(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の半導体層と前記ベース層との間に、膜厚方向に沿って互いに離間して配置された複数の前記介在層を備え、前記介在層同士間に不純物濃度が前記第1の半導体層と同等以下の第2導電型の中間半導体層が配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記第1の半導体層と前記ベース層との間に、膜厚方向に沿って互いに離間して複数の前記介在層を形成し、前記介在層同士間に不純物濃度が前記第1の半導体層と同等以下の第2導電型の中間半導体層を形成することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
本発明の実施形態に係る半導体装置1は、
図1に示すように、第1導電型のコレクタ層11と、コレクタ層11上に配置された第2導電型の第1の半導体層13と、不純物濃度が第1の半導体層13よりも高く、第1の半導体層13上に接して配置された第2導電型の介在層14と、第1の半導体層13と対向して介在層14上に配置された、不純物濃度が第1の半導体層13と同等以下の第2導電型の第2の半導体層15と、第2の半導体層15上に接して配置された第1導電型のベース層16と、ベース層16の上面の一部に埋め込まれた第2導電型のエミッタ領域17とを備える。
図1に示したように、介在層14とベース層16とが離間して配置されている。以下では、第1導電型がP型、第2導電型がN型として説明する。
【0014】
なお、後述するように、介在層14は例えば以下のように形成される。即ち、介在層14を配置する領域に不純物イオンを注入した後に、第2の半導体層15を形成する工程又はそれ以後の工程において、不純物イオンが熱拡散されて介在層14が形成される。このため、介在層14の不純物濃度は、膜厚方向の両側、即ち第1の半導体層13に隣接する領域と第2の半導体層15に隣接する領域よりも、中心領域で高い。例えば、介在層14の中心領域の不純物濃度は1×10
14〜1×10
16(/cm
3)であり、介在層14の両側の不純物濃度は1×10
13〜1×10
15(/cm
3)である。介在層14の膜厚は数μm程度である。
【0015】
半導体装置1は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)であり、
図1に示した例は、トレンチゲート構造である。即ち、エミッタ領域17の上面から延伸し、少なくともエミッタ領域17及びベース層16を貫通する溝が形成され、溝の内壁上に配置されたゲート絶縁膜18と、ゲート絶縁膜18を介して溝の内部に埋め込まれたゲート電極19とを備える。つまり、ゲート電極19は、ゲート絶縁膜18を介してベース層16と対向している。ゲート電極19と対向するベース層16の表面がチャネル領域20である。
【0016】
図1の半導体装置1では、コレクタ層11と第1の半導体層13間に、バッファ層12が配置されている。バッファ層12が配置された面と対向するコレクタ層11の面に、コレクタ電極10が配置されている。また、ゲート電極19の上面には層間絶縁膜25が配置され、層間絶縁膜25上にエミッタ領域17とベース層16に接続するエミッタ電極30が配置されている。
【0017】
半導体装置1の動作について説明する。エミッタ電極30とコレクタ電極10間に所定のコレクタ電圧を印加し、エミッタ電極30とゲート電極19間に所定のゲート電圧を印加する。例えば、コレクタ電圧は300V〜1600V程度、ゲート電圧は10V〜20V程度である。このようにして半導体装置1をオン状態にすると、チャネル領域20がP型からN型に反転してチャネルが形成される。形成されたチャネルを通過して、エミッタ電極30から第2の半導体層15、介在層14を経由して電子が第1の半導体層13に注入される。この注入された電子により、コレクタ層11と第1の半導体層13との間が順バイアスされ、コレクタ電極10からコレクタ層11、バッファ層12を経由して正孔(ホール)が第1の半導体層13、介在層14、第2の半導体層15、ベース層16の順に移動する。更に電流を増やしていくと、コレクタ層11からの正孔が増加し、ベース層16の下方に正孔が蓄積される。この結果、伝導度変調によってオン抵抗が低下する。
【0018】
半導体装置1では、第1の半導体層13とベース層16との間に、第1の半導体層13よりも不純物濃度が高い介在層14が配置されている。このため、コレクタ層11から移動してきた正孔がベース層16に流れ込むことが介在層14によって制限される。そして、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍の第1の半導体層13に多くの正孔が蓄積される。その結果、半導体装置1では、コレクタ層11とベース層16間のドリフト領域における正孔の濃度が高くなり、オン抵抗が更に低下するという効果を奏する。
【0019】
半導体装置1がオン状態からオフ状態になる場合には、ゲート電圧をエミッタ電圧と同じ接地電位又は逆バイアスとなるように制御してチャネル領域20を消滅させる。これにより、エミッタ電極30から第1の半導体層13への電子の注入が停止し、コレクタ層11から第1の半導体層13への正孔の注入も停止する。コレクタ電極10の電位がエミッタ電極30よりも高いので、ベース層16と第2の半導体層15との界面から空乏層が広がっていくと共に、第1の半導体層13に蓄積された正孔はエミッタ電極30に抜けていく。
【0020】
半導体装置1では、介在層14をベース層16から離間して配置することにより、コレクタ層11からベース層16に移動する正孔がベース層16に到達し難い。このため、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍における正孔の蓄積効果を高めることができる。
【0021】
また、ゲート電極19が埋め込まれた溝の底部付近の第2の半導体層15の領域はコレクタ層11から移動する正孔が蓄積しやすい。このため、介在層14をベース層16と離間して配置することにより、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍、及び溝の底部近傍といったように、複数の場所で正孔を蓄積することができる。その結果、よりオン抵抗を低減することができる。
【0022】
なお、一般的に、トレンチゲート構造のIGBTでは、空乏層が溝の底部よりも下まで広がると、溝の底部の角部が耐圧的に弱い箇所である。しかし、半導体装置1では、介在層14の上面が、溝の底部よりも下方に位置している。つまり、介在層14よりも不純物濃度の低い第2の半導体層15内に溝の底部が位置しており、介在層14内に溝の底部が位置している場合よりも、溝の底部近傍の空乏層が広がりやすい。このため、ゲート絶縁膜18の破壊が抑制され、耐圧を向上することができる。
【0023】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る半導体装置1では、隣接する第1の半導体層13よりも不純物濃度が高い介在層14が、ベース層16と離間して配置されている。このため、介在層14が障壁となってコレクタ層11から移動した正孔がベース層16に到達し難くなり、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍に正孔が蓄積しやすい。その結果、耐圧の低下を抑制しつつ、オン抵抗を低減できる。したがって、半導体装置1によれば、コレクタ層11とベース層16間に正孔を蓄積することによってオン抵抗を低減できる半導体装置を実現できる。
【0024】
図2〜
図6を用いて、本発明の実施形態に係る半導体装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0025】
図2に示すように、p
+型のシリコン基板などのコレクタ層11上に、n
+型のバッファ層12とn
-型の第1の半導体層13をエピタキシャル成長により、順次形成する。
【0026】
第1の半導体層13の上面の一部に選択的にN型不純物をイオン注入する。具体的には、後述する活性部(セル領域)の外周側と活性部の角部を除いて、活性部となる領域のほぼ全面にN型不純物をイオン注入する。その後、n
-型の第2の半導体層15を第1の半導体層13上に積層する。第2の半導体層15及び/又はその後の層を形成する熱処理時の熱拡散によって、
図3に示すように、n
+型の介在層14が形成される。介在層14の不純物源としては、比較的高速移動の不純物源としてのリン(P)を使用してもよいし、比較的低速移動の不純物源としてのヒ素(As)を使用してもよい。ヒ素を不純物源とした場合には、膜厚が薄くて高不純物濃度の介在層14を形成できる。或いは、リンとヒ素の両方を不純物源とする2重拡散によって介在層14を形成してもよい。
【0027】
図4に示すように、第2の半導体層15上にP型のベース層16を形成する。例えば、エピタキシャル成長法、又はイオン注入法と拡散を用いて、ベース層16が形成される。次いで、
図5に示すように、ベース層16の上面の一部に、例えばイオン注入法と拡散を用いてn
+型のエミッタ領域17を形成する。
【0028】
フォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、エミッタ領域17上に開口部を有するマスクを用いて、エミッタ領域17とベース層16を貫通して、第2の半導体層15に到達する溝を形成する。そして、溝の内壁にゲート絶縁膜18を形成する。例えば、酸化シリコン(SiO
2)膜を熱酸化法で形成する。その後、不純物を添加したポリシリコン膜を溝の内部に埋め込む。その後、化学機械研磨(CMP)などの研磨工程によって、
図6に示すようにベース層16の表面を平坦化してゲート電極19を形成する。
【0029】
ゲート電極19上に層間絶縁膜25を形成した後、エミッタ領域17とベース層16に接続するエミッタ電極30を層間絶縁膜25上に形成する。そして、コレクタ層11の裏面にコレクタ電極10を形成することにより、
図1に示した半導体装置1が完成する。
【0030】
上記では、第2の半導体層15の形成と同時に介在層14を形成する方法を説明した。しかし、第2の半導体層15を形成する工程よりも後の工程で、第1の半導体層13にイオン注入された不純物を拡散させて第1の半導体層13と第2の半導体層15の間に介在層14を形成してもよい。
【0031】
また、既存の埋め込み層の形成方法や、エピタキシャル成長法、プロトンのドナー化の方法を用いて、介在層14を形成してもよい。例えば、エミッタ電極30を形成した後、コレクタ電極10を形成する前にプロトンを打ち込み、ドナー化することで介在層14を形成する。
【0032】
半導体装置1では、介在層14を第1の半導体層13と第2の半導体層15間の埋め込み層として形成する。これに対し、特許文献1で示すように、介在層14を、ベース領域をイオン注入で形成する主面と同じ半導体基板の上面にイオン注入した直後にドライブ拡散することで形成する方法がある。しかし、介在層14をベース領域を形成する主面と同じ主面にイオン注入して形成する方法では、不純物濃度分布が半導体基板の膜厚方向に正規分布となり、半導体基板の上面側の不純物濃度が高く、膜厚方向に不純物濃度が低くなっていく。介在層14がこのような不純物濃度分布を有し、ベース層側の不純物濃度が高く、コレクタ層側の不純物密度が低い場合には、介在層14の底部と第1の半導体層13の上部との不純物濃度の差が小さく、半導体装置1がオン状態の時にコレクタ層11から移動してきた正孔を介在層14と第1の半導体層13との界面近傍に蓄積する効果が十分に発揮されない。その結果、オン抵抗の低下は不十分である。
【0033】
また、特許文献1に記載の方法で正孔の蓄積量を多くするために介在層14の底部のN型不純物濃度を高くするためには、介在層14を形成した段階で半導体基板の上面の不純物濃度を高くする必要がある。このため、後工程のP型のベース層16を形成する際に、半導体基板上面側のベース層16を形成する領域がP型に反転し難く、良好なデバイス特性が得られないおそれがある。
【0034】
しかし、上記に説明したように半導体装置1では、埋め込み層として形成するのと同様な方法により介在層14が形成される。このため、ベース領域をイオン注入で形成する主面と同じ半導体基板の上面からイオン注入により介在層14を形成する場合と比べて、介在層14の不純物濃度を高く設定し、更に良好なデバイス特性が得られるようにベース層16の不純物濃度を決定することができる。
【0035】
半導体装置1を上方から見た例を
図7に示す。
図7では、エミッタ電極30及び層間絶縁膜25の図示を省略している(以下の平面図において同様。)。
図1は
図7のI−I方向に沿った断面図である。
図7に示すように、一般的にベース層16とエミッタ領域17は、ゲート電極19が埋め込まれた溝に沿って形成されている。介在層14は、活性領域が形成されるセル領域の外周側と外周の角部を除く全面に形成される。
【0036】
また、
図8の平面図に示すように、半導体装置1を上面から見て、溝の延伸方向に沿ってベース層16とエミッタ領域17が交互に配置されていてもよい。
<変形例>
図1に示した半導体装置1は、バッファ層12がコレクタ層11と第1の半導体層13間に配置されている。しかし、
図9に示すように、バッファ層12は配置しなくてもよい。
【0037】
ただし、バッファ層12を配置することにより、コレクタ層11から第1の半導体層13に正孔が移動することを、ある程度制御することができる。つまり、介在層14との界面近傍で第1の半導体層13に蓄積される正孔の量を調整することができる。更に、バッファ層12を配置することによって、半導体装置1のゲート・エミッタ間に接地電位又は逆バイアスが印加されて空乏層が生じたときに、空乏層がバッファ層12を超えてコレクタ層11に達することを防止することができる。
【0038】
また、
図1では、ゲート電極19が埋め込まれた溝の底部よりも介在層14の上面が下方に位置する例を示した。しかし、
図10に示すように、底部が介在層14に達するように溝を形成することもできる。ただし、既に述べたように、ゲート絶縁膜18の破壊を抑制し、半導体装置1の耐圧を向上させるためには、介在層14の上面が溝の底部よりも下方に位置するほうが好ましい。
【0039】
図11に示すように、第1の半導体層13とベース層16との間に、複数の介在層14が膜厚方向に沿って互いに離間して配置されていてもよい。介在層14同士間には、第2導電型の中間半導体層15aが配置されている。中間半導体層15aの不純物濃度は、第1の半導体層13と同等以下であり、例えば第2の半導体層15と同等の不純物濃度である。
【0040】
このため、
図11に示した半導体装置1では、膜厚方向に沿って介在層14と介在層14よりも不純物濃度の低い中間半導体層15aが交互に配置されることになり、コレクタ層11から移動してきた正孔が蓄積される場所が増える。このため、耐圧の低下を抑制しながら、よりオン抵抗を低くすることができる。
【0041】
介在層14を複数配置する場合には、ベース層16に近い側の中間半導体層15aほど不純物濃度を低くする。又は、コレクタ層11に近い側の介在層14ほど不純物濃度を高くすることが好ましい。これにより、バッファ層12におけるベース層16との界面からの空乏層が良好に広がる。その結果、耐圧が高く、且つ、オン抵抗をより低くすることができる。
【0042】
介在層14は、ベース層16のエミッタ領域17で挟まれた領域の直下に少なくとも配置する。この領域を通過することが、コレクタ層11からエミッタ電極30へと移動する正孔の移動距離が最短なためである。このため、
図12に示すように、ゲート電極19が埋め込まれた溝の直下及びその近傍の領域での介在層14の膜厚を、上記ベース層16のエミッタ領域17で挟まれた領域直下よりも薄くしてもよい。或いは、
図13に示すように、溝の直下及びその近傍には介在層14が配置しなくてもよい。
【0043】
溝近傍に広がる空乏層は溝から近く耐圧の弱い部分である。しかし、その近傍において介在層14の膜厚を薄くしたり、介在層14を配置しないことによって、溝直下及びその近傍において空乏層がより広がり易くなり、耐圧の低下を抑制できる。このとき、正孔の移動距離が最短であるエミッタ領域17で挟まれた領域直下に介在層14が配置されていることにより、正孔の蓄積効果を得ることができる。
【0044】
なお、溝の延伸方向に沿ってベース層16とエミッタ領域17が交互に配置されている場合には、
図14に示すように半導体装置1を上面から見て、介在層14の外縁が少なくともエミッタ電極30と接するベース層16の部分の外縁を取り囲むように、介在層14が形成されることが好ましい。つまり、エミッタ電極30と接しているベース層16の部分よりも介在層14が広く形成されていることが、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍に正孔を蓄積する点で好ましい。
【0045】
図13は
図14のXIII−XIII方向に沿った断面図であり、
図14のXIV−XIV方向に沿った断面図を
図15に示す。なお、セル領域の外周側とセル領域の角部と外周領域を除く全面に介在層14を形成することが更に好ましい。
【0046】
図16に示すように、IGBT100は回生ダイオード200と並列接続されて使用されることが多い。このとき、IGBT100のエミッタ電極30と回生ダイオード200のP型半導体が電気的に接続され、IGBT100のコレクタ電極10と回生ダイオード200のN型半導体が電気的に接続される。
【0047】
しかし、
図17に示すように、コレクタ層11の一部を膜厚方向に貫通する第2導電型領域110を配置することにより、半導体装置1の外部に回生ダイオードを接続する必要がなくなる。このとき、第2導電型領域110は、エミッタ領域17間の直下に配置することが好ましい。また、バッファ層12は配置しない。
【0048】
図17に示した半導体装置1では、第2導電型領域110、第1の半導体層13、介在層14及び第2の半導体層15が連続するN型領域であり、このN型領域と接するP型のベース層16とによってダイオードが形成される。つまり、
図17に示した半導体装置1は回生ダイオードを内蔵した構成であり、回生ダイオードを外付けする必要がない。これにより、IGBTと回生ダイオードを並列したデバイスを1チップ化することができる。
【0049】
図18は、複数のIGBTが配置された半導体装置1の平面図であり、
図18のI−I方向に沿った断面図が
図1である。
図18に実線で示した180はゲート電極19が埋め込まれた溝(以下において、「ゲート溝」という。)の位置を示し、190はゲートパッド電極である。ゲート溝180は、既に説明したように、内壁にゲート絶縁膜18が形成され、内部をゲート電極19となる導電体で埋め込んだ構造である。
図18の破線140は、介在層14の外縁を示す。
【0050】
図18に示すように複数のゲート溝180が平行に配置され、ゲート溝180の各端部は、ゲート溝180の延伸方向と垂直に延伸する接続溝181と接続している。更に、ゲート溝180と平行に延伸する接続溝181が、最外周のゲート溝180とチップ外縁との間に配置され、ゲート溝180と平行な接続溝181と垂直な接続溝181とは互いの端部で接続されている。つまり、導電体が埋め込まれた接続溝181がセル領域を囲むように形成されている。なお、接続溝181内の導電体とゲート溝180内の導電体とは接続している。接続溝181はセル領域のゲート溝180と同じ形成工程で形成され、ゲート溝180と同じ幅・同じ深さで形成されてもよい。しかし、ゲートバスラインと接続溝181を接続するための領域を接続溝181の上面に確保するために、接続溝181の幅をゲート溝180の幅よりも広くしてもよい。接続溝181の周囲にはゲート溝180とは異なり、誤動作を防止するためにエミッタ領域17が配置されないことが好ましいが、接続溝181の上方側壁にエミッタ領域17が配置されていてもよい。ゲートパッド電極190の下にはゲート溝180及び接続溝181は配置されない。
【0051】
図18に示すように、上面から見て、介在層14は接続溝181よりも内側に形成されている。つまり、半導体装置1の角部に対応する介在層14の領域において、ゲート溝180と垂直な方向に関して、少なくとも接続溝181よりも内側に介在層14が配置されている。そして、ゲート溝180に平行な方向に関しても、ゲート溝180と垂直な方向におけるチップ外縁から介在層14の外縁までの距離と少なくとも同じ距離だけチップ外縁から離れて、接続溝181よりも内側に介在層14の外縁が配置されている。つまり、チップの角部から2
1/2×{(チップ端から接続溝181までの距離)+(接続溝181から内側に入っている距離)+(ゲート溝180のα本の溝間隔)}の距離には、介在層14が形成されていない。ここで、αは介在層14の外縁よりも外側に配置されたゲート溝180の数であり、αは1以上である。
【0052】
介在層14を有する半導体装置1の外周構造を示す断面図を
図19に示す。
図19は、
図18のXIX−XIX方向に沿った断面図である。介在層14は、既に述べたように、接続溝181よりセル領域101の中心側(チップの内側)に形成されており、接続溝181の下方及び接続溝181より外側の外周領域102には介在層14が形成されておらず、第1の半導体層13と第2の半導体層15が接している。
【0053】
セル領域101のゲート溝180間の距離は3μm〜5μm程度である。耐圧を確保するために外周領域102の幅は70μm〜80μm程度が必要である。このため、外周領域102の幅は、セル領域101におけるゲート溝180間の距離の10倍以上を必要とする。
【0054】
セル領域101でのベース層16のゲート溝180間の領域はエミッタ領域17及びベース層16と電気的に接続している。このため、半導体装置1がオフしてP型のベース層16とN型の第2の半導体層15との界面から空乏層が広がった際に、セル領域101において第1の半導体層13と介在層14との界面近傍に蓄積された正孔は、ベース層16に接触するエミッタ電極30へと比較的容易に移動することができる。しかし、外周領域102はセル領域101でのゲート溝180間の間隔よりも十分長く、且つ正孔の移動先であるエミッタ電極30とベース層16が接触した領域までの距離がセル領域101に比べてかなり長い。このため、もし外周領域102に介在層14が存在すると、オン時に第1の半導体層13と介在層14との界面近傍に蓄積された正孔が、オフ時に近くのエミッタ電極30に到達することは比較的困難である。その結果、外周領域102に残存する正孔によって誤動作や耐圧の低下を招いてしまう。したがって、接続溝181の外周側まで延びているベース層16はエミッタ電極30と接続溝181より外側の外周領域102でも電気的に接続していることが好ましく、更に接続溝181を含む領域よりも外側に介在層14を形成しないことが好ましい。
【0055】
図19は、ベース層16に接続したP型のリサーフ領域161が、外周領域102に配置された構造を示した。リサーフ領域161の不純物濃度は1×10
14〜5×10
15(/cm
3)程度であり、ベース層16の不純物濃度である1×10
17〜1×10
18(/cm
3)よりも低い。なお、リサーフ領域161の他に、ベース層16よりも深く上面の不純物濃度が5×10
17〜5×10
18(/cm
3)のフィールド・リミッティング・リング(Field Limiting Ring:FLR)や周知のフィールドプレートを外周領域102に設けてもよい。なお、リサーフ領域161、FLR及びフィールドプレートのいずれかを組み合わせてもよい。
【0056】
図19に示した例では、半導体基板の端部にN型のチャネルストッパ領域162が形成されている。チャネルストッパ領域162の上面の不純物濃度は第2の半導体層15の不純物濃度よりも高く、例えば2×10
16(/cm
3)である。チャネルストッパ領域162は、その幅がゲート溝180の間隔よりも広く且つベース層16よりも深くまで形成されていることが好ましい。チャネルストッパ領域162と第2の半導体層15との界面近傍で空乏層が曲げられるが、チャネルストッパ領域162がゲート溝180の間隔よりも広く且つベース層16よりも深くまで形成されている場合には、ダイシングラインである半導体基板側面に空乏層が達することはなく、外周領域102の耐圧を十分確保することができる。チャネルストッパ領域162上には、コレクタ電極10と電気的に接続されたチャネルストッパ電極163が配置されている。
【0057】
ゲートパッド電極190を含む断面で切断した場合を
図20に示す。
図20は、
図18のXX−XX方向に沿った断面図である。
図19の外周領域102と同じく、接続溝181の外周側まで延びているベース層16は、接続溝181より外側の外周部でもエミッタ電極30と電気的に接続していることが好ましく、更にゲートパッド電極190直下及び接続溝181を含む領域よりも外側に介在層14を形成しないことが好ましい。なお、ベース層16がゲートパッド電極190の下方を超えて半導体基板の端部側へと延伸している。そして、ゲートパッド電極190の半導体基板の側壁側では、ゲートパッド電極190と離間し、エミッタ電極30と電気的に接続する補助電極300がベース層16と接続している。補助電極300がベース層16と接続することで、半導体装置1のオフ時に、第1の半導体層13と介在層14との界面近傍に蓄積されて外周領域102に残存する正孔がベース層16を通って補助電極300に移動することができる。このため、半導体装置1のオフ時に、外周領域102に残存する正孔が減少し、半導体装置1の誤動作を抑制することができる。
【0058】
ベース層16の半導体基板端部側にベース層16と接続したリサーフ領域161が形成され、リサーフ領域161と離間して半導体基板端部にチャネルストッパ領域162が形成されている。先に述べたように、チャネルストッパ領域162はベース層16よりも深くまで形成されていることが好ましい。なお、リサーフ領域161の他に、ベース層16よりも深く上面の不純物濃度が5×10
17〜5×10
18(/cm
3)のFLRやフィールドプレートを外周領域102に配置してもよいし、これらのいずれかを組み合わせてもよい。
【0059】
なお、セル領域101には介在層14が一様に配置されていることが好ましい。面法線方向からみて介在層14が互いに離間して、例えば島状に配置されている場合には、介在層14が配置されていない領域を正孔が移動して、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍に正孔が良好に蓄積し難い。このため、活性領域には介在層14が一様に配置されていることが好ましい。
【0060】
半導体装置1では、埋め込み層の形成と同様の方法で介在層14が形成されるため、既存のマスク技術を使用すれば、セル領域101に介在層14を一様に形成し、且つ、セル領域101の周囲を囲む外周領域102には介在層14を形成しないようにすることができる。
【0061】
図21、
図22に示すように、コレクタ層11とバッファ層12とのPN界面(バッファ層12がない場合は、コレクタ層11と第1の半導体層13とのPN界面)の近傍に結晶欠陥層40を設けてもよい。
図21は
図18のXIX−XIX方向に沿った断面図であり、
図22は
図18のXX−XX方向に沿った断面図である。「結晶欠陥層」とは、水素(H)やヘリウム(He)などの軽元素や電子線を注入することによって結晶欠陥が多く導入された層である。
【0062】
結晶欠陥層40はセル領域101と外周領域102の両方に一様に配置されていることが好ましい。しかし、
図21、
図22に示したように、結晶欠陥層40の底面の位置が、介在層14よりも外側においてはコレクタ層11に近くなるように配置することが好ましい。
【0063】
例えば、結晶欠陥層40は、介在層14が配置された領域ではN型のバッファ層12(或いは第1の半導体層13)中に形成され、介在層14が配置されていない領域ではP型のコレクタ層11中に形成される。つまり、セル領域101における結晶欠陥層40の底面は、外周領域102における結晶欠陥層40の底面よりも、基板表面から浅い位置に形成されている。例えば、
図21、
図22に示したように、エミッタ電極30の端部の位置を結晶欠陥層40の深さが変化する位置に合わせてもよい。
【0064】
結晶欠陥層40中においては正孔の寿命が短くなるため、結晶欠陥層40の存在によって第1の半導体層13などへの正孔の移動は影響を受ける。この際、結晶欠陥層40の位置する深さによってその影響は異なる。例えば、結晶欠陥層40がバッファ層12中に形成された場合には、コレクタ層11とバッファ層12のPN界面から注入された正孔は、結晶欠陥層40にトラップされる。ただし、正孔はコレクタ層11からバッファ層12に拡散によって注入されるため、このPN界面に近いほど正孔の濃度が高い。したがって、結晶欠陥層40がコレクタ層11とバッファ層12のPN界面に近い位置に形成されるほど、正孔の注入量が減少する。
【0065】
一方、コレクタ層11中に結晶欠陥層40が形成された場合、結晶欠陥層40においては注入されるべき正孔の数は少ない。したがって、コレクタ層11中に形成した場合にも、結晶欠陥層40は正孔注入量に影響を及ぼす。例えば、結晶欠陥層40が、コレクタ層11とバッファ層12のPN界面から離れた位置でコレクタ層11中に形成された場合には、PN界面に近い結晶欠陥のないコレクタ層11の正孔に対する影響が結晶欠陥層40よりも大きい。このため、結晶欠陥層40がPN界面から離れるほど、正孔注入量は多い。即ち、結晶欠陥層40がバッファ層12中に形成された場合とはメカニズムが異なるが、結晶欠陥層40のPN界面からの距離に応じた正孔注入量の変化は、結晶欠陥層40がコレクタ層11中に形成された場合と結晶欠陥層40がバッファ層12中に形成された場合とで同様である。結晶欠陥層40がPN界面に近い位置に形成される場合には正孔注入量が少なく、PN界面から離れると正孔注入量は多い。
【0066】
ただし、既に述べたように、結晶欠陥層40がバッファ層12中に形成された場合とコレクタ層11中に形成された場合とでは、結晶欠陥層40が正孔注入量に与える影響のメカニズムが異なる。このため、正孔注入量が最も少なくなる結晶欠陥層40の位置はPN界面と一致せず、その位置は素子構造、特にコレクタ層11の不純物濃度に依存する。実験的には、コレクタ層11のP型不純物濃度が高いほど、正孔注入量が最も少なくなる結晶欠陥層40の位置は浅くなる傾向がある。
【0067】
したがって、結晶欠陥層40がセル領域101ではバッファ層12(バッファ層12を形成しない場合は第1の半導体層13)中に形成され、外周領域102ではコレクタ層11中に形成されている場合は、正孔注入量に対する結晶欠陥層40の影響は外周領域102においてより大きい。即ち、コレクタ層11からバッファ層12に注入される正孔は、外周領域102において少ない。
【0068】
正孔注入量は、半導体装置1のオン抵抗を低下させることに寄与する一方で、スイッチング速度の低下の原因ともなる。この際、オン抵抗の低下に寄与する、即ち動作電流を大きくすることに寄与するのは、主にセル領域101において注入された正孔であり、外周領域102において注入された正孔が動作電流の増大に寄与する割合は小さい。一方、外周領域102において注入された正孔がオフ時に残留していると、半導体装置1に流れる電流が減衰しにくく、電流の時間変化は裾を引いた波形になる。即ち、スイッチング時間が長くなる。
【0069】
したがって、外周領域102における正孔注入量をセル領域101よりも少なくすることにより、オン抵抗を低く保ったままで、スイッチング速度を速めることができる。このため、上記に述べたように、介在層14よりも外側においてはコレクタ層11に近くなるように結晶欠陥層40を配置することが好ましい。
【0070】
上記ではセル領域101における結晶欠陥層40がバッファ層12のPN界面近傍に形成され、外周領域102における結晶欠陥層40がコレクタ層11中に形成された例を示した。しかし、結晶欠陥層40の位置は上記に限られることはなく、外周領域102における結晶欠陥層40の位置での正孔注入量が、セル領域101における結晶欠陥層40の位置での正孔注入量よりも少ないように結晶欠陥層40を配置すればよい。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
既に述べた実施形態の説明においては、半導体装置1がトレンチゲート構造である例を示した。しかし、半導体装置1がプレーナ構造である場合にも、本発明は適用可能である。
図23に、プレーナ構造の半導体装置1の一例を示した。
図23に示した半導体装置1では、ゲート絶縁膜18を介してゲート電極19がベース層16上に配置されている。ゲート電極19とエミッタ電極30間には層間絶縁膜25が配置されている。ゲート電極19とゲート絶縁膜18を介して対向するベース層16の表面がチャネル領域20である。
【0072】
図23に示したプレーナ構造の半導体装置1の場合にも、介在層14をベース層16から離し、介在層14とベース層16との間に不純物濃度が第1の半導体層13と同等以下の第2の半導体層15を配置することにより、コレクタ層11から移動する正孔がベース層16に到達し難い。このため、介在層14と第1の半導体層13との界面近傍における正孔の蓄積効果を高めることができる。
【0073】
プレーナ構造型において、外周領域102にベース層16よりも深く上面の不純物濃度が5×10
17〜5×10
18(/cm
3)のFLR170を形成した例を
図24に示す。最外のベース層16は、外周領域102のセル領域101に最近接の、最外のベース層16よりも十分深いFLR170と接続している。そして、最外のベース層16は、エミッタ電極30と電気的に接続している。また、セル領域101の最外のベース層16にはエミッタ領域17が形成されていないことが好ましい。これは、オフ時に外周領域102に蓄積された正孔が、セル領域101の最も外側で半導体基板と接続されたエミッタ電極30の部分に集中して移動してくる際に、エミッタ領域17が存在することに起因してエミッタ領域17下を正孔が移動することにより寄生トランジスタ効果を生じて誤動作することを、防止することが可能性であるためである。特に、介在層14はドリフト領域である第1の半導体層13と介在層14との界面近傍に正孔を蓄積させるために設けられている。このため、介在層14を設けた半導体装置1はドリフト領域により多くの正孔を蓄積させるため、上記の効果は大きい。
【0074】
トレンチゲート構造と異なり、プレーナ構造には接続溝181が存在しない。このため、外周領域102の最内のFLR170よりも内側に介在層14が形成されていることが好ましい。
【0075】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。