特許第6102131号(P6102131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6102131楽音制御装置、楽音制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102131
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】楽音制御装置、楽音制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/053 20060101AFI20170316BHJP
   G10H 1/12 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G10H1/053 D
   G10H1/12
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-199482(P2012-199482)
(22)【出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-56027(P2014-56027A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】田近 義則
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−219539(JP,A)
【文献】 特開昭51−060516(JP,A)
【文献】 特開2003−345353(JP,A)
【文献】 特開平06−061790(JP,A)
【文献】 特開2000−003173(JP,A)
【文献】 特開2001−175259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表わすノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をカットするフィルタと、
前記ノートオンイベント発生手段にて発生するノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更手段と、
を備え
前記フィルタは、前記ノートオンイベントによる楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行し、
前記フィルタ変更手段は、前記ノートオンイベントの数に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更するとともに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高が低くなるのに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域上限が高くなるよう変更することを特徴とする楽音制御装置。
【請求項2】
前記フィルタ変更手段は、
前記ノートオンイベントの数に加えてさらに、前記ノートオンイベント発生手段により前記ノートオンイベントの発生開始時からの経過時間の合計に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する、
ことを特徴とする請求項に記載の楽音制御装置。
【請求項3】
前記フィルタ変更手段は、
前記ノートオンイベントの数に加えてさらに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音のベロシティに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する、
ことを特徴とする請求項に記載の楽音制御装置。
【請求項4】
演奏操作に対応してノートオンイベントを発生する楽音制御装置が実行する音制御方法であって、
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を示すノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生ステップと、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をフィルタによりカットするカットステップと、
前記発生するノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更ステップと、
を含み、
前記カットステップでは、前記ノートオンイベントによる楽音の低域周波数成分をカットし、
前記フィルタ変更ステップでは、前記ノートオンイベントの数に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更するとともに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高が低くなるのに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域上限が高くなるよう変更することを特徴とする楽音制御方法。
【請求項5】
コンピュータを、
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表わすノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の低域周波数成分の少なくとも一部をフィルタによりカットするカット手段と、
前記発生されたノートオンイベントの数に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更するとともに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高が低くなるのに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域上限が高くなるよう変更するフィルタ変更手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音制御装置、楽音制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティックギターなどの弦楽器は、中空の共鳴胴と呼ばれるボディに弦の振動が伝達されることにより弦の振動がボディ内において共鳴することで、共鳴音を発生することができる。このような共鳴音を擬似的に電子楽器において出力させる技術として、例えば、和音を発生させた場合に、高調波音を合成することで、共鳴音を付加させることができる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
アコースティックギターなど共鳴胴を持つ弦楽器は楽器固有の共振周波数が必ず存在する。楽器固有の共振周波数のうち、最も低い共振周波数は、楽器の最低音の基本周波数近傍であることが多い。例えば、一般的なアコースティックギターの場合、最低音がE2であるならば、その基本周波数は約82.4Hzとなるのに対して、最低共振周波数は80Hz〜110Hzとなっていることが多い。
この共振周波数成分は、楽音の基本周波数がそれに近い場合に強く現れるのはもちろんのこと、オクターブ上に近い場合にも現れることが知られている。例えば、共振周波数が80Hz近傍にある楽器でE3(基本周波数は約164Hz)の楽音を鳴らすと、80Hzの共振周波数成分も発生する。通常、楽器のサンプリングは、単音単位で収録することが多く、アコースティックギターを単音で収録した場合には、サンプリングされたサンプリング音には、当然単音分の共振周波数成分が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−200087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法によりサンプリングされたサンプリング音を用いて発音することを考えると、単音で発音する場合には、単音分の共振周波数成分のみが発音されるため特に問題は起こらない。しかし、和音やアルペジオなど複数の音が重なるタイミングで発音した場合には、サンプリング音に含まれている各音に含まれる共振周波数成分も発音数の分だけ重複することとなる。その結果、複数の音が重なるタイミングで発音した場合には、実際の楽器を演奏した時よりも低域が強調された鳴り方となる。
この対策として、予めサンプリング音に含まれる共振周波数成分をイコライジングして削った状態で格納する方法がある。この場合、和音やアルペジオで発音した場合には、実際に近い鳴り方を再現することが可能となるが、その一方で単音で発音した場合には、本来楽音に含まれていた共振周波数成分が削られているために、響きのない細い音となり実際とは異なる鳴り方となる。
特にアコースティックギターのように、単音でメロディを演奏する場合も複数音で和音を演奏する場合もある楽器では、何れの演奏においてもその楽器らしい鳴り方が求められるので、上記問題が楽器らしさを損なう要因としてクローズアップされやすい。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、共振周波数成分の重複による特定帯域の強調を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の楽音制御装置は、
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表わすノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をカットするフィルタと、
前記ノートオンイベント発生手段にて発生するノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更手段と、
を備え
前記フィルタは、前記ノートオンイベントによる楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行し、
前記フィルタ変更手段は、前記ノートオンイベントの数に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更するとともに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高が低くなるのに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域上限が高くなるよう変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、共振周波数成分の重複による特定帯域の強調を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る鍵盤処理を実行可能な電子楽器のハードウェアの構成を示すブロック図である。
図2図1の電子楽器のROMに格納されたNと、fcの関係を示すテーブルの図である。
図3図1の電子楽器が実行する鍵盤処理の流れを説明するフローチャートである。
図4図1の電子楽器が実行する第2実施形態に係る鍵盤処理の流れを説明するフローチャートである。
図5図1の電子楽器のROMに格納されたNOTEと、Tmax2の関係を示すテーブルの図である。
図6図1の電子楽器のROMに格納されたVELと、Tmax3の関係を示すテーブルの図である。
図7図1の電子楽器が実行する第2実施形態の鍵盤処理の流れを説明するフローチャートである。
図8図1の電子楽器が実行するタイマインタラプト処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
電子楽器1は、例えばキーボードにより構成され、各鍵に対する押鍵操作を検出して、その電気信号を増幅して出力することにより、押鍵操作に基づく楽音を発生することができる。この場合、ユーザが和音で演奏した場合であっても、共振周波数成分の重複による低域周波数成分の帯域の強調を回避して、実際に近い楽器本来の鳴り方を再現することが可能となる。
図1は、後述の図3を参照して説明する鍵盤処理を実行可能な電子楽器1のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【0012】
電子楽器1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、操作子群15と、音源16と、HPF(High−pass filter)17と、出力部18と、を備えている。
【0013】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部(図示せず)からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0014】
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0015】
CPU11、ROM12、RAM13、音源16、及びHPF17は、バス14を介して相互に接続されている。
【0016】
ROM12は、CPU11に実行させる種々の処理、例えば、操作子群15のオン・オフ、スイッチの操作、弦の振動レベルに応じた楽音の発音、MIDIデータに基づく処理などのプログラムや、図2で説明するテーブルを格納する。また、ROM12は、ピアノ、ギター、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの楽音を生成するための波形データを格納した波形データエリア、及び、自動伴奏パターンなどを構成する楽音のソングデータを格納したソングデータエリアを有する。RAM13は、ROM12から読み出されたプログラムや、処理の過程で生成されたデータを記憶する。
【0017】
操作子群15は、音色などを選択する機能スイッチ群(図示せず)や、電子楽器1の鍵毎に設けられ、ユーザの押鍵操作を検出する鍵スイッチ(図示せず)などにより構成される。機能スイッチ群は、演奏モードや演奏の開始及び停止を指示する。
CPU11は、ユーザの押鍵操作により各鍵スイッチがオンされる毎に、押鍵操作を示すノートオンイベントを発生する。ここで、CPU11は、ユーザの押鍵操作により各鍵スイッチがオンされる毎に発生するノートオンイベントの数に応じて、HPF17のフィルタの特性を変更する。詳細には、CPU11は、ノートオン中のノート数に応じてHPF17でカットする低域周波数成分の帯域を変更する。
図2を参照して、図1の電子楽器1のROM12に格納された「N」と、「fc」の関係を示すテーブルについて説明する。
【0018】
図2は、図1の電子楽器1のROM12に格納された「N」と、「fc」の関係を示すテーブルの図である。
「N」とは、ノートオン中のノート数、即ち、ノートオン中の楽音数を示し、和音やアルペジオなど複数の鍵に対し押鍵操作がなされることにより、同時に発音される楽音数(同時発音数)を示す。
「N」は、後述の図3で説明する鍵盤処理のステップS11で「0」にリセットされる。そして、「N」は、押鍵操作があった場合に、ステップS13の処理において、「1」加算され、離鍵操作があった場合に、ステップS17の処理において、「1」減算される。
「fc」とは、カットオフ周波数を示す。HPF17は、fcから上の帯域だけを通過させるフィルタ処理を実行する。
ここで、「N」と「fc」との関係について説明すると、「N」が増加すると、「fc」も比例して増加する。例えば、「N」が「1」の場合は、「fc」は「110」であるのに対し、「N」が「2」の場合は、「fc」は「131」に増加する。
したがって、ノートオン中のノート数が多ければ多いほど、即ち、同時に発音される楽音数が多いほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による特定帯域の強調を回避することができる。
【0019】
図1に戻り、音源16は、例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)データで発音が指示された楽音の波形データを生成し、その波形データをD/A変換して得られるオーディオ信号をHPF17に出力して、発音及び消音の指示を出す。
【0020】
HPF17は、音源16から出力されたオーディオ信号に含まれるノートオンイベントの発音楽音を通過させて、所定の周波数帯域の成分をカットするフィルタにより構成されている。HPF17は、オーディオ信号のうち、fc(カットオフ周波数)より高い周波数の成分はほとんど減衰させず、fc(カットオフ周波数)より低い周波数の成分を逓減させることにより、ノートオンイベントの発音楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行する。HPF17は、フィルタ処理を実行したオーディオ信号を出力部18に出力する。
【0021】
出力部18は、HPF17から出力されたオーディオ信号を増幅して出力するアンプ回路(図示せず)と、アンプ回路から入力したオーディオ信号により楽音を放音するスピーカ(図示せず)と、を備える。HPF17により発生した波形により、アンプ回路、スピーカを介して発音を行う。
【0022】
次に、図3を参照して、このような図2のハードウェアの構成の電子楽器1が実行する、鍵盤処理について説明する。
図3は、図1の電子楽器1が実行する鍵盤処理の流れを説明するフローチャートである。
【0023】
鍵盤処理は、本実施形態では、ユーザが電源を投入する操作を操作子群15に対して行った場合、その操作を契機として開始される。即ち、次のような処理が実行される。
【0024】
ステップS11において、CPU11は、電子楽器1の全体を初期設定するためのイニシャライズ処理を実行する。具体的には、例えば、CPU11は、後述するステップS13の処理で設定されるノートオン中のノート数「N」を「0」にリセットする。
【0025】
ステップS12において、CPU11は、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの状態を判断することにより、新たな鍵変化があったか否かを判定する。この処理では、ユーザにより鍵に対する押鍵操作がなされたか、又は鍵に対する離鍵操作がなされたか否かが判定されることで、新たな鍵変化があったか否かが判定される。新たな鍵変化がない場合には、ステップS12において「なし」であると判定されて、処理はステップS12に戻る。即ち、新たな鍵変化があるまでステップS12の処理が繰り返し行われて、鍵盤処理は待機状態となる。ユーザによる押鍵操作に基づき、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの何れかがオンされることにより、新たな鍵変化があった場合には、ステップS12においてONであると判定されて、処理はステップS13に進む。
【0026】
ステップS13において、CPU11は、ノートオン中のノート数「N」に「1」を加算してRAM13に格納する。即ち、ステップS12において、押鍵操作がなされていると判定された場合には、CPU11は、同時に発音されている楽音数が増加したと判定して、ノートオン中のノート数「N」を増加する。
【0027】
ステップS14において、CPU11は、図2のテーブルを参照して、N(ノートオン中のノート数)に対応するfc(カットオフ周波数)を抽出する。
【0028】
ステップS15において、CPU11は、ステップS14において抽出したfc(カットオフ周波数)に対応するフィルタ係数をHPF17に供給する。
【0029】
ステップS16において、CPU11は、押鍵操作が行われた鍵に対応した音高(ベロシティ)の楽音の発音を指示するノートオンコマンドを作成する。そして、CPU11は、作成したノートオンコマンドに基づいてノートオンイベントを作成し、作成したノートオンイベントを音源16に供給する。この処理が終了すると、処理はステップS12に戻る。
【0030】
ステップS12において、ユーザによる離鍵操作に基づき、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの何れかがオフされることにより、新たな鍵変化があった場合には、ステップS12においてOFFであると判定されて、処理はステップS17に進む。
【0031】
ステップS17において、CPU11は、ノートオン中のノート数「N」から「1」を減算してRAM13に格納する。即ち、ステップS12において、離鍵操作がなされていると判定された場合には、CPU11は、同時に発音されている楽音数が減少したと判定して、ノートオン中のノート数「N」を減少する。
【0032】
ステップS18において、CPU11は、図2のテーブルを参照して、N(ノートオン中のノート数)に対応するfc(カットオフ周波数)を抽出する。
【0033】
ステップS19において、CPU11は、ステップS18において抽出したfc(カットオフ周波数)に対応するフィルタ係数をHPF17に供給する。
【0034】
ステップS20において、CPU11は、離鍵操作が行われた鍵に対応した音高(ベロシティ)の楽音の消音を指示するノートオフコマンドを作成する。そして、CPU11は、作成したノートオフコマンドに基づいてノートオフイベントを作成し、作成したノートオフイベントを音源16に供給する。この処理が終了すると、処理はステップS12に戻る。即ち、鍵盤処理では、ユーザが電源をオフにするなど、処理を終了する操作が操作子群15に対して行われるまでの間、ステップS12乃至S20の処理が繰り返し行われる。
そして、音源16は、ステップS16及びステップS20において作成されたノートオンイベント又はノートオフイベントに対応するオーディオ信号をHPF17に出力する。そして、HPF17は、音源16から供給されたオーディオ信号のうち、ステップS15又はステップS19において供給されたfc(カットオフ周波数)より低い周波数の成分を逓減させることにより、ノートオンイベントの発音楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の電子楽器1は、各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表すノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をカットするHPF17と、ノートオンイベント発生手段にて発生するノートオンイベントの数に応じて、HPF17のフィルタの特性を変更するフィルタ変更手段と、を備える。
したがって、和音やアルペジオなど複数の音が重なるタイミングで発音した場合には、重複して発生するノートオンイベントの数に応じて、発音楽音をカットするフィルタの特性が変更されることとなる。これにより、サンプリング音に含まれている共振周波数成分が重複することにより発生する所定の帯域が強調されるという不具合が解消される。その結果、共振周波数成分の重複による特定帯域の強調を回避して、実際に近い楽器本来の鳴り方を再現することが可能となる。さらに、単音で発音した場合であっても、本来楽音に含まれていた共振周波数成分が削られることなく、実際の楽器に近い響きのある鳴り方を再現することが可能となる。したがって、特にアコースティックギターのように、単音でメロディを演奏する場合も複数音で和音を演奏する場合もある楽器の音を再現する場合であっても、実際の楽器に近い響きのある鳴り方を再現することができる。
【0036】
さらに、本実施形態の電子楽器1のHPF17は、ノートオンイベントによる楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行し、フィルタ変更手段は、ノートオンイベントの数に応じて、カットする低域周波数成分の帯域を変更する。
したがって、和音やアルペジオなど複数の音が重なるタイミングで発音した場合には、重複して発生するノートオンイベントの数に応じて、発音楽音をカットするフィルタの特性として低域周波数成分の帯域が変更されることとなる。これにより、サンプリング音に含まれている共振周波数成分が重複することにより発生する低域周波数成分の帯域が強調されるという不具合が解消される。その結果、共振周波数成分の重複による低域周波数成分の帯域の強調を回避して、実際に近い楽器本来の鳴り方を再現することが可能となる。さらに、単音で発音した場合であっても、本来楽音に含まれていた共振周波数成分が削られることなく、実際の楽器に近い響きのある鳴り方を再現することが可能となる。したがって、特にアコースティックギターのように、単音でメロディを演奏する場合も複数音で和音を演奏する場合もある楽器の音を再現する場合であっても、実際の楽器に近い響きのある鳴り方を再現することができる。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態に係る電子楽器1について説明した。
次に、本発明の第2実施形態に係る電子楽器1について説明する。
【0038】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る電子楽器1は、第1実施形態に係る電子楽器1と基本的に同様のハードウェア構成及び機能的構成を取ることができる。
従って、図2は、第2実施形態に係る電子楽器1のハードウェアの構成を示すブロック図でもある。
【0039】
さらに、第2実施形態に係る電子楽器1が実行する鍵盤処理は、第1実施形態に係る各処理と基本的に同様の流れとなる。従って、図3は、第2実施形態に係る鍵盤処理の流れを説明するフローチャートでもある。
ただし、第2実施形態では、鍵盤処理のうちステップS13〜S20の処理については、第1実施形態で採用された図3のフローチャートではなく、図7のフローチャートが採用される。また、fcを抽出する場合に参照するテーブルについては、第1実施形態で採用された図2のテーブルではなく、図4図6のテーブルが採用される。
以下、図4図8を参照して第2実施形態の電子楽器1について説明する。
【0040】
図4を参照して、図1の電子楽器1のROM12に格納された「Ton」と、「fc」の関係を示すテーブルについて説明する。
【0041】
図4は、図1の電子楽器1のROM12に格納された「Ton」と、「fc」の関係を示すテーブルの図である。
「Ton」とは、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計を示す。「Ton」は、押鍵操作がなされることにより、新たなノートオンがあってから加算される「Tmax1」が時間経過と共に0まで減算されるカウンタを加算した合計である。「Tmax1」は、押鍵操作が行われる度に加算される固定値である。「Ton」は、後述の図7で説明する鍵盤処理のステップS61で「0」にリセットされる。そして、「Ton」は、ステップS64及びステップS68において加算される。そして加算された「Ton」は、後述の図8を参照して説明するタイマインタラプト処理においてデクリメントされて、時間経過と共に0まで徐々に減算される。
「fc」とは、カットオフ周波数を示す。HPF17は、fcから上の帯域だけを通過させるフィルタ処理を実行する。
ここで、「Ton」と「fc」との関係について説明すると、「Ton」が増加すると、「fc」も比例して増加する。例えば、「Ton」が「150」の場合は、「fc」は「110」であるのに対し、「Ton」が「300」の場合は、「fc」は「131」に増加する。
したがって、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」が多ければ多いほど、所定の期間内に発音される楽音が発生されるタイミングが近く、かつ、その際に発音される楽音数が多いと判断される。したがって、「Ton」が多ければ多いほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
【0042】
図5を参照して、図1の電子楽器1のROM12に格納された「NOTE」と、「Tmax2」の関係を示すテーブルについて説明する。
【0043】
図5は、図1の電子楽器1のROM12に格納された「NOTE」と、「Tmax2」の関係を示すテーブルの図である。
「NOTE」とは、押鍵操作がなされた鍵に基づく鍵番号に対応する音高を示す。「NOTE」が「0」に近づくほど、低音域の鍵に対応し、「NOTE」が大きくなるほど、高音域の鍵に対応する。
「Tmax2」とは、各「NOTE」に対応して設定された時間を示す。「Tmax2」は、後述の図7で説明する鍵盤処理のステップS68において「Ton」に加算される。そして加算された「Ton」は、後述の図8を参照して説明するタイマインタラプト処理においてデクリメントされて、時間経過と共に0まで徐々に減算される。
ここで、「NOTE」と「Tmax2」との関係について説明すると、「NOTE」が増加すると、「Tmax2」も反比例して減少する。例えば、「NOTE」が「10」の場合は、「Tmax2」は「3000」であるのに対し、「NOTE」が「40」の場合は、「Tmax2」は「2000」に減少する。
したがって、より低音域の鍵に対する押鍵操作が行われるほど、「Ton」に加算される「Tmax2」の値が大きくなる。したがって、より低音域の鍵に対する押鍵操作が行われるほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
【0044】
図6を参照して、図1の電子楽器1のROM12に格納された「VEL」と、「Tmax3」の関係を示すテーブルについて説明する。
【0045】
図6は、図1の電子楽器1のROM12に格納された「VEL」と、「Tmax3」の関係を示すテーブルの図である。
「VEL」とは、押鍵操作がなされた際の音の強弱を表す数値であるベロシティ(velocity)を示す。「VEL」が「0」に近づくほど、小さいベロシティに対応し、「VEL」が大きくなるほど、大きいベロシティに対応する。
「Tmax3」とは、各「VEL」に対応して設定された時間を示す。「Tmax3」は、後述の図7で説明する鍵盤処理のステップS68において「Ton」に加算される。そして加算された「Ton」は、後述の図8を参照して説明するタイマインタラプト処理においてデクリメントされて、時間経過と共に0まで徐々に減算される。
ここで、「VEL」と「Tmax3」との関係について説明すると、「VEL」が増加すると、「Tmax3」は比例して増加する。例えば、「VEL」が「40」の場合は、「Tmax3」は「500」であるのに対し、「VEL」が「50」の場合は、「Tmax3」は「1000」に増加する。
したがって、より大きい音量で発音されるほど、「Ton」に加算される「Tmax3」の値が大きくなる。したがって、より大きい音量で発音されるほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
次に、図7を参照して、このような図2のハードウェアの構成の電子楽器1が実行する、第2実施形態の鍵盤処理について説明する。
【0046】
図7は、図1の電子楽器1が実行する、第2実施形態に係る鍵盤処理の流れを説明するフローチャートである。
【0047】
上述した第1実施形態における図3の鍵盤処理では、ノートオンイベントの数に応じてHPF17によりカットする低域周波数成分の帯域を変更しているのに対して、第2実施形態における鍵盤処理では、ノートオンイベントの数に加えてさらに、ノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計、ノートオンイベントの発音楽音の音高、及び発音楽音のベロシティに応じて、カットする低域周波数成分の帯域を変更している点が差異点である。詳細には、第2実施形態では、第1実施形態に係るステップS13〜S20の処理に代えて、ステップS63〜S74の処理が実行される点が差異点である。
【0048】
鍵盤処理は、本実施形態では、ユーザが電源を投入する操作を操作子群15に対して行った場合、その操作を契機として開始される。即ち、次のような処理が実行される。
【0049】
ステップS61において、CPU11は、電子楽器1の全体を初期設定するためのイニシャライズ処理を実行する。具体的には、例えば、CPU11は、後述するステップS64又はS68の処理で加算される各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」を「0」にリセットする。
【0050】
ステップS62において、CPU11は、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの状態を判断することにより、新たな鍵変化があったか否かを判定する。この処理では、ユーザにより鍵に対する押鍵操作がなされたか、又は鍵に対する離鍵操作がなされたか否かが判定されることで、新たな鍵変化があったか否かが判定される。新たな鍵変化がない場合には、ステップS62において「なし」であると判定されて、処理はステップS62に戻る。即ち、新たな鍵変化があるまでステップS62の処理が繰り返し行われて、鍵盤処理は待機状態となる。ユーザによる押鍵操作に基づき、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの何れかがオンされることにより、新たな鍵変化があった場合には、ステップS62においてONであると判定されて、処理はステップS63に進む。
【0051】
ステップS63において、CPU11は、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」に「Tmax1」を加算する。即ち、ステップS62において、押鍵操作がなされていると判定された場合には、CPU11は、所定の期間内に発音される楽音数が増加したと判定して、「Ton」を増加する。
【0052】
ステップS64において、CPU11は、押鍵操作がなされた鍵に基づく鍵番号を「NOTE」に格納する。
【0053】
ステップS65において、CPU11は、ステップS64において格納された「NOTE」に基づいて、図5のテーブルから「Tmax2」を抽出する。
【0054】
ステップS66において、CPU11は、押鍵操作がなされた鍵に基づくベロシティを「VEL」に格納する。
【0055】
ステップS67において、CPU11は、ステップS66において格納された「VEL」に基づいて、図6のテーブルから「Tmax3」を抽出する。
【0056】
ステップS68において、CPU11は、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」にステップS65で抽出した「Tmax2」及びステップS67において抽出した「Tmax3」を加算する。
【0057】
ステップS69において、CPU11は、図4のテーブルを参照して、現在の「Ton」に対応する、fc(カットオフ周波数)を抽出する。
【0058】
ステップS70において、CPU11は、ステップS69において抽出したfc(カットオフ周波数)に対応するフィルタ係数をHPF17に供給する。
【0059】
ステップS71において、CPU11は、押鍵操作が行われた鍵に対応した音高(ベロシティ)の楽音の発音を指示するノートオンコマンドを作成する。そして、CPU11は、作成したノートオンコマンドに基づいてノートオンイベントを作成し、作成したノートオンイベントを音源16に供給する。この処理が終了すると、処理はステップS62に戻る。
【0060】
ステップS62において、ユーザによる離鍵操作に基づき、各鍵に対応する操作子群15の鍵スイッチの何れかがオフされることにより、新たな鍵変化があった場合には、ステップS62においてOFFであると判定されて、処理はステップS72に進む。
【0061】
ステップS72において、CPU11は、押鍵操作がなされた鍵に基づく鍵番号に対応する「NOTE」を抽出する。
【0062】
ステップS73において、CPU11は、VELに「0」を格納する。
【0063】
ステップS74において、CPU11は、離鍵操作が行われた鍵に対応した音高(ベロシティ)の楽音の消音を指示するノートオフコマンドを作成する。そして、CPU11は、作成したノートオフコマンドに基づいてノートオフイベントを作成し、作成したノートオフイベントを音源16に供給する。この処理が終了すると、処理はステップS62に戻る。即ち、鍵盤処理では、ユーザが電源をオフにするなど、処理を終了する操作が操作子群15に対して行われるまでの間、ステップS62乃至S74の処理が繰り返し行われる。
【0064】
以上、図7を参照して、鍵盤処理の流れについて説明した。
次に、図8を参照して、タイマインタラプト処理の詳細な流れについて説明する。
【0065】
次に、図8を参照して、このような図1のハードウェアの構成の電子楽器1が実行する、タイマインタラプト処理について説明する。
タイマインタラプト処理は、図7の鍵盤処理とは独立して実行される処理(並行して実行される場合あり)であり、ユーザが電源を投入する操作を操作子群15に対して行った場合、その操作を契機として開始され、次のような処理が繰り返し実行される。タイマインタラプト処理は、主として時間の計測に使用される。
図8は、図1の電子楽器1が実行するタイマインタラプト処理の流れを説明するフローチャートである。
【0066】
ステップS91において、CPU11は、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」をデクリメントして、経過時間をカウントする。
この処理では、CPU11は、内部で発生する所定周期のクロックに同期したタイミングに基づき、経過時間をカウントする。具体的には、ソングでのイベント間のΔt時間の計測を行う。このΔt時間は、時間経過毎にクリアされる。この処理が終了すると、処理はステップS91に戻る。即ち、タイマインタラプト処理では、ユーザが電源をオフにするなど、処理を終了する操作が操作子群15に対して行われるまでの間、ステップS91の処理が繰り返し行われる。
【0067】
以上説明したように、第2実施形態の電子楽器1のフィルタ変更手段は、ノートオンイベントの数に加えてさらに、ノートオンイベントの発生開始時からの経過時間の合計に応じて、カットする低域周波数成分の帯域を変更する。
したがって、各鍵に対する押鍵操作に基づきノートオンイベントが発生してから経過した経過時間の合計「Ton」が多ければ多いほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
一般的に、アコースティックギターのような減衰系楽器は、発音体の振動の減衰に応じて共振周波数成分も減衰する。したがって、振動の減衰を考慮して低音域の強調を回避することができるので、実際の楽器の演奏状態により近づけることが可能となる。
【0068】
さらに、本実施形態の電子楽器1のフィルタ変更手段は、ノートオンイベントの数に加えてさらに、ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高に応じて、カットする低域周波数成分の帯域を変更する。
したがって、より低音域の鍵に対する押鍵操作が行われるほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
一般的に、アコースティックギターのような楽器は、音高(ピッチ)が、その楽器の出せる低音域に近づくほど音量が増加する。したがって、音高(ピッチ)に応じて低音域の強調を回避することができるので、実際の楽器の演奏状態により近づけることが可能となる。
【0069】
さらに、本実施形態の電子楽器1のフィルタ変更手段は、ノートオンイベントの数に加えてさらに、ノートオンイベントに基づき発生する楽音のベロシティに応じて、カットする低域周波数成分の帯域を変更する。
したがって、より大きい音量で発音されるほど、低域周波数成分の帯域が逓減される。これにより、複数の音が重なるタイミングで発音した場合であっても、共振周波数成分の重複による低音域の強調を回避することができる。
一般的に、アコースティックギターのような楽器は、発音体の振動が強いほど共振周波数の音量も増加する。したがって、音量に応じて低音域の強調を回避することができるので、実際の楽器の演奏状態により近づけることが可能となる。
【0070】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
【0071】
上述の実施形態では、HPF17により、ノートオンイベントの発音楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行しているがこれに限られるものではない。例えば、オーディオ信号のうち、fc(カットオフ周波数)より低い周波数の成分はほとんど減衰させず、fc(カットオフ周波数)より高い周波数の成分を逓減させるローパスフィルタにより、ノートオンイベントの発音楽音の高域成分をカットするフィルタ処理を実行することができる。
【0072】
また、上述の実施形態では、本発明が適用される電子機器は、キーボードなどの電子楽器1を例として説明したが、特にこれに限定されない。本発明は、コードを発音できる発音機能を有する電子楽器一般に適用することができる。具体的には、例えば、本発明は、ショルダーキーボード、エレクトリック・ギター又はベースなどに適用可能である。
【0073】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、図3図7及び図8のフローチャートにおいて説明した機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が電子楽器1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能的構成を用いるのかは特に図3図7及び図8のフローチャートの例に限定されない。また、1つの機能的構成は、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0074】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータなどにネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0075】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア(図示せず)により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体などで構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスクなどにより構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)などにより構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)などにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図1のROM12や、図示せぬハードディスクなどで構成される。
【0076】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0077】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表わすノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をカットするフィルタと、
前記ノートオンイベント発生手段にて発生するノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更手段と、
を備えることを特徴とする楽音制御装置。
[付記2]
前記フィルタは、前記ノートオンイベントによる楽音の低域周波数成分をカットするフィルタ処理を実行し、
前記フィルタ変更手段は、前記ノートオンイベントの数に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する
ことを特徴とする付記1に記載の楽音制御装置。
[付記3]
前記フィルタ変更手段は、
前記ノートオンイベントの数に加えてさらに、前記ノートオンイベント発生手段により前記ノートオンイベントの発生開始時からの経過時間の合計に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する、
ことを特徴とする付記2に記載の楽音制御装置。
[付記4]
前記フィルタ変更手段は、
前記ノートオンイベントの数に加えてさらに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音の音高に応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する
ことを特徴とする付記2に記載の楽音制御装置。
[付記5]
前記フィルタ変更手段は、
前記ノートオンイベントの数に加えてさらに、前記ノートオンイベントに基づき発生する楽音のベロシティに応じて、カットする前記低域周波数成分の帯域を変更する、
ことを特徴とする付記2に記載の楽音制御装置。
[付記6]
演奏操作に対応してノートオンイベントを発生する楽音制御装置が実行する音制御方法であって、
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を示すノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生ステップと、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をフィルタによりカットするカットステップと、
前記発生するノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更ステップと、
を含むことを特徴とする楽音制御方法。
[付記7]
コンピュータを、
各演奏操作に応答して、当該演奏操作を表わすノートオンイベントを発生するノートオンイベント発生手段と、
前記ノートオンイベントに基づいて発生する楽音の周波数成分の少なくとも一部をフィルタによりカットするカット手段と、
前記発生されたノートオンイベントの数に応じて、前記フィルタの特性を変更するフィルタ変更手段と、
して機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0078】
1・・・電子楽器、11・・・CPU、12・・・ROM、13・・・RAM、14・・・バス、15・・・操作子群、16・・・音源、17・・・HPF、18・・・出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8