【文献】
藤本 健,BASIC MASTER SONAR X1 LE,株式会社ビー・エヌ・エヌ新社,2011年 8月22日,第1版,pp.18,65-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1に、本実施形態におけるマルチトラックレコーダ1の構成ブロック図を示す。音声信号入力回路10は、複数の入力ポートを備え、複数の音源(ソース)からの音声信号を入力する。複数の音声信号を例示すると、ギター、ボーカル、ドラム等である。本実施形態では、音声信号入力回路10は、2個の内蔵マイク及び2個の入力ポートを備え、音声信号を入力する。内蔵マイクと入力ポートは相互に切替可能である。音声信号入力回路10から入力された音声信号は、バス16を介してDSP(デジタルシグナルプロセッサ)14に供給される。
【0014】
DSP14は、CPU32の制御の下で、音声信号入力回路10から供給された複数チャンネルの音声信号に対して、各種のデジタル処理、例えばエフェクト処理やイコライジング処理、ミキシング処理を施し、バス18を介してレコーダ34に記録する。レコーダ34の記録媒体は、CD−R/RW、DVD−R/RW等の光ディスクやハードディスク、フラッシュメモリ媒体等である。DSP14の処理には、操作子20の操作に応じて各音声信号のパン(PAN)や音量レベルを調整する処理も含まれる。
【0015】
操作子20は、マルチトラックレコーダ1の操作面に設けられる。操作子20は、各種のキースイッチや選択ボタン、メニューボタン、決定ボタン、パン(PAN)つまみ、レベルつまみ等から構成される。ユーザは、操作子20を操作することで、各音声信号を、複数トラックの少なくとも1つのトラックに割り当てる。操作子20の操作状態は検出回路22で検出される。検出回路22は、バス18を介して操作子20の操作状態検出信号をCPU32に供給する。
【0016】
CPU32は、マルチトラックレコーダの全体を統括制御する。CPU32は、フラッシュROM28に記憶されたプログラムに従い、ワーキングメモリとしてのRAM30を用いて各種処理を実行する。具体的には、検出回路22からの操作状態検出信号に基づいて、複数チャンネルの各音声信号を複数トラックの少なくとのいずれかのトラックに割り当てる。例えば、トラックがトラック1〜トラック4まで存在する場合に、チャンネルAをトラック1に割り当て、チャンネルBをトラック2に割り当て、チャンネルCをトラック4に割り当てる等である。本実施形態において、このような各チャンネルをトラックに割り当てた結果としての、各チャンネルと各トラックとの対応関係を「アサイン情報」と称する。また、CPU32は、各種の情報を表示回路26に供給する。表示回路26は、各種情報を表示部24に表示する。
【0017】
CPU32は、ユーザによる操作子20の操作に応じて各種メニュー画面や設定画面を表示すべく表示回路26に指令し、表示回路26は、CPU32からの情報に応じてメニュー画面や設定画面を表示部24に表示する。メニュー画面には、トラック1〜トラック4のそれぞれのトラックを、モノラルにするかステレオにするかのメニュー画面が含まれる。すなわち、本実施形態では、トラック1〜トラック4の少なくともいずれかは、モノラルにするかステレオにするかを選択可能に構成されており、ユーザは所望のトラックをモノラル、ステレオのいずれかに設定する。本実施形態におけるマルチトラックレコーダは、トラック1及びトラック2はモノラルに固定され、トラック3及びトラック4がモノラルあるいはステレオのいずれかに設定可能であるとする。設定画面には、あるトラックに記録された音声信号を別のトラックに複製する(クローンあるいはコピー)設定画面が含まれる。ユーザは、設定画面において操作子20を操作することで複製元のトラック及び複製先のトラックを選択する。
【0018】
また、CPU32は、各トラック毎に割り当てられた音声信号のレベルを棒グラフ形式(レベルメータ)で表示すべく表示回路26に指令し、表示回路26は、CPU32からの情報に応じてレベルメータ画像を表示部24に表示する。
【0019】
さらに、CPU32は、検出回路22からの操作状態検出信号に応じ、レコーダ34に記録された音声信号を読み出してDSP14に供給し、DSP14はバス及び音声信号出力回路12を介して音声信号を外部に出力する。音声出力回路12は、アナログ出力ポートやデジタル出力ポート等の各種出力ポートを有する。
【0020】
図2に、本実施形態におけるマルチトラックレコーダ1の平面図を示す。また、
図3及び
図4に、それぞれマルチトラックレコーダの正面図及び背面図を示す。
【0021】
マルチトラックレコーダ1の操作面には、各種操作子20と、表示部24が設けられる。操作子20として、インプットセッティングキー20a、アサインキー20b、入力チャンネル用レベルつまみ20c、マスターレベルつまみ20d、パン(PAN)つまみ20e、レベルつまみ20f、録音ファンクションキー20g、ホームキー20h、メニューキー20i、データホイール20j、停止キー20k、再生キー20m、録音キー20nが設けられる。
【0022】
インプットセッティングキー20aは、入力ソースを選択するためのキーであり、ユーザはこのキーを操作することで入力ソースを内蔵マイクとするか、あるいは入力ポートとするかを切り替える。本実施形態におけるマルチトラックレコーダ1は、後述する入力チャンネル用レベルつまみ20cに示されるように、入力A及び入力Bの2つの入力チャンネルを有し、各入力チャンネルにおいて個別に入力ソースを切り替えることが可能となっている。すなわち、入力Aチャンネルについて、内蔵マイクとするか入力ポートとするかを切り替えることができ、かつ、入力Bチャンネルについても、内蔵マイクとするか入力ポートとするかを切り替えることができる。
【0023】
アサインキー20bは、トラック1〜トラック4の各トラックに入力音声信号をアサインするためのキーであり、ユーザはこのキーを操作することで各トラックに音声信号を割り当てて録音する。
【0024】
入力チャンネル用レベルつまみ20cは、各入力ソースのレベルを調整するためのつまみであり、ユーザはこのつまみを操作することで各入力ソースのレベルを調整する。例えば、入力Aチャンネルの入力ソースを内蔵マイクに設定した場合、このつまみを用いて内蔵マイクから入力される音声信号のレベルを調整する。
【0025】
マスターレベルつまみ20dは、ステレオ出力信号のモニタレベルを調整するためのつまみである。
【0026】
パン(PAN)つまみ20eは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、各トラックの音声信号のステレオミックスにおける定位(PAN)を調整するつまみである。
【0027】
レベルつまみ20fは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、各トラックの音声信号のレベルを調整する。
【0028】
録音ファンクションキー20gは、トラック1〜トラック4の各トラックに設けられ、ユーザはこのキーを操作することで該当トラックが録音待機状態に移行する。なお、録音待機状態において、再生キー20mと録音キー20nを操作することで、録音待機状態のトラックに音声信号が記録される。
【0029】
ホームキー20hは、表示部24にホーム画面を表示するためのキーである。ホーム画面は、マルチトラックレコーダ1の基本画面であり、マルチトラックレコーダ1の電源をオンした直後に表示される画面である。他の画面を表示中にホームキー20hを操作すると、表示部24にホーム画面が表示される。ホーム画面には、レコーダモータや電源状態、レコーダのトランスポート状態、レコーダのタイムカウンタ、トラック1〜トラック4の状態やレベルメータ、ステレオ出力のレベルメータ等が表示される。
【0030】
メニューキー20iは、表示部24にメニュー画面を表示するためのキーである。メニュー画面には、インフォメーション、トラック編集、データバックアップ、チューナ等が含まれる。トラック編集には、クローントラック、クリーンアウト、サイレンス、カット、オープン等が含まれる。クローントラックは、トラックを複製するメニューであり、クリーンアウトはトラックを削除するメニューであり、サイレンスは部分的に消去するメニューであり、カットは部分的に削除するメニューであり、オープンは無音を挿入するメニューである。
【0031】
データホイール20jは、メニュー操作において、各種パラメータの値を変化させる、あるいは項目を選択するためのホイールである。
【0032】
一方、
図3の正面図に示すように、マルチトラックレコーダ1の正面には、左右に内蔵マイク36,38が設けられる。通常、内蔵マイク36、38は、ステレオ録音の際の左右のマイク、すなわち内蔵マイク36をLチャンネル用、内蔵マイク38をRチャンネル用として用いられるが、これに限定されるわけではなく、内蔵マイク36あるいは内蔵マイク38のいずれかのみを用いる、あるいは内蔵マイク36をRチャンネル用、内蔵マイク38をLチャンネル用に用いてもよい。内蔵マイク36,38から入力された音声信号のレベルは、入力チャンネル用レベルつまみ20cで調整される。
【0033】
また、
図4の背面図に示すように、マルチトラックレコーダ1の背面には、入力ポート40,42が設けられる。入力ポート40,42から入力された音声信号のレベルも、同様に入力チャンネル用レベルつまみ20cで調整される。
【0034】
ユーザは、これらの操作子20を用いて、所望のチャンネル及びトラックを選択し、音声信号を所望のトラックに割り当てることができる。例えば、入力Aチャンネルとして入力ポート40を選択してギター音声信号を入力し、入力Bチャンネルとして入力ポート42を選択してドラム音声信号を入力し、アサインキー20bを操作して
チャンネルA(ギター音声信号)−トラック1
チャンネルB(ドラム)−トラック2
等とアサインする。アサイン情報は、RAM30に記憶される。また、ユーザは、これらの操作子20を用いて、トラック3及びトラック4に関して、モノラルとするかステレオにするかを切り替えて設定する。例えば、
トラック3−ステレオ
トラック4−モノラル
等である。具体的には、トラック3及びトラック4は、それぞれ2つのチャンネルから構成され、モノラルに設定された場合には2つのチャンネルのいずれか一方のみの有効とし、ステレオに設定された場合には2つのチャンネルのいずれも有効としてLチャンネル及びRチャンネルとする。従って、トラック3をステレオに設定した場合、トラック3にはLチャンネル用音声信号とRチャンネル用音声信号が記録されることになる。
【0035】
次に、本実施形態における、トラック3及びトラック4のモノラル/ステレオの設定と、入力ソースの設定について具体的に説明する。
【0036】
図5に、ユーザがメニューキー20iとデータホイール20jを操作して、トラックタイプを選択した場合に表示部24に表示される画面例を示す。CPU32は、メニューキー20iとデータホイール20jの操作に応じ、トラック3とトラック4のタイプ、すなわちモノラルとするかステレオとするかの設定画面を表示部24に表示する。画面には、トラック3、トラック4それぞれにおいて、モノラルとステレオの選択肢が表示されており、ユーザはデータホイール20jを操作していずれかを選択する。
図5では、ユーザがトラック3をステレオ、トラック4をモノラルに設定した場合を示す。トラック3及びトラック4のタイプ情報は、RAM30に記憶される。なお、トラック1及びトラック2は、モノラルで固定であるため、そのタイプ情報をRAM30に記憶しておく必要はないが、トラック1〜トラック4の全てのタイプ情報をまとめてテーブルとしてRAM30に記憶してもよい。モノラルの識別子をM、ステレオの識別子をSとすると、トラック3のみをステレオに設定する場合、
トラック1:M
トラック2:M
トラック3:S
トラック4:M
等である。
【0037】
また、CPU32は、ユーザがインプットセッティングキー20aを操作すると、これに応じて表示部24に入力設定画面を表示する。
【0038】
図6に、表示部24に表示される入力設定画面の一例を示す。トラック1〜トラック4毎に、入力ソースとして選択できる選択肢が表示される。なお、この画面の前提として、入力Aチャンネル及び入力Bチャンネルともに入力ソースが内蔵マイクか入力ポートのいずれかが既に設定されているものとし、例えば内蔵マイクが設定されているものとする。また、
図3の正面図に示すように、向かって左側の内蔵マイクをマイクA、向かって右側の内蔵マイクをマイクBと称するものとする。
【0039】
トラック1はモノラルトラックであり、入力ソースとして1つのソースしかアサインすることができないから、CPU32は、トラック1のトラックタイプがモノラルであることに応じて、選択肢としてマイクAとマイクBを選択可能に表示する。図では、マイクAが選択され設定されたことを示す。
【0040】
トラック2もモノラルトラックであり、入力ソースとして1つのソースしかアサインすることができないから、CPU32は、トラック2のトラックタイプがモノラルであることに応じて、選択肢としてマイクAとマイクBを選択可能に表示する。図では、マイクBが選択され設定されたことを示す。
【0041】
トラック3はステレオに設定されており、入力ソースとして2つのソースをアサインする必要があることから、CPU32は、トラック3のトラックタイプがステレオであることに応じて、選択肢としてマイクAとマイクBの組み合わせのみを表示する。図において、IN A−Bとあるのは、トラック3のLチャンネルにマイクA、RチャンネルにマイクBをアサインすることを意味する。ユーザは、マイクAとマイクBの組み合わせ(ペア)しか選択できないので、これを選択して設定することで、ステレオトラックであるにもかかわらずマイクAのみを単独で選択してしまう、あるいはマイクBのみを単独で選択してしまう等の設定ミスがない。
【0042】
トラック4はモノラルに設定されており、入力ソースとして1つのソースしかアサインすることができないから、CPU32は、トラック4のトラックタイプがモノラルであることに応じて、選択肢としてマイクAとマイクBを選択可能に表示する。図では、マイクAが選択され設定されたことを示す。
【0043】
このように、本実施形態では、CPU32が、RAM30に記憶されたトラック1〜トラック4のトラックタイプを参照し、トラックタイプに応じて可能な入力ソースの選択肢を自動的に表示部24に表示するので、ユーザは可能な選択肢の中から所望の入力ソースを選択するだけでよいので、入力ソースの設定が容易化される。特に、トラック1〜トラック4のうち、特定のトラック(本実施形態ではトラック3)のみをステレオトラックに設定した場合においても、CPU32がこのトラックタイプに応じて自動的に選択肢を変化させて表示するので、入力ソースの設定し忘れや設定ミスを確実に防止できる。
【0044】
本実施形態では、トラック3のみがステレオに設定された場合について説明したが、トラック4のみがステレオに設定された場合、あるいはトラック3、トラック4がともにステレオに設定された場合も同様にトラックタイプに応じて選択肢が自動的に変化することは言うまでもない。
【0045】
トラックタイプに応じた選択肢を列挙すると、以下の通りである。
トラックタイプがモノラルの場合:マイクAあるいはマイクB
トラックタイプがステレオの場合:マイクAとマイクBのペア
【0046】
なお、トラックタイプがステレオの場合、LチャンネルとしてマイクA、RチャンネルとしてマイクBの他に、LチャンネルとしてマイクB、RチャンネルとしてマイクAとすることもあり得、あるいはLチャンネルとRチャンネルをともにマイクAとする、あるいはマイクBとすることもあり得るので、トラックタイプがステレオの場合、CPU32は以下のように選択肢を表示してもよい。
マイクAとマイクBのペア(
図6においてIN A−Bの表示)
マイクBとマイクAのペア(
図6においてIN B−Aの表示)
マイクAとマイクAのペア(
図6においてIN A−Aの表示)
マイクBとマイクBのペア(
図6においてIN B−Bの表示)
【0047】
本実施形態では、トラック1〜トラック4を有するマルチトラックレコーダを例示したが、これに限定されるものではなく、5トラック以上を有するマルチトラックレコーダにも同様に適用できる。
【0048】
また、本実施形態では、トラック3,4のトラックタイプ、あるいはトラック1〜トラック4の全てのトラックタイプをRAM30に記憶しているが、フラッシュROM28等の不揮発性メモリに記憶し、電源をオフした後でもトラックタイプの情報を保持するように構成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、入力ソースが内蔵マイクの場合について説明したが、入力ポートの場合も同様であり、マイクAを入力ポートAに置換し、マイクBを入力ポートBに置換すればよい。