特許第6102114号(P6102114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

特許6102114モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法
<>
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000002
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000003
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000004
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000005
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000006
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000007
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000008
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000009
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000010
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000011
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000012
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000013
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000014
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000015
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000016
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000017
  • 特許6102114-モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102114
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】モノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20170316BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20170316BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D39/20 D
   B01D69/04
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-169047(P2012-169047)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28327(P2014-28327A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 孝行
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−321849(JP,A)
【文献】 特開2004−306020(JP,A)
【文献】 特開2000−342920(JP,A)
【文献】 特開平11−123308(JP,A)
【文献】 特開2009−040046(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/134514(JP,A1)
【文献】 特開2004−305993(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134514(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/02
B01D 39/20
B01D 69/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス多孔体からなる筒状基材と、筒状基材の両端面に開口し、且つ筒状基材内に貫通並設した多数のセルを備え、各セルの断面形状は、多角形及び/又は円形であるモノリス型のセラミックスフィルタ用基材であり、
前記多数のセルは、筒状基材断面を横断するように平行した複数のセル列からなる濾過膜セル群と、各濾過膜セル群間に平行に位置する集水セル群とに区分され、
前記濾過膜セル群は、集水セル群の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群と、特定濾過膜セル群以外の非特定濾過膜セル群とに区分され、
前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状は、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成され、
前記筒状基材には、前記集水セル群を構成する各セル壁を貫通、横断して、前記筒状基材の外部に連通、開口する集水スリットが形成され、
前記筒状基材の端面を横断した状態で該端面に面取り形成された目封止材充填用の凹部には、目封止材が充填された状態で、前記集水スリット及び/又は集水セルが一括して封止された
を特徴とするモノリス型のセラミックスフィルタ用基材。
【請求項2】
前記非特定濾過膜セル群のセルの断面形状は、六角形又は円形に形成され、
前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状は、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面となるように、五角形、七角形、円弧面五角形、円形の何れかの形状に形成され、
前記集水セル群のセルの断面形状は、前記非特定濾過膜セル群のセルと同様に六角形又は円形に形成されていることを特徴とする請求項1記載のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材。
【請求項3】
前記集水スリットの幅寸法は、前記集水セル群のセルが六角形の場合には、その対角寸法よりも小さい寸法とし、前記集水セル群のセルが円形の場合には、その直径寸法よりも小さい寸法としたことを特徴とする請求項2記載のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材。
【請求項4】
セラミックス多孔体からなる筒状基材の端面に開口する多数の濾過膜セル群と、濾過膜セル群間に位置する集水セル群と、前記集水セル群を貫通、横断して前記筒状基材の外部に連通、開口する集水スリットと、該集水スリット及び/又は集水セルの筒状基材の端面側の端部を閉塞する目封止材と、を備えたモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法であって、
前記濾過膜セル群又は集水セル群となる多数のセルを形成した未乾燥、未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を押出成形する押出成形工程と、
前記押出成形した未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を乾燥,焼成する乾燥,焼成工程と、
前記集水セル群を構成する各セル壁を前記筒状基材を貫通する方向に横断して前記筒状基材の外部に連通する集水スリットを形成する集水スリット形成工程と、
を有し、
前記押出成形工程において、前記濾過膜セル群を、集水セル群の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群と、特定濾過膜セル群以外の非特定濾過膜セル群とに区分し、前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成し、
前記集水スリット形成工程の後に、
前記筒状基材の端面を横断した状態で該端面に目封止材充填用の凹部を面取り形成する凹部形成工程と、
前記凹部に目封止材を充填して集水スリット及び/又は集水セルを一括して封止する目封止材充填工程と、
を有することを特徴とするモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス多孔体からなる筒状基材に原液流路となる多数のセルを具備してなるモノリス型のセラミックスフィルタ用基材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックスフィルタ用基材が、セラミックスフィルタとして用いられるのは、高分子膜等と比較して、物理的強度、耐久性に優れるため信頼性が高いこと、耐食性が高いため酸、アルカリ等による洗浄を行なっても劣化が少ないこと、更には、濾過能力を決定する細孔径の精密な制御が可能である点で、高分子膜等よりも優れているので、セラミックスフィルタは、固液分離用のフィルタ等に用いられている。
【0003】
セラミックスフィルタは、平板状、チューブ状等、種々の形状に加工されたセラミックス多孔体を濾材として濾過を行なうが、単位体積当たりの濾過面積が大きく、濾過処理能力が高い点において、セラミックス多孔体からなる筒状のセラミックスフィルタ用基材に原液流路となる多数のセルを具備した、いわゆるモノリス型フィルタが広く利用されている。
【0004】
モノリス型フィルタのセルとしては、基材の単位体積当たりの濾過面積を大きくとることができる点において、断面形状が六角形、或いは円形セルのようなコーナー部を有しないセル等が好ましいとされている。
【0005】
図14はモノリス型フィルタの一例を示す。このモノリス型フィルタ101は、例えば内接円2.5mm程度の六角形セル102を多数具備するように形成されている。このような大容量のフィルタの場合、濾過水を外部に排出することが困難なために、フィルタ基材内が直接外部と連通するように、特定のセル群を集水セル102aとし、この集水セル群と外部とを連通するようにフィルタ基材を横断したスリット103を設け、この部分に濾過水を集めて外部に排出するようにしている。
【0006】
集水セル102aとスリット103は、所定数の濾過膜セル102bを数列ごとに群にした各濾過膜セル群の間に位置するように配置している。
【0007】
排出口の位置は、筒状のセラミックスフィルタ用基材の中央部や端面部、端面部近傍等に設けられている。
【0008】
前記スリット103の数や、図15に示す筒状のセラミックスフィルタ用基材の外周面101aに開口するスリット103先端の排出口103aの位置は、被処理水の特性、フィルタの大きさ(径、長さ)などにより最適なものが選択される。集水セル102aの開口端部は、封止材104で封止されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、図16に示すように、集水セル102aの断面形状は、スリット施工が容易となるように四角形とし、且つ集水セル102aに隣接する濾過膜セルである特定濾過膜セル102bの形状を七角形、或いは五角形、円形にし、特定濾過膜セル102b以外の濾過膜セル102cを、六角形等として、集水セル102aと特定濾過膜セル102bの間に平面状の隔壁105を形成したものが開発されている。(例えば、特許文献2参照)。なお、このようなセルの形状の組み合わせとして、前記特許文献1,2の他に特許文献3などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−342920
【特許文献2】特開2004−306020
【特許文献3】特開2004−305993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前述したように、四角形の集水セル102aと、五角形、七角形等の濾過膜セル102bを組み合わせた場合には、スリット施工は容易になるという利点がある。
【0012】
しかし、四角形の集水セル102a以外の濾過膜セルは、五角形、六角形、七角形であって、その断面形状に違いがある。
【0013】
よって、押出成形時にこれらのセルを形成する押出ピンの周辺での坏土の流動性に差異が発生する。そして、基材内部において成形不良が生じ、乾燥不良、焼成不良、例えば、割れを起こす可能性があるという課題があった。
前記課題は、セルの断面形状を極力、同形状にすることにより解決することができる。
【0014】
しかし、全てのセルを同じ形状、例えば、図17に示すように、六角形にした場合には、押出成形の点においては好ましいものの、集水セル群にスリット103を形成する場合に、隣接する濾過膜セル群との間隔が狭いことから、スリット施工時にセル隔壁15の肉厚tが薄くなって、強度低下を惹起する可能性があった。Bは、スリット103の幅である。
【0015】
前記セル隔壁105の肉厚tを厚くするためにセルの間隔ピッチTを大きくすることが考えられるがセルの間隔ピッチTを変えると、隔壁105の厚みが周辺と異なったものになり、押出成形、乾燥、焼成時において、不具合を惹起する可能性があり好ましい対策とは言えなかった。
【0016】
そこで、本発明者らは、前記従来の問題点を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、集水セル群と共にセラミックスフィルタ用基材のセル群を構成する濾過膜セル群を、集水セル群に隣接する特定濾過膜セル群と、それ以外の非特定濾過膜セル群とに区分し、スリット施工を施す集水セル群と、これに隣接する部位に位置する特定濾過膜セル群との間隔を確保するために、特定濾過膜セル群のセル形状を、非特定濾過膜セル群のセル形状と類似する断面形状で、且つ前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成することにより、
(1)基材押出成形工程において、坏土の流動性にムラが発生するのを防止して、基材内部において成形不良が生じるのを防止することにより、乾燥不良、焼成不良、例えば、割れを起こすのを抑制することが可能であること、
(2)また、特定濾過膜セルの前記集水セル群に対向する側の面を、平面又は円弧面とすることにより、スリット施工時にセル隔壁の肉厚が薄くなって、強度低下を惹起するのを防止することが可能であること、
を見出して、その知見に基づいてモノリス型のセラミックスフィルタ用基材と、その製造方法を開発したものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1は、セラミックス多孔体からなる筒状基材と、筒状基材の両端面に開口し、且つ筒状基材内に貫通並設した多数のセルを備え、各セルの断面形状は、多角形及び/又は円形であるモノリス型のセラミックスフィルタ用基材であり、
前記多数のセルは、筒状基材断面を横断するように平行した複数のセル列からなる濾過膜セル群と、各濾過膜セル群間に平行に位置する集水セル群とに区分され、
前記濾過膜セル群は、集水セル群の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群と、特定濾過膜セル群以外の非特定濾過膜セル群とに区分され、
前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状は、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成され、
前記筒状基材には、前記集水セル群を構成する各セル壁を貫通、横断して、前記筒状基材の外部に連通、開口する集水スリットが形成され、
前記筒状基材の端面を横断した状態で該端面に面取り形成された目封止材充填用の凹部には、目封止材が充填された状態で、前記集水スリット及び/又は集水セルが一括して封止されている。
【0018】
請求項2は、請求項1に記載のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材において、
前記非特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、六角形又は円形に形成し、
前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面となるように、五角形、七角形、円弧面五角形、円形の何れかの形状に形成し、
前記集水セル群のセルの断面形状を、前記非特定濾過膜セル群のセルと同様に六角形又は円形に形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項3は、請求項2記載のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材において、
前記集水スリットの幅寸法は、前記集水セル群のセルが六角形の場合には、その対角寸法よりも小さい寸法とし、前記集水セル群のセルが円形の場合には、その直径寸法よりも小さい寸法としたことを特徴とする。
【0021】
請求項4は、セラミックス多孔体からなる筒状基材の端面に開口する多数の濾過膜セル群と、濾過膜セル群間に位置する集水セル群と、前記集水セル群を貫通、横断して前記筒状基材の外部に連通、開口する集水スリットと、該集水スリット及び/又は集水セルの筒状基材の端面側の端部を閉塞する目封止材と、を備えたモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法であって、
前記濾過膜セル群又は集水セル群となる多数のセルを形成した未乾燥、未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を押出成形する押出成形工程と、
前記押出成形した未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を乾燥,焼成する乾燥,焼成工程と、
前記集水セル群を構成する各セル壁を前記筒状基材を貫通する方向に横断して前記筒状基材の外部に連通する集水スリットを形成する集水スリット形成工程と、
を有し、
前記押出成形工程において、前記濾過膜セル群を、集水セル群の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群と、特定濾過膜セル群以外の非特定濾過膜セル群とに区分し、前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成し、
前記集水スリット形成工程の後に、
前記筒状基材の端面を横断した状態で該端面に目封止材充填用の凹部を面取り形成する凹部形成工程と、
前記凹部に目封止材を充填して集水スリット及び/又は集水セルを一括して封止する目封止材充填工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0023】
(1)請求項1のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材は、特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、他のセル群のセルの断面形状と類似する形状に形成したので、未焼成のセラミックスフィルタ用基材を押出成形する際に、特定濾過膜セル群のセルと他のセルの間に坏土の偏析した流動が発生するのを抑制し、よって、押出成形、乾燥、焼成において変形、割れが発生するのを防止する。
また、特定濾過膜セル群のセルの、前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面になるよう形成したので、特定濾過膜セル群と集水セル群の間の隔壁の肉厚を確保することができ、隔壁が脆弱になるのを防止することができる。また、特定濾過膜セル群と集水セル群の間に十分な集水スリット形成エリアを確保することができる。
(2)請求項2のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材は、非特定濾過膜セル群のセルを、六角形又は円形とし、集水セル群のセルを、非特定濾過膜セル群のセルと同様に六角形又は円形に形成したので、未焼成のセラミックスフィルタ用基材を押出成形する際に押出成形ピンの周辺における坏土の偏析した流動を抑制し、よって、押出成形、乾燥、焼成において変形、割れが発生するのを抑制することができる。
また、特定濾過膜セル群のセルを、集水セル群に対向する側の面を平面又は円弧面となる五角形、七角形、円弧面五角形、円形の何れかの形状に形成したので前記非特定濾過膜セルや集水セルの場合と同様に、坏土の偏析した流動を抑制し、よって、押出成形、乾燥、焼成において変形、割れが発生するのを抑制することができる。
(3)以上のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材は、集水セル群を構成する各セル壁および前記筒状基材を貫通する方向に横断して前記筒状基材外部に連通する集水スリットを形成したので、集水スリットを介して濾過水を円滑に外部に流出させることができる。
特に、集水スリットの幅寸法を、集水セル群のセルが六角形の場合には、その対角寸法よりも小さい寸法とし、集水セル群のセルが円形の場合には、その直径寸法よりも小さい寸法としたので、集水スリットの存在により、集水セルと特定濾過膜セルのセルとの隔壁が脆弱になるのを最小限に抑えることができる。
(4)また、以上のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材は、前記筒状基材の端面に目封止材充填用の凹部を設けたので、該凹部内に目封止材を充填することにより集水スリット及び/又は集水セルを一括して封止することができる。
(5)請求項4のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法は、前記押出成形工程において、濾過膜セル群を、集水セル群の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群と、特定濾過膜セル群以外の非特定濾過膜セル群とに区分し、前記特定濾過膜セル群のセルの断面形状を、他のセル群のセルの断面形状と類似する形状で、且つ前記集水セル群に対向する側の面が平面又は円弧面に形成したモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を製造することができる。
(6)以上のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法は、前記集水スリット形成工程の後の凹部形成工程によって筒状基材の端面に目封止材充填用の凹部を形成し、凹部形成工程に続く目封止材充填工程によって、前記凹部に目封止材を充填することにより集水スリット及び/又は集水セルを一括して、効果的に封止したモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態のセラミックスフィルタ用基材の斜視図。
図2】特定濾過膜セル、非特定濾過膜セル、集水セルの配置状態を示す説明図。
図3図2の一部の拡大図。
図4図3のA−A断面図。
図5】目封止材を充填した状態の断面図。
図6】第2の実施形態のセラミックスフィルタ用基材の斜視図。
図7図4と同様の断面図。
図8】目封止材を充填した状態の断面図。
図9】第3の実施形態のセラミックスフィルタ用基材の斜視図。
図10】第4の実施形態を示し、集水セルを円形に形成した場合の説明図。
図11】目封止材を充填した状態を示す説明図。
図12】A,B,C,Dは、特定濾過膜セルの第1〜第4例を示す説明図。
図13】本発明の製造方法のフロー図。
図14】従来例の濾過膜セルと集水セルの形状と配置を示す説明図。
図15】前記従来の濾過膜セルと集水セルを備えたセラミックスフィルタ用基材の斜視図。
図16】四角形の集水セルを使用したセラミックスフィルタ用基材の説明図。
図17】濾過膜セルと集水セルを六角形に形成した場合の問題点を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図5は第1実施例のセラミックスフィルタ用基材1を示す。図1に示すように、セラミックスフィルタ用基材1は、セラミックス多孔体からなる筒状基材2と、筒状基材2の両端面に開口し、且つ筒状基材内に貫通並設した多数のセル3を備えている。多数のセル3は、ハニカム状に整然と配置されている。
【0026】
図2に示すように、前記多数のセル3は、筒状基材断面を横断するように平行した複数のセル列からなる濾過膜セル群4と、各濾過膜セル群4間に平行に位置する集水セル群5とに区分されている。
【0027】
前記濾過膜セル群4は、集水セル群5の両側に隣接して対向する特定濾過膜セル群6と、特定濾過膜セル群6以外の非特定濾過膜セル群7とに区分されている。
【0028】
図3に拡大して示すように、集水セル群5及び非特定濾過膜セル群7の各セルの断面形状は、六角形に形成されている。また、特定濾過膜セル群6の各セルの断面形状は、集水セル群5に対向する側の面6aが平面又は円弧面になるように七角形に形成されている。
【0029】
集水スリット8は、前記集水セル群を構成する各セル壁および筒状基材2を貫通して形成されている。集水スリット8の幅寸法Bは、六角形の集水セルの対角寸法よりも小さい寸法に形成されている。集水スリット8の長さ方向の先端部は、図1に示すように、筒状基材2の外側面2aに開口している。
【0030】
図4図3のA−A断面図)に示すように、集水スリット8の幅方向の一端部(図4の左端)は、筒状基材2の端面2bに開口している。集水スリット8の開口端には面取り等により目封止材充填用の凹部9が形成されている。凹部9の幅寸法Cは、集水スリット8の幅寸法Bより大で、且つ図1に示すように、筒状基材2の端面2bを横断するように形成されている。そして、図5に示すように、前記凹部9に目封止材10を充填することにより、集水スリット8と集水セル群5の端部が一括して封止される。
【0031】
第1実施例のセラミックスフィルタ用基材1は、前述の構成であって、図3に示すように、特定濾過膜セル群6の集水セル群5に対向する側の面6aを平坦面に形成したので、特定濾過膜セル群6と集水セル群5の間に比較的広い切削施工エリアを確保でき、集水スリット施工において特定濾過膜セルと集水セルの間の隔壁を脆弱にするという従来の課題を解消することができる。
【0032】
また、筒状基材2の端面2bに、該端面2bを横断する目封止材充填用の凹部9を形成したので、該凹部9に目封止材10を充填し、且つ目封止材10の下部を集水スリット8及び/又は集水セル群5の端部に充填することにより集水スリット8及び/又は集水セル群5の封止を確実に行ない、集水スリット群8及び集水セル群5の水密性を確保、維持できる。
【0033】
図6図8は第2実施例のセラミックスフィルタ用基材11を示し、図9は第3実施例のセラミックスフィルタ用基材21を示す。
【0034】
第2実施例のセラミックスフィルタ用基材11は、集水スリット8を筒状基材端面から所定の距離Lだけ離して、筒状基材2の端面2bの近傍に形成した。
【0035】
集水セル群5の端部には、図6に示すように筒状基材2の端面2bを横断し、図7に示すように面取り等により凹部9が形成され、さらに、図8に示すように該凹部9に目封止材10を充填することにより前記集水セル群5の端部が封止されている。なお、第2実施例の場合は、集水スリット8は、筒状基材2の端面2bから所定の距離L離して形成されているので集水スリット8を目封止する必要はない。
【0036】
また、第3実施例のセラミックスフィルタ用基材21は、第2実施例の場合よりも更に集水スリット8を筒状基材端面から離し、筒状基材2の長さ方向の略中央部に1個の集水スリット8を形成した場合を示す。他の構成は、第1、2実施例のセラミックスフィルタ用基材1と同様であるので同一構成部分には同一符号を付して重複する。
【0037】
図10図11は、第4実施例のセラミックスフィルタ用基材を示す。この実施例において、集水セル群5のセルは、円形に形成されている。集水スリット8の幅寸法Bは、円形の集水セルの直径寸法よりも小さい寸法に形成されている。
【0038】
集水スリット8の筒状基材2の端面側の端部には、図4と同様に面取り等により凹部9が形成されている。凹部9の幅寸法Cは、集水スリット8の直径寸法Bより大に形成されている。そして、図11に示すように、前記凹部9に目封止材10を充填することにより、集水スリット8及び/又は集水セル5が一括して封止される。第4実施例は集水スリット8を円形に形成した以外の構成は、第1〜3実施例のセラミックスフィルタ用基材1と同様であるので同一構成部分には同一符号を付して重複する。
【0039】
以上、第1実施例から第4実施例においては、特定濾過膜セル6の形状を、図12Aに示した集水セル群5に対向する側の面6aを平坦面とした七角形に形成したが、図12Bに示すように集水セル群5に対向する側の面6aを平坦面とした五角形であっても、図12Cに示すように集水セル群5に対向する側の面6aを円弧面とした五角形であっても、或いは図12Dに示すように円形であっても良い。
【0040】
次に、本発明のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材の製造方法を図13の工程図を参照して説明する。
【0041】
図13に示すように、本発明の製造方法は、未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を押出成形する押出成形工程と、押出し成形した未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を乾燥,焼成する乾燥,焼成工程と、モノリス型のセラミックスフィルタ用基材に集水スリットを形成する集水スリット形成工程と、前記筒状基材の端面に目封止材充填用の凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部に目封止材を充填する目封止材充填工程と、を備えている。
【0042】
押出成形工程においては、例えば粒子径40〜100μmのアルミナセラミックスを主構成材として、これに焼結助剤、バインダー、水を混合した混合物を押出成形機で押出して、前記多数のセルを有するセラミックス多孔体からなる未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を形成する。
【0043】
乾燥,焼成工程においては、前記未焼成のモノリス型のセラミックスフィルタ用基材を乾燥,焼成する。
【0044】
集水スリット形成工程においては、集水セル群を構成する各セル壁および筒状基材2を貫通して集水スリット8を形成する。図3に示すように、集水スリット8の幅寸法Bは、六角形の集水セルの対角寸法よりも小さい寸法に形成し、集水スリット8の長さ方向の先端部は、図1に示すように、筒状基材2の外側面2aに開口させ、集水スリット8の幅方向の端部は、図4に示すように、前記筒状基材2の端面2bに開口させる。
【0045】
凹部形成工程においては、図4に示すように、前記集水スリット8の端部に面取り等により目封止材充填用の凹部9を形成する。凹部9の幅寸法Cは、集水スリット8の幅寸法Bより大に形成する。図1に示すように、凹部9は、筒状基材2の端面を横断するように形成されている。
【0046】
目封止材充填工程においては、図4等に示すように、前記凹部9内に目封止材10を充填して、集水スリット8及び/又は集水セル5を一括して封止する。目封止材10は、アルミナセラミック等を主成分にして、これに焼結助剤、バインダー等を混合、混練した坏土であり、粘性の高いペースト状に形成されていて、前記凹部9に充填される。前記凹部9は、筒状基材2の端面を横断するように形成されているので、この凹部9に目封止材10を充填するとともに、該目封止材10の下端を集水スリット8及び/又は集水セル5の端部に押し込むことにより、集水スリット8及び/又は集水セル5の封止を一括して確実に行なうことができ、水密性を維持することができる。
【0047】
なお、前記実施例において、乾燥,焼成工程の後に、集水スリット形成工程、凹部形成工程を行なう構成にしたのは、焼成の際に不可避的に生じる収縮により集水スリットや凹部が変形するのを回避するためであるが、集水スリットや凹部の変形が許容できる範囲である場合には、集水スリット形成工程、凹部形成工程の後に乾燥,焼成工程を行なっても良い。また、前記目封止材10を凹部9に充填した後に焼成を行なえば、焼成による収縮を抑制することができ、且つ目封止材10を凹部9内面に密着させて水密強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1,11,21…セラミックスフィルタ基材
2…筒状基材
3…セル
4…濾過膜セル群
5…集水セル群
6…特定濾過膜セル群
7…非特定濾過膜セル群
8…集水スリット
9…目封止材充填用の凹部
10…目封止材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17