【実施例】
【0053】
ここで、本発明の実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
【0054】
実施例1
まず、吹奏楽器として、従来のエアリード楽器専用弱音器の適用が難しいと指摘されてきたオカリナを一例として、本発明の息圧調整弱音装置(マウスピース)の適用を試みた。オカリナは実質的には「壺状」であることに由来する特性を踏まえ、プロのオカリナ奏者の視点から、息圧を調整し、弱音効果が得られるように工夫した。
【0055】
オカリナは、ウィンドウェイ(吹き込んだ息が通る部分―
図3のb)、エッジ(ウィンドウェイの出口から出てきた息がぶつかり、オカリナの内部とオカリナの外部に息を振り分ける働きをする部分―
図3のc)、および、窓部(ウィンドウェイの出口から出てきた息を受け、オカリナの外部に息を放出する部分―
図3のd)で構成されるが、その形状は、リコーダー類とは異なり制作者により多種多様である。
【0056】
また、一つのオカリナで発音することが可能な音域は、一般的には1オクターブ半に限定されるため、その音域の狭さを解決することを目的として、ソプラノ、アルト、テノール、バス等、音域によって様々な大きさのオカリナ及び複数の音域の楽器を一体化した複数管楽器が制作されている。
【0057】
これらの特徴を踏まえると、オカリナに従来のエアリード楽器用弱音器を装着すること自体が困難であるため、オカリナのウィンドウェイや、オカリナの裏側にある窓部、エッジ部の各部に何も装着することなく、また、オカリナの表側、裏側にあるトーンホール(
図3−f)にも何も影響を与えることなく、オカリナへの装着を可能にする必要がある。
また、装着することによって、オカリナ演奏時の運指の妨げにならないよう配慮する。
【0058】
オカリナは、プラスティック製のものも市販されているが、主流はあくまで「陶器」であるため、非常に壊れやすい。
特にウィンドウェイ、窓部、エッジは、発音するために最も重要な部位であり、この部位を傷つけてしまうと、最悪の場合は発音が不可能になる。
したがって、これら部位を損傷することなく着脱を可能にする。
【0059】
オカリナは、リコーダーやフルートなどの吹奏楽器(エアリード楽器)と同じ種類に分類されているが、リコーダーやフルートと比較すると、外形、および、共振系の形状が著しく異なる。
【0060】
外形、および、共振系の形状の具体的な相違点について説明すると、リコーダーやフルートの場合、本体の両端が開放されている開管楽器(円筒管)であり、筒状の本体の管内部にある空気の柱(気柱)が共振(あるいは、共鳴)して音が出る。
【0061】
これに対し、オカリナの場合、本体の一端が開放され、他端が閉じている閉管楽器(円錐管)であり、また,一端の内径が小さく、多端に向かって次第に内径が大きくなるという特徴があり、管内部の空気が共振して発音する。
さらに、詳細に検討するならば、オカリナは、実質的には左右非対称の壷状であり、オカリナを「管」とする定義は適切ではない。
【0062】
壺状であるがゆえにリコーダー等と比較して、オカリナの音質は、倍音の少ないサイン波に近い。
同じ運指であっても(すなわち、同じ音程の音を出そうとしても)、オカリナに吹き入れる息の強弱を調整しようとすると、音量と音程が連動して適正なレベルよりも上下にぶれてしまい、同時に音質も劣化する。
「劣化」とは、オカリナ特有のサイン波に近い音から偏向することを意味する。
【0063】
また、低音部から高音部に発音を移行する。
たとえば、「ド」の音から順に「レ」、「ミ」、「ファ」と音を出していく際に、正確な音程で発音するためには、低音部から高音部に移行するにつれて徐々に吹き入れる息を強くしていく必要がある。
したがって、他のエアリードを有する管楽器で実現可能な音量調整(ダイナミクスの表現)は、基本的には不可能である。
【0064】
このことは、上述したとおり、オカリナの特徴として低音部から高音部に発音を移行するにつれ、本来ならば息を強めていく必要があるが、従来のエアリード楽器用弱音器をオカリナに適用すると、吹き入れる息の強弱調整の進行方向を逆にしなければならないことを意味する。
【0065】
ゆえに、演奏技術が初級、中級程度の奏者が従来のエアリード楽器用弱音器をオカリナに装着して吹奏した場合、息の調整が難しくなり、適正な発音ができない可能性が極めて高いうえ、奏者の息の調整(音程に合わせて息の量を調整する)方法に不適切な癖がつく可能性すらある。
【0066】
また、オカリナは単音楽器であるため、演奏時には伴奏を必要とすることが多く、現状、伴奏用音源に合わせてオカリナを練習する機会も多い。
大きな音が出せない環境で、小さい音で伴奏楽器と合わせるという状況もある。
【0067】
オカリナの場合、歌口、とりわけエッジ部の状況の良しあしが音質に多大な影響を与える。
オカリナに関する一般的な常識で言えば、この部分に触れる際には、プロの奏者であっても極めて慎重な扱いが求められる。
ましてやプロ奏者ではない、一般の愛好家がこの部分に触れる際には、破損などが発生する事態も容易に予想される。
したがって、可能であれば、この部分に触れる行為は極力避けることが、オカリナの適切な扱い方法であるとされている。
【0068】
ここまでをまとめると、従来のエアリード楽器用弱音器をこの部分に装着すると、オカリナは壺状楽器であることから、リコーダーと比較して息量を調整する方向が逆になり、なおかつ音程(ピッチ)も低くなり、また、オカリナは形状等に多様性があるため、メーカーの種類別に膨大な形状の弱音装置が必要なうえ、装着の際の微調整も固体ごとに必要になる。
装着の仕方によってはまったく発音しなくなってしまう。
この重要な部分を破損する恐れさえある、ということになる。
【0069】
したがって、従来のエアリード楽器用弱音器をオカリナに適用しても、現段階では本来意図する弱音効果を十分に発揮することができない上に、奏者側での負担も大きい。
【0070】
このようなことから、本発明者は、特殊な吹奏楽器であるオカリナを切り口として、本発明の汎用性を有する息圧調整弱音装置の開発を試みた。
【0071】
本発明の一実施形態を
図2に示す。
【0072】
これは、オカリナ本体にマウスピースg、および、アダプターhを装着した内部の状態を示す。
マウスピースgとアダプターhの材質としてシリコンゴムを使用することで、マウスピースgとオカリナ本体接触部7を損傷することなく装着、および、密閉が可能となる。
【0073】
図3は、本発明のマウスピースgとアダプターhをオカリナ本体に装着し、裏からみた場合(a)と表からみた場合(b)で表している。
【0074】
図2において、マウスピース吹口1から吹き込んだ息8の量と流れは、矢印の本数と方向で示す。
息逃し孔3については、空気が流れる際にウィンドウェイの壁や様々な障害物に息が接することで雑音(いわゆる歯擦音)が発生するため、息逃し孔3を斜めに開けることでこの雑音を低減する。
【0075】
奏者は、オカリナに装着したマウスピースの吹口1に口を当てて息を吹き入れる。
吹き入れた息8は、まず、マウスピース内ウィンドウェイ2を通過する。
その後、息逃し孔3に差し掛かった息8の一部は、息逃し孔3からマウスピース外部へと排出される。
このとき、外へと排出される息の量は、息量調節リング4を回して息逃し孔3の大きさを調節する(調整方法については
図5に示す)ことで設定する。
これにより、オカリナ本体に届く息の量を減少させると同時に、息を吹き込んだ際に生じる抵抗感を軽減させる。
【0076】
このように息逃し孔3から息の一部9が排出され、排出されなかった息はマウスピース内ウィンドウェイ幅制限部6(ウィンドウェイ幅制御部の一部)に到達する。
ここで幅がさらに狭くなるため、息は停留し速度が落ちる(10)。
マウスピース内ウィンドウェイ幅制御部5(すなわち、マウスピースgおよびアダプターhのそれぞれ一部が接触している部分)を調整する(調整方法については、
図6に示す)ことで、息の量をさらに制限する。
このようにして、息逃し孔3とマウスピース内ウィンドウェイ幅制限部6によって息の量を二段階で調節することで、当初マウスピース吹口1から吹き込んだ息8は、マウスピースウィンドウェイ幅制限部6を経て大幅に制限され、オカリナ本体に到達する。
11は、その息量が大幅に減少していることを示している。
【0077】
したがって、普段通りに息をいれたとしても、息の量は極めて抑えられ、繊細な息のコントロールを用いずとも、普段の吹奏感のまま、わずかな量の息だけをオカリナ本体に届けることができる。
【0078】
息逃し孔3の大きさを調整する状態を
図5に示す。
(a)において示すように息量調整リング4を、(b)において示すように矢印方向に回して息逃し孔3の大きさを小さくする(3a)ことで、息逃し孔3から外に排出される息の量は少なくなり、さらに息量調整リング4を同じ方向に回していくことで、息逃し孔3は、完全に閉じる(3b)ことができる。
これにより逃がす息の量を自在に調整することが可能になる。
【0079】
ウィンドウェイ幅の調整方法とその原理を
図6に示す。
マウスピース側gとアダプター側h(合わせてa)のそれぞれのウィンドウェイ幅制限部6には、同じ大きさ、形状の調整孔12と調整孔13が開いており、マウスピースgとアダプターhを組み合わせると、調整孔12と調整孔13の面が密着する。
重なり合った調整孔12、および、調整孔13は、円の中心からずれた場所に位置する。
【0080】
マウスピース側gにあるマウスピース内ウィンドウェイ幅制限部6を拡大し、正面から見た
図6(b)は、調整孔が全開放の状態を示している。
言い換えれば、調整孔12と調整孔13の形状と位置は、ぴったりと重なりあっていることを意味する。
【0081】
マウスピース側gのウィンドウェイ幅制御部5aとアダプター側hにあるウィンドウェイ幅制御部5bが接触し重りあった状態を横から見た
図6(c)は、マウスピース側gのマウスピース内ウィンドウェイ幅制御部5aを矢印14の方向へ回すことを示している。
これによって、ぴったりと重なりあっていた調整孔12と調整孔13は、位置をずらした後でも重なったままの部分だけが開放の状態になる。
これにより、ウィンドウェイ幅制限部6の幅を自在に調整することが可能になる。
【0082】
マウスピースgとアダプターhが接合する部分には、グロスなどを塗り、回転をスムーズにすることも可能になる。
【0083】
オカリナのサイズに対応するためのミニアダプターを
図7に示す。
オカリナの多様性を考慮し、小さいサイズのオカリナ(ソプラノ)でも密閉装着ができるように、マウスピースとオカリナ本体接触部7の内側に、同様のシリコンゴム製のミニアダプターを装着することで、小さいオカリナから大きいオカリナまで、すべて装着できるようにした。
【0084】
このように、本発明は、同性質を備えた他の材料や大きさの考慮により多くの変形が可能であり、こうした変更、および、変形は、すべて本発明の概念の範囲に包含されるものとし、上記説明の実施例1に限定されない。
【0085】
オカリナは、前述のとおり「壺状」という特徴ゆえ、元々「音程や音質を保ったまま」極小の音量で発音できる特性が備わっており、その特性を活かした演奏は、本特許出願人本人が考案した「みると式ミュート奏法」として確立されている。
しかしながら、この奏法で演奏するためには、極めて繊細な息づかい(息の量や強弱の調整)を要するため、プロ奏者であってもそれができる者は極めて少人数であり、事実上、オカリナには弱音機能はないに等しいものとされている。
それどころか、極度に難易度が高いため、現在のオカリナの業界内(ほとんどのプロ奏者や業界関係者、愛好家の間)でも、この機能があること自体知られておらず、オカリナでの弱音の実現は不可能とされてきた。
【0086】
しかしながら、今回、本発明によって、オカリナの様な特殊な吹奏楽器においても、誰でも簡単にその弱音機能を活かすことができることが判明した。すなわち、本発明のマウスピースを使用することで、極めて繊細な息づかいを用いずとも楽器に入る息の量を柔軟に調整することができ、すなわちマウスピース未装着の場合とほぼ同じ吹奏感で、音程と音質に影響を与えることなく、極めて小さな音量(簡易測定で25デシベル程度低下、つまり元の音量の1/10以上低下)で発音し、オカリナを演奏することが可能になることが判明した。
【0087】
また、種々の効果も判明し、一つ目の補足的効果について説明すれば、仮に音程が不適切に下がる問題、楽器への損傷、および、奏者への経済的な負担などをやむを得ないものとして、従来のエアリード用弱音器を適用した場合でも、本発明によるマウスピース、および、二段階式アダプターを併用し、マウスピースの調整部の設定を工夫することで、普段とほぼ同じ吹奏感での演奏が可能になる。
【0088】
二つ目の補足的効果を以下に述べる。オカリナはメーカーや個体によってかなり品質にバラツキがあり、強い息を要するものから、繊細な弱い息を要するものまで多種多様である。
仮に奏者自身が「10」の強さで息を入れることが自身の身体能力的に最適であるとしても、楽器によっては、物理的な構造上の理由(吹口や歌口が狭い、オカリナ自体が小さいなど)で、適正に発音するためには「7」しか息を入れてはならないものがある。
この数値は、息を入れる度合いを説明するため、便宜上付した。
【0089】
この場合、通常は、楽器に合わせて奏者自身が「7」になるように息を弱めて演奏するべきだが、その際に息を吐ききれず肺に残る二酸化炭素の影響で、奏者が酸欠状態に陥る場合がある。
また、うまく調整ができず楽器に対して息を入れ過ぎてしまい、視聴していてオカリナの音が耳の負担になる、不快感を伴うほどの大音量になるなど、適正な音色と音程で演奏ができない場合もある。
【0090】
かかる問題に直面しても、本発明によるマウスピースを装着することで、普段通りの吹奏感でオカリナに最適な息の量を届けることができる。
【0091】
最後に、オカリナ業界全体に対して期待できる効果を述べる。
本発明のこれらの効果により、夜間や近隣の環境を気にすることなく練習が可能になり、実質的にオカリナの練習時間が増える。
これは、演奏のレベルアップにつながり、また、一般愛好家にとっても、練習した成果を披露したいというモティベーションの向上に寄与するものと思われ、全国各地で展開され増加の傾向にあるオカリナフェスティバルやオカリナ関連イベント等に参加を希望する人が増える。
【0092】
次に、日本に定着しているオカリナの「癒し」というイメージ、ならびに多額の資金をかけずとも気軽に始められることから、日本におけるオカリナ愛好家のおよそ8割は高年齢者であり、女性(主に主婦層)である。
そのため、オカリナメーカー、オカリナ関連イベントの企画者、楽器小売店、オカリナ教室運営者、オカリナ関連の書籍・教則本・商品の販売者は、日本のオカリナ市場を成熟市場とみなし、むしろ現在の状況について将来的な市場の飽和や枯渇を危惧する声も多い。
【0093】
一方、韓国や台湾など、日本以外にオカリナが普及している国々では、幼少の頃からオカリナに触れる機会があり、教育機関でも正規楽器として取り入れられている。
ゆえに、将来においても継続的にオカリナの安定した需要が見込める活気的な市場とみなされている。
【0094】
実施例2
次に、他の態様における本発明の息圧調整弱音装置を試みた。
図8は、アダプター部と一体成型された息圧調整弱音装置である本発明の一実施態様を示す図である。
図8(a)は、吹口方向から見た図である。
図8(b)は、
図8(a)におけるB−B方向の断面図を示す。
図8(c)は、本発明の一実施態様の斜視図を示す。
図8(d)は、
図8(a)におけるA−A方向の断面図を示す。
図8(e)は、本発明の一実施態様の息圧調整弱音装置を上から見た図を示す。
図8(f)は、ウィンドウェイ幅制御部材の一例を示す図である。
図8において、20は吹口、21は息逃し孔、22はウィンドウェイ、23はアダプター部、24はウィンドウェイ幅制御部材、25はウィンドウェイ幅制御部材の挿入の例、26は吹口部、27はウィンドウェイ幅制御部材の内径、をそれぞれ示す。
【0095】
吹口20から入った息はウィンドウェイ22を通り、息逃し孔21を通過する。このとき、
図8(f)におけるような、中空管からなる部材24を作成して、矢印25の方向から挿入する。例えば、当該中空管からなる部材24の長さを変えたものを複数用意する。すると、長い部材24は、息逃し孔21の開口部分を大きくふさぐことが出来、息逃し孔21から排出される息量を少なくすることができる。逆に、短い部材24を用意すれば、息逃し孔21から排出される息量を多くすることができる。これによって、息逃し孔21からの息の息量を調整することができる。この場合の、息量調整部は、当該中空管からなる部材24によって構成することができるが、限定されない。
また、息量調整部等については、長さを変えず、差し込み具合で調整してもよい、同一径のサイズ違いのものを複数用意してもよい。
【0096】
すなわち、当該中空管からなる部材24の外側部分と息逃し孔21の内側(ウィンドウェイ側)部分の孔が接して、息量を調整することができる。
【0097】
息逃し孔21の開口部分と異なる場所においては、中空管は、ウィンドウェイ幅制御部材として活躍する。
図8(f)では、円筒形状であるが、中空管は、吹口20の孔に合わせて作製することができ、吹口部分で、息量を調整したい場合に好都合である。この場合、
図8(c)におけるように、吹口部26を取替可能とすれば、中空管の内径27を小さいものから大きいものまで種々の吹口部を用意することができる。息量を多くしたい場合、中空管の内径27が大きいものを、逆に少なくしたい場合には、内径27が小さいものを挿入すれば、所望の弱音効果を達成することができる。
【0098】
中空管を所望の長さに設定すれば、1つの中空管で、息量調整部と、ウィンドウェイ幅制御部の役割を演じることができる。すなわち、中空管の外側で息逃し孔21の開閉状態を調整するとともに、中空管の内径を所望の大きさに調整することでウィンドウェイ幅を制御することができる。このような態様も本発明に含まれる。
【0099】
なお、この例において、アダプターは、息圧調整弱音装置に一体成型されている態様である。この例において、アダプター部の内側に補助アダプターを設置すれば、より小さな吹奏楽器に適用でき、アダプター部の外側に補助アダプターを設置すれば、より大きな吹奏楽器に適用することができる。
【0100】
図示しないが、ウィンドウェイ幅制御部材24にタグ(でっぱり部)をつけておけば、当該タグをピンセットで挟むことが出来、容易に取替可能となる。
【0101】
また、ウィンドウェイは、吹口20からアダプター部23まであるので、この間に、1又は複数のウィンドウェイ幅制御部を設けてもよい。例えば、吹口20、及び息逃し孔21の近辺などに設置してもよい。ウィンドウェイの一部又は全部に、1つ又はそれ以上のウィンドウェイ幅制御部を設置することもできる。
【0102】
また、息量調節部の例として、中空管からなる部材を用いたが、これに限定されない。中空管からなる部材の長さを調整して、息逃し孔の大きさを調節することで、マウスピースの吹口から息逃し孔に差し掛かった息の一部を、息逃し孔からマウスピース外部へと排出させ、息を吹き込んだ際に生じる抵抗感を軽減させることが判明した。
【0103】
この段階で排出されなかった息を、マウスピース内ウィンドウェイ幅制御部において流れる息量を調節する。ウィンドウェイ幅制御部の例として、中空管からなる部材を用いた。中空管からなる部材の中空部分の孔の大きさを調節することで、ウィンドウェイ幅に流れる息の量を制御して、所望の弱音を達成することができるも判明した。この2段階での息量の制御により、さらに息量を減らし、マウスピース内ウィンドウェイ幅制御部を経て吹奏楽器本体に届く息の量を大幅に減少させることができた。
これによって、普段の吹奏感のまま、弱音効果を得ることができることが判明した。
【0104】
実施例3
次に、吹奏楽器として、リコーダーを用いて、本発明の息圧調整弱音装置を試みた。最も条件が厳しいオカリナにおいて、弱音効果を発揮することが出来たので、他の吹奏楽器についても、効果を試してみた。
【0105】
その結果、アダプター部分を調整すれば、リコーダーにおいても問題なく装着が可能であり、通常通りの吹奏感、息圧のままで、楽器に到達する息量を減少させることができた。結果、音程は多少下がるものの、弱音効果を発揮することが判明した。
【0106】
本発明に基づいた息圧調整弱音装置は、多種多様な吹奏楽器の形状から生まれる特性や構造による特徴に関係なく容易に脱着が可能な柔軟性を備えているため、本発明に基づいた息圧調整弱音装置を使用するためにあらためて別の楽器を購入する等、奏者側の経済的な負担を強いることなく、すでに所有している楽器を利用して、本発明を適用することが可能である。
【0107】
楽器に直接触れる部分には、シリコンゴム等の軟質素材を使用するため、楽器にかかる物理的な負担が少ない。
こうした素材を使用することで、生産・加工も容易かつ安価であり、色のバリエーションやデザイン性を持たせることも可能である。
唾液の除去、清掃等のメンテナンスも容易である。
【0108】
なお、このマウスピースの機能の本質は、「奏者の息圧を調整すること」であるため、弱音効果以外にも様々な補足的な効果が期待できる。