孔部
127 孔
129 リベット
133 ピン
143 ネジ結合部、螺着部
145 開口部
151 掛け金
152 ベアリング
153 バネ
154 掛け金駆動部
図1a)】
図1b)】
図2a)】
図2b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12