【実施例】
【0027】
図1および
図2において、10はこの発明の実施例1に係る植物育成用バークマット(以下、バークマット)で、このバークマット10は、繊維状のバーク11を板状に加熱圧縮したもので、その表層部12に固形肥料13が埋設されている。
【0028】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
バークマット10とは、バーク11を接着する結合剤(接着剤)を添加せず、主原料であるバーク11を型枠14に投入して加熱圧縮した植物育成用のマット(板状体)である。バークマット10のサイズは、縦30cm、横30cm、厚さ8〜10cmである。
原料となる繊維状(チップ状)バーク11は1〜5cmの長さの杉およびまたは檜の樹皮片である。このサイズのバーク11を使用することで、バークマット内での水捌けが良好となり、浸水時のバークマット10の膨張率も約50%と大きくなる。
表層部12の厚さは、バークマット10の3分の1の厚さである。
固形肥料13は粒状であって、固形肥料13の表面から100日間にわたり少しずつ溶解するロングタイプのエコロングトータル313(商品名)である。そのため、栽培期間が100日程度のトマトに適している。
表層部12に入れる固形肥料13は、10.8gである。
【0029】
次に、
図2および
図3を参照して、バークマットの製造方法を説明する。
まず、2667gの例えば杉バーク11を、矩形状の型枠(内部空間のサイズが縦30cm、横30cm、高さ30cm)14の内部空間に、20cmの均一厚さで充填する。
ベース原材15の上部表面が均一になるように、1回目の予備圧縮を行う。(2回目の予備圧縮も同じ。
図2(a))。得られたベース原材15の圧縮密度は0.15g/cm
3、厚さは8〜10cmである。
一方、1333gの繊維状バーク11と10.8gの固形肥料13とを所定の容器に投入して均一に撹拌混合し、肥料混合物16を得る。その後、肥料混合物16を型枠14内のベース原材15の上に投入し、次いで肥料混合物16の表面に、育苗ポットP(
図4)と同一サイズのブロックBを埋め込み、2回目の予備圧縮を行う(
図2(b))。こうしてベース原材15の表面に肥料混合層17が形成される。得られた肥料混合層17の圧縮密度は0.15g/cm
3、厚さは10cmである。その後、これを脱型することにより、ベース原材15の表面に肥料混合層17が積層された板状のマット原材18が中間製造される。
【0030】
次いで、
図3に示すように、マット原材18を熱プレス装置19の下側加熱圧縮板20の上面に載置し、下側加熱圧縮板20と上側加熱圧縮板21との間でマット原材18を加熱圧縮する。このとき、マット原材18の下面と上面とには、ステンレスからなるメッシュシート22が配置される。メッシュシート22をマット原材18の上下の圧縮作用面に介在させることで、マット内で高温圧縮された内部空気がメッシュシート22の網目を通して抜け易くなる。このようにマット原材18を予備圧縮することで、加熱圧縮時のマット原材18の型崩れを抑制することができる。
【0031】
その後、これらのメッシュシート22を上下一対のアルミニウム板23により挟持した状態で、下側加熱圧縮板20と上側加熱圧縮板21とによりマット原材18の加熱圧縮が行われる。加熱圧縮は、2分間の経過後に1回の中断(中断時間は3分間)を行い、2回に分けて行われる。1回目の加熱圧縮の条件は、加熱温度170〜180℃、圧力15kgf/cm
2、加圧時間2分間である。2回目の加熱圧縮の条件は、加熱温度170〜180℃、圧力20kgf/cm
2加圧時間は20分間である。
加熱圧縮後、バークマット10の表面からブロックBを抜き取り、バークマット10の表面に育苗ポットPの収納用のポケット(植え穴)24を現出させることで(
図1)、バークマット10が製造される。
【0032】
製造されたバークマット10は、トマト(植物)を育成する培地として利用される。
具体的には、図示しないプランタの底部に防根シートを敷設し、その上にバークマット10を水平に配置する。その後、バークマット10に給水する。これにより、厚さ8cmのバークマット10が厚さ16cmまで膨張する(膨張率50%)。次いで、バークマット10の表面のポケット24に、育苗ポットPから抜き出したトマトの根鉢P1を収納し、その上から散水する。
このように、バークマット10をトマト栽培の培地に利用すれば、水を供給したバークマット10のポケット24に根鉢P1を収納するだけで、苗の植え付けが可能となる。しかも、あらかじめバークマット10の表層部12に固形肥料13が埋め込まれているため、苗の植え付け時にトマトの成長を促す肥料の投与が不要となる。
また、上述したようにマット原材18を加熱圧縮する際、1回(長時間)のプレスでその作業を完了するのではなく、この作業途中で圧縮を中断して、加熱圧縮を2回に分けて行うようにしたため、加熱圧縮の中断時、それまで加熱圧縮されていたマット原材18の内部空気が大気解放(ガス抜き)される。その結果、加熱圧縮に伴うマット内部での水蒸気爆発を防止することができる。
【0033】
次に、
図3を参照して、
参考例に係る植物育成用バークマットの製造方法を説明する。
こ
の参考例の発明の特徴は、表層部12に固形肥料13を埋設していない植物育成用バークマット10Aを、2回に分けた加熱圧縮を伴って製造する点である(
図3)。
すなわち、4000gのバーク11を均一な厚さ(30cm)で型枠14に充填し、予備圧縮を行う。得られたマット原材18の圧縮密度は0.15g/cm
3、厚さは30cmである。
【0034】
その後、これを脱型することにより、バーク11のみからなる板状のマット原材18を中間製造することができる。
次いで、マット原材18の下面と上面とにメッシュシート22およびステンレス板23を順次配置し、マット原材18を熱プレス装置19の下側加熱圧縮板20の上面に載置する。その後、下側加熱圧縮板20と上側加熱圧縮板21との間で、マット原材18を2回に分けて加熱圧縮する。これにより、実施例1と同様に厚さが8cm、圧縮密度が0.5〜0.55g/cm
3のバーク11のみを原料としたバークマット10Aを製造することができる。
その他の構成、作用および効果は実施例1から推測可能であるため、説明を省略する。
【0035】
次に、
図4を参照して、
参考例に係る植物育成用バークマットを使用した植物育成方法を説明する。
図4に示すように、
この参考例の特徴は、表層部12に固形肥料13が埋設されていない厚さ2cmの薄肉な植物育成用バークマット10Bを製造し、このバークマット10Bの表面に、根張り開口25を底部に有する育苗ポットPを載置し、この状態を維持したまま、育苗ポットPに散水しながら、苗の根を根張り開口25を通ってバークマット10Bの内部に成長させ、トマトを育成する点である。
【0036】
薄肉なバークマット10Bの製造にあっては、800gのバーク11を矩形状の型枠14に厚さ6cmとなるように充填後、予備圧縮を行う。得られた薄肉なマット原材18は、圧縮密度0.15g/cm
3、厚さ6cmである。その後、これを脱型する。
次いで、このマット原材18を、実施例1の場合と同様に熱プレス装置19に配置し、2回に分けて加熱圧縮する。その結果、厚さ2cm、圧縮密度0.5〜0.55g/cm
3の薄肉なバークマット10Bが製造される。
このように、バークマット10Bを厚さ2cmまで薄肉化することで、バークマット10Bの製造時間を大幅(例えば7分程度)に短縮できる。なお、このバークマット10Bは、表層部12に固形肥料13を埋設したものでもよい。
育苗ポットPの根張り開口25は、育苗ポットPの底部を、ハサミまたはカッタにより水平にカットして形成する。よって、根張り開口25は、育苗ポットPの下面全域の開口である。
【0037】
次に、
図4を参照して、
この参考例に係る植物育成方法を説明する。
まず、図示しないプランタ内の防根シートの上にバークマット10Bを水平に配置し、バークマット10Bに給水する。これにより、厚さ2cmのバークマット10Bが厚さ3cmまで膨張(膨張率50%)し、トマトの培地となる。その後、バークマット10Bの表面に、根張り開口25を底部に有した育苗ポットPを載置する。
次いで、この状態を維持したまま、育苗ポットPに散水しながらトマトを育成する。
その際、育苗ポットPの上に撒いた水は、その一部がポット内に吸水される。また、過剰水は根張り開口25を通過してバークマット10Bのうち、育苗ポットPの直下の領域に染み込み、培地を潤す。
その後、3日間程度成長したトマトの根は、根張り開口25を通ってバークマット10Bの内部まで張り出す。その後も引き続き散水等を行ってトマトを育成する。これにより、育苗ポットPからの引き抜きを伴う苗の移植作業を行わなくても、トマトを定植して育成することができる。
【0038】
また、上述した方法とは異なる育苗ポットPを利用したトマトの育成方法を採用してもよい。具体的には、乾燥状態のバークマット10Bに育苗ポットPを載置し、育苗ポットPの上からトマトの養液を点滴するようにしてもよい。このように構成すれば、点滴を開始した当初は、バークマット10Bのうち、育苗ポットPの直下領域のみが湿って、この直下領域のみに根張り開口25を通過した根が張り始める。その根は、バークマット10Bのうちでも水分が存在する領域だけしか張らないため、養液の滴下量を増減することで、育苗ポットPの直下領域を中心とした同心円状に植物の根が成長する面積を調整することができる。その結果、この水分制限(根にストレスを与えること)を利用することで、トマトの糖度を任意に高めることができる。
その他の構成、作用および効果は、
上記参考例から推測可能な範囲であるため、説明を省略する。