(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼室の側面のうち、前記第2の酸化剤噴出口の配設位置よりも前記第2の円形面側に配置され、前記バーナ本体の中心軸の延在方向と交差する方向に第3の酸化剤を噴出する第3の酸化剤噴出口を有し、
前記バーナ本体の中心軸の延在方向と前記第3の酸化剤の噴出方向とが成す角度は、前記バーナ本体の中心軸の延在方向と前記第2の酸化剤の噴出方向とが成す角度よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の気体燃料バーナ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の気体燃
料バーナの寸法関係とは異なる場合がある。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る気体燃
料バーナの主要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1において、X方向はバーナ本体11の延在方向(言い換えれば、所定の方向)、Y方向はX方向と直交する方向をそれぞれ示している。
また、
図1において、P
1は第1の酸化剤が噴出される方向(以下、「第1の酸化剤噴出方向P
1」という)、P
2は気体燃料が噴出される方向(以下、「気体燃料噴出方向P
2」という)、P
3は第2の酸化剤が噴出される方向(以下、「第2の酸化剤噴出方向P
3」という)をそれぞれ示している。
【0026】
図1を参照するに、第1の実施の形態の気体燃
料バーナ10は、バーナ本体11と、気体燃料供給路12と、燃焼室13と、第1の酸化剤噴出口17と、気体燃料噴出口18と、第2の酸化剤噴出口19と、を有する。
【0027】
バーナ本体11は、X方向に延在しており、その先端部には図示していない被加熱物(例えば、鋼材や非鉄材料等)を加熱する火炎(図示せず)が形成される。バーナ本体11は、第1の環状部材21と、第2の環状部材22と、を有する。
第1の環状部材21は、先端部の肉厚が燃焼室13に向かうにつれて薄くなるような環状部材である。これにより、第1の環状部材21の先端部の外周面は、テーパ形状とされている。
【0028】
第1の環状部材21は、その中心軸がバーナ本体11の中心軸CL
1と一致するように配置されている。第1の環状部材21は、その内部にX方向に延在する第1の酸化剤供給路24を有する。第1の酸化剤供給路24の形状は、例えば、円柱形状とすることができる。第1の酸化剤供給路24は、第1の酸化剤を供給する酸化剤供給源(図示せず)と接続されている。
【0029】
第2の環状部材22は、隙間を介在させた状態で、第2の環状部材22の中心軸がバーナ本体11の中心軸CL
1と一致するように、第1の環状部材21の外側に配置されている。第2の環状部材22の内径は、第1の環状部材21の外径よりも大きくなるように構成されている。
第2の環状部材22は、第1の環状部材21の先端面からX方向に突出して配置される先端部26を有する。
先端部26の内面は、第1の環状部材21の先端面から第2の環状部材22の先端面に向かうにつれて燃焼室13の幅が広くなるような傾斜面26a(言い換えれば、燃焼室13の側面13a)とされている。
【0030】
第2の環状部材22のうち、第1の環状部材21のテーパ形状とされた先端部と対向する内面は、バーナ本体11の中心軸CL
1に向かう方向に傾斜している。
第2の環状部材22は、その内部に、X方向に延在し、かつ先端部26に第2の酸化剤を供給する第2の酸化剤供給路28を有する。第2の酸化剤供給路28の形状は、例えば、円筒形状とすることができる。第2の酸化剤供給路28は、第2の酸化剤を供給する酸化剤供給源(図示せず)と接続されている。
【0031】
気体燃料供給路12は、第1の環状部材21と第2の環状部材22とで区画された略円筒形状の空間である。気体燃料供給路12は、気体燃料を供給する気体燃料供給源(図示せず)と接続されている。
【0032】
燃焼室13は、バーナ本体11の先端部に配置されており、第1の環状部材21の先端面、及び第2の環状部材22の先端部26の傾斜面26aで区画されている。燃焼室13は、バーナ本体11の基端部(図示せず)から先端部(言い換えれば、第2の環状部材22の先端部26)に向かう方向に対して幅が広くなる円錐台形状とされた空間である。
このように、バーナ本体11の基端部(図示せず)から先端部に向かう方向に対して幅が広くなる円錐台形状とされた燃焼室13を設けることで、火炎の拡がりを抑制できると共に、火炎の軸方向速度を速くすることができる。
【0033】
なお、ここでの「火炎の軸方向速度」とは、バーナ本体11の中心軸CL1に対して平行な方向における速度成分のことをいう。火炎が広がると、火炎の断面積が大きくなるため、火炎の軸方向速度が低下してしまう。
よって、火炎を被加熱物に衝突させて加熱する場合には、衝突させる火の軸方向速度が速ければ速いほど対流熱伝達率(単位面積・単位時間・単位温度差(被加熱物と火炎との温度差)あたりの伝熱量)が高くなるため、伝熱効率を高くすることが可能となる。
【0034】
燃焼室13は、バーナ本体11の内部に配置された第1の円形面13−1と、気体燃
料バーナ10の先端面と同一平面上に配置された第2の円形面13−2と、を有する。
第1及び第2の円形面13−1,13−2は、第1の直径D
1及び第2の直径D
2が異なる円形面であり、X方向において対向配置されている。第1の円形面13−1の第1の直径D
1は、第2の円形面13−2の第2の直径D
2よりも小さくなるように構成されている。
【0035】
第1の円形面13−1の第1の直径D
1の値は、例えば、第1の酸化剤噴出口17の開口径dの3〜6倍の範囲内の大きさにするとよい。
第1の直径D
1/開口径dが3よりも小さいと、燃焼室13の側面13aを区画する先端部26の傾斜面26aに火炎が接触しやすくなり、該火炎によりバーナ本体11の先端部が加熱させるため、バーナ本体11の先端部が損傷してしまう。このため、バーナ本体11の先端部を冷却する冷却水を循環させる冷却水循環経路をバーナ本体11の先端部に設けることが必修となってしまう。
【0036】
一方、第1の直径D
1/開口径dが6よりも大きいと、燃焼室13の燃焼室としての機能が低下し、火炎の軸方向速度が遅くなるため、対流伝熱効果が低下してしまう。
したがって、第1の円形面13−1の第1の直径D
1の値を、第1の酸化剤噴出口の開口径dの3〜6倍の範囲内の大きさにすることで、冷却水循環経路を設けることなく、バーナ本体11の先端部の破損を抑制できると共に、対流伝熱効果の低下を抑制することができる。
【0037】
また、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向(X方向)における燃焼室13の長さLの値は、例えば、第1の直径D
1の0.5〜2倍の範囲内にするとよい。
バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向における燃焼室13の長さLの値が、第1の直径D
1の0.5倍よりも小さいと、火炎の拡がりを抑制する効果が小さくなってしまう。
一方、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向における燃焼室13の長さLの値が、第1の直径D
1の2倍よりも大きいと、火炎が燃焼室13の側面13aに接し、溶損する恐れがある。
したがって、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向(X方向)における燃焼室13の長さLの値を第1の直径D
1の0.5〜2倍の範囲内にすることで、火炎の拡がりを抑制できると共に、火炎の軸方向速度を速くすることができる。
【0038】
燃焼室13の側面13a(言い換えれば、傾斜面26a)とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向(X方向)とが成す角度θ
1は、例えば、0度以上20度以下の範囲内で設定するとよい。
燃焼室13の側面13aとバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
1が0度よりも小さいと、燃焼室13の形状を
図1に示すような円錐台形状にすることができないため、火炎が燃焼室13に接し、溶損する恐れがある。
一方、燃焼室13の側面13aとバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
1が20度よりも大きいと、火炎の拡がりを抑制する効果が小さくなってしまう。
したがって、燃焼室13の側面13aとバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
1を0度以上20度以下の範囲内で設定することで、燃焼室13を構成するバーナ本体11が溶損することを抑制でき、かつ火炎の拡がりを抑制することができる。
【0039】
第1の酸化剤噴出口17は、第1の円形面13−1の中心に配置されており、第1の酸化剤供給路24と一体に構成されている。
第1の酸化剤噴出口17は、第1の酸化剤供給路24により輸送された第1の酸化剤(例えば、純酸素、酸素富化空気等)をX方向(言い換えれば、バーナ本体11の中心軸CL
1方向)に噴出させる。
燃焼室13に噴出させる第1の酸化剤の噴出速度は、例えば、50〜300m/sの範囲内で適宜設定することができる。
【0040】
第1の酸化剤噴出口17の開口径dは、例えば、第1の酸化剤供給路24の直径と略等しくすることができる。
また、第1の酸化剤噴出口17を1つの噴出孔で構成することで、燃焼室13から離間した遠くの位置まで、噴出された第1の酸化剤の軸方向速度(言い換えれば、バーナ本体11の中心軸CL
1方向の速度)の速度を保つことが可能となるので、対流伝熱効率を向上させることができる。
【0041】
また、第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量は、例えば、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計(第1の実施の形態の場合、第1の酸化剤の流量と第2の酸化剤の流量との合計)の40%〜90%の範囲内にするとよい。
【0042】
第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量が、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計の40%よりも少ないと、火炎の軸方向速度が低下し、対流伝熱効率が低くなってしまう。また、この場合、燃焼室13内において火炎が広がるため、バーナ本体11の先端部が加熱されて損傷する恐れがある。
したがって、バーナ本体11の先端部の損傷を抑制するために、バーナ本体11の先端部を冷却可能な水冷機構を別途設ける必要がある。
【0043】
一方、第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量が、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計の90%を超えると、第2の酸化剤の流量が少なくなりすぎるため、保炎効果が低下すると共に、気体燃料及び酸化剤の混合具合が悪くなるため、実用的な火炎を得ることが困難となる。
また、このような場合、燃焼性が悪くなるため、残存酸素の高い火炎が形成されてしまう。よって、酸化するような被加熱物を加熱すると、被加熱物が酸化されてしまう。
【0044】
したがって、第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量を、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計の40%〜90%の範囲内にすることで、水冷機構を別途設けることなく、バーナ本体11の先端部の損傷を抑制できると共に、被加熱物が酸化されやすい材料である場合でも被加熱物が酸化されることを抑制できる。
【0045】
気体燃料噴出口18は、第1の環状部材21の先端部の傾斜した部分と、Y方向において該傾斜した部分と対向する第2の環状部材22と、の間に設けられている。
これにより、気体燃料噴出口18は、第1の円形面13−1のうち、第1の酸化剤噴出口17の外側に配置されている。
気体燃料噴出口18は、複数の気体燃料噴出孔(図示せず)で構成されている。複数の気体燃料噴出孔(図示せず)は、第1の円形面13−1の中心C
1に対して同心円状に配置されている。
気体燃料噴出口18は、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に対して交差する方向に気体燃料(例えば、天然ガス、都市ガス、LPG(Liquefied Petroleum Gas)等)を噴出する。気体燃料噴出口18から噴出される気体燃料の噴出速度は、例えば、20〜100m/sの範囲内で適宜選択することができる。
【0046】
気体燃料噴出方向P
2とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
2は、例えば、0度以上30度以下の範囲内で設定するとよい。
このように、気体燃料噴出方向P
2とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
2を、0度以上30度以下の範囲内で設定することで、気体燃料と第1の酸化剤との混合を促進させることができる。
【0047】
第1の実施の形態の気体燃
料バーナ10では、バーナ本体11の中心軸CL
1方向に第1の酸化剤を噴出させる単孔で構成された第1の酸化剤噴出口17と、第1の酸化剤噴出口17を囲むように配置され、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に対して交差する方向に気体燃料を噴出する気体燃料噴出口18と、を有することで、高速で噴出させた第1の酸化剤がその周りから噴出される気体燃料を巻き込みながら燃焼するため、軸方向速度の速い火炎を形成することができる。
【0048】
第2の酸化剤噴出口19は、燃焼室13の側面13aを構成する先端部26を貫通するように設けられている。第2の酸化剤噴出口19は、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に対して交差する方向に第2の酸化剤(例えば、純酸素、酸素富化空気等)を噴出する。
第2の酸化剤噴出口19は、複数の酸化剤噴出口を有する。第2の酸化剤噴出口19を構成する複数の酸化剤噴出孔は、第1の円形面13−1の中心C
1に対して同心円状に配置されている。
燃焼室13に噴出させる第1の酸化剤の噴出速度を50〜300m/sとし、気体燃料の噴出速度を20〜100m/sとした場合、第2の酸化剤の噴出速度は、例えば、20〜80m/sの範囲内で適宜選択することができる。
このように、第1の酸化剤の噴出速度、気体燃料の噴出速度、及び第2の酸化剤の噴出速度を上記数値範囲内に設定することで、燃焼効率が高く、かつ軸方向速度の速い火炎を形成できる。
【0049】
第2の酸化剤噴出方向P
3とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
3は、例えば、10度以上40度以下の範囲内で設定するとよい。
第2の酸化剤噴出方向P
3とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
3を10度よりも未満にすると、気体燃料と第2の酸化剤との混合が悪くなるため、燃焼効率が低下してしまう。
第2の酸化剤噴出方向P
3とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
3を40度よりも大きくなると、第1の酸化剤の流れ、及び気体燃料の流れを遮蔽することとなり、火炎の軸方向速度が遅くなってしまう。
【0050】
したがって、第2の酸化剤噴出方向P
3とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
3を、10度以上40度以下の範囲内で設定することで、気体燃料が第2の酸化剤で囲まれるため、気体燃料の逸脱を抑制可能になると共に、気体燃料と第2の酸化剤との混合が促進され、より早期に燃焼が完結されるので、高温の短炎を形成することが可能となる。
これにより、酸化しやすい被加熱物に火炎を衝突させて加熱する場合において、被加熱物の酸化を抑制しながら、被加熱物に熱を効率良く伝えることができる。
【0051】
また、燃焼室13の側面13aを構成する先端部26を貫通する第2の酸化剤噴出口19を設けることで、火炎がノズル本体11の先端部の内壁に沿って流れることを抑制することが可能となるので、ノズル本体11の焼損を抑制できる。
【0052】
第1の実施の形態の気体燃
料バーナによれば、X方向に延在し、先端部に被加熱物(図示せず)を加熱する火炎が形成されるバーナ本体11と、バーナ本体11の先端部に配置され、バーナ本体11の基端部から該先端部に向かう方向に対して幅が広くなる円錐台形状とされた燃焼室13と、燃焼室13を構成する直径の異なる第1及び第2の円形面13−1,13−2のうち、第2の円形面13−2よりも直径の小さい第1の円形面13−1の中心C
1に配置され、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に第1の酸化剤を噴出する第1の酸化剤噴出口17と、第1の円形面13−1のうち、第1の酸化剤噴出口17の外側に配置され、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に対して交差する方向に気体燃料を噴出する気体燃料噴出口18と、を有することで、高速で噴出させた第1の酸化剤がその周りから噴出される気体燃料を巻き込みながら燃焼するため、軸方向速度の速い火炎を形成することができる。
【0053】
また、燃焼室13の側面13aに配置され、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向に対して交差する方向に第2の酸化剤を噴出する第2の酸化剤噴出口19と、を有することにより、気体燃料が第2の酸化剤で囲まれるため、気体燃料の逸脱を抑制可能になると共に、気体燃料と第2の酸化剤との混合が促進され、より早期に燃焼を完結させることが可能となるので、高温の短炎を形成することが可能となる。
これにより、酸化しやすい被加熱物に火炎を衝突させて加熱する場合において、被加熱物の酸化を抑制しながら、被加熱物に熱を効率良く伝えることができる。
つまり、第1の実施の形態の気体燃
料バーナによれば、燃焼効率を損なうことなく、火炎の軸方向の速度が高く、高温の火炎が得ることができ、かつ被加熱物の酸化を抑制しつつ対流伝熱効率を向上させることができる。
【0054】
上記気体燃
料バーナ10が形成する火炎を用いて被加熱物を加熱する気体燃
料バーナ
による加熱方法では、燃焼室13に噴出させる第1の酸化剤の噴出速度を50〜300m/sとし、気体燃料の噴出速度を20〜100m/sとし、第2の酸化剤の噴出速度を20〜80m/sの範囲として火炎を形成し、該火炎により被加熱物を加熱するとよい。
このような条件を用いて、気体燃
料バーナ
による加熱方法を行うことで、気体燃料と第2の酸化剤との混合が促進され、より早期に燃焼を完結させることが可能となるので、高温の短炎を形成することができる。
【0055】
また、先に説明したように、第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量は、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計の40%〜90%の範囲内にするとよい。
これにより、水冷機構を別途設けることなく、バーナ本体11の先端部の損傷を抑制できると共に、被加熱物が酸化されやすい材料である場合でも被加熱物が酸化されることを抑制できる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る気体燃
料バーナの主要部の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2において、P
4は、第3の酸化剤が噴出される方向(以下、「第3の酸化剤噴出方向P
4」という)を示している。
また、
図2において、
図1に示す第1の実施の形態の気体燃
料バーナ10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0057】
図2を参照するに、第2の実施の形態の気体燃
料バーナ40は、第1の実施の形態の気体燃
料バーナ10の構成に、さらに第3の酸化剤噴出口41を設けたこと以外は、気体燃
料バーナ10と同様に構成される。
第3の酸化剤噴出口41は、燃焼室13の側面13aのうち、第2の酸化剤噴出口19の配設位置よりも第2の円形面13−2側に配置されている。
第3の酸化剤噴出口41は、複数の酸化剤噴出孔(図示せず)で構成されている。第3の酸化剤噴出口41を構成する複数の酸化剤噴出孔は、第1の円形面13−1の中心C
1に対して同心円状に配置されている。
【0058】
第3の酸化剤噴出口41は、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と交差する方向(つまり、第3の酸化剤噴出方向P
4)に第3の酸化剤を噴出する。
バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第3の酸化剤噴出方向P
4とが成す角度θ
4は、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第2の酸化剤噴出方向P
3とが成す角度θ
3よりも小さくなるように構成されている。
このように、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第3の酸化剤噴出方向P
4とが成す角度θ
4を、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第2の酸化剤噴出方向P
3とが成す角度θ
3よりも小さくすることで、火炎の軸方向の流れを阻害することなく、火炎の拡がりを抑制できる。
【0059】
第3の酸化剤噴出方向P
4とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
4は、例えば、5度以上30度以下の範囲内で適宜設定するとよい。
このように、第3の酸化剤噴出方向P
4とバーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向とが成す角度θ
4を5度以上30度以下の範囲内で適宜設定することで、さらに、気体燃料の逸脱を抑制することが可能となる。
これにより、火炎が先端部26の内壁(言い換えれば、燃焼室13の側面13a)に沿って、流れることを抑制可能となるので、ノズル本体11の焼損を抑制することができる。
【0060】
上記構成とされた第2の実施の形態の気体燃
料バーナによれば、燃焼室13の側面13aのうち、第2の酸化剤噴出口19の配設位置よりも第2の円形面13−2側に配置された第3の酸化剤噴出口41を有すると共に、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第2の酸化剤噴出方向P
3とが成す角度θ
3よりも小さくなるように、バーナ本体11の中心軸CL
1の延在方向と第3の酸化剤噴出方向P
4とが成す角度θ
4が設定することで、火炎が先端部26の内壁(言い換えれば、燃焼室13の側面13a)に沿って、流れることを抑制可能となるので、ノズル本体11の焼損を抑制できる。
【0061】
なお、第2の実施の形態の気体燃
料バーナ40は、第1の実施の形態の気体燃
料バーナ10と同様な効果を得ることができる。
【0062】
上記気体燃
料バーナ40が形成する火炎を用いて被加熱物を加熱する気体燃
料バーナ
による加熱方法では、燃焼室13に噴出させる第1の酸化剤の噴出速度を50〜300m/sとし、気体燃料の噴出速度を20〜100m/sとし、第2の酸化剤の噴出速度を20〜80m/sの範囲とし、第3の酸化剤の噴出速度を20〜80m/sの範囲として火炎を形成し、該火炎により被加熱物を加熱するとよい。
このような条件を用いて、気体燃
料バーナ
による加熱方法を行うことで、気体燃料と第2及び第3の酸化剤との混合が促進され、より早期に燃焼を完結させることが可能となるので、高温の短炎を形成することができる。
【0063】
また、第1の酸化剤噴出口17に供給する第1の酸化剤の流量は、燃焼室13に供給する全ての酸化剤の流量の合計の40%〜90%の範囲内にするとよい。
これにより、水冷機構を別途設けることなく、バーナ本体11の先端部の損傷を抑制できると共に、被加熱物が酸化されやすい材料である場合でも被加熱物が酸化されることを抑制できる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0065】
例えば、気体燃料噴出口18、第2の酸化剤噴出口19、及び第3の酸化剤噴出口41は、1つのリング状の噴出口で構成してもよい。
【0066】
以下、試験例1〜3について説明する。
【0067】
(試験例1)
試験例1では、実施例1として、
図1に示す気体燃
料バーナ10と、特許文献1に開示された
図3に示す従来のバーナ100と、を用いて2つのバーナの伝熱効率を評価した。
この際、2つのバーナの先端と水冷式伝熱面との距離を150mm、200mm、300mm、400mmとした。
なお、ここでの「伝熱効率」とは、水冷式伝熱面に流す水の流量、該水の入口温度、及び該水の出口温度を測定し、その後、これらの測定値を用いて、下記(1)式から算出した値のことをいう。
伝熱効率=水流量×(出口温度−入口温度)×水の比熱÷(燃料流量×低位発熱量)・・・(1)
【0068】
図3は、特許文献1に開示されたバーナの概略構成を示す断面図である。
ここで、
図3を参照して、従来のバーナ100の構成について説明する。
従来のバーナは、ノズル103,104(2つのノズル)を有する構造となっている。ノズル103,104には、燃料導入部109と、第1の酸素ガス導入部110aと、第2の酸素ガス導入部110bと、燃料チャンバ107と、第1の酸素ガスチャンバ108aと、第2の酸素ガスチャンバ108bと、燃料供給管105と、酸素ガス供給管106と、を有する。
【0069】
バーナ100の中心には、円筒形状とされた第1の酸素ガス導入部110aが配置されており、その外側に円筒形状とされた燃料導入部109が配置されている。また、燃料導入部109の外側には、円筒形状とされた第2の酸素ガス導入部110bが配置されている。
燃料導入部109は、燃料チャンバ107と接続されている。第1の酸素ガス導入部110aは、第1の酸素ガスチャンバ108aと接続されている。
また、第2の酸素ガス導入部110bは、第2の酸素ガスチャンバ108bと接続されている。第1及び第2の酸素ガスチャンバ108a,108bは、連結管を介して、接続されている。
燃料供給管105は、燃料チャンバ107と接続されている。酸素ガス供給管106は、第1の酸素ガスチャンバ108aと接続されている。
【0070】
燃料噴出口111は、燃料導入部109の先端に配置されている。第1の酸素ガス噴出口112aは、第1の酸素ガス導入部110aの先端に配置されている。第2の酸素ガス噴出口112bは、第2の酸素ガス導入部110bの先端に配置されている。
燃料噴出口111の先端、第1の酸素ガス噴出口112aの先端、及び第2の酸素ガス噴出口112bの先端は、同一平面上に配置されている。
燃料噴出口111、第1の酸素ガス噴出口112a、第2の酸素ガス噴出口112bは、それぞれ円筒形状とされており、かつ中心軸が一致するように配置されている。
【0071】
燃料供給管105は、燃料供給源(図示せず)と接続されている。酸素ガス供給管106は、酸素ガス供給源(図示せず)と接続されている。
燃料は、燃料供給管105を介して、燃料チャンバ107に供給される。燃料チャンバ107に供給された燃料は、ノズル103,104の燃料導入部109に供給され、燃料噴出口111から噴出される。
【0072】
酸素ガスは、酸素ガス供給管106を介して、第1の酸素ガスチャンバ108aに供給され、更に連結管を介して、第2の酸素ガスチャンバ108bに供給される。
酸素ガスは、第1の酸素ガスチャンバ108aからノズル103、104の第1の酸素ガス導入管110aを介して、第1の酸素ガス噴出口112aから噴出される。
また、酸素ガスは、第2の酸素ガスチャンバ108bからノズル103、104の第1の酸素ガス導入管110bを介して、第2の酸素ガス噴出口112bから噴出される。
【0073】
ここで、
図1を参照して、実施例1の気体燃
料バーナ10の条件について説明する。
実施例1では、第1の円形面13−1の直径D
1を10mm、燃焼室13の長さLを10mm、角度θ
1を5度、角度θ
2を10度、角度θ
3を15度、第1の酸素の流量:第2の酸素の流量=4:1、第1の酸素(第1の酸化剤)の噴出速度を300m/s、第2の酸素(第2の酸化剤)の噴出速度を40m/s、気体燃料であるメタンの噴出速度を80m/s、第1及び第2の酸素の合計の流量を7.7Nm
3/h、気体燃料であるメタンの流量を3.5Nm
3/hとした。
【0074】
図3に示すバーナ100の条件としては、下記条件を用いた。
バーナ100では、第1の酸素の噴出速度を100m/sとし、第2の酸素の噴出速度を40m/sとし、気体燃料であるメタンの噴出速度を80m/s、第1及び第2の酸素の合計の流量を7.7Nm
3/h、気体燃料であるメタンの流量を3.5Nm
3/hとした。
【0075】
上記条件を用いて、算出した実施例1及び比較例のバーナの先端と水冷式伝熱面との距離と相対伝熱効率との関係を
図4に示す。
図4は、試験例1による実施例1及び比較例のバーナの先端と水冷式伝熱面との距離と相対伝熱効率との関係を示すグラフである。なお、
図4では、バーナの先端と水冷式伝熱面との距離が200mmの相対伝熱効率を1.0として、相対伝熱効率を示している。
【0076】
図4を参照するに、実施例1では、比較例と比較して伝熱効率が高く、特に、バーナの先端と水冷式伝熱面との距離を200mm以下としたときに高い伝熱効率が得られることが確認できた。
【0077】
図1に示す気体燃
料バーナ10と、特許文献1に開示された
図3に示す従来のバーナ100と、を用いて、火炎衝突位置から水冷伝熱面上の半径方向の距離と衝突対流熱流束との関係を調べた。この結果を
図5に示す。
図5は、火炎衝突位置から水冷伝熱面上の半径方向の距離と衝突対流熱流束との関係を示すグラフである。
なお、火炎衝突位置とは、バーナの中心軸と水冷伝熱面との交点のことをいう。
また、衝突対流熱流束とは、単位面積・単位時間あたりに伝わる熱量のことをいう。衝突対流熱流束は、水冷式伝熱盤の水量と、入口と出口との温度差から求められる水冷式伝熱盤に伝わった熱量を伝熱面の面積で割ることにより算出することができる。
【0078】
図5を参照するに、実施例1では、比較例と比較して、火炎の衝突位置の中心付近において非常に高い熱流束を得られることが判った。特に、火炎の衝突位置の中心位置では、約1.6倍の熱流束を得ることができ、これは、被加熱物を急速に加熱できることを意味する。
【0079】
(試験例2)
試験例2では、実施例2として、
図2に示す気体燃
料バーナ40を用いて、先に説明した実施例1と同様な試験を行った。
具体的には、実施例2では、気体燃
料バーナ40を用いた場合において、バーナの先端と水冷式伝熱面との距離を150mm、200mm、300mm、400mmとした際の伝熱効率を調べた。
【0080】
ここで、
図2を参照して、実施例2の気体燃
料バーナ40の条件について説明する。
実施例2では、角度θ
4を10度、第1の酸素(第1の酸化剤)の流量:第2の酸素(第2の酸化剤)の流量:第3の酸素(第3の酸化剤)の流量=8:1:1、第3の酸素の噴出速度を40m/s、第1ないし第3の酸素の合計の流量を7.7Nm
3/hとしたこと以外は、実施例1と同様な条件を用いた。
【0081】
上記条件を用いて、試験例1において説明した相対伝熱効率の算出方法と同様な手法により算出した実施例2のバーナの先端と水冷式伝熱面との距離と相対伝熱効率との関係を
図6に示す。
図6には、実施例1、及び比較例のバーナの先端と水冷式伝熱面との距離と相対伝熱効率との関係も示す。
図6は、実施例1,2及び比較例のバーナの先端と水冷式伝熱面との距離と相対伝熱効率との関係を示すグラフである。なお、
図6では、バーナの先端と水冷式伝熱面との距離が200mmの相対伝熱効率を1.0として、相対伝熱効率を示している。
【0082】
図6を参照するに、実施例2では、実施例1と比較して、250mm以上の距離で高い伝熱効率が得られることが判った。また、バーナの先端からより離れた位置でも高い伝熱効率が得られることが確認できた。
【0083】
(試験例3)
試験例3では、
図2に示す気体燃
料バーナ40を用いて、(第1の酸素の量)/(全ての酸素の量)に対する相対伝熱効率を調べた。このとき、全ての酸素の流量に対する第1の酸素の流量の割合を変えた場合の衝突対流伝熱効率を測定した。全ての酸素の流量から第1の酸素の流量を差し引いた流量を、第1の酸素、及び第3の酸素として供給した。また、第1の酸素の流量と第3の酸素の流量は同じ流量とした。この結果を
図7に示す。
図7は、(第1の酸素の流量)/(全ての酸素の流量)と相対伝熱効率との関係を示すグラフである。
【0084】
図7を参照するに、第1の酸素(第1の酸化剤)の割合を40%以上とすることで、比較例よりも高い伝熱効率を得ることができることが確認できた。
ただし、第1の酸素(第1の酸化剤)の割合が90%を超えると、第2の酸素(第2の酸化剤)及び第3の酸素(第3の酸化剤)の流量が少なくなりすぎるため、実用的な火炎が得られなくなった。これは、保炎効果が低下し、燃料・酸化剤の混合が悪くなることに起因すると推測される。