特許第6101697号(P6101697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6101697細胞材料を捕捉する方法およびその方法を実行する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101697
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】細胞材料を捕捉する方法およびその方法を実行する装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/02 20060101AFI20170313BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20170313BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C12N1/02
   C12M1/26
   C12M1/34 B
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-533233(P2014-533233)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-528723(P2014-528723A)
(43)【公表日】2014年10月30日
(86)【国際出願番号】NL2012050681
(87)【国際公開番号】WO2013048249
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】11183251.5
(32)【優先日】2011年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513271494
【氏名又は名称】ベーデー キーストラ ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】ボトマ, イェトゼ
(72)【発明者】
【氏名】クレーフストラ, マルテイン
(72)【発明者】
【氏名】ベルントセン, マルテイン クサンデル
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ジー, ティーノ ワルテル
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−067200(JP,A)
【文献】 特開2011−103779(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01502649(EP,A1)
【文献】 特開2012−073197(JP,A)
【文献】 "Hamilton launches Automated Cloning System", BioPharma-Reporter.com [online], 2005.02.28 uploaded, [retrieved 2016.03.31], internet <URL:http://www.biopharma-reporter.com/Downstream-Processing/Hamilton-launches-Automated-Cloning-System>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/00
C12N 1/02
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法であって
絶縁材料製の層を包囲する導電材料製の環状要素を有する支持体上に培養皿を配置する工程と、
発振回路によって生成された信号をマイクロプロセッサに提供する工程であって、前記信号は測定回路の静電容量を表す発振周波数であり、前記測定回路は、導電性の捕捉ツールを保持する導電性の捕捉ツールホルダに電気的に接続された第1のリード線と前記環状要素に電気的に接続された第2のリード線とを有し、前記測定回路は前記第1のリード線および前記第2のリード線を介して前記発振回路に電気的に接続された工程と、
前記支持体上の前記培養皿内に載置された細胞材料に向けて前記捕捉ツールを変位させる工程と、
前記培養皿に向けて前記捕捉ツールが変位する際に前記信号を前記マイクロプロセッサに継続して提供する工程と、
前記捕捉ツールと前記細胞材料の接触を示す前記発振周波数の変化を検出する工程と、
前記発振周波数の変化が検出されると前記捕捉ツールの変位を停止する工程と、
前記細胞材料から前記捕捉ツールを後退させることにより前記細胞材料を捕捉する工程とを含方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記発振周波数の変化を示す比較信号を前記マイクロプロセッサに提供する工程と、
前記比較信号を利用して位置決め装置の運動を制御する工程とをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記発振回路は鋸歯状電圧である交流電圧を提供する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記交流電圧は100から150kHzの間の固定周波数を有する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記捕捉ツールを前記接触位置からチェック位置に向けて所定の距離後退させる工程と
前記捕捉ツールを前記チェック位置に保持する工程と、
前記チェック位置において前記発振周波数を測定する工程とをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項に記載の方法であって、さらに、
前記チェック位置において前記発振周波数が出発発振周波数から逸れると警告信号を提供する工程をさらに含む方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、さらに、
前記チェック位置において前記発振周波数が出発発振周波数から逸れた場合、前記捕捉ツールホルダから前記捕捉ツールを解放する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法であって、
記支持体と前記培養皿との間に透明な絶縁材料製の要素または層を配置する工程とを含む方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、
前記捕捉ツールの変位の際に出発発振周波数との比較を行うコンパレータによって前記発振周波数の変化を検出する方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、
前記培養皿内の培地面から前記細胞材料を捕捉しなければならなくなった都度、新しい捕捉ツールを使用する工程を含む方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法を実行する装置であって、
導電材料製の捕捉ツールホルダを備える捕捉ツール装置であって、前記捕捉ツールホルダは前記捕捉ツール装置に電気的に絶縁された状態で載置され、前記捕捉ツールホルダは導電材料製の捕捉ツールを保持し、前記捕捉ツールは前記捕捉ツールホルダにより電気的に導通された状態で保持され、前記捕捉ツールホルダは第1のリード線と電気的に接続された捕捉ツール装置と、
絶縁材料製の培養皿と、
絶縁材料製の培養皿支持部を包囲する導電材料製の環状要素を有し、前記培養皿を支持する支持体であって、前記環状要素が第2のリード線と電気的に接続された支持体と、
前記培養皿の上方の出発位置に前記捕捉ツールを位置決めし、前記捕捉ツールを前記培養皿に対してそれぞれ下降接近/上昇後退させるための位置決め装置と、
前記位置決め装置の移動を制御するためのコントローラと、
前記第1のリード線および前記第2のリード線と接続され、前記第1のリード線、前記捕捉ツールホルダ、前記捕捉ツール、前記第2のリード線、前記支持体、および前記培養皿を備える測定回路の静電容量を示す発振周波数を表す信号を提供するように構成された発振回路と、
前記捕捉ツールの下降の際に前記発振周波数出発発振周波数との比較を行い、前記比較を示す比較信号を提供するコンパレータを備え、前記コントローラは少なくとも前記比較信号に基づいて前記位置決め装置の運動を制御する装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記コントローラは前記発振回路の前記発振周波数が変化すると前記捕捉ツールの下降を停止するように構成されている装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の装置であって、
前記発振回路はオペアンプ・マルチバイブレーター発振器である装置。
【請求項14】
請求項11、12または13に記載の装置であって、
前記絶縁材料製の前記培養皿支持部は透明であり、および/または、前記支持体と前記培養皿との間に透明絶縁材料製の要素または層が配置されている装置。
【請求項15】
請求項11、12、13または14に記載の装置であって、
前記捕捉ツールは導電性プラスチック材料製である装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる方法は、特開昭62−273429号明細書から既知である。この既知の方法は、移植針を電極として用い、移植針と培地との間の接触を電気信号により検出することにより一定の穿刺深度を得ることに関する。電極は培地上に配置され、次いで移植針が培地に向けて下降される。電源および可変抵抗が電極と移植針に導線で接続されている。培地は水分含量が高いので、導通の有無は検出器により検出することができる。検出の閾値は可変抵抗を調整することにより変えることができる。この既知の方法を用いる際に生じることが考えられる問題は、一定の穿刺深度が得られるものの、往々にして移植針は細胞材料とこの細胞材料の下の培地との混合物を捕捉してしまうことにある。加えて、電極と移植針に接続された電源は培地を通して電流を発生し、この電流は培地上の細胞材料にとって有害であり得る。加えて、異なる培養皿用に変更する際に、電極を取り替えるか、完璧に清浄にして二次汚染を防止する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法であって細胞材料を選択的に捕捉することができる方法を提供することにある。
【0004】
本発明のさらなる目的は、細胞材料に無害な細胞材料捕捉方法を提供することにある。
【0005】
本発明のさらなる目的は装置部品をできるだけ使用しない細胞材料捕捉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的の少なくとも1つまたは少なくともその一部分が本発明により、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法であって、順次、
細胞材料に向けて捕捉ツールを変位させ、
捕捉ツールと細胞材料の接触を判定し、
細胞材料から捕捉ツールを後退させ、それにより細胞材料を捕捉し、その際、捕捉ツールと細胞材料との接触を判定する工程は静電容量の測定により行う工程を含む方法を提供することにより達成される。接触の判定は静電容量の測定により行われるので、捕捉ツールと細胞材料および/または培地との接触を判定するのに、追加の電極を培地に直接接触させることが不要である。さらに、静電容量の測定を用いることにより、接触したことを判定するためには表面的接触で十分であり、そのため捕捉ツールは接触を実現するために細胞材料中に進入する必要がまったくなく、そのため細胞材料のみを捕捉することが可能となる。加えて、かかる測定を行うのに必要とされる電圧のレベルは十分に低く、細胞材料の生長に何ら有害な影響を与えない。
【0007】
本発明による非常に精密な方法は、
培養皿を導電材料製の支持体上に配置し、
絶縁材料製の培養皿を用い、
導電材料製の捕捉ツールを用い、
培養皿の十分に上方の出発位置に捕捉ツールを配置し、
捕捉ツールと支持体からなる系の出発静電容量を捕捉ツールの出発位置において測定し、
出発位置から培養皿に向けて捕捉ツールを下降させ、
捕捉ツールの下降中、捕捉ツールと支持体からなる系の静電容量を測定する工程を含む。
【0008】
好ましくは、本発明の方法は、さらに、測定された静電容量が出発静電容量から逸れたときに接触位置において捕捉ツールの下降を停止する工程を含む。これにより、捕捉ツールが下降し過ぎることが防止され、そのため細胞材料の下方に存在する培地を捕捉してしまうことが防止できる。好ましくは、本発明の方法は、さらに、測定された静電容量が出発静電容量から逸れたときに捕捉ツールの接触位置を測定する工程を含む。
【0009】
本発明による方法の有利な一実施形態では、本発明の方法は、さらに、捕捉ツールを接触位置からチェック位置に向けて所定の距離移動させ、該捕捉ツールを該チェック位置に保持する工程、および該チェック位置における捕捉ツールと支持体からなる系の静電容量を測定する工程を含む。ある場合には、捕捉される細胞材料は非常に粘着質であるか、またはぬるぬるしている。かかる細胞材料と接触後、捕捉ツールが細胞材料から移動されると、往々にして捕捉ツールと培養皿中の細胞材料の間に細い糸が残る。この細い糸は切れ、捕捉ツール装置を汚染する可能性がある。チェック位置、例えば培養皿の上方数ミリメートル、における静電容量を測定することにより、かかる糸の存在を検知することが可能となるので、適切な対策を講じることができる。特に、本発明の方法の一実施形態では、捕捉ツールホルダを設けて捕捉ツールを取り外し可能に設け、該捕捉ツールホルダが捕捉ツールを把持および解放するように構成すれば、残存する糸を検知する場合の動作を自動化することが可能である。好ましくは、本発明の方法は、チェック位置において測定された静電容量が出発静電容量と異なる場合、捕捉ツールホルダから捕捉ツールを解放して捕捉ツールが培養皿内に落下するようにする工程と、随意に培養皿を廃棄する工程とを含む。これらの工程は自動化された状態で容易に実行することができるので、時間がかかる培養皿の廃棄に人力を介在させる必要がない。
【0010】
本発明による方法の一実施形態において、本発明の方法は導電材料製の支持体として導電材料製の環状要素を用意する工程と、支持体と培養皿との間に透明な絶縁材料製の要素または層を配置する工程を含むことにより、培養皿の下方から照明して培養皿内の細胞材料の位置を決定し易くすることが可能である。
【0011】
好ましくは、本発明の方法は、捕捉ツールを使い捨てにすることができるように、導電性プラスチック材料製の捕捉ツールを用いる工程を含む。細胞材料を捕捉した後およびさらに細胞材料を捕捉する前に捕捉ツール完全に清浄にすることは可能であるけれども、本発明の方法の他の実施形態によると、細胞材料を培養皿中の培地面から捕捉しなければならなくなった都度、新しい捕捉ツールを用いるのが好ましい。このようにして、培養皿から細胞材料を捕捉する、信頼性が高く、廉価で迅速な細胞材料を実現することができる。
【0012】
本発明は、また、特許請求の範囲のいずれか一項に記載の、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法を実施するための組立体装置に関する。この組立体装置は、
導電材料製の捕捉ツールホルダを備える捕捉ツール装置であって、前記捕捉ツールホルダは前記捕捉ツール装置に電気的に絶縁された状態で載置されるとともに導電材料性の捕捉ツールを保持し、前記捕捉ツールは前記捕捉ツールホルダにより電気的に導通された状態で保持される捕捉ツール装置と、
絶縁材料製の培養皿と、
前記培養皿を支持する導電材料製の支持体と、
前記培養皿の上方の出発位置に捕捉ツールを位置決めし、前記捕捉ツールを前記培養皿に対してそれぞれ下降接近/上昇後退させるための位置決め装置と、
前記位置決め装置の移動を制御するためのコントローラと、
前記捕捉ツールと支持体からなる系の静電容量を決定するための容量測定を行う測定装置であって、前記測定装置は、前記捕捉ツールの出発位置における前記捕捉ツールと支持体からなる系の出発静電容量を決定し、前記出発静電容量を表す信号を前記コントローラに供給し、前記測定装置は、前記測定ツールを前記培養皿に向けて下降させるときに前記捕捉ツールと支持体からなる系の静電容量を決定し、前記測定された静電容量を表す信号を前記コントローラに供給するように構成された測定装置とを備え、
前記コントローラは、前記捕捉ツールの下降の際に前記静電容量の出発静電容量との比較を行い、前記比較を示す比較信号を発生するコンパレータ(比較器)を備え、前記コントローラは少なくとも前記比較信号に基づいて前記位置決め装置の運動を制御する。
【0013】
本発明による好適な実施形態が装置に関する従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明のさらなる目的、態様、効果および詳細は、以下の添付図面を参照した多数の例示的実施形態の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法を実行する組立体装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法を実行する組立体装置の概略図である。
【0017】
この組立体装置は捕捉ツール装置1を備える。捕捉ツール装置1は導電材料製の捕捉ツールホルダ2を備える。捕捉ツールホルダ2は電気的に絶縁された状態で捕捉ツール装置1に載置されている。捕捉ツールホルダ2は導電材料製の捕捉ツール3を電気的導通状態で保持するように構成されている。捕捉ツール3は金属製であってもよいが、導電性プラスチック材料、例えば炭素を含むプラスチックで作製してもよい。
【0018】
さらに、本発明の組立体装置は、例えばガラスまたは絶縁性プラスチックのような絶縁材料製の培養皿4を備える。培養皿4は培地11を含み、培地11上にバクテリアのコロニー12のような細胞材料12が存在する。培養皿4は導電材料製の支持体5上に支持される。培養皿4は導電性支持体5上に直接支持されていてもよく、または間接的に、培養皿4と支持体5との間の絶縁材料製の要素もしくは層により、支持されていてもよい。図1に示す実施形態では、支持体5は導電材料製の環状要素であり、培養皿4をその上に支持することができる透明な絶縁材料製の層6を包囲している。このようにして、培養皿4の下方から照明し、培養皿4内の細胞材料の位置を決定するのを支援することが可能である。層6は代替的な実施形態では、環状支持体5の上端に配置してもよい。
【0019】
位置決め装置7は捕捉ツール3(および捕捉ツールホルダ2)を培養皿4の上方の出発位置に位置決めするように配置される。この位置決め装置7は、位置決め装置の動作を制御するマイクロプロセッサ8、その他の適切なコントローラの制御下に、捕捉ツール3を培養皿に対して下降接近および上昇後退させることができる。加えて、位置決め装置7は培養皿4の平面に平行な平面内で捕捉ツール3を変位させることができる。変位は、図1において、両矢印X、YおよびZにより概念的に示されている。マイクロプロセッサ8は位置決め装置7に信号線9により接続され、位置決め装置7を適切に制御する。
【0020】
図1に示す装置は、さらに、捕捉ツール3が細胞材料12または培地11と接触するときを検知または測定する測定装置10を備える。測定装置10は静電容量測定を行い、捕捉ツール3および支持体5からなる系の静電容量を決定することができる。図1に示す実施形態では、測定装置10は発振回路18からなり、この発振回路18は交流電圧源としても機能する。この発振回路18はリード線14で捕捉ツールホルダ2に接続され、他のリード線15により環状支持体5と接続される。この実施の形態では、発振回路18は約1.25Vと約3.5Vの間の値を有し、100kHzと150kHzの間の範囲内で選ぶことができる固定周波数を有する電圧を与える。与えられた交流電圧Vは、図1におけるグラフに概念的に示されるように、鋸歯状電圧である。
【0021】
発振回路18は、例えば、オペアンプ・マルチバイブレーター発振器を備える。発振回路の発振周波数はリード線14、捕捉ツールホルダ2、捕捉ツール3、細胞材料および/または培地11、培養皿4、絶縁要素/層6、環状支持体およびリード線15からなる測定回路の静電容量の値によって決まる。捕捉ツール3が細胞材料12から分離されている場合(図1において実線で示される)、静電容量は、さらに、捕捉ツール3と細胞材料12および/または培地11の間に存在する空気柱により決定される。この空気柱は、図1において波線で示されているように、捕捉ツール3′が細胞材料12および/または培地11と接触しているときは、存在しない。発振回路18は測定ライン19を介してマイクロプロセッサ8に接続される。このマイクロプロセッサは、図示の実施形態では、測定結果を表示するディスプレイ20を備える。
【0022】
このように、測定装置10は、捕捉ツール3と支持体5からなる系の捕捉ツール3の出発位置における出発静電容量を測定することができる。この出発位置は図1に実線で示すように培養皿4の十分に上方にある。この出発位置において、測定装置10は出発静電容量を表す信号をマイクロプロセッサ8に提供する。本実施形態では、この出発静電容量を表す信号は発振回路18の発信周波数であり、この周波数はディスプレイ上に示すことができる。
【0023】
培養皿4に向けて捕捉ツール3を下降させるときに、測定装置10は静電容量(すなわち、発振周波数)を測定し続け、発振周波数を表す信号をマイクロプロセッサ8に送り続ける。マイクロプロセッサはコンパレータ21を備え、捕捉ツール3の下降中、静電容量(すなわち、発振周波数)と出発静電容量(すなわち、出発発振周波数)との比較を行う。捕捉ツール3′が細胞材料12に接触した瞬間に系の静電容量が変化し、その直接の結果として、発振回路の発振周波数が変化する。マイクロプロセッサ8のコンパレータ21はこの変化を検知し、この変化(または比較)を示す比較信号を発生し、この比較信号がマイクロプロセッサによって利用されて位置決め装置7の運動が制御される。捕捉ツール3の下降中に測定された発振周波数(すなわち、静電容量)が、例えば捕捉ツール3が細胞材料に接触したときに、出発発振周波数から逸れると、コントローラはコンパレータ21により送られた比較信号に基づいて、直ちに、捕捉ツール3の下降を停止する。このようにして、捕捉ツールが細胞材料中に進入することなく細胞材料のみが捕捉ツールと接触することが保証される。
【0024】
捕捉ツール3′が細胞材料12と接触する場合、測定回路を流れる電流、従って細胞材料を流れる電流は0.1mA未満であり、細胞材料の生長に無害である。測定回路を流れる電流は、図1において文字Aにより概念的に示される。
【0025】
捕捉ツール3′が細胞材料12に接触してマイクロプロセッサが位置決め装置7を制御して捕捉ツールの培養皿の方向への移動を停止した後、マイクロプロセッサ8は、位置決め装置を制御して捕捉ツール3の移動を逆転する、すなわち捕捉ツール3を細胞材料12から後退させる。
【0026】
細胞材料を担持する捕捉ツール3は、当技術において知られているように、さらなる処理のため直接移動してもよいけれども、本発明の現在もっとも好適な実施形態では、マイクロプロセッサ8は位置決め装置7の後退を制御して、捕捉ツール3が、まず、接触位置から所定の距離だけチェック位置(出発位置と接触位置の中間)に向けて後退し、そのチェック位置に保持される。このチェック位置において、捕捉ツール3と環状支持体5を含む測定回路の発振周波数(すなわち、静電容量)が測定される。このチェック位置において、測定された発振周波数が(コンパレータ21により判定されたように)出発周波数から逸れている場合、マイクロプロセッサ8は、捕捉ツール3と培地上の細胞材料12とを依然として接続している細胞材料の糸が存在する可能性があることを示す警告信号を発する。この警告信号は適切な措置を講ずることができるオペレータに対して発せられてもよい。
【0027】
しかしながら、できるだけ細胞材料の捕捉と移動とを自動化することが望ましいので、現在もっとも好適な実施形態では、捕捉ツール3を取り外し可能に保持するように構成された捕捉ツールホルダ2が用いられる。このように、捕捉ツールホルダ2は、例えば、変位可能なフィンガーを用いて捕捉ツール3を把持および解放するように構成されている。このようにして、チェック位置において測定された発振周波数(すなわち、静電容量)が出発発信周波数(すなわち、出発発信周波数)と異なる場合、警告信号を用いて捕捉ツール3を捕捉ツールホルダ2から解放して、捕捉ツール3が培養皿4内に落下するようにしてもよい。捕捉ツール3が中に落とされた培養皿4は、次いで、それ自体公知の任意の適当な自動化された手段により廃棄されるようにしてもよい。加えて、捕捉ツールホルダが捕捉ツールを取り外し可能に保持するように構成されているときは、培養皿中の培地面から細胞材料を捕捉しなければならなくなった都度、新しい捕捉ツールを用いるようにしてもよい。
【0028】
上述の測定装置は、出発位置から培養皿に向かって移動中に捕捉ツールが細胞材料に接触したときの静電容量の変化を測定するのに用いることができる多くの測定装置のうちの一つである。本発明は特定の装置に限定されず、当業者に知られた任意の測定装置を本発明において使用することができる。加えて、位置決め装置は詳細に説明されていないが、その理由は、この位置決め装置についても捕捉ツールを少なくとも垂直方向に変位させるのに適した任意の既知の装置を本発明において使用することができるからである。
【0029】
その結果、上述の組立体装置は、一般に、培養皿内の培地面から細胞材料を捕捉する方法を実行し、次いでその方法は、捕捉ツールを細胞材料に向けて変位させ、捕捉ツールと細胞材料との間の接触を判定し、かつ細胞材料から捕捉ツールを後退させ、それにより細胞材料を捕捉する工程を含み、捕捉ツールと細胞材料との間の接触の判定は静電容量の測定を行うことにより実行される。捕捉ツールの下降は、測定された静電容量が出発静電容量から逸れたときには、停止され、捕捉ツールは接触位置に留まる。捕捉ツールの接触位置が測定される場合、この測定位置もマイクロプロセッサにより用いられて捕捉ツールを移動する位置決め装置の動作が制御される。例えば、捕捉ツールは異なる速度で変位させることができる。例えば、出発位置から高速で出発し、捕捉ツールが前回のサイクルの接触位置に接近すると減速されるようにしてもよい。これが可能であるのは、一般に、培地面は平坦であると考えられるからである。
図1