特許第6102113号(P6102113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102113
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】青果物用包装袋および青果物包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20170316BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20170316BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B65D85/50 C
   B65D30/02
   B65D77/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-168993(P2012-168993)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24597(P2014-24597A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−257840(JP,A)
【文献】 特開平07−295150(JP,A)
【文献】 特開2001−340050(JP,A)
【文献】 特開2002−037347(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0048410(US,A1)
【文献】 特公昭54−034796(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 30/02
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成される青果物用包装袋であって、
前記合成樹脂フィルムは、最内層がエチレンコンテントが25〜48mol%のエチレンビニルアルコール共重合体の合成樹脂フィルムであり、前記エチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含み、前記エチレンビニルアルコール共重合体に含まれる前記界面活性剤の量が0.3〜3.5重量%であり、かつ、前記最内層以外の層がナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、セロファンの中から選ばれる、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムと界面活性剤とを含む多層体からなり、
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が60g/m2・日(40℃・90%RH)以上、80g/m2・日(40℃・90%RH)以下であり、かつ、前記青果物を包装した際に前記青果物側となる面における水の接触角が10°超、40°以下であることを特徴とする青果物用包装袋。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムは、その酸素透過速度が10〜5,000L/m・日・MPaである請求項1に記載の青果物用包装袋。
【請求項3】
前記青果物100gあたりの袋内表面積が100cm以上、600cm以下である請求項1または2に記載の青果物用包装袋。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルムは、その平均膜厚が10μm以上、100μm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の青果物用包装袋。
【請求項5】
オクラ、ナス、ピーマン、パプリカ、バナナ、ブドウ、シイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジ、イチゴ、温州ミカン、中晩柑、レモン、カボスのうちのいずれかを前記青果物として包装する請求項1ないし4のいずれかに記載の青果物用包装袋。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の青果物用包装袋と、該青果物用包装袋で包装された青果物とを有することを特徴とする青果物包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物用包装袋および青果物包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青果物の劣化で最も顕著なのは、水分ロスによるしおれである。このため、青果物を貯蔵、輸送または販売する際には、水蒸気を吹きかけたり、冷蔵庫内を高湿度に維持したり、切り口を水につけたりしてしおれを軽減している。しかしながら、水蒸気を吹きかけたり、冷蔵庫で保存する方法では特殊な設備が必要であり、さらに、水は輸送中にこぼれるといった問題があった。また、合成樹脂フィルム製の袋で青果物を包装する方法が一般的に用いられているが、この方法では以下のような問題があった。
【0003】
すなわち、従来の包装袋を用いた青果物の包装では、防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が多く用いられている。これは、OPPフィルムが安価で透明性やヒートシール性に優れているため使いやすく青果物を包装した際の見栄えが良いといった特徴によるものである。しかしながら、包装袋内に青果物が密封されていると、青果物は含水率がおよそ80%以上であるため、包装袋内に青果物から出た水分がこもってしまい、袋内に防曇加工を施してもフィルム表面(内面)や青果物の表面に水滴が付着し(結露が生じ)てしまい、これに起因して、徐々に袋内に水が溜まってしまうという欠点があった。このような状態だと見栄えが悪くて市場、量販店または消費者に敬遠されたり、青果物の表面がぬめりやすくなり、これに起因して青果物の劣化が早期に生じてしまうという問題があった。
【0004】
このため、袋内に水分がこもらないように袋開口部が開いたままのオープンの状態にしたり、直径5mm程度の穴をあけた袋を用いたりして貯蔵、輸送しているが、これらの方法では水分が蒸発し過ぎて、結露が生じないが青果物がしおれてしまうという問題があった。
【0005】
また、ポリスチレン、ポリアミド等の水蒸気透過率の高いフィルムで青果物を包装することで結露をなくすことも検討されているが、水蒸気透過率が高すぎて青果物がしおれやすいので鮮度保持が難しい、フィルムの強度が低くかったり、ヒートシール性が悪いので製袋し難い等の問題点があるためほとんど実用化にいたっていない。
【0006】
例えば、特開2001−146291号公報(特許文献1)では、水蒸気透過度が20g/m・24hr(at40℃・90%RH)以上である単層または多層の高分子フィルムを用いた袋状包装体に青果物を入れて密封包装する青果物鮮度保持包装体が開示されている。該高分子フィルムがポリエステル型樹脂フィルム、ポリアミド型樹脂フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体系樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合系樹脂フィルムの少なくともいずれか1種を含む単層または多層の高分子フィルムであり、内容物である青果物自身の呼吸により包装体内の炭酸ガス濃度が大気中に比べて高濃度でかつ包装体内の酸素濃度が大気中に比べて低濃度となり、かつ包装体全体での重量減少が1日あたり1重量%未満であることを特徴とする青果物鮮度保持包装体が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、包装袋内の水蒸気透過度のみが検討されており、包装袋内の水蒸気透過度だけを規定しただけでは、青果物が包装された包装体を、例えば室温から冷蔵庫内に保管した際には、急激な温度変化により、包装袋を密閉した状態では包装袋の内表面に結露が生じ、これに起因する曇りのために包装体内での青果物の視認性が悪くなったり、結露した水が青果物に付着或いは吸収して劣化しやすくなったりするという問題があった。さらに、特許文献1では水蒸気透過度の下限のみを設定しているが、この場合、水蒸気透過度が高くなり過ぎると、水分ロスにより青果物が早期にしおれてしまうという問題が生じる。
【0008】
また、特開2003−284487号公報(特許文献2)では、通気性、水蒸気透過性を有する高分子フィルムに果実類、野菜類、果菜類、または菌茸類の青果物を入れて保存する包装体において、密封した包装体内のエタノール濃度が0.001〜3%であることを特徴とする青果物の鮮度保持包装体が開示されている。特許文献2では高分子フィルムが開孔面積0.06mm2以下の微細孔および/またはキズが設けられた高分子フィルムであり、包装体に1個以上の微細孔および/またはキズを有することが好ましいとされている。かつ包装全体の重量減少が0.5〜3%である包装体である。また、通気性および水蒸気透過性を有する高分子フィルムが、ナイロン単層フィルム、ナイロンとその他素材との多層フィルムである。
【0009】
以上のような特許文献2の構成とすること、すなわち包装袋に微細孔および/またはキズを設けることによっても、包装袋の水蒸気透過度を調整することができるが、この場合においても、特許文献1と同様に、急激な温度変化により、包装袋の内表面に結露が生じ、これに起因する曇りのために包装体内での青果物の視認性が悪くなったり、青果物が劣化しやすくなるという問題がある。
【0010】
以上ように、これまでは、水蒸気透過率が適切な範囲に設定され、さらに、包装袋内の急激な温度変化によっても包装袋内の曇りの発生が的確に抑制または防止された青果物用の包装袋は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−146291号公報
【特許文献2】特開2003−284487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、青果物を包装して密閉した状態であっても包装袋内の曇りの発生を的確に抑制または防止することができる青果物用包装袋、およびかかる青果物用包装袋で包装された青果物を備える青果物包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(6)に記載の本発明により達成される。
(1) 青果物を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成される青果物用包装袋であって、
前記合成樹脂フィルムは、最内層がエチレンコンテントが25〜48mol%のエチレンビニルアルコール共重合体の合成樹脂フィルムであり、前記エチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含み、前記エチレンビニルアルコール共重合体に含まれる前記界面活性剤の量が0.3〜3.5重量%であり、かつ、前記最内層以外の層がナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、セロファンの中から選ばれる、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムと界面活性剤とを含む多層体からなり、
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が60g/m2・日(40℃・90%RH)以上、80g/m2・日(40℃・90%RH)以下であり、かつ、前記青果物を包装した際に前記青果物側となる面における水の接触角が10°超、40°以下であることを特徴とする青果物用包装袋。
【0014】
(2) 前記合成樹脂フィルムは、その酸素透過速度が10〜5,000L/m・日・MPaである上記(1)に記載の青果物用包装袋。
【0015】
(3) 前記青果物100gあたりの袋内表面積が100cm以上、600cm以下である上記(1)または(2)に記載の青果物用包装袋。
【0016】
(4) 前記合成樹脂フィルムは、その平均膜厚が10μm以上、100μm以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の青果物用包装袋。
【0018】
) オクラ、ナス、ピーマン、パプリカ、バナナ、ブドウ、シイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジ、イチゴ、温州ミカン、中晩柑、レモン、カボスのうちのいずれかを前記青果物として包装する上記(1)ないし()のいずれかに記載の青果物用包装袋。
【0019】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の青果物用包装袋と、該青果物用包装袋で包装された青果物とを有することを特徴とする青果物包装体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の青果物用包装袋によれば、内表面における水の接触角が0°超、60°以下となっているため、室温から冷蔵庫内等の温度への急激な温度変化によって、包装袋の内表面に結露が生じたとしても、この結露を構成する水が、内表面を濡れ広がることで、水を含む被膜が形成されることとなるため、結露が独立して存在することに起因する曇りの発生を的確に抑制または防止することができる。
【0021】
さらに、水蒸気透過度の下限が40g/m2・日(40℃・90%RH)以上のように、適度に水蒸気をフィルムの内側から外側に排出し得る値となっているため、青果物が呼吸する際に排出される水分を確実に包装袋外に排出させることができ、この水分が包装袋の内表面に付着することに起因する曇の発生を確実に防止することができる。また、水蒸気透過度の上限が90g/m2・日(40℃・90%RH)以下のように、適度に水蒸気をフィルムの内側に保持し得る値となっているため、袋内の水分量が低下することに起因する青果物のしおれを的確に抑制または防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の青果物用包装袋および青果物包装体について、好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本発明の青果物用包装袋は、この袋中に密閉した状態で青果物を包装するために用いられるものであり、本発明の青果物包装体(以下、単に「包装体」と言うこともある。)は、青果物用包装袋と、この青果物用包装袋(以下、単に「包装袋」と言うこともある。)で密閉した状態で包装された青果物とを有している。
【0024】
青果物としては、特に限定されず、例えば、ブロッコリー、ホウレンソウ、コマツナ、ナバナ、シュンギク、チンゲンサイ、レタス、アスパラガスのような葉茎菜類、ピーマン、パプリカ、ニガウリ、エダマメ、スイートコーン、キュウリ、オクラ、ナス、トマト、ミニトマト、アオウメ、イチゴのような果菜類、バナナ、ブドウ、和梨、西洋梨、イチジク、ビワ、リンゴ、イチゴ、温州ミカン、中晩柑(甘夏、デコポン、イヨカン、河内晩柑および清見等)、レモン、カボス、スダチ、ライムのような果実類、ナガイモ、ゴボウのような根菜類、シイタケ、シメジ、エリンギ、マイタケ、マツタケのような菌茸類(キノコ類)および菊、ユリのような切り花等が挙げられ、これらの何れであっても、包装袋で包装することができる。
【0025】
これらのうち、包装袋内の結露が目立ちやすい、オクラ、ナス、ピーマン、パプリカ、ニガウリ、トマト、ミニトマト、シイタケ、エリンギ、シメジ、マイタケ、マツタケ、バナナ、ブドウ、イチゴ、温州ミカン、中晩柑、レモン、カボス、和梨、西洋梨、イチジク、ビワおよび切り花等の包装に使用するのが好ましく、さらに、オクラ、ナス、ピーマン、パプリカ、バナナ、ブドウ、シイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジ、イチゴ、温州ミカン、中晩柑、レモン、カボスに用いられることがより好ましく、特に、シイタケ、エリンギ、マイタケ、シメジのようなキノコ類に用いるのが最適である。
【0026】
青果物用包装袋は、このような青果物を包装するために用いられ、合成樹脂フィルムで構成され、通常、開口部を有するシール袋であり、その製作方法には、各種方法が挙げられ特に限定されないが、例えば、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせた状態、または1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねた状態で、3辺若しくは2辺を熱シールにより融着させて袋を形成し、1辺において開口する開口部を設ける構成とすることで袋体としての形状が形成される。このような青果物用包装袋において、開口部を介して青果物が袋内に配置され、開口部をテープで縛るまたは熱圧着等により密閉することで、青果物用包装袋により青果物が包装される。或いは、自動包装機も使用して包装することも可能である。
【0027】
このような青果物の包装袋による包装は、青果物の収穫の後に行われ、包装体とした状態で、輸送した後に、市場や量販店で陳列して販売される。なお、これら輸送および陳列の際には、多くの場合、一定の温度ではなく、冷蔵庫内に収納されたり、常温で扱われたり変動する状態で管理される。
【0028】
したがって、前記背景技術で説明した通り、かかる包装体は、室温から冷蔵庫内等の温度への急激な温度変化によっても、包装袋の内表面に結露が生じることに起因する曇りの発生が的確に抑制または防止されていることが求められる。
【0029】
さらに、青果物は、包装袋で包装した後も、包装袋内で呼吸を続けており、この呼吸の際に、青果物から水分が排出される。したがって、青果物を密閉した状態で長時間包装袋内に包装していると、上述したような急激な温度変化が認められなかったとしても、この排出された水分により、包装袋の内表面に結露が生じ、その結果、曇りが生じることが本発明者の検討により判っている。
【0030】
かかる問題点を解決することを目的に、本発明では、青果物用包装袋を構成する合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が40g/m2・日(40℃・90%RH)以上、90g/m2・日(40℃・90%RH)以下であり、かつ、青果物を包装した際に青果物側となる面(内表面)における水の接触角が0°超、60°以下となっている。
【0031】
まず、内表面における水の接触角を0°超、60°以下とすることにより、この内表面は、親水性に優れたものとなる。そのため、室温から冷蔵庫内等の温度への急激な温度変化によって、包装袋の内表面に結露が生じたとしても、この結露を構成する水が、内表面を濡れ広がることで、水を含む被膜が形成されることとなるため、結露が独立して存在することに起因する曇りの発生を的確に抑制または防止することができる。さらに、このとき、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が40g/m2・日・40℃・90%RH以上、90g/m2・日・40℃・90%RH以下に設定されていることから、前記被膜に含まれる水を比較的早期に包装袋外に排出して、被膜を消失させることができる。そのため、青果物が水に接触することに起因する、青果物の変質・劣化を的確に抑制または防止することができる。
【0032】
また、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が40g/m2・日(40℃・90%RH)以上、90g/m2・日(40℃・90%RH)以下に設定することにより、次のような効果も得られる。
【0033】
すなわち、水蒸気透過度の下限が40g/m2・日(40℃・90%RH)以上のように、適度に水蒸気をフィルムの内側から外側に排出し得る値となっているため、青果物が呼吸する際に排出される水分を確実に包装袋外に排出させることができ、この水分が包装袋の内表面に付着することに起因する曇の発生および雫の包装袋内での貯留を確実に防止することができる。また、水蒸気透過度の上限が90g/m2・日(40℃・90%RH)以下のように、適度に水蒸気をフィルムの内側に保持し得る値となっているため、袋内の水分量が低下することに起因する青果物のしおれを的確に抑制または防止することができる。
【0034】
ただし、内表面における水の接触角は、0°超、60°以下であればよいが、5°以上、50°以下であるのが好ましく、10°以上、40°以下であるのがより好ましい。水の接触角をかかる範囲内のものとすることにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。なお、水の接触角は、接触角計で測定し得る(協和界面科学株式会社製 DM−SAを使用、水1.5μLをフィルムに着滴して6秒後の値)。
【0035】
また、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度は、40g/m2・日(40℃・90%RH)以上、90g/m2・日(40℃・90%RH)以下であればよいが、50g/m2・日(40℃・90%RH)以上、85g/m2・日(40℃・90%RH)以下であるのが好ましく、60g/m2・日(40℃・90%RH)以上、80g/m2・日(40℃・90%RH)以下であるのがより好ましい。合成樹脂フィルムの水蒸気透過度をかかる範囲内のものとすることにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則って測定することができる。
【0036】
さらに、合成樹脂フィルムは、その酸素透過速度が10〜5,000L/m・日・MPaであることが好ましい。青果物は、収穫後も呼吸し続けており、呼吸するほど劣化してしまう特性がある。青果物の呼吸は、大気中よりも程よい低酸素濃度、高二酸化炭素環境下で抑制されるので、鮮度保持が可能となる。
【0037】
なお、酸素透過速度の測定方法は、密閉可能な容器に穴をあけて、この部分にフィルムを張り付け、容器内を窒素置換して23℃で保管して、この容器内の酸素濃度変化をガスクロマトグラフィーで測定し、時間あたりの酸素容器への流入量()を求め、これをフィルム1m、1日あたりの値に換算した。なお、酸素濃度は経過時間と反比例の関係を有する範囲の数値を使用する。
【0038】
また、青果物100gあたりの袋内表面積は、100cm以上、600cm以下であればよいが、150cm以上、300cm以下であるのが好ましい。なお、袋の内表面積で規定しているのは、シール部分すなわちとじ代が計算に含まれないようにするためである。袋内表面積が上記関係を満足することにより、青果物用包装袋は、上述したような効果をより顕著に発揮することとなる。
【0039】
また、合成樹脂フィルムの平均膜厚は、特に限定されないが、例えば、好ましくは10μm以上、100μm以下に設定され、より好ましくは20μm以上、40μm以下に設定される。これにより、輸送の過程や、追熟処理を施す際に、青果物用包装袋にキズが生じたり、破損したりするのを確実に防止することができる。さらに、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度および内表面における水の接触角を比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0040】
なお、冷蔵庫内の温度は、通常、2〜15℃程度、好ましくは3〜10℃程度、特に好ましくは10℃程度に設定されるため、本発明によれば、室温(18〜35℃、好ましくは25℃程度)から前記温度範囲のような冷蔵庫内の温度への急激な温度変化によっても、包装袋の内面における曇りの発生を的確に抑制または防止することができる。
【0041】
さらに、本発明によれば、青果物のしおれに起因する目減りを確実に抑制することができるが、目減りの程度を、1.5%/日以下、好ましくは1.0%/日以下に設定することができる。なお、この目減り[%/日]の程度は、100gの青果物が1日当たりに減少する重量が1gである場合に1%/日として求めることができる。
【0042】
また、本発明では、青果物用包装袋により、包装すべき青果物の種類によっても異なるが、青果物が好ましくは50g〜1200g/袋程度、より好ましくは100g〜450g/袋程度で包装される。
【0043】
以上のような青果物用包装袋(合成樹脂フィルム)としては、水蒸気透過度および水の接触角が前記範囲内となるものであれば、特に限定されず、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニヤー低密度ポリエチレン(L-LDPE)、中・高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS)、二軸延伸ナイロン(ONY)、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)、無延伸ナイロン(CN)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、セロハン(PT)およびポリアクリロニトリル(PAN)等が用いられるが、これら以外にポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、共重合ポリエステルなど)、ポリカーボネート等のフィルムであり、これら合成樹脂は共重合体等変性したものでも良い。またはこれらを組み合わせた(積層した)複合フィルムであってもよく、さらには、これらのフィルム表面にシーラント層を設けたものでも、防曇処理したフィルムであってもよいが、中でも、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルムを含む単層体または多層体(複層体)であるのが好ましい。これにより、水蒸気透過度および水の接触角を比較的容易に前記範囲内に設定することができる。
【0044】
なお、上述した合成樹脂フィルムには、その水蒸気透過度および水の接触角を調整することを目的に、ゼオライト、セピオライト、珪藻土、シリカゲル、アロフェン、イモゴライト、モンモリロナイト、アタバルジャイト、或いはゾノトライトのような鉱物(無機質結晶体)が含まれていてもよい。
【0045】
また、樹脂フィルムには、熱安定剤、滑剤、防曇剤、耐衝撃改良剤、加工助剤、静電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐侯劣化防止剤、無機粒子、充填剤および顔料等、公知の添加剤を樹脂フィルムの性能を損なわない範囲で添加することができる。
【0046】
なお、EVOHフィルムを含む単層体および多層体としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。
【0047】
まず、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムの単層体としては、例えば、I:エチレンビニルアルコール共重合体フィルムのエチレンコンテントが25〜49mol%であり、かつ、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムは界面活性剤を含み、この界面活性剤の量が前記エチレンビニルアルコール共重合体フィルムの0.3〜3.5重量%であるものが挙げられる。
【0048】
さらに、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムを含む多層体としては、例えば、II:包装袋とした際の最外層がポリエチレンテレフタレートであり、かつ、最内層がエチレンコンテントが25〜47mol%のエチレンビニルアルコール共重合体であり、このエチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含むもの、III:包装袋とした際の最内層がエチレンコンテントが25〜48mol%のエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂フィルムであり、このエチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含み、エチレンビニルアルコール共重合体に含まれる界面活性剤の量が0.3〜3.5重量%であり、かつ、包装袋の最内層以外の層がナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、セロファンの中から選ばれる樹脂フィルムであるものが挙げられる。
【0049】
以下、これらI〜IIIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムについて、それぞれ、説明する。
【0050】
まず、IのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムは、前述したとおり、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムのエチレンコンテントが25〜49mol%であり、かつ、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムは界面活性剤を含み、この界面活性剤の量が前記エチレンビニルアルコール共重合体フィルムの0.3〜3.5重量%であるものである。
【0051】
包装袋をかかる合成樹脂フィルムで構成することにより、水蒸気透過度および水の接触角を前記範囲内とすることができ、さらに、包装袋の透明性を高くすることができ、かつ包装袋におけるシワの発生を確実に防止することができる。
【0052】
このエチレンビニルアルコール共重合体フィルムにおいて、エチレンコンテントは、25〜49mol%となっている。この範囲にすることにより、包装袋の透明性がより高く、青果物がより腐りにくく、よりしおれにくく、袋に結露がより発生しにくく、包装袋内に水分が溜まることをより防止でき、袋内の青果物が結露によって水にぬれることを防止でき、包装袋の外観にシワが発生しない。
【0053】
なお、エチレンコンテントが25mol%未満では、青果物がしおれやすくなる可能性があり、49mol%を超えると、袋内に水が溜まりやすく、結露を防止しにくくなる。エチレンビニルアルコール共重合体フィルムのエチレンコンテントは、好ましくは32〜45mol%である。
【0054】
また、このエチレンビニルアルコール共重合体フィルム中での界面活性剤の含有量は、0.3〜3.5重量%となっている。0.3重量%未満では防曇性が不十分である可能性があり、3.5重量%を超えると、フィルム表面がべとつきやすく、透明性が損なわれる可能性がある。好ましくは0.4〜2.5重量%、より好ましくは、0.5〜2.2重量%である。
【0055】
このような界面活性剤としては、食品に接触しても使用が可能なものでエチレンビニルアルコール共重合体フィルムに練りこみ可能なものであればどのようなものでも差し支えない。
【0056】
具体的には、界面活性剤としては、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるがこれらに限定されるものではない。例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル類としては、ジグリセリンラウレート、グリセリンモノステアレート等があるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
界面活性剤は、直接エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂に添加しても良く、また、他の樹脂(ベース樹脂)と混合したもの(マスターバッチ)を製作し、そのマスターバッチをエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂と混合しても良い。
【0058】
なお、ベース樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂とブレンド可能なものであればどのようなものでもよいが、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
また、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムに含まれる界面活性剤の量がA重量%、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムのエチレンコンテントがBmol%であるとき、A/Bの値が0.012以上0.12以下であることが好ましい。A/Bが0.012未満では、界面活性剤の種類によっては十分な結露防止効果が得られないおそれがあり、0.12を超えると防曇剤として添加される界面活性剤が多すぎるためにフィルムの透明性の低下やフィルムがブロッキングしやすくなるおそれがある。
【0060】
なお、Iの構成のエチレンビニルアルコール共重合体フィルムは、異なるエチレンコンテントのエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂を複数混合したものを用いてフィルム化してもよく、その特性を損なわない程度にポリエチレン等他の樹脂が混合されていても良い。
【0061】
さらに、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムの特性を損なわない範囲で他の高分子フィルムが積層されていてもよい。この場合、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムが青果物用包装袋の内側になるよう製袋すればよい。
【0062】
なお、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムを製作する方法は、特に限定されず、通常の方法により製作することができる。また、異なるエチレンコンテントのエチレンビニルアルコール共重合体フィルムを複数積層する際は、内層の方にエチレンコンテントが高いエチレンビニルアルコール共重合体フィルムを用いることが好ましい。このような構成にすることで、製袋やヒートシールでの袋開口部の密封がより容易になり易い。
【0063】
次に、IIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムは、前述したとおり、包装袋とした際の最外層がポリエチレンテレフタレートであり、かつ、最内層がエチレンコンテントが25〜47mol%のエチレンビニルアルコール共重合体であり、このエチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含むものである。
【0064】
すなわち、IIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムは、2層以上の積層フィルムであり、この包装袋の最外層の樹脂はポリエチレンテレフタレートであり、最内層の樹脂はエチレンビニルアルコール共重合体となっている。
【0065】
ここで、最外層がポリエチレンテレフタレート(PET)であるのは、適度な吸水性、透湿性を有しており、透明性が高く、内層として用いるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)よりも耐熱性が高いためであり、包装体の外観が良くなり、製袋時等でのヒートシールが容易となる。また、PET層は、寸法安定性が良いことにより印刷しやすく、また透明性が良い。また、PETには、その特性を損なわない程度に他の樹脂が混合されていても良い。
【0066】
さらに、最内層は、界面活性剤を含むEVOH層の積層フィルムである。最内層をこの構成にすることで、結露が発生しにくく、袋内に水分が溜まることを防止でき、袋内の青果物が水にぬれることを防止できることを見出した。EVOHには、その特性を損なわない程度に他の樹脂が混合されていても良い。
【0067】
このエチレンビニルアルコール共重合体フィルムにおいて、エチレンコンテントは25〜47mol%であり、好ましくは、29〜40mol%であり、さらに好ましくは、29〜35mol%となっている。エチレンコンテントが前記下限値未満では、ヒートシールし難くなるので製袋や自動包装し辛くなるおそれがある。逆に、前記上限値を超えると、結露を防止するのに必要な界面活性剤を多く添加する必要があるためフィルムの透明性が低下したり、界面活性剤がフィルム表面にしみだしすぎて製袋しにくくなったりしてしまうおそれがある。
【0068】
また、最内層に用いられる界面活性剤は、食品に接触しても使用が可能なものでEVOHにコートまたは練りこみ可能なものであればどのようなものでも差し支えないが、防曇効果の持続性とべとつき防止の点からEVOHに練りこむ方法が好ましい。
【0069】
界面活性剤の含有量は、EVOHフィルム中で、0.3〜3.5重量%であることが好ましく、0.4〜2.5重量%であることがより好ましく、0.5〜2.2重量%であることがさらに好ましい。前記下限未満では防曇性が不十分である可能性があり、前記上限値を超えると、フィルム表面がべとつきやすく、透明性が損なわれる可能性がある。
【0070】
さらに、界面活性剤の種類としては、前記IのEVOHフィルムで挙げた界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0071】
なお、フィルムの積層方法は、どのような方法でも差し支えないが、例えば、押出ラミネート、ドライラミネート、ウエットラミネート、コート等の方法が挙げられる。また、PET層とEVOH層間に接着層を有しても差し支えない。
【0072】
また、IIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムでは、その厚みは、10〜80μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。フィルムの厚みが前記下限値未満ではフィルムが破れやすく、前記上限値を超えると価格が高くなるだけでメリットが得られない。さらに、PET層の厚みが6μm以上28μm以下であることが好ましい。PET層の厚みをこの範囲内にすることで、包装袋に腰を持たせることができる。
【0073】
次に、IIIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムは、前述したとおり、包装袋とした際の最内層がエチレンコンテントが25〜48mol%のエチレンビニルアルコール共重合体の樹脂フィルムであり、このエチレンビニルアルコール共重合体は界面活性剤を含み、エチレンビニルアルコール共重合体に含まれる界面活性剤の量が0.3〜3.5重量%であり、かつ、包装袋の最内層以外の層がナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、セロファンの中から選ばれる樹脂フィルムである。
【0074】
すなわち、IIIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムは、2層以上の積層フィルムであり、包装袋の最外層はナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、またはセロファンの中から選ばれる樹脂であり、包装袋の最内層がエチレンコンテント25〜48mol%のエチレンビニルアルコール共重合体である。
【0075】
ここで、最外層がナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸、またはセロファンであるのは、適度な吸水性、透湿性を有しており、透明性が高く、内層として用いるエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)よりも耐熱性が高いためであり、包装体の外観が良くなり、製袋時等でのヒートシールが容易となる。
【0076】
また、最外層には、その特性を損なわない程度に他の樹脂や界面活性剤等が混合されていても良く、コロナ処理等がなされていても良い。また、これら外層は、延伸されていてもよい。
【0077】
さらに、最内層は、界面活性剤を含むEVOH層の積層フィルムである。最内層をこの構成にすることで、結露が発生しにくく、袋内に水分が溜まることを防止でき、袋内の青果物が水にぬれることを防止でき、青果物の劣化を抑制できる。前記EVOHには、その特性を損なわない程度に他の樹脂が混合されていても良い。
【0078】
このエチレンビニルアルコール共重合体層(EVOH層)において、エチレンコンテントは25〜48mol%であり、好ましくは、27〜40mol%であり、さらに好ましくは、27〜34mol%となっている。エチレンコンテントが前記下限値未満では、ヒートシールし難くなるので製袋や自動包装し辛い。逆に、前記上限値を超えると、結露を防止するのに必要な界面活性剤を多く添加する必要があるためフィルムの透明性が低下したり、界面活性剤がフィルム表面にしみだしすぎて製袋しにくくなったりしてしまうおそれがある。
【0079】
また、最内層に用いられる界面活性剤は、食品に接触しても使用が可能なものでEVOHにコートまたは練りこみ可能なものであればどのようなものでも差し支えないが、防曇効果の持続性とべとつき防止の点からEVOHに練りこむ方法が好ましい。
【0080】
界面活性剤の含有量は、EVOHフィルム中で、0.3〜3.5重量%であり、0.4〜2.5重量%であることが好ましく、0.5〜2.0重量%であることがより好ましい。前記下限未満では防曇性が不十分である可能性があり、前記上限値を超えると、フィルム表面がべとつきやすく、透明性が損なわれる可能性がある。
【0081】
さらに、界面活性剤の種類としては、前記IのEVOHフィルムで挙げた界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0082】
なお、フィルムの積層方法は、どのような方法でも差し支えないが、例えば、押出ラミネート、ドライラミネート、ウエットラミネート、コート等の方法が挙げられる。また、PET層とEVOH層間に接着層を有しても差し支えない。
【0083】
また、IIIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムでは、その厚みは、15〜60μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。フィルムの厚みが前記下限値未満ではフィルムが破れやすく、前記上限値を超えると価格が高くなるだけでメリットが得られない。
【0084】
さらに、IIIのEVOHフィルムを含む合成樹脂フィルムでは、最内層の厚みは、包装袋の厚み全体の6〜95%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましく、20〜70%であることがさらに好ましい。最内層の厚みがこの範囲に入ることにより、青果物を内包する包装袋に結露が生じにくくなり、シワが入りにくくなり、より見栄えが良い包装袋となる。
【0085】
なお、合成樹脂フィルムを多層体で構成する場合には、各フィルム同士の接着を、接着剤で構成される接着層を介在させることで行うようにしてもよい。ラミネート法の場合、接着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリエーテル、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、有機チタン、イソシアネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、接着層の塗布量は、好ましくは0.005〜7g/m程度、より好ましくは0.01〜5g/m程度に設定される。共押出法の場合、変性ポリエチレンや変性ポリプロピレン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、接着層の膜厚は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは、1〜5μm程度に設定される。
【0086】
以上、本発明の青果物用包装袋および青果物包装体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0087】
例えば、本発明の青果物用包装袋および青果物包装体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0088】
また、青果物用包装袋としては、前記実施形態で説明したシール袋に限らず、例えば、ガゼット袋等の形態の袋であってもよく、さらには、トレー、カップ等に青果物を充填し、これを青果物用包装袋で包装する形態のものであってもよい。
【0089】
なお、本発明の青果物用包装袋は、コンシューマー包装(個包装)でもバルク包装(集合包装)のどちらでも使用可能であるが、結露防止の効能は店頭でのメリットが大きいことを考慮すると、コンシューマー包装用として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
1.包装袋の内表面における水の接触角の検討
1−1.青果物用包装袋の製造、および青果物用包装袋による青果物の包装
(実施例1A)
厚み15μmの二軸延伸したナイロン6フィルムに界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1重量%添加したエチレンコンテント32mol%のエチレンビニルアルコール共重合体を押出ラミで積層して総厚み35μmのフィルムを成膜した。
【0092】
次に、このフィルムで内寸130×230mmの包装袋を作製した後、この包装袋にシイタケ100gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例1Aの包装体を得た。
【0093】
(実施例2A〜4A、比較例1A)
エチレンビニルアルコール共重合体に添加する界面活性剤の添加量を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Aと同様にして、実施例2A〜4A、比較例1Aの包装体を得た。
【0094】
1−2.青果物の保管
まず、各実施例および比較例の青果物包装体について、それぞれ、室温(25℃)で1時間保管して包装袋の温度を安定させた後に、庫内の温度が10℃に設定された冷蔵庫に移し、その後、5日間保管した。
【0095】
1−3.評価
各実施例および比較例の青果物包装体について、それぞれ、上述したような測定方法を用いて、内表面における水の接触角、水蒸気透過度および酸素透過速度を測定した。
【0096】
また、各実施例および比較例の青果物包装体について、それぞれ、冷蔵庫による保管開始から保管直後(30分後)、1日後、3日後および5日後の包装袋の曇り度合い、水滴の溜まり、青果物のしおれ、目減り[%/日]を観察し、以下に示す評価基準に従って評価した。
【0097】
・目減り[%/日]の評価基準
◎ :1.0%/日 未満
○ :1.0%/日 以上、1.5%/日 未満
× :1.5%/日 以上
【0098】
・その他の項目の評価基準
◎ :良好
○ :やや良好
△ :悪い
× :著しく悪い
これらの評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1から明らかなように、しいたけ側となる面の接触角を0°超、60°以下に設定することにより、水滴の溜り、しいたけのしおれ、および目減りを防止しつつ、保管直後における曇りの発生を確実に防止し得ることが判った。
【0101】
2.包装袋の水蒸気透過度の検討
2−1.青果物用包装袋の製造、および青果物用包装袋による青果物の包装
(実施例1B)
厚み9μmのPETフィルムと厚み20μmの界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1重量%添加したエチレンコンテント29mol%のエチレンビニルアルコール共重合体フィルムをドライラミネートで積層して総厚み29μmのフィルムを成膜した。
【0102】
次に、このフィルムで内寸130×230mmの包装袋を作製した後、この包装袋にシイタケ100gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例1Bの包装体を得た。
【0103】
(実施例2B〜4B、比較例1B、2B)
エチレンビニルアルコール共重合体におけるエチレンコンテントを、表2に示すように変更したこと以外は、前記実施例1Bと同様にして、実施例2B〜4B、比較例1B、2Bの包装体を得た。
【0104】
2−2.青果物の保管
まず、各実施例および各比較例の青果物包装体について、それぞれ、室温(25℃)で1時間保管して包装袋の温度を安定させた後に、庫内の温度が10℃に設定された冷蔵庫に移し、その後、5日間保管した。
【0105】
2−3.評価
各実施例および各比較例の青果物包装体について、それぞれ、上述したような測定方法を用いて、内表面における水の接触角、水蒸気透過度および酸素透過速度を測定した。
【0106】
また、各実施例および各比較例の青果物包装体について、それぞれ、冷蔵庫による保管開始から保管直後(30分後)、1日後、3日後および5日後の包装袋の曇り度合い、水滴の溜まり、青果物のしおれ、目減り[%/日]を観察し、前記1−3で示した評価基準に従って評価した。
これらの評価結果を表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2から明らかなように、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度を40〜90g/m2・日(40℃・90%RH)に設定することにより、しいたけのしおれ、および目減りを防止しつつ、長時間のしいたけの保存による、水滴の溜りを確実に防止し得ることが判った。
【0109】
3.包装袋を構成する合成樹脂フィルムの種類の検討
3−1.青果物用包装袋の製造、および青果物用包装袋による青果物の包装
(実施例1C)
厚み15μmのONYフィルムと厚み5μmの界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1.5重量%添加した低密度ポリエチレンフィルムをドライラミネートで積層して総厚み20μmのフィルムを成膜した。
【0110】
次に、このフィルムで内寸130×230mmの包装袋を作製した後、この包装袋にシイタケ100gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例1Cの包装体を得た。
【0111】
(実施例2C)
厚み15μmのONYフィルムと厚み6μmの界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1.5重量%添加したポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネートで積層して総厚み21μmのフィルムを成膜した。
【0112】
次に、このフィルムで内寸130×230mmの包装袋を作製した後、この包装袋にシイタケ100gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例2Cの包装体を得た。
【0113】
3−2.青果物の保管
まず、各実施例の青果物包装体について、それぞれ、室温(25℃)で1時間保管して包装袋の温度を安定させた後に、庫内の温度が10℃に設定された冷蔵庫に移し、その後、5日間保管した。
【0114】
3−3.評価
各実施例の青果物包装体について、それぞれ、上述したような測定方法を用いて、内表面における水の接触角、水蒸気透過度および酸素透過速度を測定した。
【0115】
また、各実施例の青果物包装体について、それぞれ、冷蔵庫による保管開始から保管直後(30分後)、1日後、3日後および5日後の包装袋の曇り度合い、水滴の溜まり、青果物のしおれ、目減り[%/日]を観察し、前記1−3で示した評価基準に従って評価した。
これらの評価結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
表3から明らかなように、合成樹脂フィルムの種類を代えても、水蒸気透過度を40〜90g/m2・日(40℃・90%RH)に設定し、かつ、しいたけ側となる面の接触角を0°超、60°以下に設定することにより、保管直後における曇りの発生、さらには、長期的な水滴の溜り、しいたけのしおれ、および目減りを確実に防止し得ることが判った。
【0118】
4.包装する青果物の種類の検討
4−1.青果物用包装袋の製造、および青果物用包装袋による青果物の包装
(実施例1D)
厚み15μmの二軸延伸したナイロン6フィルムに界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1重量%添加したエチレンコンテント32mol%のエチレンビニルアルコール共重合体を押出ラミで積層して総厚み35μmのフィルムを成膜した。
【0119】
次に、このフィルムで内寸150×160mmの包装袋を作製した後、この包装袋にオクラ110gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例1Dの包装体を得た。
【0120】
(実施例2D)
厚み15μmの二軸延伸したナイロン6フィルムに界面活性剤(ジグリセリンラウレート)を1重量%添加したエチレンコンテント32mol%のエチレンビニルアルコール共重合体を押出ラミで積層して総厚み35μmのフィルムを成膜した。
【0121】
次に、このフィルムで内寸130×160mmの包装袋を作製した後、この包装袋にレモン140gを入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例2Dの包装体を得た。
【0122】
4−2.青果物の保管
まず、各実施例の青果物包装体について、それぞれ、室温(25℃)で1時間保管して包装袋の温度を安定させた後に、庫内の温度が10℃に設定された冷蔵庫に移し、その後、5日間保管した。
【0123】
4−3.評価
各実施例の青果物包装体について、それぞれ、上述したような測定方法を用いて、内表面における水の接触角、水蒸気透過度および酸素透過速度を測定した。
【0124】
また、各実施例の青果物包装体について、それぞれ、冷蔵庫による保管開始から保管直後(30分後)、1日後、3日後および5日後の包装袋の曇り度合い、水滴の溜まり、青果物のしおれ、目減り[%/日]を観察し、前記1−3で示した評価基準に従って評価した。
これらの評価結果を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
表4から明らかなように、青果物の種類を代えても、水蒸気透過度を40〜90g/m2・日(40℃・90%RH)に設定し、かつ、青果物側となる面の接触角を0°超、60°以下に設定することにより、保管直後における曇りの発生、さらには、長期的な水滴の溜り、青果物のしおれ、および目減りを確実に防止し得ることが判った。