特許第6102004号(P6102004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102004
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】トルク変換器
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   G01L3/10 311
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-19355(P2012-19355)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-156230(P2013-156230A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年12月4日
【審判番号】不服2016-3438(P2016-3438/J1)
【審判請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】李 奎
(72)【発明者】
【氏名】野木 博行
【合議体】
【審判長】 酒井 伸芳
【審判官】 高橋 克
【審判官】 中塚 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−74070(JP,U)
【文献】 特開昭61−5399(JP,A)
【文献】 特開平6−162383(JP,A)
【文献】 実開平2−88140(JP,U)
【文献】 特開昭60−102534(JP,A)
【文献】 特開昭51−131676(JP,A)
【文献】 特開平3−42537(JP,A)
【文献】 特開昭60−17329(JP,A)
【文献】 実開平4−55530(JP,U)
【文献】 特開昭63−45350(JP,A)
【文献】 特開昭62−133042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象である駆動部のトルクを測定するトルク変換器において、
抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定するトルク変換器であって、
検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置されたトルク変換器であり、
前記トルク変換器の前記電力供給部と前記信号伝送部は、
前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、
前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有し、
前記ロータ側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝達が、前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換して該周波数を介することより行われ、かつ
前記トルク変換器は、前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する一対の軸受を有し、
前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記一対の軸受にそれぞれ隣接し、かつ前記回転軸の長手方向においてそれぞれが隣接する前記各軸受よりも前記ブリッジ回路側に配置され、
前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく、かつ
前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われていることを特徴とするトルク変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、モータ、トランスミッションなど各種駆動部のトルクを測定するトルク変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエンジン、モータ、トランスミッションなど各種駆動部のトルクを測定するトルク変換器が知られている(例えば、特許文献1参照)。係るトルク変換器は、電力伝送用コアの信号伝送用コアを収容する非磁性体のフレームを設けると共に、信号伝送用コアの外部の周辺にノイズ相殺用コイルを特別に設けることにより、電力伝送用コイルの漏れ磁束によるノイズを打ち消すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したトルク変換器は、ノイズ相殺用コイルを特別に設けているので、その分大型化すると共にコスト高となる。このような2つの不都合な点のうち特に一方を解決し、小型化を達成した本発明に関連するトルク変換器が考えられている。
【0005】
このトルク変換器5は、図6及び図7に示すようにハウジング500と、ハウジング内に設けられた2つの軸受511,512(510)と、各軸受510を介してハウジング内に回転可能に支持され両端部が外側に突出しトルクの被測定対象物となっているシャフト(回転軸)900と、シャフト900の長手方向一部に形成された平面部に貼り付けられたひずみゲージ910を有している。そして、このトルク変換器5は、ひずみゲージ910の貼付位置に対してシャフト長手方向一側(図6中右側)にひずみゲージ910に電力を供給する電力供給部600と、ひずみゲージ910からの出力を取り出す信号伝送部700を有すると共に、信号伝送部700から送られた信号に基づきシャフト900のトルクを算出する電気回路の形成された回路基板800をハウジング内に有している。
【0006】
なお、このトルク変換器5は、電力供給部600と信号伝送部700が上述のようにひずみゲージ910の貼付位置に対してシャフト長手方向一側に隣接して配置されているので、信号伝送部700が電力供給部600から受ける磁気干渉を防止するために隣接する電力供給部600と信号伝送部700のそれぞれをステータ側磁気シールド部材810及びロータ側磁気シールド部材820で囲っている(図7参照)。しかし、各磁気シールド部材810,820は、珪素鋼板の積層体からなるので、このようにロータ側にも磁気干渉を防止するためのロータ側磁気シールド部材820を備えると、回転体であるシャフト900の質量がその分増加してしまう。その結果、シャフト900の慣性質量が増してシャフト900を駆動するに際してより大きな駆動力を必要とすると共に、シャフト900の回転数を変化する際の応答性が低下する。
【0007】
これに加えて、上述のように電力供給部600と信号伝送部700を珪素鋼板からなる積層体ステータ側磁気シールド部材810及びロータ側磁気シールド部材820のそれぞれをしっかりと囲うと、電力供給部におけるステータ側からロータ側への磁束ループを理想的な経路で形成することができなくなる。これは、このような磁気シールド部材810の存在によりループ形状が変形してしまうためである。そのため、その分の余分な磁束をコイルコアで発生させて十分な誘導効率を達成される必要がある。これに伴って、電力供給部600においては、磁気シールド部材810によって変化する磁束ループを考慮した余分な電力を電力供給部600に供給しなければならない。その結果、磁気シールド部材自体が発熱して、その周囲の回路基板800に実装された電子部品や電気部品に悪影響を与える虞があると共に、必要以上の電力を供給することにより省エネに反する問題がある。
【0008】
本発明の目的は、回転体(シャフト)に磁気シールド等を備えることなく、その慣性質量を無駄に大きくすることなく回転体のトルクを優れた検出精度で検出可能なトルク変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る3軸力センサは、
被測定対象である駆動部のトルクを測定するトルク変換器において、
抵抗体を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、該変換した検出信号を外部に取り出すことにより前記回転軸で伝達されるトルクを測定するトルク変換器であって、
検出対象として特定された回転軸のトルクを測定するために、該トルク変換器への電力の供給を行う電力供給部と、前記回転軸の長手方向に沿って前記電力供給部と所定間隔隔てて配置された信号伝送部を有しており、かつブリッジ回路を構成したひずみ測定用の前記抵抗体が、前記電力供給部と前記信号伝送部との間に位置するように前記回転軸上に配置されたトルク変換器であり、
前記トルク変換器の前記電力供給部と前記信号伝送部は、
前記回転軸と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及びロータ側信号伝送構成部と、
前記ロータ側電力供給構成部と前記ロータ側信号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有し、
前記ロータ側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝達が、前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換して該周波数を介することより行われ、かつ
前記トルク変換器は、前記回転軸をハウジングに回転可能に軸支する一対の軸受を有し、
前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記一対の軸受にそれぞれ隣接し、かつ前記回転軸の長手方向においてそれぞれが隣接する前記各軸受よりも前記ブリッジ回路側に配置され、
前記ロータ側電力供給構成部及び前記ロータ側信号伝送構成部は磁気シールド部材を備えることなく、かつ
前記ステータ側電力供給構成部は、ステータ側ボビンが珪素快削鋼を用いたステータ側ボビンケースで囲われていることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るトルク変換器がこのような構成を有することで、本発明に関連したトルク変換器のように、電力供給部と信号伝送部がひずみゲージの貼付位置に対してシャフト(回転体)の長手方向一側に隣接して配置させずに済む。その結果、ロータ側において磁気干渉を防止するために電力供給部と信号伝送部のそれぞれに磁気シールド部材を備える必要がなくなる。このように、ロータ側に磁気干渉を防止するための磁気シールド部材を備えないで済むと、回転体であるシャフトの慣性質量がその分増加せず、シャフトを回転させるに際して大きな駆動力を必要としなくなると共に、シャフトの回転数を変化させる際の応答性を低下させずに済む。
【0011】
また、本発明に関連したトルク変換器と異なり、電力供給部におけるステータ側とロータ間磁束ループを必要最小限のループとすることができる。これにより、電力供給部においては、磁気シールド部材によって吸収される磁束に相当する分を考慮した余分な電力を供給する必要がなくなる。その結果、磁気シールド部材自体が発熱してその周囲の回路基板に実装された電子部品や電気部品に悪影響を及ぼすというような不具合を防止できると共に、必要以上の電力を供給することがなく消費電力を抑えたトルク変換器とすることができる。
【0013】
また、本発明に係るトルク変換器が、ロータ側信号伝送構成部からステータ側信号伝送構成部での電気信号の伝達を、ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周波数に変換することより行っているので、この電気信号の伝達時に例えば電力供給部が発生する磁束等から受けるノイズが重畳し難くなる。その結果、ロータ側電力供給構成部に磁気シールドをわざわざ設けることなくロータ側信号伝送構成部からステータ側信号伝送構成部に電気信号を正確に伝達することができる。
また、本発明に係るトルク変換器によると、ステータ側電力供給構成部のステータ側ボビンケースに珪素快削鋼を用いることで、大きさの小さい磁気シールド部材で済む。また、前記ステータ側ボビンケースを、珪素快削鋼を加工するだけで製造することができ、加工し易くなると共に組付も容易にすることができるようになるので、磁気シールドに関するコスト低減化を図り、ひいてはトルク変換器のコスト低減に貢献する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、回転体(シャフト)の慣性質量を無駄に大きくしないで優れた検出精度で回転体のトルクを検出可能なトルク変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るトルク変換器をシャフトの軸線方向に沿って切断し、これをケーブル導出側と垂直方向から示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトルク変換器をシャフトの軸線方向に沿って切断し、これをケーブル導出側から示す断面図である。
図3図1及び図2に示したトルク変換器の電力供給部を拡大して示す断面図である。
図4図1及び図2に示したトルク変換器の信号伝送部を拡大して示す断面図である。
図5図1及び図2に示したトルク変換器の電力供給部及び信号伝送部の電気的構成を示すブロック図である。
図6】本発明に関連するトルク変換器の図1に対応する断面図である。
図7図6に示したトルク変換器の電力供給部及び信号伝送部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るトルク変換器を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るトルク変換器をシャフトの軸線方向に沿って切断し、これをケーブル導出側と垂直方向から示す断面図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係るトルク変換器をシャフトの軸線方向に沿って切断し、これをケーブル導出側から示す断面図である。また、図3は、図1及び図2に示したトルク変換器の電力供給部を拡大して示す断面図である。また、図4は、図1及び図2に示したトルク変換器の信号伝送部を拡大して示す断面図である。
【0017】
なお、以下の説明において上下方向(高さ方向)及び左右方向(シャフトの長手方向)については、図1に示したトルク変換器の配置状態を基準として示すものとする。また、幅方向については図2に示すシャフトの長手方向と垂直方向を基準として示すものとする。
【0018】
本発明の一実施形態に係るトルク変換器1は、例えばエンジン、モータ、トランスミッションなど各種駆動部のトルクを測定するのに利用される。このトルク変換器1は、シャフト900に備わったひずみゲージ910を用いて回転軸のトルクに応じたねじれ量を電気量に変換し、この変換した検出信号を外部に取り出し伝達されるようになっている。
【0019】
トルク変換器1は、本実施形態ではハウジング100と、ハウジング内の両端に設けられた2つのベアリング111,112(110)と、各ベアリング110を介してハウジング内に回転可能に支持され両端部が外側に突出しトルクの被測定対象物をなすシャフト(回転軸)900を有している。なお、シャフト900の長手方向ほぼ中央部分に形成された平面部にはホイートストンブリッジ回路911を構成するひずみゲージ910が貼り付けられている。また、シャフト900の軸径は長手方向先端部両側から一定の距離だけわずかに小さく、その後中心方向に向かって一定距離だけわずかに大きくなり、ひずみゲージ900の配置された平面部前までさらにわずかに大きくなっている。これによって、このシャフト900の軸径の変化部分が段部として形成されている。具体的には、シャフト軸線上にベアリング111及び112を位置決めするために、長手方向両外側に段部901,905を形成している。また、この段部901,905に挟まれる段部で、段部902はロータ側電力供給構成部220をシャフト軸線上に位置決めする役割を果たし、段部906は回路基板固定カバー226をシャフト軸線上に位置決めする役目を果たしている。
【0020】
ハウジング100は、直方体形状を有し、その長手方向にシャフト900の外径よりかなり大きく、開口部付近の内径がシャフト900を支持するベアリング110の外径に合致し、かつ後述するロータ側とステータ側の電力供給部200及び信号伝送部300を構成する部品を収容する空間120が形成されている。また、ハウジング100の図1における上部には基板収容用の空間130が形成され、その空間130の内部にステータ側回路基板135が収容されている。また、空間130の底面と空間120との間には、ステータ側電力供給構成部210及びロータ側電力供給構成部220とステータ側回路基板135を図示しない電線で電気的に繋ぐステータ側コイル接続用貫通孔131,132が形成されている。
【0021】
空間120は、ベアリング110及びステータ側電力供給構成部210、並びにステータ側信号伝送構成部310の外径と同等の内径を有し、図1中のハウジング左右側面を貫通する貫通孔として形成されている。そして、ステータ側電力供給構成部210がハウジング100の電力供給部位置決め用の段部102に当接した状態、かつベアリング111が段部901に当接した状態でこれらが空間120に収容されている。
【0022】
また、ステータ側信号伝送構成部310がハウジング100の信号伝送部位置決め用の段部106に当接した状態、かつベアリング112がシャフト900の段部905に当接した状態でこれらが空間120に収容されている。
【0023】
このような構成を有することで、予めシャフト900にベアリング110、ロータ側電力供給構成部220、ロータ側信号伝送構成部320、ロータ側回路基板225.回路基板固定カバー226を嵌合させてサブアッシーとしてこれらをシャフト900に組付た状態でハウジング100の空間120に一度に挿入することができるので、組付効率を向上させるようになっている。
【0024】
ハウジング100の空間120には2つのベアリング110の外側に隣接してCリング係合溝が形成され、このCリング係合溝にCリング129が係合することで空間120からベアリング110が脱落するのを防止している。また、2つのベアリング110とCリング129との間には、それぞれベアリングカバー115(図2参照)が挟まっている。
【0025】
また、ハウジング100の空間130は、ハウジングカバー140で覆われている。ハウジングカバー140の中央部からは、トルク変換器1に電力を供給したり、トルク変換器1から得られた出力信号を外部に伝達したりするためのケーブル145が導出している。
【0026】
また、シャフト900の段部902によりロータ側電力供給構成部220をシャフト軸線上に位置決め固定されている。一方、ステータ側電力供給構成部210は、その一方の端面がハウジング100の段部102に突き当って固定されている。また、シャフト900の段部906により回路基板固定カバー226をシャフト軸線上に位置決固定されている。一方、ステータ側信号伝送構成部310は、その一方の端面がハウジング100の段部106に突き当って固定されている。そして、ハウジング100に固定されたステータ側電力供給構成部210と、後述する回路基板固定カバー226を介してシャフト900に固定されたロータ側電力供給構成部220がシャフト長手方向で見て対応するように配置される共に、ハウジング100に固定されたステータ側信号伝送構成部310と、シャフト900に固定されたロータ側信号伝送構成部320がシャフト長手方向で見て対応するように配置されている。
【0027】
また、シャフト900のひずみゲージ910の貼付位置とロータ側信号伝送構成部320との間には、ロータ側回路基板225が固定されている。なお、ロータ側回路基板225には、回路基板固定カバー226が取付けられている。回路基板固定カバー226は、シャフト900が貫通する異形カップ形状を有し、ロータ側回路基板225をシャフト900にしっかりと固定する役目を果たしている。これによって、ロータ側信号伝送構成部320及びロータ側回路基板225は、シャフト900と一体に回転するようになっている。
【0028】
一方、ベアリング111の段部901側端面とステータ側電力供給構成部210の前記ベアリング端面に対向する端面との間、及びベアリング111の前記端面に対向するロータ側電力供給構成部220の端面との間にはわずかな隙間Gが形成されている。
【0029】
これによって、シャフト900が回転しても、ハウジング100に固定されたステータ側電力供給構成部210がベアリング111に干渉せず、かつシャフト900と一体に回転するロータ側電力供給構成部220がベアリング112に干渉するのを防止している。
【0030】
同様に、ベアリング112の段部905側端面とステータ側信号伝送構成部310の前記ベアリング端面に対向する端面との間、及び前記ベアリング112の前記端面に対向するロータ側信号伝送構成部320の端面との間にもわずかな隙間Gが形成されている。
【0031】
これによって、シャフト900が回転しても、ハウジング100に固定されたステータ側信号伝送構成部310がベアリング111に干渉せず、かつシャフト900と一体に回転するロータ側信号伝送構成部320がベアリング112に干渉するのを防止している。
【0032】
続いて、ひずみゲージ910に電力を供給する電力供給部200について説明する。電力供給部200は、図3に示すように、ハウジング100に固定されたステータ側電力供給構成部210と、シャフト900の上述したステータ側電力供給構成部210に対応する長手方向の位置に固定されシャフト900と一体に回転するようになったロータ側電力供給構成部220から構成されている。
【0033】
ステータ側電力供給構成部210は、断面角形C字状のステータ側ボビン211と、ステータ側ボビン211を介して巻回されたステータ側電力供給コイル212と、磁気シールド部材で形成され、ステータ側ボビン211を囲うように形成されたステータ側ボビンケース213を有している。なお、ステータ側ボビン211には、ベークライト等の絶縁性を有する透磁製の材料が用いられ、ステータ側ボビンケース213には珪素快削鋼が用いられている。
【0034】
一方、ロータ側電力供給構成部220は、断面角形C字状のロータ側ボビン221と、このボビンを介して巻回されたロータ側電力供給コイル222を備えているが、ロータ側ボビン221は、磁気シールド部材からなるボビンケースを備えておらず、これによってシャフト900の慣性質量が図6及び図7に示した構造のトルク変換器5よりも小さくなっている。なお、ロータ側電力供給構成部220の各部品の材質は、ステータ側電力供給構成部210の各部品の材質と同等である。
【0035】
続いて、ひずみゲージ910からの出力信号をステータ側に取り出す信号伝送部300について説明する。信号伝送部300は、図4に示すように、ハウジング100に固定されたステータ側信号伝送構成部310と、シャフト900の上述したステータ側信号伝送構成部310に対応するシャフト長手方向の位置に固定されシャフト900と一体に回転するようになったロータ側信号伝送構成部320から構成されている。ステータ側信号伝送構成部310は、断面角形C字状のステータ側ボビン311と、このステータ側ボビン311を介して巻回されたステータ側信号伝送コイル312と、磁気シールド部材で形成され、ステータ側ボビン311を囲うように形成されたステータ側ボビンケース313を有している。なお、ステータ側ボビン311には、ベークライト等の絶縁性を有する透磁製の材料が用いられ、ステータ側ボビンケース313には珪素快削鋼が用いられている。
【0036】
一方、ロータ側信号伝送構成部320は、断面角形C字状のロータ側ボビン321と、このボビンを介して巻回されたロータ側信号伝送コイル322を備えているが、ロータ側ボビンケースからなる磁気シールド部材については備えておらず、これによって、上述した通りシャフトの慣性質量が図6及び図7に示した構造のトルク変換器5よりも小さくなっている。なお、ロータ側信号伝送構成部320の各部品の材質は、ステータ側信号伝送構成部310の各部品の材質と同等である。なお、ロータ側信号伝送構成部320とロータ側回路基板225とは電気的に接続されている。
【0037】
続いて、ステータ側回路基板135及びロータ側回路基板225に実装された電子部品や電子回路の構成及び回路動作について説明する。最初に図5の回路ブロック図に基づいて本実施形態に係るトルク変換器1の回路構成について説明する。図5の回路ブロック図においては、ステータ側には、ステータ側電力供給構成部210として、発振回路215と、ドライブ回路216と、電力供給部200のトランスを構成する一方のステータ側電力供給コイル212が備わっている。また、ステータ側には、ハウジング外部に導出されたケーブル145から15ボルトと5ボルトの電圧を発生させる(直流)電源回路250が備わっている。また、ステータ側には、ステータ側信号伝送構成部310のトランスを構成する一方のステータ側信号伝送コイル312、F/V変換モジュール(周波数/電圧変換モジュール)315、ステータ側出力信号増幅回路(AMP)316、及びノイズ除去用の出力フィルター回路317が備わっている。
【0038】
一方、ロータ側には、ロータ側電力供給構成部220として、ロータ側電力供給構成部220のトランスを構成する他方のロータ側電力供給コイル222、交流電流を直流電流に整流し、直流電源をロータ側に構成させる整流回路223が備わっている。そして、ひずみゲージ910により構成されるホイートストンブリッジ回路911、ロータ側出力信号増幅回路(AMP)325、ノイズ除去用のロータ側フィルター回路326、V/F変換モジュール(電圧/周波数変換モジュール)327、ロータ側信号伝送構成部のトランスを構成する他方のロータ側信号伝送コイル322が備わっている。なお、ロータ側の回路は、ホイートストンブリッジ回路911を除いてロータ側回路基板225に全て形成され、ステータ側の回路は、ステータ側回路基板135に全て形成されている。
【0039】
続いて、上述した回路構成に基づくトルク変換器1の動作について説明する。最初に、外部から電源回路250にケーブル145(図1参照)を介して直流電流が供給され、発振回路215によって所定の周波数に変換すると共に、ドライブ回路216によって電力供給部200のトランスのステータ側電力供給コイル212に交流電流を流す。これによって、電力供給部200のトランスを構成するロータ側電力供給コイル222に交流電流が励磁される。そして、この励磁された交流電源を整流回路223によって、本実施形態では5ボルトの直流電源に変換する。
【0040】
そして、この直流電源を用いて、ひずみゲージ910により構成されるホイートストンブリッジ回路911に電力を供給する。そして、トルク検出中にひずみゲージ910のわずかな出力変化を検出して、この出力信号をロータ側出力信号増幅回路325で増幅し、ロータ側フィルター回路326でノイズを除去する。
【0041】
そして、この出力信号をV/F変換モジュール327によって電圧から周波数に変換して信号伝送部300のトランスのロータ側信号伝送コイル322に伝える。そして、信号伝送部300のトランスを構成するロータ側信号伝送コイル322からステータ側信号伝送コイル312にこの周波数を伝え、F/V変換モジュール315でこの周波数を電圧に変換し、ステータ側出力信号増幅回路316によって増幅して、出力フィルター回路317によりノイズを除去し、ひずみに関する検出出力信号としてケーブル145を介して外部に伝える。
【0042】
以下、上述した本実施形態に係るトルク変換器1の作用について説明する。本実施形態に係るトルク変換器1がこのような構成を有することで、図6及び図7に基づいて説明した本発明に関連したトルク変換器5のような構成、即ち電力供給部200と信号伝送部300がひずみゲージ910の貼付位置に対してシャフト長手方向一側に隣接して配置する構成をとらずに済む。その結果、ロータ側において磁気干渉を防止するために電力供給部200と信号伝送部300のそれぞれに例えば珪素鋼板の積層体からなる磁気シールド部材を備える必要がなくなる。このようにロータ側に磁気干渉を防止するための磁気シールド部材を備えなくて済むと、回転体であるシャフト900の慣性質量がその分増加することなく、シャフト900を回転駆動させる際に大きな駆動力を必要としなくなると共に、シャフトの回転数の変化に関する応答性を低下させずに済む。
【0043】
また、本発明に関連したトルク変換器5と異なり、電力供給部200におけるステータとロータ間に形成される磁束のループを必要最小限のループとして形成することができる。これにより、電力供給部200において、磁気シールド部材において熱に変化する磁束に相当する分を考慮した余分な電力を供給する必要がなくなる。その結果、磁気シールド部材自体が発熱して、その周囲の回路基板に実装された電子部品や電気部品に悪影響を与える虞がなくなると共に、必要以上の電力を供給することがなく消費電力を抑えたトルク変換器とすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るトルク変換器1は、ロータ側信号伝送構成部320からステータ側信号伝送構成部310への電気信号の伝達を、ロータ側信号伝送構成部320に設けられているロータ側信号伝送コイル322の電圧を周波数に変換することより行っているので、この電気信号の伝達時にノイズが重畳し難くなる。その結果、ロータ側電力供給構成部220及びロータ側信号伝送構成部320に磁気シールド部材をわざわざ設けることなくロータ側信号伝送構成部320からステータ側信号伝送構成部310に電気信号を正確に伝送することができる。
【0045】
また、ステータ側ボビンケース213には珪素快削鋼が用いられているので、磁気シールド部材を構成する部分の大きさが小さくて済む。これによって、この磁気シールド部材の部分を、珪素鋼板を積層させて構成する代わりに珪素快削鋼で構成することができ、磁気シールドに関するコスト低減化を図り、ひいてはトルク変換器のコスト低減に貢献する。
【0046】
これは、例えばシャフト長手方向に約3mmの長さを有する磁気シールド部材を用いる場合、この磁気シールド部材を製造するにあたって一般的に用いられている厚さ約0.5mmの珪素鋼板を6枚から7枚積層して一体化させなければならないことに対して、本発明の場合、大きさの小さい磁気シールド部材で済むので、珪素快削鋼を加工するだけで製造することができ、加工し易くなると共に組付も容易にすることができるようになる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施形態の例示的構成や材質には必ずしも限定されず、本発明の作用を発揮しうる範囲で様々な材質を使用したり、形状の設計変更を行ったりすることが可能である。具体的には、上述の実施形態においては、ひずみゲージとしてホイートストンブリッジ回路からなる抵抗体を用いたが、シャフトのひずみを検出できるのであれば、必ずしもこのような構成には限定されず簡易型のブリッジ回路であっても構わない。また、ひずみゲージを構成する抵抗体は、薄膜抵抗体の他に、半導体を利用した抵抗体やその他本実施形態と同様の作用を奏するものを用いても構わない。また、上述の実施形態ではひずみゲージをシャフトの平面部に貼り付けたが、シャフトの曲面部に貼り付けても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 トルク変換器
100 ハウジング
111,112(110) ベアリング
120 空間
135 ステータ側回路基板
200 電力供給部
210 ステータ側電力供給構成部
220 ロータ側電力供給構成部
225 ロータ側回路基板
226 回路基板固定カバー
300 信号伝送部
310 ステータ側信号伝送構成部
315 F/V変換モジュール(周波数/電圧変換モジュール)
320 ロータ側信号伝送構成部
327 V/F変換モジュール(電圧/周波数変換モジュール)
900 シャフト(回転軸)
901,902,905,906 段部
910 ひずみゲージ
911 ホイートストンブリッジ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7