(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内周受面は、前記レンズ支持体の外周面から外方に突出するコイル固定部に設けてあり、前記コイル固定部はさらに外方に突出して前記コイルの後側端を受ける後端受面をさらに有する請求項1 に記載のレンズ駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のレンズ駆動装置では、レンズ支持体103の移動は、ヨーク101の内周側壁109の後端とレンズ支持体103のフランジ113との間の間隔Hに限られてしまうという問題があった。
【0007】
ヨーク101の内周側壁109の後端と外周側壁105の後端とは、フランジ113の厚みTとレンズ支持体の移動距離Hとを合わせた寸法を内周側壁109に加えた寸法を必要としている為、レンズ支持体の移動方向(光軸方向)におけるヨーク101の寸法を小さくするにも限界があった。
【0008】
更に、レンズ支持体の移動距離Hの寸法分だけ、ヨークの内周側壁109の光軸方向の寸法を外周側壁105よりも短くしている為、コイル111をその移動領域全体に亘って、マグネット107とヨーク101の内周側壁109で挟むことができず、コイル111に磁界を有効に作用できないおそれがあった。
【0009】
そこで、本発明は、マグネットとヨークとで形成する磁界をコイルに有効に作用でき且つレンズ支持体の移動方向(前後方向)における小型化を図ることができるレンズ駆動装置、カメラ及びカメラ付き携帯電話の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、
外周側壁及びこの外周側壁との間に間隙を空けて連結されている内周側壁を有するヨークであって、前記内周側壁には、周方向に間隔を空けて切除部が配置されているヨークと、
前記ヨークの前記内周側壁の内周側に配置されるレンズ支持体と、
前記レンズ支持体に固定されて前記ヨークの前記内周側壁の外周面に対面するコイルと、
前記ヨークの前記外周側壁の内周面に固定されて前記コイルと対面するマグネットと、
左右に分割されて前記レンズ支持体に固定され、前記コイルに通電するスプリングと、を備え、
前記レンズ支持体は、その外周面から前記切除部を介して前記外周側壁に向けて前記ヨーク内に進入するコイル固定部を有し、
前記コイル固定部は、前記内周側壁の外方で前記コイルの内周面を受ける内周受面を有することを特徴とするレンズ駆動装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記内周受面には、接着剤が配される溝が設けてあることを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置と、光軸上に設けた画像センサとを備えることを特徴とするカメラである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付き携帯電話である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、レンズ支持体の径方向外側に突設したコイル固定部は、ヨークの内周側壁に形成した切除部に位置しているので、レンズ支持体の移動を妨げないこととなる。ここで、コイル固定部は、レンズ支持体の外周に間隔をあけて設けてあり、従来技術のように光軸方向後端で且つ半径方向外方に全周に亘って突設するフランジを設けていないので、ヨークに従来のフランジの厚みや移動スペースを設ける必要がないこととなる。従って、ヨークにおいては、内周側壁の後端と外周側壁の後端との間に、フランジの厚みや移動スペースを加えた寸法が不要であり、その結果として、ヨークの前後方向(レンズ支持体の移動方向)の寸法を従来よりも小さくすることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、内周受面には接着剤が配される溝が設けてあるので、より強固にコイルを接着できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すコイルを固定したレンズ支持体を抜き出して示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示すレンズ支持体のコイル固定部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】コイルを固定したレンズ支持体を後側から見た平面図である。
【
図7】本発明の第2実施の形態に係るレンズ駆動装置を前側から見た分解斜視図である。
【
図8】第2実施の形態に係るレンズ駆動装置を後側から見た分解斜視図である。
【
図9】第2実施の形態に係るヨークの図であり、(a)はマグネットを装着したヨークを後側から見た斜視図であり、(b)は磁界の向きを説明する平面図である。
【
図10】第3実施の形態に係るヨークの図であり、(a)はマグネットを装着したヨークを後側から見た斜視図であり、(b)は磁界の向きを説明する平面図である。
【
図11】比較例に係るヨークの図であり、(a)はマグネットを装着したヨークを後側から見た斜視図であり、(b)は磁界の向きを説明する平面図である。
【
図12】従来のレンズ駆動装置を
図6のA−A位置と同じ位置で切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して本発明の第1実施の形態を説明する。
第1実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。このレンズ駆動装置1は、環状のヨーク3と、レンズ支持体7と、前側スプリング9と、後側スプリング11と、ヨーク3の後側に配置されるベース5(筐体)と、ヨークの前側に配置されるフレーム(筐体)6とを備えており、レンズ支持体7には、外周にコイル15が固定されている。ヨーク3と後側スプリング11との間には絶縁体(スペーサ)17が配置されている。このレンズ駆動装置1は、縦横が約10mm、高さが約3.5mmで非常に小さいものである。
【0018】
ヨーク3は前側から見て外周が平面視四角形であり、内周が平面視円形になっており、外周側壁3aと、内周側壁3bと、外周側壁3aと内周側壁3bとを間隔をあけて連結する連結壁3cとからなり、外周側壁3aと内周側壁3bと連結壁3cとで断面がコ字形状を成している。外周側壁3aと内周側壁3bとはレンズ支持体7の移動方向(前後方向)の寸法が同じ寸法である。内周側壁3bには、後側端から前方に向けて切除部12が形成されている。切除部12は周方向に等間隔をあけて配置してあり、本実施の形態では、平面視四角形状の外周側壁3aにおいて、隣り合う角部14間(辺の部分)に対応する位置に設けてある。
【0019】
ヨーク3の各角部14において、外周側壁3aの内周面にはマグネット13が固定されている。マグネット13は、角部14のみに設けてあり、内周側壁3bに形成された切除部12に対応する位置にはない。
【0020】
レンズ支持体7は略円筒形状であり、その内周部にレンズ(図示せず)が装着されて、ヨーク3の内周側を光軸方向に移動自在に設けられている。レンズ支持体7の外周には環状のコイル15が装着されており、コイル15はレンズ支持体7に一体に設けたコイル固定部19に接着固定されている。
【0021】
コイル15はヨーク3の外周側壁3aと内周側壁3bとの間に配置するが、マグネット13がある角部14ではマグネット13と内周側壁3bとの間に位置し、レンズ支持体7と共にヨーク3内を前後方向に移動するようになっている。
【0022】
コイル固定部19は、
図2に示すように、レンズ支持体7の外周面の周方向に間隔をあけて配置してあり、ヨーク3の内周側壁3bに設けた切除部(空間部)12内に位置している(
図1及び
図5参照)。
【0023】
コイル固定部19は、レンズ支持体7に装着されたコイル15の内周面を受ける内周受面21と、コイル15の後側端を受ける後端受面23とを一体に備えており、内周受面21はレンズ支持体7の外周面に沿って設けてあり、後端受面23はレンズ支持体の半径方向外方に突設して設けて、内周受面21と後端受面23とで断面L字形状を成している。
コイル15は内周受面21と後端受面23との2面で接着固定されている。
【0024】
図3に示すように、コイル固定部19において、後端受面23には、後側に凹んだ接着剤溜部25が設けてあり、内周受面21には接着剤溜部25に連通する前後方向の接着剤移動溝27が設けてある。接着剤移動溝27は1mm以下(本実施の形態では0.2mm)の幅の溝であり、接着剤移動溝27は接着剤溜部25に接着剤が注入されると、毛細管現象により接着剤が移動して内周受面21とコイル15との間に接着剤を供給する。
【0025】
図1に示すように、ベース5はヨーク3の外周に位置する外壁5aと、ヨーク3の後側(レンズの光軸方向の後側)に位置する基底部5bとを有しており、ベース5の基底部5bには後側スプリング11の外周側部11bが載置される。
【0026】
前側スプリング9は環状の板ばねであり、内周側部9aと外周側部9bとが設けてあり、内周側部9aはレンズ支持体7に取付けてあり、外周側部9bはヨーク3とフレーム6との間に挟持して固定されている。内周側部9aと外周側部9bとは弾性変形可能な腕部9cにより連結してある。
【0027】
後側スプリング11は全体として環状の板ばねであるが、本実施の形態では、左右に分割した一方側部30と他方側部32とから構成されている。後側スプリング11の各外周側部11b、11bは、絶縁体(スペーサ)17を介してベース5とヨーク3との間に挟持されており、絶縁体17は後側スプリング11とヨーク3との間の電気的絶縁を図っている。各内周側部11a、11aは、レンズ支持体7の後端に取付けてある。後側スプリング11の各内周側部9aと外周側部9bとは弾性変形可能な腕部11cにより連結してある。
【0028】
本実施の形態では、後側スプリング11を構成する一方側部30には端子33が形成されており、他方側部32には端子35が形成されて各端子33、35が電源供給端子に接続されるようになっている。尚、一方側部30と他方側部32とは、各々コイル15にハンダ付け等により電気的に接続されており、後側スプリング11からコイル15に通電するようになっている。
【0029】
これらの前側スプリング9と後側スプリング11とは、組立て前の自然状態(フレーム6を組付ける前の状態)において平坦であるが(
図1参照)、少なくとも前側スプリング9は、組付け後には
図5に示すように、内周側部9aが外周側部9bよりも前方に位置するように弾性変形した状態で取付けてある。これにより、ばねの復帰力(付勢力)により内周側部9aがレンズ支持体7をベース5側に向けた付勢力で常時付勢するようにしている。
【0030】
フレーム6はレンズ支持体7の前側に配置されており、ヨーク3との間に前側スプリング9の外周側部9bを挟んで保持すると共に、ベース5に嵌合固定してベース5とフレーム6とで筐体を形成している。
【0031】
次に、第1実施の形態に係るレンズ駆動装置1の作用及び効果について説明する。
【0032】
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1によれば、端子33、35からコイル15に通電すると、コイル15に作用する電磁力で、レンズ支持体7は前側スプリング9及び後側スプリング11の付勢力に抗して移動し、スプリング9、11との力の釣り合う位置で停止する。
【0033】
レンズ支持体7の径方向外側に突設したコイル固定部19は、ヨーク3の内周側壁3bに形成した切除部12に位置しているので、レンズ支持体7の移動を妨げない。
【0034】
マグネット13はヨーク3の角部14に配置しているので、角部14では内周側壁3bと外周側壁3aとの間の間隔を広く取ることができ、その分マグネットの厚み(レンズ支持体の半径方向の寸法)を厚くできるから、コンパクトな構成で磁界強度を強めることができる。
【0035】
ヨーク3の角部14では、
図5に示すように、対応する位置にあるコイル部分15aはマグネット13に対面すると共に、コイル部分15aの移動領域全体に亘って、ヨーク3の外周側壁3aと外周側壁3bとに挟まれるので、常時強い磁界内を移動でき、高い駆動トルクを得ることができる。
【0036】
コイル固定部19は、レンズ支持体7の外周に間隔をあけて設けてあり、従来技術のよう光軸方向後端で且つ半径方向外方に全周に亘って突設するフランジを設けていないので、ヨーク3に従来のフランジの厚みTや移動スペースHを設ける必要がない(
図12参照)。従って、ヨーク3においては、内周側壁3bの後端と外周側壁3aの後端との間に、フランジの厚みTや移動スペースHを加えた寸法が不要であるから、ヨークの前後方向(レンズ支持体の移動方向)の寸法を従来よりも小さくできる。
【0037】
コイル15は内周受面21と後端受面23との2面でコイル15を固定するので、コイル15を強固に固定することができる。
【0038】
コイル固定部19には、後端受面23に接着剤溜部25を設けると共に内周受面21には接着剤溜部25に連通する接着剤移動溝27を設けているので、レンズ支持体にコイルを固定する工程では、接着剤溜部25に接着剤を注入して、コイル固定部19にコイル15を装着すると、接着剤溜部25の接着剤が毛細管現象により接着剤移動溝27を移動するので、内周受面21と後端受面23とにコイル15を接着固定することができる。即ち、接着剤は接着剤溜部25のみに注入するだけで、コイルの2面での接着ができ、製造が容易である。尚、製造工程におけるコイル15の固定はレンズ支持体7の後端受面23を下にして、治具上に載置して接着剤溜部25に接着剤を注入した後、コイルを接着剤溜部25に向けて圧しながらヒートタンク内で加熱により固定する。
【0039】
また、コイル15はその内周面を四方に設けた内周面受面21に装着するので、コイル15の芯だし(位置決め)が容易にできる。
【0040】
以下に、本発明の他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では、上述した第1実施の形態と主に異なる点について説明する。
【0041】
図7〜
図9に第2実施の形態を示す。
図7は本発明の第2実施の形態に係るレンズ駆動装置を前側から見た分解斜視図であり、
図8は第2実施の形態に係るレンズ駆動装置を後側から見た分解斜視図であり、
図9(a)はマグネットを装着したヨークを後側から見た斜視図であり、(b)は磁界の向きを説明する平面図である。
【0042】
この第2実施の形態では、レンズ支持体7のコイル固定部21の位置とは関係なく、駆動効率の観点から、ヨーク3の内周側壁3bに切除部(空間)12を設けている。即ち、
図9(a)に示すように、外周の輪郭が平面視矩形のヨーク3において、外周側壁3aは、ヨーク3の輪郭に沿って周方向に亘って形成されている。ヨーク3の内周は平面視円形であり、内周側壁3bは、ヨーク3の内周の一部に設けてあり、平面視において円弧形を成している。内周側壁3bは、マグネット13に対面した位置にのみ設けてあり、隣り合うマグネット13、13間に対応する位置には切除部12が設けてあり、内周側壁3bがない空間になっている。
【0043】
この第2実施の形態によれば、
図9(b)に示すように、ヨーク3において、マグネット13のN極からマグネット13と対面する内周側壁3bへ向かう磁界BAが生じ、この磁界BAがレンズ支持体の駆動に寄与する磁界となる。隣り合うマグネット13、13間に対応する位置には、切除部(空間部)12が設けてあり、内周側壁3bがないので、有効な磁界BAのみを得ることができる。即ち、
図11に比較例を示すが、この比較例では、内周側壁3b及び外周側壁3aが各々周方向に連続した壁になっており、
図11(b)に示すように、内周側壁3bにおいて、隣り合うマグネット13、13間に位置する部分には逆方向の磁界BTが誘起して、コイル15に逆向きの推力が作用してレンズ駆動装置の駆動を阻害することになるが、本実施の形態によれば、このような逆向きの推力の発生を防止できる。従って、この第2実施の形態によれば、レンズ支持体7の駆動効率を高めることができる。
【0044】
尚、第1実施の形態においても、隣り合うマグネット13、13間に対応する位置には内周側壁3bがなく、切除部(空間)12になっているので、第2実施の形態と同様に、有効な磁界BAのみを得ることができる。
【0045】
図10に第3実施の形態を示す。
図10(a)はマグネットを装着したヨーク3を後側から見た斜視図であり、(b)は磁界の向きを説明する平面図である。
【0046】
この第3実施の形態では、ヨーク3の内周側壁3bは周方向に連続して形成しており、ヨーク3の外周側壁3bに切除部(空間)12を設けていることが、第2実施の形態と異なっている。即ち、
図10(a)に示すように、外周が平面視矩形のヨーク3において、外周側壁3aは、輪郭が矩形のヨーク3の角部にのみ設けてあり、内周側壁3bは、ヨークの円形の内周に沿って周方向に亘って連続して設けてある。ヨーク3の外周側壁3aは、マグネット13を配置する角部にのみ設けてあり、隣り合うマグネット13、13間には外周側壁3aがなく、空間12になっている。
【0047】
この第3実施の形態では、
図10(b)に示すように、ヨーク3において、マグネット13のN極からマグネット13と対面する内周側壁3bへ向かう磁界BAが生じ、この磁界BAがレンズ支持体7の駆動に寄与する磁界となる。そして、隣り合うマグネット13、13間に対応する位置(空間部)12には外周側壁3aがなく、空間12となっているので、有効な磁界BAのみを得ることができ、レンズ支持体7の駆動効率を高めることができる。
【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0049】
例えば、第1実施の形態において、コイル固定部19は、4つに設けることに限らずいくつ設けてもよく、コイル固定部19に対応してヨーク3の内周側壁3bに切除部12を同じ数だけ設ければよい。
【0050】
第3実施の形態において、外周側壁3a間の空間12は、非磁性材、例えば、樹脂材で埋めるものであっても良いし、ヨーク5の外周側に樹脂製のケースを装着したり、ベース5又はフレーム6の周方向に壁面を設けて、ヨークの外周を筐体で密閉しても良い。
【0051】
更に、第3実施の形態において、内周側壁3bについても、マグネット13と対面する位置にのみ内周側壁3bを設け、隣り合うマグネット13、13間は空間(切除部)12としても良い。
【0052】
上述した各実施の形態において、切除部12は周方向の幅を狭くして、内周側壁3a及び外周側壁3bの周方向の幅をマグネット13よりもはみ出すように広くするものであってもよい。