(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101797
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】排気ガスターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 37/18 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
F02B37/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-518465(P2015-518465)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公表番号】特表2015-520334(P2015-520334A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013045775
(87)【国際公開番号】WO2013192027
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】102012012495.3
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・チルシュケ
【審査官】
川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04245953(US,A)
【文献】
実開昭59−025749(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/012951(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0064678(US,A1)
【文献】
実開昭62−141635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− タービンハウジング(2)であって、
− タービンハウジング入口(8)及びタービンハウジング出口(9)を有し、
− 前記タービンハウジング入口(8)と前記タービンハウジング出口(9)との間にウェイストゲートダクト(10)を有するタービンハウジング(2)と、
− 前記ウェイストゲートダクト(10)を開閉するための遮断要素(13)とを備える排気ガスターボチャージャ(1)であって、
− 前記遮断要素(13)が、前記タービンハウジング(2)に挿入されるスリーブ(14)と、長手方向軸線(L)に沿って移動可能であるように前記スリーブ(14)で案内されるピストン(22)とを備え、
− 前記スリーブ(14)がアパーチャ(15、16)を有し、前記アパーチャ(15、16)において、前記ウェイストゲートダクト(5)が前記スリーブ(14)の内部内に開口し、
前記スリーブ(14)と前記タービンハウジング(2)との間に、前記スリーブ(14)と前記タービンハウジング(2)とを熱的に分離するための隙間(20)を有し、
前記隙間(20)が前記スリーブ(14)の全長にわたってかつ前記長手方向軸線(L)の周りの全周にわたって形成され、
シールリング(21)が前記隙間(20)に配置される、
排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記ウェイストゲートダクト(5)が、第1のアパーチャ(15)で前記長手方向軸線(L)に対して平行にかつ第2のアパーチャ(16)で前記長手方向軸線(L)に対して横方向に前記スリーブ(14)内に開口する請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記タービンハウジング入口(8)から延びる前記ウェイストゲートダクト(5)の部分が前記第1のアパーチャ(15)で開口し、前記タービンハウジング出口(9)に至る前記ウェイストゲートダクト(5)の部分が前記第2のアパーチャで開口する請求項2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記シールリング(21)が前記第1のアパーチャ(15)と前記第2のアパーチャ(16)との間の前記隙間(20)に配置される請求項1又は2に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記スリーブ(14)がカラー(17)により前記タービンハウジング(2)に当接する請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
前記スリーブ(14)がカバー(18)によって閉じられる請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記ピストン(22)をアクチュエータに接続するピストンロッド(24)を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の排気ガスターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
給気圧力の調節のために、一般的な排気ガスターボチャージャには、タービンホイールを迂回しつつタービン入口をタービン出口に接続するウェイストゲートダクトが設けられる。必要な給気圧力が達成されると、排気ガス流の少なくとも一部を前記ウェイストゲート又はバイパスダクトを通して、タービンを通過して又はタービンホイールを通過して導くことができる。前記ウェイストゲートダクトを開閉するために、給気圧力調節フラップとも呼ばれるウェイストゲートフラップが設けられる。前記給気圧力調節フラップは、リンク機構を介して、例えば空気圧又は電気制御カプセルの形態であり得るアクチュエータに接続される。
【0003】
このような給気圧力調節フラップ装置の不都合は、製造して組み立てなければならない個々の部品が多数あることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、より単純な構造でありかつ組み立てがより容易である、請求項1の前提部に示したタイプの排気ガスターボチャージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0006】
本発明によれば、ウェイストゲートダクトを開閉するために直線的に移動可能なピストンが使用される。本発明によれば、ピストンのガイドをタービンハウジングから熱的に分離するために、スリーブが設けられる。特に、スリーブとタービンハウジングとの間には、タービンハウジングの熱膨張の場合にも、スリーブが変化しないままであることを保証する程度に十分に大きい隙間が形成される。
【0007】
ウェイストゲートダクトは、タービンホイールに対して流れが衝突する上流のタービンハウジング入口から分岐し、タービンホイールを迂回しつつタービンハウジング出口に至る。本発明によれば、スリーブは前記ウェイストゲートダクトに配置され、ピストンはスリーブ内で案内される。タービンハウジング入口から延びるウェイストゲートダクトは、スリーブの第1のアパーチャを介して開口する。ウェイストゲートダクトは、第2のアパーチャを介してタービンハウジング出口に進む。したがって、ウェイストゲートダクトは、スリーブ内のピストンの位置に応じて閉じられるか又は開く。
【0008】
好ましくは、第1のアパーチャはスリーブの長手方向軸線に対して平行に、又はピストンの端部側に配置されるようになっている。排気ガスがスリーブの内部を出る第2のアパーチャは、長手方向軸線に対し直角に又はピストンの側面に配置される。ピストンとスリーブとの間の摩擦の改善のために、ピストンリングがピストンの側面に設けられる。
【0009】
ピストンの移動又は位置決めのために、ピストンはピストンロッドを介してアクチュエータに接続される。前記アクチュエータは空気圧式、電気式又は油圧式に作動可能な制御要素であることが好ましい。ピストンロッドは、スリーブを閉じるカバーを通して案内されることが好ましい。ピストンは、長手方向軸線に沿った直線運動を保証するために、堅固に又は継手を介してピストンロッドに接続され得る。必要に応じて、ピストンロッドはカバーに対してシールされてもよい。
【0010】
タービンハウジングとスリーブとの間の熱結合は、特に隙間によって、ピストンとスリーブとの間の摺動面の摩耗の低減及び熱歪みの低減をもたらし、これによって、ウェイストゲートダクトの遮断要素のシール作用が維持される。
【0011】
本発明のさらなる詳細、利点及び特徴は、図面を参照して例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの単純化した概略図である。
【
図2】例示的な実施形態による本発明による排気ガスターボチャージャの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に基づいて、排気ガスターボチャージャ1の例示的な実施形態について以下に詳細に説明する。
【0014】
図1は、排気ガスターボチャージャ1の単純化した概略図を示している。前記排気ガスターボチャージャは、タービンハウジング2、軸受ハウジング3及びコンプレッサハウジング4を備える。シャフト5は、軸受ハウジング3に回転可能に取り付けられる。タービンホイール6は、シャフト5の一方の端部でタービンハウジング2に着座される。コンプレッサホイール7は、シャフト5の他方の側でコンプレッサハウジング4に着座される。
【0015】
タービンハウジング入口8及びタービンハウジング出口9は、タービンハウジングに形成される。排気ガスターボチャージャ1の動作中、排気ガスは、タービンハウジング入口8を介してタービンホイール6に流れる。排気ガスがタービンホイール6に流れた後、排気ガスは、タービンハウジング出口9を介して排気ガスターボチャージャ1を出る。タービンホイール6及びシャフト5を回転することによって、コンプレッサホイール7が回転され、したがって、内燃機関用の給気が圧縮される。
【0016】
ウェイストゲートダクト10は、タービンホイール6を迂回しつつタービンハウジング入口8からタービンハウジング出口9に至る。ウェイストゲートダクト10を開閉するための遮断要素13が、ウェイストゲートダクト10に形成される。ウェイストゲートダクト10の第1の部分11は、タービンハウジング入口8から遮断要素13に至る。ウェイストゲートダクト10の第2の部分12は、遮断要素13からタービンハウジング出口9に至る。
【0017】
図2は、タービンハウジング2内に一体化された遮断要素13を詳細に示している。さらに、
図2は、タービンハウジング2のダクトとして形成されたタービンハウジング入口8を示している。前記タービンハウジング入口8はタービンホイール6に至る。ウェイストゲートダクト10の第1の部分11は、タービンハウジング入口8から分岐する。第1の部分11は、タービンハウジング2に挿入されるスリーブ14に至る。前記スリーブ14から進んで、ウェイストゲートダクト10の第2の部分12はタービンハウジング出口9に至る。
【0018】
スリーブ14は、第1のアパーチャ15と第2のアパーチャ16とを有する。ウェイストゲートダクト10の第1の部分11は、第1のアパーチャ15内に開口する。第2のアパーチャ16と第2の部分12とを介して、排気ガスの示した流れ25をタービンハウジング出口9に導くことができるように、第2のアパーチャ16がウェイストゲートダクト10の第2の部分12に形成される。
【0019】
スリーブ14は長手方向軸線Lを有する。第1のアパーチャ15は、排気ガスを長手方向軸線Lに対し平行方向にスリーブ14の内部内に導く。排気ガスは、第2のアパーチャ16を介して長手方向軸線Lに対して横方向にスリーブ14の内部を出る。
【0020】
カラー17が、長手方向軸線Lに対して直角にスリーブ14に形成される。前記カラー17はタービンハウジング2に当接する。カバー18は長手方向軸線Lに対して直角であり、スリーブ14を閉じる。カバー18及びカラー17は、ねじ接続部19によってタービンハウジング2に接続される。
【0021】
隙間20が、スリーブ14とタービンハウジング2との間に形成される。シールリング21は、第1のアパーチャ15と第2のアパーチャ16との間で前記隙間20に着座される。隙間20は隙間幅26を有する。隙間20は、スリーブ14の全長にわたってかつスリーブ14の周りの全周にわたって形成される。スリーブ14とタービンハウジング2との間の隙間20は、スリーブ14の端部側に、特に、第1のアパーチャ15が形成される側にも同様に設けられる。
【0022】
ピストン22は、長手方向軸線Lに沿って長手方向に移動可能であるようにスリーブ14で案内される。ピストン22は、ピストンリング23を介して摺動して移動可能であるようにスリーブ14に受容される。第1のアパーチャ15から第2のアパーチャ16への排気ガスの貫流は、ピストンの位置に応じて可能にされるか又は遮断される。
【0023】
ピストン22は、ピストンロッド24を介してアクチュエータ(図示せず)に接続される。ピストンロッド24はカバー18を通して延びる。
【0024】
隙間幅26は、タービンハウジング2の通常生じる熱膨張中に、スリーブ14が可能な限りほとんど変形しない程度に十分に大きく選択される。したがって、全体の遮断要素13がほとんど摩耗なしにシールして機能することが保証される。
【0025】
本発明の上述の説明に加えて、本発明の追加の開示のために
図1及び
図2の本発明の概略図が本明細書により明示的に参照される。
【符号の説明】
【0026】
1 排気ガスターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 軸受ハウジング
4 コンプレッサハウジング
5 シャフト
6 タービンホイール
7 コンプレッサホイール
8 タービンハウジング入口
9 タービンハウジング出口
10 ウェイストゲートダクト
11 第1の部分
12 第2の部分
13 遮断要素
14 スリーブ
15 第1のアパーチャ
16 第2のアパーチャ
17 カラー
18 カバー
19 ねじ接続部
20 隙間
21 シールリング
22 ピストン
23 ピストンリング
24 ピストンロッド
25 流れ
26 隙間幅