(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の装置構成を示すブロック図である。本実施形態では、代表的な構成例を示す。
図2は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の概略的な機能構成を示すブロック図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の装置構成(
図1に示される例)と機能構成(
図2に示される例)との対応の一例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係る通信システム1は、UE11と、LTE/EPC(Evolved Packet Core)部12と、IMS部13と、HSS部14と、他網(他のネットワーク)15を備える。また、
図1には、LTE/EPC制御信号区間と、SIP信号区間と、Diameter(認証・認可・課金プロトコル)信号区間が示されている。
LTE/EPC部12は、eNB(evolved Node B)21と、SGW(Serving−Gateway)22と、PGW(PDN(Packet Data Network)−Gateway)23と、MME(Mobility Management Entity)24を備える。
IMS部13は、P−CSCF31と、I−CSCF32と、S−CSCF33と、AS34を備える。
HSS部14は、PCRF(Policy and Charging Rules Function)41と、HSS42を備える。
【0024】
図2に示されるように、本実施形態に係る通信システム1は、概略的に、端末101と、GW102と、契約情報サーバ103と、呼処理サーバ104を含む機能構成を有する。
契約情報サーバ103は、優先加入者契約判定機能111と、優先加入者識別情報付与機能112を備える。
GW102は、優先加入者識別子割り当て機能121を備える。
呼処理サーバ104は、優先加入者識別子判定機能131と、SIP優先識別子割り当て機能132を備える。
【0025】
図3に示されるように、
図1に示される装置構成と
図2に示される機能構成との対応の一例では、PCRF41が優先加入者契約判定機能111と優先加入者識別情報付与機能112を備え、PGW23が優先加入者識別子割り当て機能121を備え、P−CSCF31が優先加入者識別子判定機能131とSIP優先識別子割り当て機能132を備える。
図3の例では、PGW23がGW102に対応し、P−CSCF31が呼処理サーバ104に対応し、PCRF41が契約情報サーバ103に対応し、UE11が端末101に対応する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態に係る通信システム1では、IMSにおいてアクセス網がLTE網である場合のネットワークアーキテクチャを例示する。アクセス網(LTE/EPC)においては、その基地局であるeNB21をMME24とSGW22により収容する。MME24は、LTEアクセスシステムの無線ゾーンに在圏するUE(移動端末)11とのインタフェースを持ち、UE11の移動管理、UE11の認証およびUE11とのIP伝達経路の設定制御を行う。SGW22は、MME24の指令に基づいてIPパケットの伝達制御を行う。
また、EPC網においては、PGW23およびPCRF41が設定される。PGW23は、インターネット、IMSなどのPDNとの接続点があり、PDNからUE11へのIPパケットをすべて受ける。PCRF41は、PGW23、SGW22での伝達品質制御を行うためのQoS(Quality of Service)、課金方法などのIPパケット伝達ポリシーを決定する。
【0027】
図2および
図3に示される各機能を説明する。
優先加入者契約判定機能111は、IP接続確立処理において、接続要求をした端末101の契約者情報から優先加入者であるか否かを判定する。
優先加入者識別情報付与機能112は、優先加入者契約判定機能111により端末101が優先加入者であると判定された場合に、優先加入者を示す情報を付与し、優先加入者識別子割り当て機能121に通知する。
優先加入者識別子割り当て機能121は、優先加入者識別情報付与機能112から伝えられた優先加入者識別情報を元に、該当する端末101に対して特定の識別子を割り当てる。
優先加入者識別子判定機能131は、IMS登録処理において、端末101が優先加入者識別子割り当て機能121で割り当てられた識別子を付与したIMS登録処理信号を送信したときに、その識別子が優先加入者用の識別子であるか否かを判定する。
SIP優先識別子割り当て機能132は、優先加入者識別子判定機能131により優先加入者であると判定されたIMS登録処理信号に対して優先識別子を付与する。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態に係る通信システム1において行われる処理の流れの一例を示す処理シーケンスの図である。
なお、本実施形態に係る通信システム1において、UE11とeNB21とは無線により通信する。それ以外の各通信経路では、例えば、有線により通信が行われ、または、無線により通信が行われてもよい。また、ある装置と他の装置とが通信する場合、これらの装置の間に存在する別の装置は当該通信の中継や転送を行う。
【0029】
(処理T0:事前設定)
事前設定として、P−CSCF31の優先加入者識別子判定機能131に、優先加入者用の識別子を登録しておく。一例として、識別子としてIPアドレスを利用することとし、UE11に割り当てるIPアドレスがIPv6のものである場合、P−CSCF31に、ある特定のprefixを持つIPアドレスを優先加入者用のIPアドレスとして登録しておく。以下では、識別子としてUE11のIPアドレスを利用する場合について説明する。
【0030】
ここで、識別子として、UE11のIPアドレス以外の識別子が用いられてもよい。
他の識別子の例として、P−CSCF31のIPアドレスを利用することとし、P−CSCF31は、通常のIPアドレスの他に、優先加入者受付用のIPアドレスを登録(記憶)しておき、優先加入者受付用のIPアドレス宛てに登録を行うSIPメッセージを優先加入者のSIPメッセージとして扱う、構成が用いられてもよい。
さらに他の識別子の例として、SIPメッセージを転送するために利用されるUDP(User Datagram Protocol)における宛先ポート番号を利用することとし、P−CSCF31は、通常のポート番号の他に、優先加入者受付用のポート番号を登録(記憶)しておき、優先加入者受付用のポート番号宛てに登録を行うSIPメッセージを優先加入者のSIPメッセージとして扱う、構成が用いられてもよい。
【0031】
(処理T1)
UE11は、電源オンなどを契機として、アクセス要求(アクセス要求信号)を送信する。このときUE11は、UICCに書き込まれた優先加入者情報を元に、優先識別子を付与したアクセス要求を行うことが可能であり、本例では、それを行う。
【0032】
(処理T2)
MME24は、UE11からeNB21を介してアクセス要求を受信すると、UE11からのアクセス要求により通知された加入者情報と、HSS42から通知される加入者情報とを取得して、これらの加入者情報について照合、認証を行う。また、MME24は、加入者情報の更新を行ってもよい。
【0033】
(処理T3)
MME24は、認証が正常に完了すると、IMS向けの新規PDN接続要求(新規PDN接続要求信号)を送信する。SGW22は、MME24からの新規PDN接続要求信号をPGW23に転送する。
【0034】
(処理T4)
PGW23は、SGW22から新規PDN接続要求信号を受信すると、新規PDNに対する通信路の品質レベルを決めるために、PCRF41にQos要求(Qos要求信号)を送出する。本例では、PCRF41は、受信したQos要求信号に応じて、優先加入者契約判定機能111によりIMS接続かつ優先加入者であることを判定し、優先加入者識別情報付与機能112により、優先加入者を識別する情報(優先加入者識別情報)として、あらかじめ優先加入者に割り当てられた適切なQos情報を割り当てて、PGW23に通知する。本例では、Qos情報として、QCI(QoS Class Identifier)や、ARP(Allocation and Retention Priority)等の情報が用いられる。
【0035】
ここで、PCRF41の優先加入者契約判定機能111は、例えば、あらかじめ優先加入者の契約情報を保持していてその情報に基づいて判定を行ってもよく、または、SPR(Subscriber Profile Repository)などの加入者情報データベースに問い合わせて判定を行ってもよい。
本来、QCIやARPはその接続のQos情報やリソース割り当て優先度を規定するためのものであるが、本実施形態では、QCIやARPとして特定の値を用いることで優先加入者を示す識別子として利用する。
なお、加入者(ユーザ)が優先加入者であるか否かは、例えば、契約時に固定的に設定されるが、他のタイミングで設定されてもよく、また、可変であってもよい。
【0036】
(処理T5)
PGW23は、PCRF41から通知された優先加入者識別情報(優先加入者識別子)となるQoS情報などを基に、優先加入者用のPDN通信路を設立し、また、優先加入者識別子割り当て機能121により、UE11に割り当てるIPアドレスおよびUE11がアクセスするP−CSCF31のIPアドレスを確定して、このQoS情報およびこれらのIPアドレスの情報を新規PDN接続成功応答(新規PDN接続成功応答信号)としてSGW22に通知する。SGW22は、これをMME24に転送する。
ここで、本実施形態では、PGW23が、QoS情報を基に優先加入者である場合には、優先加入者用のIPアドレスを割り当てるようにしている。例えば、PGW23は、複数の優先加入者用のIPアドレスと、複数の他の加入者用のIPアドレス(例えば、一般のIPアドレス)をあらかじめ保持しており、優先加入者に対しては複数の優先加入者用のIPアドレスのうちの1つを割り当て、他の加入者(例えば、一般の加入者)に対しては複数の他の加入者用のIPアドレスのうちの1つを割り当てる。
【0037】
ここで、上述のように、本実施形態では、処理T5において識別子としてUE11のIPアドレスを利用する場合を説明するが、他の識別子の例として、P−CSCF31のIPアドレスや、SIPメッセージを転送するUDPの宛先ポート番号が、識別子として利用されてもよい。これらの他の識別子の例の場合、PGW23は、UE11が優先加入者であることを判定(検出)すると、優先加入者に対応するP−CSCF31のIPアドレスまたはUDPの宛先ポート番号の情報を新規PDN接続成功応答信号に含めてSGW22に通知する。
なお、識別子としては、例えば、ある一つの種類の識別子が用いられてもよく、または、複数の種類の識別子が組み合わされて用いられてもよい。
【0038】
(処理T6)
MME24は、QoS情報などが通知されると、QoS情報を基に、優先加入者用のPDN通信路の設立を行い、それをIPアドレス情報を含むアクセス成功応答(アクセス成功応答信号)に合わせて、eNB21を介して、UE11向けに通知する。
【0039】
(処理T7)
MME24は、UE11向けに優先加入者用のPDN通信路を確保することができた後に、UE11およびeNB21の情報をSGW22およびPGW23に通知して、PDN通信路情報の修正を行う。
以上の処理T1〜処理T7により、アクセス網の登録手順が完了となる。
【0040】
(処理T8)
UE11は、アクセス網の登録完了後に、UE11用のIPアドレス(本例では、優先加入者用のIPアドレス)を送信元アドレスに設定するとともにP−CSCF31のIPアドレスを送信先アドレスに設定したIPパケット上に、IMS登録要求のSIP信号を載せて、IMS登録要求の信号を生成する。そして、UE11は、この要求信号(IMS登録要求信号)を優先加入者用のPDN通信路を使用して送出する。
【0041】
ここで、上述のように、本実施形態では、処理T8において識別子としてUE11のIPアドレスを利用する場合を説明するが、他の識別子の例として、P−CSCF31のIPアドレスや、SIPメッセージを転送するUDPの宛先ポート番号が、識別子として利用されてもよい。これらの他の識別子の例の場合、UE11は、識別子として通知された宛先のP−CSCF31のIPアドレスを送信先アドレスに設定し、または、識別子として通知されたUDPの宛先ポート番号を設定して、処理を行う。
【0042】
また、アクセスとしてLTEならびにEPCを使用する場合、PGW23が送信元IPアドレスを通知するのに合わせて、そのUE11からのIPパケットとしてその割り当てたIPアドレス以外の番号を利用した場合には、そのIPパケットをドロップ(破棄)するアクセス制御を実施することも可能である。このアクセス制御の機能により、優先加入者として正しく認証されたUE11のSIP信号を載せたIPパケットのみを疎通させることが可能となる。これにより、SIP信号などの書き換えが可能な信号に対して、アクセス網でそのUE11の正当性を承認した上で通信することができる。例えば、IPパケット(例えば、そのSIP信号)に含まれるIPアドレスが書き換えられた場合に、そのIPパケットがP−CSCF31に到達することを防止することができ、不正を防ぐことができる。
ここで、このようなアクセス制御を行う機能部(IPパケットの破棄部)は、通信システム1における様々な装置に備えられてもよく、例えば、PGW23や他の装置のうちの1つ以上の装置に備えられてもよい。
なお、このようなアクセス制御は、実施されてもよく、または、実施されなくてもよい。つまり、このような機能部(IPパケットの破棄部)は、備えられてもよく、または、備えられなくてもよい。
【0043】
(処理T9)
IMS登録要求信号を受信したP−CSCF31は、優先加入者識別子判定機能131によりIP層の送信元アドレスとSIPに記述される送信元アドレス(Contactアドレス)を照合し、これらが一致すれば、続いて、SIPに記述された送信元アドレスと事前に設定されていた優先加入者用のIPアドレスとを比較して、これらが一致すれば、SIP優先識別子割り当て機能132により、IMS登録要求信号に対して、優先識別子を付与する。
ここで、本実施形態では、SIPに記述される送信元アドレスとしては、IP層の送信元アドレスが用いられる。
ここで、上述のように、本実施形態では、処理T9において識別子としてUE11のIPアドレスを利用する場合を説明するが、他の識別子の例として、P−CSCF31のIPアドレスや、SIPメッセージを転送するUDPの宛先ポート番号が、識別子として利用されてもよい。
【0044】
(処理T10)
P−CSCF31は、付与された優先識別子付きのIMS登録要求信号をI−CSCF32に転送する。
【0045】
(処理T11)
I−CSCF32は、受信した優先識別子に基づいて、HSS42へのサーバ問い合わせ信号に優先識別子を付与し、HSS42からS−CSCF33のアドレス情報を取得する。
【0046】
(処理T12)
I−CSCF32は、受信した優先識別子に基づいて、優先識別子付きのIMS登録要求(IMS位置登録要求信号)をS−CSCF33に転送する。
【0047】
(処理T13)
S−CSCF33は、受信したIMS位置登録要求信号に付与された優先識別子に基づいて、HSS42へのサーバ割り当て要求(サーバ割り当て要求信号)に優先識別子を付与し、HSS42から成功応答として加入者情報(本例では、優先加入者の加入者情報)を取得する。
【0048】
(処理T14、処理T21、処理T22)
S−CSCF33は、HSS42から受信した優先加入者情報を保持するとともに、I−CSCF32にIMS登録成功応答(IMS登録成功応答信号)を送る。I−CSCF32は、この信号をP−CSCF31に転送する。P−CSCF31は、この信号に基づいて、優先加入者情報を保持するとともに、この信号をUE11に転送する。
ここで、IMS登録成功応答信号には、優先加入者情報が含まれる。
以上の処理T8〜処理T14(および処理T21〜処理T22)により、IMS登録手順が完了となる。
【0049】
(処理T15)
加入者がマルチメディア通信サービスの提供を受けるためにUE11を操作した場合に、UE11は、IMSサービス要求(IMSサービス要求信号)をP−CSCF31に送出する。
ここで、IMSサービス要求信号には、加入者の情報が含まれる。
【0050】
(処理T16、処理T23)
本例では、P−CSCF31は、UE11から受信したIMSサービス要求信号について、IMS登録で保持していた優先加入者情報を参照して、優先加入者であることを判定し、優先識別子を付与したIMSサービス要求信号をS−CSCF33に送出する。S−CSCF33は、受信したIMSサービス要求信号に付与された優先識別子に基づいて、IMSサービス要求信号を後続装置に転送する。
なお、本シーケンスにおいては、後続装置の処理の詳細を省略するが、後続装置は、受信したIMSサービス要求信号に応じて所定のサービスを提供するための処理を実行し、それに成功した場合にはIMSサービス成功応答(IMSサービス成功応答信号)をS−CSCF33に送信する。
【0051】
(処理T17)
S−CSCF33は、後続装置からIMSサービス成功応答信号を受信した際に、P−CSCF31に対してIMSサービス成功応答信号を転送する。P−CSCF31は、この信号をUE11に転送し、これにより、IMSサービスの確立および提供を行う。
以上の処理T15〜処理T17(および処理T23)により、IMSサービス手順が完了となる。
【0052】
ここで、本実施形態に係る通信システム1では、
図4に示される処理の手順において、アクセス要求や新規PDN接続要求で、アクセス網において優先識別子を付与することが可能であるため、優先処理することが可能である。さらに、本実施形態に係る通信システム1では、設立された優先加入者用のPDN通信路を使用することで、UE11からのIMS登録要求やIMSサービス要求を、アクセス網上で優先処理することが可能である。IMS網上では、元々、IMSサービス要求を優先加入者情報に基づいて優先処理することが可能であったが、本実施形態では、さらに、IMS登録要求についても優先処理することが可能となる。これにより、本実施形態に係る通信システム1では、すべての要求手順について優先処理することができ、優先加入者に対して確実にマルチメディア通信サービスの提供を実現することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る通信システム1では、加入者へのIP接続確立処理において、加入者からの接続要求を契機に、優先加入者契約判定機能111により優先加入者であることを判定し、優先加入者識別情報付与機能112により優先加入者であることを示す識別子を接続要求信号に対して付与し、その識別子を元に優先加入者識別子割り当て機能121により特定のIPアドレスを割り当てるIP接続確立装置群(本実施形態では、
図2に示される契約情報サーバ103、GW102)と、呼処理サーバへの登録要求処理において、割り当てられたIPアドレスが付与された呼処理制御信号(本実施形態では、IMS登録要求信号)に基づいて優先加入者識別子判定機能131により特定のアドレスからの優先加入者であることを判定し、その登録要求に対してSIP優先識別子割り当て機能132により優先加入者識別子を付与する当該呼処理サーバ(本実施形態では、
図2に示される呼処理サーバ104)を備える。
【0054】
このような構成により、本実施形態に係る通信システム1では、優先加入者について、IMS登録要求信号を優先処理することを実現する。具体的には、UE11からの信号のIMS関門装置であるP−CSCF31において、UE11からIMS登録要求信号を受信した際に、当該信号に含まれるIPアドレスに基づいて優先加入者判定を適切に行い、優先加入者である場合には、IMS登録要求信号に優先識別子を付与して、優先制御を行って信号の転送を行うとともに、後続のIMS装置(後続装置)においてもその優先識別子に従って優先制御を行う。
【0055】
ここで、一般に、多くのアクセス網において、UE11がアクセス網に接続してきた際に、アクセス網の加入者認証を行い、さらにUE11がPDNに接続する際に、アクセス網がPDN通信用のIPアドレスをUE11に割り当てる手順を行う。そして、アクセス網にとってIMS網はPDNの1つと見なされる。よって、アクセス網の加入者認証が行われた結果、優先加入者であると判断されたUE11に対して優先加入者用のIPアドレスを割り当てて、さらにIMS網が、アクセス網を信頼して、優先加入者用のIPアドレスの情報を有している場合(例えば、同じ事業者がIMS網とアクセス網を提供する場合など)には、IMS網はSIP上に記述されたIPアドレスが優先加入者のIPアドレスであるか否かを判断することができる。ただし、通常、SIP上の情報要素のみで適切な判断を行うことは不可能である(あるいは、現実的に難しい)ため、本実施形態では、IPの送信元アドレスとSIPに記述される送信元アドレスを照合し、それらが一致すれば、SIPに記述された送信元アドレスは信頼できるものと判断する。これにより、IMSは、IMS登録要求信号を受信した際に、当該信号に含まれるIPアドレスを優先加入者用のIPアドレスであると適切に判断した場合に、優先加入者の信号の優先制御を行う。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る通信システム1によると、優先加入者について、すべての制御信号の優先制御を可能とし、優先加入者に対して確実にマルチメディア通信サービスの提供を実現することができる。また、本実施形態に係る通信システム1では、例えば、既存のインタフェースへの変更を加えることなく、優先加入者の信号の優先制御を実現することができる。また、本実施形態に係る通信システム1では、例えば、輻輳などが発生した場合においても、優先制御が行われるため、優先加入者の音声通信を確実に提供することが可能となる。また、本実施形態に係る通信システム1では、例えば、ユーザによりSIPによる信号を偽装された場合においても、その偽装を発見して、適切な制御を行うことができる。また、本実施形態に係る通信システム1では、例えば、既存の技術である優先加入者用のアクセス要求と組み合わせて利用することで、アクセス部分での優先制御に加えて、信号処理部分での優先制御を実現することができる。
このように、本実施形態に係る通信システム1によると、効果的な優先制御を行うことができる。
【0057】
(第2実施形態)
第1実施形態と同様な構成部分については同一の符号を付して説明する。また、第1実施形態と同様な構成部分については詳しい説明を省略する。
また、第1実施形態の場合と同様に、識別子として、UE11のIPアドレスが用いられる場合を示すが、他の識別子が用いられてもよい。
図5は、本発明の一実施形態に係る通信システム1(通信システム1についても、第1実施形態と同一の符号を用いる。)の装置構成(
図1に示される例であり、一部の装置24、41の符号を変更する。)と機能構成(
図2に示される例であり、一部の機能111〜112の符号を変更する。)との対応の一例を示すブロック図である。
図5に示されるように、
図1に示される装置構成と
図2に示される機能構成との対応の一例では、MME24aが優先加入者契約判定機能111aと優先加入者識別情報付与機能112aを備え、PGW23が優先加入者識別子割り当て機能121を備え、P−CSCF31が優先加入者識別子判定機能131とSIP優先識別子割り当て機能132を備える。
図5の例では、PGW23がGW102に対応し、P−CSCF31が呼処理サーバ104に対応し、MME24aが契約情報サーバ103に対応する。
なお、本実施形態では、PCRF41aには、優先加入者契約判定機能と優先加入者識別情報付与機能が備えられていない。
【0058】
本実施形態に係る通信システム1では、
図4に示される処理シーケンスにおいて、(処理T2)〜(処理T5)の代わりに、次の(処理T2の他の例)〜(処理T5の他の例)を実行する。なお、次の説明では主に第1実施形態とは異なる点について説明し、(処理T2の他の例)〜(処理T5の他の例)においても、特に記述しない点は、(処理T2)〜(処理T5)と同様である。
【0059】
(処理T2の他の例)
MME24aは、認証手続きにおいて、優先加入者契約判定機能111aにより接続ユーザ(UE11の加入者)が優先加入者であるか否かを判定し、優先加入者であると判定された接続ユーザに対して、優先加入者識別情報付与機能112aにより優先加入者を識別する情報(優先加入者識別情報)を付与する。
【0060】
(処理T3の他の例)
MME24aは、新規PDN接続要求信号をPGW23に送る。その後、MME24aは、付与した優先加入者を識別する情報をPGW23に通達する。
ここで、本実施形態では、優先加入者識別情報としては、例えば、QoS情報や割り当て優先度に、優先加入者用の情報をセットする。
【0061】
(処理T4の他の例)
PCRF41aは、MME24aからSGW22、PGW23を経由して伝えられたQoS情報や割り当て優先度をそのまま利用する。
【0062】
(処理T5の他の例)
PGW23は、MME24aから伝えられた優先加入者識別情報を元に、優先加入者識別子割り当て機能121により、優先加入者用のIPアドレスを割り当てる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係る通信システム1においても、第1実施形態の場合と同様に、優先加入者について、すべての制御信号の優先制御を可能とし、優先加入者に対して確実にマルチメディア通信サービスの提供を実現することができる。
このように、本実施形態に係る通信システム1によると、効果的な優先制御を行うことができる。
【0064】
(第3実施形態)
第2実施形態と同様な構成部分については同一の符号を付して説明する。また、第2実施形態と同様な構成部分については詳しい説明を省略する。
また、第2実施形態の場合と同様に、識別子として、UE11のIPアドレスが用いられる場合を示すが、他の識別子が用いられてもよい。
第2実施形態(および第1実施形態)では、複数のPGW23が存在するネットワークにおいて、すべてのPGW23が優先加入者識別子割り当て機能121を持つ必要があるが、本実施形態では、ある一部のPGW23のみが優先加入者識別子割り当て機能121を持ち、他のPGW23は優先加入者識別子割り当て機能121を持たない。
【0065】
なお、本実施形態に係る通信システム1では、第2実施形態と同様に
図5に示されるものと同様な装置構成と機能構成との対応を有するが、優先加入者識別情報付与機能112aがPGW23の選択に利用される構成部分が異なる。
本実施形態では、優先加入者識別子割り当て機能121を正しく機能させるために、MME24aにおいて、PGW23の選択を実行し、優先加入者に対して、優先加入者識別子割り当て機能121を持つPGW23を選択させる。
【0066】
本実施形態に係る通信システム1では、
図4に示される処理シーケンスにおいて、第2実施形態における(処理T2の他の例)および(処理T5の他の例)の代わりに、次の(処理T2の他の例2)および(処理T5の他の例2)を実行する。なお、次の説明では主に第2実施形態とは異なる点について説明し、(処理T2の他の例2)および(処理T5の他の例2)においても、特に記述しない点は、(処理T2の他の例)および(処理T5の他の例)と同様である。
【0067】
(処理T2の他の例2)
MME24aは、認証手続きにおいて、優先加入者契約判定機能111aにより接続ユーザ(UE11の加入者)が優先加入者であるか否かを判定し、優先加入者であると判定された接続ユーザに対して、優先加入者識別情報付与機能112aにより、優先加入者識別子割り当て機能121を持つPGW23を選択するための情報を、優先加入者を識別する情報(優先加入者識別情報)として、付与する。これにより、PGW23の選択が実現される。
具体的な一例として、MME24aは、PGW選択のための識別子パラメータの一つであるAPI−OI−Replacementというパラメータについて、優先加入者に対しては、特定のPGW23(本実施形態では、優先加入者識別子割り当て機能121を持つPGW23)を示すためのパラメータを割り当てる。これにより、優先加入者については、優先加入者識別子割り当て機能121を持つPGW23が選択されることになり、逆に、他の加入者については他のPGW23が選択されるようにする。
【0068】
(処理T5の他の例2)
優先加入者識別子割り当て機能121を持つPGW23は、接続してきた優先加入者に対して、優先加入者識別子割り当て機能121により、優先加入者用のIPアドレスを割り当てる。逆に、優先加入者識別子割り当て機能121を持たないPGW23は、接続してきた他の加入者に対して、優先加入者用のIPアドレスを割り当てない。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る通信システム1においても、第1〜2実施形態の場合と同様に、優先加入者について、すべての制御信号の優先制御を可能とし、優先加入者に対して確実にマルチメディア通信サービスの提供を実現することができる。
このように、本実施形態に係る通信システム1によると、効果的な優先制御を行うことができる。
【0070】
(第4実施形態)
以上の実施形態では、IMSを例として説明したが、同様な構成や動作を様々なシステムに適用することが可能である。
また、以上の実施形態の場合と同様に、識別子として、UE11のIPアドレスが用いられる場合を示すが、他の識別子が用いられてもよい。
一例として、端末を認証する認証装置と、認証装置による認証の結果に応じたIPアドレスを端末に対して付与するIPアドレス付与装置と、IPアドレスを用いてサービスを要求した端末に対して当該IPアドレスに応じたサービスを提供するサービス提供装置(例えば、アプリケーションサーバ(AS)など)と、を含む通信システムを構成することができる。
ここで、一例として、IPアドレス付与装置のIPアドレス付与機能がレイヤ3に形成され、サービス提供装置のサービス提供機能がレイヤ4以上のレイヤに形成される。
【0071】
また、IPアドレスとしては、一例として、優先的に扱われる権限を有するIPアドレスを含む。具体例として、サービス提供装置によるサービスにおいて優先的に扱われる権限を有するIPアドレスと、サービス提供装置によるサービスにおいて優先的に扱われないIPアドレスが用いられる。また、優先的に扱われる権限を有するIPアドレスごとに、さらに、優先度の高低(例えば、順位など)が設定されてもよい。これにより、IPアドレスの優先度にしたがって優先制御して、複数の端末にサービスを提供することができる。
また、IPアドレスとしては、一例として、付加価値(プレミアム)が与えられる権限を有するIPアドレスを含む。具体例として、付加価値が与えられる権限を有するIPアドレスと、付加価値が与えられないIPアドレスが用いられる。また、付加価値が与えられる権限を有するIPアドレスごとに、さらに、付加価値の種類(例えば、レベルなど)が設定されてもよい。これにより、端末のIPアドレスに設定された付加価値に基づいて、当該付加価値のサービスを当該端末に提供することができる。
また、IPアドレスとしては、一例として、複数の分類(カテゴリ)のうちの特定の分類として扱われる権限を有するIPアドレスを含む。具体例として、複数の分類のそれぞれについて、それぞれの分類として扱われる権限を有するIPアドレスが用いられる。これにより、端末のIPアドレスに設定された分類にしたがって、当該分類に属するものとして当該端末にサービスを提供することができる。
なお、IPアドレスに他の様々な権限が設定されてもよい。
【0072】
また、サービスとしては、任意のサービスが用いられてもよく、例えば、音声や映像などの通信のサービス、商品購入のサービス、ゲームや映像や音楽などのコンテンツの視聴等のサービスなどが用いられてもよい。
また、IPアドレスに設定される権限としては、様々な権限が用いられてもよく、例えば、通信の速度(あるいは、通信するデータ量など)、通信や各種の処理が実行される順序、商品購入の課金における割り引きなど、ゲームや映像や音楽などのコンテンツの視聴等における分野あるいは特典など、に関する権限が用いられてもよい。
【0073】
なお、通信システムにおける各機能は、任意の装置に備えられてもよい。例えば、通信システムにおいて、認証機能や、IPアドレス付与機能や、サービス提供機能などは、それぞれ、任意の装置に備えられてもよく、2つ以上の機能が同一の装置に備えられてもよい。
また、通信システムにおける各装置は、任意の者により所有や管理等されてもよい。例えば、通信システムにおいて、認証装置や、IPアドレス付与装置や、サービス提供装置などは、それぞれ、同一の者(例えば、事業者)により所有や管理等されてもよく、異なる者により所有や管理等されてもよい。
【0074】
[以上の実施形態に係る構成例]
一構成例として、端末(
図2の例では、端末101)を認証する認証部(
図2の例では、契約情報サーバ103の優先加入者契約判定機能111および優先加入者識別情報付与機能112)と、前記認証部による認証の結果に応じた権限を有する識別子を前記端末に対して付与する識別子付与部(
図2の例では、GW102の優先加入者識別子割り当て機能121)と、前記識別子を用いてサービスを要求した前記端末に対して前記識別子の権限に応じたサービスを提供するサービス提供部(
図2の例では、呼処理サーバ104の優先加入者識別子判定機能131およびSIP優先識別子割り当て機能132)と、を備える通信システム(第1〜3実施形態では、通信システム1)である。
【0075】
一構成例として、通信システムにおいて、前記識別子付与部が形成されるレイヤと、前記サービス提供部が形成されるレイヤとが異なる。例えば、前記識別子付与部が形成されるレイヤの方が下位層であり、前記サービス提供部が形成されるレイヤの方が上位層である。
一構成例として、通信システムにおいて、前記識別子の権限は、優先的に扱われる権限、付加価値が与えられる権限、または、複数の分類のうちの特定の分類として扱われる権限のうちのいずれかである。なお、前記識別子の権限としては、他の権限が用いられてもよく、2つ以上の異なる権限を同時に有してもよい。
【0076】
一構成例として、通信システムにおいて、前記識別子の権限は、優先的に扱われる権限であり、前記識別子の権限に応じたサービスは、IMSにおける優先ユーザ向け優先制御が行われるサービスであり、前記認証部は、PCRF(
図3の例では、PCRF41)であり、前記識別子付与部は、PGW(
図3の例では、PGW23)であり、前記サービス提供部は、P−CSCF(
図3の例では、P−CSCF31)である(第1実施形態の構成例)。
一構成例として、通信システムにおいて、前記識別子の権限は、優先的に扱われる権限であり、前記識別子の権限に応じたサービスは、IMSにおける優先ユーザ向け優先制御が行われるサービスであり、前記認証部は、MME(
図5の例では、MME24a)であり、前記識別子付与部は、PGW(
図5の例では、PGW23)であり、前記サービス提供部は、P−CSCF(
図5の例では、P−CSCF31)である(第2〜3実施形態の構成例)。
【0077】
一構成例として、通信システムにおいて、前記端末から送信された信号に前記権限を有する前記識別子が含まれないと判定した場合に、当該信号を破棄する破棄部(一例として、PGW23の機能部)を備える。
一構成例として、通信システムにおいて、前記識別子は、前記端末に割り当てられるIPアドレスである。
【0078】
一構成例として、端末を認証する認証部による認証の結果に応じた権限を有する識別子を前記端末に対して付与する識別子付与部(
図2の例では、GW102の優先加入者識別子割り当て機能121)を備える識別子付与装置(
図2の例では、IPアドレス付与装置であるGW102)である。
一構成例として、端末を認証し、前記認証の結果に応じた権限を有する識別子を前記端末に対して付与し、前記識別子を用いてサービスを要求した前記端末に対して前記識別子の権限に応じたサービスを提供する、通信方法(第1〜3実施形態では、通信システム1において行われる通信の方法)である。
【0079】
[以上の実施形態のまとめ]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0080】
また、以上に示した実施形態に係る各装置の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
【0081】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0082】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。