(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電池パックの製造効率の向上が求められている。しかしながら従来の電池ホルダは、
図16に示したように複数のホルダ部材を用い、各ホルダ部材同士をビスによる螺合構造や係合部による嵌合構造を用いて組み合わせて製造される場合がある。これにより電池ホルダの部品点数や工程数が増加し、電池パックの製造効率が低下するおそれがある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、一体部材で構成され、適切に素電池を保持できる電池ホルダを有し、良好な製造効率で製造することが可能な電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の電池パックは、長尺状の素電池と、前記素電池を収納する収納空間を有してなる電池ホルダとを備え、前記電池ホルダは、前記収納空間に収納された前記素電池の複数の表面領域を、前記素電池の長手方向に沿って前記素電池の短手方向を通る互いに異な
り相対する方向より交互に被覆する複数の表面被覆部と、前記素電池の長手方向の両端部を被覆する一対の端部被覆部とを有するように一体部材で構成され、
前記表面被覆部は、前記素電池の全周の1/4以上、1/2以下に対応する表面領域を被覆し、前記一対の端部被覆部のうち少なくとも一方は、可撓性を有する
ツメ部である。
【0007】
ここで前記電池ホルダは、並列に配された複数の前記収納空間を有し、複数の前記素電池が前記各収納空間に収納されている構成とすることもできる。
また、前記電池ホルダを前記長手方向の一端部より平面視する際、前記各表面被覆部は互いに前記収納空間を取り囲むように環状に配されている構成とすることもできる。
また、前記素電池は円筒型であり、前記短手方向は前記素電池の径方向であって、前記
表面被覆部は半円筒形状である構成とすることもできる。
【0008】
また、前記一対の端部被覆部のうち少なくとも一方は、可撓性を有するツメ部である構成とすることもできる。
また、前記素電池及び前記電池ホルダとを被覆する外装ケースを有し、前記ツメ部は、前記外装ケースの内面と前記素電池の両方に当接している構成とすることもできる。
また、前記素電池に電気接続された回路基板を有し、前記電池ホルダは、前記回路基板の固定部を有する構成とすることもできる。
【0009】
さらに、前記電池ホルダは樹脂材料からなる射出成形品である構成とすることもできる。
また、前記異なる方向は、互いに相対する方向とすることもできる。
また
、ホルダ製造方法は、第1金型と第2金型とを接触させて配置する配置ステップと、接触させた前記第1金型及び前記第2金型間に形成される射出空間に溶融樹脂を射出して電池ホルダを成形する射出成形ステップとを有し、前記第1金型及び前記第2金型は、一方が一の方向を長手とする溝部、他方が前記溝部と前記射出空間をおいて嵌合可能な凸部を、前記一の方向に沿って交互にそれぞれ複数有し、前記
射出成形ステップでは、前記各溝部及び前記各凸部の間に存在する前記射出空間を用いて、前記一の方向から平面視し
た際に環状の樹脂部材で取り囲まれた収納空間を有する電池ホルダを一体的に成形する。
【0010】
ここで前記溝部は溝幅方向の断面がU字状であり、前記樹脂部材は複数の半円筒部を含むこともできる。
ま
た電池パックの製造方法は、電池ホルダに素電池を収納する、収納ステップと、前記電池ホルダ及び前記素電池を外装体で被覆する被覆ステップとを有し、前記電池ホルダとして、上記いずれかに記載
の電池ホルダの製造方法により製造した電池ホルダを用い、前記収納ステップでは、前記収納空間に長尺状の前記素電池を前記第
一の方向に沿って収納するものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る電池パックでは、電池ホルダが素電池の長手方向に沿った複数の表面領域を、素電池の長手方向に沿って素電池の短手方向を通る互いに異なる方向より交互に被覆する複数の表面被覆部を有している。
このように電池ホルダにおいて各表面被覆部を配置すれば、素電池の長手方向より電池ホルダを平面視した際、各表面被覆部が素電池の長手方向に沿って互いに重なる位置関係となるのを回避できる。従って例えば射出成形法に基づき、キャビティとコアからなる比較的簡単な構成の一対の金型を用いて、良好な製造効率で電池ホルダを製造できる。これにより電池パックの製造効率も良好に向上させることが可能である。
【0012】
さらに電池ホルダを一体部材で構成し、部品点数を減らしたことによっても、電池ホルダ及びこれを用いた電池パックの製造効率の向上を期待できる。
また、電池ホルダにおいて、素電池の長手方向両端面を端部被覆部で被覆し、素電池の長手方向に沿った複数の表面領域を複数の表面被覆部で被覆することで、長尺状の素電池を長手方向及び短手方向の両方より適切に保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。尚、当然ながら本発明は以下に示す各実施の形態に限定されず、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
<実施の形態1>
(電池パック1の外観構成)
本発明の実施の形態1に係る電池パック1について
図1(a)、
図1(b)を用いて説明する。
図1(a)は電池パック1を上面側から見た外観図である。
図1(b)は電池パック1を下面側から見た外観図である。
【0015】
電池パック1は、一対のケース部材(第1ケース部材10A及び第2ケース部材10B)が組み合わされてなる外装ケース10を有し、Z方向を厚み方向、X方向を幅方向、Y方向を長手方向とする外観形状を持つ。第1ケース部材10A及び第2ケース部材10Bの形状は、電池パック1の給電対象機器に合わせて調整されている。第2ケース部材10Bには切欠部13Bが設けられ、コネクタ41が露出している。
(電池パック1の内部構成)
電池パック1の内部構成を
図2に基づいて説明する。
図2は電池パック1の内部構成を示す展開図(組図)である。
【0016】
図2に示すように、電池パック1は、外装ケース10(第1ケース部材10A及び第2ケース部材10B)と、コアパック2とを有してなる。
コアパック2は、素電池20A〜20Fと、リード部材3と、保護回路基板4と、電池ホルダ5と、クッション6とを有してなる。
図2に示すように、電池パック1の全体構成としては、第1ケース部材10A及び第2ケース部材10Bの内部にコアパック2を収納して構成される。
【0017】
以下、電池パック1の各構成要素を順に説明する。
[外装ケース10]
外装ケース10は、第1ケース部材10Aと第2ケース部材10Bとを有してなる(
図2)。第1ケース部材10Aと第2ケース部材10Bとは、いずれもポリカーボネート(PC)等の樹脂材料からなる射出成形品である。
【0018】
図2に示すように、第1ケース部材10A(第2ケース部材10B)は、コアパック2が収納できる形状に形成される。第1ケース部材10Aは上面に切欠部12Aを有し、第2ケース部材10Bは切欠部12Aに嵌合される延出部12Bを有する。延出部12Bにはコネクタ41を露出するための開口部13Bが形成されている。
第1ケース部材10Aには係合孔11Aが設けられ、第2ケース部材10Bの内部には係合孔11Aと嵌合可能な係合ツメ11Bが設けられる。係合ツメ11Bが係合孔11Aに係合することで、外装ケース10の内部が封止される。
[素電池20A〜20F]
素電池20A〜20Fは円筒型のリチウムイオン電池であり、円筒型外装缶の内部に正負両極板をセパレータを介して巻回してなる電極体と、これに含浸させた電解液が収納され、封口板で封止されてなる(不図示)。コアパック2では、素電池20A〜20FはX方向を長手方向とし、Y方向に並列されて収納される(
図2)。
【0019】
素電池20A〜20Fは同一構成であり、外観的には周面22A〜22Fと、長手(Y)方向の一端面に設けられた正極端子23A〜23Fと、長手(Y)方向の他端面に設けられた負極端子21A〜21Fとを同順に有する。周面22A〜22Fはポリエチレン(PE)製の熱収縮チューブで被覆されている。
電池パック1では素電池20A〜20Fとして充電容量に優れるリチウムイオン電池を利用する。しかしながら素電池20A〜20Fの種類はこれに限定されず、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等、その他の二次電池を使用できる。また素電池20A〜20Fは、長尺状であればよく、円筒型に限定されない。例えば角型であってもよい。
[保護回路基板4]
保護回路基板4は、基板本体40と、コネクタ41とを有する(
図2)。
【0020】
基板本体40は、コンポジット材料からなる基板の表面に、複数の電気素子(セラミックコンデンサやICチップ)やサーミスタ素子等の安全素子が実装されてなる。基板本体40の表面にはリード部材3の基板接続部32a、32g、33b〜33fを挿通して電気接続するためのスリット状の接続部42〜48が設けられる。さらに、電池ホルダ5側の位置決めピンP
6を挿通するための挿通孔49A、49Bが設けられる。
【0021】
コネクタ41は、主としてナイロンやポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等の樹脂部材からなる本体内部に導電部材が配設されてなり、電池パック1を給電対象機器と電気接続するために用いられる。
[リード部材3]
リード部材3は、複数のリード板3a〜3gを有してなり、素電池20A〜20Fを所定の配列(ここでは直列)に電気接続するとともに、保護回路基板4と素電池20A〜20Fとを電気接続するために用いられる(
図2)。
【0022】
リード板3a〜3gは、一例として通電性及び溶接特性に優れる板状の金属材料(NiP、銅合金またはNi−Fe−Niクラッド材)からなる。リード板3a(3g)は、端子接続部30a(30g)と、端子接続部30a(30g)より延出された延長部31a(31g)と、延長部31a(31g)の末端に配された基板接続部32a(32g)とを有する。同様に、リード板3b〜3fは、一対の端子接続部30b、31b、30c、31c、30d、31d、30e、31e、30f、31fと、端子接続部30b、31b、30c、31c、30d、31d、30e、31e、30f、31fより延出された延長部32b〜32fと、延長部32b〜32fの末端に配された基板接続部33b〜33fとを有する。
【0023】
リード部材3の具体的な電気接続例を
図2に基づいて説明する。素電池20Aの負極端子21Aには、リード板3aの端子接続部30aが電気接続される。素電池20Aの正極端子23Aと素電池20Bの負極端子21Bにはリード板3bの端子接続部30b、31bが同順に電気接続される。素電池20Bの正極端子23Bと素電池20Cの負極端子21Cにはリード板3cの端子接続部30c、31cが同順に電気接続される。素電池20Cの正極端子23Cと素電池20Dの負極端子21Dにはリード板3dの基板接続部30d、31dが同順に電気接続される。素電池20Dの正極端子23Dと素電池20Eの負極端子21Eとはリード板3eの基板接続部30e、31eが同順に電気接続される。素電池20Eの正極端子23Eと素電池20Fの負極端子21Fにはリード板3fの基板接続部30f、31fが同順に電気接続される。素電池20Fの正極端子23Fには、リード板3gの端子接続部30gが電気接続される。このような各リード板3a〜3gと各素電池20A〜20Fとの電気接続は、例えばスポット溶接でなされている。
【0024】
リード板3a〜3gの基板接続部32a、33b〜33f、32gは、同順に基板本体40の接続部42、46、43、47、45、48、44に電気接続される。リード板3a〜3gと基板接続部32a、33b〜33f、32gとは一体的に構成されている。
基板接続部32a、33b〜33f、32gを基板本体40と電気接続することにより、保護回路基板4において各素電池20A〜20Fの接続間の各中間電位が管理される。
[クッション6]
クッション6は、電池ホルダ5の下面側に設けられるゴム製の帯状体であり、電池パック1の衝撃吸収を行うために配設する(
図2)。
[電池ホルダ5]
電池ホルダ5は、樹脂材料を射出成形してなる部品である。電池ホルダ5はその特徴の一つとして、一体部材で構成されている。
【0025】
図3は、電池ホルダ5を上面5T側から見た外観図である。
図4は、電池ホルダ5を下面5U側から見た外観図である。
図5はツメ部56B周辺の構成を示す部分拡大図である。
図6はツメ部56B及び庇部55A、55C周辺の構成を示す部分拡大図である。
図7は素電池20A〜20Fを収納した電池ホルダ5の様子を示す外観図であり、(a)は下面5U側からの外観図、(b)は上面5Т側からの外観図である。
【0026】
電池ホルダ5は、
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fと、溝部50A〜50F、51A〜51F、52A〜52F、53A〜53F、54A〜54Fと、庇部55A〜55Fと、ツメ部56A〜56Fと、基板固定部P
1、P
2と、基板載置部P
3と、リード板案内部P
4と、基板ガイドP
5と、位置決めピンP
6とを有する。
【0027】
基板固定部P
1、P
2は電池ホルダ5上に保護回路基板4を位置決めして直接固定するためのツメ部である。
基板載置部P
3は、保護回路基板4を載置するための4箇所の突起で構成される。
リード板案内部P
4は、各リード板3a〜3gの延長部を保護回路基板4側に案内するための複数のリブで構成される。
【0028】
基板ガイドP
5は、保護回路基板4の周縁と当接し、電池ホルダ5上で保護回路基板4を位置決めするために用いられる。
位置決めピンP
6は、基板本体40の挿通孔49A、49Bに挿通される突出部であり、基板ガイドP
5とともに電池ホルダ5上における保護回路基板4を位置決めするために用いられる。
【0029】
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fは、素電池20A〜20Fの周面22A〜22Fにおける複数の表面領域を被覆する部位であり、半円筒部として構成され、X方向から見るとU字状断面を有している(
図3、
図4)。また電池ホルダ5をX方向から平面視した際、
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fの各々は収納空間1S〜6Sを取り囲むように環状に配されている。
【0030】
溝部53A〜53F、52A〜52F、54A〜54F、50A〜50F、51A〜51Fは、素電池20A〜20Fの周面22A〜22Fにおける複数の表面領域と当接する部位であり、周面22A〜22Fに合わせた形状を有する。溝部53A〜53F、52A
〜52F、54A〜54F、50A〜50F、51A〜51Fは、同順に表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fと表裏一体の関係にある。
【0031】
電池ホルダ5を上面5T側から見た場合(
図3)、
表面被覆部58A〜58F、57A〜57F、59A〜59FがX方向に一定間隔をおいて配置される。各
表面被覆部58A〜58F、57A〜57F、59A〜59Fの間に溝部50A〜50F、51A〜51Fが配置されている。
電池ホルダ5を下面5U側から見た場合(
図4)、
表面被覆部60A〜60F、61A〜61FがX方向に一定間隔をおいて配置される。
表面被覆部60A〜60F、61A〜61Fの間及び外側に溝部51A〜51F、52A〜52F、53A〜53Fが配置されている。
【0032】
図3(
図4)に示すように、
表面被覆部58A〜58F、57A〜57F、59A〜59F(溝部54A〜54F、53A〜53F、52A〜52F)と溝部50A〜50F、51A〜51F(
表面被覆部61A〜61F、60A〜60F)は、X方向に沿って、素電池20A〜20Fの短手(径)方向を通る互いに異なる方向より、交互に周面22A〜22Fを被覆するように配置される。具体的に
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59Fは、それぞれ
図3に示すZ1〜Z6方向より、周面22A〜22Fを被覆するように配置される。また、
表面被覆部60A〜60F、61A〜61Fは、それぞれ
図4に示すZ7〜Z12方向より、周面22A〜22Fを被覆するように配置される。一例として、Z1〜Z6方向とZ7〜Z12方向は、いずれもZ方向と平行で且つ互いに相対する方向としている。これにより電池ホルダ5では、Y方向に6つの収納空間1S〜6Sが存在する。収納空間1S〜6Sには同順に素電池20A〜20FがX方向を長手方向、Y方向を並設方向として収納される(
図7(a)、
図7(b)参照)。
【0033】
庇部55A〜55Fは、電池ホルダ5のX方向一端部において、収納空間1S〜6Sの内方に突設される(
図6の庇部55A、55Cを参照)。これにより正極端子23A〜23Fが存在する素電池20A〜20Fの端部を部分的に被覆して保持する(
図7(a)、
図7(b))。
ツメ部56A〜56Fは、庇部55A〜55Fと一対をなす素電池20A〜20Fの端部被覆部であり、電池ホルダ5のX方向他端部において、Z方向に沿って収納空間1S〜
6Sの内方に突設される(
図6のツメ部56Bを参照)。これにより負極端子21A〜21Fが存在する素電池20A〜20Fの端部を部分的に被覆して保持する(
図7(a)、
図7(b))。ツメ部56A〜56Fは
表面被覆部58A〜58Fより連続して形成され、Z方向に沿って撓ませることができる(
図5及び
図6のツメ部56Bを参照)。素電池20Bの収納時には、オペレータがツメ部56A〜56FをZ方向に沿って外方に撓ませることで、素電池20A〜20Fを収納空間1S〜6Sにスムーズに収納できる。
【0034】
庇部55A〜55Fとツメ部56A〜56Fは、素電池20A〜20Fの配列に合わせてY方向に交互に配置されている(
図3)。
このように電池ホルダ5は、素電池20A〜20Fをその長手(X)方向両端と、
表面22A〜22Fに垂直な方向を含む複数の方向より適切に保持できる。特に電池ホルダ5をX方向より平面視した際、素電池20A〜20Fは周面22A〜22Fの全周がいずれかの
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fで覆われており、電池ホルダ5によって良好に保持される。
【0035】
電池ホルダ5では、半円筒状の表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61FをX方向に沿って、素電池20A〜20Fの周面22A〜22FをZ軸上の片面側及びその反対面側より交互に配置している。このため、Z方向或いは逆Z方向から電池ホルダ5を見ると、各表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fは互いに重ならない配置関係を有する。
【0036】
このように電池ホルダ5では、上面5T及び下面5Uに存在する全ての表面領域がZ方向或いは逆Z方向に沿って外部に解放され、上面5T及び下面5Uを平面視した際に重なって隠れる表面領域がほぼ存在しない。電池パック1では、電池ホルダ5をこのような形状とすることで、射出成形法に基づき、キャビティ及びコアのみの組み合わせからなる比較的簡単な一対の金型を用いて電池ホルダ5を一体部材で比較的簡単に構成することができる。
(電池パック1の製造工程)
以下、電池パック1の製造工程を例示する。
[電池ホルダ5の製造]
電池ホルダ5を射出成形法に基づき製造する。
【0037】
図8に電池ホルダ5の射出成形に用いる固定金型のキャビティ7A(第1金型)と可動金型のコア7B(第2金型)とを示す。
図8(a)はキャビティ7A及びコア7Bを上方から見た透視図である。
図8(b)はキャビティ7A及びコア7Bを側方から見た透視図である。さらに
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)、
図10(a)、
図10(b)は、同順に射出成形時における
図8(a)のF
1−F
1´(
図8(b)のG
1−G
1´))矢視断面図、F
2−F
2´(
図8(b)のG
2−G
2´))矢視断面図、F
3−F
3´(
図8(b)のG
3−G
3´))矢視断面図、F
4−F
4´矢視断面図、F
5−F
5´矢視断面図を示す。
【0038】
図8の各図では、キャビティ7Aの射出空間70A、コア7Bの射出空間70Bの輪郭を点線で示している。キャビティ7Aの上面には、射出空間70Aに連通する5箇所の溶融樹脂の射出口G0が設けられている。各図中のLはキャビティ7Aとコア7Bの合わせ目である。射出空間70A、70Bは、電池ホルダ5の形状に合わせて形成されている。
すなわちキャビティ7A及びコア7Bには、
図8(a)、
図8(b)及び
図9(a)〜(c)に示すように、
表面被覆部57E〜59E、57D〜59D、57A〜59Aを形成する位置に、X方向を長手方向とする金型溝部72E、74E、78E、80E、72D、74D、78D、80D、72A、74A、78A、80Aと、これらに射出空間70A、70Bをおいて嵌合可能な凸部71E、73E、75E、77E、79E、71D、73D、75D、77D、79D、71A、73A、75A、77A、79Aとが形成されている。
【0039】
金型溝部72E、74E、78E、80E、72D、74D、78D、80D、72A、74A、78A、80Aと、凸部71E、73E、75E、77E、79E、71D、73D、75D、77D、79D、71A、73A、75A、77A、79Aとは、X方向に沿って交互に配置される。尚、これと同様に、キャビティ7A及びコア7Bの対向表
面には、電池ホルダ5のその他の
表面被覆部を形成する位置にも金型溝部と凸部とが形成されている(
図10(a)〜(b)を参照)。
【0040】
電池ホルダ5の製造時には、キャビティ7Aを固定し、コア7BをZ方向に移動させてキャビティ7Aに接触させるように配置する(配置ステップ)。その後、キャビティ7A及びコア7Bの間に形成される射出空間70A、70Bに対し、射出口G0より溶融樹脂を射出し、射出成形を行う(成形ステップ)。
ここで、電池ホルダ5の上面5T及び下面5Uにおける各表面領域は、いずれもZ方向或いは逆Z方向に沿って外部に解放され、これらの方向より平面視した際に影となる表面領域(アンダーカット領域)が存在しない。従って成形ステップでは、
図9(a)〜(c)、
図10(a)〜(b)の各図に示すように、複雑なスライド金型を用いなくても、キャビティ7A及びコア7Bの組み合わせだけで電池ホルダ5を射出成形することができる。これにより電池パック1の製造効率の向上を期待できる。また、キャビティ7A及びコア7Bのみを使用したシンプルな金型構造とすることで、金型のイニシャルコストの低減にも一定の効果を望むことができる。
【0041】
さらに、キャビティ7A及びコア7Bのみを使用することにより、射出成形される電池ホルダ5には、基本的にパートラインがキャビティ7A及びコア7Bの合わせ目Lに沿った部分にしか形成されない(
図8(b)参照)。このようにパートラインが少ないので、電池ホルダ5の成形精度を維持し易いという利点がある。
[素電池20A〜20Fの収納]
上記作製した電池ホルダ5の各収納空間1S〜6S(
図3、
図4参照)に素電池20A〜20Fをそれぞれ収納する。このときツメ部56A〜56Fは素電池20A〜20Fに押されてZ方向に撓み、素電池20A〜20Fを乗り越えると元の形状に復元する。
【0042】
電池ホルダ5内では、ツメ部56A〜56F及び庇部55A〜55Fによって各素電池20A〜20FのX方向に沿った位置が規制される。さらに各素電池20A〜20Fの周面の一部(
図11のa1〜a5、b1〜b5を参照)が各周面被覆部57、58、59、60、61に被覆されることよって、各素電池20A〜20FのYZ平面上の各方向に沿った位置が規制される。
【0043】
ここで
図11は、電池ホルダ5により被覆される素電池20A、20Bの表面領域を模式的に示す図である。電池ホルダ5では当図に示すように、素電池20A(20B)において、径方向を通るZ方向の両側に位置する半円筒状の複数の表面領域a1〜a5(b1〜b5)が、長手(X)方向に沿って
表面被覆部57A〜59A、60A〜61A(57B〜59B、60B〜61B)(
図7(a)、(b)参照)により交互に被覆される。また、長手(X)方向両端部の一部の表面領域a6、a7(b6、b7)が、ツメ部56A、56B及び庇部55A、55Bにより被覆される。
【0044】
尚、
図11には図示しないが、その他の素電池20C〜20Fの各表面領域も、同様に電池ホルダ5において被覆される。
これにより電池ホルダ5内において、各素電池20A〜20FはXYZ各方向を含む全方向に対して安定した位置に保持される。特に電池ホルダ5をX方向より平面視すると、各素電池20A〜20Fの周面22A〜22Fの各全周がいずれかの
表面被覆部57A〜57F、58A〜58F、59A〜59F、60A〜60F、61A〜61Fにより被覆されている。
【0045】
従って、電池ホルダ5から素電池20A〜20Fが脱落するおそれが少なく、その後の工程を良好に行えるので、製造効率の向上を期待できる。
[リード部材3の電気接続等]
図2に示す各リード板3a〜3gと各素電池20A〜20Fとの配置関係に従い、各リード板3a〜3gを各素電池20A〜20Fとそれぞれ電気接続する。
【0046】
素電池20Aの負極端子21Aに対し、リード板3aの端子接続部30aをシリーズスポット溶接で電気接続する。
素電池20Aの正極端子23Aと素電池20Bの負極端子21Bとに、同順にリード板3bの端子接続部30b、31bをシリーズスポット溶接で電気接続する。
素電池20Bの正極端子23Bと素電池20Cの負極端子21Cとに、リード板3cの端子接続部30c、31cをシリーズスポット溶接で電気接続する。
【0047】
素電池20Cの正極端子23Cと素電池20Dの負極端子21Dとに、リード板3dの基板接続部30d、31dをシリーズスポット溶接で電気接続する。
素電池20Dの正極端子23Dと素電池20Eの負極端子21Eとに、リード板3eの基板接続部30e、31eをシリーズスポット溶接で電気接続する。
素電池20Eの正極端子23Eと素電池20Fの負極端子21Fとに、リード板3fの基板接続部30f、31fをシリーズスポット溶接で電気接続する。
【0048】
素電池20Fの正極端子23Fに、リード板3gの端子接続部30gをシリーズスポット溶接で電気接続する。
各リード板3a〜3gの延長部31a、32b〜32f、31gを電池ホルダ5のX方向或いは逆X方向に曲折加工する。一方、延長部31a、32b〜32f、31gに対して基板接続部32a、33b〜33f、32gをZ方向に曲折加工する(
図2)。
[保護回路基板4の配設]
基板本体40のY方向周縁を基板ガイドP
5と当接させ、位置決めピンP
6を挿通孔49A、49Bに挿通させる(
図2)。保護回路基板4を電池ホルダ5の基板固定部P
1、P
2の間に取り付ける(
図2、
図3参照)。さらに、基板本体40の接続部42〜48に基板接続部32a、33b〜33f、32gを挿通させる。この状態で接続部42〜48に基板接続部32a、33b〜33f、32gとをはんだ溶接で電気接続する。
【0049】
電池ホルダ5の下面5U側に両面テープ等を用いてクッション6を取り付ける(
図2)。
以上でコアパック2が完成する。
[電池パック1の完成]
第1ケース10Aの内部にコアパック2を一部収納する(
図2)。このとき第1ケース10Aの内部では、
図12に示す断面図のように、ツメ部56Eが第1ケース部材の内面と当接する。ツメ部56Eの位置は、素電池20Eの負極端子21Eを被覆した状態で規制され、外部に撓むことが無い。これによりツメ部56Eは素電池20Eの周面22Eと第1ケース10Aの内面の両方に当接するため、素電池20Eが電池ホルダ5に確実に保持され、外部に脱落しない。尚、その他のツメ部56A〜56D、56Fも同様に第1ケース部材10Aの内面と当接して位置規制され、素電池20A〜20D、20Fが電池ホルダ5によって確実に保持される。
【0050】
その後、第1ケース部材10Aの係合孔11Aに第2ケース部材10Bの係合ツメ11Bを係合させる。
以上で電池パック1が完成する。
次に、本発明の別の実施の形態について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
<実施の形態2>
図13は本発明の実施の形態2に係る電池ホルダ5aの外観図である。
【0051】
電池ホルダ5との違いは、
表面被覆部57A〜57Fに対し、X方向に横断するスリッ
ト62A〜62Fを設けた点にある。各スリット62A〜62Fの幅は、
表面被覆部57A〜57Fの幅よりも十分に狭く設定されている。
このような構成を有する電池ホルダ5aを用いた場合も、実施の形態1と同様の効果を期待できる。また、スリット62A〜62Fの採用により電池ホルダ5aの重量を軽減し、部材コストをさらに低くできる利点を有する。
<実施の形態3>
図14は本発明の実施の形態4に係る電池ホルダ5bの外観図である。(a)は電池ホルダ5bを下面側から見た外観図、(b)は電池ホルダ5cを側面から見た外観図である。
【0052】
電池ホルダ5との違いは、
表面被覆部60A〜60F、61A〜61Fに対し、X方向に横断するスリット63A〜63F、64A〜64Fを設けた点にある。実施の形態2と同様に、スリット63A〜63F、64A〜64Fの幅は、
表面被覆部60A〜60F、61A〜61Fの幅よりも十分に狭く設定されている(
図14(b))。
このような構成を有する電池ホルダ5bを用いた場合も、実施の形態1及び2とほぼ同様の効果を期待できる。すなわち、各素電池20A〜20Fを一体部材からなる電池ホルダ5bで複数の方向より適切に保持でき、且つ、電池パックの製造効率を向上させることができる。さらに、スリット63A〜63F、64A〜64Fの採用により電池ホルダ5bの重量を軽減し、部材コストを低く抑える効果を奏する。
【0053】
尚、実施の形態2、3で電池ホルダに設けるスリットの数は適宜調節が可能であるが、あまりスリットの数を多くすると電池ホルダの剛性が低下することに留意すべきである。
<実施の形態4>
図15は本発明の実施の形態3に係る電池ホルダ5cの外観図である。(a)は電池ホルダ5cを上面側から見た外観図、(b)は電池ホルダ5cを下面側から見た外観図である。
【0054】
電池ホルダ5との違いは、溝部50A〜50F(及び
表面被覆部60A〜60F)を省略し、
表面被覆部58A〜58Fと
表面被覆部57A〜57F(溝部52A〜52Fと溝部53A〜53F)とを隔てることなくそれぞれX方向に連続させた点にある。
このような構成を有する電池ホルダ5cを用いた場合も、実施の形態1と同様の効果を期待できる。また、電池ホルダ5に比べて高い剛性を期待することができる。
<その他の事項>
本発明において、電池ホルダに収納する素電池の数は当然ながら6個に限定されず、これ以外の数であってもよい。また、電池ホルダの一の収納空間に複数の素電池を直列で収納することもできる。
【0055】
また、外装ケースに収納する電池ホルダは1個に限定されず、2個以上であってもよい。
実施の形態1では回路基板として保護回路基板4を示したが、当然ながら保護回路基板4以外の回路基板を用いても良い。
実施の形態1の金型では7Aをキャビティ、7Bをコアとしたが、これとは逆に7Aをコア、7Bをキャビティとすることもできる。
【0056】
実施の形態1では、電池ホルダの各
表面被覆部が素電池の周面の表面領域をほぼ半周分被覆するサイズとしている(
図7(a)、(b)、
図11参照)。しかしながら、
表面被
覆部のサイズは適宜調節が可能であり、これに限定されない。但し、
表面被覆部があまり小さいと、
表面被覆部で素電池の周面を良好に保持するのが困難になる。目安としては、電池ホルダをX方向から平面視した場合、各
表面被覆部のサイズを素電池の全周の1/4程度以上、1/2程度以下に対応する表面領域を被覆できるサイズとするのが望ましい。
【0057】
本発明の電池ホルダは、素電池の複数の表面領域を、素電池の長手方向に沿って、複数の
表面被覆部が径方向を通る一定の方向より交互に被覆する構成としている。しかしながら本発明で
表面被覆部が「交互に被覆する」素電池の表面領域は、幾何学的に定義される厳密な表面領域のみに限定されない。すなわち実施の形態2(
図13)及び実施の形態3(
図14)のように、各スリットにより素電池の周面を多少外部に露出させながら、各
表面被覆部で素電池の周面を被覆する場合も含む。
【0058】
上記各実施の形態では、一対の端部被覆部のうち一方をツメ部、他方を庇部としたが、両方をツメ部としてもよい。