【実施例】
【0034】
以下に、実施例を示す。
本実施例では、ポジ型レジストを用いるが、本発明はネガ型レジストにも適応できる。
最初に、入力部101に描画パターンデザインを入力する。入力されたパターンデザインは、記憶部102に記憶される。
図4に今回実施例に用いたパターンデザインを示す。
図4のパターンは
図1に示すような大面積描画の一部を表す。
図4(a)(b)(c)から、パターンデザインが周期性を持つパターンから構成されていることがわかる。
【0035】
次に、基本パターンの抽出部103では、記憶部102から取得したデザインパターンの情報から、周期性を持つパターンデザインを構成する基本パターンを取得する。
図4の場合、
図5のような基本パターンが得られる。これらの基本パターンの情報を、後方散乱補正係数に対する図形の描画位置補正量算出部104に出力する。
【0036】
後方散乱補正係数に対する図形の描画位置補正量算出部104では、シミュレーションを使って図形の描画位置補正量を取得する。今回はシミュレーションを用いるが、実験によって図形の描画位置補正量を求めて用いても良い。
【0037】
上記基本パターン抽出部103から取得した情報から、基本パターンを構成する図形の配置と寸法を取得する。
図5に示すように図形9、10、11に分けられ、それぞれ図形m1、m2、m3とする。それぞれの寸法は縦400nm、横40nm、200nm、80nmで、配置は
図6に示すように基本パターンの中心を(0,0)としたx−y座標で表すと、それぞれの図形の中心は(−180、0)、(−20、0)、(160、0)である。
上記
図5、
図6における図形の寸法・配置の情報と、記憶部102に記憶されている基板材料やレジスト材料の情報を用いてシミュレーションを行う。シミュレーションでは、電子線散乱した場合にレジストに蓄積されるエネルギーの値を計算する。それぞれの図形についてシミュレーションを行うと、
図7が得られる。
図7では、図形ごとの蓄積エネルギー分布と、それらを合成した分布を表す。蓄積エネルギー分布は基板に水平方向の分布を表し、レジスト深さ方向には規格化している。レジストパターン寸法は、合成した蓄積エネルギー分布と記憶部102に記憶されているエネルギー閾Ethから計算される。
上記蓄積エネルギー分布の計算方法と同じ方法で、後方散乱による蓄積エネルギーの影響を計算する。
図8のパターンを任意の露光量で描画したときの蓄積エネルギー分布から、パターンで囲まれた未露光部分の蓄積エネルギー分布は
図9のように求められる。分布の中心付近の値から、後方散乱の影響による蓄積エネルギーの値が求められる。
【0038】
記憶部102に記憶されている後方散乱補正係数と、前記後方散乱の影響による蓄積エネルギーの値と、前記図形ごとの蓄積エネルギー分布(
図7)から、後方散乱補正係数に対応する図形の最適な描画位置を計算する。
記憶部102に記憶されている描画面積密度に対する後方散乱補正係数を
図10に示す。
図10では、描画面積密度が50%のときの最適露光量を1としている。
描画面積密度が10%のときの蓄積エネルギー分布と、図形m1、m2、m3の位置を最適化した場合の蓄積エネルギー分布を
図11に示す。図形位置の最適化は、設計位置と閾値エネルギーEthから予想されるレジストパターンの位置のずれが小さくなるように、最小二乗法を用いて計算したが、他の方法を用いてもよい。
図11から、位置補正の有無で蓄積エネルギー分布がずれているのがわかる。
次に、描画面積密度に対する、図形m1〜m3の中心位置の、位置補正の有無による違いを
図12に示す。
図12では、設計上の中心位置と、レジストパターンの中心位置の差分を表す。位置補正が無い場合、図形の中心位置は描画面積密度に対して変化する。一方、位置補正がある場合、m1〜m3の中心位置は描画面積密度に関わらず、差分0nmで重なっていて、設計通りであることがわかる。
位置補正の有無によるレジストパターンの寸法と設計寸法の違いを
図13に示す。
図13はそれぞれの図形の設計寸法とのずれの合計を比較した結果を表す。
図13から、図形の中心位置を補正しても、レジストパターンの寸法はほとんど変わらないことがわかる。
後方散乱補正係数に対する図形位置の補正量を
図14に示す。取得した後方散乱補正係数に対する図形の位置補正量を、図形の最適描画位置算出部106に出力する。
【0039】
デザインパターンの後方散乱補正係数の選択部105では、記憶部102に記憶されているパターンデザインと、後方散乱係数の情報を取得する。取得したパターンデザインを任意の大きさの区画で区切り、前記区画内の描画面積密度を計算する。前記描画面積密度に対応する後方散乱係数を選択し、前記区画内のパターンに適応する。
図4の場合、描画面積密度は(a)12.8%、(b)25.6%、(c)51.2%である。後方散乱補正係数は(a)1.36、(b)1.21、(c)0.99である。
前記パターンの設計位置と、後方散乱係数の情報を、図形の最適描画位置算出部106に出力する。
【0040】
最適描画位置算出部106では、前記パターンの設計位置に対する後方散乱補正係数の情報と、前記後方散乱補正係数に対する図形の最適描画位置(
図14)の情報を取得する。取得した後方散乱係数に対する図形の最適描画位置(
図14)から、前記パターンの後方散乱係数に対応する図形の最適描画位置を取得する。
図4の場合、最適描画位置は
(a)m1=−1.49、m2=−0.14、m3=1.61、
(b)m1=−1.46、m2=−0.14、m3=1.58、
(c)m1=−1.40、m2=−0.14、m3=1.53
である。単位はnmである。取得した前記最適描画位置を、前記パターンの設計位置と共に出力部107に出力する。
【0041】
出力部107から出力された描画位置を元に、電子線描画を行う。
図4に前記最適露光位置を適用したときに得られた結果を
図15に示す。
図15は従来法と描画位置補正を適用したときの図形の中心位置の比較を表す。
図15から、従来法よりも描画位置補正を適用することで、より設計に近い位置に描画できた。