(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光反射性材料層と光透過性材料層とを積層して構成される表示体であって、前記光透過性材料層が、平均高さ70〜140nmの複数の凸型線状構造、又は平均深さ70〜140nmの複数の凹型線状構造からなり、且つ、その平均周期が250〜400nmの1次元配列された第1領域と、平均高さ70〜140nmの複数の凸型形状体、平均深さ70〜140nmの複数の凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体からなり、且つ、その平均周期が250〜400nmの2次元配列された第2領域からなり、直線偏光子を介して、少なくとも前記第1領域に対応した部分を目視で確認することを特徴とする表示体の真偽判定方法。
前記第1領域における前記凸型線状構造、又は凹型線状構造の配列方向と、前記第2領域における前記凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の2次元配列のうちの一方向とが、互いに平行であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の表示体の真偽判定方法。
記載の表示体。
前記第1領域における複数の凸型線状構造の平均高さが、前記第2領域における複数の凸型形状体の平均高さよりも高い、又は前記第1領域における複数の凹型線状構造の平均深さが、前記第2領域における複数の凹型形状体の平均深さよりも深いことにより、前記第1領域と前記第2領域の反射率が同じであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の表示体の真偽判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の一態様に係る表示体の一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。また
図3は、
図1に示す表示体のIII−III線に沿った断面図である。
図1、
図2及び
図3では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0023】
図1、
図2及び
図3に示す表示体100は、表示部DP1と、表示部DP2と、表示部DP3とを含んでいる。また、この表示体100は、光透過性材料層10と、光反射性材料層11を含んでいる。
図1、
図2及び
図3には、一例として10が光反射性材料層11に対して前面側に位置している場合を描いている。
【0024】
光透過材料層10と光反射性材料層11との界面は、界面部IP1と、界面部IP2と、界面部IP3とを含んでいる。界面部IP1、IP2、及びIP3は、それぞれ、表示部DP1、DP2、及びDP3に対応している。
【0025】
光透過性材料層10の材料としては、例えば、可視光透過性を有する樹脂を使用することができる。特には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、原版を用いた転写により、上記の複数の凸型形状体又は凹型形状体を容易に形成することができる。それゆえ、この場合、複数の凸型形状体又は凹型形状体を原版に高精度に形成しておけば、精密な量産複製品を比較的容易に製造することができる。
【0026】
光透過材料層10は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。光透過材料層10は、樹脂への染料の添加などにより、着色されていてもよい。
【0027】
光反射性材料層11は、光透過材料層10の複数の凸型形状体又は凹型形状体が設けられた主面の少なくとも一部を被覆している。この層を設けることにより、複数の凸型形状体又は凹型形状体に起因した光学効果をより顕著にすることができる。
【0028】
光反射性材料層11の材料としては、例えば、アルミニウム、銀及び金などの金属材料が挙げられる。或いは、光反射性材料層11の材料として、光透過材料層10とは屈折率が異なった誘電体からなる透明材料を用いてもよい。光反射性材料層11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0029】
光反射性材料層11は、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの薄膜形成技術により形成することができる。また、光反射性材料層11の存在する領域を空間的に分布させることにより、この光反射性材料層11の分布を用いて、図柄を表現することもできる。
【0030】
光透過材料層10と光反射性材料層11との界面は、上述した通り、界面部IP1、IP2、及びIP3を含んでいる。以下、これらの構成及び光学効果について説明する。
【0031】
図1及び
図2に示す例では、界面部IP1は、界面部IP2と隣り合って設けられている。
【0032】
界面部IP1は、界面部IP2と界面部IP3と隣り合っている。界面部IP1は、平坦面からなる。界面部IP1は、省略してもよい。
【0033】
界面部IP2は、複数の凸型線状構造又は凹型線状構造が1次元的に配列されている。
図1及び
図2に示す界面部IP2を構成している複数の凸型線状構造又は凹型線状構造は、界面部IP2の格子ベクトルが、X方向と平行となるように設けられている。
【0034】
界面部IP2は、例えば、回折格子パターンを形成している。ここで「回折格子」とは、照明光を照射することにより回折波を生じる構造を意味している。「回折格子」には、以下で例示する複数の凸型線状構造又は凹型線状構造のみならず、ホログラムに記録された干渉縞なども含まれる。
【0035】
界面部IP2は、例えば、一次元的に配列した複数の溝を含んでいる。これら溝の各々は、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。
図1及び
図2に示す例では、界面部IP2は、Y軸に沿って互いに平行に配列された複数の凸型線状構造又は凹型線状構造を含んでいる。
【0036】
図4は
図2の斜視図を示している。
図4に示す例では、Y方向に1次元的に直線状に配列した平均高さH2、平均周期D2の複数の溝を含んでいる。
【0037】
界面部IP2に設けられた複数の凸型線状構造又は凹型線状構造は、例えば偏光分離効果に基づいて、複屈折性を示す。以下、
図1及び
図2に示す構造を例として、この偏光分離効果について説明する。
【0038】
図1及び
図2に示す例では、界面部IP2は、互いに平行な複数の凸型線状構造又は凹型線状構造を含んでいる。以下、この凸型線状構造又は凹型線状構造に対して垂直に振動する偏光をTE偏光と呼び、この溝に対して平行に振動する偏光をTM偏光と呼ぶ。
【0039】
これら複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の周期をdとし、入射光の波長をλとし、その入射角をθ
0とする。このとき、下記式(1)の条件が満たされていれば、界面部IP2は、有効屈折率がn
effである薄膜と同視できる。この有効屈折率n
effは、入射光の偏光方向によって異なり、第1次近似では、それぞれ、下記式(2)及び(3)により表される。
【0040】
dcosθ
0<λ (1)
n
TE={(1−f)n1
2+f×n2
2}
1/2 (2)
n
TM=[n1
2×n2
2/{f×n1
2+(1−f)n2
2}]
1/2 (3)
式中、
n
TEは、TE偏光の有効屈折率、n
TMは、TM偏光の有効屈折率を表す。
n1は、複数の凸型線状構造又は凹型線状構造が設けられた層と接している外界の
屈折率を表す。
n2は、複数の凸型線状構造又は凹型線状構造が設けられた層の屈折率を表す。
fは、周期dに対する各凸型線状構造又は凹型線状構造の幅の比を表す。
【0041】
式(2)及び(3)から分かるように、fが0又は1でない場合には、TE偏光の有効屈折率n
TEとTM偏光の有効屈折率n
TMとは、互いに異なっている。これを「構造性複屈折」と呼ぶ。この構造性複屈折により、上記の複数の凸型線状構造又は凹型線状構造に入射した光は、下記式(4)により表される位相差δを生じる。
【0042】
δ=(n
TE−n
TM)h (4)
式中、hは、複数の凸型線状構造の高さ又は凹型線状構造の深さを表す。式(4)から明らかなように、深さhを調整することにより、所望の位相差δを生じさせることが可能となる。
【0043】
界面部IP2が一次元的に配列した複数の凸型線状構造又は凹型線状構造を備えている場合、その平均周期D2は、200〜500nmの範囲内とすることが好ましく、250〜400nmの範囲内とすることがより好ましい。このような構成を採用すると、入射光として可視光を用いた場合にも、幅広い角度範囲で、上記式(1)の条件を満足させることができる。
【0044】
界面部IP2が一次元的に配列した複数の凸型線状構造又は凹型線状構造を備えている場合、その平均高さ又は平均深さH2は、50〜500nmの範囲内とすることが好ましく、70〜140nmの範囲内とすることがより好ましい。このような構成を採用すると、後述する直線偏光子を介して観察した場合において、直線偏光子の透過軸の向きに応じた明るさの変化がより大きくなる。
【0045】
界面部IP3は、複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体が2次元的に配列されている。
図1及び
図3に示す界面部IP3は、構成している複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれるが、X方向及びY方向に2次元的に配列されて、設けられている。
図1及び
図3に示す例では、界面部IP3は複数の凸型形状体からなるものとする。
【0046】
図5は
図3の斜視図を示している。また
図6は界面部IP3の他の例を示す斜視図である。
図5に示す例では、X方向及びY方向に対して平行に配列されている高さH3、平均周期D3の複数の凸型形状体を含んでいる。
図4に示す界面部IP2の複数の凸型線状構造の配列方向であるY方向と、界面部IP3の複数の凸型形状体の配列方向の内の一方向
であるY方向とが平行となっている。こうすると、後で説明するように、表示体100の真偽判定が容易となる。また、こうすると、界面部IP2及びIP3の各々を構成している複数の凸型形状体又は凹型形状体の設計及び形成が容易となる。
【0047】
図6に示す例では、複数の凸型形状体がX方向及びY方向と45度の角度で交差する直線と平行に、高さH3、平均周期D3で配列されている。こうすると、後で説明するように、表示体100の真偽判定方法が異なり、更に偽造防止効果が高くなる。
【0048】
界面部IP3には、
図1、
図3、
図5及び
図6に示す複数の凸型形状体は、平均周期D3、平均高さH3で形成されている。複数の凸型形状体は、
図1、
図3、
図5及び
図6に示した方向以外の方向に伸長する複数の凸型形状体からなる構造であってもよい。
【0049】
界面部IP3における複数の凸型形状体は、典型的にはテーパ形状を有している。テーパ形状としては、例えば、半紡錘形状、円錐及び角錐などの錐体形状、切頭円錐及び切頭角錐などの切頭錐体形状などが挙げられる。複数の凸型形状体の側面は、傾斜面のみで構成されていてもよく、階段状であってもよい。複数の凸型形状体のテーパ形状は、後述するように、界面部IP3に入射する光の反射率を小さくするのに役立つ。
【0050】
上述したように、複数の凸型形状体は規則的に配列されているため、界面部IP3は回析格子として機能する。具体的には、
図5及び
図6に示す複数の凸型形状体は、溝を点線で示したように配置してなる回折格子とほぼ同様に機能する。
【0051】
また、上述したように、凸型形状体はテーパ形状を有している。このような構造を採用した場合、平均周期D3が十分に短ければ、界面部IP3はZ方向に連続的に変化した屈折率を有していると見なすことができる。そのため、どの角度から観察しても界面部IP3の正反射光についての反射率は小さい。そして、界面部IP3は表示体100の法線方向に回折光を実質的に射出しない。
【0052】
従って、表示体100のうち界面部IP3に対応した部分は、その法線方向から反射観察した場合に、例えば黒色または暗灰色を表示する。なお、ここでの「黒色」は表示体100のうち界面部IP3に対応した部分に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が400〜700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が10%以下であることを意味し、「暗灰色」は表示体100のうち界面部IP3に対応した部分に法線方向から光を照射し、正反射光の強度を測定したときに、波長が可視光の波長である400〜700nmの範囲内にある全ての光成分について反射率が約25%以下であることを意味する。
【0053】
上述のように、界面部IP3は、正面から観察した場合に、黒色または暗灰色を表示する。従って、表示体100のうち表示部DP3に対応した部分は、正面から観察した場合に、例えば黒色又は暗灰色印刷層の如く見える。そして、界面部IP3は、回折格子とほぼ同様に機能するため、回折光が射出される観察角度である場合、界面部IP3は回折光に由来した有彩色を表示する。
【0054】
界面部IP3は、複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の平均周期D3は500nm以下であり、可視光の最短波長以下(例えば400nm以下)であることが好ましい。また、より好ましくは、可視光の最短波長の1/2以上、すなわち200〜400nmの範囲とすることで1次回折光を射出する機能を有し、かつ黒色または暗灰色に見える構造が得られる。平均周期D3を200nm未満に設定した場合には、黒色または暗灰色に見える構造が得られるが、回折光を射出する機能は得られなくなる。一般的には、平均周期D3が小さくなるに伴って明度及び彩度が低下し、より黒い表示
が可能となり、平均周期D3が大きくなるに伴ってやや輝度が上昇し、暗灰色に知覚されるような構造となる。
【0055】
また、平均高さ又は平均深さH3が大きいほうがより黒い表示が可能となり、平均高さ又は平均深さが小さくなるに伴って輝度が上昇し、暗灰色に知覚されるようになる。典型的には平均高さ又は平均深さH3を平均周期D3の1/2以上とすることが望ましい。具体的には、平均周期D3が500nmであった場合、平均高さ又は平均深さH3を250nm以上とすることで暗灰色の表示が可能となり、さらに、平均周期D3よりも大きい500nm以上の平均高さ又は平均深さH3とすることでより黒い表示が可能となる。
【0056】
加えて、界面部IP2における複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の平均高さ又は平均深さH2は、界面部IP3における複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の平均高さ又は平均深さH3よりも高いか又は深く、更に、界面部IP2における複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の平均周期が十分に短い時、界面部IP3と同様に界面部IP2はZ方向に連続的に変化した屈折率を有しているとみなすことができる。そのため、どの角度から観察しても界面部IP2の正反射光についての反射率は小さい。そして、界面部IP2は表示体100の法線方向に回折光を実質的に射出しない。
【0057】
界面部IP2における複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の平均高さ又は平均深さH2と、界面部IP3における複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の平均高さ又は平均深さH3との差は50nm以上であることが好ましい。また、より好ましくは、界面部IP3における複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる平均高さ又は平均深さH3の2倍以上とすることで、より黒色又は暗灰色に見える。
【0058】
上述の構成とすることで、表示体100の表示部DP2及び表示部DP3に対応した部分は、正面から観察した場合に、例えば黒色又は暗灰色印刷層の如く見える。そして、界面部IP2及び界面部IP3は、回折格子とほぼ同様に機能するため、回折光が射出される観察角度である場合、界面部IP2及び界面部IP3は回折光に由来した有彩色を表示する。
【0059】
界面部IP2及び界面部IP3に対して、上述のような構成を採用すると、界面部IP2及び界面部IP3の区別がわかり難くなる。それゆえ、表示体100の偽造がより困難となる。
【0060】
表示体100は、上述した通り、複数の凸型線状構造又は凹型線状構造が1次元的に配列して設けられた界面部IP2と、複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体が、2次元的に配列して設けられた界面部IP3とを備えている。
【0061】
界面部IP2に対応した表示部DP2は、複屈折性を示す。それゆえ、この表示部DP2を直線偏光子を介して観察すると、その直線偏光子の透過軸の向きに応じて明るさが変化する。また、先の説明から明らかな通り、表示部100の法線方向観察時には、黒色又は暗灰色に見える。他方、界面部IP3に対応した表示部DP3は、反射率10%以下を示す。それゆえ、表示部100の界面部IP3に対応する表示部DP3において、法線方向観察時には、黒色又は暗灰色に見える。したがって、表示体100では、直線偏光子を介した観察による真偽判定を行うことができる。
【0062】
加えて、界面部IP2及び界面部IP3は共に回折格子の機能を有している。それゆえ、回折光が射出される観察方向から観察することにより、界面部IP2及び界面部IP3は回折光に由来した有彩色を確認できる。この回折光による有彩色の確認と、上述の直線
偏光子を介した観察による確認とを組み合わせて、2重の真偽判定を行うことができる。それゆえ、この表示体100は、偽造防止効果が高い。
【0063】
表示体100の真偽判定は、上述した通り、直線偏光子を介した観察により行う。より具体的には、表示体100の真偽判定方法は、直線偏光子を介して、少なくとも表示部DP2を観察することを含んでいる。
【0064】
図7は、
図1に示す表示体100を直線偏光子200を介して観察した場合の例を示す平面図である。
図8は、
図1に示す表示体を直線偏光子を介して観察した場合の他の例を示す平面図である。
【0065】
図7に示す直線偏光子200は、X軸に平行な透過軸Tを有している。
図8に示す直線偏光子200は、Y軸に平行な透過軸Tを有している。
【0066】
表示体100と直線偏光子200との配置を
図7に示す関係とした場合、表示部DP2は、直線偏光子200を介して観察すると、表示部DP3と同等の黒色又は暗灰色に見える。表示体100と直線偏光子200との配置を
図8に示す関係とした場合、表示部DP2は、直線偏光子200を介して観察すると、表示部DP3に比べ比較的明るく見える。このように、表示体100の表示部DP2は、直線偏光子200を介して観察すると、直線偏光子の透過軸の向きに応じた明るさの変化を生じる。よって、この明るさの変化の有無を調べることにより、表示体100の真偽を判定できる。
【0067】
直線偏光子200としては、例えば、直線偏光フィルムを用いる。直線偏光子200は、拡散板を更に備えていることが好ましい。この場合、拡散板は、例えば、直線偏光子200の前面、背面、又は両面に貼り合わせて用いる。拡散板を用いると、直線偏光子200を介して表示部DP2を観察した場合に、観察方向の変化に応じた明るさの変化を、より明瞭に視認することが可能となる。
【0068】
表示体100の第2の真偽判定は、上述した通り、回折光を射出する観察方向からの観察により行う。より具体的には、表示体100の第2の真偽判定方法は、回折光を介して、少なくとも表示部DP2を観察することを含んでいる。
【0069】
図9は、
図1に示す表示体100に光源LSから光を入射させ、表示体100の法線方向から観察者OBが反射光RLを観察した場合の例を示す平面図である。また
図10は、
図1に示す表示体100に光源LSから光を入射させ、表示体100の法線方向から観察者OBが反射光RLを観察した場合の他の例を示す平面図である。
図10の表示体100は
図9の表示体100から90度回転して設置されている。
【0070】
上述したように、表示部DP2及び表示部DP3に対応する界面部IP2及び界面部IP3の複数の凸型形状体または凹型形状体の平均高さ又は平均深さを設計することで、表示部DP2及び表示部DP3において、法線方向観察時に黒色又は暗灰色となる。よって、
図9及び
図10においては表示部DP2及び表示部DP3の判別が困難となる。
【0071】
図11は、
図9に示す表示体100において、回折光が観察できる角度で光源LSを入射させ、その回折光を観察者OBが観察した場合の例を示す平面図である。また
図12は、
図10に示す表示体100において回折光が観察できる角度で光源LSを入射させ、その回折光を観察者OBが観察した場合の他の例を示す平面図である。
図12の表示体100は
図11の表示体100から90度回転して設置されている。
【0072】
図11において、表示部DP2を形成している複数の凸型線状構造又は凹型線状構造は
Y方向と平行に1次元的に配列しているため、回折光が観察者OB方向へ射出できず、
図9又は
図10と同様に表示部DP2は黒色又は暗灰色となる。一方、表示部DP3を形成している複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体はX方向とY方向に2次元的に配列しているため、回折光を観察者OB方向へ射出でき、観察者OBは回折光による有彩色を表示部DP3に対応して確認できる。
【0073】
図12において、表示部DP2を形成している複数の凸型線状構造又は凹型線状構造はY方向と平行に1次元的に配列しているため、回折光が観察者OB方向へ射出され、観察者OBは回折光による有彩色を表示部DP2に対応して確認できる。また、表示部DP3においても、表示部DP3を形成している複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体が、X方向とY方向に2次元的に配列しているため、回折光を観察者OB方向へ射出でき、観察者OBは回折光による有彩色を表示部DP3に対応して確認できる。つまり、観察者OBは表示部DP2及び表示部DP3それぞれに対応する回折光の有彩色を確認できる。
【0074】
このように、表示体100の表示部DP2及び表示部DP3は、表示体100の観察方向により回折光の有彩色を確認できる。より具体的には、表示体を90度回転させることにより、表示部DP2に対応する回折光の有彩色が変化するのか調べる。よって、この回折光の有彩色の変化の有無を調べることにより、表示体100の真偽を判定できる。
【0075】
回折光の有彩色の変化の有無を調べる際、
図11及び
図12においては、表示体100を90度回転させている。これは、表示部DP2に対応する界面部IP2の複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の格子ベクトル方向(第1方向)と、表示部DP3に対応する界面部IP3の複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の、配列方向の内の一方向(第2方向)とが平行となっているためである。ここで、第1方向と第2方向が平行ではない時には、表示体100の回転角度が90度とならない。より具体的には、第1方向と第2方向とが45度の角度を為している時、表示体100を45度回転させることで、回折光の有彩色の変化の有無を調べることが可能となる。
【0076】
加えて、表示部DP2を形成する複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の平均周期D2と、表示部DP3を形成する複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる平均周期D3が等しい時には、回折光が観察できる方向において、観察者OBが観察できる回折光の有彩色が表示部DP2及び表示部DP3において同じとなる。一方、表示部DP2を形成する複数の凸型線状構造又は凹型線状構造の平均周期D2と、表示部DP3を形成する複数の凸型形状体、凹型形状体のうち一つ以上から選ばれる形状体の平均周期D3が異なる時には、回折光が観察できる方向において、観察者OBが観察できる回折光の有彩色が表示部DP2と表示部DP3において異なる。
【0077】
以上において説明した表示体100は、界面部IP2においては、複数の凸型線状構造又は凹型線状構造を備え、界面部IP3においては、複数の凸型形状体又は凹型形状体を備えている。それゆえ、これらに対応した構造を有した原版を準備し、これを用いて複製を行うことにより、両者の構成、位置関係及び機能を維持したまま、精密な製造を行うことができる。それゆえ、真正品である表示体100に対する信頼度が高くなり、真偽判定の確実さが増す。
【0078】
なお、表示部DP2及び表示部DP3を複数のセルで構成させ、各セルに含まれる複数の凸型形状体及び凹型形状体の平均周期と、平均高さ又は平均深さを変化させることで、特定の絵柄や文字、記号などの像を表示することが可能となる。さらに、各セルに含まれる複数の凸型形状体及び凹型形状体の平均周期と、平均高さ又は平均深さを変化させることにより、直線偏光子を介して観察した時の像や、回折光の有彩色の変化にバリエーショ
ンを与え、より複雑な像を表示可能となる。
【0079】
次に、表示体100の使用方法について説明する。上述した表示体100は、例えば偽造防止の目的で、接着材、粘着材等を介して、紙製基材にラベルとして貼り付けることができる。上記の通り、表示体100は、それ自体の偽造又は模造が困難である。それ故、このラベルを物品に支持させた場合、真正品であるこのラベル付き物品の偽造又は模造も困難である。
【0080】
図13はラベル付き物品の一例を示す平面図、
図14は
図13のIV−IV線に沿った断面図である。
図13及び
図14には、ラベル付き物品の一例として、チケット300を描いている。このチケット300は、紙製基材30を含んでいる。紙製基材50の一方の面には、印刷層20が形成されている。紙製基材30の印刷層20が形成された面には、上述した表示体100が例えば接着層40を介して固定されている。表示体100は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層20に貼りつけることにより、紙製基材30に固定する。このチケット300は、表示体100を含んでいる。
【0081】
すなわち、本発明の表示体の機能を有するラベルを物品に貼合したラベル付き物品は、第1領域の直線偏光子の透過軸の向きに応じた明るさの変化を観察することができ、固定位置での観察よる真偽判定ができる。また、前記ラベル付き物品を傾けることで、第2領域の回折光を介して観察される有彩色による真偽判定ができる。
【0082】
なお、接着層40の材料としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、及び、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系又はポリイソブチル系のものが挙げられる。
【0083】
接着層30は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布法により形成することができる。接着層30は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0084】
なお、
図13及び
図14には、表示体100を含んだ物品としてチケットを例示しているが、表示体100を含んだ物品は、これに限られない。例えば、表示体100を含んだ物品は、IC(集積回路:integrated circuit)カード、無線カード及びID(身分証明:identification)カードなどのカード類であってもよい。或いは、表示体100を含んだ物品はプラスチック紙幣や切手などであってもよい。或いは、表示体100を含んだ物品は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体100を含んだ物品は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0085】
また、
図13及び
図14に示すチケット300では、表示体100を、印刷層20を介して紙製基材30に貼り付けているが、表示体100は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材の内部に表示体100を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体100を固定してもよい。
【0086】
更に、表示体100は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体100は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0087】
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0088】
PETフィルムに、紫外線硬化性樹脂をグラビアロールコーターで塗工し、凹凸構造形成用フィルムとした。
【0089】
次に、複製に用いる母型として、平均周期400nm、平均高さ200nmの複数の凸型線状構造が1次元的に配列している第1領域と、平均周期400nm、平均高さ150nmの複数の凸型形状体が2次元的に配列している第2領域を複数形成して絵柄を表現した金属版を作製した。
【0090】
次に、紫外線硬化性樹脂を金属版に押し当て、メタルハライドランプによる紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂硬化後、金属版を剥離することにより凹凸構造を形成した。その後、凹凸構造上に真空蒸着法によってアルミニウムを蒸着させ光反射性材料層を設けた。
【0091】
前記光反射性材料層に接着剤をグラビアロールコーターで塗工し、その後、紙基材に転写し、PETフィルムを剥離することで、表示体を得た。
【0092】
上記のようにして得られた表示体は、通常の照明光下では、前記第1領域と前記第2領域共に暗灰色に見えることを目視確認できた。また、前記第1領域は、直線偏光フィルムを表示体の直近に配し、且つ前記直線偏光フィルムを回転させることにより、前記第一領域からなる潜像の出現と消失を目視確認できた。
【0093】
また、得られた表示体を回折光が目視観察できる角度まで傾け、前記第2領域より回折光を目視確認できた。加えて、その傾き角度を固定したまま表示体を回転させることにより、前記第1領域の回折光からなる有彩色の出現と消失を目視で確認できた。