(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)プロポリス抽出物、(B)リゾレシチン、(C)リゾレシチン以外の乳化剤、(D)ミツロウ、及び(E)ミツロウ以外の油性成分を含有するカプセル用プロポリス抽出物含有組成物であって、
前記(C)リゾレシチン以外の乳化剤の平均HLBが7以上であるカプセル用プロポリス抽出物含有組成物。
前記(E)ミツロウ以外の油性成分は、魚油、植物油、スクワレン、及び中鎖脂肪酸油から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載のカプセル用プロポリス抽出物含有組成物。
前記(C)リゾレシチン以外の乳化剤は、炭素数14〜22の脂肪酸から構成されるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル用プロポリス抽出物含有組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のカプセル用プロポリス抽出物含有組成物(以下、「プロポリス含有組成物」という)を具体化した一実施形態を説明する。(A)プロポリス抽出物の原料となるプロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、セイヨウミツバチ等のミツバチが採取した植物の滲出液、新芽、樹皮等に唾液を混ぜて作られる膠状ないしは蝋状の物質である。プロポリスの産地は、特に限定されず、例えば中国、日本等のアジア諸国、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ等の南米諸国、ハンガリー、ブルガリア等のヨーロッパ、カナダ等の北米、オーストラリア、ニュージーランド等のオセアニア等を使用することができる。プロポリス原塊は、そのままの形態で抽出原料として使用することができる。
【0013】
プロポリス原塊からプロポリス抽出物の入手方法は、公知の抽出法、例えば水、親水性有機溶媒、又は水/親水性有機溶媒の混合溶媒を用いた抽出法等が用いられる。親水性有機溶媒としては、水に溶解する性質を有するエタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールのほか、アセトンやエーテル類、クロロホルム等を適宜選択して使用することができる。これらの親水性有機溶媒を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、生体への適用性に優れる観点からエタノールがより好ましい。また、プロポリス原塊中には、生体に有用な成分として、極性の高い有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、さらには極性の低いテルペノイド類等を含んでいることが確認されている。したがって、目的とする成分に応じて、抽出溶媒を適宜選択することができる。
【0014】
前記溶媒を用いて抽出する場合、抽出処理前に採取時に混入するゴミ等の夾雑物を除去し、粗粉砕することが好ましい。例えば、親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合液においてエタノールを用いる場合、その濃度は、目的等に応じて適宜設定されるが、好ましくは50〜100容量%、より好ましくは70〜100容量%、最も好ましくは95容量%である。エタノール濃度が50容量%以上の場合には、有用成分の抽出率をより向上させることができる。
【0015】
エタノール溶媒の使用容量は、プロポリス原塊の質量に対して好ましくは1〜20倍量、より好ましくは2〜10倍量である。エタノール溶媒の使用容量が1倍量以上の場合には、目的成分の抽出率をより向上させることができる。一方、エタノール溶媒の使用容量が20倍量以下の場合には、装置をより大きくする必要がなく、濃縮等の工程の処理時間をより短縮することができ、作業性をより向上させることができる。
【0016】
抽出温度は抽出溶媒の種類により適宜設定されるが、2〜40℃であることが好ましい。抽出温度が2℃以上の場合には、有効成分の抽出率をより向上させることができる。一方、抽出温度が40℃以下の場合には、ロウ成分の抽出をより抑制することができ、抽出後の濾過性をより向上させることができる。また、揮発性の高い抽出溶媒の場合、溶媒の蒸発をより抑制することができる。なお、抽出操作は、前記抽出温度で撹拌しながら所定時間、例えば3時間以上行えばよい。そして、上記の抽出条件で有効成分を十分に抽出した後、濾紙濾過、濾過助剤である珪藻土濾過等の濾過処理又は遠心分離処理し、不溶性成分を除去することによりプロポリス抽出物を得ることができる。不溶性成分の除去は、濾過コスト、不溶性成分の除去効率、処理の簡易性の観点から珪藻土濾過が好ましく適用される。
【0017】
本実施形態のプロポリス含有組成物中における(A)プロポリス抽出物の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜99質量%、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%である。この含有量が、0.1質量%以上の場合、(A)プロポリス抽出物の含有率を増加させ、プロポリスの有効成分の摂取量を増加させることができる。一方、含有量が99質量%以下の場合、プロポリス含有組成物中における成分の析出をより抑制することができる。
【0018】
(B)リゾレシチンは、カプセル中におけるプロポリス含有組成物の安定性、及び水・消化液に対する分散性を向上させる。(B)リゾレシチンは、レシチンを酵素等を使用して低分子化したものであればいずれも使用することができる。レシチンの由来としては特に限定されず、植物性レシチン、例えば大豆レシチン、及び動物性レシチン、例えば卵黄レシチンのいずれも使用することができる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0019】
レシチンを分解する酵素としては、ホスホリパーゼを挙げることができる。ホスホリパーゼとしては、例えばホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼB、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。ホスホリパーゼの中でもレシチンの2位脂肪酸エステル結合を加水分解するホスホリパーゼA2が好ましく用いられる。
【0020】
プロポリス含有組成物中における(B)リゾレシチンの含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.8〜8質量%である。この含有量が、0.1質量%以上の場合、特にプロポリス含有組成物の水・消化液への分散性をより向上させることができる。一方、含有量が15質量%以下の場合、プロポリス含有組成物の水・消化液への分散性をより向上させることができ、また、プロポリス含有組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
【0021】
(C)リゾレシチン以外の乳化剤は、カプセル中におけるプロポリス含有組成物の安定性、及び水・消化液に対する分散性を向上させる。(C)リゾレシチン以外の乳化剤としては、平均HLBが7以上、好ましくは平均HLBが11以上の乳化剤が適用される。平均HLBが7以上の乳化剤を使用することにより、プロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性を向上させる。
【0022】
なお、本実施形態において、乳化剤のHLB値は、乳化剤のケン化価と構成脂肪酸の中和価から次式のアトラス法より算出できる。
式:HLB=20×(1−S/A)(S:ケン化価、A:脂肪酸の中和価)
(C)リゾレシチン以外の乳化剤の平均HLBは、プロポリス含有組成物中に配合される乳化剤が1種類の場合はそのHLBの値が適用される。プロポリス含有組成物中に配合される乳化剤が複数の場合、各乳化剤のHLB値をそれぞれ求め、各配合比率(1未満)を掛けた値の合計により求められる(平均HLB値)。したがって、HLBの値が7未満の化合物であっても、他の乳化剤と併用し、平均HLB値が7以上となれば使用することができる。
【0023】
(C)リゾレシチン以外の乳化剤としては、食品に適用できる乳化剤であれば、適宜使用することができ、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。各化合物は、ポリオキシエチレン(以下「POE」という)基、ポリオキシプロピレン基等のオキシアルキレン基を含んでもよい。脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、入手容易性の観点から炭素数が8〜22の脂肪酸が好ましい。また、カプセル中におけるプロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性を向上させる観点から炭素数14〜22の脂肪酸がより好ましい。乳化剤を構成する脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0024】
乳化剤の具体例としては、例えばジオレイン酸ペンタグリセリン、モノオレイン酸ジグリセリン、自己乳化型ステアリン酸モノ・ジグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリン、モノステアリン酸ヘキサグリセリン、ジステアリン酸デカグリセリン、モノオレイン酸デカグリセリン、ベヘニン酸デカグリセリン、縮合リシノール酸エステル、ステアリン酸グリセリル、POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノオレート等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0025】
プロポリス含有組成物中における(C)リゾレシチン以外の乳化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜45質量%、さらに好ましくは3〜40質量%である。この含有量が、0.5質量%以上の場合、プロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液への分散性をより向上させることができる。一方、含有量が50質量%以下の場合、プロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液への分散性をより向上させることができ、また、プロポリス含有組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
【0026】
(D)ミツロウは、カプセル中におけるプロポリス含有組成物の粘度調整基材として配合される。(D)ミツロウを加えることにより、液体状のプロポリス抽出物をペースト状に成形し、またプロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性を向上させる。プロポリス含有組成物中におけるミツロウの含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1〜8質量%である。この含有量が、0.1質量%以上の場合、カプセル内におけるプロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性をより向上させることができる。一方、含有量が20質量%以下の場合、カプセルから溶出した際のプロポリス含有組成物の水・消化液への分散性をより向上させることができる。また、プロポリス含有組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0027】
(E)ミツロウ以外の油性成分は、カプセル中におけるプロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性を向上させる。(E)ミツロウ以外の油性成分としては、例えば魚油、植物油、スクワレン、中鎖脂肪酸油(MCT)が挙げられる。魚油としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。植物油としては、大豆油、大豆白絞油、サフラワー(菜種)油、菜種白絞油、ひまわり油、パーム油、ごま油、亜麻仁油、ひまし油、オリーブ油、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ブドウ(グレープシード)油、椿油、米白絞油、米胚芽油、小麦胚芽油、しそ油等が挙げられる。中鎖脂肪酸油を構成する中鎖脂肪酸は、炭素数が5〜12の脂肪酸を示し、より具体的には、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、ココナッツ、パームフルーツ等の天然物から搾取してもよい。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0028】
プロポリス含有組成物中における上記油性成分の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは1〜99質量%、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜70質量%である。この含有量が、1質量%以上の場合、プロポリス含有組成物の安定性及び水・消化液に対する分散性をより向上させることができる。一方、含有量が99質量%以下の場合、プロポリス含有組成物中のプロポリス抽出物の含有率をより向上させることができる。
【0029】
以上のようにして得られたプロポリス含有組成物は、カプセルに内包され、カプセルに成型されることにより使用される。プロポリス含有組成物は、上記(A)〜(E)成分を公知の方法を用いて混合し、そのまま溶液の状態でカプセルに内包して利用することが可能であるうえ、必要に応じて濃縮、又は水希釈した状態でプロポリス含有組成物として利用することも可能である。溶出液の濃縮には、公知の減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮等が採用可能である。
【0030】
プロポリス含有組成物には、腐敗防止のための公知の添加剤やアルコール類を適量配合してもよい。また、本実施形態のプロポリス含有組成物を食品に適用する場合、その他の種々の食品素材又は飲料品素材とともにカプセル内に封入してもよい。食品に適用する場合は、その他の成分として、例えばゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤、水等の溶媒等を適宜配合してもよい。また、医薬品に適用する場合は、その他の成分として、例えば賦形剤、基剤、溶剤、安定剤、水等の溶媒等を配合してもよい。安定性及び水・消化液に対する分散性を向上させるため、溶媒として水を含むことが好ましい。水の配合量は適宜設定されるが、プロポリス含有組成物中において、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0031】
上記実施形態のプロポリス含有組成物は、ソフトカプセル又はハードカプセルのいずれに適用されてもよい。例えばソフトカプセルは、カプセル皮膜用組成物から形成した皮膜を、ロータリーダイ法等により、内容物を充填するとともにソフトカプセルを成形することにより製造される。カプセルの素材は、公知の材料を適用することができる。ソフトカプセルの素材としては、ゼラチン、増粘多糖類、グリセリン等が挙げられる。ハードカプセルの素材としては、例えばゼラチン、プルラン等の多糖類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、デンプン等が挙げられる。これらのカプセルは、瓶詰め包装、PTP包装、パウチ等の包装形態で包装されてもよい。
【0032】
次に、上記のように構成されたプロポリス含有組成物の作用を説明する。
本実施形態のプロポリス含有組成物は、プロポリス抽出物に対して所定の乳化剤及び油性成分を併用した。それにより、カプセルに封入されるプロポリス含有組成物の水、特に消化液に対する分散性を向上できる。さらには、プロポリス含有組成物の安定性を向上できる。
【0033】
上記実施形態のプロポリス含有組成物を包含するカプセルは、日本薬局方第16改正に記載されている溶出試験法(パドル法)において、溶出試験第2液を用いて試験を行った場合、カプセルに穴が空いてから(内容物の溶出開始から)60分後のプロポリス中の成分、例えばアルテピリンCの溶出率が5%以上となるよう規定されていることが好ましい。かかる構成により、カプセルからのプロポリス含有組成物の溶出速度を速め、さらには生体における吸収速度の向上を図ることができる。尚、溶出率(%)は、溶出試験第2液中において、HPLCを用いてアルテピリンCのピーク面積を求め、全てのアルテピリンCが試験液に分散又は溶解した時のピーク面積を溶出率100%として求めることができる。
【0034】
なお、より具体的な構成として、ロータリーダイ式カプセル充填機(例えば金型:OVAL−6)を用いて、300mgを内包しながらソフトカプセルを作製し、上記と同様のパドル法により溶出試験を行った場合、内容物の溶出開始から60分後のアルテピリンCの溶出率は、5%以上となるよう規定されていることが好ましく、10%以上となることがより好ましい。また、有効成分がp−クマル酸の場合、内容物の溶出開始から60分後の溶出率は、30%以上となるよう規定されていることが好ましく、40%以上となることがより好ましい。ソフトカプセルの膜厚は特に限定されないが、好ましくは0.2〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.9mmの範囲で規定することができる。
【0035】
本実施形態のプロポリス含有組成物によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態のプロポリス含有組成物は、所定の乳化剤及び油性成分を使用した。それにより、カプセルに封入されるプロポリス含有組成物の水、特に消化液に対する分散性を向上できる。さらには、プロポリス含有組成物の安定性を向上できる。
【0036】
(2)一般的に、ミツロウにより、カプセルに内包される成分の水・消化液への分散性又は溶解性が低下する場合がある。しかしながら、本実施形態のプロポリス含有組成物は、乳化剤としてリゾレシチン、平均HLBが7以上の乳化剤等を配合しているので、分散性又は溶解性の低下を抑制することができる。
【0037】
(3)プロポリス含有組成物の安定性の向上、及び水・消化液に対する分散性又は溶解性の向上により、プロポリスの摂取によって得られる生体機能、すなわち、抗菌効果、抗炎症効果、抗酸化作用、免疫賦活作用等のより一層の向上効果が期待される。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、必要により微細化処理が行われてもよい。例えば、プロポリス抽出物を乾燥させた後、微細化処理を行ってもよく、プロポリス抽出物と、所定の乳化剤及び油性成分を混合し、混合性又は組成物の安定性を高めるために微細化処理後に行ってもよい。微細化処理は、市販のホモジェナイザーを適宜採用することができる。例えば、高圧雰囲気下において、1又は2以上の小径穴と特定流路を有するノズル内を流体が高速移動することにより対象物を粉砕する高圧ホモジェナイザー、超音波を用いて対象物を粉砕する超音波粉砕機、高速撹拌処理により又は衝撃により対象物を粉砕する高速回転衝撃粉砕機、粉砕媒体を使用するボールミル又はビーズミル等が挙げられる。
【0039】
・上記実施形態において、プロポリス含有組成物を内包したカプセルは、各種効能及び効果を得ることを目的とした健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメント等として適用してもよい。また、各種医薬品、医薬部外品に適用してもよい。本実施形態のプロポリス含有組成物を内包するカプセルを医薬品として使用する場合は、好ましくは服用(経口摂取)してもよく、又は経腸投与してもよい。
【0040】
・上記実施形態におけるプロポリス含有組成物を内包したカプセルは、ヒトが摂取する飲食品及び医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜やペット等の飼養動物の飼料にサプリメント、栄養補助食品、医薬品等として適用してもよい。
【実施例】
【0041】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:プロポリス含有組成物を内包するソフトカプセルの製造、並びに安定性及び水・消化液分散性試験>
表1〜3に示される各例のプロポリス含有組成物を調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)〜(E)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。乳化剤として、表4に示される乳化剤を使用した。各表中の(C)乳化剤の含有量は、原液としての使用量を示す。
【0042】
プロポリス抽出物としてプロポリスエキスを使用した。プロポリスエキスは、まず、原料としてブラジル産プロポリス原塊の粉砕物150kgに、親水性有機溶媒を含有する溶媒としてエタノール濃度が95容量%の含水エタノール530Lを加えて室温(約25℃)で12時間攪拌して抽出した。そして、プロポリス粉砕物を含む抽出液を遠心分離することによって、固液分離、濃縮し、プロポリス抽出液110kg(固形分55質量%)を得た。
【0043】
<安定性>
上記各例のプロポリス含有組成物について、プロポリス含有組成物を調製する際、又はプロポリス含有組成物をソフトカプセルに内包する際の不溶成分の析出の有無を判断することにより、安定性について評価した。具体的には、下記基準に従い評価した。なお、ソフトカプセルの皮膜として、ゼラチン及びグリセリン等の各成分を混合してなるソフトカプセル用皮膜を使用した。金型として、OVAL−6を使用し、ロータリーダイ式カプセル充填機(三協社製)を用いて、300mgを内包しながら膜厚0.9mmのソフトカプセルを作製した。
【0044】
組成物の調製時及びカプセル内包時の両方において、析出が見られず、安定性が良好な場合を○、カプセル内包時にのみ析出が見られ、安定性を有するが、やや劣る場合を△、組成物の調製時にのみ析出が見られ、安定性が劣る場合を×、組成物の調製時及びカプセル内包時の両方において析出が見られ、安定性が悪い場合を××として評価した。結果を各表に示す。
【0045】
<水分散性>
まず、30mLの透明のバイアル瓶に26mLの精製水とスターラーバーを入れる。次に、上記のように調製された各例のプロポリス含有組成物を、各バイアル瓶に0.2gずつ入れ、すぐにスターラーバーを350rpmで3分間回転させた。その3分間、バイアル瓶中のプロポリス含有組成物の状態を目視にて観察し、水分散性について、下記基準に従い評価した。
【0046】
分散試験開始から90秒でプロポリス含有組成物がほぼ水に分散し、分散性に優れる場合を5点、180秒でプロポリス含有組成物がほぼ水に分散し、分散性が良好な場合を4点、180秒後にプロポリス含有組成物の残渣が僅かに残るが、分散性がある場合を3点、180秒後にプロポリス含有組成物の残渣がやや多く残り、分散性がやや悪い場合を2点、180秒後、プロポリス含有組成物が水にほとんど分散せず、分散性が悪い場合を1点として評価した。結果を各表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
表1〜3に示されるように、各実施例のプロポリス含有組成物は、安定性を有するとともに、水への分散性も有することが確認された。リゾレシチンを含有せず、(C)乳化剤の平均HLBが7未満である比較例1は、各実施例に対して水分散性に劣ることが確認された。リゾレシチンを含有しない比較例2は、各実施例に対して安定性及び水分散性に劣ることが確認された。(C)乳化剤の平均HLBが7未満である比較例3,4は、各実施例に対して、特に水分散性に劣ることが確認された。ミツロウを含有しない比較例5は、各実施例に対して安定性及び水分散性に劣ることが確認された。
【0051】
<試験例2:油性成分の種類を変化させた場合の安定性及び水分散性試験>
(E)油性成分の種類を変化させた場合の安定性及び水分散性について評価した。上記試験例1の実施例14のプロポリス含有組成物の構成をベースとして、(E)油性成分の種類のみを変化させた実施例17〜28のプロポリス含有組成物を調製した。試験例1と同様の方法にて安定性及び水分散性について評価した。結果を下記表に示す。
【0052】
【表5】
表5に示されるように、(E)油性成分として、様々な植物油、魚油、MCT、スクワレン等を使用した各実施例において、いずれも優れた安定性を有するとともに、水への分散性も優れることが確認された。
【0053】
<試験例3:プロポリス含有組成物を内包するソフトカプセルの製造及び分散性試験>
実施例11及び比較例1のプロポリス含有組成物をそれぞれ使用し、ソフトカプセルを製造した。ソフトカプセルの皮膜として、ゼラチン及びグリセリン等の各成分を混合してなるソフトカプセル用皮膜を使用した。金型として、OVAL−6を使用し、ロータリーダイ式カプセル充填機(三協社製)を用いて、300mgを内包しながら膜厚0.9mmのソフトカプセルを作製した。
【0054】
得られた実施例11及び比較例1の各ソフトカプセルを使用し、下記方法に従い、溶出試験を行った。溶出試験は、日本薬局方第16改正の一般試験法記載の6.10溶出試験法に準じて行った。但し、試験液としては、溶出試験第2液(pH6.8のリン酸塩緩衝液1容量に水1容量を加える)を使用した。溶出試験機として、パドル法の装置として、富山産業社製NTR−6100Aを使用した。表6に記載の各試験時間において、試験液中のp−クマル酸及びアルテピリンCをそれぞれUPLCにより、標準品を指標としてピーク面積を求めた。溶出率(%)は、全てのp−クマル酸又はアルテピリンCが試験液に溶解した場合のピーク面積を溶出率100%として求めた。各例において試験開始から5分後にカプセル皮膜が崩壊し、内容物の溶出が開始されたことを目視にて確認した。内容物の溶出開始からの経過時間(分)も併せて記載する。試験結果を下記表に示す。
【0055】
【表6】
表6に示されるように、実施例11のソフトカプセルの場合、特に溶出開始から60分以内において、比較例1の構成に対し、カプセルからのプロポリス含有組成物の溶出又は分散速度が速く、溶出性又は分散性が著しく向上することが確認された。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。(イ)日本薬局方第16改正に記載されている溶出試験法において、溶出試験第2液を用いて試験を行った場合、内容物の溶出開始から60分後のアルテピリンCの溶出率が5%以上となるよう規定された前記カプセル。
【解決手段】本発明は、(A)プロポリス抽出物、(B)リゾレシチン、(C)リゾレシチン以外の乳化剤、(D)ミツロウ、及び(E)ミツロウ以外の油性成分を含有するカプセル用プロポリス抽出物含有組成物であって、(C)リゾレシチン以外の乳化剤の平均HLBが7以上である。