(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る圧縮機を中心とした冷凍サイクルの概略図である。
この冷凍サイクルは、車両用空調装置を構成し、可変容量圧縮機100、凝縮器120膨張装置130および蒸発器140を備える。冷凍サイクルを循環する冷媒は、圧縮機100にて圧縮されて高温・高圧のガス冷媒となり、凝縮器120にて凝縮されて液冷媒となる。そして、膨張装置130にて断熱膨張されて低温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器140を通過する過程で蒸発する。その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。
【0018】
圧縮機100は、その吐出冷媒の流量を制御する制御弁150、吐出冷媒の逆流を防止又は抑制する吐出弁160、および吐出冷媒の流量を検出するための流量センサ170を備える。圧縮機100は、蒸発器140側から吸入室151に導入された冷媒ガスをシリンダ152に導入して圧縮し、吐出室153から凝縮器120側へ高温・高圧の冷媒を吐出する。この吐出冷媒の一部は制御弁150を介してクランク室154内に導入され、圧縮機100の容量制御に供される。制御弁150は、ソレノイド駆動の電磁弁として構成され、図示しない制御部が駆動回路を駆動してこれを通電制御する。吐出弁160は、圧縮機100の吐出室153と冷媒出口158との間に設けられ、一方向への冷媒の流れを許容する。流量センサ170は、吐出室153と冷媒出口158との間の冷媒通路に設けられた絞り通路180(差圧生成手段である「絞り部」として機能する)の前後差圧を感知して吐出冷媒の流量を検出する。
【0019】
圧縮機100は、そのハウジングとして、複数のシリンダ152が形成されたシリンダブロック101と、その前端側に接合されたフロントハウジング102と、後端側にバルブプレート103を介して接合されたリアハウジング104とを備えている。本実施形態において、シリンダブロック101とフロントハウジング102とにより「本体ハウジング」が構成され、これらに囲まれた内部空間にクランク室154およびシリンダ152が区画形成されている。リアハウジング104は、「ヘッダハウジング」として機能し、その内部に吸入室151、吐出室153および収容室155(「取付孔」および「収容孔」として機能する)が区画形成されている。リアハウジング104には、また、蒸発器140側から吸入室151に冷媒を導入する冷媒入口156、および吐出室153から凝縮器120側へ吐出冷媒を導出する冷媒出口158、吸入室151と収容室155とを連通させる連通路182、クランク室154と収容室155とを連通させる連通路184、吐出室153と収容室155とを連通させる連通路186、絞り通路180の下流側通路と収容室155とを連通させる連通路188が設けられている。
【0020】
クランク室154には、その中心を貫通するように回転軸106が配置されている。この回転軸106は、シリンダブロック101に設けられた軸受107と、フロントハウジング102に設けられた軸受108とによって回転自在に支持されている。回転軸106にはラグプレート109が固定されており、そのラグプレート109に突設された支持アーム110等を介して揺動板111(「揺動体」に該当する)が支持されている。揺動板111は、回転軸106の軸線に対して傾動可能となっており、複数のシリンダ152に摺動自在に配置されたピストン112にシュー114を介して連結されている。回転軸106は、その前端部分がフロントハウジング102を貫通して外部に延出しており、その先端部分にはブラケット117が螺着されている。また、回転軸106とフロントハウジング102との前端部分の隙間を外側からシールするように、軸シール部材としてのリップシール115が設けられている。リップシール115は、回転軸106の周面に摺接しつつ、その周面に沿った冷媒ガスの漏洩を防止している。
【0021】
フロントハウジング102の前端部分には、エンジンからの駆動力を伝達するプーリ118が軸受119を介して回転自在に支持されている。このプーリ118は、エンジンの駆動力をブラケット117を介して回転軸106に伝達する。
【0022】
リアハウジング104の吸入室151は、バルブプレート103に設けられた吸入用リリーフ弁121を介してシリンダ152に連通する一方、冷媒入口156を介して蒸発器140にも連通している。吐出室153は、バルブプレート103に設けられた吐出用リリーフ弁122を介してシリンダ152に連通する一方、冷媒出口158を介して凝縮器120にも連通している。なお、クランク室154と吸入室151とを連通する図示しない冷媒通路には、断面積が固定されたオリフィスが配設されており、クランク室154から吸入室151へ予め設定した最低流量の冷媒の流れを許容し、圧縮機100における冷媒の内部循環を確保している。
【0023】
流量センサ170は、2点間の差圧を感知することにより冷媒の流量を検出する差圧式のセンサであり、その差圧を感知して変位する感圧部が設けられるセンサボディ172と、検出信号を出力するための出力端子が設けられるセンサヘッド174とを含む。本実施形態では絞り通路180の前後差圧、つまり吐出室153の吐出圧力Pdと、絞り通路180の下流側圧力Ppとの差圧(Pd−Pp)に基づき、冷媒の吐出流量が検出される。
【0024】
吐出弁160は、リアハウジング104における吐出室153と冷媒出口158との間に配置され、圧縮機100の吐出冷媒の順方向の流れを許容するが、逆方向の流れを遮断する逆止弁として構成されている。本実施形態では、吐出弁160が絞り通路180の下流側に設けられている。吐出弁160は、段付円筒状のボディ162に有底円筒状の弁体164を摺動可能に配置して構成される。ボディ162の上流側端部に弁孔166が設けられ、その弁孔166が吐出室153と冷媒出口158とをつなぐ通路(「吐出通路」ともいう)の一部を構成する。ボディ162の下流側端部と弁体164との間には、弁体164を閉弁方向に付勢するスプリング168が介装されている。弁体164が弁孔166に接離することにより吐出通路を開閉する。このような吐出弁160の配置構成により、吐出弁160の上流側圧力は絞り通路180の下流側圧力Ppと等しくなる。冷媒の流動抵抗による圧力損失を考慮すると、吐出弁160の下流側圧力(圧縮機100の出口圧力PdL)は、圧力Ppよりも若干低くなる。すなわち、吐出圧力Pd(PdH)>圧力Pp>出口圧力PdLの関係となるが、これらの圧力差は圧縮機100の性能に実質的に影響のないレベルとされている。
【0025】
圧縮機100の揺動板111は、その角度がクランク室154内でその揺動板111を付勢するスプリング125、126の荷重や、揺動板111につながるピストン112の両面にかかる圧力による荷重等がバランスした位置に保持される。この圧縮機100の揺動板111の角度は、クランク室154内に吐出冷媒の一部を導入してクランク圧力Pcを変化させ、ピストン112の両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。この揺動板111の角度の変化によってピストン112のストロークを変えることにより、冷媒の吐出容量を調整するようにしている。このクランク室154内の圧力は、制御弁150により制御される。
【0026】
図2は、リアハウジングに対する流量センサおよび制御弁の取付構造を示す図である。 流量センサ170は、センサボディ172とセンサヘッド174とが別体とされ、リアハウジング104に組み付けられた際に両者が協働可能となるように構成されている。すなわち、センサボディ172が収容室155の内部に収容され、センサヘッド174は収容室155の外部に取り付けられる。センサボディ172とセンサヘッド174はリアハウジング104の壁を隔てて対向配置されている。
【0027】
センサヘッド174は、ワッシャ189を介してリアハウジング104に固定されている。センサヘッド174は、磁気センサ175が設けられた基板177と、磁気センサ175による検出信号を出力する出力端子179を備える。センサヘッド174は、磁気センサ175がセンサボディ172の軸線上に位置するように位置決めされている。
【0028】
具体的には図示のように、収容室155の内径がその開口端(下端開口部)から奥方(上端部)に向かって段階的に縮径されており、その収容室155の奥方にセンサボディ172が挿入され、続いて制御弁150が挿入されている。センサボディ172は、有底円筒状の本体190を有し、その内方に感圧部材192を摺動可能に配置して構成されている。本体190は、その軸線方向中間部に半径方向外向きに延出するフランジ部194を有する。そのフランジ部194が収容室155の奥方に圧入されることにより、センサボディ172が収容室155に対して固定されている。
【0029】
フランジ部194は、本体190の上端開口部が収容室155の上底面に当接するまで圧入される。それにより、収容室155内におけるセンサボディ172の位置決めがなされる。収容室155におけるフランジ部194の上方の圧力室196は連通路186に連通しており、吐出圧力Pdが導入される。フランジ部194の下方の圧力室198は連通路188が連通しており、圧力Ppが導入される。本体190の上部側壁には内外を連通する連通孔200が設けられている。本体190の下部側壁にも内外を連通する連通孔202が設けられている。
【0030】
感圧部材192は、下方に向けて開口する有底円筒状をなし、本体190により軸線方向に摺動可能に支持されている。感圧部材192の底部上面には円ボス状の支持部193が突設され、その内方に磁石195(本実施形態では永久磁石)が固定されている。磁気センサ175は、磁石195の軸線上に位置する。本体190の上端部と感圧部材192との間には、感圧部材192を下方に付勢するスプリング208が介装されている。一方、本体190の底部と感圧部材192との間には、感圧部材192を上方に付勢するスプリング210が介装されている。なお、スプリング208のばね定数は、スプリング210のばね定数よりも小さい。
【0031】
収容室155の上底部と感圧部材192との間には第1圧力室204が形成され、本体190の底部と感圧部材192との間には第2圧力室206が形成される。第1圧力室204は、連通孔200を介して圧力室196に連通するため、吐出圧力Pdが導入される。第2圧力室206は、連通孔202を介して圧力室198に連通するため、圧力Ppが導入される。このような構成により、感圧部材192は、差圧(Pd−Pp)を感知して変位するようになる。
【0032】
磁気センサ175は、感圧部材192の変位に伴う磁石195の変位に応じた検出信号を出力する。感圧部材192は、差圧(Pd−Pp)が作用しないときの作動基準位置がスプリング208,210によるばね荷重により設定される。そして、差圧(Pd−Pp)が大きくなると磁気センサ175から離間する方向に変位し、差圧が小さくなると、磁気センサ175に近づく方向に変位する。その結果、磁石195がその基準位置に対応する初期位置から変位する。磁気センサ175は、その変位に応じた検出信号を出力する。図示しない制御部(判定部)は、磁気センサ175の検出値をサンプリングし、それを積算することにより冷媒の流量を算出することができる。
【0033】
制御弁150は、センサボディ172が挿入された後、収容室155にその上端側から挿通され、ワッシャ212を介して固定されている。制御弁150の外周面には複数のOリングが嵌着されており、これらのOリングにより各冷媒通路間およびリアハウジング104の内外のシール性が確保されている。すなわち、Oリング214により連通路188と連通路182との間のシール性が確保され、Oリング216により連通路182と連通路184との間のシール性が確保され、Oリング218により連通路184と連通路186との間のシール性が確保されている。Oリング220,222によりリアハウジング104の内外のシール性が確保されている。
【0034】
図3は、制御弁の構成を示す断面図である。制御弁150は、圧縮機の吸入圧力Ps(「被感知圧力」に該当する)を設定圧力に保つように、吐出室153からクランク室154に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。制御弁150は、弁本体2とソレノイド3とを一体に組み付けて構成される。弁本体2は、圧縮機の運転時に吐出冷媒の一部をクランク室154へ導入するための冷媒通路を開閉する主弁と、圧縮機の起動時にクランク室154の冷媒を吸入室151へ逃がすいわゆるブリード弁として機能する副弁とを含む。ソレノイド3は、主弁を開閉方向に駆動してその開度を調整し、クランク室154へ導入する冷媒流量を制御する。弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5内に設けられた主弁および副弁、主弁の開度を調整するためにソレノイド力に対抗する力を発生するパワーエレメント6等を備えている。パワーエレメント6は、制御弁150の「感圧部」として機能する。
【0035】
ボディ5には、その上端側からポート12,14,16が設けられている。ポート12は「吸入室連通ポート」として機能し、連通路182を介して吸入室151に連通する。ポート14は「クランク室連通ポート」として機能し、連通路184を介してクランク室154に連通する。ポート16は「吐出室連通ポート」として機能し、連通路186を介して吐出室153に連通する。ボディ5の上端開口部を閉じるように端部部材13が固定されている。ボディ5の下端部はソレノイド3の上端部に連結されている。
【0036】
ボディ5内には、ポート16とポート14とを連通させる主通路と、ポート14とポート12とを連通させる副通路とが形成されている。主通路には主弁が設けられ、副通路には副弁が設けられる。すなわち、制御弁150は、一端側からパワーエレメント6、副弁、主弁、ソレノイド3が順に配置される構成を有する。主通路には主弁孔20と主弁座22が設けられる。副通路には副弁孔32と副弁座34が設けられる。
【0037】
ポート12は、ボディ5の上部に区画された圧力室23と吸入室151とを連通させる。パワーエレメント6は、圧力室23に配置されている。ポート16は、吐出室153から吐出圧力Pdの冷媒を導入する。ポート14は、圧縮機の定常動作時に主弁を経由したクランク圧力Pcの冷媒をクランク室154へ向けて導出する一方、圧縮機の起動時にはクランク室154から排出されたクランク圧力Pcの冷媒を導入する。このとき導入された冷媒は、副弁に導かれる。ポート12は、圧縮機の定常動作時に吸入圧力Psの冷媒を導入する一方、圧縮機の起動時には副弁を経由した吸入圧力Psの冷媒を吸入室151へ向けて導出する。ポート14,16には、環状のストレーナ15,17がそれぞれ取り付けられている。ストレーナ15,17は、ボディ5の内部への異物の侵入を抑制するためのフィルタを含む。
【0038】
ポート14とポート16との間に主弁孔20が設けられ、その下端開口部に主弁座22が形成されている。ポート14と圧力室23との間にはガイド孔25が設けられている。ボディ5の下部(ポート16の主弁孔20とは反対側)にはガイド孔26が設けられている。ガイド孔26には、円筒状の主弁体30が摺動可能に挿通されている。主弁体30の上部には外径がやや小さい副弁体36が連設されている。副弁体36は、主弁孔20を貫通している。主弁体30がポート16側から主弁座22に着脱することにより主弁を開閉し、吐出室153からクランク室154へ流れる冷媒流量を調整する。
【0039】
一方、ガイド孔25には、段付円筒状の弁座形成部材33が摺動可能に挿通されている。弁座形成部材33の内部には副弁孔32が設けられ、その副弁孔32の下端開口部に副弁座34が形成されている。弁座形成部材33が軸線方向に変位可能であるため、副弁座34は可動弁座として機能する。副弁体36と弁座形成部材33とは、軸線方向に対向配置されている。副弁体36が副弁座34に着脱することにより副弁を開閉する。
【0040】
また、ボディ5の軸線に沿って長尺状の作動ロッド38が設けられている。作動ロッド38の上端部は、弁座形成部材33を介してパワーエレメント6と作動連結可能に接続される。作動ロッド38の下端部は、ソレノイド3の後述するプランジャ50に作動連結可能に接続されている。作動ロッド38の上半部は主弁体30および副弁体36を貫通し、その上端部にて弁座形成部材33を下方から支持する。主弁体30とソレノイド3との間には、主弁体30を主弁の閉弁方向に付勢するスプリング42(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、パワーエレメント6と弁座形成部材33との間には、弁座形成部材33を副弁の閉弁方向に付勢するとともに、主弁体30を主弁の開弁方向に付勢可能なスプリング44(「付勢部材」として機能する)が介装されている。本実施形態では、スプリング44の荷重がスプリング42の荷重よりも大きくなるように設定されている。
【0041】
パワーエレメント6は、吸入圧力Psを感知して変位するベローズ45を含み、そのベローズ45の変位によりソレノイド力に対抗する力を発生させる。この対抗力は、弁座形成部材33および副弁体36を介して主弁体30にも伝達される。副弁体36が副弁座34に着座して副弁を閉じることにより、クランク室154から吸入室151への冷媒のリリーフが遮断される。また、副弁体36が副弁座34から離間して副弁を開くことにより、クランク室154から吸入室151への冷媒のリリーフを許容する。
【0042】
一方、ソレノイド3は、段付円筒状のコア46と、コア46の下端開口部を封止するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ48と、スリーブ48に収容されてコア46と軸線方向に対向配置された円筒状のプランジャ50と、コア46およびスリーブ48に外挿された円筒状のボビン52と、ボビン52に巻回され、通電により磁気回路を生成する電磁コイル54と、電磁コイル54を外方から覆うように設けられ、ヨークとしても機能する円筒状のケース56と、ケース56の下端開口部を封止するように設けられた端部部材58とを備える。なお、本実施形態においては、ボディ5、コア46、ケース56および端部部材58が制御弁150全体のボディを形成している。
【0043】
弁本体2とソレノイド3とは、ボディ5の下端部がコア46の上端開口部に圧入されることにより固定されている。コア46と主弁体30との間に圧力室24が形成されている。一方、コア46の中央を軸線方向に貫通するように、作動ロッド38が挿通されている。圧力室24に導入される吸入圧力Psは、作動ロッド38とコア46との間隙により形成される連通路62を通ってスリーブ48の内部にも導かれる。作動ロッド38の下端部がプランジャ50の上半部に圧入され、作動ロッド38とプランジャ50とが同軸状に接続されている。スプリング44は、コア46とプランジャ50とを両者を互いに離間させる方向に付勢するオフばねとしても機能する。なお、変形例においては、作動ロッド38の下端部をプランジャ50に圧入固定することなく、当接させるだけでもよい。同様に、作動ロッド38の上端部を弁座形成部材33に圧入固定することなく、当接させるだけでもよい。弁座形成部材33とパワーエレメント6との間にスプリング44(オフばね)を設けているため、弁座形成部材33と作動ロッド38との圧入固定、および作動ロッド38とプランジャ50との圧入固定の一方又は双方を省略しても問題ないからである。むしろ、このような圧入固定をなくすことにより、弁座形成部材33、作動ロッド38およびプランジャ50の各部品加工性およびそれらの組立性を向上させることができる。
【0044】
作動ロッド38は、プランジャ50により下方から支持され、主弁体30、副弁体36およびパワーエレメント6と作動連結可能に構成されている。作動ロッド38は、コア46とプランジャ50との吸引力であるソレノイド力を、主弁体30および副弁体36に適宜伝達する。一方、作動ロッド38には、パワーエレメント6の伸縮作動による駆動力(「感圧駆動力」ともいう)がソレノイド力と対抗するように負荷される。すなわち、主弁の制御状態においては、ソレノイド力と感圧駆動力とにより調整された力が主弁体30に作用し、主弁の開度を適切に制御する。主弁の閉時には、ソレノイド力の大きさに応じて作動ロッド38がスプリング44の付勢力に抗してボディ5に対して相対変位し、弁座形成部材33を押し上げて副弁を開弁させる。それによりブリード機能を発揮させる。
【0045】
スリーブ48は非磁性材料からなる。プランジャ50の側面には軸線に平行な複数の連通溝66が設けられ、プランジャ50の下端面には半径方向に延びて内外を連通する複数の連通溝68が設けられている。このような構成により、図示のようにプランジャ50が下死点に位置しても、吸入圧力Psがプランジャ50とスリーブ48との間隙を通って背圧室70に導かれるようになっている。
【0046】
ボビン52からは電磁コイル54につながる一対の接続端子72が延出し、それぞれ端部部材58を貫通して外部に引き出されている。同図には説明の便宜上、その一対の片方のみが表示されている。端部部材58は、ケース56に内包されるソレノイド3内の構造物全体を下方から封止するように取り付けられている。端部部材58は、耐食性を有する樹脂材のモールド成形(射出成形)により形成され、その樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙にも満たされている。このように樹脂材がケース56と電磁コイル54との間隙に樹脂材を満たすことで、電磁コイル54で発生した熱をケース56に伝達しやすくし、その放熱性能を高めている。端部部材58からは接続端子72の先端部が引き出されており、図示しない外部電源に接続される。
【0047】
図4は、
図3の上半部に対応する部分拡大断面図である。
主弁体30のガイド孔26との摺動面には、冷媒の流通を抑制するための複数の環状溝からなるラビリンスシール74が設けられている。主弁体30の軸線方向中間部には隔壁76が設けられている。隔壁76は、その下面にて作動ロッド38と適宜係合連結可能な「被係合部」として機能する。作動ロッド38は、その上部が縮径し、隔壁76の中央に設けられた挿通孔を貫通する。作動ロッド38には、その縮径部の段差により係合部78が構成される。隔壁76の挿通孔の周囲には、冷媒を通過させるための複数の貫通孔80が形成されている。
【0048】
弁座形成部材33には、主弁体30および副弁体36の内部通路35と圧力室23とを連通させるための複数の連通路39が形成されている。弁座形成部材33の側面の複数箇所と下面に連通路39の開口部が設けられている。なお、作動ロッド38は、副弁体36が副弁座34に着座した状態においては、係合部78が隔壁76から少なくとも所定間隔Lをあけて離間するように段差の位置が設定されている。この所定間隔Lは、いわゆる「遊び」として機能する。
【0049】
ソレノイド力を大きくすると、作動ロッド38を主弁体30に対して相対変位させて弁座形成部材33を押し上げることもできる。それにより、副弁体36と副弁座34とを離間させて副弁を開くことができる。また、係合部78と隔壁76とを係合(当接)させた状態でソレノイド力を主弁体30に直接伝達することができ、主弁体30を主弁の閉弁方向に大きな力で押圧することができる。この構成は、主弁体30とガイド孔26との摺動部への異物の噛み込みにより主弁体30がロックした場合に、それを解除するロック解除機構として機能する。
【0050】
パワーエレメント6は、ベース部材84とベローズ45を含んで構成される。ベース部材84は、金属材をプレス成形して有底円筒状に構成されており、その下端開口部に半径方向外向きに延出するフランジ部86を有する。ベローズ45は、蛇腹状の本体の上端部が閉止され、下端開口部がフランジ部86の上面に気密に溶接されている。ベローズ45の内部は密閉された基準圧力室Sとなっており、ベローズ45とフランジ部86との間に、ベローズ45を伸長方向に付勢するスプリング88が介装されている。基準圧力室Sは、本実施形態では真空状態とされている。ベローズ45は、ベース部材84の本体を軸芯として伸縮する。ベローズ45は、フランジ部86とは反対側端部が端部部材13に支持されている。
【0051】
すなわち、パワーエレメント6は、端部部材13と弁座形成部材33との間に弾性的に支持されている。端部部材13のボディ5への圧入量を調整することにより、パワーエレメント6の設定荷重(スプリング88の設定荷重)を調整できるようにされている。なお、ベース部材84の本体は、ベローズ45の内方をその底部近傍まで延在し、その上底部がベローズ45の底部に近接配置される。弁座形成部材33は、その上端面中央に上方に突出する嵌合部37が設けられ、その嵌合部37がベース部材84の本体に嵌合している。ベローズ45は、圧力室23の吸入圧力Psと基準圧力室Sの基準圧力との差圧に応じて軸線方向(主弁および副弁の開閉方向)に伸長または収縮する。ただし、その差圧が大きくなってもベローズ45が所定量収縮すると、ベース部材84の本体が当接して係止されるため、その収縮は規制される。
【0052】
本実施形態においては、ベローズ45の有効受圧径Aと、主弁体30の主弁における有効受圧径B(シール部径)と、主弁体30の摺動部の有効受圧径C(シール部径)と、弁座形成部材33の摺動部の有効受圧径D(シール部径)とが等しく設定されている。このため、主弁体30とパワーエレメント6とが作動連結した状態においては、主弁体30に作用する吐出圧力Pdおよびクランク圧力Pcの影響がキャンセルされる。その結果、主弁の制御状態において、主弁体30は、圧力室23にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、制御弁150は、いわゆるPs感知弁として機能する。
なお、変形例においては、有効受圧径B,C,Dを等しくする一方、有効受圧径Aをこれらと異ならせてもよい。すなわち、本実施形態のように、有効受圧径B,C,Dを等しくするとともに、弁体(主弁体30および副弁体36)の内部通路35を上下に貫通させることで、弁体に作用する圧力(Pd,Pc,Ps)の影響をキャンセルすることができる。すなわち、弁座形成部材33,副弁体36,主弁体30,作動ロッド38およびプランジャ50の結合体の前後(図では上下)の圧力を同じ圧力(吸入圧力Ps)とすることができ、それにより圧力キャンセルが実現される。これにより、ベローズ45の径に依存することなく各弁体の径を設定することができる。例えば、ベローズ45を小さくしても、弁径を大きくしたまま構成できる。つまり、主弁を大きくでき、また副弁を大きくすることができる。その結果、ブリード弁の流量を大きくすることができる。
【0053】
このような構成において、制御弁150の安定した制御状態においては、圧力室23の吸入圧力Psが所定の設定圧力Psetとなるよう主弁が自律的に動作する。この設定圧力Psetは、基本的にはスプリング42,44,88のばね荷重によって予め調整され、蒸発器140内の温度と吸入圧力Psとの関係から、蒸発器140の凍結を防止できる圧力値として設定される。設定圧力Psetは、ソレノイド3への供給電流(設定電流)を変えることにより変化させることができる。本実施形態では、制御弁150の組み付けが概ね完了した状態で端部部材13の圧入量を再調整することで、スプリングの設定荷重を微調整することができ、設定圧力Psetを正確に調整することができる。
【0054】
一方、制御弁150の起動時においては、ソレノイド3への通電により作動ロッド38を上方へ変位させることにより、主弁体30を主弁座22に着座させて主弁を閉じ、さらに弁座形成部材33に副弁の開弁方向の駆動力を与えることができる。それにより、副弁体36と副弁座34とを離間させて副弁を開くことができる。すなわち、制御弁150は、ソレノイド3の駆動力を用いて副弁を強制的に開弁させるための「強制開弁機構」を有する。なお、この構成は、弁座形成部材33とガイド孔25との摺動部への異物の噛み込みにより弁座形成部材33がロックした場合に、それを解除するロック解除機構(連動機構、押圧機構)としても機能する。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態では、圧縮機100において制御弁150が取り付けられるリアハウジング104に流量センサ170のセンサボディ172が収容される。すなわち、圧縮機100のハウジングそのものに対してセンサボディ172を組み付ける構造としたため、流量センサ170の感圧部材192(磁石195)を圧縮機100に取り付けるための別部材を別途設ける必要がなくなる。また、リアハウジング104という単一の部材に対して制御弁150の取付孔とセンサボディ172の収容孔を成形すればよいため、製造プロセスも簡素化される。このため、圧縮機100に対する流量センサ170の取付構造を低コストに実現することができる。
【0056】
また、センサボディ172と制御弁150とが、収容室155に同軸状に収容されることで、リアハウジング104のスペースが効率よく利用される。センサボディ172および制御弁150の双方を収容室155の入口側から挿入するだけでよいため、これらの組み付け作業を簡易に行うことができる。さらに、収容室155をセンサボディ172の収容孔および制御弁150の取付孔として共用する構成としたことにより、収容室155の成形工程においてその収容孔および取付孔を同時又は連続的に加工することができ、加工効率が良く、製造コストの削減につながる。
【0057】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係るリアハウジングに対する流量センサおよび制御弁の取付構造を示す図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。なお、同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0058】
本実施形態では、流量センサ270のセンサボディ272が、制御弁250の先端に一体に設けられている。すなわち、制御弁250のボディ205とセンサボディ272の本体290とが一体成形されている。スプリング210は、制御弁250の端部部材213と感圧部材192との間に介装されている。一方、本体290のフランジ部294とリアハウジング104の内壁面との隙間には、絞り通路280が形成されている。すなわち、本実施形態では、感圧部材192の前後差圧を生成する差圧生成構造を収容室155内に形成している。このため、第1実施形態のような絞り通路180を設ける必要がない。
【0059】
本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるが、さらに、第1実施形態のような絞り通路180の加工が不要となるため、製造コストを削減することが可能となる。また、センサボディ272を制御弁250に一体に設けたため、これらをリアハウジング104の収容室155に取り付ける際の作業性が向上する。
【0060】
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態に係るリアハウジングに対する流量センサおよび制御弁の取付構造を示す図である。以下では第1,第2実施形態との相異点を中心に説明する。同図において第1,第2実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0061】
本実施形態では、第2実施形態と同様に、流量センサ370のセンサボディ372が、制御弁250の先端に一体に設けられている。一方、センサボディ372がリアハウジング104を貫通し、センサヘッド174と当接するように位置決めされる点で第2実施形態とは異なる。
【0062】
すなわち、リアハウジング104において収容室355が上下に貫通するよう、リアハウジング104におけるセンサヘッド174との対向面に挿通孔357が設けられている。これにより、センサボディ372の上端面がその挿通孔357から露出する。センサボディ372の本体390は、制御弁250のボディ205と一体成形はされておらず、別体に成形された後、その下端部がボディ205の上端部に圧入されて一体化されている。本体390の上端部にはOリング380が嵌着され、リアハウジング104の内外のシール性が確保されている。また、本体390のフランジ部394にもOリング382が嵌着され、連通路186と連通路188との間のシール性が確保されている。なお、本実施形態では第1実施形態と同様に、リアハウジング104に絞り通路180が設けられる(
図1参照)。
【0063】
本実施形態の取付構造によれば、センサボディ372を制御弁250に一体に設けたため、第2実施形態と同様に、これらをリアハウジング104の収容室155に取り付ける際の作業性が向上する。さらに、センサボディ372とセンサヘッド174とを当接可能な構成としたため、磁気センサ175と磁石195との位置関係を高精度に調整できる。すなわち、流量センサ370および制御弁250の特性を圧縮機100とは独立に予め調整することが可能となる。
【0064】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係るリアハウジングに対する流量センサおよび制御弁の取付構造を示す図である。以下では第1〜第3実施形態との相異点を中心に説明する。同図において第1〜第3実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0065】
本実施形態では、制御弁250と流量センサ470とがユニット化されている。すなわち、制御弁250の先端にセンサボディ472が一体に設けられ、そのセンサボディ472の先端にセンサヘッド474が一体に設けられている。センサヘッド474の長手方向の向きがセンサボディ472の軸線方向に一致しており、その結果、ユニットの長手方向が長くなるが、幅方向の寸法が小さくなるため、そのユニット全体を収容室355の入口側から挿入することができる。センサボディ472の本体490の先端部が内方に加締められることにより、センサヘッド474がセンサボディ472に固定されている。なお、センサヘッド474における磁気センサ175の磁石195に対する位置関係は、第3実施形態と同様としている。
【0066】
本実施形態の取付構造によれば、制御弁250と流量センサ470とがユニット化されるため、リアハウジング104の収容室155に取り付ける際の作業性が第2実施形態よりもさらに向上する。また、磁気センサ175と磁石195との位置関係をユニット単体で予め調整できるため、その点でも作業性が向上する。
【0067】
[第5実施形態]
図8は、第5実施形態に係る圧縮機に対する流量センサおよび制御弁の取付構造を示す図である。以下では第1実施形態との相異点を中心に説明する。同図において第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0068】
本実施形態の圧縮機500では、センサボディ172にて感知する差圧を、吐出弁160の弁孔166の下流側圧力Pp2と出口圧力PdLとの差圧(Pp2−PdL)としている。すなわち、吐出弁160が収容される圧力室と冷媒出口158との間に絞り通路180を設けている。このように、吐出流量を検出するための2点間の差圧は、吐出室153と冷媒出口158との間に適宜設定することができる。変形例においては、吐出弁160の弁孔166の上流側圧力と下流側圧力との差圧を感知する構成としてもよい。その場合、弁孔166を絞り通路として利用するため、別途絞り通路180を設ける必要がなくなる。なお、本実施形態および変形例は、第1実施形態のみならず、第2〜第4実施形態の制御弁および流量センサの取付構造に対しても適用可能であることは言うまでもない。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0070】
上記実施形態では、収容室155をセンサボディ172の収容孔および制御弁150の取付孔として共用することにより、同時又は連続的に成形可能な構成とした。変形例においては、リアハウジング104に対し、センサボディ172の収容孔と制御弁150の取付孔とを個別に成形してもよい。例えば、
図2に示した構成において、リアハウジング104において、制御弁150の取付孔を下方から穿設し、センサボディ172の収容孔を上方から穿設してもよい。その場合、取付孔と収容孔とを同軸状に形成してもよいし、互いの軸線が平行にずれるように形成してもよい。その場合、取付孔と収容孔との間に隔壁を残し、両者が直接連通しない構成としてもよい。その際、センサボディ172をリアハウジング104から露出させ、
図6に示したようにセンサヘッド174と当接させるようにしてもよい。あるいは、
図2に示したセンサボディ172とセンサヘッド174とを予め一体化した流量センサ170として構成し、リアハウジング104に設けた収容孔に対してセンサボディ172の側から差し込むようにしてもよい。このような構成により、センサボディ172の磁石195とセンサヘッド174の磁気センサ175との位置関係を当初から高精度に設定することができ、流量センサ170の特性の調整が容易となる。
【0071】
上記実施形態では、差圧式の流量センサとして磁気センサを例示したが、例えば感圧部材をダイヤフラム等の可撓性部材にて構成し、その片側面に歪みゲージを貼着した圧力センサを採用してもよい。可撓性部材の前後差圧に応じて変化する歪みゲージの出力から冷媒の流量を算出してもよい。その場合もセンサボディ172にその感圧部材を配設し、上記実施形態と同様に収容室155,355に取り付けるようにする。
【0072】
上記実施形態では、制御弁150,250の大部分を収容室155,355に収容する構成を例示したが、制御弁の弁本体2を収容室に収容し、ソレノイド3の大部分を収容室外に露出させるようにしてもよい。
【0073】
上記実施形態では、制御弁として、被感知圧力として吸入圧力Psを感知して動作するいわゆるPs感知弁を示したが、その他種々の制御弁を適用することもできる。例えば、クランク圧力Pcを感知して動作するいわゆるPc感知弁として構成してもよい。その場合、ポート12をクランク室154に連通させる。あるいは、吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧が設定差圧となるように動作するいわゆるPd−Ps弁として構成してもよい。また、上記実施形態では、可変容量圧縮機の吐出室153からクランク室154に導入する冷媒の流量又は圧力を調整するいわゆる入れ制御の制御弁を示したが、変形例においては、クランク室154から吸入室151へ導出する冷媒の流量又は圧力を調整するいわゆる抜き制御の制御弁として構成してもよい。
【0074】
上記実施形態では、ベローズ45の内部の基準圧力室Sを真空状態としたが、大気を満たしたり、基準となる所定のガスを満たすなどしてもよい。あるいは、吐出圧力Pd、クランク圧力Pc、および吸入圧力Psのいずれかを満たすようにしてもよい。そして、パワーエレメント6が適宜ベローズの内外の圧力差を感知して作動する構成としてもよい。また、上記実施形態では、パワーエレメント6を構成する感圧部材としてベローズ45を採用する例を示したが、ダイヤフラムを採用してもよい。その場合、その感圧部材として必要な動作ストロークを確保するために、複数のダイヤフラムを軸線方向に連結する構成としてもよい。
【0075】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。